【文献】
中川聰子,PL法によるシリコンウェーハ中の低濃度炭素不純物定量への取り組み(1),2010年秋季第71回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2010年,p.15-325(16a-ZT-5)
【文献】
中川聰子,パワーデバイス用MCZ-Si基板における低濃度炭素定量法の開発,第58回応用物理関係連合講演会 講演予稿集,2011年 3月 9日,p.418 (26p-KL-7)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年開発されているパワーデバイスは、高耐圧化を目指すものが多い。パワーデバイスの高耐圧化には、シリコンエピタキシャルウエハのエピタキシャル層における炭素濃度が影響する。そのため、この炭素濃度を、より一層低減することが求められている。
具体的に求められる炭素濃度は、5×10
14atoms/cm
3以下である。このように炭素濃度が非常に低いシリコンエピタキシャルウエハを、デバイスの規格に応じて炭素濃度を制御しながら安定的に製造及び供給することが要求されている。
【0003】
しかしながら、5×10
14atoms/cm
3以下という炭素濃度を評価する方法は、日本工業規格(JIS)やSemiconductor Equipmentand Materials International(SEMI)規格には定められていない。
炭素濃度を評価する方法としては、例えば薄膜の炭素濃度を評価することができる二次イオン質量分析法(SIMS)がある。
しかしながら、この二次イオン質量分析法(SIMS)の場合、5×10
14atoms/cm
3以下の炭素濃度を定量的に測定することは困難であった。即ち、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて測定し検出されないことにより、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下であることが分かるが、具体的な炭素濃度を特定し得ないものであった。
【0004】
また、他の評価方法として、特許文献1には、シリコン試料に電子線を照射することにより生じる光の強度を測定し(フォトルミネッセンス法)、更に炭素又は酸素イオンを打ち込んだ後にも同様の測定をすることで、シリコン中の炭素濃度を高感度に測定できる方法が提案されている。しかしながら、この文献には、測定可能な炭素濃度については示されていない。しかも、イオン注入を行うため、注入損傷による炭素不純物以外の発光や炭素欠陥準位を持つが発光はしない非発光センターの増加により、本来含有されているシリコン中の炭素濃度を高精度に評価することが困難であった。
【0005】
更に、別の方法として、特許文献2において、赤外吸収分光法(IR)によって炭素濃度を測定したサンプルに対してフォトルミネッセンス測定を行って、IR法による炭素濃度とフォトルミネッセンス測定よって得られる強度との関係を求めれば、炭素濃度が未知のサンプルに対するフォトルミネッセンス測定を行うことにより、その炭素濃度を推定できるとしている。
しかしながら、IRで評価している炭素濃度は、最低でも8.7×10
15atoms/cm
3である。また、IRの検出限界は1×10
15atoms/cm
3程度に過ぎず、IRでは、二次イオン質量分析法(SIMS)の場合と同様に、その検出限界より低い炭素濃度を測定することはできない。
そのため、炭素濃度が低いサンプルについては、フォトルミネッセンス測定よって得られる強度を上記の関係に参照することはできないか、又は、炭素濃度を高い精度で推定することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したように、従来から炭素濃度がデバイス特性に影響を及ぼすことは知られているが、5×10
14atoms/cm
3以下という非常に低濃度の炭素とデバイス特性とがどのような関係を有するかについては明らかにされていない。しかも、上記したように、その炭素濃度の評価方法も確立されていない。そのため、低炭素濃度のデバイスにおいて所望の特性を達成するべくウエハの製造工程を最適化することができず、これが、デバイス作成プロセスの歩留まりに重大な影響を与える可能性があった。
【0009】
本発明者らは、上記状況に鑑み、フォトルミネッセンス法に着目して鋭意研究した。その結果、エピタキシャル層の炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下という低炭素濃度のシリコンエピタキシャルウエハの発光スペクトル強度又は強度比と、デバイス特性であるコレクタ・エミッタ間の飽和電圧とが正の相関関係を有することを知見し、デバイス作成前にコレクタ・エミッタ間の飽和電圧を推定する飽和電圧推定方法を想到した。
即ち、本発明者らは、フォトルミネッセンス法によって、5×10
14atoms/cm
3以下の炭素濃度を定量するのではなく、シリコンエピタキシャルウエハの発光スペクトル強度又は強度比から、デバイス作成前にデバイス特性(コレクタ・エミッタ間飽和電圧)を推定する飽和電圧推定方法を想到したものである。
更に、本発明者らは、飽和電圧推定方法を利用して、シリコンエピタキシャルウエハの良否を判定するシリコンエピタキシャルウエハの製造方法を想到したものである。
【0010】
本発明の目的は、エピタキシャル層の炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコンエピタキシャルウエハから半導体デバイスを高い歩留りで作成するのに有利な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる飽和電圧推定方法よると、2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハから各々がなる複数の第1ロットを準備する第1工程であって、前記複数の第1ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層をエピタキシャル成長法で2以上の第1ウエハに同時に形成するプロセスを複数回行うことによって得られたものである第1工程と、前記複数の第1ロットの各々について、前記2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハの一部に粒子線を照射して前記シリコン層中の炭素不純物を発光活性化させ、更に前記シリコン層に励起光を照射して発光を生じさせ、前記炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求めるとともに、前記2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハの残りから、コレクタとエミッタとを各々が備えた1以上の半導体デバイスを作成して、各デバイスのコレクタ・エミッタ間飽和電圧を測定し、これにより、前記強度又は強度比と前記飽和電圧値との関係を求める第2工程と、2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハからなる第2ロットを準備する第3工程であって、前記第2ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層をエピタキシャル成長法で2以上の第2ウエハに同時に形成するプロセスを行うことによって得られたものである第3工程と、前記2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハの一部に粒子線を照射して前記シリコン層中の炭素不純物を発光活性化させ、更に前記シリコン層に励起光を照射して発光を生じさせ、前記炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求め、この強度又は強度比を前記関係に参照することにより、前記2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハの残りから作成される、コレクタとエミッタとを備えた半導体デバイスのコレクタ・エミッタ間飽和電圧を推定する第4工程とを含
み、前記第2及び第4工程の各々において、前記強度又は強度比は、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度とシリコンの自由励起子発光の強度との比、又は、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度とシリコンの電子正孔液滴発光の強度との比である飽和電圧の推定方法が提供される。
【0012】
本発明にかかる飽和電圧推定方法よると、エピタキシャル層であるシリコン層の発光を測定することにより、コレクタ・エミッタ間の飽和電圧を推定することができる。従って、例えば、或る製造ロットのシリコンエピタキシャルウエハについて、許容範囲内の飽和電圧を達成しないことが推定された場合に、同じ製造ロット残りのウエハを半導体デバイスの作成プロセスへ供給しなければ、このプロセスの歩留まりを向上させることができる。また、或るシリコンエピタキシャルウエハについて、許容範囲内の飽和電圧を達成しないことが推定された場合、例えば、そのウエハの製造条件が最適な条件から外れたと予想することができる。従って、第1側面に係る推定方法を利用すると、ウエハの製造条件を最適な状態に維持し易くなり、ウエハの製造プロセスの歩留まりも向上させることができる。
【0013】
本発明にかかるシリコンエピタキシャルウエハの製造方法によると、2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハから各々がなる複数の第1ロットを準備する第1工程であって、前記複数の第1ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層をエピタキシャル成長法で2以上の第1ウエハに同時に形成するプロセスを複数回行うことによって得られたものである第1工程と、前記複数の第1ロットの各々について、前記2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハの一部に粒子線を照射して前記シリコン層中の炭素不純物を発光活性化させ、更に前記シリコン層に励起光を照射して発光を生じさせ、前記炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求めるとともに、前記2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハの残りから、コレクタとエミッタとを各々が備えた1以上の半導体デバイスを作成し、各デバイスのコレクタ・エミッタ間飽和電圧を測定し、これにより、前記強度又は強度比と前記飽和電圧値との関係を求める第2工程と、2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハからなる第2ロットを準備する第
3工程であって、前記第2ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層をエピタキシャル成長法で2以上の第2ウエハに同時に形成するプロセスを行うことによって得られたものである第3工程と、前記2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハの一部に粒子線を照射して前記シリコン層中の炭素不純物を発光活性化させ、更に前記シリコン層に励起光を照射して発光を生じさせ、前記炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求め、この強度又は強度比と、前記関係と、予め定められているコレクタ・エミッタ間飽和電圧の許容範囲とから、前記2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハの良否を判断する第4工程とを含
み、前記第2及び第4工程の各々において、前記強度又は強度比は、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度とシリコンの自由励起子発光の強度との比、又は、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光の強度とシリコンの電子正孔液滴発光の強度との比であるシリコンエピタキシャルウエハの製造方法が提供される。
【0014】
本発明にかかるシリコンエピタキシャルウエハの製造方法によると、エピタキシャル層であるシリコン層の発光を測定することにより、コレクタ・エミッタ間飽和電圧が許容範囲内にある半導体デバイスをそのシリコンエピタキシャルウエハから作成できるか否かを判定することができる。即ち、半導体デバイスを作成する前に、シリコンエピタキシャルウエハの良否を判断することができる。従って、半導体デバイスの作成プロセスの歩留まりが向上する。また、或るシリコンエピタキシャルウエハが不良品である場合、例えば、そのウエハの製造条件が最適な条件から外れたと予想することができる。従って、第2側面に係る製造方法によると、ウエハの製造条件を最適な状態に維持し易くなり、ウエハの製造プロセスの歩留まりも向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明の実施形態において利用する原理ついて説明する。
本実施形態では、フォトルミネッセンス法を利用する。フォトルミネッセンス法は、従来から知られた方法であり、物質に励起光を照射して電子を励起させ、励起した電子が基底状態に遷移する際に発生する光を観測する方法である。
具体的には、半導体(シリコン)に禁制帯よりも高いエネルギーを持つ光を照射すると、電子・正孔対が形成される。このとき、半導体(シリコン)結晶中には熱平衡状態よりも過剰の電子・正孔対が形成されるため、過剰の電子・正孔対が再結合して平衡状態に戻ろうとする。この再結合過程において、光を放出する。この放出される光のスペクトルは、半導体結晶中の不純物や欠陥の影響を受けやすい。そのため、発光を分光し詳細に解析すれば、半導体(シリコン)中の炭素不純物の情報が得られる。
【0017】
励起光照射に先立って、半導体結晶に粒子線を照射すると、この結晶中の不純物が発光活性化する。例えば、
図1に示すように、シリコンウエハ1に電子線を照射すると、シリコン結晶中では、以下に示すように放射線損傷又は欠陥が生じる。
Si(s)+e→Si(i)+V
Si(i)+C(s)→Si(s)+C(i)
C(i)+C(s)→Ci-Cs or C(i)+O(i)→Ci-Oi
ここで、Vは空孔(Vacancy)を表し、eは電子を表している。(s)は、その直前に記載した原子が格子点に位置していることを表している(置換型:substitutional)。(i)は、その直前に記載した原子が格子点間に位置していることを表している(interstitial)。即ち、C(i)は格子間炭素を表し、C(s)は置換型炭素を表し、O(i)は格子間酸素を表している。また、Ci-Csは格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥を表し、Ci-Oiは格子間炭素と格子間酸素との複合欠陥を表している。
【0018】
このように、1次欠陥の導入をきっかけに、複合欠陥Ci-Oi及びCi-Csが生成される。これらCi-Oi及びCi-Cs欠陥は、励起光、具体的には、可視光や紫外光などのレーザー光を照射すると光を放出する。これら欠陥が放出する光の強度又は強度比は、前記Ci-Oi及びCi-Cs欠陥の数等の影響を受ける。そのため、この発光強度又は強度比を解析することによって、半導体(シリコン)中の炭素不純物の情報を得ることができる。
【0019】
図2に、シリコンウエハの発光スペクトルの一例を示す。なお、
図2において、縦軸は発光強度(Photoluminescence(PL) Intensity)であり、横軸は光子エネルギー(Photon Energy)である。
図2に示されるように、Ci-Cs複合欠陥の発光は光子エネルギーが0.97eVであり、Ci-Oi複合欠陥の発光は光子エネルギーが0.79eVである。なお、シリコンの自由励起発光の光子エネルギーは、1.1eVであり、シリコンに固有である。以下、シリコンの自由励起発光をFE-lineという。また、シリコンの電子正孔液滴(EHD)発光の格子エネルギーは、1.08eVであり、シリコンに固有である。
【0020】
次に、本実施形態に係る飽和電圧の推定方法について説明する。
一般に、シリコンエピタキシャルウエハの製造において、エピタキシャル法によるシリコン層の成膜は、バッチプロセスによって行っている。このバッチプロセスでは、1回の成膜プロセスで、複数のウエハ、例えばシリコンウエハにエピタキシャル層としてシリコン層を形成する。同一の成膜プロセスでエピタキシャル層を同時に形成したシリコンエピタキシャルウエハ、即ち、同一ロットのシリコンエピタキシャルウエハは、エピタキシャル層の炭素濃度がほぼ等しい。これに対し、異なる成膜プロセスでエピタキシャル層を形成したシリコンエピタキシャルウエハ、即ち、別ロットのシリコンエピタキシャルウエハ間では、エピタキシャル層の炭素濃度にばらつきを生じることがある。
【0021】
シリコンエピタキシャルウエハから作成され、コレクタとエミッタとを備えた半導体デバイス、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのバイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間飽和電圧は、そのデバイスの作成条件を十分に管理すれば、エピタキシャル層の炭素濃度と強い相関を示す。本実施形態に係る方法では、これを利用して、飽和電圧を推定する。
この推定方法について、更に詳しく説明する。
【0022】
先ず、2以上の第1シリコンエピタキシャルウエハから各々がなる複数の第1ロットを準備する。これら第1ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下(二次イオン質量分析法(SIMS)において検出されない)のシリコン層(エピタキシャル層)をエピタキシャル成長法で複数の第1ウエハに同時に形成するプロセスを繰り返すことによって得られたものである。
これら第1ロットは、異なるインゴットから切り出したウエハを第1ウエハとして使用して準備してもよい。但し、より正確な推定を行ううえでは、これら第1ロットは、同一のインゴットから切り出したウエハを第1ウエハとして使用して準備することが望ましい。
エピタキシャル層のドーパント濃度は、1×10
18atoms/cm
3以下であることが好ましい。これは、ドーパント濃度が高い場合、オージェ再結合の影響により発光が得られないことがあるためである。
【0023】
次に、各第1ロットから、第1シリコンエピタキシャルウエハの一部を抜き取る。そして、抜き取った第1シリコンエピタキシャルウエハに粒子線を照射して、エピタキシャル層中の炭素不純物を発光活性化させる。更に、このエピタキシャル層に励起光を照射して発光を生じさせ、炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求める。なお、励起光の照射及び発光強度の測定は、低温で、例えば、試料を液体ヘリウムで冷やしながら行う。
図3に、エピタキシャル層の発光スペクトルの一例を示す。
図3において、縦軸は発光強度(Photoluminescence (PL) Intensity)であり、横軸は光子エネルギー(Photon Energy)である。なお、電子正孔液滴(Electron-Hole Droplet;EHD)発光及びFE発光については、測定によって得られた強度を5倍して表示している。
【0024】
また、各第1ロットの残りの第1シリコンエピタキシャルウエハから、コレクタとエミッタとを各々が備えた1以上の半導体デバイスを作成する。ここでは、半導体デバイスの性能のばらつきが、第1シリコンエピタキシャルウエハの特性のばらつきにのみ起因するように、アニール工程などの各工程を厳密に管理する。その後、これらデバイスのコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を測定する。なお、このコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)は、そのデバイスのON電圧V(on-switch)に関連したパラメータである。
以上のようにして、発光強度又は強度比と飽和電圧値との関係を求める。
【0025】
図4は、格子間炭素と置換型炭素との複合欠陥に由来する発光(G-line発光)の強度とコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)との関係の一例を示すグラフである。
図4において、縦軸はG-line発光強度であり、横軸はコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)である。
図4に示す発光強度と飽和電圧との関係は、13組の第1ロットを準備し、各第1ロットについて、発光強度の作成並びにデバイスの作成及び飽和電圧の測定を行うことによって得られたものである。第1ロットは2組以上準備すればよい。
【0026】
次に、2以上の第2シリコンエピタキシャルウエハからなる第2ロットを準備する。第2ロットは、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下(二次イオン質量分析法(SIMS)において検出されない)のシリコン層(エピタキシャル層)をエピタキシャル成長法で複数の第2ウエハに同時に形成するプロセスを行うことによって得られたものである。
第2ロットは、第1ウエハを切り出したのとは異なるインゴットから切り出したウエハを第2ウエハとして使用して準備してもよい。但し、より正確な推定を行ううえでは、第1ウエハを切り出したのと同一のインゴットから切り出したウエハを第2ウエハとして使用することが望ましい。なお、第2ロットについても、エピタキシャル層のドーパント濃度は、1×10
18atoms/cm
3以下であることが好ましい。
【0027】
次に、第2ロットから、第2シリコンエピタキシャルウエハの一部を抜き取る。そして、抜き取った第2シリコンエピタキシャルウエハに粒子線を照射して、エピタキシャル層中の炭素不純物を発光活性化させる。この粒子線の照射は、第1シリコンエピタキシャルウエハに対して行ったのと同一の条件で行う。
更に、このエピタキシャル層に励起光を照射して発光を生じさせ、炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求める。この励起光の照射及び発光強度又は強度比の測定は、第1シリコンエピタキシャルウエハに対して行ったのと同一の条件で行う。
その後、強度又は強度比を上記関係に参照することにより、第2ロットの残りの第2シリコンエピタキシャルウエハの残りから作成される、コレクタとエミッタとを備えた半導体デバイスのコレクタ・エミッタ間飽和電圧を推定する。
【0028】
この推定方法によると、エピタキシャル層であるシリコン層の発光を測定することにより、コレクタ・エミッタ間飽和電圧を推定することができる。従って、例えば、或る製造ロットのシリコンエピタキシャルウエハについて、許容範囲内の飽和電圧を達成しないことが推定された場合に、同じ製造ロットの残りのウエハを半導体デバイスの作成プロセスへ供給しなければ、このプロセスの歩留まりを向上させることができる。また、或るシリコンエピタキシャルウエハについて、許容範囲内の飽和電圧を達成しないことが推定された場合、例えば、そのウエハの製造条件が最適な条件から外れたと予想することができる。従って、この推定方法を利用すると、ウエハの製造条件を最適な状態に維持し易くなり、ウエハの製造プロセスの歩留まりも向上させることができる。
この推定方法では、炭素不純物に由来する発光のうち、Ci-Cs複合欠陥の発光(0.97eV:G-line発光)の強度を用いることが好ましい。
【0029】
シリコン中の炭素濃度の評価には、例えば、G-lineの発光強度又はCi-Oi複合欠陥の発光(0.79eV:以下、C-line発光という)強度を用いることができる。但し、シリコンエピタキシャル層の酸素濃度は1×1016atoms/cm3以下と低濃度であり、同一条件でエピタキシャル成長させた場合、エピタキシャル層の酸素濃度はほぼ一定とみなすことができる。即ち、それ故、G-line発光を利用した場合、C-line発光を利用した場合と比較して強い発光強度が得られ、また、C-line発光は上記評価を妨げない。そのため、G-lineの発光強度を利用することが好ましい。
【0030】
上記の推定方法において、炭素不純物に由来する発光の強度を用いる代わりに、強度比を用いる場合、この強度比は、炭素不純物に由来する発光の強度とシリコンに由来する発光の強度との比、例えば、G-lineの発光強度とFE-lineの発光強度との比、又は、G-lineの発光強度とシリコンのEHD発光の強度との比であることが好ましい。これら強度比を用いた場合、表面再結合の影響、測定誤差、測定日による誤差等を補正でき、上記の関係を高い精度で求めることができる。
【0031】
エピタキシャルシリコンウエハに照射して、炭素不純物を発光活性化させる粒子線(高エネルギー粒子)としては、例えば、電子線、プロトンビーム、又は各種のイオンビームを用いることができる。
但し、プロトンやイオンは、電子よりも粒子が大きいため、単空孔(V)を導入するだけでなく、複空孔等の2次欠陥も多く生成する。複空孔等の2次欠陥が多く生成した場合、格子間シリコンの発光、結晶ひずみによる発光、各種照射ダメージに由来する発光など、炭素不純物に由来する発光以外の発光が多くなる。また、この場合、欠陥準位を持つが発光はしない非発光センターの導入量も多くなり、炭素不純物に由来する発光に寄与できるキャリアの個数が減る。炭素とは関係の無い発光や非発光センターの個数を抑えた方が、炭素不純物に由来する発光の強度は、エピタキシャル層の炭素濃度をより正確に反映するようになる。従って、粒子線としては、電子線が最も適している。
【0032】
電子線の照射量は、1×10
13electrons/cm
2以上であることが好ましい。これは、発光強度を正確に測定するべく、エピタキシャル層中に最大で5×10
14atoms/cm
3の濃度で存在している炭素を十分発光活性化させるためである。
電子線の照射量は、1×10
17electrons/cm
2以下であることが好ましい。これは、照射量が大きすぎると、ウエハに対する照射ダメージが大きくなり、非発光センターの個数が増加し、発光強度が弱くなるためである。
【0033】
励起光の波長は、エピタキシャル層の厚さに応じて適宜選択する。これは、シリコンへの励起光の進入深度が波長依存性を持つためである。例えば、エピタキシャル層の厚さが10μm以上のとき、励起光の波長は650nm以下がよい。なお、エピタキシャル層が薄いと、波長によっては、発生したキャリアがエピタキシャル層ではなく、シリコン基板へ流れ込んでしまう可能性がある。この場合、発光強度は、エピタキシャル層の炭素濃度を正確には反映しない。
【0034】
次に、本実施形態に係るシリコンエピタキシャルウエハの製造方法について説明する。
図5は、G-line発光強度とFE発光強度との比と、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)との関係の一例を示すグラフである。
図6は、本発明の一実施形態にかかるシリコンエピタキシャルウエハの製造方法を示すフローチャートである。
図7は、G-line発光強度とFE発光強度との比の例を示すグラフである。
この製造方法では、上述した推定方法を利用する。即ち、先ず、上述した推定方法と同様に、発光強度又は強度比と飽和電圧値との関係を求める(
図6;工程S1)。
【0035】
次に、
図5に示すように、予め定められているコレクタ・エミッタ間飽和電圧の第1許容範囲(第1規格)を上記関係に参照して、発光強度又は強度比の第2許容範囲(第2規格)を求める(
図6;工程S2)。なお、この工程S2は省略することができる。
次いで、上述した推定方法と同様に、第2ロットを準備し、この第2ロットから第2シリコンエピタキシャルウエハの一部を抜き取る(
図6;工程S3)。そして、抜き取った第2シリコンエピタキシャルウエハに粒子線を照射してエピタキシャル層中の炭素不純物を発光活性化させ、更にエピタキシャル層に励起光を照射して発光を生じさせ、発光スペクトルを測定する(
図6;工程S4)。更に、この発光スペクトルから、炭素不純物に由来する発光の強度又は強度比を求める(
図6;工程S5)。
【0036】
この強度又は強度比と、上記関係と、予め定められているコレクタ・エミッタ間飽和電圧の許容範囲とから、第2ロットの第2シリコンエピタキシャルウエハの良否を判断する。例えば、
図7に示すように、この強度又は強度比が第2許容範囲内にある場合には第2ロットの第2シリコンエピタキシャルウエハは良品であると判断し、この強度又は強度比が第2許容範囲外にある場合には第2ロットの第2シリコンエピタキシャルウエハは不良品であると判断する(
図6;工程S6)。或いは、この強度又は強度比を上記関係に参照して飽和電圧を推定し、この飽和電圧が第1許容範囲内にある場合(
図7のサンプル1乃至4)には第2ロットの第2シリコンエピタキシャルウエハは良品であると判断し、飽和電圧が第1許容範囲外にある場合(
図7のサンプル5乃至7)には第2ロットの第2シリコンエピタキシャルウエハは不良品であると判断する。
良品であると判断した第2ロットは出荷する(
図6;工程7)。不良品であると判断した第2ロットについては、例えば、第2シリコンエピタキシャルウエハを分析するか、又は、その製造プロセスの条件を確認することなどにより、不良の原因を分析する(
図6;工程S8)。そして、その結果に基づいて、シリコンエピタキシャルウエハの製造プロセスを最適化する(
図6;工程S9)。
【0037】
この製造方法によると、エピタキシャル層であるシリコン層の発光を測定することにより、コレクタ・エミッタ間飽和電圧が許容範囲内にある半導体デバイスをそのシリコンエピタキシャルウエハから作成できるか否かを判定することができる。即ち、半導体デバイスを作成する前に、シリコンエピタキシャルウエハの良否を判断することができる。従って、半導体デバイスの作成プロセスの歩留まりが向上する。また、或るシリコンエピタキシャルウエハが不良品である場合、例えば、そのウエハの製造条件が最適な条件から外れたと予想することができる。従って、この製造方法によると、ウエハの製造条件を最適な状態に維持し易くなり、ウエハの製造プロセスの歩留まりも向上させることができる。
以下に、本発明の実施例を記載する。
【0038】
[実施例1]
表面を鏡面研磨した2枚のシリコンウエハ(ポリッシュトウエハ)に、エピタキシャル成長法により、厚さが50μm、ドーパント濃度が1×10
14atoms/cm
3、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層(エピタキシャル層)を同時に形成した。これにより、2枚シリコンエピタキシャルウエハを得た。尚、炭素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)において検出されなかった。
これらシリコンエピタキシャルウエハの一方に、大気雰囲気中で電子線を照射した。電子線の照射量は、1×10
15electrons/cm
2とした。電子線照射は、ウエハの温度が100℃を超えない条件にて実施した。以上のようにして、エピタキシャル層の炭素不純物を発光活性化させた。
【0039】
その後、このシリコンエピタキシャルウエハに対して、フォトルミネッセンス低温測定を行った。具体的には、ウエハを4.2Kの液体ヘリウムに浸した状態で、波長が532nmの励起レーザー光(可視光)を、エピタキシャル層表面における強度が100mWとなるようにウエハに照射し、発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルから、G-line発光強度とFE発光強度との比を得た。
【0040】
続いて、上記のエピタキシャルウエハの他方から、バイポーラトランジスタを含んだ半導体デバイスを作成し、このトランジスタのコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を測定した。
シリコンエピタキシャルウエハの製造、発光活性化、発光スペクトルの測定、半導体デバイスの作成、及び飽和電圧測定を含む一連の操作を繰り返した。これによって得られたデータ、即ち、G-line発光強度とFE発光強度との比及びコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)をプロットして、
図5に示す相関図を得た。
【0041】
上記のシリコンエピタキシャルウエハと同一条件で複数のシリコンエピタキシャルウエハを同時に製造した。この製造プロセスを繰り返し、製造ロット毎にウエハを1枚ずつ抜き取った。抜き取ったウエハの各々に、上記と同様の条件で、電子線照射及びフォトルミネッセンス低温測定を実施した。これにより、G-line発光強度とFE発光強度との比を、製造ロット毎に得た。これら比を
図5の関係に参照することにより飽和電圧Vce(sat)を予測した。そして、飽和電圧Vce(sat)が要求範囲内にあるロットのみを出荷した。
出荷先では、出荷した各ロットのシリコンエピタキシャルウエハから、上記の半導体デバイスが作成され、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)の測定が行われた。その結果、出荷したロットのウエハから作成したデバイスの飽和電圧Vce(sat)は全て要求範囲内にあることが確認された。
【0042】
[実施例2]
エピタキシャル層として、厚さが1μm、ドーパント濃度が1×10
14atoms/cm
3、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層を形成したこと以外は実施例1と同様の方法により、シリコンエピタキシャルウエハを得た。これらシリコンエピタキシャルウエハを用い、励起レーザー光として波長が355nmの紫外光を使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めた。
【0043】
次いで、上記のシリコンエピタキシャルウエハと同一条件で複数のシリコンエピタキシャルウエハを同時に製造した。この製造プロセスを繰り返し、製造ロット毎にウエハを1枚ずつ抜き取った。抜き取ったウエハの各々に、上記と同様の条件で、電子線照射及びフォトルミネッセンス低温測定を実施した。これにより、G-line発光強度とFE発光強度との比を、製造ロット毎に得た。これら比を上記関係に参照することにより飽和電圧Vce(sat)を予測した。そして、飽和電圧Vce(sat)が要求範囲内にあるロットのみを出荷した。
出荷先では、出荷した各ロットのシリコンエピタキシャルウエハから、上記の半導体デバイスが作成され、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)の測定が行われた。その結果、出荷したロットのウエハから作成したデバイスの飽和電圧Vce(sat)は全て要求範囲内にあることが確認された。
【0044】
[比較例1]
エピタキシャル層として、厚さが50μm、ドーパント濃度が1×10
14atoms/cm
3、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層を形成したこと以外は実施例1と同様の方法により、シリコンエピタキシャルウエハを得た。これらシリコンエピタキシャルウエハを用い、電子線照射量を1×10
18electrons/cm
3としたこと以外は例1と同様の方法により、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めようとした。しかしながら、電子線照射量が過剰であったため、非発光センターが増加し、炭素に由来する発光に寄与できるキャリアの個数が減り、全体的に発光強度が低下した。その結果、一部のシリコンエピタキシャルウエハについて、炭素に由来する発光の強度が検出限界未満となり、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めることができなかった。
【0045】
[比較例2]
エピタキシャル層として、厚さが50μm、ドーパント濃度が2×10
18atoms/cm
3、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層を形成したこと以外は実施例1と同様の方法により、シリコンエピタキシャルウエハを得た。これらシリコンエピタキシャルウエハを用いたこと以外は例1と同様の方法により、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めようとした。しかしながら、発光が全く得られず、ノイズのみであり、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めることができなかった。
【0046】
[比較例3]
エピタキシャル層として、厚さが1μm、ドーパント濃度が1×10
14atoms/cm
3、炭素濃度が5×10
14atoms/cm
3以下のシリコン層を形成したこと以外は実施例1と同様の方法により、シリコンエピタキシャルウエハを得た。これらシリコンエピタキシャルウエハを用いたこと以外は例1と同様の方法により、発光強度比と飽和電圧Vce(sat)との関係を求めようとした。しかしながら、波長が532nmの励起レーザー光のシリコンへの侵入深度は2.5μmであるため、エピタキシャル層の発光スペクトルを得ることができなかった。