特許第5776054号(P5776054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776054
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   C23C14/56 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-85834(P2011-85834)
(22)【出願日】2011年4月7日
(65)【公開番号】特開2012-219321(P2012-219321A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】廣野 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】多田 勲
(72)【発明者】
【氏名】小松 研二
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−230775(JP,A)
【文献】 実公昭49−042659(JP,Y1)
【文献】 特公昭27−003865(JP,B1)
【文献】 特開2004−263227(JP,A)
【文献】 特開2007−224384(JP,A)
【文献】 特開平06−057415(JP,A)
【文献】 特開2010−150635(JP,A)
【文献】 特開2004−095677(JP,A)
【文献】 特開平07−331438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート状基材を、真空処理室を通して搬送し、この真空処理室に設けた処理ユニットによりシート状基材に所定の処理を施す真空処理装置において、
真空処理室に配置される、シート状基材の片面が処理ユニットに対向する姿勢で当該処理ユニットを跨いで当該シート状基材を複数周回走行させる上流側ローラユニットと上流側ローラユニットからのシート状基材の表裏を反転させる反転手段とシート状基材の他面が処理ユニットに対向する姿勢で当該処理ユニットを跨いで当該シート状基材を複数周回走行させる下流側ローラユニットとを備え、
シート状基材が走行する方向をZ方向、これに直交するシート状基材の幅方向をY方向として、上流側ローラユニット及び下流側ローラユニットの各々は、軸体にローラを外装してなる複数のローラ部をZ方向に間隔を存して配置して構成され、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの各ローラ部をZ方向にずらして各軸体が真空処理室を画成する壁面に軸支されると共に、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとがY方向に隣接配置され、
反転手段は軸体にローラを外装して構成され、軸体は、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの境界で、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの軸体からZ軸方向にずらして上記壁面に軸支されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記真空処理室または当該真空処理室に連設した真空補助室に、処理済みのシート状基材を巻き取る巻取りローラを設け、巻取りローラの上流側でシート状基材に対向させて冷却パネルを設けたことを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のシート状基材を、真空処理室を通して搬送し、この真空処理室でシート状基材に所定の処理を施す真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺で樹脂製のシート状基材は可撓性を有し、加工性も良いことから、その表面に所定の金属膜や酸化物膜等の所定の薄膜を成膜したり、熱処理やプラズマ処理を施したりして電子部品や光学部品とすることが一般に知られ、用途によっては、シート状基材の表裏両面に同一または異なる所定処理を施す場合がある。
【0003】
シート状基材の表裏両面に所定処理を施す装置として、繰出しローラと、巻取りローラと、シート状基材を巻き出して搬送する搬送手段とを備えた搬送室内に、シート状基材の片面(表面)に所定処理を行う一方の処理手段を有する第1の真空処理室と、片面に処理が施されたシート状基材の他面(裏面)に、前記と同一の処理を施す他の処理手段を備えた第2の真空処理室とを夫々連設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
然しながら、上記従来例のものでは、シート状基材の表裏両面への処理を別個の真空処理室で施すため、装置自体が大型化するだけでなく、部品点数も増えてコスト高を招来する。しかも、繰出しローラから繰り出したシート状基材を、両真空処理室を通して、巻取りローラに巻き取るまでの経路が長く、生産性も悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−13473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、装置の小型化が図れて生産性のよい低コストの真空処理装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、長尺のシート状基材を、真空処理室を通して搬送し、この真空処理室に設けた処理ユニットによりシート状基材に所定の処理を施す真空処理装置において、真空処理室に配置される、シート状基材の片面が処理ユニットに対向する姿勢で当該処理ユニットを跨いで当該シート状基材を複数周回走行させる上流側ローラユニットと上流側ローラユニットからのシート状基材の表裏を反転させる反転手段とシート状基材の他面が処理ユニットに対向する姿勢で当該処理ユニットを跨いで当該シート状基材を複数周回走行させる下流側ローラユニットとを備え、シート状基材が走行する方向をZ方向、これに直交するシート状基材の幅方向をY方向として、上流側ローラユニット及び下流側ローラユニットの各々は、軸体にローラを外装してなる複数のローラ部をZ方向に間隔を存して配置して構成され、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの各ローラ部をZ方向にずらして各軸体が真空処理室を画成する壁面に軸支されると共に、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとがY方向に隣接配置され、反転手段は軸体にローラを外装して構成され、軸体は、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの境界で、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの軸体からZ軸方向にずらして上記壁面に軸支されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、互いに隣接配置される2個のローラユニットと反転手段とにより、当初、シート状基材の片面(表面)が処理ユニットに対向した姿勢で周回走行され、この間、処理ユニットによりシート状基材の片面に所定の処理が施される一方で、反転手段を経ると、シート状基材の表裏が反転されて、シート状基材の他面(裏面)が処理ユニットに対向した姿勢で周回走行され、この間、処理ユニットによりシート状基材の他面に所定の処理が施される。即ち、シート状基材が処理ユニットを跨ぐ方向に直交する方向において、シート状基材の片面が処理ユニットに対向するゾーンと、その他面が処理ユニットに対向するゾーンとに分かれてシート状基材が搬送されて所定処理が施されるようになる。
【0009】
このように本発明では、単一の真空処理室内の処理ユニットにより効率よくシート状基材の表裏に同一処理を施すことが可能になる。この場合、上記従来例の如く、複数の処理室を必要とせず、装置の小型化が図れると共に、部品点数を少なくして低コスト化を図ることができる。しかも、シート状基材の表面及び裏面が夫々複数回処理ユニットに対向するように周回走行させれば、シートの搬送速度を向上できる等、生産性もよい。なお、本発明において、処理ユニットには、シート状基材に対して施す所定処理に応じて真空処理室内に設けられる成膜源やスパッタリングカソードなどを同一平面内に複数並設してなるものやローラユニット間を搬送されるシート状基材をその両側から挟むように互いに平行な面内に複数の成膜源やスパッタリングカソードなどを設けてなるものを含む。
【0010】
本発明において、前記反転手段は、上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの境界に存するローラであり、シート状基材が上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとで互いに異なる方向に周回走行されるようにしてもよい。これにより、少ない部品点数で、処理ユニットに対向して周回搬送されるシート状基材をその途中で表裏反転することが実現でき、しかも、同一構造の上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとを用いて処理ユニットを跨ぐシート状基材の本数を上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとの間で簡単に一致させることができる。
【0011】
ところで、例えば、シート状基材を所定温度に加熱した状態で成膜処理を行った後、処理直後のシート状基材を巻取りローラで巻き取ると、シート状基材の処理面が変質する等の不具合が生じる虞がある。このため、例えば、処理後のシート状基材を所定温度以下まで冷却して巻取りローラに巻き取ることになる。この場合、ガイドローラや巻取りローラの回転軸を冷却してシート状基材を熱交換で冷却することが考えられるが、これでは装置構成が複雑になる。
【0012】
そこで、前記真空処理室に巻取りローラが設けられた真空補助室を連設し、この真空補助室内に巻取りローラの上流側でシート状基材に対向させて冷却パネルを設けておけば、当該冷却パネルのシート状基材との対向面が吸熱面としての役割を果たし、シート状基材を効率よく冷却できる。しかも、冷却パネルが、例えば極低温(数十K)に保持されたクライオパネルであるような場合、当該パネルに真空補助室内の水分等が吸着されることで、真空補助室の高真空度保持に寄与し、例えば、真空補助室に設けるポンプを排気能力の低い、低コストのものを用いることができる等、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の真空処理装置の構成を示す模式的断面図。
図2】上流側ローラユニットと下流側ローラユニットとによるシート状基材の搬送を説明する部分拡大斜視図。
図3図1に示す真空処理装置におけるシート状基材の搬送順序を説明する図。
図4】本発明の変形例に係る真空処理装置の構成を示す部分模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、処理ユニットをスパッタリング成膜用のカソードユニットとし、単一の真空処理室内においてシート状基材の表裏両面に同一の成膜処理をする場合を例に、本発明の実施形態の真空処理装置について説明する。
【0015】
図1図3を参照して、SMは本実施形態の真空処理装置である。真空処理装置SMは、図外の真空ポンプで真空引きされる直方体形状の真空処理室1と、この真空処理室1の一側面に連設された真空補助室2とを備え、シート状基材Sを真空補助室2から真空処理室1を通して搬送し、真空処理室1でシート状基材Sに成膜処理し、その後、処理済みのシート状基材Sを真空補助室2にて回収するようになっている。以下においては、真空処理室1と真空補助室2との連接方向をX方向(図1中、左右方向)、X方向に直交する方向であって後述のようにシート状基材Sがカソードユニットのターゲットを跨ぐ方向をY方向(図1中、上下方向)、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向(図2中、上下方向)として説明する。
【0016】
真空処理室1のうち真空補助室2に対向する側壁11には2個のカソードユニット3a、3bがZ方向に所定間隔で並設されている。カソードユニット3a、3bは、同一の構造を有し、シート状基材Sの表裏両面に形成しようとする薄膜の組成に応じて形成されたターゲット31を備える。ターゲット31は矩形に形成され(Y方向に長手となるように配置)、後述のようにターゲット31の真空補助室2側前方を周回走行するシート状基材Sの全体の幅より大きな長さを有するように作製され、バッキングプレート32に接合された状態で真空処理室内に配置される(図2参照)。なお、カソードユニット3a、3b自体は、公知の構造を有するものを利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、図1中、33はアノードリング、34、35は防着板、36はカソードカバーである。
【0017】
真空処理室1には、シート状基材SをZ方向でカソードユニット3a、3bのターゲット31を夫々跨いで搬送する上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5とがY方向に隣接配置されている。上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5とは、図2に示すようにZ方向にずらして(下流側ローラユニット5がZ方向上側に位置する)設けられている以外、同一の構造を有するため、以下では上流側ローラユニット4を例に説明する。上流側ローラユニット4は、X方向及びZ方向に夫々所定間隔で配置された、第1及び第2の両上ローラ部4u、4uと第1及び第2の両下ローラ部4d、4dとを備える。第1及び第2の両上ローラ部4u、4uと第1及び第2の両下ローラ部4d、4dとは、同一の構造に形成され、真空処理室1を画成する側壁12に軸支された軸体41(51)と、この軸体41(51)に等間隔で回転可能に外装した4個のローラ42(52)とから構成され、軸体41の各々が、未使用時のターゲット31のスパッタ面に夫々平行に配置されている。
【0018】
これにより、後述の繰出しローラからのシート状基材Sが最初に巻き掛けられる、第1の上ローラ部4uのうちY方向一側(図2中、最も左側のもの)のローラ42sを最上流のものとし、第2の上ローラ部4u、第2の下ローラ部4d及び第1の下ローラ部4dの順序でY方向一側から他側に向かって各ローラ42に順次巻き掛けると、シート状基材Sの片面がカソードユニット3a、3bに対向する姿勢でシート状基材Sが周回走行するようになる。また、上流側ローラユニット4の第1の下ローラ部4dと、下流側ローラユニット5の第1の下ローラ部5dとの境界でこれらのZ方向下側には反転ローラ(反転手段)6が設けられている。
【0019】
反転ローラ6は、真空処理室1を画成する側壁に軸支された軸体61と、この軸体に回転可能に外装した4個のローラ62とから構成される。そして、第2の下ローラ部4dのうちY方向他側に位置するローラ42eを最下流のものとし、このローラ部42eを経たシート状基材Sが反転ローラ6に巻き掛けられ、下流側ローラユニット5の第2の下ローラ部5dのうちY方向一側のローラ部52sへと送られる。これにより、反転ローラ6は、シート状基材Sの他面がカソードユニット3a、3bに対向する姿勢となるようにシート状基材Sを反転する役割を果たす。
【0020】
下流側ローラユニット5においては、反転ローラ6からのシート状基材Sが最初に巻き掛けられる、第2の下ローラ部5dのうちカソードユニット3a、3b側でY方向一側(図2中、最も左側のもの)ローラ52sを最上流のものとし、カソードユニット3a、3b側に位置する第2の上ローラ部5u、他の上ローラ部5u及び他の下ローラ部5dの順序でY方向一側から他側に向かって各ローラ52に順次巻き掛けると、シート状基材Sの他面がカソードユニット3a、3bに対向する姿勢で、かつ、上流側ローラユニット4におけるシート状基材Sの周回方向と逆方向にシート状基材Sが周回走行するようになる。また、真空処理室1内には、シート状基材Sを上流側ローラユニット4に案内したり、下流側ローラユニット5から送り出されるシート状基材Sを案内したりするために、テンデンシーローラTRとガイドローラGRとが設けられている。
【0021】
真空補助室2は、真空処理室1と同様、図外の真空ポンプで真空引きされ、その内部には、図示省略の駆動源を備えた繰出しローラ7と、図示省略の駆動源を備えた巻取りローラ8とが設けられている。繰出しローラ7の下流側及び巻取りローラ8の上流側には、シート状基材Sのテンションを測定する測定器9a、9bが設けられ、この測定器9の測定結果に応じて、繰出しローラ7や巻取りローラ8の回転速度が適宜制御されるようになっている。なお、図1中、GRはガイドローラである。以下に、真空補助室2内の繰出しローラ7から繰り出し、真空処理室1を通した後、巻取りローラ8に巻き取るまでのシート状基材Sの搬送を説明する。
【0022】
繰出しローラ7から繰り出したシート状基材Sは、ガイドローラGRにより案内されて、真空処理室1と真空補助室2とを隔絶する隔壁13に形成したZ方向下側の透孔14aを通って真空処理室1に送られる。真空処理室1において、シート状基材Sは、ガイドローラGRとテンデンシーローラTRとに案内されて、上流側ローラユニット4のうち第1の上ローラ部4uの最上流のローラ42sに隔壁13側から先ず巻き掛けられる。そして、夫々Y方向一側に位置する、第2の上ローラ部4uのローラ42及び第2の下ローラ部4dのローラ42にカソードユニット3a、3b側から巻き掛けられた後、第1の下ローラ部4dのローラ42に隔壁13側から巻き掛けられる。これをY方向他側に向けて順次繰り返すようにして各ローラ42に巻き掛けられる。
【0023】
次に、第2の下ローラ部4dのうちY方向他側のローラ42eを経ると、シート状基材Sが反転ローラ6へと送り出され、この反転ローラ6にカソードユニット3a、3b側から巻き掛けられる(この場合、第1の下ローラ部4dのうちY方向他側のローラ42fは使用しない)。そして、反転ローラ6から送り出されたシート状基材Sは、下流側ローラユニット5の第2の下ローラ部5dのうちY方向一側面するローラ52sに、カソードユニット3a、3b側から巻き掛けられる。これにより、反転ローラ6は、シート状基材Sの他面がカソードユニット3a、3bに対向する姿勢となるようにシート状基材Sを反転する役割を果たす。そして、Y方向一側に位置する第2の上ローラ部5uのローラ52にカソードユニット3a、3b側から巻き掛け、第1の上ローラ部5uのローラ52に隔壁13側から巻き掛けられた後、第1の下ローラ部5dのうちY方向一側に位置するローラ52fを使用せずに、このローラ52fに隣接するローラ52に隔壁13側から巻き掛けられる。これをY方向他側に向けて順次繰り返すようにして各ローラ52に巻き掛けられる。第1の上ローラ部5uのうちY方向他側のローラ52eを経ると、シート状基材Sは、ガイドローラGRとテンデンシーローラTRとに案内されて、隔壁13に形成したZ方向上側の透孔14bを通って真空補助室2に再度送られる。最後に、ガイドローラGRにより案内されてシート状基材Sが巻取りローラ8に巻き取られる。
【0024】
上記実施形態によれば、互いに隣接配置される2個のローラユニット4、5と反転ローラ6とにより、シート状基材Sが上流側ローラユニット4を搬送される間、シート状基材Sの片面(表面)がカソードユニット3a、3bに対向した姿勢で周回走行され、この間、カソードユニット3a、3bを作動させてターゲット31をスパッタリングすることで、シート状基材Sの片面に所定の薄膜が成膜される。他方で、反転ローラ6を経てシート状基材Sが下流側ローラユニット5を搬送される間、シート状基材Sの他面(裏面)がカソードユニット3a、3bに対向した姿勢で、第1のローラユニット4でのシート状基材Sの周回方向と逆方向に周回走行され、この間、シート状基材Sの他面(裏面)に所定の薄膜が成膜される。即ち、カソードユニット3a、3bのターゲットのスパッタ面を、Y方向においてシート状基材Sの片面が対向するゾーンとその他面が対向するゾーンとに分かれてシート状基材Sが搬送しながら成膜されるようになる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態では、単一の真空処理室1内のカソードユニット3a、3bにより効率よくシート状基材Sの表裏に同一の薄膜を成膜することが可能になる。この場合、上記従来例の如く、複数の処理室を必要とせず、装置の小型化が図れると共に、部品点数を少なくして低コスト化を図ることができる。しかも、シート状基材Sの表面及び裏面が夫々複数回処理ユニットに対向するように周回走行させたため、シート状基材Sの搬送速度を向上できる等、生産性もよい。しかも、上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5との境界に存する反転ローラ6によりシート状基材Sを反転させ、シート状基材Sが上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5とで互いに異なる方向に周回走行されるようにしたため、少ない部品点数で、同一構造の上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5とを用いてカソードユニット3a、3bを跨ぐシート状基材Sの本数を上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5との間で一致させることができる。
【0026】
ところで、例えば、シート状基材Sを成膜処理する場合、用途によっては、繰出しローラ7の下流側に加熱手段(図示せず)を設け、成膜処理前にシート状基材Sを所定温度に加熱し、この状態で成膜処理を行う場合がある。このような場合に、処理直後のシート状基材Sを巻取りローラ8で巻き取ると、シート状基材Sに成膜した膜が変質する等の不具合が生じる虞がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、巻取りローラ8の上流側でシート状基材Sに対向させてクライオパネル(冷却パネル)CPを設けている(図1参照)。クライオパネルCPは、例えば、閉サイクルのヘリウム冷凍機等、公知の構図の冷凍ユニットCP1を備え、冷凍ユニットCP1からの冷媒で極低温(例えば、数十K)に保持されるようになっている。この場合、クライオパネルCPのシート状基材Sとの対向面は、シート状基材Sより幅広に形成されている。これにより、クライオパネルCPのシート状基材Sとの対向面が吸熱面としての役割を果たし、シート状基材Sを効率よく冷却することができる。しかも、クライオパネルCPに真空補助室2内の水分等が吸着されることで、真空補助室2の高真空度保持に寄与し、例えば、真空補助室2に設けるポンプを排気能力の低い、低コストのものを用いることができる等、有利である。また、クライオパネルCPをガイドローラに対向させて設置し、ガイドローラ自体を冷却してシート状基材Sを冷却するようにしてもよい。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、冷却パネルとしてクライオパネルCPを用いるものを例に説明しているが、シート状基材Sから吸熱して冷却し得るものであれば、これに限定されるものではない。また、冷却パネルを用いた本発明のシート状基材Sの冷却方法は、上記実施形態の真空処理装置だけでなく、上記従来例のような構造のものを含む他の巻取り式の真空処理装置全般に広く適用可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、処理ユニットとしてカソードユニット3a、3bを用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、抵抗加熱式蒸発源やCVD法によるものを用いることができ、また、成膜源以外でプラズマガス等を設けて表面処理するような処理ユニットでも本発明は適用できる。また、上記実施形態では、同一平面内に2個のカソードユニット3a、3bをZ方向に並設して処理ユニットとしたものを例に説明したが、処理ユニットを構成するものの数や取付位置は上記に限定されるものではない。例えば、図4に示すように、上流側ローラユニット4及び下流側ローラユニット5を搬送されるシート状基材Sをその両側から挟むように、互いに平行な壁面にスパッタリング用のカソードユニット30a、30bを夫々設けてもよい。この場合、両カソードユニット30a、30bの各ターゲットを異なる材料製とし、両カソードユニット30a、30bを、上流側ローラユニット4にのみ対向するものと、下流側ローラユニット5にのみ対向するようにY方向にずらしておけば、シート状基材Sの両面に異なる膜を成膜するようにできる。
【0030】
更に、上記実施形態では、上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5とを夫々4個のローラ部で構成したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、Z方向に対をなして設けた2個のローラ部で構成することもできる。また、上流側及び下流側の各ローラユニット4、5の構成は上記のものに限定されるものではなく、例えば、各ローラ42、52の個数や大きさはシート状基材Sの幅等を考慮して適宜設定できる。更に、上流側ローラユニット4と下流側ローラユニット5との境界に存する反転ローラ6により反転手段を構成したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上流側ローラユニット4の第2の下ローラ部4dのうち隔壁13側でY方他側に位置するローラ42までシート状基材Sを巻き掛けた後、下流側ローラユニット5の第1の上ローラ部5uのうちカソードユニット側でY方一側に位置するローラ52sに、隔壁13側から巻き掛けてシート状基材Sが表裏反転するようにしてもよい。この場合、2個のローラが反転手段を構成する。
【0031】
また、上記実施形態では、真空処理装置SMを最も小型化できるように、1つの真空補助室2に繰出しローラ7と巻取りローラ8とを設けたものを例に説明したが、装置のレイアウトはこれに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば、真空処理室1の相互に対向する側面に夫々真空補助室を連設し、上流側の真空補助室に設けた繰出しローラから、真空処理室1を通して、下流側の真空補助室に設けた巻取りローラに巻き取るようにシート状基材を搬送してもよい。
【符号の説明】
【0032】
SM…真空処理装置、1…真空処理室、2…真空補助室、3a、3b…カソードユニット(処理ユニット)、4…上流側ローラユニット、4u、4u、4d、4d…ローラ部(上流側ローラユニット)、41…軸体(上流側ローラユニット)、42…ローラ(上流側ローラユニット)、5…下流側ローラユニット、5u、5u、5d、5d…ローラ部(下流側ローラユニット)、51…軸体(下流側ローラユニット)、52…ローラ(下流側ローラユニット)、6…反転ローラ(反転手段)、7…繰出しローラ、8巻取りローラ、CP…クライオパネル(冷却パネル)、S…シート状基材。
図1
図2
図3
図4