特許第5774141号(P5774141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774141
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】新規な化合物半導体及びその活用
(51)【国際特許分類】
   C01B 19/00 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 31/06 20120101ALI20150813BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20150813BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20150813BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150813BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20150813BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C01B19/00 Z
   H01L31/06
   H01L35/16
   H01L35/34
   B22F1/00 J
   C22C12/00
   B22F5/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-557658(P2013-557658)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-516899(P2014-516899A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】KR2012003255
(87)【国際公開番号】WO2012148198
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0040401
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0043839
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョル−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ−フン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−199006(JP,A)
【文献】 特表2011−513986(JP,A)
【文献】 特表2012−527401(JP,A)
【文献】 特表2009−514195(JP,A)
【文献】 特開2009−253301(JP,A)
【文献】 特表2008−500451(JP,A)
【文献】 特表2007−523998(JP,A)
【文献】 Jae-Yong Jung, et al ,Materials Chemistry and Physics,2008年,108,p.431-434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 19/00、19/04
H01L 31/04−31/06,600
H01L 35/16
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物半導体。
【化3】
上記化学式1において、0<x≦0.5であり、0.9<z≦1.75である。
【請求項2】
上記化学式1のxは、0<x≦0.4であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項3】
上記化学式1のxは、0<x≦0.25であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物半導体。
【請求項4】
上記化学式1のzは、1.0≦z≦1.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物半導体。
【請求項5】
上記化学式1のzは、z=1.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物半導体。
【請求項6】
In、Co及びSbを含む原料を混合して混合物を形成するステップと、
上記混合物を400℃ないし600℃で1次熱処理するステップと、
上記1次熱処理された物質にTeを追加して請求項1に記載の化学式1に対応する組成を有する混合物を形成するステップと、
上記Teが追加された混合物を600℃ないし800℃で2次熱処理するステップと、
を含む請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物半導体を含む熱電変換素子。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物半導体を含む太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、熱電材料などの用途として使用できる新規な化合物半導体物質及びその製造方法、ならびにこれを利用した用途に関する。
【0002】
本出願は、2011年4月28日出願の韓国特許出願第10−2011−0040401号および2012年4月26日出願の韓国特許出願第10−2012−0043839号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
化合物半導体とは、シリコンやゲルマニウムのような単一元素ではない、2種以上の元素が結合して半導体として動作する化合物である。このような化合物半導体は、現在多様な種類が開発され多様な分野で使われている。代表的に、ペルティエ効果(Peltier Effect)を利用した熱電変換素子、光電変換効果を利用した発光ダイオードやレーザーダイオードなどの発光素子、太陽電池などに化合物半導体が利用できる。
【0004】
この中で熱電変換素子は、熱電変換発電や熱電変換冷却などに使用でき、このうち熱電変換発電は、熱電変換素子に温度差を設けることで発生する熱起電力を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電形態である。
【0005】
このような熱電変換素子のエネルギー変換効率は、熱電変換材料の性能指数であるZTに依存する。ここで、ZTは、ゼーベック(Seebeck)係数、電気伝導度、及び熱伝導度などによって決定され、さらに具体的には、ゼーベック係数の二乗及び電気伝導度に比例し、熱伝導度に反比例する。従って、熱電変換素子のエネルギー変換効率を高めるためには、ゼーベック係数または電気伝導度が高いか、熱伝導度の低い熱電変換材料の開発が必要である。
【0006】
一方、太陽電池は、自然に存在する太陽光以外に別途のエネルギー源を必要としないという点で環境にやさしいことから、未来の代替エネルギー源として盛んに研究されている。太陽電池は、主に、シリコンの単一元素を使用するシリコン太陽電池、化合物半導体を使用する化合物半導体太陽電池、そして、相異なるバンドギャップエネルギー(band gap energy)を持つ太陽電池を2つ以上積層した積層型(tandem)太陽電池などに大別される。
【0007】
このうち化合物半導体太陽電池は、太陽光を吸収して電子‐正孔対を生成する光吸収層に化合物半導体を使用するが、特にGaAs、InP、GaAlAs、GaInAsなどのIII‐V族化合物半導体、CdS、CdTe、ZnSなどのII‐VI族化合物半導体、CuInSe2に代表されるI‐III‐VI族化合物半導体などが使用できる。
【0008】
太陽電池の光吸収層は、長期的な電気、光学的安定性に優れており、光電変換効率が高く、組成の変化やドーピングによってバンドギャップエネルギーや導電型が調節しやすいことなどが求められる。また、実用化のためには、製造コストや歩留まりなどの要件も満たすべきである。しかし、従来の多くの化合物半導体はこのような要件をすべて満たしてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、上述のような問題点を解決するために創案されたものであって、熱電変換素子の熱電変換材料、太陽電池などのように多様な用途として活用できる新規な化合物半導体物質及びその製造方法、ならびにこれを利用した熱電変換素子や太陽電池などを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、後述する説明により理解することができ、本発明の実施例を通じて一層明確に分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は特許請求の範囲に示した手段及びその組合せによって実現することができることは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような目的を達成するために、本発明者は、化合物半導体に関して研究を重ねた結果、下記化学式1で表される化合物半導体を合成することに成功し、この化合物が熱電変換素子の熱電変換材料や太陽電池の光吸収層などに使用できることを確認して本発明を完成した。
【0012】
【化1】
【0013】
上記化学式1において、0<x≦0.5であり、0.8<z≦2である。
【0014】
好ましくは、上記化学式1において、0<x≦0.4である。
【0015】
また好ましくは、上記化学式1において、0.9<z≦2である。
【0016】
また好ましくは、上記化学式1において、0.9<z≦1.75である。
【0017】
さらに好ましくは、上記化学式1において、1.0≦z≦1.5である。
【0018】
また、上述のような目的を達成するための本発明による化合物半導体の製造方法は、In、Co、Sb、及びTeを混合するステップと、上記混合ステップで形成された混合物を熱処理するステップとを含む上記化学式1で表示される化合物半導体を製造する方法である。
【0019】
好ましくは、上記化合物半導体の製造方法で、熱処理温度は、400℃ないし800℃である。
【0020】
また好ましくは、上記熱処理ステップは、2つ以上の熱処理段階を含み得る。
【0021】
また、上述のような目的を達成するための本発明による熱電変換素子は、上述した化合物半導体を含む。
【0022】
また、上述のような目的を達成するための本発明による太陽電池は、上述した化合物半導体を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規な化合物半導体物質が提供される。
【0024】
本発明の一側面によれば、このような新規な化合物半導体は、従来の化合物半導体を代替するか、従来の化合物半導体に加えて新しい一つの素材として使用できる。
【0025】
さらに、本発明の一側面によれば、化合物半導体の熱電変換性能が良好であることから熱電変換素子に有効に利用できる。
【0026】
また、本発明の他の側面によれば、化合物半導体は、太陽電池に利用できる。特に、本発明による化合物半導体は、太陽電池の光吸収層として利用できる。
【0027】
それだけでなく、本発明のまた他の側面によれば、化合物半導体は、赤外線を選択的に通過させる赤外線窓(IR window)や赤外線センサー、マグネチック素子、メモリーなどにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書に添付される下記の図面は本発明の好ましい実施例を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
図1】本発明に従って製造した実施例及び比較例の化合物半導体の温度変化による熱伝導度値を示すグラフである。
図2】本発明に従って製造した実施例及び比較例の化合物半導体の温度変化によるZT値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0030】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0031】
本発明は、次のような化学式1で表示される新規な化合物半導体を提供する。
【0032】
【化2】
【0033】
上記化学式1において、0<x≦0.5であり、0.8<z≦2である。
【0034】
好ましくは、上記化学式1において、xは、0<x≦0.4の条件を満たしてもよい。
【0035】
さらに好ましくは、上記化学式1において、xは、0<x≦0.25の条件を満たしてもよい。
【0036】
このとき、xは、0.25であり得る。この場合、上記化学式1は、In0.25Co4Sb12-zTezで表現できる。ここで、0.8<z≦2である。
【0037】
また好ましくは、上記化学式1において、zは、0.9<z≦2の条件を満たしてもよい。
【0038】
さらに好ましくは、上記化学式1において、zは、0.9<z≦1.75の条件を満たしてもよい。
【0039】
さらに好ましくは、上記化学式1において、zは、1.0≦z≦1.5の条件を満たしてもよい。
【0040】
特に、上記化学式1において、zは、1.5であることが好ましい。
【0041】
一方、上記化学式1で表示される化合物半導体には、二次相が一部含まれ得、その量は熱処理条件によって変わり得る。
【0042】
本発明による上記化学式1の化合物半導体の製造方法は、In、Co、Sb、及びTeを含む混合物を形成するステップと、このような混合物を熱処理するステップとを含み得る。
【0043】
このとき、上記混合物の形成ステップで混合される各原料は、粉末形態であり得るが、本発明が必ずこのような混合原料の特定の形態によって制限されるのではない。
【0044】
好ましくは、上記熱処理ステップは、真空中、または水素を一部含んでいるか、水素を含んでいないAr、He、N2などの気体を流しながら行われ得る。
【0045】
このとき、熱処理温度は、400℃ないし800℃であり得る。好ましくは、上記熱処理温度は、450℃ないし700℃であり得る。さらに好ましくは、上記熱処理温度は、500℃ないし650℃であり得る。
【0046】
一方、上記熱処理ステップは、2つ以上の熱処理段階を含み得る。例えば、上記混合物を形成するステップ、すなわち、原料を混合するステップで形成された混合物に対して、第1温度で1次熱処理を行った後、第2温度で2次熱処理を行うこともできる。
【0047】
この場合、上記複数の熱処理段階のうち一部の熱処理段階は、原料を混合する上記混合物の形成ステップで行われ得る。
【0048】
例えば、上記熱処理ステップは、1次熱処理段階、2次熱処理段階、及び3次熱処理(焼結)段階の3つの熱処理段階を含み得る。そして、1次熱処理段階は、400℃ないし600℃の温度範囲で行われ得、2次熱処理段階及び3次熱処理段階は、600℃ないし800℃の温度範囲で行われ得る。このとき、1次熱処理段階は、原料が混合される混合物の形成ステップ中に行われ、2次熱処理段階及び3次熱処理段階は、前記混合物形成ステップの後に順次行われ得る。
【0049】
本発明による熱電変換素子は、上述した化合物半導体を含む。すなわち、本発明による化合物半導体は、熱電変換素子の熱電変換材料として利用され得る。特に、本発明による化合物半導体は、熱電変換材料の性能指数であるZTが大きい。また、熱伝導度が低く、ゼーベック係数及び電気伝導度が大きいことから、熱電変換性能に優れている。したがって、本発明による化合物半導体は、従来の熱電変換材料を代替するか、従来の化合物半導体に加えて熱電変換素子に有効に使用され得る。
【0050】
また、本発明による太陽電池は、上述した化合物半導体を含む。すなわち、本発明による化合物半導体は、太陽電池、特に太陽電池の光吸収層として使用され得る。
【0051】
太陽電池は、太陽光が入射される方から順次、前面透明電極、バッファー層、光吸収層、背面電極、及び基板などが積層された構造で製造し得る。最も下に位置する基板は、ガラスで形成され得、その上に全面的に形成される背面電極は、Moなどの金属を蒸着することで形成できる。
【0052】
次いで、背面電極の上部に本発明による化合物半導体を、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル(sol‐gel)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)などの方法で積層することで、上記光吸収層を形成することができる。このような光吸収層の上部には、前面透明電極として使われるZnO層と光吸収層との間の格子定数の差異及びバンドギャップの差異を緩衝するバッファー層とが存在し得、このようなバッファー層は、CdSなどの材料をCBD(Chemical Bath Deposition)などの方法で蒸着することで形成できる。次いで、バッファー層の上にZnOや、ZnO及びITOの積層膜として前面透明電極がスパッタリングなどの方法で形成できる。
【0053】
本発明による太陽電池は、多様な変形が可能である。例えば、本発明による化合物半導体を光吸収層として使った太陽電池を積層した積層型太陽電池を製造し得る。そして、このように積層された他の太陽電池は、シリコンや他の知られた化合物半導体を利用した太陽電池を使用し得る。
【0054】
また、本発明の化合物半導体のバンドギャップを変化させることで、相異なるバンドギャップを持つ化合物半導体を光吸収層として使用する複数の太陽電池を積層し得る。本発明による化合物半導体のバンドギャップは、この化合物をなす構成元素、特にTeの組成比を変化させることで調節し得る。
【0055】
また、本発明による化合物半導体は、赤外線を選択的に通過させる赤外線窓や赤外線センサーなどにも使用し得る。
【0056】
以下、本発明をさらに具体的に説明するために実施例及び比較例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多様な形態に変形され得、本発明の範囲が下記実施例に限定されると解釈されてはいけない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるのである。
【0057】
[実施例1]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢(mortar)を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0058】
次いで、In0.25Co4Sb11に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb11Te1混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0059】
このように混合された材料は、石英管(silica tube)の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、In0.25Co4Sb11Te1粉末を得た。
【0060】
このように合成された実施例の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0061】
焼結した円板に対して、TC‐7000(Ulvac‐Rico,Inc)を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度(κ)を所定の温度間隔で測定し、その結果を実施例1として図1に示した。
【0062】
焼結した円柱に対して、ZEM‐3(Ulvac‐Rico,Inc)を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を実施例1として図2に示した。
【0063】
[実施例2]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb10及びIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0064】
次いで、In0.25Co4Sb10に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb10Te2混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb11と適切に混合して、In0.25Co4Sb10.75Te1.25混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0065】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、In0.25Co4Sb10.75Te1.25粉末を得た。
【0066】
このように合成された実施例の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0067】
焼結した円板に対して、TC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を実施例2として図1に示した。
【0068】
焼結した円柱に対して、ZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を実施例2として図2に示した。
【0069】
[実施例3]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb10及びIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0070】
次いで、In0.25Co4Sb10に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb10Te2混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb11試薬と適切に混合して、In0.25Co4Sb10.5Te1.5混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0071】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、In0.25Co4Sb10.5Te1.5粉末を得た。
【0072】
このように合成された実施例の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0073】
焼結した円板に対して、TC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を実施例3として図1に示した。
【0074】
焼結した円柱に対して、ZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を実施例3として図2に示した。
【0075】
[実施例4]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb10組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0076】
次いで、In0.25Co4Sb10に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb10Te2混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0077】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、In0.25Co4Sb10Te2粉末を得た。
【0078】
このように合成された材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0079】
焼結した円板に対して、TC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を実施例4として図1に示した。
【0080】
焼結した円柱に対して、ZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を実施例4として図2に示した。
【0081】
[比較例1]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb12組成の混合物をペレットの形態で製作した。
【0082】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例1の材料としてIn0.25Co4Sb12粉末を得た。
【0083】
このように合成された比較例1の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英官に入れ12時間真空焼結した。
【0084】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例1として図1に示した。
【0085】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例1として図2に示した。
【0086】
[比較例2]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb12及びIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0087】
次いで、In0.25Co4Sb11に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb11Te1混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb12と適切に混合して、In0.25Co4Sb11.75Te0.25混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0088】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例2の材料としてIn0.25Co4Sb11.75Te0.25粉末を得た。
【0089】
このように合成された比較例2の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英官に入れ12時間真空焼結した。
【0090】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例2として図1に示した。
【0091】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例2として図2に示した。
【0092】
[比較例3]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb12及びIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0093】
次いで、In0.25Co4Sb11に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb11Te1混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb12と適切に混合して、In0.25Co4Sb11.5Te0.5混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0094】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例3の材料としてIn0.25Co4Sb11.5Te0.5粉末を得た。
【0095】
このように合成された比較例3の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英官に入れ12時間真空焼結した。
【0096】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例3として図1に示した。
【0097】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例3として図2に示した。
【0098】
[比較例4]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb12及びIn0.25Co4Sb11組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0099】
次いで、In0.25Co4Sb11に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb11Te1混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb12と適切に混合して、In0.25Co4Sb11.25Te0.75混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0100】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例4の材料としてIn0.25Co4Sb11.25Te0.75粉末を得た。
【0101】
このように合成された比較例4の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0102】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例4として図1に示した。
【0103】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例4として図2に示した。
【0104】
[比較例5]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb9及びIn0.25Co4Sb10組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0105】
次いで、In0.25Co4Sb9に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb9Te3混合物を製作した。そして、これをIn0.25Co4Sb10と適切に混合して、In0.25Co4Sb9.5Te2.5混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0106】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例5の材料としてIn0.25Co4Sb9.5Te2.5粉末を得た。
【0107】
このように合成された比較例5の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0108】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例5として図1に示した。
【0109】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例5として図2に示した。
【0110】
[比較例6]
試薬として、In、Co、及びSbを用意し、これらを乳鉢を利用してよく混合してIn0.25Co4Sb9組成の混合物をペレットの形態で製作した。そして、H2(1.94%)及びN2ガスを流しながら500℃で15時間加熱し、このとき昇温時間は1時間30分にした。
【0111】
次いで、In0.25Co4Sb9に試薬としてTeを追加してIn0.25Co4Sb9Te3混合物を製作した。混合物は、Arが充填されたビニールパックの中で調製した。
【0112】
このように混合された材料は、石英管の中に入れ真空密封して650℃で36時間加熱し、昇温時間は1時間30分にして、比較例6の材料としてIn0.25Co4Sb9Te3粉末を得た。
【0113】
このように合成された比較例6の材料の一部を直径4mm、長さ15mmの円柱に成形し、他の一部を直径10mm、厚さ1mmの円板に成形した後、CIPを使って200MPaで圧力をかけた。次いで、得られた結果物を石英管に入れ12時間真空焼結した。
【0114】
そして、焼結した円板に対して、上記実施例と同じくTC‐7000を使って、上記のようにして調製した材料の熱伝導度を測定し、その結果を比較例6として図1に示した。
【0115】
焼結した円柱に対して、上記実施例と同じくZEM‐3を使って所定の温度間隔で、上記のようにして調製した材料の電気伝導度とゼーベック係数とを測定した。そして、上記測定されたそれぞれの値を利用してZT値を計算することで、その結果を比較例6として図2に示した。
【0116】
まず、図1の結果から、本発明による実施例1ないし4の化合物半導体は、比較例1ないし6の化合物半導体に比べて、温度測定区間の全体にわたって熱伝導度が低いことが分かる。
【0117】
さらに、実施例1ないし3において、zの範囲が1.0≦z≦1.5である場合、熱伝導度が大きく低くなり、特にz=1.5である実施例3の場合、熱伝導度が著しく低くなることが確認できる。
【0118】
また、図2の結果から、各材料に対するZT値を見てみれば、本発明による実施例1ないし4の化合物半導体のZT値が、比較例1ないし6の化合物半導体に比べて、温度の全体区間にわたって大きく向上したことが確認できる。
【0119】
さらに、実施例1ないし3を見れば、ZT値が著しく向上しており、特にz=1.5である実施例3の場合、ZT値が非常に高いことが分かる。
【0120】
以上、これらの結果を総合すれば、本発明の各実施例による実施例1ないし4の化合物半導体は、比較例1ないし6の従来の化合物半導体に比べて、熱伝導度が低く、ZT値が大きいことが分かる。従って、本発明の一実施例による化合物半導体は、熱電変換性能に優れていると言うことができ、熱電変換材料として非常に有効に利用できる。
【0121】
以上のように、本発明は、たとえ限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。
図1
図2