(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4工程の前に、それぞれの前記半導体構造部における4つの側面のうち、エッチングの進行が開始する前記1つの側面にのみ前記エッチング液が供給され、他の3つの側面への前記エッチング液の供給を阻害する埋め込み部を、前記溝に形成する請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
それぞれの前記半導体構造部における前記他の3つの側面全てを覆うように、前記埋め込み部を前記溝に設ける請求項2〜5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
それぞれの前記半導体構造部における前記他の3つの側面のうち、対向する2つの側面を覆うように、前記埋め込み部を前記溝に設ける請求項2〜5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体素子には、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)などがある。LEDには、例えば、III族元素とV族元素との化合物からなるIII−V族半導体が用いられる。
【0003】
III族元素としてAl,Ga,In等を用い、V族元素としてNを用いたIII族窒化物半導体は、高融点で窒素の解離圧が高くバルク単結晶成長が困難であり、大口径で安価な導電性単結晶基板が無いという理由から、サファイア基板上に成長させることにより形成するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、サファイア基板は絶縁性であって電流が流れないため、発光ダイオードは従来、サファイア基板上に順に成長させたn型のIII族窒化物半導体層、活性層(発光層)およびp型のIII族窒化物半導体層からなる半導体積層体の一部を除去してn型のIII族窒化物半導体層を露出させ、この露出させたn型のIII族窒化物半導体層およびp型のIII族窒化物半導体層の上にn型電極およびp型電極をそれぞれ配置して、電流を横方向に流す横型構造を採用するのが通常であった。
【0005】
これに対し、近年、サファイア基板上にIII族元素(例えばAl,Gaなど)以外の特定の元素からなるバッファ層を形成後、発光層を含む半導体積層体を形成し、この半導体積層体を導電性のサポート体で支持した後、バッファ層を化学的なエッチングにより選択的に溶解してサファイア基板を剥離(リフトオフ)し、これらサポート体と半導体積層体を一対の電極で挟むことで、LEDチップを得る技術が研究されている。なお、ここで言うバッファ層は、半導体積層体のエピタキシャル成長のためのバッファ層であるとともに、サファイア基板から半導体積層体を剥離するためのリフトオフ層の役割も兼ねるものである。
【0006】
このような構造のIII族窒化物半導体LEDチップを作製するには、III族以外の金属や金属窒化物からなるリフトオフ層をエッチングすることでサファイア基板からエピタキシャル層を剥離する一般的なケミカルリフトオフ法や、エッチング中に紫外光等の光を照射し、リフトオフ層を活性化させながらエッチングを行うフォトケミカルリフトオフ法がある。これらは、特定のエッチング溶液に浸漬して、リフトオフ層をエッチングによって溶解することにより成長用基板からエピタキシャル層をリフトオフする方法であり、本明細書において「ケミカルリフトオフ法」と総称される。なお、エピタキシャル層から成長用基板をリフトオフするという表現でも良い。
【0007】
ここで、特許文献1に記載されたIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法を
図6および
図7により説明する。
図6(A)〜(F)は、従来のIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップ500の製造方法の各工程を模式側面断面図で示したものである。まず、成長用基板501の上にリフトオフ層502を介して、第1伝導型のIII族窒化物半導体層504、発光層505および前記第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層506を順次積層して半導体積層体503を形成する(
図6(A))。次に、成長用基板501の一部が露出するよう、半導体積層体503およびリフトオフ層502の一部を除去することで、独立した複数個の半導体構造部507を形成する(
図6(B))。次に、下部電極を兼ね、複数個の半導体構造部507を一体支持する導電性サポート体512を形成する(
図6(C))。そして、ケミカルリフトオフ法を用いてリフトオフ層502を除去することで、成長用基板501を複数個の半導体構造部507から剥離する(
図6(D))。その後、上部電極516を半導体構造部507の剥離面側に形成し(
図6(E))、最後に、半導体構造部507間で導電性サポート体512を
図7の破線に沿って切断等により分離することにより、各々が切断後の導電性サポート体512Aに支持された半導体構造部507を有する複数個のLEDチップ500に個片化する(
図6(F))。
【0008】
図7(A)は、個片化する前の複数の半導体構造部が形成された
図6(E)の状態のウェハの模式上面図である。
図7(A)の破線に沿った断面図が
図6(E)となっている。(B)は、(A)の破線に沿って個片化した1つのLEDチップ500の模式側面図である。このように、特許文献1では、導電性サポート体512のうち隣接する半導体構造部507の間に位置する部分に、個片化の切断ライン(破線)に沿って貫通溝514を設けた。そのため、
図6(C)から(D)にかけてリフトオフ層502を除去する際に、エッチング液が貫通溝514を介して各半導体構造部507の周囲に供給される。そのため、各半導体構造部507直下のリフトオフ層502のエッチングは、半導体構造部の外周部から中央部に向かって進行する。
【0009】
このとき、特許文献1では、
図7に示すように、半導体構造部507の横断面の形状を円形またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは整数)としている。仮に、半導体構造部の横断面の形状が、コーナーに丸みを有しない4角形の場合、リフトオフ後の個々の半導体構造部にはかなりの比率で、
図8(A)のような、コーナー近傍から中央部に伸展するX型のクラックが導入される。特許文献1では、半導体構造部の横断面の形状を上記のようにすることで、エッチング途中でコーナーに応力が集中する(発光構造部の外周からのエッチング進行のベクトル同士が衝突する)のを回避することができ、上記X型のクラックが生じるのを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らのさらなる検討によると、特許文献1に記載の方法では、リフトオフ後の個々の半導体構造部における、コーナーから中央に伸展するクラックは、有効に抑制することができるものの、
図8(B)に示すように、半導体構造部の中央部分に新たに点状のクラックがかなりの比率で生じることが判明した。このような点状のクラック発生を問題としている公開された特許文献や学術文献は皆無であるが、縦型構造のIII族窒化物半導体LEDチップの量産化のためには解決すべき重要課題である。また、この問題は、III族窒化物半導体縦型構造LEDチップにかかわらず、あらゆるケミカルリフトオフ法を使用して作製する半導体素子の量産化においても、解決すべき重要な課題である。
【0012】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、半導体構造部のコーナー近傍から中央部に伸展するX型のクラックだけでなく、中央部分に生じる点状のクラックの発生をも抑制した高品質の半導体素子、および該半導体素子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)成長用基板の上にリフトオフ層を介して半導体層を形成する第1工程と、
該半導体層の一部を除去して、前記成長用基板の一部が底部で露出する溝を格子状に形成することで、横断面の形状が略四角形の半導体構造部を複数個形成する第2工程と、
複数個の前記半導体構造部を一体支持する導電性サポート体を形成する第3工程と、
ケミカルリフトオフ法を用いて、前記リフトオフ層を除去する第4工程と、
前記半導体構造部間で前記導電性サポート体を分離することにより、各々が導電性サポート体に支持された前記半導体構造部を有する複数個の半導体素子に個片化する第5工程と、を有し、
前記第4工程では、前記導電性サポート体の前記溝の上方に位置する部分に設けた貫通孔から前記溝へエッチング液を供給するにあたり、それぞれの前記半導体構造部の1つの側面のみから前記リフトオフ層のエッチングを進行させることを特徴とする半導体素子の製造方法。
【0014】
(2)前記第4工程の前に、それぞれの前記半導体構造部における4つの側面のうち、エッチングの進行が開始する前記1つの側面にのみ前記エッチング液が供給され、他の3つの側面への前記エッチング液の供給を阻害する埋め込み部を、前記溝に形成する上記(1)に記載の半導体素子の製造方法。
【0015】
(3)前記導電性サポート体が前記埋め込み部を兼ねる上記(2)に記載の半導体素子の製造方法。
【0016】
(4)前記第3工程では、前記導電性サポート体をメッキ法により形成する上記(3)に記載の半導体素子の製造方法。
【0017】
(5)前記第3工程は、
前記溝の前記埋め込み部を形成しない部分を樹脂で塞ぐ工程と、
前記半導体構造部の表面、前記樹脂の表面、および露出している前記溝の底部にメッキ法により前記埋め込み部を兼ねた導電性サポート体を成長させる工程と、
前記導電性サポート体に前記貫通孔を形成する工程と、
前記孔を介して前記樹脂を除去することで、前記溝の前記部分を空隙とする工程と、
を有し、
前記第4工程では、前記貫通孔から前記溝の空隙へとエッチング液を供給する上記(4)に記載の半導体素子の製造方法。
【0018】
(6)それぞれの前記半導体構造部における前記他の3つの側面全てを覆うように、前記埋め込み部を前記溝に設ける上記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【0019】
(7)それぞれの前記半導体構造部における前記他の3つの側面のうち、対向する2つの側面を覆うように、前記埋め込み部を前記溝に設ける上記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【0020】
(8)
ケミカルリフトオフ法を用いて製造される半導体素子であって、
導電性サポート体と、該導電性サポート体上の一部に設けられ、横断面の形状が略四角形の半導体構造部と、を有し、
前記導電性サポート体が、前記半導体構造部における4つの側面のうち、3つの側面、または、対向する2つの側面を覆
い、
前記4つの側面のうち、前記導電性サポート体が覆っていない1つの側面の側のみから、または、前記導電性サポート体が覆っていない対向する2つの側面のうち1つの側面の側のみから、エッチング液が供給されて前記ケミカルリフトオフ法が行われることを特徴とする半導体素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の半導体構造部のそれぞれにおいて1つの側面のみからリフトオフ層のエッチングをさせるようにしたので、リフトオフ層の除去の過程で半導体構造部のリフトオフ層側表面のいずれの箇所にも応力が集中することがない。その結果、半導体構造部のコーナー近傍から中央部に伸展するX型のクラックだけでなく、中央部分に生じる点状のクラックの発生をも抑制した高品質の半導体素子、および該半導体素子を製造する方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、本明細書において、本発明に従う各実施形態のLEDチップで共通する構成要素には、原則として下2桁が同一の参照番号を付し、説明は省略する。また、LEDチップの模式断面図においては、説明の便宜上、リフトオフ層および半導体積層体を実状とは異なる比率で誇張して示す。
【0024】
本発明の一実施形態にかかるIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップ(以下、単に「LEDチップ」という。)100の製造方法を、
図1A〜Cおよび
図2A,Bにより説明する。まず、
図1と
図2との対応関係を先に説明する。
図2(a)は、
図1(b)に示した状態の発光層105における横断面図であり、
図2(a)のI−I断面が
図1(b)に相当する。なお、
図1(b)以外の断面図も同様の位置でのものである。また、
図2(a)以外の横断面図も、同様に発光層105の位置でのものである。
図2(b)は、
図1(d)に示した状態の横断面図であるが、樹脂109の位置も追記している。
図2(c)は、
図1(f)に示した状態の横断面図である。
図2(d)は、
図1(g)に示した状態の横断面図である。
【0025】
まず、成長用基板の上にリフトオフ層を介して、半導体層を形成する第1工程を行う。本実施形態では、まず、
図1(a)に示すように、成長用基板101の上にリフトオフ層102を介して、第1伝導型のIII族窒化物半導体層104、発光層105および前記第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層106を順次積層して半導体層としての半導体積層体103を形成する。
【0026】
次に、
図1(b)および
図2(a)に示すように、半導体積層体103の一部を除去して、成長用基板101の一部が底部で露出する溝108を格子状に形成することで、横断面の形状が四角形で島状に独立した半導体構造部107を複数個形成する第2工程を行う。
【0027】
次に、複数個の前記半導体構造部を一体支持する導電性サポート体を形成する第3工程を行う。本実施形態では、まず、
図2(b)に示すように、格子状の溝108を縦方向に1列おきに樹脂110で塞ぐ。これにより、各半導体構造部107において1つの側面のみが樹脂110に覆われる。続いて、各半導体構造部107における樹脂110に覆われていない3つの側面に、絶縁膜118を形成する。その後、
図1(c)に示すように、半導体構造部107の表面、樹脂110の表面、および露出している溝108の底部にメッキシード層111を形成する。この際、メッキシード層111は絶縁膜118表面にも形成される。なお、3つの側面に絶縁膜118を形成した後に、各半導体構造部107の1つの側面のみを樹脂110で覆うこともできる。また、図示しないが、実際の工程において、フォトリソグラフ法を用いても絶縁膜を側面のみへ限定的に形成することは困難のため、少なくとも、半導体構造部107の表面の一部(側面と隣り合う表面の外周部)の上にも、絶縁膜が側面から連続するように形成されることが好ましい。
【0028】
次に、樹脂110の表面上の任意の位置、本実施形態では
図2(b)に示す位置に、樹脂110上のメッキシード層111の表面から上方に延びる樹脂の柱109を形成する。その後、
図1(d)に示すように、メッキ法によりメッキシード層111上に導電性サポート体112を成長させる。このとき、
図2(b)に網点で示すように、樹脂110で塞がれていない溝108は、導電性サポート体112と同じ材料で埋められており、当該部分を埋め込み部113とする。すなわち、本実施形態では、導電性サポート体が埋め込み部113を兼ねている。
【0029】
その後、
図1(e)に示すように、樹脂の柱109を除去することにより、導電性サポート体112に貫通孔114を形成する。さらに、貫通孔114直下のメッキシード層と、樹脂110とを貫通孔114を介して除去することで、溝108のうち樹脂110により塞がれていた部分を空隙115とする。この結果、貫通孔114は、導電性サポート体112の、空隙115となった溝108の上方に位置する部分に設けられ、空隙115と連通する。
【0030】
次に、ケミカルリフトオフ法を用いて、リフトオフ層102を除去する第4工程を行う。ここで本実施形態では、すべての半導体構造部107は、1つの側面117Aが空隙115となった溝108に面しており、他の3つの側面117B,117Cは、埋め込み部113で塞がれた溝108と面している。つまり、それぞれの半導体構造部107における他の3つの側面117B,117C全てを覆うように、埋め込み部113を溝に形成している。そして、エッチング液は貫通孔114を介して空隙115となった溝108にのみ供給され、埋め込み部で塞がれた溝108へは供給されない。そのため、
図2(c)および
図1(f)の矢印で示すように、リフトオフ層102のエッチングは半導体構造部107の1つの側面117Aのみから対向する側面117Cにむけて進行する。すなわち、埋め込み部113は、それぞれの半導体構造部107における4つの側面のうち、エッチングの進行が開始する1つの側面117Aにのみエッチング液が供給され、他の3つの側面117B,117Cへのエッチング液の供給を阻害する機能を有する。
【0031】
本実施形態では、リフトオフ層102が除去されても、埋め込み部113の直下のメッキシード層111が成長用基板101と接しているため、成長用基板101は半導体構造部107から剥離されない。そこで、
図1(g)に示すように、メッキシード層111の成長用基板101と接している部位を除去して、成長用基板101を剥離する。
【0032】
最後に、半導体構造部107間で導電性サポート体112を
図2(d)の破線部にて切断等することにより分離し、
図1(h)に示すように、各々が切断後の導電性サポート体112Aに支持された半導体構造部107を有する複数個のLEDチップ100に個片化する。また、上部電極116を半導体構造部107の剥離面側に形成する。
【0033】
本発明者らは、空隙115からエッチング液を供給して、リフトオフ層102を、半導体構造部107の1つの側面117Aから、該側面に対向する側面117Cにむけて、一方向でエッチングすることにより、半導体構造部107に生じるクラックを十分に抑制することができることを見出した。
【0034】
以下、本発明の技術的意義を作用効果とともに説明する。本発明者らは、半導体構造部の中央部位に生じる点状のクラックの発生形態について鋭意検討を行った。特許文献1のような、半導体構造部の外周部からのエッチング液供給の場合、リフトオフ層は外周部から中央部に向けてエッチングが進行するが、成長用基板と半導体構造部がまさに分離している溶解フロント部、すなわち半導体構造部の、リフトオフ層を介して成長用基板と接着状態である部分と成長用基板と分離された状態となった部分との境界部で局所的な応力が加わってクラックが発生することが判明した。リフトオフ層のエッチングが終了する間際は、中央部分にリフトオフ層がまだ残っているため、中央部で応力が集中しクラックが発生する。
【0035】
一方、本実施形態の場合、エッチングの進行とそれに伴うクラック抑制の作用効果は、以下のようになる。それぞれの半導体構造部107の1つの側面117Aのみからリフトオフ層のエッチングを進行させると、上記の溶解フロント部は側面117Aからその対向側面117Cに向けて一直線のまま平行に移動するため、リフトオフ層102のエッチングが終了する最終段階で半導体構造部107の中央部分に応力が集中することを回避でき、その結果、半導体構造部107の中央部分に点状のクラックが生じるのを抑制することができる。さらに、一方向のエッチングなのでコーナーに応力が集中することはないので、コーナーから中央部に大きく延びるX型のクラックも抑制できる。
【0036】
さらに、本実施形態では、半導体構造部の横断面の形状を、円形やコーナーを丸くする形状とする必要はなく、四角形とすることができる。このため、ウェハあたりの有効面積のロスを少なくすることができる。すなわち、クラック抑制と有効面積増の両方の効果により、ウェハあたりの歩留まりを増やすことができる。
【0037】
図3は、上記製造方法で得ることができる、本発明に従うIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップ100の模式斜視図である。LEDチップ100は、導電性サポート体112Aと、導電性サポート体112A上の一部に設けられた第2伝導型半導体層106、第2伝導型半導体層106の上に設けられた発光層105、および、発光層105の上に設けられた第2伝導型とは異なる伝導型の第1伝導型半導体層104を有する、横断面の形状が略四角形の半導体構造部107と、を有し、導電性サポート体112Aが、半導体構造部107における4つの側面のうち、側面117Bおよび側面117Cの3側面を覆うことを特徴とする。側面117Aは露出している。なお、この3つの側面と導電性サポート体112Aとの間には、絶縁膜118およびメッキシード層111が存在する。LEDチップ100は、導電性サポート体112Aが下部電極として働き、半導体構造部107上に設けられた上部電極116と対になる。
【0038】
(第1工程)
成長用基板101は、サファイア基板またはサファイア基板上にAlN膜を形成したAlNテンプレート基板を用いるのが好ましい。形成するリフトオフ層の種類やIII族窒化物半導体からなる半導体積層体のAl、Ga、Inの組成、LEDチップの品質、コストなどにより適宜選択すればよい。
【0039】
リフトオフ層102は、ケミカルリフトオフ法ではCrNなどのIII族以外の金属や金属窒化物バッファ層が化学選択エッチングで溶解できるので好ましい。スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法やMOCVD法で成膜するのが好ましい。通常、リフトオフ層102の膜厚は2〜100nm程度とする。
【0040】
半導体積層体103は、第1伝導型をn型とし、第2伝導型をp型としてもよいし、この逆であってもよい。第1伝導型のIII族窒化物半導体層104、発光層105および第2伝導型のIII族窒化物半導体層106は、MOCVD法によりリフトオフ層102上にエピタキシャル成長させることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、III族窒化物半導体LEDチップを示したが、本発明の半導体素子においては、ケミカルリフトオフ法により製造する半導体素子であれば、半導体構造部の材料や層構成は特に限定されない。半導体構造部が発光層を含めばLEDとなり、含まない場合は他の半導体素子となる。半導体構造部107は、例えば、AlInGaN系、AlInGaPAs系のIII−V族や、ZnOなどのII−VI族としてもよい。半導体構造部107の膜厚は、通常0.5〜20μm程度とする。
【0042】
(第2工程)
半導体積層体103の一部の除去には、ドライエッチング法を用いるのが好ましい。これは、III族窒化物半導体層で構成される半導体積層体103のエッチングの終点を再現性良く制御できるからである。また、半導体積層体103が繋がった状態であると、後工程においてエッチング液でリフトオフ層102をエッチングすることができないため、この除去は、少なくとも成長用基板101の一部が露出するまで行うものとする。上記の本実施形態では、溝108の底部ではリフトオフ層は除去され、成長用基板101が完全に露出する例を示した。
【0043】
本発明において半導体構造部107の横断面形状は略四角形であれば特に限定されないが、有効面積の観点から矩形であることが好ましい。この略四角形とは、四角形の他には例えば、コーナーに多少丸みや面取りを有する四角形などを含む。ただし、エッチング進行方向を1方向に維持する観点から、エッチング液が供給される側面117Aは、本発明のクラック発生抑制効果を阻害しない程度に直線領域を有する必要がある。
【0044】
半導体構造部107の1辺は通常250〜3000μmとする。また、溝108の幅は、40〜200μmの範囲内とすることが好ましく、60〜100μmの範囲内とすることがより好ましい。40μm以上とすることにより、溝108へのエッチング液の供給を十分に円滑に行うことができ、200μm以下とすることにより、発光面積のロスを最小限に抑えることができるからである。
【0045】
(第3工程)
本実施形態では、
図2(b)に示すように、溝108を縦方向に1列おきに樹脂110で塞ぐ例を示したが、空隙115形成のために溝108に設ける樹脂110の位置は、それぞれの半導体構造部において1つの側面のみが空隙となり、他の3つの側面が埋め込み部113で覆われるようにすれば、特に限定されない。例えば、縦方向の溝のすべてについて、溝の左半分のみ樹脂を設けてもよい。
図4は、このような例を示した本発明の他の実施形態にかかるLEDチップ200の製造方法の一工程を模式横断面図で示したものであり、
図2(c)に対応する。この例でも、各半導体構造部207の一つの側面217Aのみに空隙215を形成し、他の側面217B,217Cは絶縁膜218およびメッキシード層211を介して埋め込み部213に覆われるようになり、矢印方向にエッチング液が進行するので、半導体構造部207に対して一方向のエッチングをすることができる。
【0046】
また、縦方向の溝にのみ空隙を形成する例を示したが、縦方向および横方向の溝に混在して空隙を形成し、発光構造体ごとに異なる位置の1側面に空隙が形成されるような形態でもよい。
【0047】
導電性サポート体112は、下部電極を兼ねることができる。導電性サポート体112は、湿式メッキまたは乾式メッキのようなメッキ法により形成することができる。たとえばCuまたはAuの電気めっきでは、メッキシード層111の表面(導電性サポート体側)としてCu,Ni,Auなどを用いることができる。この場合、メッキシード層111の成長基板側(半導体構造部側)は、半導体構造部107および絶縁膜118との密着性が十分な金属、例えばTiまたはNiを用いるのが好ましい。なお、成長基板101とメッキシード層111に対し密着性を有すると共に、後のケミカルリフトオフ工程においてはエッチングされないが、ケミカルリフトオフ工程後の剥離または除去が可能な金属または絶縁物からなる密着層を、成長基板101とメッキシード層111との間にさらに設けてもよい。密着層には、例えば、Ti、Al、Ni、Cr、Pt、Auおよびそれらの合金またはSiO
2、SiNを単層または多層で用いることができる。半導体構造部107上の導電性サポート体112の厚さは、通常80〜300μm程度である。このとき、半導体構造部107上に10〜50μm程度の薄いメッキ層を形成した後、さらに80〜200μm程度の厚いメッキ層を形成する2段階のメッキ形成を行ってもよい。このとき、2回目のメッキ形成は、リフトオフ層の除去工程(第4工程)の後に行ってもよい。
【0048】
また、導電性サポート体112を接合法で形成する場合、あらかじめ貫通孔114を形成しておいた導電性シリコン基板やCuW合金基板、Mo基板などが熱膨張係数、熱伝導率の面で適しており、それぞれの貫通孔位置をアラインメントして接合する。しかし、接合法により導電性サポート体を形成する場合、埋め込み部113を予め接合用の基板に形成することは困難である。よって、導電性サポート体112はメッキ法により形成することが好ましい。なお、上記2段階のメッキ形成における2回目のメッキ形成を接合法に変更することは容易である。
【0049】
貫通孔114の寸法は、エッチング液の供給効率の観点から、1辺の長さまたは直径が40〜100μmの矩形または円形とすることが好ましい。成長用基板を剥離後(
図1(g))、個片化(
図1(h))までの間は、複数個の半導体構造部107を導電性サポート体112のみによって一体支持するため、導電性サポート体112が一定の強度を確保できる寸法と配置とする必要がある。
【0050】
図3に示すように、導電性サポート体112Aで覆われる3つの側面117B,117Cには、絶縁膜118を形成する。メッキシード層111は金属なので、半導体構造部107の側面に直接形成すると素子として機能しないからである。絶縁膜118は、例えばSiO
2やSiNを用いることができる。また、絶縁膜118とメッキシード層111との間にさらに反射層を形成してもよい。なお、上記実施形態においては、絶縁膜118形成後にメッキシード層111を形成しているが、絶縁膜118を形成せずにメッキシード層111を形成し、ケミカルリフトオフ後に半導体構造部107とメッキシード層111の側面との間にドライエッチング等により隙間を形成して、その隙間に絶縁膜118を形成してもよい。
【0051】
図には示されないが、第3工程は、複数個の半導体構造部107の第2伝導型III族窒化物半導体層106の主表面とメッキシード層111との間に、複数個の第2伝導型III族窒化物半導体層106の各々と接するオーミック電極層を形成するのが好ましい。また、オーミック電極層とメッキシード層111との間にさらに反射層を形成するか、オーミック電極層が反射層の機能を兼ねることがより好ましい。これらの層形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法を用いることができる。
【0052】
上記オーミック電極層は、仕事関数の大きな金属、例えばPd,Pt,Rh,Au,Agなどの貴金属やCo,Niにより形成することができる。また、反射層としては、Rh等の反射率が高いため、上記オーミック電極層との兼用も可能だが、発光領域が可視領域の場合にはAgやAl層等を、紫外線領域の場合にはRhやRu層等を用いるのがより好ましい。
【0053】
第4工程では、貫通孔114から溝108の空隙115へとエッチング液を供給する。このため、第4工程の前に、半導体構造部107における4つの側面のうち、エッチングの進行が開始する1つの側面117Aにのみエッチング液が供給され、対向する側面117Cおよび他の対向する2側面117Bへのエッチング液の供給は阻害されるように、埋め込み部113を溝108に形成することが好ましい。このような埋め込み部113を形成することで、1つの側面117Aのみからリフトオフ層102のエッチングを進行させることができる。
【0054】
このような例として、本実施形態では、3つの側面117B,117C全てを覆うように埋め込み部113を溝108に設ける例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、対向する2つの側面117Bを覆うように、埋め込み部を溝108に設け、側面117Cが面する溝は空隙または導電性サポート体とは異なる材料による埋め込みとなっていてもよい。この埋め込みとしては、例えばアセトンなどの樹脂を溶解する溶液の導入経路が無く残存した樹脂などが挙げられる。アセトンの侵入経路がなければ、リフトオフ層の除去の前に、この樹脂を除去することはできず、側面117Cに面する溝にエッチング液が供給されることはない。このような構成でも、対向する2つの側面117Bの埋め込み部が側面117Cへのエッチング液の供給を阻害し、エッチング液の供給が貫通孔114から空隙115への経路に限定されることにより、1つの側面117Aのみからリフトオフ層102のエッチングを進行させることができる。
【0055】
ただし、側面117Cが面する溝を空隙にすると、リフトオフ層102のエッチングが完了したら、エッチング液が当該溝に抜け、これにより、半導体構造部107表面の側面117C側端部にクラックが入るおそれがある。よって、当該溝は、空隙とせず、埋め込みとすることが好ましい。
【0056】
このように対向する2つの側面117Bのみを覆うように埋め込み部113を溝108に設けた製造方法で得られる、本発明に従うIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップ300の模式斜視図を
図5に示す。LEDチップ300は、導電性サポート体312Aと、導電性サポート体312A上の一部に設けられた第2伝導型半導体層306、第2伝導型半導体層306の上に設けられた発光層305、および、発光層305の上に設けられた第2伝導型とは異なる伝導型の第1伝導型半導体層304を有する、横断面の形状が略四角形の半導体構造部307と、を有し、導電性サポート体312Aが、半導体構造部307における4つの側面のうち、対向する2つの側面317Bを覆うことを特徴とする。側面317A,317Cは露出している。なお、この側面317Bと導電性サポート体312Aとの間には、絶縁膜318およびメッキシード層311が存在する。LEDチップ300は、導電性サポート体312Aが下部電極として働き、半導体構造部307上に設けられた上部電極316と対になる。
【0057】
図1(d)〜(e)における樹脂の柱109および樹脂110の除去は、例えばアセトン、アルコール類などの樹脂を溶解可能な液体により行う。この液体は、沸点以下の温度まで加温してもよい。このとき、樹脂の柱109と樹脂110との間のメッキシード層111は、アセトンなどに溶解しないが、メッキシード層111は樹脂110や柱109に比べて極めて薄い膜であるため、除去は容易である。機械的に除去しても良いし、金属エッチング等により除去しても良い。樹脂の柱(ピラー)109を除去後にメッキシード層を除去し、その下の樹脂110も同様の液体により除去することにより、貫通孔114と空隙115が連通する。なお、部分的にメッキシード層111を除去し、樹脂110を露出させ、露出した樹脂110上に直接樹脂の柱(ピラー)109を形成してもよいことは勿論である。
【0058】
(第4工程)
第4工程は、前述の一般的なケミカルリフトオフ法またはフォトケミカルリフトオフ法により行うのが好ましい。使用可能なエッチング液としては、リフトオフ層がCrNの場合、硝酸第二セリウムアンモン溶液やフェリシアンカリウム系の溶液、リフトオフ層がScNの場合、塩酸、硝酸、有機酸など選択性のある公知のエッチング液を挙げることができる。
【0059】
リフトオフ後には、成長用基板101は、メッキシード層111を介して導電性サポート体112と接着していることが好ましい。これにより、中央クラックやX型のクラックだけではなく、エッチングの終端部(側面117C側)に発生する端部クラックも抑制することができる。よって、リフトオフに用いるエッチング液のメッキシード層111に対するエッチング性は、全くないか、または、リフトオフの完了後も成長用基板とメッキシード層111との接合が維持できる程度であることが好ましい。
【0060】
成長用基板101は機械的に剥がすこともできるし、メッキシード層111が成長用基板101と直接または接続層を介して接する箇所に特異的なエッチング液を用いることでメッキシード層111の一部を化学的に除去して剥離することもできる。化学的に剥離する場合の好適なエッチング液としては、例えばBHF溶液(NH
4F/HF/H
2O)が挙げられる。ただし、BHF溶液は意図しない部分の金属もエッチングしてしまう可能性がある。このため、メッキシード層111と成長用基板101との間に、上記の接続層として、リフトオフ層のエッチング液では接合を維持できるが、他の方法での剥離または選択エッチングが可能な、メッキシード層111とは異なる一時接合用の材料(金属、絶縁膜、樹脂等)を、別途形成しても良い。
【0061】
また、第4工程により露呈した半導体構造部107の面は、ウエット洗浄で清浄化されるのが好ましい。次いで、ドライエッチングおよび/またはウエットエッチングで所定量削ることができる。そのため、
図3および
図5に示すように、半導体構造部107の上面が導電性サポート体112Aよりも低くなる。
【0062】
さらに、レジストをマスクとしたリフトオフ法により上部電極としてのn型オーミック電極およびボンディングパッド電極を形成する。電極材としてはAl、Cr、Ti、Ni、Pt、Auなどが用いられ、オーミック電極、ボンディングパッドにはTi、Pt、Auなどをカバー層として成膜して、配線抵抗の低減とワイヤーボンドの密着性を向上させる。なお、半導体構造部107の露出している側面ならびに表面(ボンディングマッド表面を除く)には、SiO
2やSiNなどの保護膜(絶縁膜)を付与しても良い。
【0063】
(第5工程)
第5工程では、半導体構造部107間を例えばブレードダイサーやレーザーダイサーを用いて切断する。例えば、溝108の幅40〜200μmに対し、レーザーダイサーの切りしろは20〜40μm程度であるため、切断後に半導体構造部107の側面を覆う導電性サポート体112Aの幅は90μm以下程度となる。
【0064】
以上は代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【実施例】
【0065】
(実施例)
図1および
図2に示す製造方法で、
図3に示すLEDチップを作製した。具体的には、まず、サファイア基板上に、スパッタ法によりCr層を形成しアンモニアを含む雰囲気中で熱処理することによりリフトオフ層(CrN層、厚さ:18nm)を形成後、n型III族窒化物半導体層(GaN層、厚さ:7μm)、発光層(InGaN系MQW層、厚さ:0.1μm)、p型III族窒化物半導体層(GaN層、厚さ:0.2μm)を順次積層して半導体積層体を形成し、その後、サファイア基板の一部が露出するよう、半導体積層体の一部をドライエッチングにより除去して格子状の溝を形成することで、横断面の形状が正方形の島状に独立した複数個の半導体構造部を形成した。半導体構造部の幅Wは1200μmであり、個々の素子の配置は碁盤の目状とした。素子間のピッチは1300μm、すなわち溝幅は100μmである。
【0066】
各々のp型III族窒化物半導体層の上に、EB蒸着法によりオーミック電極層(Ag、厚さ:0.2μm)を形成した。また、プラズマCVDにより絶縁膜(SiO
2、厚さ0.6μm)を形成し、各々の半導体構造部における樹脂に覆われない3つの側面と半導体構造部上の一部とを覆う箇所以外の絶縁膜をエッチングにより除去した。その後、エッチング液を供給するための空隙を設けるために、
図2(b)に示すように、溝の一部にフォトリソグラフ法を用いて樹脂(フォトレジスト)を設けた。その後、スパッタ法により、半導体構造部の表面(厳密には上記のオーミック電極層および絶縁膜の表面上)、樹脂の表面、および露出している溝の底部および側面にメッキシード層(Ti/Ni/Au、各厚さ:0.02μm/0.2μm/0.6μm)を形成した。
【0067】
次に、フォトリソグラフ法を用いて、
図2(b)に示す位置に、100μm角の貫通孔形成用のピラーを樹脂(厚膜フォトレジスト:厚さ30μm)により形成した。その後、メッキによりメッキシード層上にCu(半導体積層体上の厚さ:100μm)を形成し、導電性サポート体とした。めっきは硫酸銅系の電解液を用いた電気めっきであり、液温は25〜30℃の範囲で、成膜速度は35μm/hrであった。これにより、メッキシード層を形成した溝にはCuメッキによる埋め込み部が形成された。このとき、貫通孔形成用のピラーを設けた部位にはCuはめっきされず、該ピラーをアセトンで除去することで、導電性サポート体中を貫通して樹脂を設けた溝に通じる、貫通孔を形成した。この際、貫通孔直下のメッキシード層は該ピラーをアセトンで除去した後、HF添加のAuエッチング液を用いて貫通孔直下部を除去した。この貫通孔を介して、引き続きアセトンにより溝の樹脂を取り除き、空隙を形成した。
【0068】
その後、エッチング液としてCr選択エッチング液を用いて、ケミカルリフトオフ法によりリフトオフ層を除去した。このとき、エッチング液への浸漬によりエッチング液が上記の貫通孔を通ってリフトオフ層に供給され、それぞれの半導体構造部では、リフトオフ層のエッチングが1つの側面のみから進行した。その後、サファイア基板側を僅かにBHF液に浸し、溝の底部においてサファイア基板と接合している箇所のメッキシード層のTiを溶解させ、サファイア基板を剥離した。
【0069】
リフトオフ後の半導体構造部を光学顕微鏡によって観察し、マクロ・マイクロクラックの発生状況を調べた。調査個数は38万個で、マクロ・マイクロクラックともに発生個数は皆無であった。
【0070】
その後、露出したn型III族窒化物半導体層を、ドライエッチングにより厚さ方向に3μmエッチングし、KOH溶液によりさらに表面を凹凸化させた。その後、スパッタ法によりn型III族窒化物半導体層上にTi/Alを用いてn型オーミック電極を形成し、さらにNi/Auによるパッド電極を形成した。その後、露出している半導体構造部の表面、側面および露出している埋め込み部表面上にプラズマCVDによる絶縁膜(SiO
2、厚さ0.3μm)を形成し、パッド電極上部の絶縁膜をエッチングにより除去してパッド電極上部を露出させた。
【0071】
レーザーダイサーにより埋め込み部を有する導電体サポート部を切断し、半導体構造部における4つの側面のうち、3つの側面を埋め込み部が覆う発光素子を形成した。
【0072】
(比較例)
図6および
図7に示す従来の製造方法でLEDチップを作製した。具体的には、まず、サファイア基板上に、実施例と同じ半導体積層体を形成し、その後、サファイア基板の一部が露出するよう、半導体積層体の一部をドライエッチングにより除去して溝を形成することで、横断面の形状が直径1000μmの円形の島状に独立した複数個の半導体構造部を形成した。半導体構造部の素子間のピッチは1250μmである。
【0073】
個別の半導体構造部のp層上に実施例と同様のオーミック電極層を形成し、次いで全ての溝にフォトレジストを埋め込むとともに個々の半導体構造部のp−オーミック電極層の部分は開口して、メッキシード層(Ni/Au/Cu)を形成した。次いで、後述のCuめっきの際に成膜を防止するため、厚膜レジストによるピラーの形成を行った。形成位置は
図7(A)のように半導体構造部を取り囲む升目の辺上とした。なお、ピラー形成位置の接続層はエッチングにより予め除去した。
【0074】
次いで、硫酸銅系の電解液を用いてCuを80μm電気めっきし、導電性サポート体を形成した。液温は25〜30℃の範囲で、成膜速度は25μm/hrであった。次いで、ピラー部ならびに溝に埋め込んだレジストをアセトンにより除去し、サポート体の上下に貫通する貫通溝を形成した。なお、
図7(A)に示す貫通溝は、幅70μm、長さ900μmとして四辺に形成した。
【0075】
その後、エッチング液としてCr選択エッチング液を用いて、ケミカルリフトオフ法によりリフトオフ層を除去してサファイア基板を剥離した。このとき、それぞれの半導体構造部では、リフトオフ層のエッチングが半導体構造部の外周部から中央部に向かって進行し、中央部のリフトオフ層が最後に除去された。
【0076】
リフトオフ後の半導体構造部を光学顕微鏡によって観察したところ、比較例では調査個数1900個のうち、コーナーから中央部に大きく伸展するX型のクラックが発生したものは38個(発生率は2.0%)であったが、半導体構造部の中央領域に点状のクラックが発生した試料が1045個あり、発生率は55.0%であった。