【文献】
RANE,S. et al,An antagonism between the AKT and beta-adrenergic signaling pathways mediated through their reciproc,Cellular signalling,2010年 3月,Vol.22, No.7,p.1054-62
【文献】
LIN,E.A. et al,miR-199a, a bone morphogenic protein 2-responsive MicroRNA, regulates chondrogenesis via direct targ,J Biol Chem,2009年,Vol.284, No.17,p.11326-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】mmu-miR-199b*を発現するPre-miR miRNA Precursorをトランスフェクションしたラット初代培養膵島細胞における、成熟miR-199b*の相対的発現量を示す。統計処理にはパラメトリックwilliams検定を使用した(#は有意を示す)。
【
図2】mmu-miR-199b*を発現するPre-miR miRNA Precursorをトランスフェクションしたラット初代培養膵島細胞における、インスリン陽性且つBrdU陽性細胞数、及びインスリン陽性細胞数の増加。濃度依存性に関する統計処理にはパラメトリックwilliams検定を使用し(#は有意を示す)、それ以外の項目についての統計処理にはt-test を使用した(*は0.01<P<0.05を示し, **はP<0.01を示す)。
【
図3】hsa-miR-199a-3pを発現するPre-miR miRNA Precursor、hsa-miR-199a-5pを発現するPre-miR miRNA Precursorまたはhsa-miR-199b-5pを発現するPre-miR miRNA Precursorをトランスフェクションしたラット初代培養膵島細胞における、インスリン陽性且つBrdU陽性細胞数の増加。濃度依存性に関する統計処理にはパラメトリックwilliams検定(#は有意を示す)、それ以外の項目についての統計処理にはt-testを使用した (*は0.01<P<0.05を示し, **はP<0.01を示す)。
【
図4】mmu-miR-199b*を発現するPre-miR miRNA Precursorをトランスフェクションしたラット初代培養膵島細胞における、cyclin D1およびcyclin E2遺伝子の発現の上昇。統計処理にはパラメトリックwilliams検定を使用した(#は有意を示す)。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本明細書においてmiRNAとは、miRNA遺伝子から産生されるプロセンシングされていない(例えば、前駆体)又はプロセシングされた(例えば成熟した)RNA転写物を指す。プロセンシングされていない上記RNA転写物は「前駆体miRNA」または「precursor miRNA」とも称され、通常約70〜100塩基から構成される。前駆体miRNAはリボヌクレアーゼ(例えば、ダイサー(Dicer))、アルゴノート(Argonaut)、またはリボヌクレアーゼIII(例えば、大腸菌リボヌクレアーゼIII)で消化されることにより、活性な19〜25塩基のRNA分子にプロセンシングされる。本明細書では、この19〜25塩基の、活性をもつRNA分子を「成熟miRNA」と称する。ここで成熟miRNAの活性とは、該成熟miRNAと相補的な配列を有する標的mRNAに結合し、該標的mRNAの切断を招来する活性を指す。
【0011】
本発明において用いられるポリヌクレオチド(本明細書中、「本発明のポリヌクレオチド」と称することがある)、またはその塩は、以下の(A)〜(C)からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列を含む:
(A)配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列;
(B)配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列;及び
(C)上記(A)又は(B)の塩基配列に相補的な塩基配列。
【0012】
本明細書においてポリヌクレオチドの塩基配列は、特にことわりのない限りDNA又はRNAのいずれか一方の配列として記載するが、任意の位置のチミン(T)及びウラシル(U)は、相互に読み替えることが可能である。また、ポリヌクレオチドがDNAである場合には、全てのウラシル(U)をチミン(T)に読み替え、ポリヌクレオチドがRNAである場合には、全てのチミン(T)をウラシル(U)に読み替えることはいうまでもない。
【0013】
前記(A)において、配列番号1で表される塩基配列は、mmu-miR-199b*(mmu-miR-199b-5pとも称される)の塩基配列である。配列番号2で表される塩基配列は、mmu-miR-199b(mmu-miR-199b-3pとも称される)であり、hsa-miR-199b-3p、mmu-miR-199a-3p、hsa-miR-199a-3pおよびrno-miR-199a-3pと同一の塩基配列である。配列番号3で表される塩基配列は、mmu-miR-199a-5p、hsa-miR-199a-5p及びrno-miR-199a-5pの塩基配列である。配列番号4で表される塩基配列は、hsa-miR-199b-5pの塩基配列である。
【0014】
前記(B)の塩基配列は、配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性(即ち同一性)を有する。
【0015】
ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つの塩基配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得る)における、オーバーラップする全塩基に対する同一塩基の割合(%)を意味する。本明細書における塩基配列の相同性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
【0016】
また、前記(B)の塩基配列には、配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列において1または2個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入された塩基配列が包含される。該塩基配列としては、例えば、(i)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列において1または2個の塩基が欠失した塩基配列、(ii)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列に1または2個の塩基が付加した塩基配列、(iii)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列に1または2個の塩基が挿入された塩基配列、(iv)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列中の1または2個の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、及び(v)それらの変異を組み合わせた塩基配列(但し、欠失、置換、付加又は挿入される塩基の総数が2個である)を挙げることができる。
上記のように塩基配列が変異(欠失、置換、付加又は挿入)を含む場合、その変異の位置は、特に限定されない。
【0017】
前記(C)の塩基配列は、上記(A)又は(B)の塩基配列に完全に相補的である。
【0018】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、膵β細胞の増殖を促進する活性を有する。上記膵β細胞の例として、哺乳動物(例、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ブタ)の膵β細胞が挙げられる。
ポリヌクレオチドの膵β細胞の増殖を促進する活性は、後述の実施例に記載された方法に準じ、例えば、ラット初代培養膵島細胞に終濃度2.5-50 nMの評価対象のポリヌクレオチドをDharmaFECT1(Thermo Scientific)等を用いてトランスフェクションし、評価対象のポリヌクレオチドをトランスフェクションした群とネガティブコントロール群(scrambled miRNAをトランスフェクションした群若しくは評価対象のポリヌクレオチドをトランスフェクションしなかった群)におけるトランスフェクションから5日後の膵β細胞の数を比較することにより測定することができる。
例えば、ネガティブコントロールと比べて、膵β細胞の数を10%以上増加させる活性を「膵β細胞の増殖を促進する活性」と定義することができる。
【0019】
本発明のポリヌクレオチドの長さは、哺乳動物の膵β細胞の増殖を促進する活性を有する限り特に限定されないが、合成の容易性の観点から、通常200bp以下、好ましくは100bp以下、より好ましくは80bp以下である。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドの好ましい例として、配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドのさらに好ましい例として、配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0021】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有するポリヌクレオチド、プリン塩基またはピリミジン塩基のN−グリコシド化体を含有するポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を含有するポリヌクレオチド(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などであってもよい。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾が付加されたポリヌクレオチド(例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(αアノマー型の核酸など))であってもよい。ここで「ヌクレオチド」および「核酸」には、プリン塩基およびピリミジン塩基のみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基も含まれる。修飾されたその他の複素環型塩基の例としては、メチル化されたプリン塩基およびピリミジン塩基、アシル化されたプリン塩基およびピリミジン塩基が挙げられる。本発明のヌクレオチドまたは本発明のヌクレオチドを構成するヌクレオシドは、その糖部分が修飾されていてもよい。糖部分の修飾の例として、糖部分が有する水酸基のハロゲン原子や脂肪族基等による置換、糖部分が有する水酸基のエーテル、アミン等の官能基への変換が挙げられる。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドはその安定性を向上させるために化学的に修飾されていてもよい。かかる化学的な修飾の例として、(a)ヌクレオシド間骨格中の化学的修飾((a-1)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有するポリヌクレオチドの化学的修飾および(a-2)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有さないポリヌクレオチドの化学的修飾)、(b)糖部分の化学的修飾、(c)ヌクレオ塩基部分の修飾、(d)ターゲティングフラグメントのコンジュゲートによる修飾、(e)化学的に別個の領域を構成するポリヌクレオチドによる化学的修飾、および(f)"Current protocols in nucleic acid chemistry", Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されている修飾が挙げられる。
【0023】
前記(a-1)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有するポリヌクレオチドの好ましい化学的修飾の例として、ホスホロチオエート、不斉ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、不斉ホスホネートを含むアルキル(例、メチル)ホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデ−ト、ホスホロアミデート、アミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、及びヌクレオシド単位の隣接するペアが3'-5'から5'-3'、又は2'-5'から5'-2'である修飾が挙げられる。
【0024】
前記(a-1)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有するポリヌクレオチドは、例えば米国特許第3,687,808;4,469,863;4,476,301;5,023,243;5,177,195;5,188,897;5,264,423;5,276,019;5,278,302;5,286,717;5,321,131;5,399,676;5,405,939;5,453,496;5,455,233;5,466,677;5,476,925;5,519,126;5,536,821;5,541,316;5,550,111;5,563,253;5,571,799;5,587,361;5,625,050等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0025】
前記(a-2)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有さないポリヌクレオチドの好ましい例として、短鎖アルキル又はシクロアルキルのヌクレオシド間連結、ヘテロ原子とアルキル又はシクロアルキルの混合したヌクレオシド間連結、又は1以上の短鎖ヘテロ原子又は複素環式ヌクレオシド間連結により形成される骨格を有するポリヌクレオチドが挙げられる。これらには、モルホリノ連結(ヌクレオシドの糖部分より一部形成される)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホンの骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;及びN、O、S及びCH
2成分の混合部分を有する骨格が含まれる。
【0026】
前記(a-2)ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有さないポリヌクレオチドは、例えば、米国特許第5,034,506; 5,166,315; 5,185,444; 5,214,134; 5,216,141; 5,235,033; 5,64,562; 5,264,564; 5,405,938; 5,434,257; 5,466,677; 5,470,967; 5,489,677; 5,541,307; 5,561,225; 5,596,086; 5,602,240; 5,608,046; 5,610,289; 5,618,704; 5,623,070; 5,663,312; 5,633,360; 5,677,437; 5,677,439等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0027】
前記(b)糖部分の化学的修飾の例としては、2’位が以下のA群から選択される1つの置換基に置換される化学的修飾が挙げられる。
A群:OH;F;O-、S-又はN-アルキル;O-、S-又はN-アルケニル;O-、S-又はN-アルキニル;又はO-[(アルキレン)
n-O]
m-アルキル(ここで、アルキル、アルキレン、アルケニル及びアルキニルは、置換又は未置換のC
1〜C
10アルキル、C
1〜C
10アルキレン、C
2〜C
10アルケニル及びアルキニルである)。特に好ましいのは、O[(CH
2)
nO]
mCH
3、O(CH
2)
nOCH
3、O(CH
2)
nNH
2、O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nONH
2及びO(CH
2)
nO(CH
2)
mNH
2である(ここでn及びmは、1〜10(好ましくは1〜3)であり、NH
2はC
1〜C
6アルキル(例、メチル)でモノまたはジ-置換されていてもよい)。特に好ましい化学的修飾として、メトキシエトキシ(-MOEとしても知られる-O-CH
2CH
2OCH
3)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、ジメチルアミノオキシエトキシ(-DMAOEとしても知られる-O(CH
2)
2ON(CH
3)
2)、ジメチルアミノエトキシエトキシ(-DMAEOEとしても知られる-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-N(CH
3)
2)が挙げられる。
前記(b)糖部分の化学的修飾の他の例としては、2’位が以下のB群から選択される1つの置換基に置換される化学的修飾が挙げられる。
B群:C
1〜C
10(低級アルキル、置換低級アルキル、アルキルアリール、アラルキル、O-アルキルアリール又はO-アラルキル)、SH、SCH
3、OCN、Cl、Br、CN、CF
3、OCF
3、SOCH
3、SO
2CH
3、ONO
2、NO
2、N
3、NH
2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤、ポリヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、又はポリヌクレオチドの薬力学特性を改善する基、並びに、同様の特性を有する他の置換基。
【0028】
前記(b)糖部分の化学的修飾の他の例として、2’位がメトキシ、アミノプロポキシ、またはフルオロに置換される化学的修飾が挙げられる。糖部分の化学的修飾の別の例として、3’末端ヌクレオチド上又は2’−5’連結ポリヌクレオチド中の糖の3’位と5’末端ヌクレオチドの5’位がメトキシ、アミノプロポキシ、またはフルオロに置換される化学的修飾、またはペントフラノシル糖がシクロブチル部分のような糖模倣体に置換される修飾が挙げられる。
また別の糖部分の化学的修飾の例として、米国特許第6,770,748号に開示されたような糖部分をロックする修飾が挙げられる。
また別の糖部分の化学的修飾の例として、US7217805、WO2003/068795、WO2005/021570、US7569686、WO2009/100320、WO2007/146511、WO2007/143315、WO2007/134181及びWO2007/090071に開示されたような糖部分を架橋する修飾が挙げられる。
上記の糖部分の化学的修飾を有するポリヌクレオチドは、例えば、米国特許第4,981,957;5,118,800;5,319,080;5,359,044;5,393,878;5,446,137;5,466,786;5,514,785;5,519,134;5,567,811;5,576,427;5,591,722;5,597,909;5,610,300;5,627,053;5,639,873;5,646,265;5,658,873;5,670,633;5,700,920等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0029】
前記(c)ヌクレオ塩基部分の修飾の例として、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンのアルキル誘導体(例、6-メチル誘導体)、アデニン及びグアニンのアルキル誘導体(例、2−プロピル誘導体)、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8位置換(例、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル)アデニン及びグアニン、5位置換(例、5−ハロ、5−ブロモ、5−トリフルオロメチル)ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン、並びに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニン、米国特許第3,687,808号に開示されるヌクレオ塩基、「ポリマー科学・工学事典(The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering)」858-859 頁, Kroschwitz, J. I.(監修)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1990)に開示されるヌクレオ塩基、Englisch et al.「応用化学(Angewandte Chemie)」International Edition,1991, 30, 613 に開示されるヌクレオ塩基、並びに、Sanghvi, Y. S.「第15章:アンチセンスの研究と応用(Chapter 15, Antisense Research and Applications)」289-302 頁, Crooke, S. T. and Lebleu, B.(監修)CRCプレス(1993)に開示されるヌクレオ塩基が挙げられる。
これらヌクレオ塩基のあるものは本発明のポリヌクレオチド、またはその塩と標的mRNAとの結合アフィニティーを高めるのに特に有用である。
【0030】
前記(c)ヌクレオ塩基部分の修飾を有するポリヌクレオチドは例えば米国特許第3,687,808、並びに4,845,205;5,130,30;5,134,066;5,175,273;5,367,066;5,432,272;5,457,187;5,459,255;5,484,908;5,502,177;5,525,711;5,552,540;5,587,469;5,594,121, 5,596,091;5,614,617;5,750,692等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0031】
前記(d)ターゲティングフラグメントのコンジュゲートによる修飾に用いられるターゲティングフラグメントの例としては、コレステロール部分のような脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル(例えばベリル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770))、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族の鎖(例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54))、リン脂質(例えばジヘキサデシル−rac−グリセロール又は1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸トリエチルアンモニウム(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783))、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)が挙げられる。
前記(d)ターゲティングフラグメントのコンジュゲートによる修飾を本発明のポリヌクレオチド、またはその塩に施すことにより、該ポリヌクレオチドの活性、細胞内分布又は細胞内取込みが亢進される。
【0032】
前記(d)ターゲティングフラグメントのコンジュゲートによる修飾を有するポリヌクレオチドは、例えば、米国特許第4,828,979;4,948,882;5,218,105;5,525,465;5,541,313;5,545,730;5,552,538;5,578,717, 5,580,731;5,591,584;5,109,124;5,118,802;5,138,045;5,414,077;5,486,603;5,512,439;5,578,718;5,608,046;4,587,044;4,605,735;4,667,025;4,762,779;4,789,737;4,824,941;4,835,263;4,876,335;4,904,582;4,958,013;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,245,022;5,254,469;5,258,506;5,262,536;5,272,250;5,292,873;5,317,098;5,371,241, 5,391,723;5,416,203, 5,451,463;5,510,475;5,512,667;5,514,785;5,565,552;5,567,810;5,574,142;5,585,481;5,587,371;5,595,726;5,597,696;5,599,923;5,599,928;5,688,941等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0033】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩が化学的に修飾されている場合であっても、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を構成するポリヌクレオシドのすべてが一様に修飾される必要はなく、上記の修飾を、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドを構成するヌクレオシドの1以上が取り込んでいればよい。
【0034】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は化学的な修飾を2種類以上同時に受けていてもよい。
例えば、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、PNA化合物のように(Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500)、糖部分とヌクレオシド間骨格中の両方に化学的修飾を含んでいてもよく、そのような修飾をうけた本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、ターゲットmRNAとの優れた結合特性を有する。糖部分とヌクレオシド間骨格中の両方に化学的修飾を含んだポリヌクレオチドは、例えば米国特許第5,539,082;5,714,331;及び5,719,262に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、1本鎖又は2本鎖のRNA(修飾又は非修飾RNA)である。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸等と塩を形成してもよい。上記無機塩基との塩の例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。上記有機塩基との塩の例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。上記無機酸との塩の例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。上記有機酸との塩の例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。これらの塩のなかでも、薬理学的に許容される塩が好ましい。
【0037】
また、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、好ましくは、哺乳動物の細胞内へ導入された場合に、そのままで、或いは該細胞に含まれるDrosha、Dicer等のdsRNA特異的RNaseにより切断されて、上記(A)又は(B)の塩基配列からなる活性な1本鎖RNAを生じるものである。このような1本鎖RNAの産生は、例えば、TaqMan MicroRNA Cells-to-Ct
TM kit (Ambion)等を用いて、細胞からcDNAを調製し、TaqMan miRNA assays (ABI)等を用いた定量RT-PCR法により確認することができる。
上記の活性な1本鎖RNAは、前駆体miRNAから天然のプロセンシング経路により(例えば、細胞溶解産物を用いて)、または合成プロセシング経路により(例えば、単離されたDicer、Argonaut、またはリボヌクレアーゼIIIなどの単離されたプロセシング酵素を用いて)得ることができる。また、上記の活性な1本鎖RNAは生物学的または化学的に作成することもできる。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、より好ましくは、上記(A)又は(B)の塩基配列を含む1本鎖RNA、又は該1本鎖RNAを一方の鎖として含む2本鎖RNAである。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドの具体的な態様としては、以下を挙げることができる:
(1)上記(A)又は(B)の塩基配列からなる1本鎖RNA、又は該1本鎖RNAを一方の鎖として含む2本鎖RNA;
(2)第1の塩基配列(配列番号1、3若しくは4で表される塩基配列、又は該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列)を含む1本鎖RNA、及び
第2の塩基配列(配列番号2で表される塩基配列又は該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列)を含む1本鎖RNA;
を含み、当該2つの1本鎖RNAがハイブリダイズしてなる2本鎖RNA;
(3)上記第1の塩基配列及び上記第2の塩基配列を含む1本鎖RNAであって、第1の塩基配列と第2の塩基配列とがヘアピンループ部分を介して連結されており、ヘアピンループ型の構造をとることにより、第1の塩基配列が第2の塩基配列と分子内で2本鎖構造を形成している、1本鎖RNA。
【0040】
前記(1)における(A)又は(B)の塩基配列からなる1本鎖RNAの例として、哺乳動物の1本鎖の成熟miR-199b又は一本鎖の成熟miR-199aが挙げられる。前記(1)における(A)又は(B)の塩基配列からなる1本鎖RNAの好ましい例として、
配列番号1で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b*(mmu-miR-199b-5pとも称される))、
配列番号2で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b(mmu-miR-199b-3p、hsa-miR-199b-3p、mmu-miR-199a-3p、hsa-miR-199a-3pまたはrno-miR-199a-3pとも称される))、
配列番号3で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199a-5p(hsa-miR-199a-5pまたはrno-miR-199a-5pとも称される))、及び
配列番号4で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(hsa-miR-199b-5p)
が挙げられる。
【0041】
前記(2)における2本鎖RNAは、配列番号1、3若しくは4で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性を有する一本鎖RNAを含有する。また、前記(2)における2本鎖RNAは、配列番号2で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性を有する一本鎖RNAを含有する。
前記(2)におけるRNAとしては、代表的には、哺乳動物のmiR-199b又はmiR-199aを含むRNAが挙げられる。具体的には、
配列番号1で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b*)及び配列番号2で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b)を含むRNA、
配列番号4で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(hsa-miR-199b-5p)及び配列番号2で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b)を含むRNA、
配列番号3で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199a-5p)及び配列番号2で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199b)を含むRNA
等が例示される。
【0042】
前記(3)において、ヘアピンループ部分の長さは、RNAが哺乳動物の膵β細胞の増殖を促進する活性を有する限り特に限定されないが、通常、5〜25塩基程度である。ヘアピンループ部分の塩基配列は、ループを形成することができ、且つ、RNAが哺乳動物の膵β細胞の増殖を促進する活性を有する限り、特に限定されない。
【0043】
前記(3)のRNAとしては、代表的には、哺乳動物のmiR-199b又はmiR-199aについての前駆体miRNA(precursor miRNA)や初期転写産物(primary transcript)、これらのRNAの塩基配列を含む1本鎖RNA等が挙げられる。具体的には、
配列番号5で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(precursor mmu-miR-199b)、
配列番号6で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(precursor hsa-miR-199b)、
配列番号7または配列番号8で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(precursor mmu-miR-199a)、
配列番号9または配列番号10で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(precursor hsa-miR-199a)、
配列番号11で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199bの初期転写産物)、
配列番号12で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(hsa-miR-199bの初期転写産物)、
配列番号13または配列番号14で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(mmu-miR-199aの初期転写産物)、
配列番号15または配列番号16で表される塩基配列からなる1本鎖RNA(hsa-miR-199aの初期転写産物)、
配列番号5〜16で表されるいずれかの塩基配列を含む1本鎖RNA
等が例示される。
【0044】
配列番号1ないし10で表されるmiRNAのNCBIアクセッション番号は、以下の通りである。
mmu-miR-199b*:配列番号1(MIMAT0000672)
mmu-miR-199b:配列番号2(MIMAT0004667)
mmu-miR-199a-5p:配列番号3(MIMAT0000229)
hsa-miR-199b-5p:配列番号4(MIMAT0000263)
precursor mmu-miR-199b:配列番号5(MI0000714)
precursor hsa-miR-199b:配列番号6(MI0000282)
precursor mmu-miR-199a:配列番号7(MI0000241)
precursor mmu-miR-199a:配列番号8(MI0000713)
precursor hsa-miR-199a:配列番号9(MI0000242)
precursor hsa-miR-199a:配列番号10(MI0000281)
【0045】
前記配列番号2で表される塩基配列はmmu-miR-199b-3pとも称され、mmu-miR-199a-3p(NCBIアクセッションNo.MIMAT0000230)、hsa-miR-199a-3p(NCBIアクセッションNo.MIMAT0000232)及びhsa-miR-199b-3p(NCBIアクセッションNo.MIMAT0004563)と同一である。
前記配列番号3で表される塩基配列は、hsa-miR-199a-5p(NCBIアクセッションNo.MIMAT0000231)及びrno-miR-199a-5pと同一である。
【0046】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、本明細書や公知のデータベースに開示された配列情報に基づいて、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて合成することができる。また、2本鎖のポリヌクレオチドは、双方の鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
【0047】
また、上記本発明のポリヌクレオチドを発現する発現ベクター(以下では、「本発明の発現ベクター」と称することがある)も、本発明のポリヌクレオチドの好ましい態様の1つである。本発明の発現ベクターは、上記本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物の細胞内で発現可能に構成される。本発明の発現ベクターは、上記本発明のポリヌクレオチド、又はこれをコードするDNAを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0048】
発現ベクターの例としては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
プロモーターとしては、哺乳動物の細胞内で機能可能なプロモーターであればいかなるものでもよい。プロモーターとしては、例えばpolII系プロモーター又はpolIII系プロモーターを挙げることができる。polIII系プロモーターとしては、例えば、U6プロモーター、H1プロモーター、5SrRNAプロモーター、tRNAプロモーター、7SLプロモーター、7SKプロモーター、レトロウイルス性LTRプロモーター、アデノウイルスVAlプロモーターが挙げられる。このうち、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーターが好ましい。polII系プロモーターとしては例えば、インスリンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、RSVプロモーター、EF−1αプロモーター、β−アクチンプロモーター、γ−グロブリンプロモーター、SRαプロモーターが挙げられる。このうち、インスリンプロモーターが好ましい。
【0050】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhf
rと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neo
rと略称する場合がある、G418耐性)が挙げられる。
【0051】
上記の本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、例えば以下の用途を有する。
<1>糖尿病の予防又は治療薬用途、
<2>膵β細胞の増殖剤用途、
<3>糖尿病の予防又は治療薬等のスクリーニング用途、
<4>糖尿病の予防又は治療薬等に対する感受性の判定用途。
【0052】
<1>糖尿病の予防又は治療薬用途
後述の実施例に示されるように、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、膵β細胞の増殖を促進する活性を有する。これらの事実は、糖尿病等の患者に対して本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を投与することによって、該患者における膵β細胞の増殖を促進し、糖尿病等の疾患を予防又は治療することが可能であり、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩が医薬として有用であることを示す。
【0053】
従って、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、糖尿病(例、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満型糖尿病)の予防又は治療剤;耐糖能不全[IGT(Impaired Glucose Tolerance)]の予防・治療剤;耐糖能不全から糖尿病への移行抑制剤等の医薬として使用することができる。
【0054】
本発明のポリヌクレオチド又はその塩は、MLK3、FGF7、Ptprf、RB1及びSerpine2 (特に、MLK3及びFGF7)を標的遺伝子としており、これらの遺伝子の発現を抑制することにより膵β細胞の増殖を促進し、糖尿病等の疾患を予防又は治療する可能性が考えられる。従って、MLK3、FGF7、Ptprf、RB1及びSerpine2 (特に、MLK3及びFGF7)の阻害剤(例、低分子化合物、中和抗体、siRNA、アンチセンス核酸)も、糖尿病(例、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満型糖尿病)の予防又は治療剤;耐糖能不全[IGT(Impaired Glucose Tolerance)]の予防・治療剤;耐糖能不全から糖尿病への移行抑制剤等の医薬として使用できる。
【0055】
糖尿病の判定基準に関して、日本糖尿病学会からの報告によれば、糖尿病とは、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dl以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上、随時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上のいずれかを示す状態である。また、上記糖尿病に該当せず、かつ、「空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dl未満または75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dl未満を示す状態」(正常型)でない状態を、「境界型」と呼ぶ。
【0056】
ADA(米国糖尿病学会)およびWHOからの報告によれば、糖尿病とは、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dl以上、あるいは、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dl以上を示す状態である。
また、ADAおよびWHOの上記報告によれば、耐糖能不全とは、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dl以上200mg/dl未満を示す状態である。さらに、ADAの報告によれば、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が100mg/dl以上126mg/dl未満の状態をIFG(Impaired Fasting Glucose)と呼ぶ。一方、WHOは、該IFG(Impaired Fasting Glucose)を空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dl以上126mg/dl未満の状態とし、IFG(Impaired Fasting Glycaemia)と呼ぶ。
【0057】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、上記した判定基準により決定される糖尿病、境界型、耐糖能不全、IFG(Impaired Fasting Glucose)およびIFG(Impaired Fasting Glycaemia)の予防・治療剤としても用いられる。さらに、本発明化合物は、境界型、耐糖能不全、IFG(Impaired Fasting Glucose)またはIFG(Impaired Fasting Glycaemia)から糖尿病への進展を防止することもできる。
【0058】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、例えば、糖尿病性合併症[例、神経障害、腎症、網膜症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(例、呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害]、糖尿病性悪液質、インスリン抵抗性症候群等の予防・治療剤としても用いることができる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、そのままあるいは薬理学的に許容される担体を配合し、医薬(以下、「本発明の医薬」と略記することがある)として、経口的または非経口的に投与することができる。
また、別の態様では、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を、生物学的製剤、リポソーム製剤、乳剤、マイクロエマルション製剤として製剤化することができる。
【0060】
本発明の医薬は、製剤技術分野で一般的に用いられている自体公知の製造方法(例えば、日本薬局方に記載の方法)を用いて製造することができる。この際、必要に応じて、製剤技術分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、分散補助剤、増粘剤、希釈剤、浸透増強剤、本発明のポリヌクレオチドまたはその塩を複合体化するための組成物等の添加剤、局所送達剤等を適宜、適量含有させることができる。
【0061】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、バッカル錠、口腔内速崩錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤(例、口腔粘膜貼付フィルム)、パウダー剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤、ゲルカプセル剤、スプレー剤等の経口剤が挙げられる。
【0062】
ある実施態様では、本発明の医薬は1つ以上の浸透増強剤と併用して投与される経口製剤である。
該浸透増強剤の好ましい例として、脂肪酸またはそのエステルもしくは塩;胆汁酸またはその塩が挙げられる。
胆汁酸またはその塩の好ましい例としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)、ウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸または薬理学的に許容可能なそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。脂肪酸またはそのエステルもしくは塩の好ましい例としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル 1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテル、または薬理学的に許容可能なそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。
いくつかの態様においては、浸透増強剤の組合せ(例えば、胆汁酸またはその塩と組み合わせた脂肪酸またはその塩)が用いられる。1つの好ましい組合せは、ラウリン酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。
【0063】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を錠剤に製造する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を用いることができ、丸剤及び顆粒剤に製造する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤等を用いることができる。また、散剤及びカプセル剤に製造する場合には賦形剤等を、シロップ剤に製造する場合には甘味剤等を、乳剤または懸濁剤に製造する場合には懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤等を用いることができる。
【0064】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
結合剤の例としては、5ないし10重量%デンプンのり液、10ないし20重量%アラビアゴム液またはゼラチン液、1ないし5重量%トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液、グリセリンが挙げられる。
崩壊剤の例としては、デンプン、炭酸カルシウムが挙げられる。
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルクが挙げられる。
甘味剤の例としては、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップが挙げられる。
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40が挙げられる。
懸濁化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ベントナイトが挙げられる。
乳化剤の例としては、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80が挙げられる。
【0065】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を顆粒剤またはスプレー剤として製造する場合には、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を複合体化するための組成物等を用いることができる。該組成物の例としては、ポリ−アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE−誘導体化ポリイミン、プルラン、セルロースおよびデンプンが挙げられる。好ましい組成物としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノ(例えば、p−アミノ)スチレン、ポリメチルシアノアクリレート、ポリエチルシアノアクリレート、ポリブチルシアノアクリレート、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリイソヘキシルシアノアクリレート、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリD,L−乳酸、ポリDL−乳酸−co−グリコール酸(PLGA)、アルギナート、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドを含有する経口剤は、米国特許第6,887,906号、米国特許出願公開第2003/0027780号及び米国特許第6,747,014等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0067】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ドロップ剤、スプレー剤、パウダー剤が挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドまたはその塩を適当な基剤(例、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸−グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物、ポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせて徐放性製剤とすることもできる。
【0068】
注射剤としては、静脈注射剤のほか、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等が含まれ、また徐放性製剤としては、イオントフォレシス経皮剤等も含まれる。
【0069】
かかる注射剤は、自体公知の方法、すなわち、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を無菌の水性液もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製される。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム)等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50)と併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール)等と配合してもよい。調製された注射液は、通常、アンプルに充填される。
【0070】
ある態様では、本発明の医薬を注入剤として製剤化することができる。
該注入剤は滅菌水溶液および滅菌水溶液に緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加物(例えば、浸透増強剤、キャリア化合物および他の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤等)を含んだ水溶液を含有していてもよい。
該注入剤は局所投与(膵臓内投与)にも使用できる。
【0071】
本発明の医薬を局所投与するための剤形(坐剤、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ドロップ剤、スプレー剤、パウダー剤等)に製剤化する場合には、局所送達剤を用いることができる。
局所送達剤の例としては、脂質(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG、ジオレオイルテトラメチルアミノプロリルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、脂肪酸および脂肪酸エステル(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル 1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC
1−10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステート IPM)、モノグリセリド、ジグリセリドあるいは薬学的に受容可能なそれらの塩)等から構成されるリポソーム、商業的に入手可能なリポソーム(Lipofectin
TM(Invitrogen/Life Technologies, Carlsbad, Calif.)およびEffectene
TM(Qiagen, Valencia, Calif.))、Nature Biotechnology, 15: 647-652 (1997)に記載されているリポソーム、J. Am. Soc. Nephrol. 7: 1728 (1996)に記載されているリポソーム、米国特許第6,271,359号に記載されているリポソーム、PCT公報WO96/40964に記載されているリポソームおよびNat. Biotechnol. 23: 1002-1007(2005) に記載されているリポソームが挙げられる。なお、本発明において用いられる「リポソーム」なる用語は、球状の1つまたは複数の二層に配列された両親媒性脂質から構成される小胞を意味し、単分子層、ミセル、二分子層、および小胞が含まれる。
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、リポソーム内にカプセル化されるか、またはリポソーム(特に、カチオン性リポソーム)と複合体を形成してもよい。また、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、脂質(特に、カチオン性脂質)と複合体を形成してもよい。
局所投与のための製剤は、例えば米国特許第6,747,014等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0072】
本発明の医薬をリポソーム製剤として製剤化する場合に用いられるリポソームの例として、(aa)カチオン性リポソーム、(bb)アニオン性リポソーム、(cc)非イオン性リポソーム、(dd)「立体的に安定化された」リポソーム、(ee)糖脂質を含むリポソーム、(ff)親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含むリポソーム、(gg)トランスファーソーム、(hh)SNALPsが挙げられる。
【0073】
上記(aa)カチオン性リポソームの例として、 Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985で使用されているリポソームが挙げられる。
【0074】
前記(cc)非イオン性リポソームの例として、Novasome
TMI(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome
TM II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)が挙げられる(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0075】
前記(dd)「立体的に安定化された」リポソームの例として、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が(dd-1)モノシアロガングリオシドG
m1などの1以上の糖脂質を含む、または(dd-2)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1以上の親水性ポリマーで誘導体化されているリポソームが挙げられる。
該リポソームは本発明の医薬が循環血中に存在する期間を延長するという利点を有する。
【0076】
前記(ee)糖脂質を含むリポソームの例として、(ee-1)モノシアロガングリオシドG
m1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールを含むリポソーム、および(ee-2)スフィンゴミエリン、ガングリオシドG
m1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソーム(米国特許第4,837,028号および国際公開公報第88/04924号)が挙げられる。
該リポソームを用いることにより、リポソームの血中半減期を延長することができる(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64;Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)。
【0077】
前記(ff)親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含むリポソームの例として、(ff-1)PEG部分を含む非イオン性界面活性剤を含むリポソーム(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)、(ff-2)ポリスチレン粒子の親水性ポリマーグリコールで誘導体化されたリポソーム(FEBS Lett., 1984, 167, 79)、(ff-3)ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基の結合により修飾された合成リン脂質を含むリポソーム(米国特許第4,426,330号および第4,534,899号)、(ff-4)PEGまたはPEGステアレートで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソーム(FEBS Lett., 1990, 268, 235)、(ff-5)ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびPEGの組み合わせから形成された他のPEG誘導体化リン脂質を含むリポソーム(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)、(ff-6)外部表面に共有結合したPEG部分を有するリポソーム(欧州特許EP 0 445 131 B1および国際公開公報第90/04384号)、(ff-7)1〜20モルパーセントのPEGで誘導体化されたPEを含有するリポソーム(米国特許第5,013,556号および第5,356,633号、米国特許第5,213,804号および欧州特許EP 0 496 813 B1)、(ff-8)いくつかの他の脂質-ポリマー結合体を含有するリポソーム(国際公開公報第91/05545号、米国特許第5,225,212および国際公開公報第94/20073号)、(ff-9)PEGで修飾されたセラミド脂質を含むリポソーム(国際公開公報第96/10391号)、および(ff-10)官能性部分によって表面をさらに誘導体化することができるPEG含有リポソーム(米国特許第5,540,935号および米国特許第5,556,948号)が挙げられる。
PEGを含むリポソームは、例えば、米国特許第6,049,094号;6,224,903号;6,270,806号;6,471,326号;6,958,241号等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0078】
前記(hh)SNALPsの例として、SPLP(pSPLP(国際公開公報第00/03683号)を含む)、SNALPが挙げられる。SNALPおよびSPLPは、さらに、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および任意で粒子の凝集を防ぐ脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)を含んでいてもよい。
本発明の医薬を、SNALPsを含有する製剤として製剤化する場合には、静脈内(i.v.)注射後の延長された循環寿命を示すという有利な点、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)で蓄積するという有利な点があるため、全身投与に有用である。
SNALPsを含有する製剤は、例えば米国特許第5,976,567号;第5,981,501号;第6,534,484号;第6,586,410号;第6,815,432号;ならびに国際公開公報第96/40964号等に記載の方法、あるいはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0079】
前記リポソーム製剤には単分子層、ミセル、二分子層、および小胞が含まれる。本発明において用いられる「リポソーム」は、球状の1つまたは複数の二層に配列された両親媒性脂質から構成される。
【0080】
上記両親媒性脂質の例として、好ましくは少なくとも1つのプロトン化し得る基を含む、4〜15のpKaを有するカチオン性脂質(例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLendMA)、1,2-ジリノレイルカルバオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン (DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン (DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン (DLin-MA)、1,2-ジリンレオイル-3-ジメチルアミノプロパン (DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン (DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン (DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレオイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン クロライド塩 (DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロライド塩 (DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレオイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール (DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ (DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン (DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン (DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン、それらのアナログ、及びそれらの混合物)、式:
【0081】
【化1】
【0082】
(式中、
各X
a及びX
bは、それぞれ独立して、C
1−6アルキレンであり;
nは0、1、2、3、4、又は5であり;
各Rは独立して、H、
【0083】
【化2】
【0084】
であり;
mは0、1、2、3、又は4であり;
Yは不在であるか、O、NR
2、又はSであり;
R
1は、それぞれ1以上の置換基により置換されていてもよい、アルキル、アルケニル又はアルキニルであり;且つ
R
2は、H、それぞれ1以上の置換基により置換されていてもよい、アルキル、アルケニル又はアルキニルである)
で表される脂質が挙げられる。
【0085】
別の両親媒性脂質の例として、非カチオン性脂質(アニオン性脂質または中性脂質)(例えば、ジステアロイルフォスファチジルコリン (DSPC)、ジオレオイルフォスファチジルコリン (DOPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン (DPPC)、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール (DOPG)、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール (DPPG)、 ジオレオイル-フォスファチジルエタノールアミン (DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン (POPC)、パルミトイルオレオイル フォスファチジルエタノールアミン (POPE)、ジオレオイル-フォスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート (DOPE-mal)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン (DPPE)、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン (DMPE)、ジステアロイル-フォスファチジルエタノールアミン (DSPE)、16-O-モノメチル PE、16-O-ジメチル PE、18-1-トランス PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-フォスファチジルエタノールアミン (SOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、コレステロール、及びその混合物)が挙げられる。
【0086】
また別の両親媒性脂質の例として、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)(例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18))、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、及びそれらの混合物を含むポリエチレングリコール(PEG)-脂質が挙げられる。
【0087】
リポソーム製剤は、粒子の凝集を防ぐ脂質(例、コレステロールのようなステロイド)を含んでいてもよい。
【0088】
本発明の医薬をリポソーム製剤とすることの利点として以下の点が挙げられる:天然リン脂質から得られるリポソームは生分解性であり、生体適合性がある;リポソームは広範な水溶性および脂溶性薬物を取り込むことができる;リポソームはそれらの内部区画に封入された薬物を代謝および分解から保護することができる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245);本発明のポリヌクレオチド、またはその塩の所望の標的における蓄積増大;親水性および疎水性両方の多様な薬物を皮膚に投与できる点が挙げられる。
【0089】
本発明の医薬は乳剤として製剤化されうる。
上記乳剤は界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、微細分散固体、保存剤、抗酸化剤等を含有していてもよい(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤を使用できる(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199)。
上記天然乳化剤の例としては、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチン、およびアカシアが挙げられる。
上記保存剤の例としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。
上記抗酸化剤の例としては、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカル捕捉剤、アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、クエン酸、酒石酸、およびレシチンが挙げられる。
乳剤の皮膚、経口および非経口経路による適用、ならびにそれらの製造法は文献に報告されている(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
経口投与可能な乳剤は、製剤化が容易で、かつ吸収およびバイオアベイラビリティの見地から有効である(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0090】
本発明の医薬はマイクロエマルション製剤として製剤化されうる。
上記マイクロエマルション製剤は、油、水、界面活性剤、コサーファクタントおよび/または電解質を含有していてもよい。
上記界面活性剤の例として、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ブリッジ96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセスキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が単独またはコサーファクタントとの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上記コサーファクタントの例として、エタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコールが挙げられる。コサーファクタントは界面活性剤フィルム中に浸透し、その結果、界面活性剤分子の間に生じる空間のために無秩序なフィルムを生成する。該フィルムは界面の流動性を高めるのに役立つ。しかし、マイクロエマルション製剤はコサーファクタントを用いずに調製してもよく、アルコールを含まない自己乳化マイクロエマルション製剤系が当技術分野において公知である。水相としては、例えば、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールの誘導体が挙げられる。上記油としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C
8-C
12)モノ、ジ、およびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C
8-C
10グリセリド、植物油ならびにシリコーン油が挙げられる。
マイクロエマルション製剤は、まず油を水性界面活性剤溶液に分散し、次いで中鎖アルコール等を加えて透明な系を形成することにより調製される。
マイクロエマルション製剤は、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩の可溶化および本発明のポリヌクレオチド、またはその塩の吸収増強の見地から有効である。(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。また、マイクロエマルション製剤は固体剤形よりも経口投与が容易である点、優れた臨床効力を有する点、および毒性を低減できる点で有効である(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385; Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-143)。
【0091】
本発明の医薬の一実施態様では、脂質のポリヌクレオチドに対する比(質量/質量比)は約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、又は約6:1〜約9:1の範囲内である。
【0092】
本発明の医薬における本発明のポリヌクレオチド、またはその塩の含有量は、製剤の形態に応じて相違するが、通常、製剤全体に対して約0.01重量%以上100重量%未満、好ましくは約2ないし約85重量%、さらに好ましくは約5ないし約70重量%である。
【0093】
本発明の医薬中の添加剤の含有量は、製剤の形態に応じて相違するが、通常、製剤全体に対して約1ないし約99.9重量%、好ましくは約10ないし約90重量%である。
【0094】
本発明のポリヌクレオチドを生物学的手法により標的細胞または標的組織に送達することもできる。
上記標的細胞は生来本発明のポリヌクレオチドを発現する哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル)の細胞であれば特に制限はないが、例えば、ヒト細胞が用いられる。上記標的組織の例として、膵β細胞を含む膵島、膵臓、肺、膀胱、胎盤、乳腺、結腸が挙げられる。
上記生物学的手法にはウイルス性ベクターの使用を含むが、これに限定されない多様な方法で行うことができる。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、ウイルス性ベクター(例えば、アデノウイルスおよびヘルペスウイルスベクター)を用いて肝臓細胞や膵臓細胞に送達される。
本発明のポリヌクレオチドを発現するウィルスベクターは標準的な分子生物学的技術により作製することができる。
【0095】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、安定かつ低毒性で哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル)に対して安全に投与することができる。その1日の投与量は患者の状態や体重、ポリヌクレオチドの種類、投与経路等によって異なるが、例えば、糖尿病の治療目的で患者に経口投与する場合には、成人(体重約60kg)1日当りの投与量は、有効成分(本発明のポリヌクレオチド)として約1ないし約1000mg、好ましくは約3ないし約300mg、さらに好ましくは約10ないし約200mgであり、これらを1回または2ないし3回に分けて投与することができる。
【0096】
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を非経口的に投与する場合は、通常、液剤(例えば、注射剤)の形で投与する。その1回あたりの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法等によっても異なるが、例えば、注射剤の形にして、通常体重1kgあたり約0.01ないし約100mg、好ましくは約0.01ないし約50mg、より好ましくは約0.01ないし約20mgを静脈注射により投与するのが好都合である。
【0097】
本発明のポリヌクレオチドまたはその塩は、他の薬物、具体的には他の糖尿病予防若しくは治療薬、または膵β細胞増殖薬と併用して用いることができる。
糖尿病予防若しくは治療薬の例としては、例えばインスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌、イーストを用い遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤;インスリン亜鉛;プロタミンインスリン亜鉛;インスリンのフラグメントまたは誘導体(例、INS-1)、経口インスリン製剤)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは、塩酸塩)、ロシグリタゾンまたはその塩(好ましくは、マレイン酸塩)、メタグリダセン、AMG-131、バラグリタゾン、MBX-2044、リボグリタゾン、アレグリタザール、チグリタザール、ロベグリタゾン、PLX-204、PN-2034、GFT-505、THR-0921;WO2007/013694、WO2007/018314、WO2008/093639またはWO2008/099794記載の化合物)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート)、ビグアナイド剤(例、メトホルミン、ブホルミンまたはそれらの塩(例、塩酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩))、インスリン分泌促進剤(例、スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、グリピザイド、グリブゾール)、レパグリニド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物)、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(例、アログリプチンまたはその塩(好ましくは、安息香酸塩)、ヴィルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、BI1356、GRC8200、MP-513、PF-00734200、PHX1149、SK-0403、ALS2-0426、TA-6666、TS-021、KRP-104、2-[[6-[(3R)-3-アミノ-1-ピペリジニル]-3,4-ジヒドロ-3-メチル-2,4-ジオキソ-1(2H)-ピリミジニル]メチル]-4-フルオロベンゾニトリルまたはその塩)、β3アゴニスト(例、N-5984)、GPR40アゴニスト(例、WO2004/041266、WO2004/106276、WO2005/063729、WO2005/063725、WO2005/087710、WO2005/095338、WO2007/013689またはWO2008/001931記載の化合物)、GLP-1受容体アゴニスト(例、GLP-1、GLP-1MR剤、リラグルチド、エキセナチド、AVE-0010、BIM-51077、Aib(8,35)hGLP-1(7,37)NH
2、CJC-1131、Albiglutide)、アミリンアゴニスト(例、プラムリンチド)、ホスホチロシンホスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸ナトリウム)、糖新生阻害剤(例、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グルコース-6-ホスファターゼ阻害剤、FBPase阻害薬)、SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害剤(例、Depagliflozin、AVE2268、TS-033、YM543、TA-7284、Remogliflozin、ASP1941)、SGLT1阻害薬、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、BVT-3498、INCB-13739)、アジポネクチンまたはその作動薬、IKK阻害薬(例、AS-2868)、レプチン抵抗性改善薬、ソマトスタチン受容体作動薬、グルコキナーゼ活性化薬(例、Piragliatin、AZD1656、AZD6370、TTP-355;WO2006/112549、WO2007/028135、WO2008/047821、WO2008/050821、WO2008/136428またはWO2008/156757記載の化合物)、GIP(Glucose-dependent insulinotropic peptide)、GPR119アゴニスト(例、PSN821)、FGF21、FGFアナログが挙げられる。
【0098】
膵β細胞増殖薬としては、例えばジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(例、アログリプチンまたはその塩(好ましくは、安息香酸塩)、ヴィルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、BI1356、GRC8200、MP-513、PF-00734200、PHX1149、SK-0403、ALS2-0426、TA-6666、TS-021、KRP-104、2-[[6-[(3R)-3-アミノ-1-ピペリジニル]-3,4-ジヒドロ-3-メチル-2,4-ジオキソ-1(2H)-ピリミジニル]メチル]-4-フルオロベンゾニトリルまたはその塩)、GLP-1受容体アゴニスト(例、GLP-1、GLP-1MR剤、リラグルチド、エキセナチド、AVE-0010、BIM-51077、Aib(8,35)hGLP-1(7,37)NH
2、CJC-1131、Albiglutide)、成長ホルモン等が挙げられる。
【0099】
<2>膵β細胞の増殖剤用途
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、膵β細胞の増殖を促進する活性を有する。上記膵β細胞の例として、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒト)の膵β細胞が挙げられる。
従って、本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、哺乳動物の膵β細胞の増殖剤;膵島移植前の膵β細胞の増殖剤;膵島移植後の膵β細胞の増殖補助剤;および膵炎の治療剤として有用である。
ポリヌクレオチドの膵β細胞の増殖活性は、後述の実施例に記載された方法に準じ、先に詳述した方法で測定することができる。
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩を含有する膵β細胞の増殖剤は、前記した本発明の医薬と同様にして製造することができ、哺乳動物に対して安全に投与することができる。
【0100】
<3>糖尿病の予防又は治療薬等のスクリーニング用途
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、膵β細胞の増殖を促進する活性を有するので、細胞内における本発明のポリヌクレオチドの発現を促進する物質もまた、膵β細胞の増殖を促進し、糖尿病等の疾患の予防又は治療に有効である。従って、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞における該ポリヌクレオチドの発現を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、膵β細胞を増殖させる物質、糖尿病の予防又は治療薬(或いはそれらの候補物質)のスクリーニング方法を提供する。
【0101】
本発明のポリヌクレオチドの発現量は、本発明のポリヌクレオチドを特異的に検出する核酸プローブ又は核酸プライマー(例えば、本発明のポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド(即ち、本発明のポリヌクレオチドをコードする塩基配列またはその一部を含む核酸または本発明のポリヌクレオチドをコードする塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部))を用いて本発明のポリヌクレオチドを検出することにより、測定することができる。
【0102】
従って、より具体的には、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における本発明のポリヌクレオチドの発現量を、本発明のポリヌクレオチドを特異的に検出する核酸プローブ又は核酸プライマー等を用いて測定、比較することを特徴とする、膵β細胞を増殖させる物質或いは糖尿病の予防又は治療薬(或いはそれらの候補物質)のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称することがある)を提供する。
【0103】
上記本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞としては、内在性に本発明のポリヌクレオチドを発現する哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル)の細胞であれば特に制限はないが、例えば、ヒト膵β細胞が用いられる。また、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞を含む組織を用いてもよい。該組織の例として、膵β細胞を含む膵島、膵臓、肺、膀胱、胎盤、乳腺、結腸が挙げられる。該組織としては、好ましくは膵β細胞を含む膵島、膵臓等が用いられる。非ヒト動物由来の細胞や組織を用いる場合には、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体に被験物質を投与し、一定時間経過後にそれらの細胞や組織を単離してもよい。
【0104】
被験物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。また、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー等も好適な被験物質として挙げられる。
【0105】
例えば、本発明のポリヌクレオチドの発現量の測定は、具体的には以下のようにして行うことができる。
【0106】
(i)非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、トリ)に対して、被験物質を投与し、投与から一定時間が経過した後、膵島、膵臓等の本発明のポリヌクレオチドを生来発現する細胞を含む生体試料を採取する。得られた生体試料に含まれる細胞において発現した本発明のポリヌクレオチドは、例えば、通常の方法により細胞等からマイクロRNAを含むRNA抽出液を調製した後、得られたRNA抽出液をRT−PCR、核酸アレイ、ノーザンブロット解析などに供することにより定量することができる。
【0107】
(ii)本発明のポリヌクレオチドを発現する哺乳動物細胞(例、膵β細胞)を常法に従ってインビトロで培養する際に被験物質を培地中に添加し、一定時間培養後、該細胞に含まれる本発明のポリヌクレオチドの発現量を、RT−PCR、核酸アレイ、ノーザンブロット解析等の手法を用いて定量、解析することにより行うことができる。
【0108】
そして、測定の結果、被験物質による本発明のポリヌクレオチドの発現量の変化と、膵β細胞を増殖させる活性、或いは糖尿病を予防又は治療する活性とが相関付けられる。そして、本発明のポリヌクレオチドの発現を促進させた物質を、膵β細胞を増殖させる物質、糖尿病の予防又は治療薬(或いはそれらの候補物質)として選択することができる。
【0109】
所望により、上記工程において選択された物質が、膵β細胞を増殖させる活性(増殖を促進する活性を含む)を有するか、或いは糖尿病を予防又は治療し得るか、確認してもよい。
【0110】
膵β細胞を増殖させる活性の有無は、例えば、哺乳動物の膵β細胞を被験物質の存在下および非存在下にインビトロで培養し、培養開始から一定期間が経過した後で、両条件下における膵β細胞の増殖の程度をMTTアッセイ等の自体公知の手法を用いて測定、比較することにより、決定することができる。
【0111】
また、糖尿病を予防又は治療する活性の有無は、例えば、糖尿病モデル非ヒト哺乳動物に対して、被験物質を投与し、投与から一定時間が経過した後、該非ヒト哺乳動物における血糖値等の糖尿病の症状を評価し、これを被験物質を投与しない場合と比較することにより、決定することができる。
【0112】
糖尿病モデル非ヒト哺乳動物の例としては、KKマウス(例えば、KK/Taマウス、KK/Snkマウス)、KK-A
yマウス(例えば、KK-A
y/Taマウス)、C57BL/KsJ db/dbマウス、C57BL/6J db/dbマウス、ob/obマウス、高脂肪食負荷マウス等の2型糖尿病モデルマウス、およびGKラット、ZDFラット、高脂肪食負荷ラット等の2型糖尿病モデルラットが挙げられる。また、糖尿病モデル非ヒト哺乳動物の例としては、ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデル動物やmultiple low doses of STZモデル等の1型糖尿病モデル動物も挙げられる。
【0113】
そして、膵β細胞を増殖させる活性及び/又は糖尿病を予防又は治療する活性を有することが確認された被験物質を、膵β細胞を増殖させる物質、糖尿病の予防又は治療薬(或いはそれらの候補物質)として選択することができる。
【0114】
本発明のスクリーニング方法により選択される物質は、膵β細胞の増殖剤;糖尿病(例、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満型糖尿病)の予防又は治療剤;耐糖能不全[IGT(Impaired Glucose Tolerance)]の予防・治療剤;又は耐糖能不全から糖尿病への移行抑制剤(或いはそれらの候補物質)として有用である。
【0115】
また、本発明のスクリーニング方法により選択される物質は、糖尿病性合併症[例、神経障害、腎症、網膜症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(例、呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害]、糖尿病性悪液質、インスリン抵抗性症候群等の予防・治療剤(或いはそれらの候補物質)としても有用である。
【0116】
本発明のスクリーニング方法により選択された物質は、前記した本発明の医薬と同様にして製剤化することができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー)に対して投与することができる。
【0117】
<4>糖尿病の予防又は治療薬等に対する感受性の判定用途
本発明のポリヌクレオチド、またはその塩は、膵β細胞の増殖を促進する活性を有するので、糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬の投与計画の決定等において、患者の細胞へ、投与予定の糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬を接触させ、該細胞における本発明のポリヌクレオチドの発現量を測定し、該発現量の変化と、糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬に対する感受性とを相関付けることにより、該患者の糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬に対する感受性を判定することができる。従って、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞における該ポリヌクレオチドの発現を、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対する感受性を判定する方法(以下では、「本発明の判定方法」と称することがある)を提供する。
【0118】
本発明は、より具体的には、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞を糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬の存在下および非存在下に培養し、両条件下における本発明のポリヌクレオチドの発現量を、本発明のポリヌクレオチドを特異的に検出する核酸プローブ又は核酸プライマーを用いて測定、比較することを特徴とする、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対する感受性を判定する方法を提供する。
【0119】
本発明の判定方法においては、本発明のポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞として、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬の投与が予定されている被験者(ヒトもしくは他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル))の細胞が用いられる。該細胞としては、生来本発明のポリヌクレオチドを発現している細胞(例、膵β細胞)またはそれを含む生体試料(例、膵島、膵臓、肺、膀胱、胎盤、乳腺、結腸)であれば特に制限はないが、好ましくは膵β細胞が用いられる。哺乳動物由来の細胞、組織等の場合は、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体に糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬を投与し、一定時間経過後に該細胞やそれを含む生体試料を単離してもよい。
【0120】
糖尿病の予防又は治療薬の例としては、例えば、上記で糖尿病の予防又は治療薬として例示したものが挙げられる。
【0121】
膵β細胞増殖薬の例としては、例えば、上記で糖尿病の予防又は治療薬として例示したものが挙げられる。
【0122】
本発明の判定方法における本発明のポリヌクレオチドの発現量の測定は、具体的には以下のようにして行うことができる。
【0123】
(i)ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、トリ)に対して、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬を投与し、投与から一定時間が経過した後、膵島、膵臓等の本発明のポリヌクレオチドを内因性に発現する細胞を含む生体試料をバイオプシー等により採取する。採取した生体試料に含まれる細胞において発現した本発明のポリヌクレオチドは、例えば、通常の方法により細胞等からmiRNAを含むRNAを抽出し、RT−PCR、核酸アレイ等の手法を用いることにより定量することができ、あるいは自体公知のノーザンブロット解析により定量することもできる。
【0124】
(ii)本発明のポリヌクレオチドを発現する哺乳動物細胞(例、膵β細胞)を常法に従ってインビトロで培養する際に糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬を培地中に添加し、一定時間培養後、該細胞に含まれる本発明のポリヌクレオチドの発現量を、RT−PCR、核酸アレイ、ノーザンブロット解析等の手法を用いて定量、解析することにより行うことができる。
【0125】
上記解析により、糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬による本発明のポリヌクレオチドの発現量の変化と、当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対する感受性とが相関付けられる。そして、本発明のポリヌクレオチドの発現量の変化と、当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対する感受性との間の正の相関に基づき、当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対する感受性の判定が行われる。
【0126】
糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬が本発明のポリヌクレオチドの発現量を促進している場合には、被験者は当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対して感受性を有する可能性が高い(即ち、当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬は被験者に対して有効である可能性が高い)と判定することができる。一方、本発明のポリヌクレオチドの発現量の促進が認められない場合には、被験者は当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対して感受性を有しない可能性がある(即ち、当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬は被験者に対して無効である可能性がある)と判定することができる。
【0127】
或いは、本発明のポリヌクレオチドの発現量の促進の幅が大きいほど、被験者は当該糖尿病の予防又は治療薬或いは膵β細胞増殖薬に対して感受性を有する可能性がより高いと判定することができる。
【0128】
本発明の判定方法を用いると、糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬の投与計画の決定や薬物の選定等において、患者にとって有効性が見込める糖尿病の予防又は治療薬や膵β細胞増殖薬を決定することが可能となる。
【0129】
以下の塩基配列を含むポリペプチドも、本発明のポリヌクレオチドと同様にして、糖尿病の予防または治療剤、膵β細胞増殖剤として使用することができ、さらに糖尿病の予防又は治療薬等のスクリーニング方法、糖尿病の予防又は治療薬等に対する感受性を判定するための方法において使用することができる。
<A> 配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列と70%以上の相同性を有する塩基配列;
<B>配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列に含まれる5ヌクレオチド長以上の連続する部分配列;
<C>上記<A>、<B>の塩基配列に相補的な塩基配列。
【0130】
前記<A>の塩基配列は、配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列と70%以上90%未満、好ましくは75%以上90%未満、80%以上90%未満、85%以上90%未満の相同性(即ち同一性)を有する。
また、前記<A>の塩基配列には、配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列において3、4、5又は6個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入された塩基配列が包含される。該塩基配列としては、例えば、(i)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列において3、4、5又は6個の塩基が欠失した塩基配列、(ii)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列に3、4、5又は6個の塩基が付加した塩基配列、(iii)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列に3、4、5又は6個の塩基が挿入された塩基配列、(iv)配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列中の3、4、5又は6個の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、及び(v)それらの変異を組み合わせた塩基配列(但し、欠失、置換、付加又は挿入される塩基の総数が3、4、5又は6個である)を挙げることができる。
上記のように塩基配列が変異(欠失、置換、付加又は挿入)を含む場合、その変異の位置は、特に限定されない。
【0131】
前記<B>の部分配列の長さは、少なくとも5ヌクレオチド長以上、好ましくは、7ヌクレオチド長以上、10ヌクレオチド長以上、12ヌクレオチド長以上、15ヌクレオチド長以上又は17ヌクレオチド長以上である。
【0132】
前記<B>の部分配列の配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列における位置はポリヌクレオチドが哺乳動物の膵β細胞の増殖を促進する活性を有する限り限定されない。前記<B>の部分配列の配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列における位置の例として、配列番号1、2、3若しくは4で表される塩基配列の3’末端または5’末端があげられる。
【0133】
前記<B>の部分配列を含む本発明のポリヌクレオチドの好ましい態様としては、配列番号1、2、3又は4で表される塩基配列に含まれる5ヌクレオチド長以上の連続する部分配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0134】
前記<C>の塩基配列は、上記<A>又は<B>の塩基配列に完全に相補的である。
【0135】
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
【0136】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。