(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心部に作動液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなる口金具と、
前記ソケット部を外周側から加締めることにより、前記ニップル部と前記ソケット部との間に固定されるホース体とを備え、
前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し、
前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められた、
液圧配管用ホース。
中心部にブレーキ液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなる口金具と、
前記ソケット部を外周側から加締めることにより、前記ニップル部と前記ソケット部との間に固定されるホース体とを備え、
前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し、
前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められた、
ブレーキホース。
中心部に作動液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなり、
前記ソケット部と前記ニップル部との間には、前記作動液を流通させるホース体の一端部が収容される環状空間が形成され、
前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し、
前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められる、
ホース用口金具。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両のディスクブレーキ装置を構成するブレーキキャリパとマスタシリンダとを接続し、運転者のブレーキ操作によってマスタシリンダで発生する液圧をブレーキキャリパに伝達してディスクブレーキ装置を作動させるブレーキホースが広く用いられている。この種のブレーキホースは、ブレーキ液を流通させる管状のホースと、ホースの両端に設けられた口金具とから構成されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載の口金具は、円筒状のソケットと、このソケットの内側に組み付けられたニップルとを有している。このニップルの外周には、ホース抜け止め用の複数の溝が周設されている。また、ホースは、その端部がソケットとニップルとの間に挿入され、ソケットの加締めによって口金具に固定されている。
【0004】
ニップルに周設された複数の溝は、ホースの抜け止めと共に、加締めに伴うホースの肉の流動によってブレーキ液の流路が狭くなること(内径閉塞)の抑制にも寄与している。つまり、複数の溝により、加締めに伴うホースの肉の流動が抑えられている。特許文献2では、この加締めに伴って発生したホースの内径側への膨出部を「バルジ」と称している。この複数の溝は、ニップルをソケットに組み付ける前に、ニップルに対して切削等の機械加工を行うことにより形成することができる。
【0005】
ところで、本出願人は、ホース用口金具の製造方法として、素材に金属材料の引張試験方法(JIS Z 2241)における絞りが75%以上の鋼材を用い、ホース用口金具の一端側におけるソケット部、ニップル部、及びニップル部の軸孔を塑性加工により成形する第1工程と、ホース用口金具の他端側における頭部を機械加工により仕上げる第2工程とを備えた製造方法を提案している(特許文献3参照)。
【0006】
この製造方法におけるニップル部及び軸孔の成形方法の詳細は次のとおりである。すなわち、ソケット部の内方に形成された軸状の突起部分を有する中間成形品をダイスに固定し、パンチを備えたガイドホルダをソケット部の内方に軸方向に挿入し、そのパンチを突起部分に圧入して、後方押出しにより細径のパイプ状のニップル部を成形する。これにより、ニップル部及び軸孔が塑性加工により成形される。
【0007】
そして、この製造方法によれば、量産性を向上させると共にニップル部の強度を確保でき、塑性加工後に焼きなまし等の熱処理を行うことなく加締めを行ってもソケット部に割れの生じないホース用口金具を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3に記載の製造方法では、特許文献1,2に記載された複数の溝をニップル部の外周に形成することができない。つまり、パンチを軸方向に圧入してニップル部を形成する成型方法のみでは、ニップル部の外周に径方向に窪む環状の溝を形成することができないので、このような溝を形成するためには、別途ニップル部に対して切削や転造等の加工を行う必要がある。しかし、外周側にソケットが一体に形成された状態でこのような加工を行うことは、実際上困難である。
【0010】
また、近年では、制動時における車輪のロックを抑制するアンチ・ロック・ブレーキシステムや、旋回時等における車両の横滑りを抑制するESC(Electronic Stability Control)システムの普及によってブレーキ液の最大液圧が上昇しており、この最大液圧に耐えるブレーキホースが求められている。また、例えばクレーン車やショベルカー等の重機や工作機械用の液圧配管用ホースでは、ブレーキホースよりもさらに高い液圧に耐えることが必要な場合がある。
【0011】
このようなブレーキホースや液圧配管用ホースでは、ホースの抜けや液漏れを防ぐため、加締めの圧力を高くする必要があり、加締めの圧力を高くすると、ホースの肉の流動、すなわちバルジ(ホースの内径側への膨出部)の発生によって、ブレーキ液等の作動液の流路が狭くなるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、ニップル部の外周に複数の溝を設けることなく、塑性加工によるニップル部の成型を可能としながら、加締めに伴う作動液の流路の狭小化を抑制することが可能な液圧配管用ホース、ブレーキホース、及びホース用口金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、中心部に作動液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなる口金具と、前記ソケット部を外周側から加締めることにより、前記ニップル部と前記ソケット部との間に固定されるホース体とを備え、前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し
、前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められた、液圧配管用ホースを提供する。
【0015】
また、前記小径部の軸方向長さは、前記ニップル部の前記他端から前記大径部の加締め位置までの軸方向距離の35〜75%であるとよい。
【0016】
また、前記小径部の外径寸法は、前記大径部の外径寸法の80〜99.9%であるとよい。
【0017】
また、前記小径部の外径寸法は、前記大径部の外径寸法の90〜98%であるとよい。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、中心部にブレーキ液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなる口金具と、前記ソケット部を外周側から加締めることにより、前記ニップル部と前記ソケット部との間に固定されるホース体とを備え、前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し
、前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められた、ブレーキホースを提供する。
【0019】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、中心部に作動液の流路が形成された円筒状のニップル部、前記ニップル部の外周に形成されたソケット部、及び前記ニップル部と前記ソケット部とを連結する連結部を一体に有してなり、前記ソケット部と前記ニップル部との間には、前記作動液を流通させるホース体の一端部が収容される環状空間が形成され、前記ニップル部は、前記連結部に接続された一端とその反対側の他端との間に、前記他端から前記一端に向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部と、前記第1の円筒部と前記連結部との間に形成され、前記第1の円筒部の外径よりも大きな外径を有する第2の円筒部とを有し
、前記ソケット部は、前記第2の円筒部の外周側のみにて加締められる、ホース用口金具を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ニップル部の外周に複数の溝を設けることなく、塑性加工によるニップル部の成型を可能としながら、加締めに伴う作動液の流路の狭小化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る液圧配管用ホース、ブレーキホース、及びホース用口金具の構成例、ならびにその製造方法を、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0023】
図1は、液圧配管用ホースの一例としてのブレーキホースを示す断面図である。このブレーキホース1は、管状のホース体2と、ホース体2の両端部に設けられた一対の口金具3(ホース用口金具)とを有している。一方の口金具3は、例えばブレーキキャリパに接続され、他方の口金具3は、例えばマスタシリンダに接続される。そして、ブレーキホース1は、マスタシリンダで発生した圧力を、ブレーキ液を作動液としてブレーキキャリパに伝達し、車両のブレーキ装置を作動させる。
【0024】
なお、本実施の形態では、一対の口金具3が同形状である場合について説明するが、一方の口金具3が他方の口金具3と異なる形状であってもよい。口金具3としては、
図1に例示する雌型の他、雄型や、一端部がリング状に形成された所謂メガネ型であってもよい。あるいは、ホース体同士を接続する中間金具であってもよい。
【0025】
口金具3は、中心部に車両のブレーキを作動させるブレーキ液の流路310が形成された円筒状のニップル部31、ニップル部31の外周に形成されたソケット部32、ニップル部31とソケット部32とを連結する連結部33、及び内周面に雌螺子340が形成された円筒状の頭部34を一体に有している。
【0026】
ソケット部32とニップル部31との間には、ホース体2の一端部が収容される環状空間3aが形成されている。ホース体2は、ソケット部32を外周側から加締めることにより、ニップル部31とソケット部32との間に固定されている。
【0027】
口金具3を製造するために用いられる加工用素材の材質としては、塑性加工、特に冷間鍛造に適するように、脆化防止のため冷間圧造用炭素鋼もしくはその相当品を用いることが好ましい。また、この材質は、JIS Z 2241に定義される金属材料の引張試験方法における絞りが75%以上であることが望ましい。またさらに、加工用素材の硬度は、ビッカーズ硬さ100〜300HVであるとよい。具体的には、例えばJIS規格(JIS G 3539)のSWCH6Aを採用することができる。
【0028】
図2は、口金具3の構成を示し、(a)は口金具3の全体断面図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【0029】
連結部33は、その外周部に、ソケット部32の外周面32bよりも突出した鍔部331を有している。また、連結部33の中心部には、ニップル部31の流路310に連通する流路330が形成されている。この流路330は、頭部34の内部に開口している。
【0030】
ソケット部32は、ニップル部31の外径よりも大きな寸法の内径を有する円筒状であり、その内周面32aは、ニップル部31の外周面31bに対向している。ニップル部31の内周面31aは、流路310の内壁として形成されている。また、ソケット部32とニップル部31とは、中心軸を共有して同軸上に配置されている。ソケット部32とニップル部31との間には、軸方向の一方に開口し、この開口からホース体2の一端部が挿入される環状空間3aが形成されている。
【0031】
ニップル部31の軸方向の一端31c及びソケット部32の軸方向の一端32cは、連結部33に接続されている。また、この一端31c,32cの反対側であるニップル部31の他端31dとソケット部32の他端32dとの間の隙間は、環状空間3aの開口を形成している。
【0032】
なお、
図2に示す構成例では、口金具3の軸方向におけるニップル部31の他端31dの位置とソケット部32の他端32dの位置とが一致している場合を例示しているが、他端31dと他端32dの位置が軸方向にずれていてもよい。
【0033】
図2(a)及び(b)に示すように、ニップル部31は、その一端31cと他端31dとの間に、他端31dから一端31cに向かって所定の範囲に形成された第1の円筒部としての小径部312と、小径部312と連結部33との間に形成され、小径部312の外径寸法d
2よりも大きな外径寸法d
1を有する第2の円筒部としての大径部311とを有している。
【0034】
つまり、ニップル部31は、互いに外径が異なる大小2つの円筒部からなり、この2つの円筒部のうち、外径が小さい第1の円筒部としての小径部312が、外径の大きい第2の円筒部としての大径部311よりも他端31d側に形成されている。
【0035】
大径部311の外径寸法d
1及び小径部312の外径寸法d
2は、それぞれの全長に亘って実質的に同一である。また、大径部311と小径部312との間には、ニップル部31の中心軸に平行な直線に対して直交するように形成された段差面313aを有する段差部313が形成されている。
【0036】
小径部312における段差部313とは反対側の端部は、ニップル部31の他端31dとなっている。すなわち、大径部311の外周面311bを軸方向に延長した仮想面と小径部312の外周面312bとの間に形成される円筒状の空間は、ニップル部31の他端31dにおいて軸方向に開放されている。これにより、口金具3をニップル部31の他端31d側から見たとき、観者は段差部313の段差面313aの全周を視認し得ることとなる。換言すれば、ニップル部31は、段差部313よりも他端31d側の部分(小径部312)が、その軸方向の全体に亘って大径部311よりも縮径されている。
【0037】
小径部312の外径寸法d
2は、大径部311の外径寸法d
1の80〜99.9%(80%以上かつ99.9%以下、0.8≦d
2/d
1≦0.999)であることが望ましい。この割合が80%以下であると、小径部312の強度が低くなる。また、この割合が99.9%以上であると、小径部312を大径部311よりも小径としたことによる効果を十分に発揮することができない。
【0038】
外径寸法d
2の外径寸法d
1に対する割合のより望ましい範囲は、90〜98%(90%以上かつ98%以下、0.9≦d
2/d
1≦0.98)である。この範囲であれば、小径部312の強度を保ちながら、十分な効果を得ることができる。
【0039】
また、大径部311と小径部312との間の段差寸法Δd(Δd=(d
1−d
2)/2)は、例えば0.05〜0.6mmである。
【0040】
図3は、口金具3のソケット部32をその外周側から加締めることにより、ニップル部31との間の環状空間3aに収容されたホース体2を口金具3に固定した状態を示し、(a)は口金具3及びホース体2の断面図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【0041】
図3に示す例では、ソケット部32に複数(2つ)の加締め部が形成されている。以下、これらの加締め部を、「第1の加締め部321」及び「第2の加締め部322」と称する。第1の加締め部321は、複数の加締め部のうち最も他端32d側に形成され、第2の加締め部322は、第1の加締め部321とソケット部32の一端32cとの間に形成されている。
【0042】
なお、
図3に示す例では、第1の加締め部321と第2の加締め部322との間におけるソケット部32の内周面32aが外周側に膨らんでいるが、第1の加締め部321と第2の加締め部322との間における内周面32aが平坦な面に形成されていてもよい。また、第1の加締め部321とソケット部32の一端32cとの間にさらに1つ以上の加締め部が形成されていてもよい。
【0043】
第1の加締め部321は、ニップル部31の大径部311の外周側に形成されている。すなわち、ソケット部32は、大径部311の外周側にて加締められている。より具体的には、第1の加締め部321の先端部321a(内周側に突出した最小内径部)、及び第2の加締め部322の先端部322aが、共に大径部311の外周側に位置している。そして、小径部312の外周側には加締め部が形成されていない。つまり、第1の加締め部321の先端部321a及び第2の加締め部322の先端部322aは、共に段差部313よりもソケット部32の一端32c側に位置している。
【0044】
また、小径部312の軸方向長さL
1は、ニップル部31の他端31dから大径部311の第1の加締め部321の先端部321aの位置までの軸方向距離L
2の35〜75%(35%以上かつ75%以下、0.35≦L
1/L
2≦0.75)であることが望ましい。この割合が75%以上であると、ソケット部32の加締めによる圧力の一部が薄肉の小径部312に作用するので好ましくない。また、この割合が35%以下であると、小径部312を大径部311よりも小径としたことによる効果を十分に発揮することができない。軸方向長さL
1は、例えば1.5〜2.5mmである。
【0045】
このように形成されたブレーキホース1では、ニップル部31の他端31dの近傍における環状空間3aの外部に、加締めによってホース体2の一部が膨出したバルジ2aが形成される。このバルジ2aは、小径部312の外周面312bよりも内方に膨出しているが、バルジ2aは、ニップル部31の内周面31aより内側には張り出していない。
【0046】
図4は、ホース体2の構成例を示す断面図である。ホース体2は、その内側から、内層ゴム層21、第1補強層22、中間ゴム層23、第2補強層24、及び外層ゴム層25を、この順序に積層して構成されている。第1補強層22及び第2補強層24は、補強用の繊維を編み込んだ編組層である。
【0047】
内層ゴム層21、中間ゴム層23、及び外層ゴム層25の材質としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソブチレンゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等を用いることができる。また、ゴムの代わりにポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテリフタレート(PET)、エチレンビニルアルコールポリマー(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、テトラフルオロエチレンなどの樹脂を用いても良い。
【0048】
また、第1補強層22及び第2補強層24の繊維材料としては、例えばPET(ポリエステル)繊維、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアクリレート繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンペンズビスオキサゾール繊維、ポリイミド繊維またはポリフェニレンサルファイド繊維のような合成繊維の他、レーヨンやノボラックのような化学繊維、あるいは綿や麻のような天然繊維を用いることができる。
【0049】
(口金具3の製造方法)
次に、口金具3の製造方法について説明する。口金具3は主として塑性加工によって成型される。以下に述べる塑性加工は、常温で行われる冷間鍛造である。
【0050】
図5(a)〜(e)は、口金具3の一連の製造工程の一例を示す図である。口金具3を製造するに際しては、まず
図5(a)に示すように、SWCH6A等の金属素材を円柱状に成型した出発部材40を用意し、この出発部材40を塑性加工することにより、
図5(b)に示す第1中間成型品41を形成する。この第1中間成型品41には、ソケット部32となる外側円筒部411が形成されると共に、その内方の軸心位置に突起部412が形成されている。
【0051】
次に、第1中間成型品41をさらに塑性加工することにより、第2中間成形品42を形成する。第2中間成形品42には、鍔部331となる環状突起421と、窪み部422が新たに形成されている。窪み部422を含む第2中間成形品42の一端部は、頭部34となる。
【0052】
次に、第2中間成形品42をさらに塑性加工することにより、第3中間成形品43を形成する。第3中間成形品43には、突起部412が変形した、ニップル部31となる内側円筒部431が形成されている。この加工では、例えば第2中間成形品42をダイスに固定し、パンチを備えたガイドホルダを外側円筒部411の内方に圧入する。このパンチは、ニップル部31の大径部311及び小径部312に対応する形状を有している。
【0053】
このパンチの圧入により、中央部に貫通孔431aを有する内側円筒部431が形成される。内側円筒部431の外周面には段差部431bが形成され、この段差部431bよりも根元側が大径部311となる第1円筒部431cであり、段差部431bよりも先端側が小径部312となる第2円筒部431dである。なお、貫通孔431aは、別途打ち抜きにより窪み部422まで貫通させてもよい。
【0054】
次に、第3中間成形品43をさらに機械加工することにより、第4中間成形品44を形成する。第4中間成形品44には、鍔部331の一側に溝432が形成され、窪み部422の内面に雌螺子340となる螺旋溝422aが形成されている。
【0055】
そして、この第4中間成形品44をめっきすることにより、口金具3を得る。このめっき素材としては、例えば錫、亜鉛、ニッケル、鉄、クロメート、又は各種の樹脂塗料、もしくはこれらの複合素材を用いることができる。なお、必ずしもめっきを行わなくともよい。
【0056】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果がある。
【0057】
(1)ソケット部32の加締めに伴って流動するホース体2の肉の少なくとも一部が、大径部311の外周面311bを軸方向に延長した仮想面と小径部312の外周面312bとの間に形成される円筒状の空間に吸収されるので、ホース体2の一部がニップル部31の内周面31aよりも内側に突出してブレーキ液の流路が狭くなることが抑制される。これにより、例えば10MPaを超えるブレーキ液の圧力に耐え得るように加締めを行っても、ブレーキ液の流路が狭くなることを回避することが可能となる。
【0058】
(2)ソケット部32の加締めは、ニップル部31の大径部311の外周側にて行われるので、加締めによる力が小径部312に直接的に作用することがなく、小径部312の変形等を抑制することができる。
【0059】
(3)ニップル部31の大径部311及び小径部312をパンチの圧入による塑性加工によって、同時に(一回の加工で)形成することができるので、口金具3を低コストに製造することができる。
【0060】
(4)口金具3のニップル部31、ソケット部32、連結部33、及び頭部34は一体であるので、例えばソケットとニップルとを別部材として形成し、これらを組み立てる場合に比較して、口金具3の強度及び耐久性を高めることができる。
【0061】
(5)ニップル部31の外周面31bに作用する加締めの圧力の分布は、大径部311における段差部313側の端部において極大となるので、この端部において、ブレーキ液がニップル部31の外周面31bとホース体2との間に浸入することを抑制することができる。
【実施例1】
【0062】
以下に、本発明の更に具体的な実施の形態としての実施例を、比較例との実験結果の対比を含めて説明する。なお、この実施例では、上記実施の形態のブレーキホース1の典型的な一例を挙げており、本発明は、この実施例に限定されるものではないことは勿論である。
【0063】
本実施例に係る口金具3は、
図5に示す製造方法によって形成された、
図2に示す形状を有するものであり、小径部312の軸方向長さL
1が2mm、段差寸法Δdが0.15mmに形成されている。
【0064】
図6は、比較例1に係る口金具3Aを示す。この口金具3Aは、ニップル部31Aが軸方向の全体に亘って均一な外径寸法d
1を有する円筒状であること、すなわち小径部312が形成されていないことを除き、口金具3と同様の形状である。
図6において、口金具3の各部と同形状である構成要素については、
図2と共通の符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0065】
図7は、比較例2に係る口金具3Bを示す。この口金具3Bは、口金具3Aのニップル部31Aの外周に複数(3つ)の環状の溝35が形成されたものである。
図7において、口金具3の各部と同形状である構成要素については、
図2と共通の符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0066】
これらの口金具3,3A,3Bをホース体2の両端に加締め固定したブレーキホースを用いて、耐久試験を行った。以下、口金具3Aがホース体2の両端に加締め固定されたブレーキホースをブレーキホース1A、口金具3Bがホース体2の両端に加締め固定されたブレーキホースをブレーキホース1Bと称する。
【0067】
ブレーキホース1,1A,1Bのホース体2としては、内層ゴム層21、中間ゴム層23、及び外層ゴム層25の材質にエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を用い、第1補強層22及び第2補強層24の繊維材料にPET繊維を用いた。このホース体2の加締め前の内径は3.3mm、外径は10.2mmであった。
【0068】
また、ブレーキホース1,1A,1Bにおいて、ニップル部31の他端31dから第1の加締め部321の先端部321aの位置までの軸方向距離L
2は4mmとし、加締め外径(加締め後の外径)が10.0mmとなるように加締めを行った。
【0069】
耐久試験では、ブレーキホース1,1A,1Bを70℃の環境に100時間放置して熱老化し、サム電子製のインパルス試験機(型番:V936)により試験を行った。ブレーキ液としては、JIS規格(JIS K 2233)に準拠したブレーキオイルを用い、液圧ストロークは0MPaと20MPaの繰り返し圧力で、印加周波数は0.33Hzとした。
【0070】
この耐久試験において、ブレーキ液の漏れが発生するまでのインパルス回数をカウントした。この結果、ブレーキ液の漏れが発生するまでのカウント値は、ブレーキホース1では約10万回、ブレーキホース1Aでは約5千回、ブレーキホース1Bでは約11万回であった。すなわち、ブレーキホース1では、ブレーキホース1Aよりも大幅に耐久性が向上していることが確認された。また、複雑な加工により複数の溝35を形成したブレーキホース1Bと比較しても、これと同等の耐久性を有することが確認された。
【0071】
この実験結果から、ニップル部31を大径部311、小径部312、及び段差部313から構成することにより、ニップル部31の外周に複数の溝を形成しなくとも、十分な耐久性が得られることが明らかとなった。
【0072】
[他の実施の形態]
以上、本発明の好適な実施の形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態又は実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0073】
また、本発明はブレーキホースに限らず、液圧配管用ホースとして、例えば車両用のパワーステアリングホースや、SUSメッシュホース、あるいはエアコンホースや樹脂ホースに適用することができる。さらには、クレーン車やショベルカー等の重機や工作機械等に用いられ、液圧によって動作対象装置を動作させる作動液を流通させる液圧配管用ホースに適用することが可能である。
【0074】
なお、口金具3の製造方法も上記したものに限らない。上記実施の形態では、第3中間成形品43を塑性加工する過程で第2円筒部431dを形成したが、これに限らず、例えば
図6に示す口金具3Aのように、小径部312を有しない形状に金属素材を加工し、その後、他端31d側からの加工によって小径部312を形成してもよい。この場合、小径部312を形成するための加工は、ニップル部31Aの先端部の外周面を切削又は研削したり、ニップル部31Aの先端部が縮径するように変形させることにより、行うことができる。この加工は、ニップル部31Aの中央部に溝35を形成する加工よりも容易である。
【0075】
また、実施の形態又は実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。