(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、パターン検査装置、及び照明光の形成方法に係り、例えば、コヒーレント光の干渉性を低減させる照明装置と、かかる装置の照明光を用いて、半導体製造に用いる試料となる物体のパターン欠陥を検査するパターン検査装置およびその照明光の形成方法に関する。
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができるパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。例えば、電子ビームやレーザビームを用いて描画される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査するパターン検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
マスクパターンの微細化・高集積化に伴い、検査装置は高い分解能が要求され、検査装置の照明光の波長も短いものとなっている。例えば、266nm以下の深紫外光が用いられる。そして、かかる照明光をレーザ光源装置から発振している。しかしながら、かかるレーザ光源から発生するレーザ光はコヒーレント光となり、可干渉性から一定の干渉縞(スペックル)が発生してしまうといった問題があった。そのため、光源からの光線を蝿の目レンズに通し、通過した光線を回転位相板に通すなどして、干渉性を排除する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来、コヒーレント光の干渉性を排除する試みがなされているが、かかる問題を十分に解決する手法が確立されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、コヒーレント光の干渉性をより排除することが可能な照明装置、パターン検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の照明装置は、
コヒーレント光を発生する光源と、
ランダムに配置された、波長以下の高さの複数の段差領域が形成され、光源からの光線を通過させて位相を変化させる回転位相板と、
複数のレンズがアレイ状に配列され、回転位相板を通過した光線を通過させる蝿の目レンズ(オプティカルインテグレータ)と、
を備え、
前記複数の段差領域の最大サイズと前記複数のレンズの配列ピッチとの関係が、複数の段差領域の最大サイズと回転位相板から蝿の目レンズの入射面までの光学倍率の積が、複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の態様の照明装置は、
コヒーレント光を発生する光源と、
ランダムに配置された、波長以下の高さの複数の段差領域が形成され、光源からの光線を通過させて位相を変化させる回転位相板と、
複数のレンズがアレイ状に配列され、回転位相板を通過した光線を通過させる蝿の目レンズ(オプティカルインテグレータ)と、
を備え、
複数の段差領域の最大サイズが、複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在するように構成され
、
前記回転位相板から前記蝿の目レンズの入射面までの光学倍率が1倍であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様の照明装置は、
コヒーレント光を発生する光源と、
ランダムに配置された、波長以下の高さの複数の段差領域が形成され、光源からの光線を通過させて位相を変化させる回転位相板と、
複数のレンズがアレイ状に配列され、回転位相板を通過した光線を通過させる、回転位相板からの配置位置が異なる複数の蝿の目レンズ(オプティカルインテグレータ)と、
を備え、
前記複数の段差領域の最大サイズと前記複数のレンズの配列ピッチとの関係が、複数の段差領域の最大サイズと回転位相板から複数の蝿の目レンズの一方の入射面までの光学倍率の積が、かかる一方の複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、かかる一方の複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在すると共に、複数の段差領域の最大サイズと回転位相板から複数の蝿の目レンズの他方の入射面までの光学倍率の積が、かかる他方の複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、かかる他方の前記複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様のパターン検査装置は、
コヒーレント光を発生する光源と、
ランダムに配置された、波長以下の高さの複数の段差領域が形成され、光源からの光線を通過させて光線の位相を変化させる回転位相板と、
複数のレンズがアレイ状に配列され、回転位相板を通過した光線を通過させる蝿の目レンズ(オプティカルインテグレータ)と、
蝿の目レンズを通過した光線を照明光として、パターンが形成された基板に照明し、パターンの光学画像を取得する光学画像取得部と、
光学画像と参照画像とを比較する比較部と、
を備え、
前記複数の段差領域の最大サイズと前記複数のレンズの配列ピッチとの関係が、複数の段差領域の最大サイズと回転位相板から蝿の目レンズの入射面までの光学倍率の積が、複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様の照明光の形成方法は、
光源からコヒーレント光を発生する工程と、
ランダムに配置された、波長以下の高さの複数の段差領域が形成された回転位相板に、光源からの光線を通過させて位相を変化させる工程と、
複数のレンズがアレイ状に配列された蝿の目レンズ(オプティカルインテグレータ)に、回転位相板を通過した光線を通過させる工程と、
を備え、
前記複数の段差領域の最大サイズと前記複数のレンズの配列ピッチとの関係が、複数の段差領域の最大サイズと回転位相板から蝿の目レンズの入射面までの光学倍率の積が、複数のレンズの配列ピッチ以下となる箇所と、複数のレンズの配列ピッチより大きくなる箇所とが混在するように構成された、回転位相板と蝿の目レンズの組み合わせを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コヒーレント光の干渉性をより排除できる。よって、パターン検査の照明光として用いれば、高精度な検査ができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における照明装置の構成を示す概念図である。
図1において、照明装置300は、光源103、及び照明光学系170を備えている。照明光学系170は、ビームエキスパンダ12、回転位相板14、リレーレンズ16,18、インテグレータ(オプティカルインテグレータ:蝿の目レンズ)20、及びコンデンサレンズ22を有している。
【0017】
光源103は、コヒーレント光を発生する。例えば、波長が266nmの紫外光を発生する。光源103から発せられたコヒーレント光となる光線10をビームエキスパンダ12で拡大し、中心軸を軸として回転する回転位相板14を通過させる。回転位相板14を通過させることによって空間コヒーレンシーが低減される。その後、リレーレンズ16,18で回転位相板14からインテグレータ20の入射面までの光学倍率をM倍に調整する。そして、回転位相板14、及びリレーレンズ16,18を通過した光線は、インテグレータ20に入射する。そして、インテグレータ20を通過した光線はコンデンサレンズ22によって、焦点が対象物となるフォトマスク101に合わされて、フォトマスク101面に照明される。
【0018】
図2は、実施の形態1における回転位相板の構成を示す概念図である。
図2(a)に示す回転位相板14の領域200を拡大すると、
図2(b)に示すように、回転位相板14には、通過する光線の位相を変化させる複数の段差領域202(領域A)がランダムに配置される。段差領域202では、
図2(c)に示すように、回転位相板14の表面から波長以下の深さが掘り込まれて段差が形成されている。言い換えれば、波長以下の高さの段差が形成されている。よって、かかる段差が無い無段差領域200(領域B)もランダムに配置されていることになる。また、領域Aの深さは、光線が通過することによって、光線の位相を例えばλ/4、λ/2、或いは3λ/4等にずらすことができる厚さが残るサイズであればよい。回転位相板14は、図示しないモータ等によって回転駆動させられる。そして、高速回転させている回転位相板14に光線を通すことで、実質同じ確率で領域A或いは領域Bを通過させることができる。よって、実質同じ確率でそれぞれの位相の光線を形成できる。ここで段差領域202は、光線の光軸に垂直な回転位相板14面の方向における縦横の外形寸法のうちの最大寸法が寸法Lで形成される場合を示している。
図2の例では、正方形或いは長方形といった矩形で段差領域202が形成された場合を示している。
【0019】
図3は、実施の形態1におけるインテグレータの構成を示す概念図である。
図3において、インテグレータ20には、複数のレンズ210がアレイ配列されている。ここでは、複数のレンズ210がピッチPで配置されている。
【0020】
ここで、複数の位相の光線の組み合わせが同じ確率で発生した場合、合成することにより干渉性を完全に排除できる。例えば、2つの位相(0、π)を3つの光線a,b,cの組合せで表した場合、(0,0,0)、(π,0,π)、(0,π,
π)、(π,π,0)の4つの組み合わせが想定できる。これら4つの組み合わせが同じ確率で発生した場合、完全に干渉性を排除できる。そのためには、(0,0,0)、(
0,π,π)、或いは(π,π,0)で示す組み合わせのように隣り合う光線が同じ位相になる場合だけではなく、(0,π,0)で示す組み合わせのように隣り合う光線が必ず異なる位相になる場合を存在させる必要がある。しかし、回転位相板14を通過することでいずれか1つの位相に変化した光線がインテグレータ20に入射する際、光線の幅がレンズ210のピッチよりもすべて大きい場合、いずれの光線も複数のレンズ210に跨って入射することになる。よって、せっかく位相をずらしてもインテグレータ20から出力される際に、隣り合う複数のレンズ210で同じ位相の光線が出力されてしまうことになる。これでは、隣り合う光線が必ず異なる位相になる場合を発生させることが困難となる。
【0021】
そこで、実施の形態1では、回転位相板14を通過することでいずれか1つの位相に変化した光線がインテグレータ20に入射する際、光線の幅がレンズ210のピッチ以下になる箇所をあえて形成する。言い換えれば、領域Aを通過した光線がすべて1つのレンズ210に入射する場合が存在するように構成する。同様に、領域Bを通過した光線がすべて1つのレンズ210に入射する場合が存在するように構成する。これにより、インテグレータ20から出力される複数の位相の光の組み合わせを実質同じ確率で発生させることができる。
【0022】
そこで、実施の形態1では、複数の段差領域202の最大サイズLと回転位相板14からインテグレータ20の入射面までの光学倍率Mの積が、インテグレータ20の複数のレンズ210の配列ピッチP以下となる箇所と、配列ピッチPより大きくなる箇所とが混在するように、段差領域202とレンズ210の関係を規定する。そして、かかる関係になる回転位相板14とインテグレータ20を用いる。これにより、段差領域202を通過した光線のすべてがインテグレータ20の複数のレンズ210の1つに入射される場合を作ることができる。よって、隣り合うレンズ210を通過した光線が必ず異なる位相になる場合を発生させることができる。
【0023】
かかる構成により、インテグレータ20から出力される複数の位相の光の組み合わせをより同じ確率に近づくように発生させることができる。その結果、強度分布の均一化と共に干渉性も従来に比べてより排除できる。
【0024】
ここで、回転位相板14の異なる段差の領域A,Bの形状は、
図2に示す矩形に限るものではない。
【0025】
図4は、実施の形態1における回転位相板の段差領域の形状の一例を示す概念図である。
図4に示すように、位相を変化させる領域A,Bの形成を2等辺三角形としてもよい。そして、領域A,Bをランダムに配置する点は
図2(b)と同様である。ここでも、2等辺三角形の底辺或いは高さの外形寸法のうちの最大寸法を上述した寸法Lと置き換えればよい。
【0026】
図5は、実施の形態1における回転位相板の段差領域の形状の他の一例を示す概念図である。
図5に示すように、位相を変化させる領域A,Bの形成を6角形としてもよい。そして、領域A,Bをランダムに配置する点は
図2(b)と同様である。6角形の縦横斜めの外形寸法のうちの最大寸法を上述した寸法Lと置き換えればよい。
【0027】
図6は、実施の形態1の照明装置の効果を説明するための図である。いずれの光線も隣り合うレンズ210に跨って入射する場合、
図6(a)で示すように、対象物面上では、干渉縞310が残ることになる。これに対して、実施の形態1のように、隣り合うレンズ210に跨って入射されない場合が加わると、
図6(b)で示すように、対象物面上での干渉縞を残さないようにできる。以上のように、実施の形態1によれば、コヒーレント光の干渉性をより排除できる。
【0028】
以上のように構成した照明光学系170と光源103を用いて、パターン検査を行うパターン検査装置について以下説明する。
【0029】
図7は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
図7において、マスク等の基板を試料として、かかる試料の欠陥を検査するパターン検査装置100は、光源103と照明光学系170と光学画像取得部150と制御回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、及びオートローダ130を備えている。制御回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例となる比較回路108、設計画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。
図7では、本実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0030】
検査開始前に、まず、オートローダ制御回路113により制御されたオートローダ130により、パターン形成された被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上にロードされ、そして、XYθテーブル102上に載置される。また、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンの情報(設計パターンデータ)は、装置外部からパターン検査装置100に入力され、記憶装置(記憶部)の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。
【0031】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。また、拡大光学系104は、例えば圧電変換素子等によって駆動され、フォトダイオードアレイ105へと像の焦点が合わされる。
【0032】
図8は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための図である。被検査領域は、
図8に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプに仮想的に分割される。そして、更にその分割された各検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、
図8に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。ここでは、フォワード(FWD)−バックワード(BWD)手法を用いているが、これに限るものではなくフォワード(FWD)−フォワード(FWD)手法を用いても構わない。
【0033】
フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている上述した光源103によって光が照射される。光源103から照射されるコヒーレント光は、上述した照明光学系170を介してフォトマスク101を照射する。照明によってフォトマスク101を透過した光は、拡大光学系104を介してフォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、例えばTDI(タイムディレイインテグレータ)センサのようなセンサが設置されている。以上のようにして、光学画像取得部150は、被検査試料の検査ストライプ毎の光学画像データ(ストライプデータ)を取得する。
【0034】
センサ回路106出力された各検査ストライプの測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ毎に、順に、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に出力される。測定データは、画素毎に例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を例えば0〜255で表現している。これらの光源103、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、及びセンサ回路106によって高倍率の検査光学系が構成されている。
【0035】
設計画像作成回路112(参照画像作成部)は、所定の領域毎に、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出されたフォトマスク101の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータである設計画像データ(参照画像データ)に変換(展開処理)する。所定の領域は、比較対象となる光学画像に対応する画像の領域(エリア)とすればよい。作成された参照画像データは比較回路108に出力される。
【0036】
設計パターンデータに定義されるパターンを構成する図形は長方形や三角形を基本図形としたもので、設計パターンデータには、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0037】
かかる図形データが設計画像作成回路112に入力されると、図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の画像データを展開する。そして、展開された画像データ(展開画像データ)は、回路内の図示しないパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。言い換えれば、設計パターンデータを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目ごとに設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを図示しないパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2
8(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、展開された画像データは、各画素に対して8ビットの占有率データで定義されたエリア単位の画像データとしてパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に格納される。
【0038】
そして、展開された画像データに対してデータ処理(画像処理)を行い、適切なフィルタ処理を施す。光学画像データ(測定データ)は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にある。そのため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである展開画像データにも所定のモデルに沿ったフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。例えば、拡大或いは縮小処理をおこなうリサイズ処理、コーナー丸め処理、或いはぼかし処理といったフィルタ処理を施す。このようにして設計画像を作成する。
【0039】
そして、比較回路108内では、ストライプ毎の光学画像データを読み出し、光学画像データを参照データと同じサイズの領域の画像となるように光学画像データを切り出す。そして、比較回路108は、所定の判定条件で、対応する光学画像データと参照データとを位置合わせをおこなってから画素毎に比較する。かかる検査手法は、ダイーツーデータベース検査である。そして、比較結果が出力される。比較結果は、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0040】
図9は、実施の形態1におけるフォトマスクと形成されたパターンとの一例を示す概念図である。
図9において、フォトマスク101上には、同一の設計パターンで描画された複数のパターン領域11,13(被検査領域)が形成されている。そして、この2つのパターン領域11,13を合わせた全体が
図8で示した複数の検査ストライプに仮想分割される。そして、光学画像取得部150によって、検査ストライプ毎に光学画像データ(測定データ)が取得される。そのため、1つの検査ストライプの測定データには、パターン領域11,13の両方の画像が含まれている。そして、領域11,13の一方の画像を検査対象画像とし、他方を参照画像として、ダイーツーダイ検査を行なっても良い。
【0041】
以上のように、干渉性が排除された照明光を用いることで、分解能が向上し、より高精度な検査ができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1では、回転位相板からインテグレータまでに光学倍率を変更する例を示したが、これに限るものではない。
【0043】
図10は、実施の形態2における照明装置の構成を示す概念図である。
図10において、回転位相板14とインテグレータ20の間のリレーレンズ16,18が省略された点以外は
図1と同様である。また、パターン検査装置100の構成も
図7と同様である。また、以下、特に説明しない内容は実施の形態1と同様である。
【0044】
実施の形態2では、すなわち、回転位相板14からインテグレータ20の入射面までの光学倍率は1倍のままである。かかる構成では、複数の段差領域202の最大サイズLが、インテグレータ20の複数のレンズ210の配列ピッチP以下となる箇所と、配列ピッチPより大きくなる箇所とが混在するように、段差領域202とレンズ210の関係を規定する。そして、かかる関係になる回転位相板14とインテグレータ20を用いる。これにより、段差領域202を通過した光線のすべてがインテグレータ20の複数のレンズ210の1つに入射される場合を作ることができる。よって、隣り合うレンズ210を通過した光線が必ず異なる位相になる場合を発生させることができる。
【0045】
かかる構成により、インテグレータ20から出力される複数の位相の光の組み合わせをより同じ確率に近づくように発生させることができる。その結果、強度分布の均一化と共に干渉性も従来に比べてより排除できる。
【0046】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、1つのインテグレータを用いる構成を示したがこれに限るものではない。
【0047】
図11は、実施の形態3における照明装置の構成を示す概念図である。
図11において、インテグレータ20とコンデンサレンズ22の間に、レンズ30、及びインテグレータ32を追加した点以外は
図1と同様である。また、パターン検査装置100の構成も
図7と同様である。また、以下、特に説明しない内容は実施の形態1と同様である。
【0048】
実施の形態3では、複数のインテグレータを配置する。ここでは、2つのインテグレータ20,32を配置した場合を示している。インテグレータの数は3つ以上であってもよい。インテグレータ20,32は、アレイ配列される複数のレンズ210のピッチが異なるピッチであっても同じピッチであってもよい。ここでは、インテグレータ20が有する複数のレンズ210のピッチをP1、インテグレータ32が有する複数のレンズ210のピッチをP2とする。また、インテグレータ20,32は、配置位置が異なるため、回転位相板14から各インテグレータの入射面までの光学倍率が異なる。ここでは、回転位相板14からインテグレータ20の入射面までの光学倍率M、インテグレータ20からインテグレータ32までの光学倍率Nとする。言い換えれば、回転位相板14からインテグレータ32の入射面までの光学倍率M×Nとする。そして、
図11の例では、焦点距離fを持ったレンズ30を間に介して2つのインテグレータ20,32を配置した場合を示している。レンズ30と2つのインテグレータ20,32
の焦点位置までの距離と、レンズ30とインテグレータ32との距離は共にfになるように配置される。
【0049】
実施の形態3では、例えば、実施の形態1にように、回転位相板14とインテグレータ20との関係が保たれていても、その後のインテグレータ32を光線が通過する際に、光線の幅がインテグレータ32のレンズのピッチよりもすべて大きい場合、いずれの光線も隣り合うレンズ間に跨って入射することになる。これでは、隣り合う光線が必ず異なる位相になる場合を発生させることが困難となる。
【0050】
そこで、実施の形態3では、回転位相板14を通過することでいずれか1つの位相に変化した光線がインテグレータ20に入射する際、光線の幅がレンズ210のピッチ以下になる箇所をあえて形成する。同様に、インテグレータ20のいずれか1つのレンズ210を通過することで隣り合うレンズ間で異なる位相に保たれた光線がインテグレータ32に入射する際、光線の幅がインテグレータ32のレンズ210のピッチ以下になる箇所をあえて形成する。言い換えれば、領域Aを通過した光線がすべてインテグレータ20の1つのレンズ210とインテグレータ32の1つのレンズ210に入射する場合が存在するように構成する。同様に、領域Bを通過した光線がすべてインテグレータ20の1つのレンズ210とインテグレータ32の1つのレンズ210に入射する場合が存在するように構成する。これにより、複数のインテグレータ20,32から出力される複数の位相の光の組み合わせを実質同じ確率で発生させることができる。
【0051】
そこで、実施の形態1では、複数の段差領域202の最大サイズLと回転位相板14からインテグレータ20の入射面までの光学倍率Mとの積が、インテグレータ20の複数のレンズ210の配列ピッチP1以下となる箇所と、配列ピッチP1より大きくなる箇所とが混在するように、段差領域202とインテグレータ20のレンズ210の関係を規定する。同様に、複数の段差領域202の最大サイズLと回転位相板14からインテグレータ32の入射面までの光学倍率M×Nとの積が、インテグレータ20の複数のレンズ210の配列ピッチP2以下となる箇所と、配列ピッチP2より大きくなる箇所とが混在するように、段差領域202とインテグレータ32のレンズ210の関係を規定する。そして、かかる関係になる回転位相板14とインテグレータ20,32を用いる。これにより、段差領域202を通過した光線のすべてがインテグレータ20,32のそれぞれの複数のレンズ210の1つに入射される場合を作ることができる。よって、隣り合うレンズ210を通過した光線が必ず異なる位相になる場合を発生させることができる。
【0052】
かかる構成により、複数のインテグレータ20,32から出力される複数の位相の光の組み合わせをより同じ確率に近づくように発生させることができる。その結果、強度分布の均一化と共に干渉性も従来に比べてより排除できる。
【0053】
図12は、別の光学画像取得手法を説明するための図である。
図7等の構成では、スキャン幅Wの画素数を同時に入射するフォトダイオードアレイ105を用いているが、これに限るものではなく、
図12に示すように、XYθテーブル102をX方向に定速度で送りながら、レーザ干渉計で一定ピッチの移動を検出した毎にY方向に図示していないレーザスキャン光学装置でレーザビームをY方向に走査し、透過光或いは反射光を検出して所定の大きさのエリア毎に二次元画像を取得する手法を用いても構わない。
【0054】
以上の説明において、「〜部」、「〜回路」或いは「〜工程」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、演算制御部を構成する、位置回路107、比較回路108、設計画像生成回路112、オートローダ制御回路113、或いはテーブル制御回路114等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施の形態では、透過光を用いて透過型の光学系を用いているが、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いる構成としてよい。
【0056】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0057】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置或いはパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。