【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:22nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾルを、強酸性水素型陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR−120B(オルガノ(株)社製)で処理してアルカリ金属イオンを除去した。このアルカリ金属イオンを除去する操作を行って得た酸性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度40質量%)9000gに、純水2660gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。なお、得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度は30質量%、pH2.4、遊離アルカリ金属イオン濃度100ppmであった。以下にコロイダルシリカ粒子の真比重の測定方法、コロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径の測定方法及び遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法を示す。
【0037】
<コロイダルシリカ粒子の真比重の測定>
炭化珪素基板研磨用組成物を100℃で12時間乾燥させ、さらに150℃で1時間乾燥させたものを1g秤量し、乾式自動密度計(アキュピック1330 (株)島津製作所製)にて測定した。
【0038】
<コロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径の測定>
コロイダルシリカ粒子の水分散液を乾燥させて得られる粒子について、MONOSORB(シスメックス(株)社製)を用いてBET法で比表面積を測定し、この比表面積値から等価球換算粒径として算出した。
【0039】
<遊離アルカリ金属イオン濃度の測定>
炭化珪素基板研磨用組成物をコロイダルシリカ粒子濃度が3質量%になるように純水で希釈した後、分画分子量1万の遠心分離式限外ろ過器(セントリカットU−10 倉敷紡績(株)製)に9g秤量し、遠心分離機(SRX−201(株)トミー精工製)で440G、30分間処理して回収したろ液を必要に応じて適宜希釈し、ICP発光分光分析装置(SPS−7800 エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて測定した。
【0040】
(実施例2)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:22nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾルの代わりに、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:35nm、真比重:2.19)が分散されたアルカリ性シリカゾル9000gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度30質量%、pH2.0、遊離アルカリ金属イオン濃度53ppmであった。
【0041】
(実施例3)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:22nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾルの代わりに、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:45nm、真比重:2.21)が分散されたアルカリ性シリカゾル9000gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度は30質量%、pH2.4、遊離アルカリ金属イオン濃度17ppmであった。
【0042】
(実施例4)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:85nm、真比重:2.19)が分散されたアルカリ性シリカゾルを、強酸性水素型陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−120B(オルガノ(株)社製)で処理してアルカリ金属イオンを除去した。このアルカリ金属イオンを除去する操作を行って得た酸性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度35質量%)6857gに、純水4802gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH1.9、遊離アルカリ金属イオン濃度81ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0043】
(実施例5)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:160nm、真比重:2.20)が分散されたアルカリ性シリカゾルを、強酸性水素型陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−120B(オルガノ(株)社製)で処理してアルカリ金属イオンを除去した。このアルカリ金属イオンを除去する操作を行って得た酸性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度40質量%)11660gに、35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度39質量%、pH1.9、遊離アルカリ金属イオン濃度100ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0044】
(実施例6)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:160nm、真比重:2.20)が分散されたアルカリ性シリカゾルの代わりに、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:310nm、真比重:2.21)が分散されたアルカリ性シリカゾルを用いた以外は、実施例5と同様の操作を行った。なお、得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度39質量%、pH3.2、遊離アルカリ金属イオン濃度14ppmであった。
【0045】
(実施例7)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:85nm、真比重:2.20)が分散されたアルカリ性シリカゾル5485gと、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:22nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾル1200gとを混合したアルカリ性シリカゾルを、強酸性水素型陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−120B(オルガノ(株)社製)で処理してアルカリ金属イオンを除去した。このアルカリ金属イオンを除去する操作を行って得た酸性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度36質量%)に、純水4975gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH2.1、遊離アルカリ金属イオン濃度78ppm、真比重2.19であり、平均一次粒子径85nmのコロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径22nmのコロイダルシリカ粒子に対する割合は、質量比で80/20であった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0046】
(実施例8)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:35nm、真比重:2.19)が分散されたアルカリ性シリカゾル5400gと、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:12nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾル960gとを混合したアルカリ性シリカゾルを、強酸性水素型陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−120B(オルガノ(株)社製)で処理してアルカリ金属イオンを除去した。このアルカリ金属イオンを除去する操作を行って得た酸性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度38質量%)に、純水5300gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH2.2、遊離アルカリ金属イオン濃度37ppm、真比重2.19であり、平均一次粒子径35nmのコロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ粒子に対する割合は、質量比で90/10であった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0047】
(比較例1)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:12nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度40質量%)6000gに、純水5660gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH10.3、遊離アルカリ金属イオン濃度1700ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0048】
(比較例2)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:12nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾルの代わりに、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:35nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾル6000gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行った。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH9.5、遊離アルカリ金属イオン濃度450ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0049】
(比較例3)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:12nm、真比重:2.18)が分散されたアルカリ性シリカゾルの代わりに、水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:85nm、真比重:2.19)が分散されたアルカリ性シリカゾル6000gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行った。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度20質量%、pH9.5、遊離アルカリ金属イオン濃度320ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0050】
(比較例4)
水ガラス法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:40nm、真比重:2.16)が分散されたアルカリ性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度40質量%)9000gに、純水2660gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度30質量%、pH10.0、遊離アルカリ金属イオン濃度1000ppmであった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0051】
(比較例5)
メチルシリケート法で製造されたコロイダルシリカ粒子(窒素吸着法により求めた平均一次粒子径:35nm、真比重:2.00)が分散された中性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子濃度35質量%)10286gに、純水1250g、10質量%の硫酸124gおよび35質量%の過酸化水素水340gを混合し、炭化珪素基板研磨用組成物12000gを調製した。得られた炭化珪素基板研磨用組成物は、コロイダルシリカ粒子の濃度30質量%、pH2.1、遊離アルカリ金属イオン濃度1ppm未満であった。なお、コロイダルシリカ粒子の真比重及び平均一次粒子径や遊離アルカリ金属イオン濃度の測定方法は実施例1と同様である。
【0052】
(試験例)
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた炭化珪素基板研磨用組成物をそれぞれ用いて、以下の研磨条件にて炭化珪素基板を研磨した。研磨前及び研磨後の炭化珪素基板の表面を原子間力顕微鏡(AFM:Dimension 3100 Veeco Instruments製)で観察し、炭化珪素基板表面に形成されているマイクロパイプ部分の深さを3箇所測定し、その平均値をR
maxとして求めた。結果を表1に示す。また、研磨後、炭化珪素基板を純水で洗浄した後に乾燥し、重量減少から研磨速度を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
<研磨条件>
研磨対象物:直径2インチ、Off角4°のn型4H−SiC単結晶基板 (0001)Si面
研磨試験機:ラップマスターLM18S研磨機(ラップマスターSFT(株)製)
研磨パッド:18インチΦ Suba 600(ニッタ・ハース(株)製)
炭化珪素基板研磨用組成物の供給速度:20ml/分(1pass)
定盤回転数:60rpm
ヘッド回転数:60rpm
加工圧力:300g/cm
2
研磨時間:8時間
【0054】
この結果、遊離アルカリ金属イオン濃度が150ppm以下である実施例1〜8では、マイクロパイプ部分のR
maxの値は研磨前後で変わらず、マイクロパイプの孔は広がらなかった。一方、遊離アルカリ金属イオン濃度が高い比較例1〜4では、研磨後にマイクロパイプ部分のR
maxの値が大きくなり、マイクロパイプの孔が広がっていた。即ちマイクロパイプ近辺では、研磨前よりも炭化珪素基板の表面が粗くなっていた。また、本発明の炭化珪素基板研磨用組成物は、ダイヤモンドでの研磨等で形成された凹凸を除去することができるものであった。比較例5では、マイクロパイプ部分のR
maxの値は研磨前後で変わらず、マイクロパイプの孔は広がらなかったが、研磨速度が低く、ダイヤモンドでの研磨等で形成された凹凸を除去することができなかった。
【0055】
【表1】