特許第5775982号(P5775982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5775982
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】双方向変位検出器
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   G01B5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-93577(P2015-93577)
(22)【出願日】2015年4月30日
(62)【分割の表示】特願2014-52678(P2014-52678)の分割
【原出願日】2014年3月14日
【審査請求日】2015年4月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陵
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−156616(JP,A)
【文献】 特開昭50−081171(JP,A)
【文献】 特開昭63−142209(JP,A)
【文献】 特開昭62−147303(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3127831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対移動可能な第1検出要素及び第2検出要素を含む変位検出手段と、
前記第1検出要素が設けられるベースと、
前記ベースに対して、水平方向に延びるアーム回転軸回りに回転自在に連結され、前記第2検出要素が設けられたアームと、
前記ベースに対して、前記アーム回転軸に垂直な仮想面内に沿うように延びる測定子回転軸回りに回転自在に連結され、前記測定子回転軸から離間した位置に接触子が設けられた測定子と、を備え
前記測定子は、前記アーム回転軸方向に沿う前記測定子回転軸を挟んだ両側に、前記アームに対して離間可能に当接する一対の当接部を有し、
前記一対の当接部は、その下方から前記アームにそれぞれ当接されているとともに、上方に向けて付勢されていることを特徴とする双方向変位検出器。
【請求項2】
互いに相対移動可能な第1検出要素及び第2検出要素を含む変位検出手段と、
前記第1検出要素が設けられるベースと、
前記ベースに対して、水平方向に延びるアーム回転軸回りに回転自在に連結され、前記第2検出要素が設けられたアームと、
前記ベースに対して、前記アーム回転軸に垂直な仮想面内に沿うように延びる測定子回転軸回りに回転自在に連結され、前記測定子回転軸から離間した位置に接触子が設けられた測定子と、を備え、
前記測定子は、前記アーム回転軸方向に沿う前記測定子回転軸を挟んだ両側に、前記アームに対して離間可能に当接する一対の当接部を有し、
前記一対の当接部は、その上方から前記アームにそれぞれ当接されているとともに、下方に向けて付勢されていることを特徴とする双方向変位検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の双方向変位検出器であって、
前記アーム回転軸と前記測定子回転軸とは、互いに直交していることを特徴とする双方向変位検出器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の双方向変位検出器であって、
前記アーム回転軸と前記測定子回転軸とは、互いにねじれの位置に配置されることを特徴とする双方向変位検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向変位検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真円度測定や表面粗さ/形状測定などに使用される変位検出器においては、検出可能な方向が単一方向であり、例えばワーク(被測定物)の表面と裏面、上面と下面、外径(外周面)と内径(内周面)といった、対向面や背向面(背中合わせの面)の双方向の測定をする場合には、変位検出器を180°回転させて測定方向を反転させたり、測定力(バネ等の付勢により変位検出器の接触子をワークの被測定面に押し付ける力、接触圧力)の方向を機械的、もしくは電気的に変更する必要があった。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の変位検出器では、変位検出器を反転移動させることなく双方向の変位検出を行うため、変位検出手段(ボビン(固定検出要素)とコア(移動検出要素)の対)を2組用いている(特許文献1の図3A図3Cを参照)。
そして、アーム21先端の接触子22A、22BがワークWの面(被測定面)A、Bに押し当てられることで、バネ24の付勢により上記測定力が発生し、さらに2組の変位検出手段のうち一組が検出可能範囲となったときに、変位を検出するようにしている。
【0004】
また特許文献1の図10図11A及び図11Bにおいては、1組の変位検出手段(ボビン26とコア25)により双方向の変位検出を行うため、複数のアーム41、21A、21B、複数のバネ24A、24B、及び複数のストッパ30A、30Bを用いている。
そして、アーム41先端の接触子42A、42BがワークWの面A、Bに押し当てられることで、ストッパ30A、30Bから離間したアーム21A、21Bにバネ24A、24Bの付勢による上記測定力が発生し、さらに変位検出手段が検出可能範囲となったときに、変位を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4884376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の双方向変位検出器では、下記の課題を有していた。
すなわち、特許文献1の図3A図3Cに示される従来例では、接触子がワークの被測定面に押し当てられていない状態(自由位置)の測定力を0とし、該接触子に測定力が作用するまでこの接触子に被測定面を押し当てて使用するため、自由位置近辺の測定力が0に近くなるとともに検出値が不安定になって、使用できない範囲が大きくなっていた。また変位検出手段を2組使用するため、構造が複雑であり製造費用が高価であった。
ここで、この従来例における測定位置(接触子の検出方向への移動量)と測定力との関係を、本明細書に添付した図6(b)のグラフに示す。尚、図中のハッチングで示される部分が、この変位検出器の使用可能範囲(測定位置の許容範囲)であり、図示の例では、測定力:−6〜−4、4〜6に対応する測定位置を使用可能範囲としている。
【0007】
また、特許文献1の図10図11A及び図11Bに示される従来例では、接触アーム41を第1、第2アーム21A、21B間で受け渡す構造となっており、この受け渡し領域においてやはり測定力(検出値)が不安定になって、使用できない範囲を有していた。
ここで、この従来例における測定位置と測定力との関係を、本明細書に添付した図6(c)のグラフに示す。この例では、上述した図6(b)の従来例に比べて変位検出器の使用可能範囲が広くなっているが、測定位置:−1〜1付近(受け渡し領域近辺)においてやはり測定力が確保できず、使用不可となっている。またこの例についても構造が複雑であり、製造費用が高価となる問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構造を簡単にして製造費用を抑えることができ、かつ、測定位置の使用可能範囲を大きく確保して変位検出性能を向上できる双方向変位検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明の双方向変位検出器は、互いに相対移動可能な第1検出要素及び第2検出要素を含む変位検出手段と、前記第1検出要素が設けられるベースと、前記ベースに対して、水平方向に延びるアーム回転軸回りに回転自在に連結され、前記第2検出要素が設けられたアームと、前記ベースに対して、前記アーム回転軸に垂直な仮想面内に沿うように延びる測定子回転軸回りに回転自在に連結され、前記測定子回転軸から離間した位置に接触子が設けられた測定子と、を備え、前記測定子は、前記アーム回転軸方向に沿う前記測定子回転軸を挟んだ両側に、前記アームに対して離間可能に当接する一対の当接部を有し、前記一対の当接部は、その下方から前記アームにそれぞれ当接されているとともに、上方に向けて付勢されていることを特徴とする。
また、本発明の双方向変位検出器は、互いに相対移動可能な第1検出要素及び第2検出要素を含む変位検出手段と、前記第1検出要素が設けられるベースと、前記ベースに対して、水平方向に延びるアーム回転軸回りに回転自在に連結され、前記第2検出要素が設けられたアームと、前記ベースに対して、前記アーム回転軸に垂直な仮想面内に沿うように延びる測定子回転軸回りに回転自在に連結され、前記測定子回転軸から離間した位置に接触子が設けられた測定子と、を備え、前記測定子は、前記アーム回転軸方向に沿う前記測定子回転軸を挟んだ両側に、前記アームに対して離間可能に当接する一対の当接部を有し、前記一対の当接部は、その上方から前記アームにそれぞれ当接されているとともに、下方に向けて付勢されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の双方向変位検出器では、ベースに対して、アーム及び測定子がそれぞれの回転軸(アーム回転軸、測定子回転軸)回りに回転自在に連結されており、また測定子回転軸は、アーム回転軸に垂直な仮想面内に延びている(つまりこれら回転軸同士の位置関係には、直交やねじれの位置が含まれる)。
この双方向変位検出器による真円度測定や表面粗さ/形状測定などの測定時には、測定子の接触子にワーク(被測定物)の被測定面が押し当てられ、この測定子が、一対の当接部を付勢するアームの付勢力に抗して、ベースに対して測定子回転軸回りに沿う周方向の一方側又は他方側(双方向のうちいずれか)に回転させられる。
【0011】
この測定子の回転によりアームは、一対の当接部のうち、いずれかの当接部に押圧されつつそれとは別の当接部からは離間して、ベースに対してアーム回転軸回りに沿う周方向の他方側(アームが付勢される周方向に沿う一方側とは反対側)へ向けて回転させられる。
このアームの回転により、ベースの第1検出要素とアームの第2検出要素との相対位置が変位して、被測定面の変位を検出することができる。
【0012】
ここで、図6(a)のグラフは、本発明の双方向変位検出器における測定位置(接触子の基準位置(測定位置0)から検出方向(+、−)へ向けた変位量)と、測定力との関係を表している。尚、図中のハッチングで示される部分が、この双方向変位検出器の使用可能範囲(測定位置の許容範囲)であり、図示の例では、測定力:−6〜−4、4〜6に対応する測定位置を使用可能範囲に設定している。
このグラフに示されているように、本発明によれば、接触子が被測定面に押し当てられ、測定子が測定子回転軸回りに回転し始めるとともに、該測定子の一対の当接部のうちいずれかの当接部がアームから離間した瞬間から、変位の検出が可能となっている。
【0013】
すなわち本発明によれば、接触子がワークの被測定面に接触していない状態であっても、該接触子に対して、検出方向に沿う双方向(測定子回転軸回りに沿う周方向の両側)から十分な測定力(付勢により接触子をワークの被測定面に押し付ける力、接触圧力)を即時に付与可能な待機状態とすることができ、具体的には被測定面による接触子の押し込み(接触子に対する押し当て)によって、一対の当接部のうちいずれかがアームから離間した瞬間に、測定力が0から所定値(所定範囲)まで即時に到達するので、従来のように測定力が0付近にとどまり検出値が不安定になる受け渡し領域等は存在しない。そのため図6(a)において、変位を検出する双方向(測定位置0を挟む横軸の両側)のうち、測定位置が0を超える一方側(+側)に向けても、測定位置が0未満の他方側(−側)に向けても、0を除く測定位置であれば測定位置0近辺であっても十分な測定力を確保できる。
【0014】
また、測定子の一対の当接部が、測定子回転軸回りに沿う周方向の両側からそれぞれアームに当接されるとともに、互いに前記周方向の反対側へ向けて等しい力で付勢されることで釣り合っており、この平衡状態を基準位置として、該基準位置における変位検出手段の第1、第2検出要素の相対位置に基づいて、検出限界位置を予め精度よく設定することができる。
すなわち本発明では、測定時以外における接触子の基準位置を安定させることができるとともに、該基準位置における接触子の位置精度が高精度に確保されるので、変位検出手段(第1、第2検出要素の対)がたとえ一組のみであっても、変位検出の測定範囲を大きく確保することができ、かつ検出精度を安定して高めることができる。
また本発明によれば、従来のように変位検出手段、アーム、バネ、ストッパ等を複数設ける複雑な構造を用いる必要はなく、構造を簡略化できる。
【0015】
以上より本発明によれば、構造を簡単にして製造費用を抑えることができ、かつ、測定位置の使用可能範囲を大きく確保して変位検出性能を向上できるのである。
【0016】
また、本発明の双方向変位検出器において、前記アーム回転軸と前記測定子回転軸とは、互いに直交していることとしてもよい。
【0017】
また、本発明の双方向変位検出器において、前記アーム回転軸と前記測定子回転軸とは、互いにねじれの位置に配置されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の双方向変位検出器によれば、構造を簡単にして製造費用を抑えることができ、かつ、測定位置の使用可能範囲を大きく確保して変位検出性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る双方向変位検出器を示す斜視図である。
図2図1の双方向変位検出器の(a)左側面図、(b)正面図である。
図3図1の双方向変位検出器の右側断面図である。
図4図1の双方向変位検出器の測定時の動作を説明する図であり、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図を表している。
図5図1の双方向変位検出器の測定時の動作を説明する図であり、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図を表している。
図6】双方向変位検出器における測定位置と測定力との関係を示すグラフであり、(a)本発明の実施形態に係る双方向変位検出器、(b)従来の双方向変位検出器、(c)従来の双方向変位検出器を表している。
図7】本発明の第2実施形態に係る双方向変位検出器を示す斜視図である。
図8図7の双方向変位検出器の(a)左側面図、(b)正面図である。
図9図7の双方向変位検出器の右側断面図である。
図10図7の双方向変位検出器の測定時の動作を説明する図であり、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図を表している。
図11図7の双方向変位検出器の測定時の動作を説明する図であり、(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る双方向変位検出器10について、図面を参照して説明する。
【0021】
まず、本実施形態の双方向変位検出器10の概略構成について説明する。
この双方向変位検出器10は、真円度測定や表面粗さ/形状測定などに使用されるものであり、具体的には、ワーク(被測定物)の表面と裏面、上面と下面、外径(外周面)と内径(内周面)といった、対向面や背向面(背中合わせの面)の双方向の被測定面の測定を行うことが可能な変位検出器である。
【0022】
図1図5に示されるように、本実施形態の双方向変位検出器10は、互いに相対移動可能な第1検出要素1及び第2検出要素2を含む変位検出手段3と、第1検出要素1が設けられるベース4と、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに回転自在に連結され、第2検出要素2が設けられたアーム5と、ベース4に対して、アーム回転軸Aに垂直な仮想面VS内に沿うように延びる測定子回転軸M回りに回転自在に連結され、測定子回転軸Mから離間した位置に接触子7が設けられた測定子6と、アーム5を、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢する付勢手段8と、を備えている。
【0023】
本実施形態の例では、アーム回転軸A及び測定子回転軸Mは、ともに水平面内に沿うように延びており、具体的にはこれら回転軸A、Mが、互いに異なる水平方向にそれぞれ延びているとともに、直交している。また、軸状をなす測定子6は、測定子回転軸Mから、該測定子回転軸Mに直交する方向のうち、鉛直方向の下方に向けて延びているとともに、その先端部(下端部)に接触子7を配置している。
また、ベース4は、測定子回転軸M方向に沿うアーム回転軸Aを挟んだ一方側に測定子6を支持しており、他方側に第1検出要素1(変位検出手段3)を配設している。
【0024】
ここで、本明細書では、測定子6が延びる方向のうち、接触子7が位置する端部へ向かう方向(図2(a)(b)における下方)を下方といい、接触子7とは反対側へ向かう方向(図2(a)(b)における上方)を上方という。また、ベース4において測定子回転軸M方向に沿うアーム回転軸Aから測定子6側へ向かう方向(図2(a)における右側)を前方といい、アーム回転軸Aから第1検出要素1側へ向かう方向(図2(a)における左側)を後方という。
【0025】
この双方向変位検出器10を用いたワークの測定時には、測定子6の接触子7に対して、アーム回転軸A方向に沿う両側(図2(b)における左右方向)のうちいずれかからワークの被測定面が押し当てられる。また測定時においては、測定子6の接触子7がワークの被測定面に接触した状態(密着状態)が安定して維持されるように、該測定子6は被測定面に向けて付勢されている(この付勢力を、本明細書では「測定力」という)。
【0026】
具体的には、測定子6の接触子7が、被測定面の凹凸形状等に応じて検出方向(測定子回転軸M回りに沿う周方向)に沿って押し込まれたり、付勢により押し込み方向とは反対側へ向けて復元変位したりして、接触子7が被測定面に密着した状態が維持される。
また、接触子7の上述した揺動に応じて、測定子6が、測定子回転軸M回りに沿う周方向に回転移動(揺動)させられ、この測定子6の回転移動にともなって、アーム5がアーム回転軸A回りに沿う周方向に回転移動(揺動)して、アーム5の第2検出要素(移動検出要素)2が、ベース4の第1検出要素(固定検出要素)1に対して移動することで、ワークの表面位置(変位)が検出可能に構成されている。
【0027】
次に、双方向変位検出器10の各構成要素について、詳しく説明する。
本実施形態においては、変位検出手段3として差動トランス方式を採用している。図3に示されるように、アーム5に設けられた第2検出要素2は、円筒状の鉄心からなるコアを有しており、ベース4に設けられた第1検出要素1は、該第1検出要素1に対してコアが移動する向きに沿うように隣接配置されるとともに、内部にコアが挿通される複数のトランス(ボビン)を有している。
そして、第1検出要素1における一のトランスに交流信号を入力した時に他のトランスに誘起される交流信号が、第2検出要素2のコアの位置により変化することを利用して、これら第1、第2検出要素1、2同士の相対位置(変位)を検出するようにしている。
【0028】
尚、変位検出手段3は、第1、第2検出要素1、2同士の相対位置を検出可能なものであればよいことから、上記差動トランス方式に限定されるものではない。すなわち、変位検出手段3として、例えば、光学格子の回転に伴う移動を干渉計で検出する格子干渉方式等を採用してもよい。
【0029】
図2(a)及び図3において、ベース4は、測定子回転軸M方向(前後方向)に沿うように延びており、アーム回転軸Aの前方に位置する前方部分4aと、アーム回転軸Aの後方に位置する後方部分4bと、を有している。
【0030】
図3に示されるアーム回転軸Aに垂直な断面視(縦断面視)で、ベース4の前方部分4aは、下方に向けて開口する凹所を有するU字状又はコ字状をなしており、前記凹所内に、測定子6において測定子回転軸Mが配置された上端部が収容されている。また、前方部分4aにおいて凹所の前方に位置する前壁と、凹所の後方に位置する後壁とにより、測定子6が測定子回転軸M回りに回転自在に軸支されている。
また図2(a)において、前方部分4aの前記後壁には、アーム5がアーム回転軸A回りに回転自在に軸支されている。
【0031】
また、図3に示される縦断面視で、ベース4の後方部分4bは、アーム回転軸Aの下方に位置しているとともに、前後方向に沿って延びており、後方部分4bの後端部には、第1検出要素1が立設されている。また、後方部分4bの前端部には、前方部分4aの後壁が立設されており、前方部分4aと後方部分4bとが一体に形成されている。
【0032】
図1及び図2(a)に示されるように、アーム5は、該アーム5の前方部分をなし、アーム回転軸A方向に沿うベース4の両側に互いに離間して配設されるとともに、該ベース4にアーム回転軸A回りに回転自在に軸支される一対の腕部11a、11bと、該アーム5の後方部分をなし、これら腕部11a、11b同士を連結し、第2検出要素2が配設された連結部11cと、を有している。
【0033】
図2(a)に示されるアーム回転軸A方向から見た側面視で、一対の腕部11a、11bは、それぞれS字状又はZ字状をなしている。またこの側面視で、これらの腕部11a、11bの前後方向に沿う中央部は、上下方向に長い矩形状をなしており、該中央部には、アーム回転軸Aが配置されている。また、腕部11a、11bにおいて、前記中央部よりも前方に位置する部分は、アーム回転軸Aよりも下方に位置しているとともに、該中央部の下端部から前方に向けて延びている。
【0034】
腕部11a、11bの前端部は、測定子回転軸M方向に沿う測定子6の配置位置に対応して配置されており、該前端部には、上方に向けて突起部12a、12bがそれぞれ突設されている。突起部12a、12bの先端部(上端部)は、半球状に形成されており、これら先端部は、測定子6の後述する一対の当接部13a、13bに対向配置されている。
また、腕部11a、11bにおいて、前記中央部よりも後方に位置する部分は、アーム回転軸Aよりも上方に位置しているとともに、該中央部の上端部から後方に向けて延びている。
【0035】
図1に示されるように、連結部11cは、上面視でT字状をなしている。連結部11cは、一対の腕部11a、11bの後端部同士を、ベース4の前方部分4aよりも後方の位置においてアーム回転軸A方向に連結している。
図3に示されるように、連結部11cの後端部には、第2検出要素2が垂設されており、第2検出要素2は、ベース4の第1検出要素1内に挿通されているとともに、該第1検出要素1に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向(第1検出要素1に対する略上下方向)に移動可能とされている。
【0036】
図2(a)及び図3に示されるように、付勢手段8は、アーム回転軸Aの後方においてベース4とアーム5とを繋いでおり、該付勢手段8によりアーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢されている。具体的に、本実施形態の付勢手段8は、弾性変形可能な例えば引張コイルばねからなり、図示の例では付勢手段8が、ベース4の後方部分4bにおける後端部と、アーム5の連結部11cにおける前端部とを連結している。
【0037】
本実施形態では、付勢手段8により、図2(b)に矢印で示されるように、アーム5の前端部に位置する腕部11a、11bの突起部12a、12bが、ベース4の前方部分4aに対して、上方に移動する方向に付勢されている。また付勢手段8により、図3に示されるように、アーム5の後端部に位置する第2検出要素2が、ベース4の後端部に位置する第1検出要素1に対して、下方に移動する方向に付勢されている。
【0038】
図2(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視で、測定子6は、T字状をなしている。具体的に、図1及び図2(a)(b)において測定子6は、軸状又は棒状をなし上下方向(鉛直方向)に延びる本体部と、該本体部の上端部からアーム回転軸A方向に沿う両側に向けて突設された一対の当接部13a、13bと、を有している。
【0039】
測定子6の本体部における上端部には、測定子回転軸Mが位置しており、下端部には、接触子7が設けられている。本実施形態の例では、接触子7は球状をなしており、この接触子7の外径は、本体部における該接触子7以外の部分の外径よりも大きくされている。
また、測定子回転軸Mは、アーム回転軸Aに垂直な仮想面VS内のうち、アーム回転軸Aから前方へ向かって、水平方向に沿うように延びている。尚、本実施形態に示される例においては、アーム回転軸Aと測定子回転軸Mとは、互いに直交しているが、これに限定されるものではなく、例えばアーム回転軸Aと、仮想面VS内に沿って延びる測定子回転軸Mとが、互いにねじれの位置に配置されていてもよい。
【0040】
図2(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視で、一対の当接部13a、13bは、測定子6の本体部からアーム回転軸A方向に沿う両外側へ向けて延びた後、さらに下方へ向けて延びるL字状をそれぞれなしている。
また図1及び図2(a)(b)において、一対の当接部13a、13bは、測定子6の本体部の上端部からアーム回転軸A方向に沿う測定子回転軸Mを挟んだ両側に配設されており、アーム5に対して離間可能に当接している。本実施形態では、一対の当接部13a、13bは、アーム5の腕部11a、11bの前端部に位置する突起部12a、12bの上方に配置されており、これら当接部13a、13bにおいて下方を向く下面14a、14bが、突起部12a、12bの先端部(上端部)に対して、その上方から離間可能に当接している。
【0041】
そして、図1及び図2(a)において、付勢手段8の付勢力によりアーム5がベース4に対してアーム回転軸A回りの周方向の一方側a1へ付勢されていることにより、アーム5の一対の腕部11a、11bに設けられた各突起部12a、12bは、ベース4に支持された測定子6の一対の当接部13a、13bを、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側から(周方向に沿う一方側と他方側から、つまり測定子回転軸M回りのうち時計回りと反時計回りの両方向から)、それぞれ付勢可能となっている。
具体的に本実施形態では、アーム5における一対の突起部12a、12bが、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側から、かつ上方に向けて、一対の当接部13a、13bをそれぞれ付勢可能に構成されている。
【0042】
次に、本実施形態の双方向変位検出器10を用いて、ワークの被測定面の変位を測定する方法について、説明する。
図2(a)(b)に示されるように、本実施形態においては、双方向変位検出器10の接触子7にワークの被測定面が押し当てられていない自由状態(測定時以外における基準位置)では、測定子6はアーム回転軸Aに垂直な仮想面VS内に位置して、鉛直方向に沿って延びている。また、測定子6の一対の当接部13a、13bにおける各下面14a、14bは、その下方からアーム5の一対の突起部12a、12bにそれぞれ当接されているとともに、これら突起部12a、12bにより上方に向けて付勢されている。このように、当接部13a、13bが、突起部12a、12bにより測定子回転軸M方向に沿う周方向の両側から、周方向に互いに異なる向き(周方向の反対向き)に付勢されることで、測定子6が釣り合った状態(平衡状態)とされている。
【0043】
図4(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視において、測定子6の接触子7に対して、アーム回転軸A方向に沿う一方から他方側(図4(b)における左側)へ向けてワークの被測定面が押し当てられた場合には、図4(b)に黒矢印で示される押し込み力(押し当て力)により、接触子7がアーム回転軸A方向に沿う他方側へ向けて押し込まれるとともに、測定位置0(基準位置)から測定位置0以外の位置に移動させられることで、測定子6の接触子7には、図4(b)に白矢印で示されるような、アーム回転軸A方向に沿う他方から一方側(図4(b)における右側)へ向けた測定力が発生する。
【0044】
具体的には、図4(a)〜(c)において、測定子6の接触子7が、アーム回転軸A方向の一方から他方側へ向けて押し込まれ、ベース4に対して測定子回転軸M回りに沿う周方向に回転移動させられることで、該測定子6の一対の当接部13a、13bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の当接部13aが、アーム5の一対の突起部12a、12bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の突起部12aを、その上方から下方へ向けて押し下げる。
またこれと同時に、測定子6の一対の当接部13a、13bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の当接部13bが、アーム5の一対の突起部12a、12bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の突起部12bから、その上方へ向けて離間する。このように、他方の当接部13bが、他方の突起部12bから離間した瞬間から、再び当接するまでの間において、測定子6を基準位置に復元変位させる向きへの測定力が発生する。
【0045】
また上述のように一方の当接部13aが、一方の突起部12aを押し下げることにより、アーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の他方側a2(図2(a)等に示す周方向の一方側a1とは反対側へ向かう方向)へ向けて回転する。
これにより、ベース4の第1検出要素1に対するアーム5の第2検出要素2の位置が変位して、ワークの被測定面の変位が検出される。
【0046】
また、図5(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視において、測定子6の接触子7に対して、アーム回転軸A方向に沿う他方から一方側(図5(b)における右側)へ向けてワークの被測定面が押し当てられた場合には、図5(b)に黒矢印で示される押し込み力により、接触子7がアーム回転軸A方向に沿う一方側へ向けて押し込まれるとともに、測定位置0(基準位置)から測定位置0以外の位置に移動させられることで、測定子6の接触子7には、図5(b)に白矢印で示されるような、アーム回転軸A方向に沿う一方から他方側(図5(b)における左側)へ向けた測定力が発生する。
【0047】
具体的には、図5(a)〜(c)において、測定子6の接触子7が、アーム回転軸A方向の他方から一方側へ向けて押し込まれ、ベース4に対して測定子回転軸M回りに沿う周方向に回転移動させられることで、該測定子6の一対の当接部13a、13bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の当接部13bが、アーム5の一対の突起部12a、12bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の突起部12bを、その上方から下方へ向けて押し下げる。
またこれと同時に、測定子6の一対の当接部13a、13bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の当接部13aが、アーム5の一対の突起部12a、12bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の突起部12aから、その上方へ向けて離間する。このように、一方の当接部13aが、一方の突起部12aから離間した瞬間以降において、測定子6を基準位置に復元変位させる向きへの測定力が発生する。
【0048】
また上述のように他方の当接部13bが、他方の突起部12bを押し下げることにより、アーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の他方側a2(図2(a)等に示す周方向の一方側a1とは反対側へ向かう方向)へ向けて回転する。
これにより、ベース4の第1検出要素1に対するアーム5の第2検出要素2の位置が変位して、ワークの被測定面の変位が検出される。
【0049】
尚、ワークの被測定面によりアーム回転軸A方向に押し込まれた接触子7の押し込み量が低減した場合には、測定力により接触子7は復元変位し、これにより接触子7が被測定面に密着した状態が維持されるとともに、該被測定面の凹凸形状等を検出することができる。
【0050】
以上説明した本実施形態の双方向変位検出器10によれば、ベース4に対して、アーム5及び測定子6がそれぞれの回転軸(アーム回転軸A、測定子回転軸M)回りに回転自在に連結されており、また測定子回転軸Mは、アーム回転軸Aに垂直な仮想面VS内に延びている。
この双方向変位検出器10による真円度測定や表面粗さ/形状測定などの測定時には、測定子6の接触子7にワーク(被測定物)の被測定面が押し当てられ、この測定子6が、一対の当接部13a、13bを付勢するアーム5の付勢力に抗して、ベース4に対して測定子回転軸M回りに沿う周方向の一方側又は他方側(双方向のうちいずれか)に回転させられる。
【0051】
この測定子6の回転によりアーム5は、一対の当接部13a、13bのうち、いずれかの当接部に押圧されつつそれとは別の当接部からは離間して、ベース4に対してアーム回転軸A回りに沿う周方向の他方側a2(アーム5が付勢される周方向に沿う一方側a1とは反対側)へ向けて回転させられる。
このアーム5の回転により、ベース4の第1検出要素1とアーム5の第2検出要素2との相対位置が変位して、被測定面の変位を検出することができる。
【0052】
ここで、図6(a)のグラフは、本実施形態の双方向変位検出器10における測定位置(接触子7の基準位置(測定位置0)から検出方向(+、−)へ向けた変位量)と、測定力との関係を表している。尚、図中のハッチングで示される部分が、この双方向変位検出器10の使用可能範囲(測定位置の許容範囲)であり、図示の例では、測定力:−6〜−4、4〜6に対応する測定位置を使用可能範囲に設定している。
このグラフに示されているように、本実施形態によれば、接触子7が被測定面に押し当てられ、測定子6が測定子回転軸M回りに回転し始めるとともに、該測定子6の一対の当接部13a、13bのうちいずれかの当接部がアーム5から離間した瞬間から、変位の検出が可能となっている。
【0053】
すなわち本実施形態によれば、接触子7がワークの被測定面に接触していない状態であっても、該接触子7に対して、検出方向に沿う双方向(測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側)から十分な測定力(付勢により接触子7をワークの被測定面に押し付ける力、接触圧力)を即時に付与可能な待機状態とすることができ、具体的には被測定面による接触子7の押し込み(接触子7に対する押し当て)によって、一対の当接部13a、13bのうちいずれかがアーム5から離間した瞬間に、測定力が0から所定値(所定範囲)まで即時に到達するので、従来のように測定力が0付近にとどまり検出値が不安定になる受け渡し領域等は存在しない。そのため図6(a)において、変位を検出する双方向(測定位置0を挟む横軸の両側)のうち、測定位置が0を超える一方側(+側)に向けても、測定位置が0未満の他方側(−側)に向けても、0を除く測定位置であれば測定位置0近辺であっても十分な測定力を確保できる。
【0054】
また、測定子6の一対の当接部13a、13bが、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側からそれぞれアーム5に当接されるとともに、互いに前記周方向の反対側へ向けて等しい力で付勢されることで釣り合っており、この平衡状態を基準位置として、該基準位置における変位検出手段3の第1、第2検出要素1、2同士の相対位置に基づいて、検出限界位置を予め精度よく設定することができる。
すなわち本実施形態では、測定時以外における接触子7の基準位置を安定させることができるとともに、該基準位置における接触子7の位置精度が高精度に確保されるので、変位検出手段3(第1、第2検出要素1、2の対)がたとえ一組のみであっても、変位検出の測定範囲を大きく確保することができ、かつ検出精度を安定して高めることができる。
また本実施形態によれば、従来のように変位検出手段、アーム、バネ、ストッパ等を複数設ける複雑な構造を用いる必要はなく、構造を簡略化できる。
【0055】
以上より本実施形態によれば、構造を簡単にして製造費用を抑えることができ、かつ、測定位置の使用可能範囲を大きく確保して変位検出性能を向上できるのである。
【0056】
また本実施形態では、アーム5を、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢する付勢手段8を備えているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、アーム5が、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて確実に付勢されることになり、これによりアーム5は、測定子6の一対の当接部13a、13bを、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側からそれぞれ安定的に付勢できる。
【0057】
尚、本実施形態においては、アーム5が、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢されているとともに、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側からそれぞれ一対の当接部13a、13bを付勢可能に構成されていればよいことから、付勢手段8は設けられていなくてもよい。
すなわち、例えば、アーム5が、ベース4に対して、該アーム5の自重によりアーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢されていることとしてもよい。
この場合、上述した作用効果が得られつつも、付勢手段8を削除することが可能になり、装置の構造を簡素化できるとともに、製造費用を削減できる。
また、付勢手段8は、上述した引張コイルばね等のばねを用いて付勢力を生じさせる構成に限定されるものではなく、例えば電磁力等を用いて付勢力を生じさせる構成であってもよい。
【0058】
また本実施形態において、接触子7がワークの被測定面に押し当てられたときに、測定子6が、測定子回転軸M回りに沿う周方向のうちいずれの向きに回転したかを検出可能なエンコーダ等の測定方向検出手段が設けられていてもよい。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る双方向変位検出器30について、図面を参照して説明する。
尚、前述の実施形態(第1実施形態)と同様の構成については、同一名称や同一符号を用いてその説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
【0060】
図7図11に示されるように、本実施形態の双方向変位検出器30は、主として、アーム5と測定子6との当接部分(突起部22a、22bや当接部23a、23b近傍)の構造、及び、ベース4に対してアーム5がアーム回転軸A回りに付勢される向き(アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1が設定される向き)等が、前述した双方向変位検出器10とは異なっている。
【0061】
図7及び図8(a)に示されるように、アーム5は、該アーム5の前方部分をなし、アーム回転軸A方向に沿うベース4の両側に互いに離間して配設されるとともに、該ベース4にアーム回転軸A回りに回転自在に軸支される一対の腕部21a、21bと、該アーム5の後方部分をなし、これら腕部21a、21b同士を連結し、第2検出要素2が配設された連結部21cと、を有している。
【0062】
図8(a)に示されるアーム回転軸A方向から見た側面視で、一対の腕部21a、21bは、それぞれT字状をなしている。またこの側面視で、これらの腕部21a、21bの前後方向に沿う中央部は、上下方向に長い矩形状をなしており、該中央部には、アーム回転軸Aが配置されている。また、腕部21a、21bにおいて、前記中央部よりも前方に位置する部分は、アーム回転軸Aよりも上方に位置しているとともに、該中央部の上端部から前方に向けて延びている。
【0063】
腕部21a、21bの前端部は、測定子回転軸M方向に沿う測定子6の配置位置に対応して配置されており、該前端部には、下方に向けて突起部22a、22bがそれぞれ突設されている。突起部22a、22bの先端部(下端部)は、半球状に形成されており、これら先端部は、測定子6の後述する一対の当接部23a、23bに対向配置されている。
また、腕部21a、21bにおいて、前記中央部よりも後方に位置する部分は、アーム回転軸Aよりも上方に位置しているとともに、該中央部の上端部から後方に向けて延びている。
【0064】
図7に示されるように、連結部21cは、上面視でT字状をなしている。連結部21cは、一対の腕部21a、21bの後端部同士を、ベース4の後方部分4b上においてアーム回転軸A方向に連結している。
図9に示されるように、連結部21cの後端部には、第2検出要素2が垂設されており、第2検出要素2は、ベース4の第1検出要素1内に挿通されているとともに、該第1検出要素1に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向(第1検出要素1に対する略上下方向)に移動可能とされている。
【0065】
図8(a)及び図9に示されるように、付勢手段8は、アーム回転軸Aの後方においてベース4とアーム5とを繋いでおり、該付勢手段8によりアーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の一方側a1へ向けて付勢されている。具体的に、本実施形態の付勢手段8は、弾性変形可能な例えば圧縮コイルばねからなり、図示の例では付勢手段8が、ベース4の後方部分4bにおける前端部と、アーム5の連結部21cにおける前端部とを連結している。
【0066】
本実施形態では、付勢手段8により、図8(b)に矢印で示されるように、アーム5の前端部に位置する腕部21a、21bの突起部22a、22bが、ベース4の前方部分4aに対して、下方に移動する方向に付勢されている。また付勢手段8により、図9に示されるように、アーム5の後端部に位置する第2検出要素2が、ベース4の後端部に位置する第1検出要素1に対して、上方に移動する方向に付勢されている。
【0067】
図8(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視で、測定子6は、T字状をなしている。具体的に、図7及び図8(a)(b)において測定子6は、軸状又は棒状をなし上下方向(鉛直方向)に延びる本体部と、該本体部の上端部からアーム回転軸A方向に沿う両側に向けて突設された一対の当接部23a、23bと、を有している。
【0068】
また、図8(b)に示される正面視で、一対の当接部23a、23bは、測定子6の本体部からアーム回転軸A方向に沿う両外側へ向けて延びた後、さらに上方へ向けて延びるL字状をそれぞれなしている。
また図7及び図8(a)(b)において、一対の当接部23a、23bは、測定子6の本体部の上端部からアーム回転軸A方向に沿う測定子回転軸Mを挟んだ両側に配設されており、アーム5に対して離間可能に当接している。本実施形態では、一対の当接部23a、23bは、アーム5の腕部21a、21bの前端部に位置する突起部22a、22bの下方に配置されており、これら当接部23a、23bにおいて上方を向く上面24a、24bが、突起部22a、22bの先端部(下端部)に対して、その下方から離間可能に当接している。
【0069】
そして、図7及び図8(a)において、付勢手段8の付勢力によりアーム5がベース4に対してアーム回転軸A回りの周方向の一方側a1へ付勢されていることにより、アーム5の一対の腕部21a、21bに設けられた各突起部22a、22bは、ベース4に支持された測定子6の一対の当接部23a、23bを、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側から(周方向に沿う一方側と他方側から、つまり測定子回転軸M回りのうち時計回りと反時計回りの両方向から)、それぞれ付勢可能となっている。
具体的に本実施形態では、アーム5における一対の突起部22a、22bが、測定子回転軸M回りに沿う周方向の両側から、かつ下方に向けて、一対の当接部23a、23bをそれぞれ付勢可能に構成されている。
【0070】
次に、本実施形態の双方向変位検出器30を用いて、ワークの被測定面の変位を測定する方法について、説明する。
図8(a)(b)に示されるように、本実施形態においては、双方向変位検出器30の接触子7にワークの被測定面が押し当てられていない自由状態(測定時以外における基準位置)では、測定子6はアーム回転軸Aに垂直な仮想面VS内に位置して、鉛直方向に沿って延びている。また、測定子6の一対の当接部23a、23bにおける各上面24a、24bは、その上方からアーム5の一対の突起部22a、22bにそれぞれ当接されているとともに、これら突起部22a、22bにより下方に向けて付勢されている。このように、当接部23a、23bが、突起部22a、22bにより測定子回転軸M方向に沿う周方向の両側から、周方向に互いに異なる向き(周方向の反対向き)に付勢されることで、測定子6が釣り合った状態(平衡状態)とされている。
【0071】
図10(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視において、測定子6の接触子7に対して、アーム回転軸A方向に沿う一方から他方側(図10(b)における左側)へ向けてワークの被測定面が押し当てられた場合には、図10(b)に黒矢印で示される押し込み力(押し当て力)により、接触子7がアーム回転軸A方向に沿う他方側へ向けて押し込まれるとともに、測定位置0(基準位置)から測定位置0以外の位置に移動させられることで、測定子6の接触子7には、図10(b)に白矢印で示されるような、アーム回転軸A方向に沿う他方から一方側(図10(b)における右側)へ向けた測定力が発生する。
【0072】
具体的には、図10(a)〜(c)において、測定子6の接触子7が、アーム回転軸A方向の一方から他方側へ向けて押し込まれ、ベース4に対して測定子回転軸M回りに沿う周方向に回転移動させられることで、該測定子6の一対の当接部23a、23bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の当接部23bが、アーム5の一対の突起部22a、22bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の突起部22bを、その下方から上方へ向けて押し上げる。
またこれと同時に、測定子6の一対の当接部23a、23bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の当接部23aが、アーム5の一対の突起部22a、22bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の突起部22aから、その下方へ向けて離間する。このように、一方の当接部23aが、一方の突起部22aから離間した瞬間から、再び当接するまでの間において、測定子6を基準位置に復元変位させる向きへの測定力が発生する。
【0073】
また上述のように他方の当接部23bが、他方の突起部22bを押し上げることにより、アーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の他方側a2(図8(a)等に示す周方向の一方側a1とは反対側へ向かう方向)へ向けて回転する。
これにより、ベース4の第1検出要素1に対するアーム5の第2検出要素2の位置が変位して、ワークの被測定面の変位が検出される。
【0074】
また、図11(b)に示される測定子回転軸M方向から見た正面視において、測定子6の接触子7に対して、アーム回転軸A方向に沿う他方から一方側(図11(b)における右側)へ向けてワークの被測定面が押し当てられた場合には、図11(b)に黒矢印で示される押し込み力により、接触子7がアーム回転軸A方向に沿う一方側へ向けて押し込まれるとともに、測定位置0(基準位置)から測定位置0以外の位置に移動させられることで、測定子6の接触子7には、図11(b)に白矢印で示されるような、アーム回転軸A方向に沿う一方から他方側(図11(b)における左側)へ向けた測定力が発生する。
【0075】
具体的には、図11(a)〜(c)において、測定子6の接触子7が、アーム回転軸A方向の他方から一方側へ向けて押し込まれ、ベース4に対して測定子回転軸M回りに沿う周方向に回転移動させられることで、該測定子6の一対の当接部23a、23bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の当接部23aが、アーム5の一対の突起部22a、22bのうち、アーム回転軸A方向に沿う一方側に位置する一方の突起部22aを、その下方から上方へ向けて押し上げる。
またこれと同時に、測定子6の一対の当接部23a、23bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の当接部23bが、アーム5の一対の突起部22a、22bのうち、アーム回転軸A方向に沿う他方側に位置する他方の突起部22bから、その下方へ向けて離間する。このように、他方の当接部23bが、他方の突起部22bから離間した瞬間以降において、測定子6を基準位置に復元変位させる向きへの測定力が発生する。
【0076】
また上述のように一方の当接部23aが、一方の突起部22aを押し上げることにより、アーム5は、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに沿う周方向の他方側a2(図8(a)等に示す周方向の一方側a1とは反対側へ向かう方向)へ向けて回転する。
これにより、ベース4の第1検出要素1に対するアーム5の第2検出要素2の位置が変位して、ワークの被測定面の変位が検出される。
【0077】
以上説明した本実施形態の双方向変位検出器30によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
例えば、前述の実施形態では、測定子6(において接触子7が設けられる軸状の本体部)が、測定子回転軸Mから、該測定子回転軸Mに直交する方向のうち鉛直方向の下方に向けて延びていると説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、本発明とは技術思想が異なる参考例では、測定子回転軸Mが鉛直方向に延びているとともに、測定子6が、水平方向に向けて延びていてもよい。
【0080】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及び尚書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0081】
1 第1検出要素
2 第2検出要素
3 変位検出手段
4 ベース
5 アーム
6 測定子
7 接触子
8 付勢手段
10、30 双方向変位検出器
13a、23a 一方の当接部
13b、23b 他方の当接部
A アーム回転軸
a1 アーム回転軸回りに沿う周方向の一方側
M 測定子回転軸
VS アーム回転軸に垂直な仮想面
【要約】
【課題】構造を簡単にして製造費用を抑えることができ、測定位置の使用可能範囲を大きく確保して変位検出性能を向上できること。
【解決手段】互いに相対移動可能な第1検出要素及び第2検出要素を含む変位検出手段3と、第1検出要素が設けられるベース4と、ベース4に対して、アーム回転軸A回りに回転自在に連結され、第2検出要素が設けられたアーム5と、ベース4に対して、アーム回転軸Aに垂直な仮想面内に沿うように延びる測定子回転軸M回りに回転自在に連結され、測定子回転軸Mから離間した位置に接触子7が設けられた測定子6と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11