(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の直径方向に沿って延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法において、
基板をスピンドルで支持し回転させながら基板の表面をスクラブ洗浄し、
スクラブ洗浄処理中に、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度を段階的または連続的に変更し、または基板の回転方向を変更することを特徴とする基板洗浄方法。
基板の直径方向に沿って延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法において、
基板を順方向に回転させて1枚の基板の表面をスクラブ洗浄する順方向洗浄工程と、前記順方向洗浄工程と同じ回転速度で基板を逆方向に回転させて1枚の基板の表面をスクラブ洗浄する逆方向洗浄工程を任意の枚数の基板毎に繰返すことを特徴とする基板洗浄方法。
基板の直径方向に沿って直線状に延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄し、基板の回転速度と前記ロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点が基板の表面の洗浄エリアに存在する基板洗浄方法において、
基板をスピンドルで支持し回転させながら基板の表面をスクラブ洗浄し、
スクラブ洗浄処理中に、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向を変更することを特徴とする基板洗浄方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示すように、直径D
Wの基板Wの表面に、直径D
Rのロール洗浄部材Rを基板Wの直径D
Wの全長に亘って接触させつつ、洗浄液の存在下で、回転軸O
Wを中心に基板Wを回転速度N
W(角速度ω
W)で、回転軸O
Rを中心にロール洗浄部材Rを回転速度N
R(角速度ω
R)で共に回転させつつ、基板Wの表面を洗浄する場合を考える。この場合、基板Wの表面のロール洗浄部材Rとの直線状に延びる洗浄エリア(接触エリア)Cに沿った位置で基板Wのスクラブ洗浄が行われる。
【0006】
ここで、洗浄エリアCに沿った基板Wの表面の回転軸O
Wを中心としたら直径D
0に位置する点の回転速度V
Wは、回転軸O
Wからの半径(D
0/2)に比例して
V
W=(D
0/2)・ω
W=(D
0/2)・2πN
W
となる。
【0007】
ロール洗浄部材Rの外周面の回転速度V
Rは、回転軸O
Wから半径(D
0/2)に拘わらず、洗浄エリアCに長さ方向に沿って一定の
V
R=(D
R/2)・ω
R=(D
R/2)・2πN
R
となる。
【0008】
このため、D
0=D
R(N
R/N
W)の時、基板Wの回転速度V
Wとロール洗浄部材Rの回転速度V
Rが等しく(V
W=V
R)なり、基板Wの回転速度V
Wの向きとロール洗浄部材Rの回転速度V
Rの向きが同じ点で両者の相対速度がゼロとなる。
【0009】
例えば、直径300mmの基板(ウエハ)Wを回転速度150rpmで回転させながら、直径60mmのロール洗浄部材Rを回転速度200rpmで回転させて基板Wの表面のスクラブ洗浄を行う(洗浄条件A)と、洗浄エリア上の基板Wの回転速度V
Wとロール洗浄部材Rの回転速度V
Rの相対速度がゼロとなる点を通る基板Wの表面の回転軸O
Wを中心とした円の直径D
0は、80mmとなる(D
0=80mm)。同じ条件で、直径300mmの基板(ウエハ)Wを回転速度55rpmに落とす(洗浄条件B)と、洗浄エリア上の基板Wの回転速度V
Wとロール洗浄部材Rの回転速度V
Rの相対速度がゼロとなる点を通る基板Wの表面の回転軸O
Wを中心とした円の直径D
0は、218mmとなる(D
0=218mm)。
【0010】
ここで、前述の洗浄条件Aで基板の表面を洗浄すると、
図2(a)に示すように、基板の表面の直径80mm(D
0=80mm)に沿った領域にパーティクル(ディフェクト)が残って該領域の洗浄能力が低くなり、また、前述の洗浄条件Bで基板Wの表面を洗浄すると、
図2(b)に示すように、基板の表面の直径218mm(D
0=218mm)に沿った領域にパーティクル(ディフェクト)が残って該領域の洗浄能力が低くなる。
【0011】
これは、洗浄エリアC上の基板Wの回転速度V
Wとロール洗浄部材Rの回転速度V
Rの相対速度がゼロとなる点及びその周辺に位置するロール洗浄部材Rの一部に汚染された汚染領域P
0が生じて洗浄性能が低下し、更にロール洗浄部材Rを基板Wから引き離す時に、ロール洗浄部材Rの汚染領域P
0から基板Wに逆汚染が起こり易くなるためであると考えられる。
【0012】
例えば、回転速度5〜200rpmで回転中の直径300mmまたは450mmの基板(ウエハ)の表面を、直径が30〜80mm程度のロール洗浄部材を、10〜200rpm程度の回転速度で回転させながらスクラブ洗浄する時、基板の表面の洗浄エリア上に基板の回転速度とロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点(領域)が存在する場合が多い。
【0013】
つまり、基板の表面の洗浄エリアに基板の回転速度とロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点(領域)が存在しないようにするためには、例えば、直径300mmの基板を、直径60mmのロール洗浄部材でスクラブ洗浄する場合、(1)ロール洗浄部材の回転速度NRを基板の回転速度NWの5倍以上にするか、または(2)ロール洗浄部材を正常回転速度範囲(例えば、回転速度150rpm)で回転させる場合、基板の回転速度を30rpm以下までに落とす必要がある。
【0014】
このように、ロール洗浄部材の回転速度N
Rを基板の回転速度N
Wの5倍以上とした条件でロール洗浄部材を長時間に亘って連続して使用すると、ロール洗浄部材に発熱による破損が生じるリスクが高くなる。一方、基板の回転速度を30rpm以下まで落とすと、基板の表面に供給された洗浄液が基板の表面に沿って流れにくくなり、パーティクル等が基板の表面に再付着しやすくなって、洗浄性能が低下する恐れがある。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、基板の表面の洗浄エリアに基板の回転速度とロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点(領域)が存在しても、基板の表面をその全域に亘ってより均一に洗浄できるようにした基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明
の一態様は、基板の直径方向に沿って延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法において、
基板をスピンドルで支持し回転させながら基板の表面をスクラブ洗浄し、スクラブ洗浄処理中に、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度を段階的または連続的に変更し、または基板の回転方向
を変更することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0017】
このように、ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向をスクラブ洗浄処理中に変更することにより、基板表面の基板の直径方向に延びる洗浄エリア上の基板の回転速度とロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点(領域)の位置を変化させ、これによって、ロール洗浄部材の同じ箇所に汚染が集中するのを軽減し、ロール洗浄部材から基板への逆汚染を低減して、基板の表面をその全域に亘ってより均一に洗浄することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材の長さは基板の直径よりも長いことを特徴とする。
本発明
の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向を、1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前に変更することを特徴とす
る。
【0019】
1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前とは、例えば1枚の基板の表面をスクラブ洗浄するのに要する全処理時間の約9割を終了した時点である。このように、ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向を、1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前に変更することで、最適な研磨条件で基板の表面をスクラブ洗浄する時間をより長くしつつ、ロール洗浄部材の一部の領域に汚染が集中することによる基板への汚染転写を低減することができる。一般に、ロール洗浄部材を基板表面から引き上げる瞬間、ロール洗浄部材と基板表面との接触が不完全なため洗浄能力が落ち、ロール洗浄部材から基板表面への汚染転写が一番発生しやすい状態にある。
【0021】
このように、ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度を段階的に変更することで、洗浄条件の設定を簡易として、ロール洗浄部材及び基板の回転速度の制御を容易に行うことができる。一方、ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度を連続的に変更することで、ロール洗浄部材の汚染が集中する領域をより均一に分散させることができる。
【0022】
本発明
の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材及び基板の双方の回転速度をスクラブ洗浄処理中に同時に変更することを特徴とす
る。
これにより、洗浄条件等に合わせて、ロール洗浄部材及び基板の回転速度の最適な組合せを選択して、最適な洗浄性能を維持することができる。
【0023】
本発明
の他の態様は、基板の直径方向に沿って延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法において、基板を順方向に回転させて1枚の基板の表面をスクラブ洗浄する順方向洗浄工程と、前記順方向洗浄工程と同じ回転速度で基板を逆方向に回転させて1枚の基板の表面をスクラブ洗浄する逆方向洗浄工程を任意の枚数の基板毎に繰返すことを特徴とする基板洗浄方法である。
【0024】
基板の回転速度が同じ場合、洗浄性能は、基板の回転方向に支配されないので、基板の回転速度が同じ順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を任意の枚数の基板毎に繰返すことで、全ての基板に対する洗浄性能を一定に維持しながら、ロール洗浄部材の一部に汚染が集中するのを軽減することができる。
【0025】
本発明
の好ましい態様は、前記任意の枚数の基板は、一枚の基板、1ロットで連続的に処理される枚数の基板、または予め定められた所定の枚数の基板であることを特徴とす
る。
本発明
のさらに他の態様は、基板の直径方向に沿って直線状に延びるロール洗浄部材を基板の表面に接触させつつ、前記ロール洗浄部材と基板を共に回転させて基板の表面をスクラブ洗浄し、基板の回転速度と前記ロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点が基板の表面の洗浄エリアに存在する基板洗浄方法において、
基板をスピンドルで支持し回転させながら基板の表面をスクラブ洗浄し、スクラブ洗浄処理中に、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向
を変更することを特徴とする基板洗浄方法である。
本発明の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材の長さは基板の直径よりも長いことを特徴とする。
本発明
の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材及び基板の少なくとも一方の回転速度または基板の回転方向を、1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前に変更することを特徴とす
る。
本発明
の好ましい態様は、前記ロール洗浄部材及び基板の双方の回転速度をスクラブ洗浄処理中に同時に変更することを特徴とす
る。
【0026】
一枚の基板をスクラブ洗浄する毎に、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返すことで、全ての基板に対する均一な洗浄性能を維持でき、連続的に処理される1ロットの基板をスクラブ洗浄する毎に、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返すことで、制御ソフトを簡略化することができる。また、予め定められた所定の枚数の基板をスクラブ洗浄する毎に、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返すことで、ロール洗浄部材の汚染状況に応じて、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返す頻度を決めて、フレクシビリティを高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の基板洗浄方法によれば、基板表面の基板の直径方向に延びる洗浄エリア上の基板の回転速度とロール洗浄部材の回転速度の相対速度がゼロとなる点(領域)の位置をスクラブ洗浄中に変化させ、これによって、ロール洗浄部材の同じ箇所に汚染が集中するのを軽減し、ロール洗浄部材から基板への逆汚染を低減して、基板の表面をその全域に亘ってより均一に洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の基板洗浄方法に使用されるスクラブ洗浄装置の一例を示す概要図である。
図3に示すように、このスクラブ洗浄装置は、表面を上にして半導体ウエハ等の基板Wの周縁部を支持し基板Wを水平回転させる、水平方向に移動自在な複数本(図では4本)のスピンドル10と、スピンドル10で支持して回転させる基板Wの上方に昇降自在に配置される上部ロールホルダ12と、スピンドル10で支持して回転させる基板Wの下方に昇降自在に配置される下部ロールホルダ14を備えている。
【0030】
上部ロールホルダ12には、円柱状で長尺状に延びる、例えばPVAからなる上部ロール洗浄部材(ロールスポンジ)16が回転自在に支承されている。下部ロールホルダ14には、円柱状で長尺状に延びる、例えばPVAからなる下部ロール洗浄部材(ロールスポンジ)18が回転自在に支承されている。なお、上記の例では、ロール洗浄部材16,18として、例えばPVAからなるロールスポンジを使用しているが、ロールスポンジの代わりに、表面にブラシを有するロールブラシを使用してもよい。
【0031】
上部ロールホルダ12は、上部ロールホルダ12を昇降させ、上部ロールホルダ12で回転自在に支承した上部ロール洗浄部材16を矢印F
1に示すように回転させる、図示しない駆動機構に連結されている。下部ロールホルダ14は、下部ロールホルダ14を昇降させ、下部ロールホルダ14で回転自在に支承した下部ロール洗浄部材18を矢印F
2に示すように回転させる、図示しない駆動機構に連結されている。
【0032】
スピンドル10で支持して回転させる基板Wの上方に位置して、基板Wの表面(上面)に洗浄液を供給する上部洗浄液供給ノズル20が配置され、スピンドル10で支持して回転させる基板Wの下方に位置して、基板Wの裏面(下面)に洗浄液を供給する下部洗浄液供給ノズル22が配置されている。
【0033】
上記構成のスクラブ洗浄装置において、スピンドル10の上部に設けたコマ24の外周側面に形成した嵌合溝24a内に基板Wの周縁部を位置させて内方に押し付けてコマ24を回転(自転)させることにより、回転軸O
Wを中心に基板Wを矢印E(またはその逆)で示すように水平に回転させる。この例では、4個のうち2個のコマ24が基板Wに回転力を与え、他の2個のコマ24は、基板Wの回転を受けるベアリングの働きをしている。なお、全てのコマ24を駆動機構に連結して、基板Wに回転力を付与するようにしてもよい。
【0034】
このように基板Wを水平に回転させた状態で、上部洗浄液供給ノズル20から基板Wの表面(上面)に洗浄液(薬液)を供給しつつ、上部ロール洗浄部材16を回転させながら下降させて回転中の基板Wの表面に接触させ、これによって、洗浄液の存在下で、基板Wの表面を上部ロール洗浄部材16でスクラブ洗浄する。上部ロール洗浄部材16の長さは、基板Wの直径より僅かに長く設定されている。そして、上部ロール洗浄部材16は、その中心軸(回転軸)O
Rが、基板Wの回転軸O
Wとほぼ直交する位置に位置して、基板Wの直径の全長に亘って延びるように配置され、これによって、基板Wの全表面が同時に洗浄される。
【0035】
同時に、下部洗浄液供給ノズル22から基板Wの裏面(下面)に洗浄液を供給しつつ、下部ロール洗浄部材18を回転させながら上昇させて回転中の基板Wの裏面に接触させ、これによって、洗浄液の存在下で、基板Wの裏面を下部ロール洗浄部材18でスクラブ洗浄する。下部ロール洗浄部材18の長さは、基板Wの直径より僅かに長く設定されていて、前述の基板Wの表面とほぼ同様に、基板Wの全裏面が同時に洗浄される。
【0036】
上記のようにして、基板Wの表面を上部ロール洗浄部材(以下、単にロール洗浄部材という)16で洗浄する時、
図4に示すように、基板Wとロール洗浄部材16は、ロール洗浄部材16の軸方向に沿って基板Wの直径方向の全長に亘って直線状に延びる、長さLの洗浄エリア30で互いに接触し、この洗浄エリア30に沿った位置で基板Wの表面がスクラブ洗浄される。
【0037】
ここに、
図4に示すように、基板Wの直径をD
W、ロール洗浄部材16の直径をD
Rとし、基板Wを回転速度N
W1(角速度ω
W1)で、ロール洗浄部材16を回転速度N
R1(角速度ω
R1)でそれぞれ回転させて、基板Wの表面をロール洗浄部材16でスクラブ洗浄する時の洗浄条件を洗浄条件1とする。なお、ロール洗浄部材16の直径をD
Rと洗浄エリア30の長さLはほぼ等しい。
【0038】
この洗浄条件1で基板Wの表面をスクラブ洗浄する時、基板Wの回転速度とロール洗浄部材16の回転速度が等しく、基板Wの回転速度の向きとロール洗浄部材16の回転速度の向きが同じで、両者の相対速度がゼロとなる点が洗浄エリア30上に生じ、基板Wの回転軸O
Wを中心として、この相対速度がゼロとなる点を通る円の直径をD
1とする。すると、洗浄エリア30上の相対速度がゼロとなる点及びその周辺に対応する位置に位置するロール洗浄部材16の一部に汚染された汚染領域P
1が生じる。
【0039】
図5に示すように、基板Wを洗浄条件1の回転速度N
W1(角速度ω
W1)より大きな回転速度N
W2(>N
W1)(角速度ω
W2(>ω
W1))で回転させ、及び/またはロール洗浄部材16を洗浄条件1の回転速度N
R1(角速度ω
R1)より小さな回転速度N
R2(<N
R1)(角速度ω
R2(<ω
R1))で回転させ、他の条件を洗浄条件1と同じにした洗浄条件を洗浄条件2とする。
【0040】
この洗浄条件2で基板Wの表面をスクラブ洗浄する時、基板Wの回転速度とロール洗浄部材16の回転速度が等しく、基板Wの回転速度の向きとロール洗浄部材16の回転速度の向きが同じで、両者の相対速度がゼロとなる点が洗浄エリア30上に生じ、基板Wの回転軸O
Wを中心として、この相対速度がゼロとなる点を通る円の直径をD
2とすると、この直径D
2は、前述の洗浄条件1における相対速度がゼロとなる点を通る円の直径D
1より小さくなる(D
2<D
1)。そして、洗浄エリア30上の相対速度がゼロとなる点及びその周辺に対応する位置に位置してロール洗浄部材16の一部に生じる汚染された汚染領域P
2は、洗浄条件1における汚染領域P
1より内側(基板Wの回転軸O
W寄り)に位置する。
【0041】
図6に示すように、基板Wを洗浄条件1の回転速度N
W1(角速度ω
W1)より小さな回転速度N
W3(<N
W1)(角速度ω
W3(<ω
W1))で回転させ、及び/またはロール洗浄部材16を洗浄条件1の回転速度N
R1(角速度ω
R1)より大きな回転速度N
R3(>N
R1)(角速度ω
R3(>ω
R1))で回転させ、他の条件を洗浄条件1と同じにした洗浄条件を洗浄条件3とする。
【0042】
この洗浄条件3で基板Wの表面をスクラブ洗浄する時、基板Wの回転速度とロール洗浄部材16の回転速度が等しく、基板Wの回転速度の向きとロール洗浄部材16の回転速度の向きが同じで、両者の相対速度がゼロとなる点が洗浄エリア30上に生じ、基板Wの回転軸O
Wを中心として、この相対速度がゼロとなる点を通る円の直径をD
3とすると、この直径D
3は、前述の洗浄条件1における相対速度がゼロとなる点を通る円の直径D
1より大きくなる(D
3>D
1)。そして、洗浄エリア30上の相対速度がゼロとなる点及びその周辺に対応する位置に位置してロール洗浄部材16の一部に生じる汚染された汚染領域P
3は、洗浄条件1における汚染領域P
1より外側(基板Wの外周部寄り)に位置する。
【0043】
図7に示すように、基板Wを洗浄条件1の回転速度N
W1(角速度ω
W1)と同じ回転速度N
W4(=N
W1)(角速度ω
W4(=ω
W1))で、回転方向を逆にして回転させ、他の条件を洗浄条件1と同じにした洗浄条件を洗浄条件4とする。
【0044】
この洗浄条件4で基板Wの表面をスクラブ洗浄する時、基板Wの回転速度とロール洗浄部材16の回転速度が等しく、基板Wの回転速度の向きとロール洗浄部材16の回転速度の向きが同じで、両者の相対速度がゼロとなる点が洗浄エリア30上に生じ、基板Wの回転軸O
Wを中心として、この相対速度がゼロとなる点を通る円の直径をD
4とすると、この直径D
4は、前述の洗浄条件1における相対速度がゼロとなる点を通る円の直径D
1と等しくなる(D
4=D
1)。そして、洗浄エリア30上の相対速度がゼロとなる点及びその周辺に対応する位置に位置してロール洗浄部材16の一部に生じる汚染された汚染領域P
4は、基板Wの回転軸O
Wを中心として、洗浄条件1における汚染領域P
1と点対称位置に位置する。
【0045】
上記を踏まえて、
図3に示すスクラブ洗浄装置を使用した本発明の第1の基板洗浄例を説明する。
【0046】
先ず、スピンドル10で支持した基板Wとロール洗浄部材16を共に回転させながら、洗浄液の存在下で、洗浄条件1(基板回転速度:N
W1,ロール洗浄部材回転速度:N
R1)で基板Wの表面をスクラブ洗浄する。そして、このスクラブ洗浄中に、ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度を変更し、これによって、洗浄条件を、洗浄条件1から洗浄条件2(基板回転速度:N
W2,ロール洗浄部材回転速度:N
R2)または洗浄条件3(基板回転速度:N
W3,ロール洗浄部材回転速度:N
R3)に変更するか、または基板Wの回転速度を変えることなく回転方向を逆転し、これによって、洗浄条件を、洗浄条件1から洗浄条件4に変更する。
【0047】
洗浄条件を、洗浄条件1から洗浄条件2に変更すると、
図4及び
図5に示すように、洗浄条件1で洗浄するときにロール洗浄部材16の一部に生じる汚染領域P
1の内側(基板Wの回転軸O
W寄り)に汚染領域P
2が生じる。洗浄条件を、洗浄条件1から洗浄条件3に変更すると、
図4及び
図6に示すように、洗浄条件1で洗浄するときにロール洗浄部材16の一部に生じる汚染領域P
1の外側(基板Wの外周部寄り)に汚染領域P
3が生じる。これによって、ロール洗浄部材16の同じ箇所に汚染が集中するのを軽減し、ロール洗浄部材16から基板Wへの逆汚染を低減して、基板Wの表面をその全域に亘ってより均一に洗浄することができる。
【0048】
同様に、洗浄条件を、洗浄条件1から洗浄条件4に変更すると、
図4及び
図7に示すように、基板Wの回転軸O
Wを中心として、洗浄条件1で洗浄するときにロール洗浄部材16の一部に生じる汚染領域P
1と点対称位置に汚染領域P
4が生じ、これによっても、ロール洗浄部材16の同じ箇所に汚染が集中するのを軽減することができる。この洗浄条件1と洗浄条件4は、基板Wの回転方向のみが異なり、他の条件は全て同じである。このように、基板Wの回転方向のみが異なる場合、洗浄能力は同じとなる。このため、洗浄条件1から洗浄条件4に変更することによって洗浄能力が低下することを防止できる。
【0049】
ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度または基板Wの回転方向の変更は、1枚の基板Wに対するスクラブ洗浄中における任意の時に行っても良いが、1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前に行うことが好ましい。1枚の基板に対するスクラブ洗浄処理の終了直前は、例えば1枚の基板の表面をスクラブ洗浄するのに要する全処理時間の約9割を終了した時点で、例えば1枚の基板の表面をスクラブ洗浄するのに30秒を要する場合、約27秒経過した時である。
【0050】
このように、ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度または基板Wの回転方向を、1枚の基板Wに対するスクラブ洗浄処理の終了直前に変更することで、最適な研磨条件で基板Wの表面をスクラブ洗浄する時間をより長くしつつ、ロール洗浄部材16の一部の領域に汚染が集中するのを低減することができる。
【0051】
ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度を変更する場合、この回転速度の変更を段階的に行っても、連続的に行っても良い。ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度を段階的に変更することで、洗浄条件の設定を簡易として、ロール洗浄部材16及び基板Wの回転速度の制御を容易に行うことができる。一方、ロール洗浄部材16及び基板Wの少なくとも一方の回転速度を連続的に変更することで、ロール洗浄部材16の汚染が集中する領域をより均一に分散させることができる。
【0052】
ロール洗浄部材16及び基板Wの双方の回転速度をスクラブ洗浄処理中に同時に変更するようにしてもよい。これにより、洗浄条件等に合わせて、ロール洗浄部材16及び基板Wの回転速度の最適な組合せを選択して、最適な洗浄性能を維持することができる。
【0053】
次に、
図3に示すスクラブ洗浄装置を使用した本発明の第2の基板洗浄例を説明する。この例にあっては、前述の洗浄条件1と洗浄条件4を使用し、洗浄条件1で1枚の基板の表面を洗浄する工程を順方向洗浄工程、洗浄条件4で1枚の基板の表面を洗浄する工程を逆方向洗浄工程とする。この例にあっては、順方向洗浄工程(洗浄条件1)と逆方向洗浄工程(洗浄条件4)を任意の枚数の基板毎に、例えば1枚の基板毎に繰返す。
【0054】
つまり、スクラブ洗浄装置内に搬入された基板に対して、順方向洗浄工程(洗浄条件1)を行って、基板の表面をスクラブ洗浄し、スクラブ洗浄後の基板をスクラブ洗浄装置から搬出させた後、次にスクラブ洗浄装置内に搬入された基板に対して、逆方向洗浄工程(洗浄条件1)を行って、基板の表面をスクラブ洗浄する。このように、順方向洗浄工程(洗浄条件1)と逆方向洗浄工程(洗浄条件4)をスクラブ洗浄装置内に搬入された基板毎に交互に繰返す。
【0055】
前述のように、洗浄条件1と洗浄条件4は、基板Wの回転方向のみが異なり、他の条件は全て同じであるため、洗浄能力は同じとなる。このため、順方向洗浄工程(洗浄条件1)と逆方向洗浄工程(洗浄条件4)を、例えば1枚の基板毎に交互に繰返すことで、全ての基板に対する洗浄性能を一定に維持しながら、ロール洗浄部材16の一部に汚染が集中するのを軽減することができる。
【0056】
なお、1ロットで連続的に処理される枚数の基板毎に順方向洗浄工程(洗浄条件1)と逆方向洗浄工程(洗浄条件4)を繰返すようにしてもよい。このように、連続的に処理される1ロットの基板をスクラブ洗浄する毎に、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返すことで、制御ソフトを簡略化することができる。
【0057】
また、予め定められた所定の枚数の基板毎に順方向洗浄工程(洗浄条件1)と逆方向洗浄工程(洗浄条件4)を繰返すようにしてもよい。このように、予め定められた所定の枚数の基板をスクラブ洗浄する毎に、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返すことで、ロール洗浄部材16の汚染状況に応じて、順方向洗浄工程と逆方向洗浄工程を繰返す頻度を決めて、フレクシビリティを高めることができる。
【0058】
(実施例)
直径300mmで、膜厚1000nmのTEOSブランケットウェハ(基板)の表面を60秒研磨した試料を用意した。そして、この試料表面を、直径60mmのロール洗浄部材16を有する
図3に示すスクラブ洗浄装置を使用し、試料の回転速度を150rpm、ロール洗浄部材16の回転速度を200rpmとした洗浄条件で28秒洗浄した後、ロール洗浄部材16の回転速度のみを200rpmから50rpmに変更して更に2秒洗浄し、洗浄後の試料をスピン乾燥させた。この時に、試料表面に残った100nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を、試料表面のパーティクル(ディフェクト)の分布と共に、
図8に実施例1,2として示す。試料とロール洗浄部材16との接触圧力は4Nに設定した。
【0059】
図8には、試料の回転速度を150rpm、ロール洗浄部材16の回転速度を200rpmとした洗浄条件で30秒洗浄する以外は、前述の実施例1,2の洗浄条件と同じとした洗浄条件で試料表面を洗浄し、洗浄後の試料をスピン乾燥させた時に、試料表面に残った100nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を、試料表面のパーティクル(ディフェクト)の分布と共に、比較例1,2として示している。
【0060】
図8から、実施例1,2においては、比較例1,2と比較して、洗浄後に試料表面に残る100nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を大幅に低減でき、しかもパーティクル(ディフェクト)の分布をより均一にして、洗浄能力が高められることが判る。
【0061】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。