(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773652
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】湿気硬化性ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/08 20060101AFI20150813BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20150813BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J201/00
C09J11/00
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-539860(P2010-539860)
(86)(22)【出願日】2008年12月19日
(65)【公表番号】特表2011-508026(P2011-508026A)
(43)【公表日】2011年3月10日
(86)【国際出願番号】US2008087621
(87)【国際公開番号】WO2009086069
(87)【国際公開日】20090709
【審査請求日】2011年12月19日
(31)【優先権主張番号】11/961,345
(32)【優先日】2007年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ヨンシア
【審査官】
内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−138551(JP,A)
【文献】
米国特許第05472785(US,A)
【文献】
特開平05−051573(JP,A)
【文献】
特開2002−105426(JP,A)
【文献】
特開2006−183000(JP,A)
【文献】
特開2004−091792(JP,A)
【文献】
特開2003−277716(JP,A)
【文献】
Performance Chemicals Typical Polyol Properties,Arch Chemicals, Inc.,2014年 7月29日,URL,http://www-qa.archchemicals.com/Fed/Urethane/Docs/Typical_Polyol_Properties.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート、ポリオール、およびシリル官能基を有さない酸化ポリエチレンから製造される湿気反応性ホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオールは、ヒドロキシル基以外の官能基を実質的に含まない鎖状ポリエーテルポリオール及びそのコポリマー、ヒドロキシル基以外の官能基を実質的に含まない分岐鎖ポリエーテルポリオール及びそのコポリマー、並びにこれらの混合物から成る群より選択され、
結晶性ポリエステルポリオールを実質的に含まないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記酸化ポリエチレンが、ヒドロキシル、カルボキシルおよびこれらの混合物からなる群より選択される反応性部分を有するポリオレフィンである、請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
熱可塑性材料を使用して製造される、請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
消泡剤、可塑剤、相溶性粘着性付与剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、ワックス、接着促進剤、フィラー、チキソトロープ剤、硬化触媒、またはこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
湿気に曝すことによって硬化させた、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化させた接着剤を含む製品。
【請求項7】
材料と材料を接着する方法であって、
液状の請求項1に記載の湿気反応性ホットメルト接着剤組成物を第1の基体に塗布するステップと、
第2の基体を前記第1の基体に塗布された組成物と接触させるステップと、
前記組成物を冷却し、硬化させて、不可逆的に固体状にする状態に前記組成物を曝すステップと
を含み、
前記状態が湿気を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
長時間のオープンタイムを必要とする、物品を製造する方法であって、
請求項1に記載の接着剤を基体表面に塗布するステップと、
第2の基体表面を前記第1の基体表面と接触させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって製造される製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基変性ポリオレフィンを含む新規の湿気硬化性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、室温では固体であるが、加熱すると、基体に塗布される形態の液体または流体状態へと溶融する。冷却すると、接着剤はその固体状態に戻る。接着剤を冷却すると形成される硬質相は、最終の接着剤にすべての粘着力(強度、靭性、クリープおよび耐熱性)を付与する。硬化性ホットメルト接着剤も溶融状態で塗布され、固化するために冷却され、その後、化学架橋反応によって硬化される。従来の液体硬化接着剤に優るホットメルト硬化性接着剤の利点は、硬化の前に冷却すると、「生強度(green strength)」が得られることである。非硬化性ホットメルト接着剤に優るホットメルト硬化性接着剤の利点は、改善された耐熱性および耐薬品性などである。
【0003】
反応性ホットメルトの大多数は、湿気硬化ウレタン接着剤である。これらの接着剤は、主として、鎖延長するために表面または環境湿度と反応して、新たにポリウレタン/尿素ポリマーを形成するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーからなる。ポリウレタンプレポリマーは、従来、ポリオールとイソシアネートとを反応させることによって得られる。硬化は、湿気が大気または基体から接着剤中に拡散し、その後、反応することによって達成される。湿気と残存イソシアネートとの反応は、カルバミン酸を生成する。この酸は不安定で、アミンと二酸化炭素に分解する。このアミンはイソシアネートと迅速に反応して、尿素を生成する。最終接着剤製品は、主として尿素基およびウレタン基を介して重合された架橋材料である。
【0004】
一般に、反応性ホットメルト接着剤配合物は添加物を含む。特性を向上させる、例えば、固化前の生強度を向上させる、または、硬化速度を上げる安価な添加物を含ませることは特に有利である。固化前の生強度は、反応性ホットメルト接着剤にとって特に重要である。なぜなら、好ましいオープンタイムおよび硬化タイムを維持しながら、塗布直後に、接着剤が取扱結合強度を与えることができるようにするからである。硬化速度が速いと、配合物の成分がより迅速に利用される。高い生強度、長時間のオープンタイム、および高速の硬化速度は、特定の湿気反応性ホットメルト接着剤の最終使用用途、例えば、パネルの積層や製品の組み立てにおいて特に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該技術分野において、例えば、長時間のオープンタイムを有し、生強度が向上するなど、好ましい特性をもたらす安価な添加物を含有する湿気反応性ホットメルト接着剤に対する要求が存在し続けている。本発明は、この要求に対処している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、官能基変性ポリオレフィンを含む湿気硬化反応性ホットメルト接着剤組成物が提供される。本発明の接着剤は、低い粘度、高い生強度、長時間のオープン/硬化タイム、高速の湿気硬化速度、および高い耐熱性を有する。本発明の接着剤の改善された特性は、結晶性ポリエステルポリオールを使用することなく得ることができる。
【0007】
本発明の一実施形態は、湿気反応性ポリウレタンホットメルト接着剤組成物に関する。本発明の接着剤は、イソシアネート、1種以上のポリオール、および1種以上の官能基変性ポリオレフィンを含み、結晶性ポリエステルポリオールを実質的に含まない。この接着剤は、所望により、別の任意の成分、例えば、1種以上の熱可塑性材料を含んでいてもよく、プレポリマーの形成前または後に、例えば、粘着性付与剤、または別の所望の成分を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の別の実施形態は、材料と材料を接着する方法であって、液状の本発明の湿気反応性ホットメルト接着剤組成物を第1の基体に塗布するステップと、第2の基体を前記第1の基体に塗布された組成物と接触させるステップと、前記塗布された組成物を、前記組成物を冷却し、硬化させて、不可逆的に固体状にする状態に曝すステップとを含み、前記状態が湿気を含むことを特徴とする方法に関する。様々な有用な物品、特に、長時間のオープンタイムを必要とする物品、すなわち最終使用用途の製造において、基体と基体を接着する方法が含まれる。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、硬化させた本発明の接着剤を含む製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、官能基変性ポリオレフィンを配合した湿気硬化性ホットメルト接着剤で見られる生強度の向上を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
すべてのパーセント(%)は、特に明記しない限り、接着剤組成物の重量パーセントである。
【0012】
用語「湿気反応性ホットメルト接着剤」、「湿気硬化性/硬化ホットメルト接着剤」および「湿気硬化ウレタン/ポリウレタン接着剤」は、本明細書では、同義で用いられる。湿気硬化ホットメルト接着剤は、主として、ジオール(典型的には、ポリエーテル、ポリエステル、およびポリブタジエン)とポリイソシアネート(通常、メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI))とを反応させることによって得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーからなる。湿気硬化が進行するためには、NCO基とOH基が化学量論的に不均衡であることが必要であり、硬化は、湿気が大気または基体から接着剤中に拡散し、その後、湿気と残存イソシアネートとが反応することによって達成される。
【0013】
「オープンタイム」とは、第1の基体に接着剤を塗布した時点と、塗布した接着剤を、必要な圧力を加えて第2の基体に接触させる時点の間の時間を意味する。
【0014】
用語「生強度」は、一般に、二通りの意味で使われる。「固化前の生強度」は、接着剤が固化(set)する前に示す結合力である。この強度は、接着剤が固化する前に、接着させた基体をしっかりと保持するために重要である。長時間のオープンタイムを必要とする最終使用用途のためには、高い「固化前の生強度」は、良好な結合を達成するために必須である。「固化後の生強度」は、固化後であるが、硬化(cure)前の接着剤の強度である。また、これは固化強度と呼ばれることもある。
【0015】
ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、官能基変性ポリオレフィンを含み、固化前の生強度が向上した湿気硬化ポリウレタン接着剤が得られることが今、見出された。本発明の接着剤は、結晶性ポリエステルポリオールを添加することなく製造され、結晶性ポリエステルポリオールを実質的に含まない。別の向上される特性は、低い粘度、長時間のオープン/硬化タイム、高速の硬化速度、および低いコストであり、スプレー、押出、ロールコーティングおよびビード塗布などの従来の反応性ホットメルト技術を使用して塗布することができる。
【0016】
本発明の反応性ホットメルト接着剤は、広範囲の溶融粘度にわたって相溶性であり、そのため、パッケージしても、保管しても、またはディスペンシングしても、相分離、ゲル化、または凝集することがない。適当な生強度と、オープンタイムおよび硬化タイムを与えるために、ポリエステルポリオールが、一般に、反応性ホットメルト接着剤において使用されるが、本発明の反応性ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールをまったく添加することなく、十分に利用することができる。官能基変性ポリオレフィンを使用すると、向上した生強度を配合物に与え、ポリエステルポリオールの必要性がなくなる。
【0017】
本発明の接着剤は、イソシアネート成分を含む。有用なイソシアネート成分の非限定的な例としては、メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化メチレンビスフェニルジイソシアネート(HMDI)およびトルエンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。このイソシアネート成分は、典型的には、約5重量%〜約40重量%の量で使用される。
【0018】
また、本発明の接着剤は、結晶性ポリエステルポリオール以外のポリオールを含むことができる。非限定的な例としては、ポリエーテルポリオールおよびポリブタジエンが挙げられる。この添加されるポリオールは、典型的には、約0.01重量%〜約70重量%の量で使用される。
【0019】
本発明の接着剤は、官能基変性ポリオレフィン、特に酸化ポリエチレンを含むことができる。この官能基変性ポリオレフィンは、典型的には、約0.01重量%〜約30重量%の量で使用される。
【0020】
別の任意の成分、例えば、熱可塑性樹脂および/または(メタ)アクリルポリマーを添加することができる。そのようなポリマーは、イソシアネートとの反応の前にポリオールと混合してもよく、または、イソシアネート末端プレポリマーに添加してもよい。
【0021】
本発明の反応性ホットメルト組成物は、これらに限定されないが、木材、金属、ポリマープラスチック、ガラス、および布などの非常に様々な基体(材料)で作られた物品の製造において有用である。異なったタイプの原材料を使用し、したがって作用機構が異なっているために、本発明の接着剤は、特に、長時間のオープンタイムを必要とする最終使用用途、例えば、大規模な、または複雑な組み立てを必要とする製品に非常に適している。本発明の接着剤は、消費者製品の製造、および特定の工業用途で使用される。この接着剤が使用される市場としては、織物(例えば、絨毯および衣料品)、食品包装、履物、消費財、建築、家具、自動車および航空機が挙げられる。用途としては、これらに限定されないが、給水塔における使用、外面に接着するための使用、高レベルのピッチを有する木材に接着するための使用、例えば、船舶および自動車用途での使用、窓の製造における艶出し/裏面配合材料としての使用、玄関ドア、ガレージドアなどのドアの製造における使用、建築パネルの製造における使用、乗り物の外面への部品の接着における使用などが挙げられる。
【0022】
2つ以上のイソシアネート基を含む適当な化合物は、いずれも、ウレタンプレポリマーを製造するために使用することができる。
【0023】
本発明を実施するために使用することができる有機ポリイソシアネートとしては、アルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、および脂肪族−芳香族ジイソシアネートが挙げられる。適当なイソシアネート含有化合物の具体例としては、これらに限定されないが、エチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、フルフリリデンジイソシアネート、1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネート、4,4’,4’’−トリイソシアナトトリフェニルメタン、1,3,5−トリイソシアナト−ベンゼン、2,4,6−トリイソシアナト−トルエン、4,4’−ジメチルジフェニル−メタン−2,2’,5,5−テトライソシアネートなどが挙げられる。そのような化合物は市販されており、そのような化合物を合成する方法は当該技術分野において周知である。好ましいイソシアネート含有化合物は、メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化MDI(HMDI)およびトルエンジイソシアネート(TDI)である。
【0024】
本発明のプレポリマーは、通常、ポリイソシアネートとポリオールとの重合によって製造され、最も好ましくは、ジイソシアネートと低分子量のジオールとの重合によって製造される。本発明の実施において有用なポリオールとしては、ポリヒドロキシエーテル(置換または非置換のポリアルキレンエーテルグリコールまたはポリヒドロキシポリアルキレンエーテル)、ポリオールおよびグリセロールの一置換エステルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物、ポリアミドポリオール、非晶質および液状ポリエステル、ひまし油、様々な分子量および官能性の植物油、他の脂肪族ポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソブチレンジオール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオールの例としては、ヒドロキシル基を有し、ヒドロキシル基以外の官能基を実質的に含まない直鎖および/または分岐鎖ポリエーテルが挙げられる。ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリオキシアルキレンポリオールを挙げることができる。さらに、ポリオキシアルキレンポリオールのホモポリマーおよびコポリマーを使用することもできる。特に好ましいポリオキシアルキレンポリオールのコポリマーとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサンジオール−1,3、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンおよびエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物との付加物を挙げることができる。
【0026】
多くの適当なポリオールが市販されている。非限定的な例としては、ARCOL PPG2025(Bayer)、PolyG20−56(Arch)およびPolyG30−42(Arch)のようなポリエーテル、PAPOLpolyol(Arizona Chemical)のようなポリアミドポリオール、Dynacoll 7230(Degussa)およびStepanpol PD−56(Stepan)のような非晶質または液状ポリエステル、ならびにPolyBD R−45HTLO(Sartomer)のようなポリブタジエンが挙げられる。また、「ポリマーポリオール」も適しており、すなわち、in situで重合された、ビニルモノマーの一部を含有するグラフトポリオール、例えばNiax34−28(Union Carbide)である。さらに、ポリオールとしては、ポリカプロラクトンジオールおよびポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0027】
脂肪族ポリオールの例としては、ひまし油、不飽和または多価不飽和天然油のヒドロキシル化生成物、不飽和または多価不飽和ポリヒドロキシル天然油の水素化生成物、アルキルヒドロキシル脂肪酸のポリヒドロキシルエステル、重合天然油、大豆ポリオール、および脂肪酸のアルキルヒドロキシル化アミドを挙げることができる。
【0028】
本発明の接着剤は、官能基変性ポリオレフィンを含む。そのような成分は、硬化前の高い生強度、低い粘度、高速の硬化速度、および高い耐熱性のような有利な特性を有する接着剤が得られるために、接着剤に含まれる。さらに、官能基変性ポリオレフィンを使用すると、組成物がより安価になる。なぜなら、安価な官能基変性ポリオレフィンによって、組成物中のより高価なポリエステルポリオールの必要性がなくなるからである。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレンコポリマーのようなポリオレフィンを、官能基を有するように変性することができる。官能基変性ポリオレフィンの官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、ビニル基、シリル基、およびイソシアネート基が挙げられる。特に有用な官能基変性ポリオレフィンは、酸化ポリエチレンである。官能基変性ポリオレフィンの数平均分子量は、約50〜100,000、より好ましくは約100〜10,000の範囲である。非限定的な例としては、Westlake Chemicalから市販されているEE−2ポリマー、Eastman Chemical Companyから入手できるEPOLENE(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0029】
本発明の接着剤は、任意選択で、熱可塑性ポリマーを含むことができる。この熱可塑性ポリマーは、官能性熱可塑性ポリマーであっても、非官能性熱可塑性ポリマーであってもよい。適当な熱可塑性ポリマーの例としては、アクリルポリマー、官能性アクリルポリマー、非官能性アクリルポリマー、アクリルブロックコポリマー、第3級アルキルアミド官能基を有するアクリルポリマー、ポリシロキサンポリマー、ポリスチレンコポリマー、ポリビニルポリマー、ジビニルベンゼンコポリマー、ポリエーテルアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、メチレンポリビニルエーテル、セルロースアセテート、スチレンアクリロニトリル、非晶質ポリオレフィン、オレフィンブロックコポリマー[OBC]、ポリオレフィンプラストマー、熱可塑性ウレタン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンビニルアセテートターポリマー、官能性エチレンビニルアセテート、エチレンアクリレートコポリマー、エチレンアクリレートターポリマー、エチレンブタジエンコポリマーおよび/またはブロックコポリマー、スチレンブタジエンブロックコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
多くの適当な熱可塑性ポリマーが市販されている。非限定的な例としては、エチレンビニルアセテートコポリマー、例えば、Elvax(登録商標)EVA樹脂(DuPont)、エチレンアクリレートコポリマー、例えば、Enable(商標)樹脂(Exxon Mobil)、および(メタ)アクリルポリマー、例えば、Elvacite(登録商標)樹脂(Lucite)およびDegalan樹脂(Degussa)が挙げられる。
【0031】
また、ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートと、ジアミノポリプロピレングリコール、ジアミノポリエチレングリコールなどのポリアミノ含有化合物またはポリメルカプト含有化合物、あるいは、チオジグリコール単独の縮合生成物、またはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールなどの他のグリコールや、上記の他のポリヒドロキシ化合物と組み合わせたチオジグリコールの縮合生成物などのポリチオエーテルとの反応によって製造することもできる。
【0032】
さらに、少量の低分子量ジヒドロキシ、ジアミノ、またはアミノヒドロキシ化合物を鎖延長剤として使用してもよい。
【0033】
本発明の接着剤は、上記のように、直接に使用することができるが、所望により、本発明の接着剤は、この組成物と相溶性である他の通常の添加物を配合することもできる。そのような添加物としては、消泡剤、可塑剤、相溶性粘着性付与剤、硬化触媒、解離触媒、フィラー、レオロジー改質剤、酸化防止剤、色素、接着促進剤、安定剤、脂肪族C
5−C
10テルペンオリゴマー、瀝青質材料などが挙げられる。また、耐垂れ下り性を与えるために、ヒュームドシリカのようなチキソトロープ剤を添加してもよい。本発明の組成物と相溶性である通常の添加物は、可能性のある添加物を組成物と組み合わせ、それらが相溶性であるかどうかを決定することによって簡単に決定することができる。生成物中で均一である場合、その添加物は相溶性である。適当な添加物の非限定的な例としては、限定されないが、ロジン、ロジン誘導体、ロジンエステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族変性脂肪族炭化水素、テルペン、テルペンフェノール、変性テルペン、高分子量ヒンダードフェノールおよび多官能フェノール、例えば、硫黄およびリン含有フェノール、テルペンオリゴマー、DMDEE、シラン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、および水素化ひまし油が挙げられる。また、本発明の反応性ホットメルト接着剤は、難燃剤成分を含むこともできる。
【0034】
本発明は、また、物品と物品を接着する方法であって、液体溶融状態の本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物を第1の物品に塗布するステップと、第2の物品を前記第1の物品に塗布された組成物と接触させるステップと、前記塗布された組成物を、前記組成物を冷却し、硬化させて、不可逆的に固体状の組成物にする状態に曝すステップとを含み、前記状態が湿気を含むことを特徴とする方法を提供する。この組成物は、典型的には、固体の形態で流通および保管され、湿気が無い状態で保管される。この組成物が使える状態になると、塗布する前に、固体を加熱し、溶融する。このように、本発明は、典型的には、保管および流通するときは固体の形態、溶融した後、塗布する直前には液体の形態である反応性ポリウレタンホットメルト接着剤組成物を含む。
【0035】
塗布後、物品と物品を接着するために、反応性ホットメルト接着剤組成物を、これを固化および硬化させて、不可逆的に固体の形態を有する組成物にする状態に曝す。固化(setting)は、液状溶融物が塗布温度から室温へと冷却し始めるときに起こる。不可逆的に固体の形態を有する組成物への硬化、すなわち鎖延長は、環境湿度の存在下で起こる。
【0036】
本発明を、さらに、下記の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0037】
下記の実施例中、
PolyG 20−265は、Arch Chemicalsから入手したポリエーテルポリオールであり、
PolyG 20−112は、Arch Chemicalsから入手したポリエーテルポリオールであり、
PolyG 20−56は、Arch Chemicalsから入手したポリエーテルポリオールであり、
EE−2 ポリマーは、Westlake Chemicalから入手した酸化ポリエチレンであり、
Elvacite 2016は、Lucite Internationalから入手したMMA/n−BMAコポリマーであり、
Mondur Mは、Bayerから入手したMDIである。
【0038】
比較例2は、PUR−FECT LOK(登録商標)34−9014という商品名でNational Starch and Chemical Companyから市販されている、ポリエステルポリオールを含む湿気反応性ホットメルト接着剤である。
【0039】
接着剤の製造:
表1に示す量のポリエーテルポリオール、EE−2 ポリマー、およびMMA/n−BMAコポリマーを洗浄した容器に入れ、様々な反応性ホットメルト接着剤の配合物を製造した。この混合物を、次いで、120〜140℃の温度で約1〜3時間、溶融した。この混合物を溶融する間、3つの穴があるケトルの蓋と撹拌パドルを備えた、前記容器を収容できるGlascol加熱マントルを120℃に予熱した。次いで、容器をGlascol加熱マントル中に入れ、撹拌しながら系を2時間真空にした。真空を解除した後、MDIを混合物に添加し、約120〜140℃の範囲の温度で約2〜3時間反応させた。反応後、この混合物を脱気し、抜き出したバッチを個々の容器に入れた。
【0040】
【表1】
【0041】
配合物の反応性ホットメルト特性を試験した。
【0042】
No.27のスピンドルを用い、B型(ブルックフィールド)DV−1+粘度計で粘度を測定した。測定温度は華氏250度であった。
【0043】
生強度を動的剥離方法によって測定した。まず、溶融した接着剤薄膜を加熱したガラスプレート上に形成した。次いで、1インチ幅のビニルストリップ(細片)を溶融した接着剤薄膜上に広げた。このガラスプレートを2つのラック上に水平に配置し、103グラムの重量をビニルストリップの一方の端に取り付けた。ビニルがガラスプレートから剥離する距離を、接着剤が室温に冷却される時間の関数として測定した。この試験では、ビニルがガラスからゆっくり剥離するほど(すなわち、剥離速度が小さいほど)、接着剤の生強度は高い。
【0044】
オープンタイムを重ね剪断方法によって測定した。接着剤をパーティクルボードに塗布し、次いで、高圧積層ストリップを所望のオープンタイムで接着剤上に接合した。この接着を24時間硬化させた後、インストロン試験機で、0.5インチ/分のクロスヘッド速度で測定した。破壊モードおよび破壊強度をpsi単位で記録した。オープンタイムは、基体の破壊および/または結合の破壊が観察される最長の時間と定義した。
【0045】
試験の結果を表2および
図1に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2および
図1に示すように、官能基変性ポリオレフィンを含む配合物は、好ましいオープンタイムを有し、低い粘度で改善された生強度など、有利な反応性ホットメルト特性を有する。
図1において、剥離速度が小さいほど、接着剤の生強度は高い。剥離速度がより小さいことは、剥離力に対する抵抗がより高いことを示しているので、より望ましい。
【0048】
当業者には明らかであるように、その精神と範囲を外れることなく、本発明の多くの改変および変更を行うことができる。本明細書に記載された特定の実施形態は単なる一例として記載されており、本発明は、特許請求の範囲の十分な均等の範囲も加えて、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ特定されるものである。