(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施例では、同一の機構で、検体容器の開栓処理と閉栓処理を実施できる開閉機構を備えた自動分析システムの例を説明する。
【0022】
図1は、本実施例にかかる自動分析装置の構成図の例である。
【0023】
本実施例における自動分析システム100は、血液,尿、などの生体試料の成分を自動で分析するシステムである。主な構成要素は、検体投入部110,搬送機構120,栓体開閉機構130,検体分注機構140,反応ディスク150,試薬ディスク160,自動分析システムの制御コンピュータ170である。他の構成による自動分析システムであっても本願発明の構成を達成しうるものであれば良い物とする。例えば、前処理システムや、前処理システムと分析システムを統合したシステムであっても良い。
【0024】
搬送機構120の周囲には、検体認識手段123が設置され、搬送中の検体容器102に付されたバーコード104(
図4E参照)を読み取り、搬送された検体101を特定する情報を得る。検体容器102の認識はバーコード以外の記録媒体により行われても良い。たとえば、検体容器にRFIDなどを備えて、検体認識手段123がその記録媒体に記憶された検体情報(検体IDなど)を読み取るように構成しても良い。また、検体認識手段はCCDなどの撮像装置であっても良い。
【0025】
さらに、搬送中の検体容器について栓体103の開閉状況および栓体103の種類に関する情報を取得できる栓検知手段124を必要に応じて設置することが可能である。栓検知手段124は、CCDなどの撮像装置を備え、検体容器102を撮像して画像を取得し、当該の画像を解析して、検体容器102の開栓状況(栓体103の装着状況)の判断、および栓体103の種別の特定を行う。栓検知手段124は画像認識による栓検知以外の方式で栓体の有無および栓体の種別を特定しても良い。たとえば、発光素子と受光素子を対面するように配置して、受光素子の出力を検知して栓体の有無や栓体の種別を認識しても良いし、その他の方式で栓体の有無を検知するようにしても良い。
【0026】
栓検知手段124は、例えば
図1のように栓体開閉機構130の近傍に備えられていることが望ましい。開閉処理の前に検体容器102の画像を撮像して栓体の種別を判断し、最適な開栓・閉栓方法を栓体開閉機構130に指示するとともに、開閉処理が終了した後に再度検体容器の栓体装着状況をチェックすることで、開栓・閉栓処理が適切に行われたか否かを判定する。本実施形態では開閉前後の栓体装着状況のチェックを1つの栓検知手段124で兼用することが可能である。他の実施形態として、複数の栓体開閉機構130を備える場合に、それぞれの栓体開閉機構130に搬送される搬送路の手前に栓検知手段を設けることも考えられる。この場合には、栓体の種別に応じて開栓・閉栓処理がもっとも効率的に行うことができる栓体開閉機構130へと検体容器を搬送することが可能となる。
【0027】
栓体開閉機構130は、搬送された検体容器102の栓体103を開栓する機能と、前記取り外した栓体103を保持する機能,同一の検体容器102に対応していた同一の栓体103を閉栓する機能を持つ。
【0028】
検体分注機構140は、検体プローブを使って、前記栓体開閉機構130で開栓された検体容器102から、生体試料を吸引し、反応ディスク150上の所定の反応セル151内に吐出する。反応ディスク150は、反応セル151,攪拌機構152,検出機構153,洗浄機構154からなる。反応セル151は生体試料と試薬を混合して、両者を反応させる。攪拌機構152は、前記反応セル151内の混合物の攪拌を行い、両者の反応を促進する。検出機構153は、前記反応セル151内の混合物の光学的性質を測定し、取得するデータを制御コンピュータ170に転送する。洗浄機構154は、測定の終えた反応セル151を洗浄する。試薬ディスク160は、生体試料の成分分析に必要な試薬を保管する。また、試薬プローブ161は、試薬の吸引・吐出を行う。
【0029】
制御コンピュータ170は、上記に記載した各動作の制御と、測定データの解析を行う。当然ながら、該制御コンピュータは上述の手段や機構および各キャリア認識手段126との通信が可能である。
【0030】
図2A乃至
図2Eは、自動分析システム100に投入する生体試料と検体容器102の例を示している。
【0031】
生体試料は、採取後、専用の検体容器102に封入されている。そして、システム投入前の検体容器には専用の栓体103が装着され、外部の物質の混入を防いでいる。栓体13には、検体容器102の種類に適合した圧入栓(103a,103b1,103b2)(各々
図2A,
図2B1,
図2B2参照)や、スクリュー栓(103c,103d,103e)(各々
図2C,
図2D,
図2E参照)などが、それぞれつけられている。栓体にはゴムなどの弾性体でできたタイプや、合成樹脂などの硬い素材からなるタイプがある。
合成樹脂などの硬い素材からなる栓体は、自動開栓処理を行う場合に、過度の荷重がかかって栓体外周面に傷がついたり、栓体形状が変形しないように留意する必要がある。また、栓体の種類によっては検体容器に対して深く挿入されていることがあるため、開栓処理および閉栓処理実行時に栓体を掴む位置が限られる。
【0032】
検体容器102の外周表面にはバーコード104などの情報媒体が貼付されている。バーコード以外にも2次元コードやRFID等が貼付されていても良い。該検体容器102は、ホルダやラックなどの専用のキャリア105に架設されて、自動分析システム100内を移動する。
【0033】
図3は、前記栓体開閉機構130を説明する図の例である。前記栓体開閉機構130の主な構成要素は、開閉アーム機構131,開閉上下機構132,検体容器102のクランプ機構134、およびチャック機構133である。
【0034】
開閉アーム機構131は、チャック機構133の移動を行う。図面では回転軸を中心としてチャック機構133を回転移動させる方式が開示されているが、本方式に限定されない。たとえば、XY軸を備え、XY方向に沿って栓体チャック機構を移動させる方式としても良い。
【0035】
クランプ機構134は、栓体の開閉動作時に、検体容器102の持ち上げと固定を行う。
【0036】
チャック機構133は、栓体103の開栓処理と閉栓処理を行う。また、開栓処理した後の栓体を、閉栓処理に用いるまで保持しておく機能も備える。一方で、栓体開閉機構130の近傍に栓体103の廃棄場所を備え、取り外した栓のうち閉栓が不要な場合は廃棄することができるように構成しても良い。また、栓体開閉機構130の近傍に栓体103の供給場所を設置しても良い。これにより、閉栓専用の栓体103で閉栓する場合にも対応可能である。
【0037】
栓体開閉機構130の下方には、キャリア認識手段126が設けられる。キャリア認識手段126は、栓体開閉機構130へと搬送された検体容器102を搭載したキャリアに対し、当該キャリアの記録媒体に記録されたキャリアID情報や検体ID情報を読み取る。検体認識手段123によって読み取られた検体を識別する情報と、キャリア認識手段126によって読み取られたキャリアID情報が、制御コンピュータ170に送信され、制御コンピュータ170は両者の情報をリンク付けして自動分析システム100内で当該検体容器102を特定するユニークな情報を構成する。
【0038】
次に、
図1〜
図3を使用して、検体容器102の開閉処理と検体分注処理の流れを説明する。
【0039】
生体試料の入った検体容器102が、オペレータにより検体投入部110に投入されると、搬送機構120によって自動分析システム100へと搬送される。自動分析システム100内部の通信手段を経由して、自動分析システム100に搬送された検体容器102の情報が制御コンピュータ170に伝わる。この通信に対する返信をトリガーとして、検体容器102は搬送機構120により自動で自動分析システム100内の各機構に搬送される。
【0040】
検体認識手段123は、バーコード104を、また、キャリア認識手段126は使用されているキャリアID情報をそれぞれ読み取り、制御コンピュータ170に送信する。制御コンピュータ170は両者の情報を対応付けし、自動分析システム100内で当該検体容器102を示すユニークな情報を構成する。
【0041】
栓検知手段124は、CCDなどの撮像装置を備え、検体容器102の画像を解析して検体容器102の開栓状況(栓体103の有無)の判断、および栓体103の種別の特定を行う。栓検知手段124は画像認識による栓検知以外の方式で栓体の有無および栓体の種別を特定しても良い。たとえば、発光素子と受光素子を対面するように配置して、受光素子の出力を検知して栓体の有無や栓体の種別を認識しても良いし、その他の方式で栓体の有無を検知するようにしても良い。
【0042】
制御コンピュータ170は、当該解析情報に基づき栓体103の処理内容(開栓処理の有無、使用する栓体開閉機構130、各機構部の動作パラメータなど)を決定し、処理情報として搬送機構120に指示する。制御コンピュータ170によって開栓処理が必要だと判断された検体容器が搭載されたキャリアに対しては、栓体開閉機構130による栓体103開栓処理が実施される。開栓処理が完了すると、栓体開閉機構130の下に設置しているキャリア認識手段126で当該検体容器を搭載しているキャリアのキャリアIDを読み取り、制御コンピュータ170に送信することで、制御コンピュータ170内では当該キャリアID情報と共に、「どの栓体開閉機構130で開栓処理が成功した」という情報が記憶される。以上の処理により、制御コンピュータ170内では、各検体容器102に関する情報と、開栓を実施した栓体開閉機構130が対応付けされる。
【0043】
また、栓体開閉機構130は、後述する閉栓処理が行われるまで、取り外した栓体103を保持する機能を有する。取り外した栓体を保持する場合には、新たな検体容器102の開栓処理は実施しない。あるいは、閉栓処理が不要な場合は、廃棄場所まで移動して開栓処理した後の栓体を廃棄する。専用の新しい栓体103で閉栓する場合は、廃棄場所で開栓処理した後の栓体を廃棄したあと、隣接する供給場所135から栓体103を掴み、閉栓処理に使用する。
【0044】
開栓処理を終えた検体容器102は検体分注位置142に搬送され、到達した順に検体分注処理が施される。検体分注位置142の下にもキャリア認識手段126が設置され、キャリアID情報を読み取ると制御コンピュータ170に送信する。制御コンピュータ170ではキャリアID情報とともに、「分注処理が成功した」という情報を対応付けて記憶する。
【0045】
分注を終えた検体容器102は、閉栓処理が必要な場合には再度、栓体開閉機構130まで搬送される。検体容器102がキャリア認識手段126によってキャリアIDの認識が可能なエリアに到達すると、キャリアID情報を読み取り、制御コンピュータ170へ送信する。
【0046】
制御コンピュータ170は、送信されたキャリアID情報を、開栓処理時に送信されたキャリアID情報と照会し、当該検体容器102の開栓処理を実施した栓体開閉機構130を特定する。制御コンピュータ170は照会した情報に基づき、閉栓処理の必要性を判断し、適切な栓体開閉機構130へと検体容器を搬送する。ここで閉栓処理の必要性とは、例えば閉栓処理の必要性の有無、使用する栓体開閉機構130の種類、栓体開閉機構130の各機構部の動作パラメータ(例えば、チャック機構133が栓体を掴む位置,閉栓処理時の正常トルク範囲など)など、検体容器102に適合した処理情報が含まれる。
このようにして、再び検体容器102が栓体開閉機構130に戻るように搬送されると閉栓処理が行われる。以上のようにすることで、検体容器102に対して、開栓処理前に元々装着していた栓体103を分注処理後の検体容器102に元通りに装着させることが可能となる。閉栓処理後、キャリア認識手段126は読み取ったキャリアID情報を制御コンピュータ170に送信し、制御コンピュータ170はキャリアIDと共に「閉栓処理が成功した」という情報を記憶する。
【0047】
閉栓処理を終えた検体容器102は、搬送機構120の流れに沿って、検体収納部111まで搬送される。検体容器102は、制御コンピュータ170で指示されたポジションに収納される。
【0048】
図4F,
図4G,
図4Hは、チャック機構133が各種栓体を掴んでいる様子を示す断面図の例である。
図4A乃至
図4Hを用いて、本願の特徴である栓体開閉機構130について説明する。
【0049】
チャック機構133には、栓体103を把持するための栓チャック部139が一組備えられている。本発明における栓チャック部139は、圧入栓(103a,103b1,103b2)の開閉処理に適した形状の栓チャック139abと、スクリュー栓(103c,103d,103e)の開閉処理に適した形状の栓チャック139cdとが、上下に離間させ重なるように配置され、構成されている。望ましくは、栓チャック139abと栓チャック139cdとの間に弾性体の栓チャック139eを挟んだ構成で配置されている。
【0050】
各栓チャックは複数の支持体によって形成されており、該複数の支持体の中心には栓体を開閉処理時に栓体を掴み、保持するためのスペースが空いている。開栓処理時に支持体と栓体とが接触する部分に荷重が集中して栓体に傷がつくことや変形することを防ぐため、支持体は3枚以上備わっていることが望ましい。
【0051】
また、栓チャック139abの複数の支持体によって形成されるスペースは、栓チャック139cdによって形成されるスペースよりも小さく、栓チャック139eによって形成されるスペースはさらに、栓チャック139abによって形成されるスペースよりも小さくなるように構成されている。
【0052】
これらの栓チャック(139ab,139cd)は、例えば、ステンレスなどの金属により構成され、栓チャック139eは、例えば、ゴムで構成されている。また、栓チャック139abと栓チャック139cdは、栓体103と接する部分に複数の突起を有する突起部139X,139Zをそれぞれ有している(各々
図4F,
図4H参照)。
【0053】
初めに、圧入栓(103a,103b1,103b2)を把持するときの処理について、
図4A及び
図4B1、
図4B2を用いて説明する。
図4Aおよび
図4B1、
図4B2は異なるタイプの圧入栓を本発明におけるチャック機構133が把持している図である。
圧入栓(103a,103b1,103b2)の栓チャック139abは、スクリュー栓(103c,103d,103e)の栓チャック139cdの上側に離間され配置されている。圧入タイプの栓体103と接する栓チャック139abの突起部139Xは、スクリュー栓と接する栓チャック139cdの突起部139Zより栓に対して突出している。従って、チャック機構133が栓チャックのスペースに栓体103を掴む際、まず栓チャック139abの突起部139Xが栓体103を圧接し、栓体103が変形して凹むと、次に弾性体の栓チャック139eが栓体103を圧接して保持する。
【0054】
以上のようにすることで、栓チャック139abが栓体103を把持した時に、突起部139Xが栓体を圧接するためチャック力を伝達しやすく、栓体103が滑らないように把持することができる。さらに圧入すると、突起部の数を多くした(望ましくは円形状である)栓チャック139eまたは栓チャック139cdが圧接されるため、開栓処理によって栓体103に荷重が円周方向に不均一に加わることを防止し、栓体103の変形や傷付きを防ぐことができる。
【0055】
閉栓時には、同様に栓チャック139abの突起部139Xが栓体103を固定し、栓チャック139cdおよび栓チャック139eが栓体103に対してチャック機構の力を伝える上に、これらの栓チャックの上部に備えられた支持部137が栓体103を上方より押さえつけるため、上方から圧入しつつ閉栓処理することが可能である。
【0056】
次に、スクリュー栓(103c,103d,103e)を把持するときの処理について、
図4C、
図4Dおよび
図4Eを用いて説明する。
図4C、
図4Dおよび
図4Eは異なるタイプのスクリュー栓を本発明におけるチャック機構133が把持している図である。
【0057】
スクリュー栓は栓体を特定方向にスクリューさせることで開閉可能な栓であり、開閉させやすいように栓体の外周面には滑り止めの溝が複数付けられているのが一般的である。
【0058】
スクリュー栓(103c,103d,103e)用の栓チャック139cdは、弾性体から成る栓チャック139eの下側に配置されている。また、栓チャック139cdの突起部139Zは、栓体に対して弾性体の栓チャック139eの接触ライン(139Y、
図4G参照)よりも引っ込んだ位置に位置している。従って、チャック機構133がスクリュー栓の栓体103を掴む際、まず弾性体の栓チャック139eが栓体103を圧接し、栓チャック139eが変形して凹むと、突起部の数の多い栓チャック139cdの突起部139Zが栓体103を圧接するようになっている。
【0059】
なお、栓チャック139cdよりも栓体に対して突出した突起部139Xを持つ栓チャック139abが栓体に接触すると、突起部139Xによって栓体に傷が付くおそれがあるため、制御コンピュータ170は、栓チャック139abは栓体には接触しないような高さにチャック機構133を位置づけるよう、開閉上下機構132の下降量を指示する。
また、栓チャックの上部に備えられた支持部137の開口部137dが、栓体103dの上部に設けられた円筒形の突起部との干渉を避けることができるため、栓体を確実に把持することが可能である。
以上のようにすることで、栓体に対して突出した栓チャック139eの弾性体、および、栓チャック139cdの突起部139Zがスクリュータイプの栓体103の外周面の溝にはまり込むため、すべることなく栓体を確実に開閉処理することができる。
また、栓チャック139cdと栓チャック139eが3枚以上の支持体を有することによって、栓体103を真っ直ぐ把持することができ、栓体103の保持が傾くことによる開閉処理の失敗を抑止することが可能となる。同時に、栓チャック139eが弾性体からなり円形状の突起部を有していることにより、栓体103に対する接触面積を大きく確保できるため、チャック力を効率的に伝達することができる。また前述したように、突起部の数を多くした(望ましくは円形状である)栓チャック139eまたは栓チャック139cdが栓体103を把持した時に、栓体103に対してのチャック力が栓体の外周面に不均一に加わることを防ぎ、栓体103の変形を抑止することが可能となる。
【0060】
また、これらの栓チャック139abと栓チャック139cdと栓チャック139eを組み合わせる位置関係は、栓体103を挟み込む方向に対して可変できる構造としても良い。つまり、各栓チャックの開き量を可変に制御できるようにし、開閉動作の開始直後は栓体を軽く把持することによって栓体の変形・傷つきを防ぎ、開閉動作の終了時には栓体を強く把持することによって栓体を確実に開栓・閉栓することができる。これにより、栓体103の外径,材質や硬さの違いに応じて柔軟に対応することが可能であり、どのような栓体103であっても失敗することなく開閉処理を行うことができる。
【0061】
このように、本発明のチャック機構133は、それぞれの特徴を考慮した形状の栓チャック139abと栓チャック139cdと、栓チャック139eを組み合わせた構成であるので、栓体103が圧入栓であっても、スクリュー栓のどちらの場合であっても、栓体103の変形や傷や滑りを防止できるため、開閉に必要な把持が可能となり、栓体103の開閉処理の失敗を回避することができる。
【0062】
図5は、チャック回転機構138の概略図の例である。
【0063】
チャック機構133は、栓体103の上端面と接する支持部137と、栓体103の外周面を把持する栓チャック部139と、栓体103を把持して回転させるチャック回転機構138と、栓体チャック機構にかかるトルクを検出する力センサ178と、エンコーダ173を概略備えている。
【0064】
チャック回転機構138は、モータ171によって開栓方向と閉栓方向の両方向に回転できるようになっており、図には明示されていない開閉上下機構132によって開栓方向の上昇動作と閉栓方向の下降動作の両方が動作できるようになっている。
【0065】
これらのモータ171と図には明示されていない上下モータは、制御コンピュータ170によってこれらのモータ駆動を制御するようになっている。
【0066】
モータ171の駆動電流を電流計172により検出して制御コンピュータ170に入力し、制御コンピュータ170が、この電流値によってトルクを算出することができる。
【0067】
また、モータ171にはエンコーダ173が設けられており、モータ171の回転によって出力されるパルスをカウントすることにより、制御コンピュータ170がチャック機構133の回転角度を算出することができる。
一方、制御コンピュータ170からは、モータ171の駆動を制御する指令信号を出力するようになっており、チャック機構133の回転による栓体103の締付けトルクを制御するトルク指令信号174と、栓体103の回転角度および回転速度の指令信号175を出力することが可能である。
【0068】
図3〜
図5を使用して、チャック機構133による栓体103の開閉処理の例を示す。
【0069】
前述したように、検体容器102と栓体103の種別の特定が行われると、制御コンピュータ170は、解析情報に基づき検体容器102の開閉処理の内容を決定する。なお、この開閉処理の内容は、あらかじめオペレータにより登録されていても良い。
【0070】
検体容器102の栓体103の種類が、圧入栓(103a,103b1,103b2)の場合は、制御コンピュータ170からの指示に従い、開閉上下機構132とチャック回転機構138の動作により、開栓時には回転させながら栓体103を持ち上げる開栓処理を行い、閉栓時には回転させながら栓体103を押し込む閉栓処理が行われる。
【0071】
一方、スクリュー栓(103c,103d,103e)の場合は、制御コンピュータ170からの指示に従い、圧入栓(103a,103b1,103b2)の場合とは回転力や回転数などが異なる回転動作を行いながら、ねじピッチに合わせた上昇動作と下降動作を行う。このように、検体容器102と栓体103の情報に応じて、開閉動作時に回転力や回転数などの動作パラメータをそれぞれ切り替えることによって最適な開閉処理を実現することができる。
【0072】
通常、圧入栓(103a,103b1,103b2)の閉栓処理の場合、押し付け力は大きく、回転トルクも大きい。一方、スクリュー栓(103c,103d,103e)の閉栓処理の場合、押し付け力は小さく、回転トルクも小さい。前述したように、栓体103を把持している栓チャック部139は、検体容器102と栓体103の情報に応じて、選択されたチャック部が使用される(圧入栓の場合、栓チャック139ab、スクリュー栓の場合、栓チャック139cd)。このため、栓チャック部139は、チャック回転機構138による回転トルクを栓体103に要求されている締付けトルクとして、伝達させることが可能である。いずれの場合でも、回転動作時に栓体103がすべらないことが可能である。
【0073】
本発明は、栓チャック部139の形状に対するこの相反する要求を同時に満たす栓チャック部139を用いていることを特徴としている。
【0074】
図6は、栓体開閉機構130におけるチャック機構133の上下動作とチャック回転機構138の回転動作と回転トルクに着目した、開閉処理の流れを示すタイミングチャートの例である。
【0075】
図6上段は、開閉上下機構132による、チャック機構133の駆動高さ、
図6中段は、モータ171によるチャック回転機構138の回転速度、
図6下段は、チャック回転機構138の締付けトルク、をそれぞれ示す。
【0076】
図3〜
図6を使用して、チャック機構133による栓体103の開閉処理の例を示す。
【0077】
初めに、前述のように、検体容器102が搬送機構120によって搬送され、栓体開閉機構130の開閉ポジションに停止する。この段階は
図6上段のタイミングチャートのAより前に相当する。
【0078】
(処理A〜C)チャック機構133が、開閉上下機構132によって下降し(
図6上段、A〜B区間)、C位置で栓体103を把持する。この時、チャック回転機構138の位置決めを行っても良い。
図6中段においては、チャック回転機構138がB〜C区間で回転して、原点復帰のための位置だし動作を行っている。
【0079】
(処理C〜D)チャック機構133が栓体103を把持すると、開閉上下機構132の動作とあわせて、チャック回転機構138が回転動作する。この時、制御コンピュータ170からのトルク指令信号174と、回転速度および回転角度の指令信号175とがモータ171に送られ、このモータ171の駆動により栓体103を把持するチャック回転機構138が回転を制御する。
【0080】
モータ171の駆動によって、
図6上段C位置からチャック機構133が回転を開始し、D位置で指令回転角度S0に到達して停止する。このときの最大回転トルクはT0であり、実回転が指令回転に追従するように充分に高い値になっている。C〜D区間でチャック機構133を開栓方向に回転させながら上昇し、Dの時点で開栓処理が終了する。
【0081】
(処理D〜E)開栓処理が終了すると、チャック機構133が上昇して、検体容器102の開口部から栓体103を上方へ抜き取る。
図6上段のD位置からチャック機構133が上昇を開始し、E位置まで持ち上げることにより、栓体103を検体容器102の開口部から完全に抜き取ることができる。
【0082】
(処理E〜F)チャック機構133が、栓体103を保持する。開栓処理を実施した検体が検体分注処理が終了し、栓体開閉機構130の位置に戻ってくるまでは、チャック機構133はこの高さに位置している(
図6上段E〜F区間)。
【0083】
次に、搬送機構120によって、検体分注処理を終えた検体容器102が搬送され、栓体開閉機構130の開閉位置に停止する。
【0084】
(処理F〜G)チャック機構133が、栓体103を保持した状態で開閉上下機構132によって下降する。この時、チャック回転機構138の位置決めを行っても良い。
【0085】
(処理G〜H)チャック機構133は栓体103を保持した状態で開閉上下機構132の下降動作とあわせて、チャック回転機構138を回転させる。チャック回転機構138の回転動作については、制御コンピュータ170からのトルク指令信号174と、回転速度および回転角度の指令信号175とがモータ171に送られ、このモータ171の駆動により栓体103を把持するチャック機構133を回転する。
【0086】
モータ171の駆動によって、
図6上段G時点からチャック機構133が回転を開始し、H時点で指令回転角度S1に到達して停止する。一方、指令トルクの最大値はT1であり、実回転が指令回転に追従するように充分に高い値になっている(チャック機構133を閉栓方向に回転させる。G〜H区間で下降し、H時点で閉栓処理が終了する。)。
【0087】
(処理H〜I)閉栓処理が正常に行われたか否かの判定を行う。なお、
図6下段に、異常時の回転トルクの例を示す。前述のように、栓体103の閉栓処理時のトルクを力センサ178で検出することにより、栓体103の閉栓処理や開栓処理時における異常発生を検知することが可能となる。例えば、正常なトルク値の範囲を予め定めておき、その範囲を逸脱した場合に開閉処理異常が生じたと判断しても良いし、正常な開閉処理時のトルク波形のパターンを記憶しておき、力センサ178により得られた実測トルク波形の形状が正常のトルク波形の形状と異なる場合に異常が生じたと判断しても良い。また、本実施例には閉栓処理の判定を述べたが、同様にして区間E〜Fにおいて開栓処理の判定を行っても良い。
【0088】
(処理I〜J)開栓処理が終了すると、チャック機構133が上昇し、次の処理まで待機する。
【0089】
以上の処理を行うことにより、例えば、チャック機構133が栓体103を斜めに把持してしまい、検体容器102に対して斜めに栓体103を押し付けた状態で、不完全な閉栓状態になってしまった場合等の、閉栓異常をトルク検出や負荷検出などから監視することが可能となる。
【0090】
不完全な開閉処理を検知した場合には、その旨をオペレータに通知しても良い。例えば、制御コンピュータ170に表示装置が備わっている場合には、その旨を画面表示しても良いし、アラームや表示灯を点灯して注意を喚起しても良い。この場合、オペレータは検体の様子を目視で確認して、異常原因があればそれを排除するなどのリカバリ動作を行う。また、不完全な閉栓状態になってしまった場合、リトライ動作(異常検出時に、開けてから閉め直す)に遷移して完全に閉栓処理させても良く、このような処理を行うことで正常動作に復帰することが可能となる。
【0091】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0092】
従来技術においては、自動分析システムのサンプルラインにおいて、検体容器の開閉処理と検体分注処理を行う場合、特定の栓の種類に対応した開栓機構と閉栓機構を別々に備えることが通常であった。開閉処理を一つの機構で実施しようとする場合、異なる形状の栓体や、圧入式やスクリュー式といった異なる方式の開栓・閉栓動作に対応する必要があるため機構が複雑となることが問題であった。そのため、閉栓処理には専用の栓を使用しており、検体容器を密閉していた栓体を再利用して閉栓処理することは困難であると考えられていた。また、専用栓による閉栓処理では圧入式による押し込み閉栓方式が通常であった。そのため、閉栓異常時の正確な判定が困難であった。
【0093】
上記目的を達成するために、本発明の実施の形態においては、開栓処理により検体容器から取り外した栓体を、同一の検体容器に閉栓処理するために、栓体と検体容器とを対応付けて管理する管理システムと、開栓後の栓体を保持・管理する栓体チャック手段を備え、閉栓処理する必要の生じた検体容器を元の栓体に閉栓できるように構成したので、栓体の再利用を確実に行うことができる。
【0094】
また、栓の素材や開栓・閉栓方式の種類に適合した複数の栓体チャックを備え、回転角度や上下駆動などの開閉動作を、栓体の種類に応じて切り替える制御部を備えているため、複数種類の栓体の開閉処理が同一の開閉機構で行うことができる。
【0095】
このため、検体容器の開栓処理と閉栓処理が確実にできる栓体開閉機構を備えた自動分析システムを提供することが可能である。