【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィドに、少なくともカーボンナノチューブ及び金属ケイ素粉末を含んでなるポリアリーレンスルフィド組成物とすることで、高い熱伝導性を有すると共に、機械的強度に優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、少なくとも
、平均単繊維直径1〜100nm、平均単繊維長1〜200μmのカーボンナノチューブ(B)1〜70重量部及び金属ケイ素粉末(C)15〜250重量部を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
【0010】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、少なくともカーボンナノチューブ(B)1〜70重量部及び金属ケイ素粉末(C)15〜250重量部を含んでなるものである。
【0012】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)としては、ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよく、その中でも、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が機械的強度、成形加工性に優れたものとなることから測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着する高化式フローテスターで測定した溶融粘度50〜3000ポイズを有するポリアリーレンスルフィドが好ましく、特に60〜1500ポイズを有するポリアリーレンスルフィドが好ましい。
【0013】
該ポリアリーレンスルフィド(A)としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位等からなるものを挙げることができ、その中でもp−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらにポリ(p−フェニレンスルフィド)が好ましい。
【0014】
該ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば一般的に知られている重合溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応する方法により製造することが可能であり、アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びそれらの混合物が挙げられ、これらは水和物の形で使用しても差し支えない。これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基とを反応させることによって得られ、ジハロ芳香族化合物の重合系内への添加に先立ってその場で調製されても、また系外で調製されたものを用いても差し支えない。また、ジハロ芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニル等が挙げられる。また、アルカリ金属硫化物及びジハロ芳香族化合物の仕込み比は、アルカリ金属硫化物/ジハロ芳香族化合物(モル比)=1.00/0.90〜1.10の範囲とすることが好ましい。
【0015】
重合溶媒としては、極性溶媒が好ましく、特に非プロトン性で高温でのアルカリに対して安定な有機アミドが好ましい溶媒である。該有機アミドとしては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素及びその混合物、等が挙げられる。また、該重合溶媒は、重合によって生成するポリマーに対し150〜3500重量%で用いることが好ましく、特に250〜1500重量%となる範囲で使用することが好ましい。重合は200〜300℃、特に220〜280℃にて0.5〜30時間、特に1〜15時間攪拌下にて行うことが好ましい。
【0016】
さらに、該ポリアリーレンスルフィド(A)は、直鎖状のものであっても、酸素存在下高温で処理し、架橋したものであっても、トリハロ以上のポリハロ化合物を少量添加して若干の架橋または分岐構造を導入したものであっても、窒素等の非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。
【0017】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するカーボンナノチューブ(B)は、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する材料のことである。単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また部分的にカーボンナノチューブの構造を有している炭素材料も使用できる。また、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
【0018】
該カーボンナノチューブ(B)の製造方法としては、例えば炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法(アーク放電法)、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法(レーザー蒸発法)、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法(気相成長法)等が挙げられるが、これら製法に限定されるものではない。また、製造方法の違いによって得られる該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維直径、平均単繊維長、形態(針状、コイル状、チューブ状等)等が変化するが、いずれのものも使用することができる。
【0019】
該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維直径としては、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れるものとなることから、1〜100nmであることが好ましく、1〜70nmであることが特に好ましい。また、該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維長は、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れるものとなることから、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることが特に好ましい。
【0020】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するカーボンナノチューブ(B)の配合量は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、1〜70重量部であり、ポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、溶融流動性のバランスに特に優れたものとなることから、5〜60重量部であることが好ましく、5〜50重量部であることが特に好ましい。該カーボンナノチューブ(B)の配合量が1重量部未満である場合、得られる組成物は熱伝導性に劣るものとなる。一方、該カーボンナノチューブ(B)の配合量が70重量部を越える場合、得られる組成物は溶融流動性、成形加工性に劣るものとなる。
【0021】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成する金属ケイ素粉末(C)としては、従来から知られ販売されている金属ケイ素の粉末でよく、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能である。該金属ケイ素粉末(C)におけるケイ素含有率は、特に制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ケイ素含有率が95重量%以上であるものが好ましく、特に98重量%以上であるものが更に好ましい。また、該金属ケイ素粉末(C)は、特に機械的強度、熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D
50)が1μm以上であるものが好ましい。
【0022】
該金属ケイ素粉末(C)の形状に特に制限なく、例えば樹枝状粉、片状粉、角状粉、球状粉、粒状粉、針状粉、不定形状粉、海綿状粉等のいずれの形状を有していてもよく、また、これら形状の混合物であっても良い。該金属ケイ素粉末(C)の製造方法としては、例えば電解法、機械的粉砕法、アトマイズ法、熱処理法、化学的製法等が挙げられ、これらの製法に制限されるものではない。
【0023】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成する金属ケイ素粉末(C)の配合量は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、15〜250重量部であり、ポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、溶融流動性のバランスに特に優れたものとなることから、30〜230重量部であることが好ましく、50〜200重量部であることが特に好ましい。該金属ケイ素粉末(C)の配合量が15重量部未満である場合、得られる組成物は熱伝導性に劣るものとなる。一方、該金属ケイ素粉末(C)の配合量が250重量部を越える場合、得られる組成物は機械的強度、溶融流動性、成形加工性に劣るものとなる。
【0024】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、熱伝導性、機械的強度がより優れるとともに、熱伝導率や熱膨張率の異方性の小さいものとなることから、さらに、炭素繊維(D1)、黒鉛(D2)、ケイ素とマグネシウムの複酸化物及び/又はアルミニウムとマグネシウムの複酸化物で被覆された被覆酸化マグネシウム粉末(D3)(以下、単に被覆酸化マグネシウム粉末(D3)と記す。)、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトであって炭酸マグネシウム含有率が98〜99.999重量%である高純度マグネサイト粉末(D4)(以下、単に高純度マグネサイト粉末(D4)と記す。)並びに六方晶構造を有する鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)(以下、単に鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)と記す。)からなる群より選択される少なくとも1種以上の熱伝導性フィラー(D)を配合してなることが好ましい。
【0025】
該熱伝導性フィラー(D)として選択される炭素繊維(D1)は、炭素繊維の範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能である。該炭素繊維(D1)としては、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れたものとなることから、繊維長20μm〜8mm、繊維径2〜20μmの炭素繊維であることが好ましい。該炭素繊維(D1)としては、例えばピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、ポリビニルアルコール系炭素繊維、セルロース系炭素繊維等の何れを用いても良く、好ましくはピッチ系炭素繊維である。
【0026】
該炭素繊維(D1)の熱伝導率については何ら制限を受けることなく用いることが可能であり、その中でも特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、熱伝導率が100W/mK以上の炭素繊維であることが好ましく、特に500W/mK以上の炭素繊維であることが好ましい。
【0027】
該熱伝導性フィラー(D)として選択される黒鉛(D2)は、黒鉛の範疇に属するものであれば特に制限を受けるものではない。黒鉛には大別して、天然黒鉛と人造黒鉛があり、天然黒鉛には土状黒鉛、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等があり、これら何れのものを用いても良い。該黒鉛(D2)の固定炭素含有量について、何ら制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、固定炭素含有量が95%以上である黒鉛が好ましい。また、該黒鉛(D2)の粒子径は、何ら制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、一次粒子での平均粒子径0.5〜400μmを有する黒鉛が好ましい。
【0028】
該熱伝導性フィラー(D)として選択される被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、ケイ素とマグネシウムの複酸化物及び/又はアルミニウムとマグネシウムの複酸化物で被覆された被覆酸化マグネシウム粉末であり、該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば特開2004−027177号公報に記載の方法より入手することが可能である。また、ケイ素とマグネシウムの複酸化物とは、フォルステライト(Mg
2SiO
4)等に代表されるケイ素、マグネシウム及び酸素を含む金属酸化物、又は、酸化マグネシウムと酸化ケイ素の複合物である。一方、アルミニウムとマグネシウムの複酸化物とは、スピネル(Al
2MgO
4)等に代表されるアルミニウム、マグネシウム及び酸素を含む金属酸化物、又は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの複合物である。該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤でさらに表面処理されたものであってもよく、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等が挙げられ、アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。また、該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、特に機械的特性、熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D
50)1〜500μmを有するものであることが好ましく、特に3〜100μmを有するものであることが好ましい。
【0029】
該熱伝導性フィラー(D)として選択される高純度マグネサイト粉末(D4)は、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトであって炭酸マグネシウム含有率が98〜99.999重量%である高純度マグネサイト粉末であり、該条件を満たすものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能である。該高純度マグネサイト粉末(D4)としては、合成品と天産品とがあり、これらの何れを用いても良く、(商品名)合成マグネサイトMSHP(神島化学工業(株)製)等を好ましい例として挙げることができる。また高純度マグネサイト粉末としては、特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D
50)1μm以上であるものが好ましく、特に10μm以上であるものが好ましい。該高純度マグネサイト粉末(D4)は、必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤でさらに表面処理されたものであってもよく、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等が挙げられ、アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0030】
該熱伝導性フィラー(D)として選択される鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)は、六方晶構造を有するものであり、該条件を満たすものであれば如何なるものを用いることが可能であり、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)としては、例えば粗製窒化ホウ素粉末をアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩の存在下、窒素雰囲気中、2000℃×3〜7時間加熱処理して、窒化ホウ素結晶を十分に発達させ、粉砕後、必要に応じて硝酸等の強酸によって精製することにより製造することができ、この様にして得られた窒化ホウ素粉末は、通常、鱗片状を有するものである。そして、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)としては、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物中における分散性に優れ、機械的特性の優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D
50)3〜30μmを有するものであることが好ましい。また、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)は、高結晶性を示し、特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物とすることが可能となることから、粉末X線回折法で求められる、(102)回折線の積分強度値(I
(102))に対する、(100)回折線及び(101)回折線の積分強度値の和(I
(100)+(101))の比で示されるG.I値(G.I=(I
(100)+(101))/(I
(102)))が0.8〜10の範囲となるものであることが好ましい。
【0031】
該熱伝導性フィラー(D)の配合量は、特に熱伝導性、機械的強度が優れるとともに、熱伝導率や熱膨張率の異方性の小さいポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対して、10〜200重量部であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、溶融流動性がより優れ、成形加工性にも優れるものとなることから、多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)を配合してなることが好ましい。
【0033】
該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)は、多価アルコールと縮合ヒドロキシ脂肪酸とを反応して得られるエステルである。該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)としては、例えばポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ショ糖縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ソルビトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、マンニトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルなどが挙げられ、より具体的には、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、オクタグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、ペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物として利用される。なかでも縮合リシノレイン酸又は縮合12−ヒドロキシステアリン酸と重合度が2〜10のポリグリセリンとのエステルが好ましく、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、オクタグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0034】
該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)の配合量は、特に溶融流動性、成形加工性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましい。
【0035】
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の1種以上を混合して使用することができる。
【0036】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に制限されるものではなく、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
【0037】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、繊維状及び/又は非繊維状の補強材を使用できる。繊維状の補強材としては、例えばガラス繊維、ボロン繊維等を挙げることができる。また、非繊維状の補強材としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、タルク、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスビーズ、ガラスパウダー等が挙げられる。これらの補強材は2種以上を併用することができ、必要によりシラン系、チタン系カップリング剤で表面処理をして使用することができる。より好ましい非繊維状補強材としては炭酸カルシウム、タルクを挙げることができる。
【0038】
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
【0039】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、発熱性の高い半導体素子、抵抗などの封止用樹脂、あるいは高い摩擦熱が発生する部品に特に好適である他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、抵抗器、リレーケースなどの電気機器部品用途に特に適している他、センサー、LEDランプ、コネクター、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板など)、DVD部品(光ピックアップなど)、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などの各種用途にも適用できる。