【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら制約されるものではない。
以下の実施例、比較例で使用された実験装置、反応原料、触媒等は、以下に示すとおりである。
1.実験装置
市販のガラス製フラスコ、還流コンデンサー、テフロン(登録商標)で被覆された撹拌子、オイルバス、マグネチックスターラーを使用した。
2.原料、触媒等
(1)原料、溶媒
クロロプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製、純度97%以上)
5−ヘキセン−1−オール(東京化成工業(株)製、純度95%以上)
ピリジン(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC))
トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製)
アジ化ナトリウム(和光純薬(株)製、純度98%)
トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製、純度95%以上)
N,N−ジメチルホルムアミド(東京化成工業(株)製、純度99.5%以上)
トルエン(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC)
メタノール(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC)
ケチミン型シランカップリング剤(信越シリコーン X−12817H)
6−トルエンスルホニルオキシヘキサン−1−エン(文献(European Journal of Organic Chemistry, 2005年、10巻、2040−2044頁)に記載の方法に従って合成)
シリカ粒子(日本触媒製、粒径1.62ミクロン)
(2)触媒
Karstedt触媒(Gelest製、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンキシレン溶液、2.1〜2.4%白金濃度)
(3)分析機器
ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC2014、FID検出器)
赤外スペクトル(日本分光IR4100)
ゼータ電位(マイクロテックニチオン社製)
【0018】
参考例.アジドアルキルアルコキシシランの合成
(3−アジドプロピルトリエトキシシランの合成)
滴下ロート、磁気撹拌子を備えた200ml二口丸底フラスコに窒素雰囲気下、5.0g(20.8mmol)のクロロプロピルトリエトキシシラン、2.6g(40mmol)のアジ化ナトリウムと20mLのジメチルホルムアミドを加え60℃で12時間撹拌した。析出した白色固体をろ過後、ジメチルホルムアミド溶液を真空蒸留し57−58℃/2.0mmHgの溜分から4.71g、収率92%で3−アジドプロピルトリエトキシシランを得た。本物質の赤外吸収スペクトルを
図1に示す。
(6−アジドヘキシルトリエトキシシランの合成)
滴下ロート、磁気撹拌子を備えた200ml二口丸底フラスコに窒素雰囲気下、20.0g(78mmol)の6−トルエンスルホニルオキシヘキサン−1−エンの100mLテトラヒドロフラン溶液にKarstedt触媒のキシレン溶液を1.0mL加えた後、19g(117mmol)のトリエトキシシランをシリンジを用いて約20分かけて滴下した。反応溶液は、40℃で約4時間加熱撹拌された後濃縮され薄茶色のオイルを得た。このオイルに80mlの乾燥DMFを加え、フラスコ内部を窒素置換し、10gのアジ化ナトリウム加え60℃で3時間加熱撹拌後、析出した白色固体をろ過した後、ジメチルホルムアミド溶液を真空蒸留し95−98℃/3.0mmHgの溜分から14.71g、収率63%で6−アジドヘキシルトリエトキシシランを得た。
【0019】
実施例1.(3―トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの合成)
磁気撹拌子を備えた30mlフラスコに窒素雰囲気下、乾燥トルエン(15mL)、1.0g(約4.0mmol)の3−アジドプロピルトリエトキシシラン、1.0g(約4.0mmol)のトリフェニルホスフィンを加え60℃で3時間撹拌した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から原料として使用した3−アジドプロピルトリエトキシシランのピークはほとんど消失し、新たに3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランのピークが生成していることを確認した。溶媒を溜去した後、得られた淡黄色の液状物の赤外吸収スペクトルを測定し、原料のアジド基に帰属される2130cm
-1付近の強い吸収が消失し、新たに3000cm
-1付近の芳香族C-H伸縮振動に帰属される吸収が生じたことから生成物を確認した。得られた生成物の赤外スペクトルを
図2に示す。
【0020】
実施例2.(6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランの合成)
3−アジドプロピルトリエトキシシランの代わりに6−アジドヘキシルトリエトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランを得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを
図3に示す。
【0021】
実施例3.(3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの加水分解反応)
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシラン:水=5/1の溶液を作成し、5分経過後にガスクロマトグラフィー分析したところ、原料のピークは消失し、新たに3−アミノプロピルトリエトキシシランのピークが観察された。
【0022】
実施例4.(6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランの加水分解反応)
3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランの代わりに6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランから6−アミノヘキシルトリエトキシシランが生成したことを確認した。
【0023】
比較例1.
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの代わりにケチミン型シランカップリング剤(X−12−817H)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、5分後のガスクロマトグラフィー分析から90%の原料が残存していることを確認した。
【0024】
実施例5.(シリカ粒子表面の修飾)
0.001mol/Lの3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランの乾燥トルエン溶液(5mL)に、50mgのシリカ粒子を加えて室温で2時間撹拌後、遠心分離し上澄み液を除去しさらにトルエンで3回洗浄した。得られた表面修飾シリカ粒子を120℃で12時間乾燥後、加水分解と副生したトリフェニルホスフィンオキシドを除去するためエタノール:水(=5:5)溶液を加えて撹拌した。遠心分離とトルエン洗浄を繰り返しアミノプロピル修飾シリカ粒子を得た。得られたアミノプロピル修飾シリカ粒子を10
-2、10
-3、10
-4、10
-5mol/L塩化ナトリウム水溶液に懸濁し、電気泳動法にてゼータ電位を測定した。
図4のグラフに示すとおり、未修飾のシリカ粒子においてはゼータ電位は一貫して負の値を示すのに対し、3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランにより表面修飾した後、加水分解によりアミノ基を生成させた場合は、得られたゼータ電位は一貫して正の値を示しており、シリカ粒子表面が十分にアミノプロピル基により修飾されていることが確認できた。
【0025】
比較例2.
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの代わりに3−アミノプロピルトリエトキシシランを用い、表面修飾後のエタノール:水(=5:5)溶液による処理を行わなかった以外は実施例5と同様の操作を行い、電気泳動法にてゼータ電位を測定した。
図4のグラフに示すとおり、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて表面修飾した場合は、得られたゼータ電位は、未修飾のシリカ粒子よりも正方向に移動するものの、これと同様の負の値を示しており、シリカゲル粒子表面の修飾が不十分であることが示された。