(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773942
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】半導体レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20060101AFI20150813BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
H01S5/022
G01N21/39
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-114492(P2012-114492)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-243206(P2013-243206A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年4月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127535
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 義元
(74)【代理人】
【識別番号】100159190
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 比呂志
(72)【発明者】
【氏名】吉村 了行
(72)【発明者】
【氏名】竹下 達也
(72)【発明者】
【氏名】大木 明
(72)【発明者】
【氏名】満原 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 具就
(72)【発明者】
【氏名】神徳 正樹
(72)【発明者】
【氏名】米山 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−200208(JP,A)
【文献】
特開2006−344743(JP,A)
【文献】
特開平07−086694(JP,A)
【文献】
特開平07−111354(JP,A)
【文献】
特開平7−140362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
G01N 21/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、
サブマウント又はステムと、ヒートシンクと、半導体レーザチップとを含み、前記半導体レーザチップが前記ヒートシンクを介して前記サブマウント又はステム上に配置されている半導体レーザキャリアと、
前記サブマウント又はステムと、前記ヒートシンクとの間に設けられた熱伝導調整板とを備え、
前記熱伝導調整板は、前記ヒートシンクの材料の熱伝導率より小さい熱伝導率を有するアルミナ又はコバールを主原料とする材料から成り、
前記熱伝導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、前記半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され、
前記半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザチップであることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
サブマウント又はステムと、
前記サブマウント又はステム上の半導体レーザチップと
を備えた半導体レーザキャリアを具備する、
波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、
前記半導体レーザキャリアは、前記サブマウント又はステムと、前記半導体レーザチップとの間に、熱伝導調整板を更に備えるとともに、
前記熱伝導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、前記半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され、、
前記半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザであり、
前記熱伝導調整板は、InP系の材料またはコバールを主原料とする材料からなることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項3】
サブマウント又はステムと、
前記サブマウント又はステム上の半導体レーザチップと
を備えた半導体レーザキャリアを具備する、
波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、
前記半導体レーザキャリアは、前記サブマウント又はステムと、前記半導体レーザチップとの間に、熱歪緩衝板と、該熱歪緩衝板上の熱伝導調整板とを更に備えるとともに、
前記熱歪緩衝板は、窒化アルミを主原料とする材料から成り、
前記熱伝導調整板は、InP系の材料から成り、
前記熱伝導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、
前記半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され、
前記半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザチップであり、
前記熱伝導調整板の熱伝導率は、前記熱歪緩衝板の熱伝導率より小さく、
前記熱伝導調整板の熱膨張係数は、前記熱歪緩衝板の熱膨張係数と略同一であることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関し、具体的には、光通信や分光・計測等の分野で用いられる半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す。
図1に示すように、半導体レーザチップ1は、ヒートシンク2を介してサブマウント3上に搭載されている。このような半導体レーザチップ1と、ヒートシンク2と、サブマウント3とから成る半導体レーザキャリアは、多くの場合、電子冷却素子の上に搭載され、半導体レーザモジュールパッケージ内に実装される。
【0003】
半導体レーザチップ1は、発熱による温度上昇により光出力、発振閾値などの特性が劣化する傾向がある。従って、従来の半導体レーザチップ1の光通信システム等への応用においては、実装時に、いかに放熱を良くするかが設計上重要なポイントであった。そのため、ヒートシンク2及びサブマウント3の材料として、熱伝導性に優れた材料が用いられる。
【0004】
ヒートシンク2は、熱伝導性に優れるだけでなく、熱歪みに弱い半導体レーザチップ1を保護するための歪緩和材としても機能する必要がある。そのため、ヒートシンク2の材料として、熱伝導率が大きくかつ熱膨張係数が半導体レーザチップ1に近い材料を選ぶ必要がある。窒化アルミ、シリコン等が代表的な材料である。
【0005】
サブマウント3には、銅タングステン等の熱伝導性の良い材料が用いられる。
【0006】
一方、半導体レーザを分光用光源として用い、ガス分析計等に応用する波長可変レーザ吸光分光法(Tunable Diode Laser Spectroscopy(以下、TDLSと記す))(非特許文献1を参照)と呼ばれる技術が近年注目されている。
【0007】
図2は、TDLSの大まかな動作原理を説明するための説明図である。
【0008】
図2(a)に示すように、TDLSの装置は、レーザ光源4と、光検出器7とから構成される。レーザ光源4で発生したレーザ光5は、披検査物6が存在する領域を通過して光検出器7に到達する。
【0009】
図2(b)に示すように、TDLSでは、レーザ光源4の発振波長を繰り返し掃引する。掃引した波長範囲内に被検査物6の吸収線がある場合、光検出器7が受光するレーザ光の受光強度には、
図2(c)に示すように、被検査物6の吸収線に対応したディップが現れる。このディップの位置と深さにより、被検査物6のガス種と、濃度とを測定・分析するというのがTDLSの基本的な動作原理である。
【0010】
実際の応用では、
図2(b)のような鋸波の上に、より繰り返し周波数の高い正弦波を重畳させレーザを駆動し、受光した信号をロックイン検波する波長変調分光法(Wavelength Modulation Spectroscopy(以下、WMSと記す))又は周波数変調分光法(Frequency Modulation Spectroscopy)(非特許文献2を参照)と呼ばれる高感度化手法が多く用いられている。
【0011】
図2(b)の鋸波の繰り返し周波数は、データ収集時間に直結するので速い方が望ましい場合が多いが、典型的には1Hz程度である。WMSで重畳する正弦波の繰り返し周波数は前述の鋸波の繰り返し周波数と比べ十分速い必要があるが、典型的には10kHz程度の速度が多く使われている。
【0012】
波長を掃引する方法としては、半導体レーザチップの動作温度を掃引する方法と、半導体レーザチップに注入する電流を掃引する方法とがある。InP系のDFBレーザの場合、発振波長の温度係数δλ
T=dλ/dTは0.1nm/℃程度であるのに対し、発振波長の電流係数δλ
c=dλ/dIは、半導体レーザの構造等によっても異なるが、典型的には0.01nm/mA程度である。従って、温度で波長を掃引する場合は比較的大きな波長掃引幅を得ることが容易であるが、電流による掃引の場合、大きな波長掃引幅を得ることは一般的には難しい。
【0013】
しかしながら、温度による波長掃引は速度が遅く、典型的には一掃引あたり分単位の時間を要するという問題があるため、特殊な場合を除いてあまり利用されておらず、実際の応用においては、電流による波長掃引が使われることが多い。
【0014】
半導体DFBレーザの発振波長の電流係数δλ
cは、変調速度の関数である。MHz付近を境に低速領域では熱による効果が主体的となり、高速領域ではプラズマ効果が主体的となることが知られている(非特許文献3を参照)。本発明は、前述したTDLSへの応用を主たる目的としているので、変調速度としては数十kHz程度以下の低速領域が重要である。従って、以下、本明細書中で記す発振波長の電流係数δλ
cは、熱による効果が主体的な低速領域における電流係数を示すものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】M. G. Allen, "Diode laser absorption sensors for gas-dynamic and combustion flows", Measurement Science and Technology, 9(4), pp. 545-562 (1998).
【非特許文献2】G. C. Bjorklund, "Frequency-modulation spectroscopy: a new method for measuring weak absorption and dispersion," Opt. Lett. 5(1), pp. 15-17 (1980).
【非特許文献3】M. Fukuda, T. Mishima, N. Nakayama, and T. Masuda, "Temperature and current coefficients of lasing wavelength in tunable diode laser spectroscopy," Appl. Phys. B, 100, pp. 377-382 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
半導体レーザモジュールのTDLSへの応用においては、例えば、複数の吸収線を一度の掃引で測定したい場合など、波長掃引幅を広く取りたい、すなわちδλ
cの大きな半導体レーザ光源が欲しいというケースが多々生じる。δλ
cの大きな半導体レーザ光源を作ることについては、共振器長を短くする、結晶構造を変えるなどの半導体レーザチップの構造を見直すことにより、ある程度対応することは可能である。しかし、δλ
cを大きくするためのチップ構造の見直しは、光出力の低下など他の電気光学的特性の著しい劣化を伴うことが多いため、一つの構造にラインナップを絞り込むことが難しい。光出力を優先したい場合、出力を犠牲にしてでも掃引波長幅を優先したい場合など、ニーズごとに最適化した複数の種類の半導体レーザチップを用意することが必要になり、製造コストや在庫管理コストが著しく増大するという問題がある。
【0017】
高速にかつ広い波長掃引幅を得る方法として、DBRレーザなどを用いる方法も考えられる。しかしながら、DBRレーザはモードホップしやすい等の問題があり、制御が難しい上に、TDLS応用で必要とされる波長などの電気光学的特徴を満足することが現時点では困難であるため、現実的な解決策ではない。TDLS応用で広く使われており、制御性、信頼性に優れた半導体DFBレーザを用いながら、かつ、δλ
cを大きくする方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、サブマウント又はステムと、ヒートシンクと、半導体レーザチップとを含み、前記半導体レーザチップが前記ヒートシンクを介して前記サブマウント又はステム上に配置されている半導体レーザキャリアと、前記サブマウント又はステムと、前記ヒートシンクとの間に設けられた熱伝導調整板とを備え、前記熱伝導調整板は、前記ヒートシンクの材料の熱伝導率より小さい熱伝導率を有する
アルミナ又はコバールを主原料とする材料から成り、前記熱伝
導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、前記半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され
、半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザチップであることを特徴とする。
【0020】
本発明は、サブマウント又はステムと、サブマウント又はステム上の半導体レーザチップとを備えた半導体レーザキャリアを具備する
、波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、半導体レーザキャリアは、サブマウント又はステムと、半導体レーザモジュールとの間に、熱伝導調整板を更に備えるとともに、熱伝導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され、半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザであり、熱伝導調整板は、InP系の材料またはコバールを主原料とする材料からなることを特徴とする。
【0022】
本発明は、サブマウント又はステムと、サブマウント又はステム上の半導体レーザチップとを備えた半導体レーザキャリアを具備する
、波長可変レーザ吸光分光法に用いる半導体レーザモジュールであって、半導体レーザキャリアは、サブマウント又はステムと、半導体レーザチップとの間に、熱歪緩衝板と、該熱歪緩衝板上の熱伝導調整板とを更に備えるとともに、
熱歪緩衝板は、窒化アルミを主原料とする材料から成り、熱伝導調整板はInP系の材料から成り、熱伝導調整板の厚さおよび/または面積は、発振波長の電流係数を大きくしつつ、半導体レーザチップにより生じる熱の放熱を抑制するように設定され、
半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザチップであり、熱伝導調整板の熱伝導率は、熱歪緩衝板の熱伝導率より小さく、熱伝導調整板の熱膨張係数は、熱歪緩衝板の熱膨張係数と略同一であることを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態において、半導体レーザチップは、InP系のDFBレーザチップであり、熱伝導調整板は、InP系の材料から成り、熱歪緩衝板は、窒化アルミを主原料とする材料から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、半導体レーザチップからの放熱を抑制することが可能となるため、同一構造の半導体レーザチップを従来の方法で実装した場合よりも、発振波長の電流係数δλ
cが大きな半導体レーザモジュールを作製することが可能となる。
【0025】
また、熱伝導調整板の大きさや厚みを変えることにより、熱伝導を細かく制御することができるため、光出力などの他の電気光学的特性に著しい劣化を及ぼさない範囲で、所望のδλ
cが得られるような設計が可能となり、複数の種類の半導体レーザチップを用意する必要がなくなる。
【0026】
光出力などの基本的な電気光学的特性に優れた構造の一種類の半導体レーザチップを使って、δλ
cの異なる半導体レーザモジュールを作製することができるので、製造コスト、在庫管理コストを著しく増大させることなく、多彩なニーズに適合した複数種類の半導体レーザモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来の半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【
図2】TDLSの動作原理を説明するための説明図であり、(a)はTDLSの構成の模式図であり、(b)は光源の駆動方法(時間と、波長との関係)を説明する図であり、(c)は光検出器が受光する受光強度を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【
図6】Can形半導体レーザモジュールの実装形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図3は、本実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【0030】
図3に示すように、本実施形態に係る半導体レーザキャリアは、サブマウント11と、サブマウント11上の熱伝導調整板10と、熱伝導調整板10上のヒートシンク9と、ヒートシンク9上の半導体レーザチップ8とから構成される。半導体レーザチップ8は、ヒートシンク9、熱伝導調整板10を介してサブマウント11に搭載されている。
【0031】
半導体レーザチップ8にはInP系のDFBレーザチップを用いた。ヒートシンク9の材料にはInPと熱膨張係数が近く、熱伝導に優れた窒化アルミを用いた。熱伝導調整板10の材料には熱伝導率が窒化アルミと比べ1桁小さいアルミナを主原料とする材料を用いた。サブマウント11は熱伝導性に優れた銅タングステンから成る。なお、導電性をとるため、また半田など工程上の都合によりヒートシンク9、及び熱伝導調整板10に用いた窒化アルミ、アルミナの表面にはメタライズ処理が施されている。
【0032】
図3に示す半導体レーザキャリアを用いて作製した半導体レーザモジュールは、熱伝導率が低い熱伝導調整板の効果により、
図1に示した従来の構造の半導体レーザキャリアを用いて作製した半導体レーザモジュールと比べ、半導体レーザチップで発生した熱の放熱が抑制されるため、発振波長の電流係数δλ
cが大きくなる。また、熱伝導調整板の厚さを厚くする、若しくは面積を小さくすると放熱の抑制効果がより高くなるため、δλ
cはより大きくなる。
【0033】
放熱の抑制は一方で、光出力の低下などの電気光学的特性の劣化の要因にもなる。しかしながら、本発明による半導体レーザキャリアを利用すると、熱伝導調整板の厚さや面積を適切に設定することにより、放熱の抑制効果を細かく調整することができる。よって、トレードオフの関係にある大きなδλ
cと光出力等の電気光学的特性を、個別のニーズ毎に適切に設計することが可能となる。
【0034】
熱伝導調整板の材料は、前述したアルミナに限られずヒートシンク材料よりも熱伝導率が低い様々な材料を用いることができるが、熱伝導調整板材料の熱伝導率と、ヒートシンク材料の熱伝導率との差が大きいほど放熱抑制の効果は高くなる。アルミナ以外の材料では、例えばコバールは、アルミナと同程度の熱伝導率を有し、熱膨張係数も典型的なヒートシンク材料である窒化アルミに近くかつ典型的なサブマウント材料である銅タングステンにも近いため、アルミナと同等の効果が得られる有用な材料である。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る半導体レーザキャリアは、サブマウント14と、サブマウント14上の熱伝導調整板13と、熱伝導調整板13上の半導体レーザチップ12とから構成される。本実施形態では、
図1に示した従来構造の半導体レーザキャリアのヒートシンク2の代わりにヒートシンク材料よりも熱伝導率の小さいInP系やコバールを主原料とする材料から成る熱伝導調整板13を用いる。また、半導体レーザチップ12にはInP系のDFBレーザチップを用いる。
【0037】
半導体レーザチップ12の直下に熱伝導調整板13があるため、
図3に示した第1の実施形態よりも半導体レーザチップで発生する熱の放熱抑制効果が高く、部品数・工数をより少なくすることができるという利点がある。
【0038】
熱伝導調整板13の厚さや面積を適切に設定することにより、放熱の抑制効果を細かく調整し、δλ
cに関して個別のニーズ毎に合った適切な設計をすることが可能であることは第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態に係る構造は、熱伝導調整板13にInPを用いた場合は、熱伝導調整板13と、サブマウント14との間に若干の熱膨張係数の差が生じ、熱伝導調整板13にコバールを用いた場合は、半導体レーザチップ12と、熱伝導調整板13との間に若干の熱膨張係数の差が生じるため、窒化アルミのヒートシンクを用いる場合と比べ、InPに大きな熱歪がかかることが場合によっては問題になる。
【0039】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態に係る、半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザキャリアの構造を示す斜視図である。
【0040】
図5に示すように、本実施形態に係る半導体レーザキャリアは、サブマウント18と、サブマウント18上の熱歪緩衝板17と、熱歪緩衝板17上の熱伝導調整板16と、熱伝導調整板16上の半導体レーザチップ15とから構成される。本実施形態においては、InP系の半導体レーザチップ15は、InP系の材料から成る熱伝導調整板16に接合され、熱伝導調整板16と、サブマウント18との間に窒化アルミなどの材料から成る熱歪緩衝板17が配置される。また、半導体レーザチップ15にはInP系のDFBレーザチップを用いる。
【0041】
本実施形態に係る半導体レーザキャリアは、半導体レーザチップ15の直下に熱伝導調整板16が配置されているため、高い放熱抑制効果を有する。
【0042】
また、本実施形態に係る半導体レーザキャリアでは、熱伝導調整板16の材料InPとほぼ同じ熱膨張係数を持つ窒化アルミを主原料とする材料から成る熱歪緩衝板17を用いることにより熱歪の問題を解決する。熱伝導調整板16の厚さや面積を適切に設定することにより、放熱の抑制効果を細かく調整し、δλ
cに関して個別のニーズ毎に合った適切な設計をすることが可能であることは前述の実施形態と同様である。
【0043】
(第4の実施形態)
上述の第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る半導体レーザキャリアを具備するような半導体レーザモジュールは、基本的には電子冷却素子を内蔵した形態の半導体レーザモジュールである。しかし、
図6に示すような、電子冷却素子を内蔵しないCan形パッケージも半導体レーザモジュールの実装形態として広く使われている。
【0044】
図6に示す半導体レーザモジュールは、半導体レーザチップ19と、ヒートシンク20と、ステム21と、窓23を有するキャップ22と、ピン24とから構成されている。このタイプの半導体レーザモジュールは、通常、外付けの電子冷却素子上に搭載して使われる。半導体レーザチップ19で発生する熱は、ヒートシンク20、ステム21を介して外付けの電子冷却素子に放熱される。すなわち、
図6のステム21は、
図1におけるサブマウント3と放熱という意味では全く同じ役割を担っている。よって、第1乃至第3の実施形態のサブマウントをステムと読み替えれば、全く同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体レーザチップ
2 ヒートシンク
3 サブマウント
4 レーザ光源
5 レーザ光
6 被検査物
7 光検出器
8 半導体レーザチップ
9 ヒートシンク
10 熱伝導調整板
11 サブマウント
12 半導体レーザチップ
13 熱伝導調整板
14 サブマウント
15 半導体レーザチップ
16 熱伝導調整板
17 熱歪緩衝板
18 サブマウント
19 半導体レーザチップ
20 ヒートシンク
21 ステム
22 キャップ
23 窓
24 ピン