(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774994
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】検体検査自動化システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
G01N35/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-534169(P2011-534169)
(86)(22)【出願日】2010年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2010065435
(87)【国際公開番号】WO2011040197
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2009-225927(P2009-225927)
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】塙 雅明
(72)【発明者】
【氏名】大賀 博
【審査官】
土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−234228(JP,A)
【文献】
特開2000−146988(JP,A)
【文献】
特開2000−146774(JP,A)
【文献】
特開平05−116735(JP,A)
【文献】
特表2004−505249(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3059194(JP,U)
【文献】
特開平04−204159(JP,A)
【文献】
実開平05−036366(JP,U)
【文献】
特開2005−156196(JP,A)
【文献】
特開2003−172741(JP,A)
【文献】
特開平04−082681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00〜37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の検体を保持する検体保持具を搬送する主搬送ラインと、
該主搬送ラインに沿って配置される複数の検体処理ユニットと、
該主搬送ラインと平行に配置されループ形状をした空ラック用搬送ラインを備えた検体検査自動化システムにおいて、
前記空ラック用搬送ラインは主搬送ラインより下段位置に配置するとともに、
前記主搬送ラインから該空ラック用搬送ラインに空の検体保持具を回収するための搬送ラインであって、前記主搬送ラインの途中に設けられた直線状の傾斜回収ラインおよび、前記空ラック用搬送ラインから前記主搬送ラインに空の検体保持具を供給するための搬送ラインであって、前記空ラック用搬送ラインの途中に設けられた直線状の傾斜供給ラインを備え、
前記空ラック用搬送ライン、主搬送ライン、傾斜回収ラインおよび傾斜供給ラインがいずれも平面交差することなく配置されたことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項2】
請求項1記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記空ラック用搬送ラインは前記主搬送ラインから独立した専用ラインであり、
前記空ラック用搬送ラインと前記主搬送ラインは平行に配置された往路ライン及び復路ライン、並びにそれらを接続する搬送ラインからなることを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項3】
請求項1記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記複数の検体処理ユニットは、投入された検体容器を前記空の検体保持具に移載する検体投入モジュール、処理が終了した検体を検体保持具から抜き出して収納する検体収納モジュール、および、前記主搬送ラインに沿って配置され、該主搬送ラインに搬送すべき空の検体保持具を供給及び回収するためのラックストッカと、を含み、
前記検体保持具が搬送される進行方向に対して、前記収納モジュール、前記ラックストッカ、前記投入モジュールの順番に配置されたことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項4】
請求項3記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記ラックストッカと前記空ラック用搬送ラインをつなぐ搬送ラインは前記主搬送ラインに対してほぼ直交していることを特徴とする検体検査自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体検査自動化システム、特に多数の患者検体の臨床検査を処理する検体検査自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野では多様な自動化機器の導入により、検査業務の省力化が進められている。病院の検査では、入院患者や外来患者の検査検体は病院内の各課で集められ、検査室で一括して処理される。検体ごとの検査項目はオンラインの情報処理システムを利用して医師より検査室に伝えられ、検査結果はオンラインで逆に検査室より医師に報告される。血液、尿の検査項目の多くは、検査処理の前処理として遠心処理、開栓処理、分注処理等の前処理を必要とし、その作業が検査作業時間全体に占める割合は大きい。
【0003】
次に一般的な検体検査自動化システムのフローについて記載する。患者から採取した血液などの体液が入った試験管を検体ラックに載せてシステムに投入する。投入された検体は、システム内においてバーコード情報を読取り、その検体の種別を認識する。前述の通り、検査処理の前処理には遠心処理、開栓処理、分注処理などがあるが、例えば尿検査では遠心処理が不要など、対象検査種別によって前処理の内容は異なる。遠心分離が必要な検査対象種別の検体は遠心分離作業後、開栓処理、分注処理を行う。分注処理は親検体から子検体を作成するための処理で、例えばシステムにオンラインで接続された複数の分析装置に小分けされた子検体を同時に搬送することができる。また、分注処理はシステムに接続されていないオフラインの分析装置で検査を行うために親検体と同じバーコードが貼り付けた子検体を仕分けトレイに搬出する役目も含んでいる。全ての処理工程が完了した検体は収納モジュールに収納される。
【0004】
これらの検体検査自動化システムは比較的規模の大きな施設に導入されることが多く、数百から数千の患者検体を1日で処理しているのが実情である。また、これら規模の大きな施設においては、生化学検査・免疫検査・凝固検査・血液学検査など様々な検査を行うために1人の患者から複数本の検体を採取している。それ故、検体検査自動化システムに投入するための検体ラックの数は前記に相応した数を準備する必要があり、またこれらを設置・保管するスペースも必要であった。
【0005】
従来の検体検査自動化システムの検体ラックの投入装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、検体種別に応じた処理を行うために大量の検体ラックをあらかじめ装置にセットする方式が知られている。また、特許文献2では、大量の検体ラックの設置面積を低減するため、検体ラックをある一定の数をまとめてトレイに設置し、このトレイを検体ラック供給部・回収部共に多段に配置し、上下駆動のエレベータ機構により検体ラックの供給・回収をすることが述べられている。特許文献3ではエンドレス化した搬送ラインに装置を連結し、使用する検体ラックを使い回す方式が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3618067号公報
【特許文献2】特開2007−309675号公報
【特許文献3】特開平8−122337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および特許文献2に記載された方法は、大量の検体を処理するために検査を行う検体分だけ検体ラックを準備する必要があり、これに伴い、システムの大型化・複雑化は避けられない。また、オペレータはシステムの使用前に大量の検体ラックを補充しなければならない手間を伴っていた。
【0008】
特許文献3はシステム内で検体ラックの搬送ラインをループしながら、検体ラック再利用を行うので大量の検体ラックは必要としない。ただし、空の検体ラックと検体が載った検体ラックが同じ搬送ラインを通ることになるので搬送ラインに渋滞が発生し、処理速度の高いシステムを構築することが困難である。また空の検体ラックと、検体が載った検体ラックの識別が必要であるなど、搬送制御についても複雑化が避けられない。これを回避するために検体が載った検体ラック搬送ラインとは別に空の検体ラック専用ラインを設ける方法が考えられるが、搬送ライン同士が交差することにより、やはり処理速度の低下を招くことになる。
【0009】
一方、大量の空の検体を一箇所に溜めておき、そこを起点として空の検体ラックの供給・回収を行う方式も考えられるが、施設規模に見合った最適なラックストック数とすることは困難であり、施設によっては過剰に大きなシステムとなってしまう欠点が考えられる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、システムを大型化することなく、かつ搬送ラインの交差による処理速度低下と搬送制御の複雑化を避け、高速処理に適した拡張性の高いシステムを容易に構築できる検体検査自動化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る検体検査自動化システムは検体を保持する検体ラックを搬送するための主搬送ラインと、該主搬送ラインに沿って配置される複数の検体処理ユニットと、該主搬送ラインに搬送すべき検体ラックを供給・回収するためのラックストッカと、該主搬送ラインと平行に配置される空ラック用搬送ラインを備えた検体検査自動化システムにおいて、前記空ラック用搬送ラインは主搬送ラインより下段位置に配置するとともに、前記ラックストッカと該空ラック用搬送ラインを傾斜した搬送ラインで接続することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る検体検査自動化システムの空ラック用搬送ラインは主搬送ラインから独立して専用ラインとし、空ラック用搬送ラインと主搬送ラインは平行に往路ライン・復路ラインおよびそれらを接続する分岐ラインからなることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る検体検査自動化システムはラックストッカと空ラック用搬送ラインを接続する搬送ラインは主搬送ラインに対して直交させることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る検体検査自動化システムは検体を保持する検体ラックを搬送するための主搬送ラインと、該主搬送ラインに沿って配置される複数の検体処理ユニットと、該主搬送ラインに搬送すべき空の検体ラックを供給・回収するためのラックストッカと、検体をシステムに投入するための投入モジュールと、処理が完了した検体を収容保存する収納モジュールを備えた検体検査自動化システムにおいて、検体ラックが搬送される進行方向に対して収納モジュール・ラックストッカ・投入モジュールの順番にそれぞれ隣接するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、装置を大型化・複雑化させることなく、シンプルな構成で搬送ライン同士の交差を回避し、かつ処理能力を低下させないように連続して空ラックの供給・回収を行うことができ、また施設規模に応じた拡張性の高い検体検査自動化システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る検体ラックの搬送ライン部を含むシステム全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るシステム後方から見た全体構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るシステム内の検体ラック搬送ライン部に関わる模式図である。
【
図4】本発明に係るラックストッカ内の搬送ライン部のみを抽出した斜視図である。
【
図5】本発明に係る各処理モジュールの結合を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る検体ラックの搬送ライン部を含むシステム全体構成斜視図を
図1に、同じくシステム後方から見た全体構成斜視図を
図2に示す。本実施例では、5つの処理モジュールのみを記載しているが、規模の大きな施設においては10モジュール以上接続することもある。
【0018】
図3はシステム内の検体ラック搬送ライン部に関わる模式図を示している。検体ラック31は患者から採取した血液などの体液が注入された検体32を起立保持した状態でライン上を搬送可能な構造となっており、またこの検体ラック31はそれぞれ固有のID番号を付与されている。検体ラック31はそれぞれの用途を受け持つ複数の搬送ラインにより各処理モジュール間の搬送を行う。次にシステム内での検体フローについて記載する。
【0019】
検体32を50〜100本架設可能なトレイ33を投入モジュール102に架設する。投入モジュール102では、トレイ33内の検体32を図示しない試験管チャック機構により検体ラック31に移載する。検体ラック31は予め、ラックストッカ101の出口近傍に蓄えられており、投入モジュール102からの通信による搬送要求に従い、順次検体ラック31を投入モジュール102に搬送する。検体32が検体ラック31に移載された後、投入モジュール102内で検体32に貼り付けられたバーコード情報を読み取る。読み取られたバーコード情報はホストコンピュータ51に転送され、ホストコンピュータ51に登録されている該当検体の種別情報がシステムに返信される。システムでは返信された種別情報に基づき、どの処理モジュールに立ち寄るかあるいはどの処理モジュールをスキップするかを決定する。この情報に基づき、検体ラック31に載せられた検体32を各処理モジュールへと搬送する。全ての処理が終わった検体32は最終的に収納モジュール103へと搬送され、図示しない試験管チャック機構により、検体ラック32から検体31を抜き取り、トレイ33に収納される。検体31が抜き取られた空の検体ラック31はラックストッカ101へと搬送される。
【0020】
主搬送ライン11はシステムに投入された検体32を各処理モジュールに搬送するためのラインである。緊急追越ライン12は、緊急検体の追越しをするためのラインであり、また、このライン12は、処理モジュールに立ち寄る必要の無い検体(例えば遠心する必要の無い検体など)を各処理モジュールに配置されている分岐ライン16,17を使用してバイパスすることにも可能である。戻りライン13は検体32をシステム内でループさせるための搬送ラインであり、例えば、再検査のための再分注などの場合には、この戻りライン13を使用してシステム内をループさせている。空ラック用搬送ライン14a,14bは主搬送ライン11と平行にかつ同じライン長さで併設しており、戻りライン13と主搬送ライン11の間に配置する構造としている。空ラック用搬送ライン14a,14bを主搬送ライン11、戻りライン13と同じライン長さとしている目的はシステムの拡張性(処理モジュールの追加あるいは削減)を容易に行うことにある。具体的には、空ラックの数をシステム規模に応じて最適数を提供することにある。そもそもシステムで処理に必要な空ラックの数は、ライン上を全てラック31により埋め尽くされた数である。言い換えればライン上を全て埋め尽くす以上のラックは不要のものとなる。緊急追越ライン12はその特性上、基本的に検体ラック31を停滞させずに通過のみと定義した場合、主搬送ライン11と戻りライン13を足したライン長が、空ラック用搬送ライン14a,14bの和と同じ長さであり、システムに必要な空ラックを空ラック用搬送ライン14a,14b内に蓄えることが可能である。これにより、システム規模に応じて常に最適な空ラックの数を提供することが可能となる。
【0021】
また、この空ラック用搬送ライン14aは収納モジュール103から連続して搬送されてくる空ラックをラックストッカ101内でライン交差させずに、効率良く回収するために主搬送ラインとは逆方向に搬送している。同様に空ラック用搬送ライン14bも戻りライン13とは逆の方向に搬送を行っている。
【0022】
図4はラックストッカ101内の搬送ライン部のみを抽出した斜視図である。以下
図4を用いてラックストッカ101内のラックフローを説明する。処理が完了し、収納モジュール103にて検体を抜き取られた空ラックは主搬送ライン11を経てライン21およびライン22へと搬送される。供給ライン25には常時複数個の空ラックを保持しており、投入モジュール102からの空ラック搬送要求に従い、空ラックを搬送する。供給ライン25が空ラックで満杯の時には収納モジュール103から搬送された空ラックは傾斜回収ライン23を経て空ラック搬送ライン14aへと搬送される。また同様に、収納モジュール103から搬送される空ラックが無く、かつ供給ライン25のラックが残りわずかとなった時は、空ラック搬送ライン14aから傾斜供給ライン24およびライン22を経て供給ライン25に空ラックが供給される。
図4に示した通り、空ラック搬送ライン14a,14bは主搬送ライン11・緊急追越ライン12・戻りライン13より低い位置に配しており、これを傾斜回収ライン23および傾斜供給ライン24により接続することで、搬送ライン同士の交差を排除し、かつエレベータ方式・ロボットハンド方式に比べ、効率良くシンプルな構成で空ラックの回収・供給が可能となる。
【0023】
なお、本実施例では直線的な傾斜ラインを図示しているが、上段に設けられたラックストッカと下段に設けられた空ラック用搬送ラインをつなぐ搬送ラインは、上下段を接続できれば良く、らせん状の搬送ラインとして空ラックのバッファ量を増やすことも可能である。
【0024】
マニュアル投入ライン26は、ラックストッカ101の空ラックを常時ストックしているという特性を利用するもので、ここから検体32を直接検体ラック31に手動で挿入し、図示しないSTARTスイッチを押下することにより、投入モジュール102へと搬送することができる。このマニュアル投入ライン26は供給ライン25と同様、常に空ラックを一定に保持するように制御しており、空ラックの数が少なくなった場合は空ラック供給ラインから供給するようになっている。
【0025】
図5は各処理モジュールの結合を説明するための斜視図であり、システムの拡張性(処理モジュールの追加あるいは削減)を極めて良くするために、各処理モジュールのインターフェースを標準化し、システム内の搬送ラインプラットフォームを共通化している。これにより、施設規模に応じて処理モジュールを任意にかつ容易に組合せすることが可能となる。なお、モジュールの配列は空ラックの供給・回収を連続して行えるように、ラック進行方向に対して、収納モジュール103・ラックストッカ101・投入モジュール102の順に配することが望ましい。また、処理モジュールを連続して結合することにより、処理モジュール間での搬送時間は最小化され、トータルの処理時間も少なくすることが望ましい。また、装置前面は検体の架設・消耗品のセットなど、オペレータがアクセスしやすいように、搬送ラインは装置後方に集約させることが望ましい。
【符号の説明】
【0026】
11 主搬送ライン
12 緊急追越ライン
13 戻りライン
14a,14b 空ラック搬送ライン
16,17 分岐ライン
21,22 搬送ライン
23 傾斜回収ライン
24 傾斜供給ライン
25 供給ライン
26 マニュアル投入ライン
31 検体ラック
32 検体
33 トレイ
51 ホストコンピュータ
101 ラックストッカ
102 投入モジュール
103 収納モジュール
104,105 処理モジュール