(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
今日、硫酸は、接触/二重接触法で、二酸化硫黄(SO
2)を三酸化硫黄(SO
3)に酸化し、及び次に加水分解することによって、実質的に独占的に得られている。この方法では、列をなして配置された、複数の断熱層(床)中の、バナジウムを含む触媒上で、分子酸素を使用してSO
2がSO
3に酸化される。供給ガスのSO
2含有量は通常、0.01〜50体積%の範囲であり、及びO
2/SO
2の割合は、0.5〜5の範囲である。好ましい酸素供給源は、空気である。二酸化硫黄の一部は、個々の床内で反応され、そして各場合におけるガスは、個々の床間で冷却される(接触法)。形成されたSO
3は、より高い合計変換を達成するために、中間的な吸収によってガス流から除去することができる(二重接触法)。反応は、床に依存して、340℃〜680℃の温度範囲で行われ、最大温度は、(SO
2含有量が低下するために)床の数が増すに従い低下する。
【0003】
今日の市販されている触媒は通常、活性成分五酸化バナジウム(V
2O
5)を、アルカリ金属酸化物(M
2O)、特に酸化カリウムK
2Oと一緒に、しかしまた酸化ナトリウムNa
2O及び/又は酸化セシウムCs
2O、及びサルフェートと一緒に含む。多孔性の酸化物、例えば二酸化シリコンSiO
2が通常、上述した成分のために使用される。反応条件下で、アルカリ金属ピロサルフェート溶解物が支持体材料上に形成され、そしてこの中に、活性成分がオキソサルフェート錯体の状態で溶解する(Catal.Rev.−Sci.Eng.,1978,vol17(2),pages203to272)。触媒は、支持された液相触媒と称される。
【0004】
V
2O
5の含有量は通常、3〜10質量%であり、及びアルカリ金属酸化物の含有量は、使用する種及び種々のアルカリ金属の組合せに依存して、6〜26質量%の範囲であり、アルカリ金属のバナジウムに対するモル割合(M/V割合)は通常、2〜5.5の範囲である。K
2O含有量は通常、7〜14質量%の範囲であり、及びサルフェート含有量は、12〜30質量%の範囲である。更に、種々の更なる追加的な元素、例えばクロム、鉄、アルミニウム、リン、マンガン、及びホウ素の使用が報告されている。多孔性支持体材料として、多くはSiO
2が使用されている。
【0005】
このような触媒は通常、種々の活性成分、例えば適切なバナジム化合物(V
2O
5、アンモニウムバナデート、アルカリ金属バナデート、又はバナジルサルフェート)の溶液又は懸濁物を、アルカリ金属塩(ニトレート、カルボネート、オキシド、ヒドロキシド、サルフェート)と、及びしばしば硫酸、及び孔形成剤又は滑剤として機能する他の成分、例えば硫黄、スターチ、又はグラファイト、及び支持体材料と混合することによって、工業的規模で製造される。得られる粘性の組成物は、次の工程で処理されて所望の形状を有する成形体が得られ、そして最終的に熱処理(乾燥及びか焼)を受ける。
【0006】
触媒の特性は、第1に活性組成物の含有量、使用されるアルカリ金属の種類と量、M/V割合、及び更なる促進剤(promoter)の使用によって決定され、そして第2に使用する支持体材料の種類によって決定される。反応条件下で安定な支持体材料は、溶融物の表面積を増すのに有用であり、及び従って、利用可能な溶解した活性成分錯体の数を増すのに有用である。支持体材料の孔構造は、ここでは中心的に重要である。小さな孔は液体状態を安定させ、そして従って、塩溶解物(salt melt)の融点を低下させ(React.Kinet.Catal.Lett.,1986,vol.30(1),pages9to15)、及び特に高い表面積を形成する。両方の効果は、低い温度範囲、すなわちDD92905のアサインメントによれば、<400℃の温度範囲で活性を増すものである。輸送限界(transport limitation)を回避するために、高い温度(>440℃の反応温度)で、大きな孔が特に関係する。
【0007】
触媒の触媒活性とは別に、その寿命(耐用期間)も極めて重要である。寿命は、第1に毒によって影響される。この毒は、供給ガスと一緒に外側から反応器内に入り、そして床内に徐々に蓄積する毒、及び出発材料、例えば二酸化ケイ素支持体中に含まれる不純物を介して入り、及び反応条件下に可動性になり、そしてサルフェートイオンと反応することができ、そして従って触媒に対して悪影響を有する毒の両方である。このような不純物の例は、アルカリ土類金属化合物(例えば、カルシウム化合物)、鉄化合物、又はアルミニウム化合物である。更に、触媒は、極端な条件下では単純に焼かれ、そして従って、徐々にその活性表面積を失う。床上の圧力損失も極めて重要である;この圧力損失は、非常に低くあるべきで、そして触媒の寿命にわたり極めて僅かにしか上昇しないものであるべきである。この目的のために、新しく製造された触媒は、極めて良好な機械的特性を有している必要がある。この目的のために測定される代表的なパラメーターは、例えば、耐摩耗性、又はカッターの侵入に対する抵抗性(カッティング硬度)である。更に、触媒のタップ密度(tapped density)も、中心的な役割を演じる。この理由は、このようにしてのみ、活性組成物の特に必要な量を、与えられた反応器体積に導入することが確実化されるからである。
【0008】
市販の硫酸触媒のための不活性材料として、SiO
2に基づく、安価な、多孔性材料が主として使用される。ここで、SiO
2の合成バリアント(合成変形物)とSiO
2の天然状態のものの両方が使用される。
【0009】
合成バリアントは通常、所望の支持特性、例えば孔構造、又は(適切に設定するための)機械的安定性を可能にする。特許文献1(RU2186620)には、例えば、硫酸触媒のための支持体として、沈殿したシリカゲルの使用が記載されている。
【0010】
特許文献2(DE1235274)には、V
2O
5/K
2O/SiO
2に基づく触媒を使用して、SO
2を酸化するための方法が開示されており、ここで、適切に適合された孔構造を有する触媒が、異なる運転温度で使用されている。これらの化合物は、例えば、特定の合成SiO
2化合物、例えば沈殿したナトリウム水ガラスを使用することによって得ることができる。特許文献3(SU1616−688)には、高い表面積を有する、非結晶質の合成SiO
2の使用が記載されている。しかしながら、このような成分は、比較的高い製造及び材料コストを有するという不利な点を有している。
【0011】
この理由のために、天然の二酸化ケイ素(珪藻土、kieselguhr、又はdistomaceous earthとも称される)が、工業的に頻繁に使用される(これは天然の製品として、より安価に得ることができるが、しかし所望の最適条件から、その特性が、しばしば外れる)。特許文献4(SU1803180)の著者は、このような触媒のための支持体として、珪藻土を使用している。特許文献5(CN1417110)には、SO
2を酸化するための触媒が開示されており、この触媒は、V
2O
5及びK
2SO
4に基づくもので、そして使用する珪藻土は、中国の特定の地方から由来するものである。
【0012】
硫酸触媒の特性は、純粋な天然支持体材料の事前処理の種類によっても影響され得る。Fedoseevらは、例えば、珪藻土を機械的に粉砕することにより、バナジウムベースの硫酸触媒の孔構造を変性すること(最大の孔のより小さい孔へのシフト)を報告している(Sbornik Nauchnykh Trudov−Rossiiski Khimiko−Tekhnologicheskii Universitet im.D.I.Mendeleeva(2000),(178,Protsessy i Materialy Khimicheskoi Promyshlennosti),34−36CODEN:SNTRCV)。これにより機械的な安定性が改良されている。この変性(modification)の不利な点は、第1に、追加的な作業工程(支持体の12時間にわたる粉砕)を使用することであり、そして第2には、これらから得られる触媒活性が低下することである。
【0013】
特許文献6(SU1824235)には、高温法でSO
2をSO
3に酸化するための触媒が記載されており、ここで、使用される珪藻土支持体は、10〜30質量%の粘土鉱物を含んでおり、そして600〜1000℃でか焼され、そして次に、実際の活性成分と混合する前に粉砕されており、そしてか焼された珪藻土の少なくとも40%が、<10μmの直径を有している。この実施例でも、追加的な作業工程(粉砕)が必要とされる。
【0014】
多くの文献が、天然及び合成SiO
2バリアントを共同使用することによって、触媒特性の最適化を記載している。特許文献7(DE400609)には、SO
2を酸化するための触媒が開示されている。この触媒は、バナジウム化合物、及びアルカリ金属化合物を、(定義された孔構造を有する)支持体材料上に含んでおり、ここで、異なる孔径を有するSiO
2成分が、定義された割合で相互に混合され、これにより、得られた支持体が<200nmの径を有する孔を高い割合で有している。類似したアプローチが特許文献8(WO2006/033588)、特許文献9(WO2006/033589)、及び特許文献10(RU2244590)に続いている。ここで、V
2O
5、アルカリ金属酸化物、硫黄酸化物、及びSiO
2に基づき、及びそれぞれの運転温度範囲に適合させた小峰性(ologomodal)な孔分布を有する、SO
2を酸化するための触媒が記載されている。このような定義された孔の微細構造(マイクロ構造)は、例えば、合成の二酸化ケイ素と天然の珪藻土を組合せることによって設定することができる。特許文献11(RU2080176)には、ケイ素(シリコン)の製造で得られたSiO
2廃棄物(waste)を珪藻土に加えることによる、V
2O
5/K
2O/SO
4/SiO
2に基づく硫酸触媒の、硬さと活性の好ましい効果が記載されている。シリカゾルを珪藻土に加えることの結果としての類似する効果が特許文献12(SU1558−463)に見出される。
【0015】
特許文献13(US1952057)、特許文献14(FR691356)、特許文献15(GB337761)及び特許文献16(GB343441)には、天然の珪藻土と合成SiO
2を組合せて、適切なカリウム水ガラスの状態で使用することが記載されている。例えば沈殿によって、最終的な結果物が、適切な活性成分で含浸させることができるSiO
2−包含珪藻土粒子(SiO
2-encased kieselguhr particles)であるように、合成シリコン成分が、水溶液から珪藻土へと施される。このようにして製造された触媒は、改良された特性、例えば硬度又は触媒活性を示す。
【0016】
特許文献17(DE2500264)には、SO
2を酸化するためのバナジウムに基づく触媒が開示されており、ここでは、珪藻土とアスベスト、及びベントナイトの混合物が、カリウム水ガラス溶液と混合され、そして次に、(機械的な安定性が改良された)支持体成分として使用されている。
【0017】
合成又は天然SiO
2バリアントの独占的な使用、又は合成及び天然SiO
2バリアントの混合物使用とは別に、異なる天然のSiO
2バリアントの混合物を使用することも可能である。Jiru及びBrullは、珪藻土の特定の種類の孔構造の変性(modification)について記載しており、これは、同一の支持体からの粗製の珪藻土廃物の30質量%を加えること(これは、平均孔径を56nmから80nmにシフトさせるものである)によって行われている(Chemicky Prumysl(1957),7,652−4CODEN:CHPUA4;CHPUA4;ISSN:0009−2789)。特許文献18(PL72384)には、バナジウム触媒のための、天然珪藻土に基づくSiO
2支持体であって、支持体の粒子の20〜35%が、1〜5μmの範囲であり、10〜25%が5〜10μmの範囲であり、10〜25%が20〜40μmの範囲であり、10〜25%が40〜75μmの範囲であり、及び1〜7%が75μmよりも大きく、及び支持体が珪藻土を900℃でか焼し、次に未か焼の珪藻土を1:1〜1:4の割合で混合することによって製造されるSiO
2支持体が開示されている。特許文献19(DE2640169)には、バナジウムベースの硫酸触媒が開示されている。この硫酸触媒は、高い安定性と効率を有し、及び(シリカのalgae Melosira granulataから形成されたか焼された珪藻土を少なくとも40質量%含む)微細に粉砕された新鮮な水珪藻土が支持体として使用され、及び活性成分、適切な加速剤、及び促進剤と混合する前に、珪藻土は、510℃〜1010℃の温度でか焼されている。このようにして製造された触媒は、(か焼の前、又は後で、粉砕されるべき珪藻土の所定割合がミルされるか否かにかかわらず)未か焼及び/又は未粉砕の状態の対応する珪藻土を主として含む触媒よりも、高い触媒活性及び機械的な安定性を有している。
【0018】
従って、硫酸触媒の特性を最適化するために、異なる事前処理を受けた、同一のタイプの珪藻土を相互に混合するか、又は合成SiO
2と混合することが公知である。硫酸触媒のための支持体として、か焼された、及びか焼されていない珪藻土の混合物を使用することの不利な点は、第1に、更なる工程(珪藻土のか焼及)が必要なことであり、及び非結晶質のSiO
2状態をクリストバライト変性への可能な変換は、人の健康上、問題を有することである。
【0019】
珪藻土(diatomaceous earth)(珪藻土(kieselguhr)としても公知)は、天然の化石のケイ土藻(珪藻)で、これは通常、これらが基礎とするケイ土の構造に従って分類される(注、Adl et al.,Journal of Eukaryotic Microbiology,2005,vol.52,page399)。この分類は、藻のケイ土のシェル(被殻)の構造に基づいており、すなわち例えば、その大きさ又は対称性に基づいている。この対称性に基づいて、ケイ土の藻(珪質藻類)は、放射対称性のセントラル(radially symmetric central)及び左右対称性のペンナル(bilaterally symmetric pennale)に分類することができる。ペンナルは更に、縫線、動作器官(organ of movement)、及びその構造によって区別することができる。セントラルは更に、セルの平面図の形状によって分類することができ:例えば、プレート形状のバリアント(変形体)、例えばCoscinodicineaeが存在する(これは、突起部の無い、丸いプレート形状の幾何学形状(平面視で)を有し、その高さは、シェルの直径未満であり、そして側面視で凸状の形状を有することによって特徴付けられている)。(しばしば、長い、シリンダー状のシェルを有し、及び通常、側面視で長方形の形状を有する)珪藻、例えばタイプAulacoseira又はMelosiraも存在する。ケイ土の藻の更なる代表例は、例えば、棒形状のAsterionella、(その長いシェルが曲がっている)Eunotia、ボート形状のNavicula又は長いNitzschiaが存在する。
【0020】
興味深いことに、珪藻土の公知の堆積物に見出すことができる構造タイプは、非常に均一であり、特定の珪藻土の中に、大部分はケイ土の藻の1種類の形態しか認めることができない。タイプCelite209(Cakifornia)、Celite400(Mexico)、Masis(Armenia)、AG−WX1(China)、AG−WX3(China)、CY−100(China)の市販されている珪藻土は例えば、主として、プレート形状の構造(これは、Coscinodicineaeから由来している)を有している。一方、EP Minerals LLCによって北アメリカ(ネバダ又はオレゴン)で採掘されるタイプMN、FN2−Z又はLCSは、主としてシリンダー形状を含む(Melosira)。
図1及び2は、市販されている、主としてプレート形状のケイ土の藻に基づく珪藻土(Masis及びCelite400)の走査電子顕微鏡写真を示している。
図3は、Melosiraタイプのシリンダー状のケイ土の藻から由来する珪藻土の対応する顕微鏡写真を示している。更に、上述した対象性を有していない珪藻土も見出され、これには例えば、ペルーに存在し、及びMinaral Resourcesによって採掘されるDiatomite1タイプの、棒形状の珪藻土、又はCIEMILによって採掘される、ブラジルに存在する、棒形状のTipoタイプが存在する。
図4は、対応する珪藻土(Diatomite1)の走査電子顕微鏡写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この目的は、異なる幾何学的堆積物から由来し、及び従ってケイ土の藻の異なる構造から由来する、少なくとも2種のか焼されていない珪藻土を含む支持体を有する触媒によって達成される。
【0025】
従って本発明は、SO
2をSO
3に酸化するための触媒であって、バナジウム、アルカリ金属化合物、及びサルフェートを含む活性物質を、天然の珪藻土を含む支持体に施された状態で含み、前記支持体は、少なくとも2種の異なる、天然の、か焼されていない珪藻土を含み、及びこれらの珪藻土は、これらが由来するケイ土の藻の構造タイプの点で異なることを特徴とする触媒を提供する。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態は、SO
2をSO
3に酸化するための触媒であって、バナジウム、アルカリ金属化合物、及びサルフェートを含む活性物質を、天然の珪藻土を含む支持体に施された状態で含み、前記支持体は、少なくとも2種の異なる、天然の、か焼されていない珪藻土を含み、及びこれらの珪藻土は、これらが由来するケイ土の藻の構造タイプの点で異なり、及びこの異なる構造タイプは、プレート形状、シリンダー状形状、及び棒形状構造タイプから成る群から選ばれることを特徴とする触媒である。
【0027】
本発明の触媒は、これまでの公知の触媒と比較して、相当に良好な特性、特に改良された機械的安定性を有している。
【0028】
本発明の目的のために、珪藻土は、(これが由来する)ケイ土の藻の構造タイプに割り当てられ、もとのケイ土の藻の形態は、主として電子顕微鏡によって認めることができる。種々のプレート形状、シリンダー状、又は棒形状の珪藻土(これらは、主としてケイ土の藻の一形態を示す)の電子顕微鏡写真の例を
図1〜4に示す。
【0029】
本発明の触媒を製造するために適切な珪藻土は、アルミニウム酸化物Al
2O
3の含有量が、5質量%未満、好ましくは2.6質量%未満、及び特に2.2質量%未満であるべきである。鉄(III)酸化物Fe
2O
3の含有量は、2質量%未満、好ましくは1.5質量%未満、及び特に1.2質量%未満であるべきである。アルカリ土類金属酸化物の合計(マグネシウム酸化物MgO+カルシウム酸化物CaO)の含有量は、1.8質量%未満、好ましくは1.4質量%未満、及び特に1.0質量%未満であるべきである。
【0030】
本発明の目的のために、か焼されていない珪藻土は、活性成分を混合する前に、500℃を超える温度で処理されていない、好ましくは400℃を超える温度、及び特に320℃を超える温度で処理されていない珪藻土である。か焼されていない珪藻土の特徴は、材料が基本的に非結晶質であること、すなわち、クリストバライトの含有量が、<5質量%、好ましくは<2質量%、及び特に好ましくは<1質量%(X−線回折分析で測定)であることである。
【0031】
本発明の目的のために使用することができる、種々の珪藻土の平均体積ベース孔径(すなわち、水銀ポリシメーターで測定して、各場合において、上側と下側に50%の合計孔体積が見出される孔径)は、0.1〜10μmの範囲、好ましくは0.5μm〜9μm、及び特に0.7〜7μmの範囲である。か焼されていない珪藻土の、本発明に従う混合物の平均体積ベース孔径は、0.5μm〜9μmの範囲、好ましくは0.8〜7μm、及び特に0.9〜5μmの範囲である。ここで、本発明に従う混合物の、孔径分布の形状は、個々の珪藻土のものから相当に外れることができる。明白な肩部を有する、少峰性(oligomodal)又は二峰性(bimodal)部分又は単峰性(monomodal)の孔分布は、種々の珪藻土の所定の組合せから得ることができる。異なる珪藻土を種々の割合で混合することによる、上述した限定内での、特定の平均体積ベース孔径の設定が原則として可能である。
【0032】
本発明に従う硫酸触媒の製造で、混合工程、又は成形工程の間、及び藻土支持体に活性成分を施す間の機械的応力の結果として生じる珪藻構造の部分的な破壊は、平均体積ベース孔径のシフト(移動)をもたらし、これにより、得られた触媒は通常、親の支持体(parent support)よりも相当に低い平均体積ベース孔径を有する。本発明の硫酸触媒の平均体積ベース孔径は、0.1μm〜5μmの範囲、好ましくは0.2μm〜4μm、及び特に0.3〜3.2μmの範囲である。ここで、その支持体がか焼されていない珪藻土の混合物に基づく触媒の、孔径分布の形状は、種々の珪藻土の種類と割合によって設定可能であり、これにより、明確な肩部を有する、少峰性、又は二峰性の孔径分布、又は単峰性の径分布を得ることもできる。
【0033】
特に良好な触媒は、含まれる異なる珪藻土のそれぞれが、支持体の合計質量に対して、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも15質量%、及び特に好ましくは少なくとも20質量%の割合で存在する支持体材料を使用する場合に得ることができる。
【0034】
本発明の触媒は通常、カッティング硬度(cutting hardness)が、少なくとも60N、好ましくは少なくとも70N、及び特に好ましくは少なくとも80Nである。その摩耗(abrasion)は通常、<4質量%、好ましくは<3質量%である。そのタップ密度は通常、400g/l〜520g/lの範囲、好ましくは425g/l〜500g/lの範囲である。その多孔率(材料のトルエン吸収を使用して測定して)は少なくとも0.38ml/g、好ましくは少なくとも0.4ml/g、及び特に好ましくは少なくとも0.45ml/gである。
【0035】
触媒のタップ密度を測定するために、約1リットルの成形体が、振動性シュートを使用して、体積が2リットルのストレートなプラスチック測定シリンダー中に導入される。この測定シリンダーを、充填材料容積計(tamping volumeter)の上に配置する。この充填材料容積計は、規定時間にわたり軽くたたき(タップし)、そして従って測定シリンダー中の成形体をぎっしり詰める(コンパクトにする)ものである。質量と体積から、タップ密度が最終的に測定される。
【0036】
特徴的な物理的触媒特性、カッティング硬度、摩耗、及び多孔率を、EP0019174に記載されたものと類似する方法で測定した。触媒活性をDE4000609に記載された方法によって測定した。DE4000609、実施例3に記載された市販の触媒を、参照触媒として使用した。
【0037】
本発明は更に、SO
2をSO
3に酸化するための、上述した触媒を製造するための方法であって、由来するケイ土の藻の構造タイプの点で異なる、天然の、か焼されていない珪藻土を少なくとも2種含む支持体を、バナジウム、アルカリ金属化合物、及びサルフェートを含む溶液、又は懸濁物と混合することを特徴とする方法を提供する。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態は、SO
2をSO
3に酸化するための、上述した触媒を製造するための方法であって、支持体が、少なくとも2種の異なる、天然の、か焼されていない珪藻土を含み、及びこれらの珪藻土は、これらが由来するケイ土の藻の構造タイプの点で異なり、及び種々の構造タイプは、プレート形状、シリンダー状形状、及び棒形状構造タイプから成る群から選ばれ、及びこの支持体が、バナジウム、アルカリ金属化合物、及びサルフェートを含む溶液又は懸濁物と混合されることを特徴とする方法である。
【0039】
本発明は更に、上述した触媒を使用して、SO
2をSO
3に酸化するための方法を提供する。本発明の好ましい実施の形態では、酸素と二酸化硫黄SO
2を含むガス混合物が、340〜680℃の範囲で触媒と接触され、二酸化硫黄の少なくとも一部が三酸化硫黄SO
3に変換される。
【実施例】
【0040】
以下に使用する全ての珪藻土は、4質量%未満の酸化アルミニウムAl
2O
3、1.5質量%未満の鉄(III)オキシドFe
2O
3、及び1.0質量%未満のアルカリ土類金属酸化物(マグネシウム酸化物MgO及びカルシウム酸化物CaOの合計)を含んでいる。結晶性のクリストバライトの割合は、約1質量%の検出限界未満であった。900℃における点火での損失は、代表的には、5〜12質量%の範囲であった。
【0041】
全ての触媒の合成を、DE4000609、実施例3に基づく方法で行った。触媒活性の測定を同様に、DE4000609に記載されているものに基づく方法によって行った。
【0042】
実施例1:比較例
3.51kgの、Masisタイプの珪藻土(Diatomite SP CJSC,Armeniaより)を、1.705kgの40%濃度(strength)のKOH、0.575kgの25%濃度NaOH及び0.398kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び2.35kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に250gの7.4%濃度のスターチ(でんぷん)水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出しを行って、11×5mmの星型押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして650℃でか焼した。
【0043】
実施例2:比較例
3.926kgの、MNタイプの珪藻土(EP Minerals LLC、Reno、USAより)を、1.701kgの40%濃度のKOH、0.563kgの25%濃度NaOH及び0.398kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び2.35kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に250gの7.4%濃度のスターチ水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出しを行って、11×5mmの星型押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして650℃でか焼した。
【0044】
このようにして製造した触媒は、多孔率が0.49ml/gであった。カッティング硬度は74.3Nであり、摩耗は3.0質量%であり、そしてかさ密度は431g/lであった(注、表1)。
【0045】
実施例3:比較例
3.565kgのDiatomite1タイプの珪藻土(Mineral ResourcesCo.,Lima,Peruより)を1.666kgの40%濃度のKOH、0.559kgの25%濃度のNaOH及び0.396kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び2.35kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に250gの7.4%濃度のスターチ水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出を行い11×5mmの星形押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして650℃でか焼した。
【0046】
実施例4:比較例
3.496kgのLCS−3タイプの珪藻土(EP Minerals LLCより)を1.711kgの40%濃度のKOH、0.587kgの25%濃度のNaOH及び0.398kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び2.35kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に250gの7.4%濃度のスターチ水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出を行い11×5mmの星形押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして650℃でか焼した。
【0047】
実施例5及び6:
70質量%のMNタイプ(EP Minerals LLCより)、及び30質量%のDiatomite1タイプ(Mineral ResourcesCo.より)を含む珪藻土の混合物を使用して(実施例5)、又は70質量%のLCS−3タイプ(EP Minerals LLCより)、及び30質量%のDiatomite1タイプ(Mineral ResourcesCo.より)を含む珪藻土の混合物を使用して(実施例6)、触媒を、実施例1〜4に類似する方法で製造した。実際の活性成分の組成は、工程に関連する僅かなばらつき(変動)を除いては、変化させなかった(偏差<5%相対;SO
4<9%相対)。
【0048】
実施例7:
20質量%のMNタイプ(EP Minerals LLCより)、50質量%のMasisタイプ(Diatomite SP CJSCより)、及び30質量%のDiatomite1タイプ(Mineral ResourcesCo.より)を含む珪藻土の混合物を使用して、触媒を、実施例1〜4に類似する方法で製造した。実際の活性成分の組成は、工程に関連する僅かなばらつき(変動)を除いては、変化させなかった(偏差<5%相対;SO
4<9%相対)。
【0049】
実施例8:
2.753kgの、MNタイプの珪藻土(EP Minerals LLCより)を、0.956kgのCs
2SO
4、1.394kgの47%濃度のKOH、及び0.417kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び1.906kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に177gの10.68%濃度のスターチ水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出しを行って、11×5mmの星型押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして510℃でか焼した。
【0050】
実施例9:
3.906kgのLCS−3タイプの珪藻土(EP Minerals LLCより)を1.381kgのCs
2SO
4、1.999kgの47%濃度のKOH、及び0.595kgの90%濃度のアンモニウムポリバナデート、及び2.769kgの48%濃度の硫酸から成る懸濁物と混合した。次に250gの10.68%濃度のスターチ水溶液を加え、混合物を強く混合(攪拌)し、そして押出を行い11×5mmの星形押出物を得た。次にこれらの押出物を120℃で乾燥させ、そして510℃でか焼した。
【0051】
実施例10:
50質量%のMNタイプ(EP Minerals LLCより)、20質量%のCelite400タイプ(Lehmann&Voss&Co.,Hamburgより)、及び30質量%のDiatomite1タイプ(Mineral ResourcesCo.より)を含む珪藻土の混合物を使用して、触媒を、実施例8及び実施例9に類似する方法で製造した。実際の活性成分の組成は、工程に関連する僅かなばらつき(変動)を除いては、変化させなかった(偏差<5%相対;SO
4<9%相対)。
【0052】
実施例11:
30質量%のLCS−3タイプ(EP Minerals LLCより)、30質量%のMasisタイプ(Diatomite SP CJSCより)、及び40質量%のDiatomite1タイプ(Mineral ResourcesCo.より)を含む珪藻土の混合物を使用して、触媒を、実施例8及び実施例9に類似する方法で製造した。実際の活性成分の組成は、工程に関連する僅かなばらつき(変動)を除いては、変化させなかった(偏差<5%相対;SO
4<9%相対)。
【0053】
実施例5、6、7及び10及び11に従い製造した触媒は、相当に改良された機械的特性と、試験した全温度範囲にわたって匹敵する、又は増加した触媒活性の組合せを示し、このことは本発明の触媒の優位性を例証している。
【0054】
表1:実施例1〜11で製造された触媒の孔体積、カッティング硬度、摩耗、タップ密度、及び触媒特性
【0055】
【表1】
【0056】
1)Cs−含有硫酸触媒
P=プレート形状の構造タイプ、C=シリンダー状の構造タイプ、R=棒形状の構造タイプ