特許第5776032号(P5776032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5776032イミノホスホラン化合物、その製造方法、およびこれを使用した基材の表面修飾方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776032
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】イミノホスホラン化合物、その製造方法、およびこれを使用した基材の表面修飾方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/535 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   C07F9/535CSP
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-52774(P2012-52774)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-184945(P2013-184945A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 哲
(72)【発明者】
【氏名】西村 聡
(72)【発明者】
【氏名】川西 祐司
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−043964(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02250921(DE,A)
【文献】 特開平10−017579(JP,A)
【文献】 特表2005−520792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus,REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、nは1〜30の整数であり、xは0〜2の整数である)で示されるイミノホスホラン化合物。
【請求項2】
一般式(2):
【化2】
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、nは1〜30の整数であり、xは0〜2の整数である)で示されるアジドアルキルアルコキシシランを出発原料とし、これを一般式(3):
【化3】
(式中、R1は、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基である)で示される3級ホスフィンと反応させることを特徴とする、請求項1に記載のイミノホスホラン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のイミノホスホラン化合物により基材を修飾した後、水分により迅速かつ容易に基材表面のイミノホスホラン骨格をアミノ基に変換することにより、アミノ修飾表面を形成することを特徴とする、基材の表面修飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1級アミノアルキルアルコキシシラン前駆体であるイミノホスホラン化合物、その製造方法、ならびにこれを用いた基材の表面修飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノアルキル基の末端にアルコキシシリル基を含有するアミノアルキルアルコキシシラン化合物は、シランカップリング剤としてガラスやシリコン基板等の基材の表面を改質する処理剤や、エポキシ樹脂等の硬化剤、シリカゲル等の無機珪素化合物を合成する際の鋳型剤等として工業的に広く利用されている。
【0003】
例えば、シランカップリング剤として用いられる1級アミノアルキルアルコキシシラン化合物として、H2NC36Si(OC25)3で表される3−アミノプロピルトリエトキシシランが知られている。しかしながら、3−アミノプロピルトリエトキシシランをガラス基板等の基材の表面にアミノ基を導入するための表面修飾に使用すると、反応性の高いアミノ基と基材表面上の極性基(ガラス基板やシリコン基板であれば表面シラノール基)との反応、あるいはアミノ基の自己触媒作用による自己縮合反応(オリゴマー化、ポリマー化)等の副反応が生じ、これにより表面処理効率が低下するという欠点がある(非特許文献1−3)。
【0004】
この問題を解決するため、3−アミノプロピルアルコキシシランの反応性の高いフリーのアミノ基をケチミン基(アミノ基とカルボニル基の縮合反応により生成)へと変換(保護)したアミノシランも合成されているが、ケチミン基からアミノ基への再変換(脱保護、加水分解)において長い反応時間を要し、また、塩酸等の強酸を触媒に用いるため酸に対して不安定な物質に対して不向きであるという欠点がある(特許文献1)。また、ケチミン基の代わりにトリメチルシリル基でアミノ基を保護したビストリメチルシリルアミノシラン化合物も合成されているが、このようなシラザン骨格を有する場合には、保護基として導入したトリメチルシリル基が修飾剤として作用し、トリメチルシリル基が基材表面に導入されるといった問題点を有する(特許文献2−3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−247295
【特許文献2】特開平10−17579
【特許文献3】特開2007−191355
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemistry of Materials, vol.18, pp5022, 2006.
【非特許文献2】Langmuir, vol.22, pp2676, 2006.
【非特許文献3】Chemistry of Materials, vol.15, pp1132, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シランカップリング剤としてガラスやシリコン基板等の基材表面を改質する処理剤として広く利用可能なアミノ基とアルコキシシリル基を含有する有機珪素化合物において、活性なアミノ基を簡便かつ効率よく保護しつつ、使用時に容易に脱保護しアミノ基を再生可能である、新規なシランカップリング剤と、その効率的な製造方法、および、これを用いた、基材表面の効率の高い修飾方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、末端にアジド基を有するアジドアルキルアルコキシシランを出発原料とし、これと3級ホスフィンとの反応によって当該シラン化合物にイミノホスホラン骨格を導入することにより、新規なシランカップリング剤として有用なイミノホスホラン化合物が得られるという知見を得た。
このようにして得られたイミノホスホラン化合物は、基材の表面修飾過程においては、安定してアミノ基を保護するとともに、水分に接することにより、容易に脱保護し、基材表面にアミノ基を提供することができる。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりの、イミノホスホラン化合物とその製造方法、およびこれを用いた基材の表面修飾方法を提供するものである。
〈1〉一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、nは1〜30の整数であり、xは0〜2の整数である)で示されるイミノホスホラン化合物。
〈2〉一般式(2):
【化2】
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、nは1〜30の整数であり、xは0〜2の整数である)で示されるアジドアルキルアルコキシシランを出発原料とし、これを一般式(3):
【化3】
(式中、R1は、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基である)で示される3級ホスフィンと反応させることを特徴とする、〈1〉に記載のイミノホスホラン化合物の製造方法。
〈3〉〈1〉に記載のイミノホスホラン化合物により基材を修飾した後、水分により迅速かつ容易に基材表面のイミノホスホラン骨格をアミノ基に変換することにより、アミノ修飾表面を形成することを特徴とする、基材の表面修飾方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のイミノホスホラン化合物は新規な化合物であり、表面処理剤、プライマー等としてきわめて有用なものである。また、本発明のイミノホスホラン化合物は、基材の表面修飾後、少量の水分、湿気によりイミノホスホラン骨格がアミノ基へと変換されることから、従来の表面修飾剤として知られているアミノシランの場合に認められた、アミノ基と基材表面との反応、自己縮合反応等の副反応を起こさない有用なものである。そして、本発明の製造方法によれば、これらのイミノホスホラン化合物を効率よく製造できる。さらに、本発明によるイミノホスホラン化合物を用いると、ガラス基板やシリカ粒子などの基材表面に効率的にアミノ基を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】参考例で得られた3−アジドプロピルトリエトキシシラン化合物の赤外吸収スペクトルを示した図である。
図2】実施例1で得られた3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシラン化合物の赤外吸収スペクトルを示した図である。
図3】実施例2で得られた6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシラン化合物の赤外吸収スペクトルを示した図である。
図4】実施例5および比較例2で得られたアミノプロピル表面修飾シリカ粒子と未修飾の原料シリカ粒子のゼータ電位をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のイミノホスホラン化合物は、上記一般式(1)で示される化合物である。
上記式中、R1、R2および及びR3は、それぞれが同一であっても、或いは異なっていてもよく、炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基が挙げられる。
さらに、nは1〜30、xは0〜2の整数であるが、原料入手の容易さからnは3〜10であることが好ましく、xはシランカップリング剤等の表面修飾剤として利用する場合には、その反応性から0〜2が好ましい。
【0013】
このような本発明の上記一般式(1)で示されるイミノホスホラン化合物としては、例えば、次式で示されるイミノホスホラン化合物が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
以下に、本発明を実施するための形態について、詳述する。
【0014】
本発明において、上記一般式(1)で表されるイミノホスホリルシラン化合物は、工業的に入手可能な、片方の末端に塩素、臭素等のハロゲン基あるいは等価体であるメシルオキシ基、トシルオキシ基を有し、もう片方の末端に2重結合を有するアルキル化合物の2重結合をヒドロシリル化した後、ハロゲン基あるいはそれと等価な基をアジド化して得られるアジドアルキルアルコキシシランと市販の3級ホスフィンから製造される。
該合成反応の一例を、下記に示す。
【化10】
(式中、Xは、塩素基、臭素基、ヨウ素基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基であり、R1は炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、nは1〜30の整数である。)
【0015】
本発明のイミノホスホラン化合物は、化合物そのもの、あるいはトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、アルコール等の汎用の有機溶媒に溶解させた溶液中において、少量の水の添加により迅速に加水分解され、アミノ基を生成する。また、ガラス基板、シリコン基板等の基材を該イミノホスホラン化合物を用いて表面修飾した後に、水分を含む前述の有機溶媒あるいは水により洗浄するだけで、イミノホスホラン骨格の加水分解が進行し、ガラス基板、シリコン基板等の基材表面をアミノ修飾可能であるという利点を有する。このように、本発明のイミノホスホラン化合物は、イミノホスホラン骨格を形成することにより保護されたアミノ基を必要時に簡単に脱保護することができるため、表面処理剤、プライマー、有機樹脂の改質剤等に使用されるシランカップリング剤として有用である。
【0016】
本発明のイミノホスホラン化合物は、表面処理等の用途に使用する際に有機溶剤で希釈して用いてもよい。使用される有機溶剤としては、トルエン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等が使用できる。
本発明のイミノホスホラン化合物により表面処理される基材としては、例えば、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、粉砕石英、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミニウムの珪酸塩、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、マイカ等の無機質微粒子;ガラス繊維、ナイロン繊維、炭素繊維等の繊維基材;ガラス板、および、鋼板、鉄板、ステンレススチール板、アルミニウム板等の金属板が挙げられる。
また、本発明のイミノホスホラン化合物を配合することにより改質される有機樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら制約されるものではない。
以下の実施例、比較例で使用された実験装置、反応原料、触媒等は、以下に示すとおりである。
1.実験装置
市販のガラス製フラスコ、還流コンデンサー、テフロン(登録商標)で被覆された撹拌子、オイルバス、マグネチックスターラーを使用した。
2.原料、触媒等
(1)原料、溶媒
クロロプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製、純度97%以上)
5−ヘキセン−1−オール(東京化成工業(株)製、純度95%以上)
ピリジン(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC))
トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製)
アジ化ナトリウム(和光純薬(株)製、純度98%)
トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製、純度95%以上)
N,N−ジメチルホルムアミド(東京化成工業(株)製、純度99.5%以上)
トルエン(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC)
メタノール(和光純薬工業(株)製、純度99.5%(GC)
ケチミン型シランカップリング剤(信越シリコーン X−12817H)
6−トルエンスルホニルオキシヘキサン−1−エン(文献(European Journal of Organic Chemistry, 2005年、10巻、2040−2044頁)に記載の方法に従って合成)
シリカ粒子(日本触媒製、粒径1.62ミクロン)
(2)触媒
Karstedt触媒(Gelest製、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンキシレン溶液、2.1〜2.4%白金濃度)
(3)分析機器
ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC2014、FID検出器)
赤外スペクトル(日本分光IR4100)
ゼータ電位(マイクロテックニチオン社製)
【0018】
参考例.アジドアルキルアルコキシシランの合成
(3−アジドプロピルトリエトキシシランの合成)
滴下ロート、磁気撹拌子を備えた200ml二口丸底フラスコに窒素雰囲気下、5.0g(20.8mmol)のクロロプロピルトリエトキシシラン、2.6g(40mmol)のアジ化ナトリウムと20mLのジメチルホルムアミドを加え60℃で12時間撹拌した。析出した白色固体をろ過後、ジメチルホルムアミド溶液を真空蒸留し57−58℃/2.0mmHgの溜分から4.71g、収率92%で3−アジドプロピルトリエトキシシランを得た。本物質の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
(6−アジドヘキシルトリエトキシシランの合成)
滴下ロート、磁気撹拌子を備えた200ml二口丸底フラスコに窒素雰囲気下、20.0g(78mmol)の6−トルエンスルホニルオキシヘキサン−1−エンの100mLテトラヒドロフラン溶液にKarstedt触媒のキシレン溶液を1.0mL加えた後、19g(117mmol)のトリエトキシシランをシリンジを用いて約20分かけて滴下した。反応溶液は、40℃で約4時間加熱撹拌された後濃縮され薄茶色のオイルを得た。このオイルに80mlの乾燥DMFを加え、フラスコ内部を窒素置換し、10gのアジ化ナトリウム加え60℃で3時間加熱撹拌後、析出した白色固体をろ過した後、ジメチルホルムアミド溶液を真空蒸留し95−98℃/3.0mmHgの溜分から14.71g、収率63%で6−アジドヘキシルトリエトキシシランを得た。
【0019】
実施例1.(3―トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの合成)
磁気撹拌子を備えた30mlフラスコに窒素雰囲気下、乾燥トルエン(15mL)、1.0g(約4.0mmol)の3−アジドプロピルトリエトキシシラン、1.0g(約4.0mmol)のトリフェニルホスフィンを加え60℃で3時間撹拌した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から原料として使用した3−アジドプロピルトリエトキシシランのピークはほとんど消失し、新たに3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランのピークが生成していることを確認した。溶媒を溜去した後、得られた淡黄色の液状物の赤外吸収スペクトルを測定し、原料のアジド基に帰属される2130cm-1付近の強い吸収が消失し、新たに3000cm-1付近の芳香族C-H伸縮振動に帰属される吸収が生じたことから生成物を確認した。得られた生成物の赤外スペクトルを図2に示す。
【0020】
実施例2.(6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランの合成)
3−アジドプロピルトリエトキシシランの代わりに6−アジドヘキシルトリエトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランを得た。
得られた生成物の赤外吸収スペクトルを図3に示す。
【0021】
実施例3.(3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの加水分解反応)
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシラン:水=5/1の溶液を作成し、5分経過後にガスクロマトグラフィー分析したところ、原料のピークは消失し、新たに3−アミノプロピルトリエトキシシランのピークが観察された。
【0022】
実施例4.(6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランの加水分解反応)
3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランの代わりに6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、6−トリフェニルホスホリルイミノヘキシルトリエトキシシランから6−アミノヘキシルトリエトキシシランが生成したことを確認した。
【0023】
比較例1.
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの代わりにケチミン型シランカップリング剤(X−12−817H)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、5分後のガスクロマトグラフィー分析から90%の原料が残存していることを確認した。
【0024】
実施例5.(シリカ粒子表面の修飾)
0.001mol/Lの3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランの乾燥トルエン溶液(5mL)に、50mgのシリカ粒子を加えて室温で2時間撹拌後、遠心分離し上澄み液を除去しさらにトルエンで3回洗浄した。得られた表面修飾シリカ粒子を120℃で12時間乾燥後、加水分解と副生したトリフェニルホスフィンオキシドを除去するためエタノール:水(=5:5)溶液を加えて撹拌した。遠心分離とトルエン洗浄を繰り返しアミノプロピル修飾シリカ粒子を得た。得られたアミノプロピル修飾シリカ粒子を10-2、10-3、10-4、10-5mol/L塩化ナトリウム水溶液に懸濁し、電気泳動法にてゼータ電位を測定した。図4のグラフに示すとおり、未修飾のシリカ粒子においてはゼータ電位は一貫して負の値を示すのに対し、3−イミノホスホリルプロピルトリエトキシシランにより表面修飾した後、加水分解によりアミノ基を生成させた場合は、得られたゼータ電位は一貫して正の値を示しており、シリカ粒子表面が十分にアミノプロピル基により修飾されていることが確認できた。
【0025】
比較例2.
3−トリフェニルホスホリルイミノプロピルトリエトキシシランの代わりに3−アミノプロピルトリエトキシシランを用い、表面修飾後のエタノール:水(=5:5)溶液による処理を行わなかった以外は実施例5と同様の操作を行い、電気泳動法にてゼータ電位を測定した。図4のグラフに示すとおり、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて表面修飾した場合は、得られたゼータ電位は、未修飾のシリカ粒子よりも正方向に移動するものの、これと同様の負の値を示しており、シリカゲル粒子表面の修飾が不十分であることが示された。
図1
図2
図3
図4