【実施例】
【0023】
以下、本発明による銀微粒子分散液の実施例について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1〜4]
まず、60質量%のAg粒子(平均粒径10nmの銀粒子)と、3.0質量%の塩化ビニルコポリマーラテックスと、2.0質量%のポリウレタンシックナーと、2.5質量%のプロピレングリコールとを含む水系Agインク(ピーケム・アソシエイツ・インク社製のPFI−700型)を、(3000rpmで10分間の)遠心分離により、上澄み液とAg粒子に分離した後、沈降したAg粒子を巻き込まない程度に上澄み液を分取して、Ag濃度71.49質量%の濃縮Agインクを用意した。
【0025】
また、塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)25gを純水75gに溶解して、25質量%の塩化ナトリウム水溶液を用意した。
【0026】
次に、上記の濃縮Agインク19.5gに上記の塩化ナトリウム溶液をそれぞれ0.28g(実施例1)、0.18g(実施例2)、0.09g(実施例3)、0.05g(実施例4)添加した後、Ag濃度が65質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が65質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)がそれぞれ0.30質量%(実施例1)、0.20質量%(実施例2)、0.10質量%(実施例3)、0.05質量%(実施例4)の銀微粒子分散液を作製した。
【0027】
このようにして作製した各実施例の銀微粒子分散液を、
図1Aおよび
図1Bに概略的に示すフレキソプルーフ(RKプリント・コート・インスツルメンツ社製の型式ESI12、アニロックス、200線)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポンテイジンフィルム社製のMelinex(登録商標)545)からなる基材Aと、塗工紙(三菱製紙株式会社製のDF−110GN)からなる基材Bと、キャストコート紙(王子製紙株式会社製のミラコート)からなる基材Cの3種類の基材にそれぞれ塗布した。
【0028】
図1Aおよび
図1Bに示すように、フレキソプルーフ1は、円筒状のゴム版2と、このゴム版2の上方に配設された円筒状のアニロックスローラ3と、このアニロックスローラ3に対向して取り付けられたドクターブレード4とを備えている。ゴム版2とアニロックスローラ3の間隔とドクターブレード4とアニロックスローラ3の間隔はそれぞれ調整可能になっており、ゴム版2を基材7上に押し当てて矢印Aの方向に引くと、ゴム版2が矢印B方向に回転し、その回転に伴ってアニロックスローラ3が矢印C方向に逆回転するようになっている。このフレキソプルーフ1では、ドクターブレード4とアニロックスローラ3の間に滴下された塗料(銀微粒子分散液)5が、回転するアニロックスローラ3とドクターブレード4の間からが一定の膜厚でアニロックスローラ3の表面に付着し、ゴム版2との接触面においてゴム版2に転写された後、ゴム版2の回転により基材7まで運ばれて基材7上に転写されることにより、基材7上に塗膜6が形成される。このようなフレキソプルーフの両端の調整用つまみを操作して、ゴム版とアニロックスローラが接触する位置からさらに0.05〜0.10mmだけ押し込んだ後、ドクターブレードとアニロックスローラの間に約1mLの銀微粒子分散液を滴下し、約1秒間で銀微粒子分散液を基材上に塗布した。
【0029】
このように銀微粒子分散液を塗布した直後に、ホットプレート上において60℃で15秒間焼成して銀導電膜を作製した。なお、焼成中に基材とホットプレートの良好な接触を保つために、最初に、印刷されていない基材の部分をホットプレートに押さえ付け、焼成が進んで銀微粒子分散液がベンコットに転写されなくなった後、ベンコットにより基材全体をホットプレートに押さえ付けるように焼成を行った。
【0030】
次に、作製した銀導電膜を3cm×3cmの大きさにカットし、表面抵抗率測定器(三菱化学アナリティック株式会社製のロレスターGP)を用いて、四端子法により銀導電膜の表面抵抗率(シート抵抗率)を測定した。その結果、銀導電膜の表面抵抗率は、実施例1ではそれぞれ0.12Ω/□(基材A)、0.14Ω/□(基材B)、0.21Ω/□(基材C)、実施例2ではそれぞれ0.07Ω/□(基材A)、0.11Ω/□(基材B)、0.10Ω/□(基材C)、実施例3ではそれぞれ0.07Ω/□(基材A)、0.13Ω/□(基材B)、0.11Ω/□(基材C)、実施例4ではそれぞれ0.06Ω/□(基材A)、0.31Ω/□(基材B)、0.25Ω/□(基材C)であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1で用意した濃縮Agインク19.5gに、Ag濃度が65質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が65質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.00質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、それぞれ0.30Ω/□(基材A)、1.50Ω/□(基材B)、0.61Ω/□(基材C)であった。
【0032】
[比較例2]
実施例1で用意した濃縮Agインク19.5gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液0.46gを添加した後、Ag濃度が65質量%になるように、実施例1で分取した上澄み液を添加して、Ag濃度が65質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.50質量%の銀微粒子分散液を作製した。この比較例では、濃縮Agインクに塩化ナトリウム溶液を添加した数分後に、Ag粒子の焼結と思われる現象が起こり、流動性を伴わない固形物となったため、銀導電膜を作製することができなかった。
【0033】
[実施例5〜8]
実施例1で用意した濃縮Agインク18.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液をそれぞれ0.25g(実施例5)、0.17g(実施例6)、0.08g(実施例7)、0.04g(実施例8)添加した後、Ag濃度が60質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が60質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)がそれぞれ0.30質量%(実施例5)、0.20質量%(実施例6)、0.10質量%(実施例7)、0.05質量%(実施例8)の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。
【0034】
このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、実施例5ではそれぞれ0.18Ω/□(基材A)、0.21Ω/□(基材B)、0.22Ω/□(基材C)、実施例6ではそれぞれ0.11Ω/□(基材A)、0.27Ω/□(基材B)、0.19Ω/□(基材C)、実施例7ではそれぞれ0.12Ω/□(基材A)、0.25Ω/□(基材B)、0.25Ω/□(基材C)、実施例8ではそれぞれ0.12Ω/□(基材A)、0.32Ω/□(基材B)、0.28Ω/□(基材C)であった。
【0035】
また、フレキソ印刷機(日本電子精機株式会社製の多目的微細印刷機JEM Flex)と、フレキソ印刷版(株式会社渡辺護三堂製、印刷版の材質は旭化成株式会社製の板状感光性樹脂AWP グレードDEF、表面加工150ライン、96DOT%)を使用し、アニロックス容量20cc/m
2(150線/インチ)、印刷速度20m/分、印刷回数を1回とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポンテイジンフィルム社製のMelinex(登録商標)545)からなる基材Aと、塗工紙(三菱製紙株式会社製のDF−110GN)からなる基材Bの2種類の基材(
図3Aおよび
図3Bにおいて参照符号13で示す)の各々に、実施例5および7で得られた銀微粒子分散液を
図2に示す形状(全長32.0mm、全幅18.5mm、線幅0.7mmのRFIDアンテナ10の形状)に印刷した後、ホットプレート上において140℃で30秒間熱処理して焼成することによって、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製した。
【0036】
この銀導電膜のライン抵抗(
図2に示すDとEの間の電気抵抗)をテスター(CUSTOM社製の型式CDM−03D)により測定したところ、実施例5ではそれぞれ43.7Ω(基材A)、33.2Ω(基材B)であり、実施例7ではそれぞれ31.0Ω(基材A)、28.7Ω(基材B)であった。
【0037】
また、これらのRFIDアンテナ10のICチップ実装部11に異方性導電接着剤(ACP)(京セラケミカル株式会社製のTAP0604C(Au/Niコートポリマー粒子))を薄く塗布し、このACP上にICチップ(Impinj社製のMonza2)12を配置した後、熱圧着装置(ミュールバウワー社製のTTS300)により160℃の温度で1.0Nの圧力を加えて10秒間密着させ、RFIDアンテナ10にICチップ12を固定して接続することによって、
図3Aおよび
図3Bに示すように、RFIDアンテナ10にICチップ12を実装した。
【0038】
このようにして作製したICチップ実装RFIDアンテナについて、電波暗箱(マイクロニクス社製のMY1530)中において、通信距離測定器(Voyantic社製のtagformance)を用いて、800MHz〜1100MHzの周波数領域(ISO/IEC 18000−6C規格に準拠)の通信距離(Theoretical read range forward)を測定した。なお、この測定に先立って、この条件における環境設定(tagformance付属のリファレンスタグによる設定)を行った。その結果、周波数955MHzの通信距離は、実施例5ではそれぞれ1.6m(基材A)、1.4m(基材B)であり、実施例7ではそれぞれ1.6m(基材A)、1.6m(基材B)であった。
【0039】
また、耐候性試験として、実施例5および7で得られた銀導電膜からなるRFIDアンテナとICチップ実装RFIDアンテナをそれぞれ温度85℃、湿度85%に設定した恒温恒湿機中に500時間放置(保持)した後、銀導電膜のライン抵抗とICチップ実装RFIDアンテナの通信距離を測定した。その結果、銀導電膜のライン抵抗は、実施例5ではそれぞれ46.4Ω(基材A)、35.1Ω(基材B)であり、実施例7ではそれぞれ30.1Ω(基材A)、32.7Ω(基材B)であった。また、ICチップ実装RFIDアンテナの周波数955MHzの通信距離は、実施例5ではそれぞれ1.5m(基材A)、1.4m(基材B)であり、実施例7ではそれぞれ1.6m(基材A)、1.5m(基材B)であった。
【0040】
[比較例3]
実施例1で用意した濃縮Agインク18.0gに、Ag濃度が60質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が60質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.00質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、それぞれ0.36Ω/□(基材A)、2.20Ω/□(基材B)、0.83Ω/□(基材C)であった。
【0041】
また、実施例5および7と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナとICチップ実装RFIDアンテナを作製し、銀導電膜のライン抵抗とICチップ実装RFIDアンテナの通信距離を測定した。その結果、銀導電膜のライン抵抗は、それぞれ30.8Ω(基材A)、28.5Ω(基材B)であり、ICチップ実装RFIDアンテナの周波数955MHzの通信距離は、それぞれ1.6m(基材A)、1.5m(基材B)であった。
【0042】
また、作製した銀導電膜からなるRFIDアンテナとICチップ実装RFIDアンテナをそれぞれ恒温恒湿機中に500時間放置(保持)した後、銀導電膜のライン抵抗とICチップ実装RFIDアンテナの通信距離を測定した。その結果、銀導電膜のライン抵抗は、それぞれ29.2Ω(基材A)、29.5Ω(基材B)であり、ICチップ実装RFIDアンテナの周波数955MHzの通信距離は、それぞれ1.5m(基材A)、1.5m(基材B)であった。
【0043】
[比較例4]
実施例1で用意した濃縮Agインク18.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液0.42gを添加した後、Ag濃度が60質量%になるように、実施例1で分取した上澄み液を添加して、Ag濃度が60質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.50質量%の銀微粒子分散液を作製した。この比較例では、濃縮Agインクに塩化ナトリウム溶液を添加した数分後に、Ag粒子の焼結と思われる現象が起こり、流動性を伴わない固形物となったため、銀導電膜を作製することができなかった。
【0044】
[実施例9〜11]
塩化アンモニウム(NH
4Cl)(和光純薬工業株式会社製)25gを純水75gに溶解して25質量%の塩化アンモニウム水溶液(実施例9)、塩化カリウム(KCl)(和光純薬工業株式会社製)25gを純水75gに溶解して25質量%の塩化カリウム水溶液(実施例10)、塩化カルシウム(CaCl
2)(和光純薬工業株式会社製)25gを純水75gに溶解して25質量%の塩化カルシウム水溶液(実施例11)を用意した。
【0045】
次に、実施例1で用意した濃縮Agインク18.0gに、上記の塩化アンモニウム溶液0.16g(実施例9)、塩化カリウム溶液0.22g(実施例10)、塩化カルシウム溶液0.16g(実施例11)をそれぞれ添加した後、Ag濃度が60質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が60質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.20質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。
【0046】
このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、実施例9ではそれぞれ0.11Ω/□(基材A)、0.26Ω/□(基材B)、0.19Ω/□(基材C)、実施例10ではそれぞれ0.12Ω/□(基材A)、0.28Ω/□(基材B)、0.21Ω/□(基材C)、実施例11ではそれぞれ0.12Ω/□(基材A)、0.37Ω/□(基材B)、0.21Ω/□(基材C)であった。
【0047】
[実施例12〜15]
実施例1で用意した濃縮Agインク15.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液をそれぞれ0.21g(実施例12)、0.14g(実施例13)、0.07g(実施例14)、0.04g(実施例15)添加した後、Ag濃度が50質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が50質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)がそれぞれ0.30質量%(実施例12)、0.20質量%(実施例13)、0.10質量%(実施例14)、0.05質量%(実施例15)の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。
【0048】
このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、実施例12ではそれぞれ0.30Ω/□(基材A)、0.43Ω/□(基材B)、0.47Ω/□(基材C)、実施例13ではそれぞれ0.21Ω/□(基材A)、0.29Ω/□(基材B)、0.33Ω/□(基材C)、実施例14ではそれぞれ0.21Ω/□(基材A)、0.44Ω/□(基材B)、0.40Ω/□(基材C)、実施例15ではそれぞれ0.24Ω/□(基材A)、0.65Ω/□(基材B)、0.52Ω/□(基材C)であった。
【0049】
[比較例5]
実施例1で用意した濃縮Agインク15.0gに、Ag濃度が50質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が50質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.00質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、それぞれ0.56Ω/□(基材A)、8.60Ω/□(基材B)、1.70Ω/□(基材C)であった。
【0050】
[比較例6]
実施例1で用意した濃縮Agインク15.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液0.35gを添加した後、Ag濃度が50質量%になるように、実施例1で分取した上澄み液を添加して、Ag濃度が50質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.50質量%の銀微粒子分散液を作製した。この比較例では、濃縮Agインクに塩化ナトリウム溶液を添加した数分後に、Ag粒子の焼結と思われる現象が起こり、流動性を伴わない固形物となったため、銀導電膜を作製することができなかった。
【0051】
[実施例16〜19]
実施例1で用意した濃縮Agインク12.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液をそれぞれ0.17g(実施例16)、0.11g(実施例17)、0.06g(実施例18)、0.03g(実施例19)添加した後、Ag濃度が40質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が40質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)がそれぞれ0.30質量%(実施例16)、0.20質量%(実施例17)、0.10質量%(実施例18)、0.05質量%(実施例19)の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。
【0052】
このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、実施例16ではそれぞれ0.75Ω/□(基材A)、0.70Ω/□(基材B)、0.74Ω/□(基材C)、実施例17ではそれぞれ0.80Ω/□(基材A)、0.62Ω/□(基材B)、0.40Ω/□(基材C)、実施例18ではそれぞれ0.78Ω/□(基材A)、0.60Ω/□(基材B)、0.50Ω/□(基材C)、実施例19ではそれぞれ0.86Ω/□(基材A)、0.96Ω/□(基材B)、0.73Ω/□(基材C)であった。
【0053】
[比較例7]
実施例1で用意した濃縮Agインク12.0gに、Ag濃度が40質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が40質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.00質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、それぞれ13.00Ω/□(基材A)、14.00Ω/□(基材B)、2.00Ω/□(基材C)であった。
【0054】
[比較例8]
実施例1で用意した濃縮Agインク12.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液0.28gを添加した後、Ag濃度が40質量%になるように、実施例1で分取した上澄み液を添加して、Ag濃度が40質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.50質量%の銀微粒子分散液を作製した。この比較例では、濃縮Agインクに塩化ナトリウム溶液を添加した数分後に、Ag粒子の焼結と思われる現象が起こり、流動性を伴わない固形物となったため、銀導電膜を作製することができなかった。
【0055】
[比較例9〜12]
実施例1で用意した濃縮Agインク6.0gに、実施例1で用意した塩化ナトリウム溶液をそれぞれ0.08g(比較例9)、0.06g(比較例10)、0.03g(比較例11)、0.01g(比較例12)添加した後、Ag濃度が20質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が20質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)がそれぞれ0.30質量%(比較例9)、0.20質量%(比較例10)、0.10質量%(比較例11)、0.05質量%(比較例12)の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。
【0056】
このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、比較例9ではそれぞれオーバーロード(OL)で測定不能(基材A)、30.0Ω/□(基材B)、13.0Ω/□(基材C)、比較例10ではそれぞれオーバーロード(OL)で測定不能(基材A)、30.0Ω/□(基材B)、9.4Ω/□(基材C)、比較例11ではそれぞれオーバーロード(OL)で測定不能(基材A)、20.0Ω/□(基材B)、21.0Ω/□(基材C)、比較例12ではそれぞれオーバーロード(OL)で測定不能(基材A)、720.0Ω/□(基材B)、47.0Ω/□(基材C)であった。
【0057】
[比較例13]
実施例1で用意した濃縮Agインク6.0gに、Ag濃度が20質量%になるように、上記の上澄み液(分取した上澄み液)を添加して、Ag濃度が20質量%でAgに対するClの質量の割合(Cl/Ag)が0.00質量%の銀微粒子分散液を作製し、実施例1と同様の方法により、銀導電膜を作製した。このようにして作製した銀導電膜の表面抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定したところ、それぞれオーバーロード(OL)で測定不能(基材A)、オーバーロード(OL)で測定不能(基材B)、150.0Ω/□(基材C)であった。
【0058】
実施例および比較例の銀導電膜の製造条件および表面抵抗率の測定結果を表1に示し、実施例5、7および比較例3の銀導電膜からなるRFIDアンテナのライン抵抗とICチップ実装RFIDアンテナの通信距離の測定結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1からわかるように、銀微粒子分散液に少量のClを添加すれば、低温で短時間の熱処理でも、十分な導電性を示す銀導電膜を得ることができる。また、表2からわかるように、銀微粒子分散液に少量のClを添加して、銀導電膜からなるRFIDアンテナやICチップ実装RFIDアンテナを作製しても、導電性や通信距離には影響がない。