(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774582
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】半導体ウエハ上の液体メニスカスの物理的閉じ込めのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
H01L21/304 651H
H01L21/304 648Z
H01L21/304 643C
【請求項の数】28
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-513036(P2012-513036)
(86)(22)【出願日】2010年5月18日
(65)【公表番号】特表2012-528483(P2012-528483A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】US2010001495
(87)【国際公開番号】WO2010138166
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】12/475,466
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マグニ・エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】レンズ・エリック
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−524204(JP,A)
【文献】
特表2003−505881(JP,A)
【文献】
特開2006−041504(JP,A)
【文献】
特表2008−532269(JP,A)
【文献】
特開2006−073998(JP,A)
【文献】
特表2006−501693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ上で液体メニスカスを物理的に閉じ込めるための装置であって、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2の化学剤ヘッドを備え、
前記第1および第2の化学剤ヘッドの各々は、
液体化学剤をメニスカスポケット内に単相で供給するために前縁部に配置された傾斜流入導管であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの前記表面に供給された前記液体化学剤をメニスカスとして閉じ込めるために、前記第1および第2の化学剤ヘッドによって覆われた前記半導体ウエハの前記上側表面および前記下側表面の前記一部の上に規定される傾斜流入導管と、
前記液体化学剤を前記半導体ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2の化学剤ヘッドの後縁部に配置された内側回収導管と、
前記液体化学剤の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記第1および第2の化学剤ヘッドの前縁部に前記メニスカスポケットを取り囲むように形成され、前記液体化学剤を前記メニスカスポケット内に閉じ込めるのに寄与する少なくとも高さ0.3mm以上の段構造と
を備え、
前記傾斜流入導管は、前記段構造から離間されている装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記段構造は、前記メニスカスポケットの前縁部および両側部に沿って前記メニスカスポケットを部分的に閉じ込めるように設けられる装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、さらに、前記液体化学剤を単相で前記メニスカスポケット内に供給する少なくとも一列の傾斜流入導管と、前記液体化学剤を単相で除去するために前記メニスカスポケット内に配置された少なくとも一列の内側回収導管とを備える装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記第1の化学剤ヘッドおよび前記第2の化学剤ヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされている装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記第1の化学剤ヘッドおよび前記第2の化学剤ヘッドの前記段構造の前記壁の位置ずれは、略0.7mmから略6mmの間である装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドは、前記液体化学剤のための深いメニスカスポケットを提供するよう構成される装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、さらに、下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドに排液溝を備え、前記排液溝は、前記第2の化学剤ヘッドの前縁部に形成され、前記液体化学剤が前記半導体ウエハの表面上の前記メニスカスポケットからあふれた際に、当該あふれた前記液体化学剤を回収するよう構成される装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記傾斜流入導管および前記内側回収導管の間の表面は、前記液体化学剤による湿潤を向上させるようにパターン化される装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、さらに、第1および第2のリンスヘッドを備え、
前記第1および第2のリンスヘッドは、
前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2のリンスヘッドの前縁部に配置され、リンス剤を単相で前記メニスカスポケット内に供給するよう構成された傾斜流入導管であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの前記上側表面および前記下側表面の少なくとも一部を覆うよう規定される傾斜流入導管と、
前記リンス剤を前記ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2のリンスヘッドの後縁部に配置された内側回収導管と、
前記リンス剤の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記メニスカスポケットの外周の少なくとも一部に沿って前記第1および第2のリンスヘッドの前縁部に形成され、前記メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有する段構造と
を備え、
前記傾斜流入導管は、前記段構造から離間されている装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、前記第1および第2のリンスヘッドの各々は、さらに、前記リンス剤の前記メニスカスポケットの外周において前記第1および第2のリンスヘッドの後縁部に形成された外側回収導管を備え、前記外側回収導管は、前記リンス剤を前記メニスカスポケットの周囲の空気を含んだ二相の状態で除去することを可能にする装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置であって、前記第1および第2のリンスヘッドは、さらに、リンス完了後に前記半導体ウエハを実質的に乾燥させるために乾燥剤を供給するよう構成される装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、前記段構造の前記高さは、前記メニスカス内の前記液体化学剤の1または複数の動作制約の関数として算出され、前記動作制約は動的である装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記動作制約は、前記液体化学剤の圧力、温度、流量、化学組成、および、活性化エネルギの内の1または複数を含む装置。
【請求項14】
半導体ウエハ上に供給された液体メニスカスのメニスカスを物理的に閉じ込めるための方法であって、
傾斜流入導管を通して液体化学剤をメニスカスポケット内に供給する工程であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うよう規定されて、前記半導体ウエハの前記表面に供給された前記液体化学剤をメニスカスとして閉じ込め、前記傾斜流入導管は、液体化学剤を単相で前記メニスカスポケット内に斜めに供給するように、前記メニスカスポケットの前縁部に規定される工程と、
前記メニスカスポケットの前縁部に前記メニスカスポケットを取り囲むように形成され、前記液体化学剤を前記メニスカスポケット内に閉じ込めるのに寄与する少なくとも高さ0.3mm以上の段構造によって、前記液体化学剤のメニスカスの閉じ込め特性を維持する工程と、
前記メニスカスポケットの後縁部に設けられた内側回収導管を通して前記液体化学剤を単相で除去する工程と
を備える方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記傾斜流入導管を提供する工程は、さらに、前記メニスカスポケット内への前記液体化学剤の供給を可能にするように、前記メニスカスポケットの縁部の内側において前記段構造の近くの離間した位置に前記傾斜流入導管を設ける工程を含む方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、さらに、前記半導体ウエハの前記表面からあふれた液体化学剤を収集する工程と、前記収集した液体化学剤を前記半導体ウエハの前記表面の洗浄に再利用する工程とを備える方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、さらに、リンス剤を前記メニスカスポケット内に供給して前記半導体ウエハをリンスする工程を備え、前記リンス剤は、前記液体化学剤を供給する前記傾斜流入導管とは異なる第2の傾斜流入導管を通して供給される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、さらに、前記液体化学剤の回収を可能にするために、前記リンス剤メニスカスとは異なる前記液体化学剤メニスカスを維持する工程を備える方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、さらに、前記メニスカスポケットの前記後縁部の外周に設けられた外側回収導管を通して前記リンス剤を前記メニスカスポケットの周囲の空気を含んだ二相の状態で除去する工程を備える方法。
【請求項20】
半導体ウエハ上に供給された液体媒質のメニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムであって、
前記半導体ウエハを軸に沿って受けて、支持して、搬送するためのキャリア機構と、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2の化学剤ヘッドであって、化学洗浄中に前記第1および第2の化学剤ヘッドによって供給される第1の液体媒質を受け入れるためのメニスカスポケットを規定する第1および第2の化学剤ヘッドと、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2のリンスヘッドであって、前記化学洗浄後に前記半導体ウエハの前記表面を実質的にリンスするために第2の液体媒質を前記メニスカスポケット内に供給するよう構成された第1および第2のリンスヘッドと
を備え、
前記第1の化学剤ヘッド、前記第2の化学剤ヘッド、前記第1のリンスヘッド、および、前記第2のリンスヘッドの各々は、
前記第1または第2の液体媒質の一方を前記メニスカスポケット内に単相で供給するために、前記メニスカスポケットの内側で、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の前縁部に配置された傾斜流入導管と、
前記第1または第2の液体媒質の一方を前記ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の後縁部に配置された内側回収導管と、
前記第1または第2の液体媒質の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の前縁部に前記メニスカスポケットを取り囲むように形成され、前記第1または第2の液体媒質を前記メニスカスポケット内に閉じ込めるのに寄与する少なくとも高さ0.3mm以上の段構造と
を備え、
前記傾斜流入導管は、前記第1および第2の液体媒質を単相で供給することを可能にするために、前記段構造から離間されて前記メニスカスポケット内に向けられており、前記第1および第2の化学剤ヘッドによって供給される前記液体媒質は、前記ウエハの前記表面を実質的に洗浄するための液体化学剤であり、前記第1および第2のリンスヘッドによって供給される前記液体媒質は、前記化学洗浄後に前記ウエハ表面を実質的にリンスするためのリンス剤であるシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムであって、
前記第1および第2の化学剤ヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされており、
前記第1および第2のリンスヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2のリンスヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1のリンスヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされているシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムであって、前記第1および第2のリンスヘッドは、前記リンス剤を前記半導体ウエハから前記メニスカスポケットの周囲の空気を含んだ二相の状態で除去するよう構成された外側回収導管を備えるシステム。
【請求項23】
請求項20に記載のシステムであって、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドおよび前記第2のリンスヘッドの各々は、前縁部に形成され、前記半導体ウエハの前記表面上の前記メニスカスポケットからあふれた前記液体化学剤およびリンス剤を回収するよう構成された排液溝を備えるシステム。
【請求項24】
請求項20に記載のシステムであって、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤の前記メニスカスが別個に維持されるように1ユニットに統合されるシステム。
【請求項25】
請求項20に記載のシステムであって、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤の前記メニスカスが、前記液体化学剤および前記リンス剤に関連する動作制約に基づいて供給されうるように別個に維持されるシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムであって、前記動作制約は動的であり、温度、流量、密度、および、圧力の内の1または複数を含むシステム。
【請求項27】
請求項20に記載のシステムであって、下側に配置された前記化学剤ヘッドおよび前記リンスヘッドは、前記液体媒質のための深いメニスカスポケットを提供するよう構成されるシステム。
【請求項28】
請求項20に記載のシステムであって、前記半導体ウエハの上側に配置された前記化学剤ヘッドおよび前記リンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤による湿潤を向上させるようにパターン化された表面を前記傾斜流入導管と前記内側回収導管との間に備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、半導体ウエハの洗浄に関し、特に、洗浄処理中に半導体ウエハ表面に供給された液体メニスカスの物理的閉じ込めに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で周知のように、固体表面上に望ましくない残留物を残す製造動作を施される場合に固体表面(半導体ウエハなど)を洗浄および乾燥する必要がある。かかる製造動作の例としては、プラズマエッチング(例えば、デュアルダマシン用途のためのビアエッチングまたはトレンチエッチング)および化学機械研磨(CMP)が挙げられる。様々な洗浄処理が、メニスカスとして半導体ウエハに液体化学剤を供給する工程と、解放された汚染物質と共に液体化学剤を除去する工程とを備える。液体化学剤が半導体ウエハの表面から粒子状汚染物質を除去するよう機能できるように、半導体ウエハの表面上にメニスカスを維持することが重要である。従来の洗浄処理は、近接ヘッドを用いて、液体化学剤をウエハの片面または両面に供給し、大量の空気流によってメニスカスを閉じ込める。次いで、液体化学剤を引き込む吸引動作を施すために、真空が用いられる。大量の空気流を用いた液体化学剤の従来の閉じ込めには、特有の不利点がある。例えば、液体化学剤は、大量の空気流に暴露されるため、その結果、蒸発によって液体化学剤の実質的な損失が起きる。洗浄処理で用いられる液体化学剤のいくつかは、非常に高価であり、液体化学剤のいかなる損失も洗浄コストの増大につながる。
【0003】
従来の洗浄処理における液体化学剤の蒸発は、特に近接ヘッドを用いる場合に、深刻な問題となる。具体的には、近接ヘッドを通した高い周囲空気流のために、液体化学剤の蒸発損失を抑制するのは困難である。さらに、洗浄処理を向上させるために、高温(通例、約30℃から約60℃)で液体化学剤を導入するのが一般的である。液体化学剤の損失は、液体化学剤が高温で供給される場合、劇的に増加しうる。これは、蒸気圧が温度と共に指数関数的に増加し、蒸発は蒸気圧に正比例するために蒸発も増加するという事実によるものである。結果として、再利用のために回収できる液体化学剤の量は、劇的に減少する。
【0004】
検討すべき別の要因は、これらの液体化学剤の供給に用いられる従来の洗浄装置(化学剤ヘッドなど)に対して高温の液体化学剤が与える影響である。従来の洗浄装置のほとんどは、室温で最適に動作する。しかしながら、液体化学剤が高温であるために自然に生じる静的温度勾配が、これらの洗浄装置の変形を引き起こし、洗浄中に装置の動作不良につながる。
【0005】
メニスカスを閉じ込めるために空気を用いることのもう一つの不利点は、この大量の空気流の存在下で真空を生成するコストである。真空を生成するための設計要件は、洗浄のための効果的なツールを提供するために、この大量の空気流を考慮に入れなければならない。
【0006】
さらに、蒸発は、液体化学剤の化学的枯渇または濃度変化が原因で液体化学剤によって洗浄処理に著しい変化を引き起こす可能性がある。化学的枯渇は、周囲の空気流が高温の液体化学剤と混ざった結果として、空気および液体化学剤の成分で飽和した蒸気になり、液体化学剤を分離および回収することが困難になった場合に起きる。一方、化学剤の過剰な濃縮は、一般に、特許化学剤(proprietary chemistry)の利用によって生じる。特許化学剤は、不揮発性成分を含み、特許化学剤が水性である場合は、蒸発により、不揮発性成分の濃度が時間と共に増大する。不揮発性成分の濃度の増大は、液体化学剤の洗浄性能に悪影響を及ぼしうる。さらに、液体化学剤の濃度が高くなりすぎると、半導体ウエハに対して著しい損傷が起こりうる。
【0007】
以上の点から、液体メニスカスを閉じ込めるために空気流を利用しない代替的な方法が求められている。本発明の実施形態は、このような課題に対処するものである。
【発明の概要】
【0008】
概して、本発明は、これらの要求を満たすために、空気流を利用することなく、半導体ウエハに供給された液体媒質の閉じ込め特性を維持することができる洗浄機構を提供する。本発明は、処理、装置、または、システムなど、種々の形態で実施できることを理解されたい。以下では、本発明の実施形態をいくつか説明する。
【0009】
一実施形態では、半導体ウエハ上で液体媒質メニスカスを物理的に閉じ込めるための方法が提供されている。その方法は、半導体ウエハの表面上に規定されたメニスカスポケット内に液体化学剤を供給する工程を備える。メニスカスポケットは、第1および第2の化学剤ヘッドの間に規定される。液体化学剤は、第1および第2の化学剤ヘッドにそれぞれ設けられた傾斜した流入導管を通して単相でメニスカスポケット内に供給される。段構造が、メニスカスポケットの外周の少なくとも一部を覆うように設けられており、段構造の高さは、液体化学剤の閉じ込め特性を維持するのに十分な高さである。液体化学剤は、内側回収導管を通して除去される。内側回収導管は、液体化学剤を単相で半導体ウエハ表面から除去できるように、メニスカスポケットの内側で第1および第2の化学剤ヘッドの後縁部に規定される。
【0010】
別の実施形態では、半導体ウエハ上に供給された液体媒質を物理的に閉じ込めるための装置が提供されている。その装置は、半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2の化学剤ヘッドを備える。第1および第2の化学剤ヘッドの各々は、液体化学剤をメニスカスポケット内に単相で供給するために、それぞれの化学剤ヘッドの前縁部に傾斜した流入導管を備える。メニスカスポケットは、化学剤ヘッドによって覆われた半導体ウエハの上面および下面の部分の上に規定される。メニスカスポケットは、半導体ウエハの表面に供給された液体化学剤を受け入れて、メニスカスとして閉じ込めるよう構成される。液体化学剤のメニスカスをメニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、段構造が、メニスカスポケットの外周に沿って第1および第2の化学剤ヘッドの前縁部に形成される。段構造は、メニスカスポケットの少なくとも一部が段構造によって覆われるように規定されており、段構造の高さは、メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さである。内側回収導管が、メニスカスポケットの内側でそれぞれの化学剤ヘッドの後縁部に配置される。内側回収導管は、洗浄処理後に液体化学剤を半導体ウエハの表面から単相で除去するために用いられる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態では、半導体ウエハ上に供給された液体媒質のメニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムが提供されている。そのシステムは、半導体ウエハを軸に沿って受けて、支持して、搬送するためのキャリア機構を備える。第1および第2の化学剤ヘッドが、半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置される。第1および第2の化学剤ヘッドは、化学洗浄中に第1および第2の化学剤ヘッドによって供給された液体媒質を受け入れるようにメニスカスポケットを規定する。第1および第2のリンスヘッドが、半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置される。第1および第2のリンスヘッドは、化学洗浄後に半導体ウエハの表面を実質的にリンスするために、リンスヘッドによって覆われたウエハの部分の上に規定されたメニスカスポケット内にリンス剤を供給するよう構成される。第1の化学剤ヘッド、第2の化学剤ヘッド、第1のリンスヘッド、および、第2のリンスヘッドの各々は、液体化学剤またはリンス化学剤のいずれかを単相でメニスカスポケット内に供給するための傾斜した流入導管を備える。傾斜した流入導管は、メニスカスポケットの内側で、対応する化学剤ヘッドまたはリンスヘッドの前縁部に配置される。液体化学剤およびリンス剤のメニスカスをメニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、段構造が、メニスカスの外周に沿って、対応する化学剤ヘッドまたはリンスヘッドの前縁部に形成される。段構造は、メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有するように規定される。液体化学剤またはリンス剤のいずれかをウエハの表面から除去するための内側回収導管が、それぞれ、化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々に設けられる。内側回収導管は、液体化学剤またはリンス剤を半導体ウエハの表面から単相で除去できるように、メニスカスポケットの内側で、対応する化学剤ヘッドまたはリンスヘッドの後縁部に配置される。各ヘッドにおける傾斜した流入導管は、液体化学剤およびリンス剤をメニスカスポケット内に単相で供給することを可能にするように、段構造の近くに離間して規定され、メニスカスポケットに向かって方向付けられる。
【0012】
上記の機構を利用する利点は、メニスカスを閉じ込めるための空気流を実質的に低減または排除できることを含む。閉じ込めの際に空気流を利用しないことで、蒸発によって失われていた液体化学剤を保存することができる。この処理によると、液体メニスカスの閉じ込め特性およびその他の特性を維持するためのより簡単な調整が可能になる。液体化学剤の特性を維持することにより、ウエハに大きな損傷を与えることなく、最適な化学洗浄を実現することができる。さらに、この機構によると、高価な液体化学剤を回収して再利用することが可能になるため、コスト効率のよい効率的な洗浄方法が実現される。
【0013】
本発明のその他の態様および利点については、本発明の原理を例示した添付図面に沿って行う以下の詳細な説明によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面を参照して行う以下の詳細な説明から、本発明を容易に理解することができる。説明を容易にするために、同じ符号は、同じ構造要素を示している。
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態において、半導体ウエハ上の液体メニスカスを閉じ込めるために用いられる化学剤ヘッドを示す簡略な断面図。
【0016】
【
図2】本発明の別の実施形態において、液体メニスカスを閉じ込めるために用いられる閉じ込め化学剤ヘッドの様々な構成要素を示す断面図。
【
図2A】液体メニスカスの平面に垂直に配置された流入導管を備えた化学剤ヘッドの別の実施形態を示す説明図。
【0017】
【
図3】本発明の一実施形態において、半導体ウエハ上に配置された液体メニスカスの物理的閉じ込めを実現するために用いられるリンスヘッドを示す簡略な断面図。
【
図3A】液体メニスカスの平面に垂直に配置された流入導管を備えたリンスヘッドの別の実施形態を示す説明図。
【0018】
【
図4】本発明の一実施形態において、半導体ウエハ上に配置された液体メニスカスの物理的閉じ込めを実現するために用いられる閉じ込めリンスヘッドの様々な構成要素を示す断面図。
【0019】
【
図5】本発明の一実施形態において、メニスカスの曲率に対する圧力の影響を示す説明図。
【0020】
【
図6】本発明の一実施形態において、メニスカス層における圧力変動を考慮した閉じ込め壁の外側の正確な段構造の高さを示す説明図。
【0021】
【
図7】本発明の一実施形態において、半導体ウエハに供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムを示す簡略なブロック図。
【0022】
【
図8】本発明の一実施形態において、半導体ウエハに供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるための動作を示すフローチャート。
【0023】
【
図9】本発明の別の実施形態において、半導体ウエハに供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるための動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、半導体ウエハ上で液体メニスカスを効果的に閉じ込めるためのいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明が、これらの詳細の一部または全てがなくとも実施可能であることは、当業者にとって明らかである。また、本発明が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の説明は省略した。
【0025】
本発明の実施形態は、空気流を利用することなく半導体ウエハに供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるメカニズムを提供する。そのメカニズムは、傾斜した流入導管を備えた近接分配ヘッドを用いて、液体化学剤をウエハ表面に供給する。メニスカスのポケットは、第1および第2の分配ヘッドに対して露出したウエハの少なくとも一部の上に第1および第2の分配ヘッドによって規定される。液体化学剤を供給するための傾斜した流入導管は、規定されたメニスカスポケット内に液体化学剤が単相で受け入れられうるように、第1および第2の分配ヘッド内に設けられる。メニスカスポケットの外周領域の少なくとも一部を覆う段構造は、液体メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有するように、第1および第2の分配ヘッドの各々に設けられる。第1および第2の分配ヘッドは、第2の分配ヘッドにおけるメニスカスポケットに隣接する段構造の壁が第1の分配ヘッドにおけるメニスカスポケットに隣接する段構造の壁に対して外側に広がるように、位置がずらされている。内側回収導管は、単相でメニスカスポケットから液体化学剤を除去することを可能にするように、メニスカスポケット内側で第1および第2の分配ヘッドの後縁部に規定される。
【0026】
本発明の実施形態は、液体化学剤を単相で導入および除去できるように、ウエハ上に供給された液体化学剤のメニスカスを閉じ込める効果的な機構を提供する。この機構は、メニスカスを閉じ込めるために空気流を利用しないものであり、それにより、液体化学剤の汚染または化学変化の結果として液体化学剤が減少しうる空気流に関連した不利点を排除する。さらに、この機構は、空気流にさらされた時の蒸発による液体化学剤のあらゆる損失を防ぐ。洗浄処理で用いられる液体媒質は高価であるため、液体メニスカスの回収および再利用が非常に望ましい。したがって、単相で液体媒質を導入および除去することと、空気流を利用しないことによって、本発明の実施形態は、ウエハの洗浄の品質を落とすことなく、液体媒質を保存する方法を提供する。保存された液体媒質は、現在またはその後の洗浄動作で再利用が可能であり、最適およびコスト効率の高い方法を実現する。
【0027】
半導体ウエハ上に供給された液体メニスカスの物理的閉じ込めを提供するために用いられる機構の上記の一般的な理解と共に、様々な図を参照しつつ本発明の様々な実施形態について詳細に述べる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態において、液体化学剤を供給および除去するための化学剤ヘッドを用いる機構を示す概略側面ブロック図である。図に示すように、この機構は、ウエハ100の上面および下面の少なくとも一部を覆うように配置された第1の化学剤ヘッド110および第2の化学剤ヘッド120を備える。メニスカスポケット130が、第1および第2の化学剤ヘッド110、120によって覆われた部分に規定される。ウエハ100は、キャリア(図示せず)上に配置され、軸に沿って移動される。ウエハ100がメニスカスポケットを通ってスライドすると、メニスカスポケットは、化学剤ヘッド110によって覆われたウエハ上面の部分を覆う一方のメニスカスと、化学剤ヘッド120によって覆われたウエハ下面の部分を覆う他方のメニスカスとを含む2つのメニスカスに分割される。ウエハ100がメニスカス領域の外に移動すると、メニスカスのポケットは単一のメニスカスになる。一実施形態において、化学剤ヘッド110および120は近接ヘッドである。実施形態は、近接ヘッドに限定されず、ウエハ100の少なくとも一部を覆うメニスカスポケット130を生成することができる他の種類のヘッドまたは機構を含みうる。液体化学剤などの液体媒質が、洗浄動作中、メニスカスポケット130内に導入される。第1および第2の化学剤ヘッドの各々には、メニスカスポケット130の外周上に、段構造が規定されている。段構造118、128は、メニスカスポケットのための物理的な閉じ込め壁として機能することにより、メニスカス領域を閉じ込めて維持する。
【0029】
メニスカスに暴露されるウエハ100の表面の部分への供給のためにメニスカスのポケット内に液体化学剤を導入するために、第1の化学剤ヘッド110および第2の化学剤ヘッド120の各々に、流入導管が設けられている。一実施形態において、流入導管112および122は、メニスカスの縁部であるがメニスカスポケットのすぐ内側に配置される。流入導管は、メニスカスの縁部に位置するため、液体化学剤が単相で段118、128から離れる向きにメニスカスポケット130に直接導入されるように、メニスカスの面の垂線から内側に傾斜されている。単相供給に関するさらなる情報については、2008年8月19日に出願され、本願の出願人に譲渡された米国特許出願第12/194,308号「REMOVING BUBBLES FROM A FLUID FLOWING DOWN THROUGH A PLENUM」を参照することができる。
【0030】
最適なメニスカス閉じ込めは、液体化学剤がウエハの搬入側の段構造118、128の近くでメニスカスのポケット内に供給された時に実現される。段構造の近くの位置で段構造から離れる向きに液体化学剤を供給するために、傾斜した流入導管112、122を提供することにより、液体化学剤の供給流の運動量が、物理的な閉じ込め壁から離れる方向に向けられる。これによって、液体流の運動エネルギおよび関連した圧力がメニスカス面を破壊することを防止して、メニスカスの閉じ込め特性を維持する。
【0031】
段構造118、128は、完全または部分的に、メニスカスポケットを取り囲むことができる。一実施形態において、段構造は、メニスカスポケットを完全に取り囲む。この実施形態では、単一の流入導管112、122、および、単一の内側回収導管114、124が、それぞれ、化学剤ヘッド110、120に設けられている。別の実施形態では、段構造が、メニスカスポケットを部分的に取り囲む。この実施形態において、段構造は、化学剤ヘッド110、120によって形成されるメニスカスポケット130の前縁部で、そして、メニスカスポケット130の両側面の少なくとも一部に沿って、ウエハの搬入口を覆ってよい。この実施形態において、第1および第2の化学剤ヘッド110、120の各々に設けられた流入導管112、122は、メニスカスポケットの内縁に沿って設けられた少なくとも一列の流入導管と、メニスカスポケット130の後縁部で内縁に沿って設けられた少なくとも一列の内側回収導管とを含む。流入導管の列を用いて液体化学剤を供給し、内側回収導管を用いて液体化学剤を除去すれば、低流量でも、液体化学剤の供給および除去時に流量を均一に維持することができる。これにより、コスト効率の高い液体化学剤の供給が可能になる。
【0032】
化学剤ヘッド110、120にメニスカスポケットのための物理的閉じ込め壁を提供することに加えて、段構造118、128は、液体媒質が閉じ込め特性を喪失することを防止するのに十分な高さを有するように設計される。液体媒質がメニスカスポケット内に供給されると、重力が液体媒質に作用して、液体媒質の少なくとも一部をメニスカスポケットから流出させる傾向がある。液体がメニスカスポケットから流出すると、液体媒質は、メニスカスポケットの外側に形成された液体の層と接触した場合に、その閉じ込められたメニスカスの形状を失いうる。液体の層は、通常、いくつかの理由からメニスカスポケットの外側の段構造の上面に形成されうる。例えば、ウエハの導入中、メニスカスの圧力は、基板および基板を運ぶキャリアがメニスカスのポケットに出入りする時に変動する。メニスカスの圧力は、液体化学剤の供給流および内側回収流に関連する変動によっても変動しうる。メニスカスの圧力が変動した結果として、メニスカスの曲率が変動する。液体化学剤の表面が拡大した化学剤ヘッドの一例を
図5に示す。メニスカスの曲率が大きくなると、510で示すように、表面がより凸状になる。結果として、液体化学剤は、ピン止め角(pinning corner)の外側に拡張する。液体表面が物理的閉じ込め壁の外側でヘッドの任意の表面に接触すると、液体は、新たなメニスカスピン止め構造に到達するまで(尖った角)物理的閉じ込め壁の外側のそれらの表面すべてを湿潤させる。結果として得られるメニスカスは、閉じ込められてはいるが、所望の領域に閉じ込められない場合がある。望ましい閉じ込め壁から望ましくない拡張したメニスカスへと変化するメニスカスのプロセスは、変化を起こすのに必要とされるエネルギによって抑制される。このエネルギは、物理的閉じ込め壁の外側のヘッドの形状および液体の表面張力に依存する。
【0033】
液体媒質がメニスカス閉じ込め特性を失わないようにするために、第1および第2の化学剤ヘッドが備えるメニスカスポケットの外側の段構造の高さは、メニスカスポケットから流出する液体媒質が段構造の上面に形成された液体の層と相互作用することができないよう十分に増大される。段構造の高さの増大は、液体メニスカスおよび化学剤ヘッド110、120に関連する1または複数の動作制約と直接的に関係しており、動作制約の関数として定義される。動作制約は、流量、圧力、温度、液体媒質の化学的組成、ウエハ表面に対する化学剤ヘッド面の近接、および、化学剤ヘッドの寸法の内の1または複数を含む。これらの動作制約は動的である。例えば、メニスカスの圧力は、ウエハがメニスカスポケットに出入りする時に変動する。結果として、段構造の高さは、適切なメニスカス閉じ込めを達成しうるように、1または複数の動作制約の変動を考慮する必要がある。
【0034】
一実施形態において、段構造の高さは、液体化学剤の三相接触線が所望のメニスカス境界線の外側に飛び出す可能性と直接的に関連している。液体媒質の動作圧が変動すると、段構造の高さが低すぎる場合にメニスカスは非閉じ込めになりうる。動作圧は、制約パラメータの中でも特に、化学剤ヘッドの形状、ウエハ表面に対するヘッドの近接、および、液体媒質の流量に依存する。結果として、段構造の高さは、メニスカスを実質的に閉じ込めることができるように増大される。一実施形態では、閉じ込め壁の外側の段構造の高さは、0.120”すなわち約3mmよりも大きく規定される。
図6は、規定された外側閉じ込め壁を備えた正確な化学剤ヘッドの設計の一例を示す。
【0035】
液体化学剤の利用を最適化するために、化学剤ヘッド110および120は、それぞれ、メニスカスポケットの内側に設けられた内側回収導管114および124を備える。内側回収導管114、124は、洗浄動作後に液体化学剤を単相で除去できるように、化学剤ヘッド110、120の後縁部に配置される。内側回収導管114、124は、液体化学剤だけが内側回収導管を通って戻されるように、液体と完全に接触するヘッドの領域に配置される。内側回収導管の数と位置は、所望の設計および機能に応じて様々であってよい。除去された液体化学剤は、その後の洗浄動作で再利用されてよい。
【0036】
ウエハの下側に配置された化学剤ヘッド120は、一時的な非閉じ込め中に、ウエハ表面からあふれうる任意の液体化学剤を受けるために、重力排液路126をさらに備える。一時的な非閉じ込め状態は、キャリアおよびウエハ100がメニスカスのポケットに出入りする時に起こりうる。これが起きると、メニスカスの圧力が一時的に増大し、液体化学剤の流出を引き起こす可能性がある。重力排液路126は、化学剤ヘッド120の前縁部、後縁部、または、それら両方に配置されてよい。重力排液路126に収集された液体化学剤は再利用されてよく、それにより、液体化学剤を最適に利用できる。物理的閉じ込めがメニスカスの周囲全体に提供される実施形態では、液体の小さい流れが、連続的に排液溝へあふれ出る。供給流量および内側回収流量を正確に同一にすることはできないため、これは設計上必要である。メニスカス領域が常に液体で満たされることを保証するために、供給流量は、内側回収流量よりも大きくされる。一実施形態では、供給流量は内側回収流量よりも約100ml/分だけ大きい。過剰な流れは、排液溝を通して戻され再利用される。ウエハが化学剤ヘッド110、120から離れる時に、液体化学剤の層132がウエハ上に残りうる。その層は、他の汚染物質がウエハ表面に付着しないように、または、早期の乾燥を防ぐために、ウエハ上に残ってよい。
【0037】
一実施形態では、ウエハ100の上面の上に配置された化学剤ヘッドは、ヘミウィッキング(hemi−wicking)トポグラフィを備えてよい。このトポグラフィは、液体化学剤による表面の湿潤を向上させる。例えば、傾斜した流入導管112および内側回収導管114の間、ウエハ100の上面の上方、かつ、メニスカスポケットの範囲内に位置する表面は、ポケット内での液体化学剤による湿潤を増大させて、洗浄処理を向上させるために、ヘミウィッキング表面トポグラフィを有してよい。ヘミウィッキング表面トポグラフィに関するさらなる情報については、2009年5月22日に出願され、本願の出願人に譲渡された米国特許出願第12/471,169号「MODIFICATION TO SURFACE TOPOGRAPHY OF PROXIMITY HEAD」を参照することができる。
【0038】
液体供給が止められた後、メニスカス領域の上側および下側ヘッドの間に残留液体が存在する可能性がある。ウエハの処理が完了すると、ウエハはウエハ搬出領域で搬出され、ウエハキャリアはウエハ搬入領域に戻る。空のキャリアが近接ヘッドの間を戻る時に、ヘッド間のメニスカス領域に存在する任意の残留液体化学剤は、キャリア面の高さが液体化学剤の高さにある場合、キャリア面を湿らせうる。液だまりが平面上で有しうる最大の高さよりも、下側ヘッドのポケットが深ければ、これを避けることができる。一実施形態では、ポケットの深さは、表1に提示した経験式を用いて算出できる。経験式は、液体化学剤の供給に関連する様々なプロセスパラメータを用いて得られる。計算に基づくと、下側ヘッドのポケットの深さは、一実施形態において、少なくとも0.130”すなわち3.3mmになるように設計される。これは、ヘッドポケットの底に停滞しうる残留液体が、キャリア面に到達できないことを保証する。ポケットの深さがより大きくても同じ結果が得られるが、必然的にメニスカスの体積が増大する。基板およびウエハという用語は、半導体デバイスが加工される材料として同じ意味で用いられることに注意されたい。
【0040】
ここで、eは平面上での液だまりの高さ、θ
Eはヘッド材料(PVDF)に対する水の平衡接触角、κ
-1はキャピラリ長、γは表面張力、ρは密度、gは重力加速度である。
*20℃の水では、e=3.5mm(0.138”)である。測定された高さ:0.130”
*80℃の水では、e=3.1mm(0.123”)である。
下側ヘッドのポケットの深さ:0.130”
【0041】
ウエハ100の上側および下側に配置された化学剤ヘッド110、120の各々のメニスカスポケットに隣接する段構造の壁は、メニスカスをより良好に閉じ込めるために互いにオフセットされる。重力を無視すると、メニスカス表面は、円の一部として記述される。メニスカス内に過度の圧力が存在すると、液体表面は凸状になり、その時、メニスカスの一部がメニスカス閉じ込め壁の外側に位置する。メニスカス表面に掛かる重力を考慮すると、液体の重さは、表面張力が持続できるよりも大きい圧力をメニスカス表面上に引き起こして、排液溝内への液体の漏れを引き起こしうる。物理的閉じ込めを規定する下側の段構造の壁の位置を上側の段構造の壁に対してオフセットすることにより、液体の重さによって引き起こされた力と釣り合うように、フーチング(footing)を提供して、排液溝への液体の漏れの可能性を低減できる。有望な結果を示したオフセットは、約0.030”すなわち約0.7mmから約0.25”すなわち約6mmまでの間である。この設計によると、下側化学剤ヘッド120は上側化学剤壁110よりも広くなる。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態において、例となる化学剤ヘッド110、120について、様々な構成要素と、ウエハ上に供給された液体メニスカスの物理的閉じ込めに有望な結果を示したオフセット測定値とを示す。メニスカスポケット130が、第1の化学剤ヘッド110および第2の化学剤ヘッド120の間に形成されている。メニスカスポケット130は、ウエハが化学剤ヘッド110、120の間を移動する時に、ウエハの少なくとも一部を覆う。メニスカスポケットの幅は、化学剤ヘッド110、120の形状によって異なっていてよい。一実施形態において、化学剤ヘッドによって規定されるメニスカスポケットは、ウエハの幅を覆ってよい。別の実施形態では、メニスカスポケットは、基板の上面および底面の一部のみを覆ってもよい。
図2に示す実施形態において、メニスカスポケットの幅は、約38mmである。段構造118、128は、メニスカスポケット130の外周の少なくとも一部に沿って第1および第2の化学剤ヘッド110、120の各々の前縁部に設けられる。段構造の高さは、経験的に規定され、メニスカスの液体化学剤の閉じ込め特性を維持するのに十分な高さである。
【0043】
別の実施形態において、メニスカス閉じ込め領域の外側の段構造の壁の高さは、そこに閉じ込められたメニスカスの動作圧に依存する。また、メニスカスの動作圧は、パラメータ制約の中でも特に、化学剤ヘッドの形状、ウエハ表面に対する化学剤ヘッドの近接、および、液体化学剤の流量など、1または複数のパラメータに依存しうる。約2cmのメニスカス幅、約0.3mmおよび約2mmの間の化学剤ヘッドからウエハまでのギャップ(最適ウエハギャップは約1mm)、ならびに、約0.5リットル/分および約3リットル/分の間の液体化学剤の流量を用いると、メニスカスを良好に閉じ込めるためのメニスカス領域の外側の段構造の高さは、
約0.3mmより大きい必要があった。ヘッドからヘッドまでのギャップは、ヘッドからウエハまでのギャップと、ウエハおよびキャリアの厚さとによって決定される。有望な結果を示したヘッド間のギャップは、約2.3mmおよび5mmの間であり、動作ギャップは約3mmである。さらに、メニスカスの最適な閉じ込めは、メニスカス領域の外側の段構造118、128の最小の高さが約3mmである時に起こりうることがわかる。動作制約に基づくと、メニスカスポケット130の外側の段構造の壁の高さが約0.150インチすなわち約3.75mmである時、最適な閉じ込めが達成されることが決定される。有望な結果を示した第1および第2の化学剤ヘッドの段構造の間のギャップによって規定される動作ギャップは、約3mmである。動作ギャップは、液体化学剤組成とウエハに供給される時の液体化学剤の温度との関数である表面エネルギに依存する。
【0044】
一実施形態において、傾斜した流入導管112、122が、化学剤ヘッド110、120内に設けられており、メニスカスポケット130の外縁のすぐ内側、段構造の近くに配置されている。流入導管の構成および位置のバリエーションについては、
図1を参照して広く説明した。傾斜した流入導管は、段構造の壁から離間されており、メニスカスポケット130に液体化学剤を単相で供給するよう構成される。一実施形態において、流入導管112、122は、メニスカス平面の垂線に対して約20°傾斜している。斜めに供給を行うことで、段構造の壁から液体化学剤を離れさせるための運動量を提供し、それにより、メニスカスの閉じ込め特性が実質的に維持されることを保証する。流入導管を段構造118、128の壁の近くに設けることにより、メニスカス閉じ込め境界は、できるだけポケットの境界の近くに確立されうる。したがって、メニスカス境界は、物理的閉じ込め壁によって規定される。供給導管および内側回収導管は、液体の均一な組成を維持するために、液体化学剤が再循環する体積を最大化するように離間される。メニスカスポケットに隣接する段構造118、128の壁は、下側化学剤ヘッドの段構造128が、上側化学剤ヘッドの段構造118の壁に対してメニスカスの外側に広がるように、互いにオフセットされる。段構造118、128の壁の間の最適なオフセットは、約0.8mmから約6mmの間であり、最適なオフセットは約0.05”すなわち約1.25mmである。オフセットによって、下側化学剤ヘッドが上側化学剤ヘッドよりも物理的に広くなることに注意されたい。ウエハに供給された液体化学剤があふれた際に受けるために、排液溝126が、下側ヘッド120の前縁部および後縁部の両方に設けられている。
【0045】
一実施形態において、メニスカスに暴露されるウエハ100の表面の部分への供給のためにメニスカスポケット内に液体化学剤を導入するために、さらなる流入導管が提供されてよい。さらなる流入導管は、閉じ込められたメニスカス境界の内側の任意の位置に配置されてよい。さらなる流入導管は、前縁部または後縁部ではなくメニスカスの境界の内側に配置されるので、導管を傾斜させる必要はない。その代わりに、導管は、液体化学剤が単相で液塊内に直接導入されうるように、メニスカス平面と垂直に配置されてよい。さらなる流入口導管112−aの例を
図2Aに示す。
図2Aは、液体化学剤(図示Chem)を基板100の表面に供給する際に用いられる化学剤ヘッドの別の実施形態を示している。液体化学剤の供給流の運動量が、メニスカス内の液体化学剤の流れと一致することにより、メニスカス閉じ込め壁を維持する。
【0046】
内側回収導管が、上側化学側ヘッド110および下側化学剤ヘッド120の各々に設けられている。内側回収導管114、124は、液体化学剤を単相で除去できるように、化学剤ヘッド110、120の後縁部に配置され、メニスカスポケット130の内側に配置されている。内側回収導管は、
図2に示すように、傾斜されてもよいし(内側回収導管114)、垂直であってもよい(内側回収導管124)。別の実施形態では、複数の内側回収導管が、上側化学剤ヘッド110および下側化学剤ヘッド120の各々に設けられている。複数の内側回収導管は、液体化学剤を単相で除去できるように、メニスカスポケット130の内側に配置される。
図2Aは、内側回収(図示IR)用の2列の内側回収導管が存在するかかる一実施形態を示している。下側化学剤ヘッド120に形成されるメニスカスポケットは、任意の残留および停滞した液体化学剤が、ウエハを運搬するキャリアを湿らすことを避けるために、余分に深くてよい。一実施形態において、有望な結果を示した下側化学剤ヘッド120のメニスカスポケットの深さは、約0.130”すなわち約3.25mmである。
【0047】
単相での供給および単相での回収を用いると、供給ネットワークから空気流が排除され、それにより、空気流に関連する不利点も排除される。空気流に関連する不利点の一つは、抑制されていない蒸発である。蒸発が抑制されないと、実質的な液体化学剤の損失につながる。洗浄処理で用いられる液体化学剤のいくつかは高価であるため、液体化学剤の損失は、ウエハの洗浄コストを増大させる。その他の不利点は、キャビテーションを引き起こしうる液体媒質への泡の導入である。キャビテーションを抑制しないと、ウエハ上に形成されたフィーチャを損傷する場合があり、空気流の利用を非常に望ましくないものにする。供給における気泡の他の不利点は、気泡がウエハと液体の界面に位置して、液体化学剤によってウエハ表面が濡れることを妨げる場合があるために、化学剤への不均一な暴露が起きることと、制御されない三相(固体(ウエハ)−液体−気体)界面が乾燥痕を導入する可能性があるので、高い粒子カウントおよび粒子縞(particle streaking)など乾燥の問題とを含む。
【0048】
第1および第2の化学剤ヘッドに加えて、リンスヘッドが、化学洗浄後にウエハ表面をリンスするために用いられてもよい。
図3は、化学洗浄後にウエハをリンスするために用いられる一対のリンスヘッドを示す概略側面ブロック図である。化学洗浄後、ウエハは、第1のリンスヘッド210および第2のリンスヘッド220の間を移動される。ウエハ100は、化学剤ヘッド110、120の下からリンスヘッド210、220の下まで移動される時、化学洗浄から残された液体化学剤の層132によって覆われる。リンスヘッド210、220は、ウエハ表面の上側および下側の少なくとも一部を覆って、ウエハ100の少なくとも一部上にメニスカスポケット230を規定するように配置される。第2のリンスヘッド220によって規定されるメニスカスポケット230の一部は、第1のリンスヘッド210によって規定されるポケットよりも深くてよい。これは、メニスカスの特性が実質的に保たれるように、リンス化学剤メニスカスの物理的閉じ込めを提供するためである。
【0049】
一実施形態において、リンスヘッドは、メニスカスポケット230内にリンス化学剤を導入するよう構成された傾斜した流入導管212、222を備える。傾斜した流入導管は、単相でリンス剤をメニスカスポケット230に直接導入するために、第1および第2のリンスヘッド210、220の前縁部で、メニスカスポケット230の外周の内側に配置されている。別の実施形態では、傾斜した流入導管に加えて、リンスヘッドは、メニスカスポケットの内側に配置されたさらなる流入導管212−aを備えてもよい。これらのさらなる流入導管212−aは、メニスカスポケットの内側に配置されるため、傾斜される必要がない。その代わりに、それらは、メニスカスポケット内でメニスカスの平面に対して垂直に設けられる。メニスカスの平面と垂直に配置されたさらなる流入導管212−aを備えたリンスヘッドの一例を、
図3Aに示す。化学剤ヘッドに関して説明したものと同様の段構造(218、228)が、第1および第2のリンスヘッド210、220の各々に設けられている。段構造218、228は、メニスカスポケット230の外周の少なくとも一部に沿ってリンスヘッド210、220の前縁部に設けられている。段構造は、リンスヘッドの間に規定されるメニスカスポケット230の境界内へのメニスカスの物理的閉じ込めを提供する。リンスヘッド210、220の各々の段構造の壁の高さは、メニスカスの特性が実質的に維持されることを保証するように構成される。第1および第2のリンスヘッドにおいてメニスカスポケット230に隣接する段構造218、228の壁は、下側リンスヘッド220の段構造228の壁が、上側リンスヘッド210の段構造218の壁に対してメニスカスの外側に配置されるようにオフセットされる。これは、メニスカスポケット230内のメニスカスで見られるメニスカス内圧の任意の非対称を相殺するためである。一実施形態において、下側ヘッドおよび上側ヘッドの段構造の壁の間のオフセットは、
図1の化学剤ヘッドについて説明したものと同様である。
【0050】
一実施形態において、リンスサイクル中にリンス剤を除去するために、内側回収導管がリンスヘッド210、220の各々に設けられている。内側回収導管214、224は、リンス剤を単相で除去できるように、メニスカスポケット230内側でリンスヘッドの後縁部に配置されている。内側回収導管214、224は、傾斜して配置されてもよいし、垂直に配置されてもよい。別の実施形態では、複数の内側回収導管が、リンス剤を除去するために、リンスヘッド210、220の各々に提供される。
図3Aは、2つの内側回収導管を備えたかかる例の一つを示す。内側回収導管は、後縁部に位置する必要はなく、単相でのリンス剤の除去を保証するように、流入導管の後ろでメニスカスポケット内の任意の位置に配置されてもよい。単相での回収を可能にする内側回収導管214、224に加えて、リンスヘッド210、220は、リンス剤を二相で除去できるようにメニスカスポケット230の周囲に配置された外側回収(図示OR)用の外側回収導管232、234を備えてもよい。二相外側回収導管232、234付近のメニスカスは、周囲空気またはウエハ表面に供給された他の化学剤のいずれかにさらされうる。一実施形態では、窒素および/またはイソプロピルアルコール(IPA)蒸気の流れが、メニスカスポケット230の周囲に導入されてよい。窒素/IPA蒸気は、乾燥サイクル中に導入されてよく、リンスサイクル後にウエハを乾燥させる乾燥剤として機能しうる。外側回収導管232、234は、リンス/乾燥サイクル後に窒素/IPA蒸気と共にリンス剤を二相で除去する。
【0051】
一実施形態では、下側リンスヘッド220は、さらに、前縁部に沿って重力排液路226を備えてよい。
図4は、ウエハ表面における液体メニスカスの物理的閉じ込めに用いられる様々な構成要素を示す。
図4に示すように、重力排液路226は、リンス処理中にメニスカスポケット230から流出しうる任意のリンス剤および液体化学剤を収集するために用いられてよい。リンスヘッドにおける重力排液路226の機能は、
図1および
図2の化学剤ヘッドに提供された重力排液路126と実質的に同様である。重力排液路226の位置は一例であり、限定的に解釈されるべきではない。結果として、前縁部の重力排液路226に加えて、第2の重力排液路が、リンス剤を収集するために、下側リンスヘッド220の後縁部に提供されてもよい。ウエハは、リンスヘッド210、220の間を移動し、化学剤の付着なく乾燥して、実質的に清浄になる。
【0052】
前述の実施形態で説明した化学剤ヘッドは、少なくとも約70℃までの化学剤の供給を可能にする。液体化学剤は、一般に室温より高い温度で供給されることが多い。化学洗浄に用いられる従来の化学剤ヘッドは、高温で化学剤を供給する時に自然に生じる静的温度勾配によって引き起こされる歪みのために、室温より高い温度で動作できない。一方、本実施形態で用いられる化学剤ヘッドは、より効率的な洗浄のために静的温度勾配を克服できるため、より効率的な設計が実現される。
【0053】
本発明の実施形態は、液体化学剤の供給および除去のために用いられる化学剤ヘッドと、リンス剤の供給および除去のために用いられるリンスヘッドとを含むシステムに限定されない。本発明の別の実施形態では、乾燥ヘッドが、化学剤ヘッドおよびリンスヘッドに加えて用いられてもよい。乾燥ヘッドは、リンスヘッド210と同様の構造を有しており、前の動作(洗浄およびリンスなど)で基板表面上に残った任意の液体化学剤を除去するために用いられる。本発明の別の実施形態では、乾燥ヘッドは、基板表面の洗浄中にリンスヘッドの代わりに用いられてもよい。さらに別の実施形態において、ウエハ表面に供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムは、従来のエアエントレインメント・リンスヘッドと対になった化学剤ヘッドを備える。化学剤ヘッドは、基板を洗浄するための洗浄剤を供給し、リンスヘッドは、洗浄動作後の基板のリンスを可能にする。以上のように、様々な構成要素が、ウエハ(基板)表面に供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるために、様々な構成で用いられうる。本明細書に記載された実施形態は例示であり、限定を意図するものではない。様々な構成要素を含む他の構成が実現可能である。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態において、ウエハ表面に供給された液体メニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムを示す。システムは、製造動作後にウエハを洗浄するための一対の化学剤ヘッド110、120と、化学洗浄後にウエハをリンスするための一対のリンスヘッド210、220とを備える。化学剤ヘッド110、120およびリンスヘッド210、220の対の数および配置は、例示であって、限定を意図するものではない。本発明の機能が維持される限り、任意の数の対の化学剤ヘッドおよびリンスヘッドが、任意の配置で用いられてよい。システムの化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの構成要素は、
図2〜
図5を参照して説明したものと同様である。システムは、平面に沿ってウエハを受けて、保持し、搬送するウエハキャリア機構を備える。キャリア機構は、当業者に周知の任意のキャリア機構、または、現行のキャリア機構の機能を提供する任意の他のキャリア機構であってよい。第1および第2の化学剤ヘッドは、ウエハが軸に沿って移動する時に、ウエハの上側および下側の少なくとも一部を覆うように配置される。第1および第2の化学剤ヘッドは、化学洗浄中に液体化学剤が供給されうるメニスカスポケットを規定する。メニスカスポケットは、ウエハが化学剤ヘッドの下のメニスカスポケットを通過する時に、第1および第2の化学剤ヘッドにさらされたウエハの上側および下側の一部を覆うために、メニスカスの層を提供する。
【0055】
液体化学剤を単相でメニスカスポケットに導入するために、傾斜した流入導管が、メニスカスポケットの周囲の内側で第1および第2の化学剤ヘッドの前縁部に提供されている。単相で液体化学剤を除去するために、内側回収導管が、化学剤ヘッドの後縁部に提供されている。流入導管および内側回収導管の位置は例示であり、限定と見なされるべきではないことに注意されたい。流入導管および内側回収導管は、それぞれの機能を維持する限りは、メニスカスポケット内の任意の場所に配置されてよい。メニスカスポケットの外周の少なくとも一部に沿って段構造が規定されており、ポケット内にメニスカスを実質的に閉じ込めるメニスカスのための物理的障壁として機能する。段構造の高さは、メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さになるよう規定される。第1および第2の化学剤ヘッドのメニスカスポケットに隣接する段構造の壁は、メニスカスの内圧に関連する任意の非対称を相殺するために、下側ヘッドの段構造の壁が上側ヘッドの段構造の壁に対して外側に広がるように構成される。1または複数の重力排液路が、化学剤ヘッドの前縁部、後縁部、または、前縁部および後縁部の両方のいずれかに配置されており、メニスカスポケットからあふれ出た液体化学剤を捕捉する。捕捉された液体媒質は、現在の洗浄処理または後の洗浄処理中に再利用できる。
【0056】
リンスヘッド210、220は、リンスヘッドがメニスカスポケットにリンス剤を供給するよう構成されることを除いて、化学剤ヘッドと同様の構造を有する。リンスヘッドは、傾斜した流入導管と、内側回収導管と、リンスヘッドの前縁部および/または後縁部の重力排液路と、メニスカスを中に閉じ込めるためにメニスカスポケットの1または複数の壁に沿って形成された段構造とを備える。前述の構成要素に加えて、リンスヘッドは、メニスカスポケットの外周に外側回収導管を備える。外側回収導管は、二相でのリンス剤の収集を可能にする。外側回収導管付近のメニスカスポケットの外周のリンス剤は、周囲空気またはウエハ表面に供給された他の化学剤にさらされうる。リンス剤は、他の化学剤と共に、外側回収導管によって除去される。この実施形態において、回収されたリンス剤は、化学剤組成の変化につながる他の化学剤と混ざっている可能性があるため、再利用できない。結果として、外側回収導管によって収集されたリンス剤は、廃棄される。一実施形態において、リンスヘッドは、ウエハを実質的に乾燥させるために、リンス動作後に乾燥剤(窒素および/またはイソプロピルアルコール(IPA)など)をウエハの表面に供給することによって、乾燥動作を実行するよう構成されてよい。外側回収導管は、リンスおよび乾燥動作後、乾燥剤およびリンス剤を除去する。
【0057】
ウエハ表面がウエハの実質的な洗浄のために様々な化学剤に十分に暴露されうるように、キャリアはシステムを通してゆっくりとウエハを移動させることに注意されたい。ウエハは、化学剤ヘッドの間を通過する時に、閉じ込められた液体化学剤による集中的な洗浄を受ける。ウエハが化学剤ヘッドの下から出る時に、液体化学剤の層がウエハ表面上に残されうる。層は、他の汚染物質がウエハ表面に付着することを防止するため、早すぎる乾燥を防ぐため、または、任意の他の理由のために残されてよい。ウエハがリンスヘッドの間を通過して、リンスヘッドの下から出る時に、液体化学剤は、任意の他の残存化学剤と共に除去される。リンスヘッドが乾燥剤を供給するよう構成されている場合、出てくるウエハは実質的に乾燥される。最適な洗浄および乾燥のために化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の下にウエハが暴露される時間は、汚染物質の量と、所望の洗浄レベルとに依存しうる。一実施形態において、暴露時間は、
図7に符号505で示すように、メニスカスのポケットの幅+化学剤メニスカスおよびリンスメニスカスの間の距離とウエハ速度との関数として規定される。メニスカスの幅、化学剤メニスカスおよびリンスメニスカスの間の距離、ならびに、ウエハ速度は、ウエハの最適な洗浄を提供するために調整されてよい。
【0058】
一実施形態では、リンスヘッドは、化学剤ヘッドと統合されてよい。この実施形態において、化学剤ヘッドは、液体化学剤の回収を可能にするために、リンス剤メニスカスとは異なる液体化学剤メニスカスを保持するよう構成されてよい。回収された液体化学剤は、現在の洗浄処理または後の洗浄処理中に再利用されてよいため、高価な液体化学剤を最適に利用できる。別の実施形態では、リンスヘッドは、化学剤ヘッドと別個に設けられてもよい。化学剤ヘッドおよびリンスヘッドを別個にすることで、リンス剤の動作制約と異なりうる動作制約を用いて液体化学剤を供給することができる。例えば、ウエハは、熱い液体化学剤および冷たいリンス剤を供給されてよい。さらに、リンスヘッドを化学剤ヘッドと別個にすることにより、化学剤ヘッドまたはリンスヘッドに対する任意の構成の変更を、他方のヘッドの構成に影響することなく個別に行うことができる。上述の実施形態は、さらに集中的なウエハ洗浄動作を達成することができるように、液体メニスカスの実質的な閉じ込めを提供する。
【0059】
様々な実施形態の上記の詳細な説明と共に、ここで、ウエハに供給される液体媒質のメニスカスを物理的に閉じ込めるための方法について、
図8を参照しつつ説明する。
図8は、本発明の一実施形態において、液体媒質のメニスカスの物理的閉じ込めに関わる様々な動作を示す。方法は、液体化学剤が流入導管を通して半導体ウエハに供給される動作610で始まる。メニスカスポケットが、一対の化学剤ヘッドによって規定されており、化学剤ヘッドの下で移動しているウエハの上面および下面の少なくとも一部を実質的に覆う。傾斜した流入導管が、メニスカスポケットの周囲の内側で化学剤ヘッドの前縁部に規定されており、単相でメニスカスポケットに液体化学剤を導入することを可能にしている。液体化学剤メニスカスの閉じ込め特性は、動作620に示すように、前縁部に沿って設けられメニスカスポケットの外周の少なくとも一部を覆う段構造によって維持される。メニスカスポケットの外側の段構造の高さは、液体媒質の閉じ込め特性が維持されるように、液体媒質および化学剤ヘッドに関連する1または複数の動作制約に基づいて規定される。さらに、化学剤ヘッドの段構造の壁は、メニスカスの内圧の任意の非対称性を相殺するために、下側化学剤ヘッドの段構造の壁が、上側化学剤ヘッドの段構造の壁に対してメニスカスの外側に広がるように設計される。メニスカスポケットによって覆われるウエハ表面の部分は、最適な洗浄のために液体化学剤に十分に暴露され、動作630に示すように、液体化学剤は、単相で内側回収導管を通して除去される。内側回収導管は、液体媒質を単相で回収できるように、メニスカスポケットの内側で化学剤ヘッドの後縁部に規定される。液体媒質に対して単相で供給および回収を行うことにより、液体媒質を後の洗浄動作で再利用できるため、液体媒質の最適な利用が可能になる。単相で液体化学剤を導入し、閉じ込め特性を維持し、単相で液体化学剤を除去する処理は、後のウエハについても継続されうる。
【0060】
図9は、本発明の一実施形態において、ウエハの表面に供給された液体化学剤メニスカスを閉じ込めるための処理動作を示す。その処理は、動作710に示すように、第1および第2の化学剤ヘッドの間にメニスカスポケットを規定する動作で始まる。メニスカスポケットは、第1および第2の化学剤ヘッドの間を移動する半導体ウエハの上面および下面の少なくとも一部を覆うように規定される。メニスカスポケットの幅は、化学剤ヘッドの形状に基づいて規定されてよい。動作720に示すように、メニスカスポケットの少なくとも一部を覆うように、段構造が、メニスカスポケットの外周に沿って第1および第2の化学剤ヘッドの前縁部に設けられる。段構造は、メニスカスポケットを部分的または完全に覆ってよい。メニスカスポケットに隣接する段構造の外壁の高さは、少なくとも閾値の高さに規定される。閾値は、化学剤ヘッドとウエハ表面に供給される化学剤とに関連する1または複数の動作制約の関数として規定されてよい。動作730に示すように、液体化学剤が選択され、第1および第2の化学剤ヘッドに設けられた流入導管を通してウエハ表面に供給される。液体化学剤に関する種類および動作制約は、除去の必要がある汚染物質の種類、サイズ、物理的および化学的特性、ならびに、液体化学剤が供給されるウエハ上に形成されたフィーチャの特性などウエハの特性に基づいて選択される。流入導管は、液体媒質を単相でメニスカスポケットに導入することができるように、メニスカスポケットの周囲の内側に形成され、メニスカスポケットの外壁から離れて内向きに傾斜される。液体媒質が斜めに供給されると、液体媒質の運動量により、液体媒質は段構造の外壁から離れるように流れ、それにより、液体媒質メニスカスが実質的に閉じ込められる。動作740に示すように、液体媒質メニスカスは、第1および第2の化学剤ヘッドの段構造のオフセットによってさらに閉じ込められる。段構造の外壁は、ウエハの下側に配置された第2の化学剤ヘッドの段構造の壁が、ウエハの上側に配置された第1の化学剤ヘッドの段構造の壁に対して外側に広がるようにオフセットされる。これは、メニスカス内圧に関連する任意の非対称を相殺するためである。
【0061】
液体化学剤にウエハ表面を十分に暴露した後、動作750に示すように、液体化学剤は、内側回収導管を通して単相で除去される。ウエハ表面の暴露量は、暴露時間によって規定される。
図7を参照して示したように、暴露時間は、ウエハキャリア速度と、メニスカスポケットの幅+化学剤メニスカスおよびリンスメニスカスの間の距離との関数として規定される。内側回収導管は、液体化学剤を単相で回収できるように、メニスカスポケットの内周の内側で第1および第2の化学剤ヘッドに設けられる。上述のように、内側回収導管は、メニスカスポケット内の任意の場所に配置されてよい。単相で液体化学剤を供給し、洗浄処理中に液体化学剤メニスカスの閉じ込め特性を維持し、単相で液体化学剤を除去する処理は、後のウエハ洗浄でも繰り返すことができる。
【0062】
以上のように、単相供給、単相回収を提供し、化学洗浄中にメニスカス特性を維持すると、高価な液体化学剤の最適な利用を保証しつつ、最適な洗浄を実現できる。実施形態は、空気流の利用を回避することにより、液体化学剤の制御されない蒸発およびその後の損失を防ぐ。
【0063】
近接ヘッド、近接ヘッドの配置および構成、アームアセンブリの構成および機能、ならびに、音響エネルギを用いた洗浄のために近接ヘッド内に設けられる変換器に関する詳細情報については、2003年6月30日出願の米国特許出願第10/611,140号、「METHOD AND APPARATUS FOR CLEANING A SUBSTRATE USING MEGASONIC POWER」を参照できる。これは、本願の出願人に譲渡されている。
【0064】
近接ヘッドの例およびそれぞれの構成、流入導管および流出導管のパターンについては、米国特許出願第10/261,839号、第10/404,270号、および、第10/330,897号を参照することができる。したがって、本明細書に記載の近接ヘッドのいずれか、一部、または、全部は、適切な基板洗浄および乾燥のために、任意の適切な構成で利用されてよい。さらに、近接ヘッドは、任意の適切な数または形状の流出導管および流入導管を有してよい。
【0065】
基板の洗浄に用いられる粘弾性物質に関する詳細情報については、2007年12月14日出願の米国特許仮出願第61/013950、「MATERIALS AND METHODS FOR PARTICLE REMOVAL BY SINGLE−PHASE AND TWO−PHASE MEDIA」を参照することができる。これは、本願の出願人に譲渡されている。
【0066】
液体化学剤は、二相(固体−液体)の化学剤、または、高度な機械洗浄(AMC)技術を用いて供給される化学剤であってもよい。利用された液体化学剤のいくつかは、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCL)、硫酸(H
2SO
4)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)、過酸化水素水(H
2O
2)を含む。一般的な洗浄化学剤のいくつかは、希硫酸・過酸化水素(DSP)、HF添加DSP(DSP+)、硫酸・過酸化水素混合物(SPM)、スタンダードクリーン1(SC1)、スタンダードクリーン2(SC2)、アンモニア過酸化水素混合物(APM)と呼ばれるものである。特許の水性洗浄溶液も用いられる。液体および洗浄化学剤に関するさらなる詳細については、2006年9月15日出願の米国特許出願第11/532,491号(代理人整理番号LAM2P548B)「METHOD AND MATERIAL FOR CLEANING A SUBSTRATE」を参照できる。
【0067】
本発明は、いくつかの好ましい実施形態に沿って説明されているが、当業者が、明細書および図面から、様々な変更、追加、置き換え、および、等価物を実現することは明らかである。したがって、本発明は、本発明の真の趣旨および範囲内での変更、追加、置き換え、および、等価物の全てを含むよう意図されている。
例えば、本願発明は、以下の適用例としても実施することができる。
[適用例1]半導体ウエハ上で液体メニスカスを物理的に閉じ込めるための装置であって、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2の化学剤ヘッドを備え、
前記第1および第2の化学剤ヘッドの各々は、
液体化学剤をメニスカスポケット内に単相で供給するために前縁部に配置された傾斜流入導管であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの前記表面に供給された前記液体化学剤をメニスカスとして閉じ込めるために、前記第1および第2の化学剤ヘッドによって覆われた前記半導体ウエハの前記上側表面および前記下側表面の前記一部の上に規定される傾斜流入導管と、
前記液体化学剤を前記半導体ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2の化学剤ヘッドの後縁部に配置された内側回収導管と、
前記液体化学剤の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記メニスカスポケットの外周の少なくとも一部に沿って前記第1および第2の化学剤ヘッドの前縁部に形成され、前記メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有する段構造と
を備え、
前記流入導管は、前記段構造から離間されている装置。
[適用例2]適用例1に記載の装置であって、前記段構造は、前記メニスカスポケットを取り囲むように設けられ、前記液体化学剤を前記メニスカスポケット内に閉じ込める装置。
[適用例3]適用例1に記載の装置であって、前記段構造は、前記メニスカスポケットの前縁部および両側部に沿って前記メニスカスポケットを部分的に閉じ込めるように設けられる装置。
[適用例4]適用例3に記載の装置であって、さらに、前記液体化学剤を単相で前記メニスカスポケット内に供給する少なくとも一列の傾斜流入導管と、前記液体化学剤を単相で除去するために前記メニスカスポケット内に配置された少なくとも一列の内側回収導管とを備える装置。
[適用例5]適用例1に記載の装置であって、前記第1の化学剤ヘッドおよび前記第2の化学剤ヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされている装置。
[適用例6]適用例5に記載の装置であって、前記第1の化学剤ヘッドおよび前記第2の化学剤ヘッドの前記段構造の前記壁の位置ずれは、略0.7mmから略6mmの間である装置。
[適用例7]適用例1に記載の装置であって、下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドは、前記液体化学剤のための深いメニスカスポケットを提供するよう構成される装置。
[適用例8]適用例1に記載の装置であって、さらに、下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドに排液溝を備え、前記排液溝は、前記第2の化学剤ヘッドの前縁部に形成され、前記半導体ウエハの表面上の前記メニスカスポケットからあふれた前記液体化学剤を回収するよう構成される装置。
[適用例9]適用例1に記載の装置であって、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記傾斜流入導管および前記内側回収導管の間の表面は、前記液体化学剤による湿潤を向上させるようにパターン化される装置。
[適用例10]適用例1に記載の装置であって、さらに、第1および第2のリンスヘッドを備え、
前記第1および第2のリンスヘッドは、
前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2のリンスヘッドの前縁部に配置され、リンス剤を単相で前記メニスカスポケット内に供給するよう構成された傾斜流入導管であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの前記上側表面および前記下側表面の少なくとも一部を覆うよう規定される傾斜流入導管と、
前記リンス剤を前記ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で前記第1および第2のリンスヘッドの後縁部に配置された内側回収導管と、
前記リンス剤の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記メニスカスポケットの外周の少なくとも一部に沿って前記第1および第2のリンスヘッドの前縁部に形成され、前記メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有する段構造と
を備え、
前記流入導管は、前記段構造から離間されている装置。
[適用例11]適用例10に記載の装置であって、前記第1および第2のリンスヘッドの各々は、さらに、前記リンス剤の前記メニスカスポケットの外周において前記第1および第2のリンスヘッドの後縁部に形成された外側回収導管を備え、前記外側回収導管は、前記リンス剤を二相で除去することを可能にする装置。
[適用例12]適用例10に記載の装置であって、前記第1および第2のリンスヘッドは、さらに、リンス完了後に前記半導体ウエハを実質的に乾燥させるために乾燥剤を供給するよう構成される装置。
[適用例13]適用例1に記載の装置であって、前記段構造の前記高さは、前記メニスカス内の前記液体化学剤の1または複数の動作制約の関数として算出され、前記動作制約は動的である装置。
[適用例14]適用例13に記載の装置であって、前記動作制約は、前記液体化学剤の圧力、温度、流量、化学組成、および、活性化エネルギの内の1または複数を含む装置。
[適用例15]半導体ウエハ上に供給された液体メニスカスのメニスカスを物理的に閉じ込めるための方法であって、
傾斜流入導管を通して液体化学剤をメニスカスポケット内に供給する工程であって、前記メニスカスポケットは、前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うよう規定されて、前記半導体ウエハの前記表面に供給された前記液体化学剤をメニスカスとして閉じ込め、前記傾斜流入導管は、液体化学剤を単相で前記メニスカスポケット内に斜めに供給するように、前記メニスカスポケットの前縁部に規定される工程と、
前記メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有するように前記メニスカスポケットの前縁部に外周に沿って設けられた段構造によって、前記液体化学剤のメニスカスの閉じ込め特性を維持する工程と、
前記メニスカスポケットの後縁部に設けられた内側回収導管を通して前記液体化学剤を単相で除去する工程と
を備える方法。
[適用例16]適用例15に記載の方法であって、前記傾斜流入導管を提供する工程は、さらに、前記メニスカスポケット内への前記液体化学剤の供給を可能にするように、前記メニスカスポケットの縁部の内側において前記段構造の近くの離間した位置に前記傾斜流入導管を設ける工程を含む方法。
[適用例17]適用例15に記載の方法であって、さらに、前記半導体ウエハの前記表面からあふれた液体化学剤を収集する工程と、前記収集した液体化学剤を前記半導体ウエハの前記表面の洗浄に再利用する工程とを備える方法。
[適用例18]適用例15に記載の方法であって、さらに、リンス剤を前記メニスカスポケット内に供給して前記半導体ウエハをリンスする工程を備え、前記リンス剤は、前記液体化学剤を供給する前記傾斜流入導管とは異なる第2の傾斜流入導管を通して供給される方法。
[適用例19]適用例18に記載の方法であって、さらに、前記液体化学剤の回収を可能にするために、前記液体化学剤メニスカスとは別個の前記リンス剤メニスカスを維持する工程を備える方法。
[適用例20]適用例18に記載の方法であって、さらに、前記メニスカスポケットの前記後縁部の外周に設けられた外側回収導管を通して前記リンス剤を二相で除去する工程を備える方法。
[適用例21]半導体ウエハ上に供給された液体媒質のメニスカスを物理的に閉じ込めるためのシステムであって、
前記半導体ウエハを軸に沿って受けて、支持して、搬送するためのキャリア機構と、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2の化学剤ヘッドであって、化学洗浄中に前記第1および第2の化学剤ヘッドによって供給される第1の液体媒質を受け入れるためのメニスカスポケットを規定する第1および第2の化学剤ヘッドと、
前記半導体ウエハの上側表面および下側表面の少なくとも一部を覆うように配置された第1および第2のリンスヘッドであって、前記化学洗浄後に前記半導体ウエハの前記表面を実質的にリンスするために第2の液体媒質を前記メニスカスポケット内に供給するよう構成された第1および第2のリンスヘッドと
を備え、
前記第1の化学剤ヘッド、前記第2の化学剤ヘッド、前記第1のリンスヘッド、および、前記第2のリンスヘッドの各々は、
前記第1または第2の液体媒質の一方を前記メニスカスポケット内に単相で供給するために、前記メニスカスポケットの内側で、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の前縁部に配置された傾斜流入導管と、
前記第1または第2の液体媒質の一方を前記ウエハの前記表面から単相で除去するために、前記メニスカスポケットの内側で、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の後縁部に配置された内側回収導管と、
前記第1または第2の液体媒質の前記メニスカスを前記メニスカスポケット内に実質的に閉じ込めるために、前記メニスカスの外周に沿って前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドの各々の前縁部に形成され、前記メニスカスの閉じ込め特性を維持するのに十分な高さを有する段構造と
を備え、
前記流入導管は、前記第1および第2の液体媒質を単相で供給することを可能にするために、前記段構造から離間されて前記メニスカスポケット内に向けられており、前記第1および第2の化学剤ヘッドによって供給される前記液体媒質は、前記ウエハの前記表面を実質的に洗浄するための液体化学剤であり、前記第1および第2のリンスヘッドによって供給される前記液体媒質は、前記化学洗浄後に前記ウエハ表面を実質的にリンスするためのリンス剤であるシステム。
[適用例22]適用例21に記載のシステムであって、
前記第1および第2の化学剤ヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1の化学剤ヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされており、
前記第1および第2のリンスヘッドは、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2のリンスヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁が、前記半導体ウエハの上側に配置された前記第1のリンスヘッドの前記メニスカスポケットに隣接する前記段構造の壁に対して外側に広がるように、位置をずらされているシステム。
[適用例23]適用例21に記載のシステムであって、前記第1および第2のリンスヘッドは、前記リンス剤を前記半導体ウエハから二相で除去するよう構成された外側回収導管を備えるシステム。
[適用例24]適用例21に記載のシステムであって、前記半導体ウエハの下側に配置された前記第2の化学剤ヘッドおよび前記第2のリンスヘッドの各々は、前縁部に形成され、前記半導体ウエハの前記表面上の前記メニスカスポケットからあふれた前記液体化学剤およびリンス剤を回収するよう構成された排液溝を備えるシステム。
[適用例25]適用例21に記載のシステムであって、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤の前記メニスカスが別個に維持されるように1ユニットに統合されるシステム。
[適用例26]適用例21に記載のシステムであって、前記化学剤ヘッドおよびリンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤の前記メニスカスが、前記液体化学剤および前記リンス剤に関連する動作制約に基づいて供給されうるように別個に維持されるシステム。
[適用例27]適用例26に記載のシステムであって、前記動作制約は動的であり、温度、流量、密度、および、圧力の内の1または複数を含むシステム。
[適用例28]適用例21に記載のシステムであって、下側に配置された前記化学剤ヘッドおよび前記リンスヘッドは、前記液体媒質のための深いメニスカスポケットを提供するよう構成されるシステム。
[適用例29]適用例21に記載のシステムであって、前記半導体ウエハの上側に配置された前記化学剤ヘッドおよび前記リンスヘッドは、前記液体化学剤および前記リンス剤による湿潤を向上させるようにパターン化された表面を前記傾斜流入導管と前記内側回収導管との間に備えるシステム。