特許第5776587号(P5776587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5776587-単結晶製造方法 図000004
  • 特許5776587-単結晶製造方法 図000005
  • 特許5776587-単結晶製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776587
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】単結晶製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/00 20060101AFI20150820BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C30B15/00 Z
   C30B29/06 502K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-39048(P2012-39048)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-173646(P2013-173646A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】添田 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敏史
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−184863(JP,A)
【文献】 特開2011−093778(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/068732(WO,A1)
【文献】 特開平05−117074(JP,A)
【文献】 特開平06−298589(JP,A)
【文献】 特開平06−279166(JP,A)
【文献】 特開平06−271396(JP,A)
【文献】 特開平06−247788(JP,A)
【文献】 特開昭55−113695(JP,A)
【文献】 特開2002−321997(JP,A)
【文献】 特開平06−087687(JP,A)
【文献】 特開平06−122586(JP,A)
【文献】 特開2004−137089(JP,A)
【文献】 特表2010−501466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00〜35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷機構を備えたチャンバーと、該チャンバー内に配置されたルツボと、該ルツボの周囲に配置されたヒーターと、該ヒーターの周囲に配置された断熱筒を具備し、前記ルツボに収容された原料融液からチョクラルスキー法により単結晶を引き上げる単結晶製造装置であって、前記断熱筒と前記チャンバー内の側面との間に前記チャンバー上部から供給されたキャリアガスが通過する隙間を設け、前記キャリアガスの全てが前記隙間を経由して前記チャンバー底部より排気されるものである単結晶製造装置により単結晶を製造する単結晶製造方法であって、
前記単結晶製造後、前記チャンバー内の側面及び底部に付着した酸化物を除去せずに、次バッチの単結晶製造を行うことを特徴とする単結晶製造方法。
【請求項2】
前記キャリアガスが通過する前記隙間に連通する底部隙間を前記断熱筒と前記チャンバー底部との間に備えることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造方法
【請求項3】
前記底部隙間の形成領域は、前記チャンバー内の底部の表面積の30%以上であることを特徴とする請求項2に記載の単結晶製造方法
【請求項4】
前記単結晶製造中のチャンバー内の炉内圧を50〜300hPaとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の単結晶製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下「CZ法」と言う。)を用いて単結晶を製造する単結晶製造装置及び単結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の基本材料である単結晶の製造方法として、CZ法がある。CZ法においては、チャンバー内に設けられたルツボ内に高純度の多結晶を充填し、ヒーターにより加熱、溶融して原料融液とし、この原料融液に種結晶を着液させて種付けし、その後種結晶を回転させながら引き上げることで、種結晶の下方に単結晶を成長させ、円柱状の単結晶が製造される。
【0003】
このCZ法による単結晶の成長を行うCZ単結晶製造装置は、通常、水冷された底部、側面部、及び上部の少なくとも3つで構成されたメインチャンバーを有し、その中心にルツボが配置され、そのルツボの周囲をヒーターが囲っている。そして、さらにそのヒーターの周囲は黒鉛部材や断熱材で覆われている。
【0004】
また、CZ単結晶製造装置の炉内構造として、かつては常圧下で多量のキャリアガスをチャンバー上部からホットゾーン(以下「HZ」と言う。)に供給し、チャンバー底部から排気するようにし、この場合にルツボとヒーター、断熱筒との間をガスが流れるようにするとともに、周囲を覆う断熱筒とチャンバー内壁の間にもキャリアガスを通す構造が多く存在した。しかし、チャンバー上部に付着した酸化物が原料融液に落下することで、単結晶化を阻害することが問題視されていた。そこで、近年では減圧下でキャリアガスの線速を上げ、酸化物を速やかにヒーターとルツボの近傍を通して、下方へと排気する構造が主流となっている。
【0005】
また通常、HZ全体はチャンバー内の底部に直接置かれている。近年の部材の大型化により、断熱効率が益々重視される傾向が強くなってきている影響で、HZ構造はチャンバー内の側面部及び底部は、排気や電極の為の穴以外は完全に閉じられている。またHZ構造は、上方に単結晶の周囲を覆う熱遮蔽体が配置されていることが多いが、HZの上部には何らかの隙間がある構造となっている。一方、キャリアガスがルツボの周囲を覆う断熱材とチャンバー内の側面との間を通過する改良型の構造もいくつか提案されているが、たとえば特許文献1に記載の製法は、ヒーターとルツボの近傍のキャリアガスの流れを遮断するものではない。
【0006】
また特許文献2では、一旦キャリアガスを断熱筒とチャンバー内の側面及び底面の間にできるだけ通過させる構造であるが、これにしてもヒーターとルツボ近傍でのキャリアガスのフローを完全には止めてはいない。さらに、最終的にはルツボと断熱筒の間に穴を開けて内側へと取り込んでHZ底部からキャリアガスを排気しているので、その穴がエネルギーロスの原因となる。つまり、発明の狙いが高温になったヒーターや内部の黒鉛材が酸化物と反応して劣化するのを防止することであり、断熱効果を高めるために実施したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−172884号公報
【特許文献2】特開平6−56570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CZ法を用いた単結晶製造のコストを下げる要求が年々強くなっている中、単結晶を製造する際に、ヒーターの発するエネルギーの約90%が最終的にチャンバーを流れる冷却水によって奪われるという問題があった。また、HZ構造はカーボン繊維の断熱材等を使用し、エネルギーロスを低減するように設計は行われているが、それには限界があり、不十分である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、チャンバーを流れる冷却水によるエネルギーロスを低減し、省電力化することで、コストダウンをはかることができる単結晶製造装置及び単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、水冷機構を備えたチャンバーと、該チャンバー内に配置されたルツボと、該ルツボの周囲に配置されたヒーターと、該ヒーターの周囲に配置された断熱筒を具備し、前記ルツボに収容された原料融液からチョクラルスキー法により単結晶を引き上げる単結晶製造装置であって、前記断熱筒と前記チャンバー内の側面との間に前記チャンバー上部から供給されたキャリアガスが通過する隙間を設け、前記キャリアガスの全てが前記隙間を経由して前記チャンバー底部より排気されるものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0011】
このように、前記キャリアガスの全てが前記隙間を経由して前記チャンバー底部より排気されることによって、酸化物を前記チャンバー内の側面及び底部に広く付着させることができ、より良好な断熱効果を得ることができる装置となる。
【0012】
このとき、前記キャリアガスが通過する前記隙間に連通する底部隙間を前記断熱筒と前記チャンバー底部との間に備えることが好ましい。
【0013】
これによって、前記チャンバー底部と前記断熱筒等との接触面積が低減し、断熱効果が向上するとともに、前記チャンバー上部から供給された前記キャリアガスの全てを、前記ルツボと前記断熱筒との間の領域を経由することなく、排気させることができる装置となる。
【0014】
またこのとき、前記底部隙間の形成領域は、前記チャンバー内の底部の表面積の30%以上であることが好ましい。
【0015】
これによって、酸化物がチャンバー内の底部に付着する面積を増やすことができ、より良好な断熱効果を得ることができる装置となる。
さらに、断熱筒がチャンバー底面に接する面積が確実に減少し、ヒーターの発するエネルギーが底部チャンバー内を流れる冷却水に奪われることを一層低減することができる装置となる。
【0016】
また、本発明では、前記単結晶製造装置により単結晶を製造することを特徴とする単結晶製造方法を提供する。
【0017】
これによって、単結晶製造の際に、酸化物の良好な断熱効果を得ることができ、かつ、ヒーターの発するエネルギーがチャンバー内を流れる冷却水に奪われることが低減され、省電力化して低コストで単結晶を製造できる。
【0018】
またこのとき、前記単結晶製造後、前記チャンバー内の側面及び底部に付着した酸化物を除去せずに、次バッチの単結晶製造を行うことが好ましい。
【0019】
これによって、次バッチの開始当初から良好な断熱効果を得ることができる。
【0020】
またこのとき、単結晶製造中のチャンバー内の炉内圧を50〜300hPaとすることが好ましい。
【0021】
このように、炉内圧を常圧より低く保つことで、キャリアガスの線速を上げ、酸化物がHZ付近に付着する量を減少させることができる。
さらに、チャンバー上部に付着した酸化物が融液内に落下し、単結晶製造に悪影響を与えることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、CZ法により単結晶を製造する際に、チャンバー内の側面及び底部に付着した酸化物の断熱効果、及び、断熱筒のチャンバー底面への設置面積の減少により、ヒーターの発するエネルギーをチャンバーに流れる冷却水に奪われることを防止しながら、消費電力を軽減して単結晶を製造することができ、低コスト化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のHZ構造のキャリアガスフロー(a)及び酸化物付着状況(b)を示した図である。
図2】比較例(従来法)の1バッチの消費電力を100としたときの、実施例(本発明)の各8バッチの消費電力の推移を示した図である。
図3】従来のHZ構造のキャリアガスフロー(a)及び酸化物付着状況(b)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
前述のように、チャンバー内のヒーターが発するエネルギーの大部分が最終的にチャンバーを流れる冷却水によって奪われるという問題があった。
この問題の対応として、HZ領域に断熱筒を使用してエネルギーロスを低減する設計が行われ、またキャリアガスを断熱筒とチャンバー内壁との間を通す構造として、特許文献1や特許文献2の構造が提案されていた。
しかしながら、何れの方法においても、キャリアガスがルツボとヒーターの近傍を流れることを完全には止めてはいない。また、最終的にキャリアガスをHZの底から排気していて、上記のエネルギーロスの問題は解決されていなかった。
【0026】
そこで、本発明者らは、チャンバー内壁に付着した酸化物が高温下で安定した断熱効果を発揮する点に着目し、キャリアガスをルツボと断熱筒との間の領域を経由させることなく、すべてのキャリアガスを断熱筒とチャンバー内の側面及び底面を通過させて排気することによって、酸化物をチャンバー内壁に広く付着させて断熱効果を得て、上記のエネルギーロスを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
まず、本発明のHZ構造を有する単結晶製造装置について、図1を参考にしながら説明する。なお、図1(a)は本発明の装置におけるキャリアガスのフローを示し、図1(b)は本発明の装置における酸化物の付着状況を示している。
【0029】
図1では、水冷機構を備えたチャンバー1内に、原料融液2を収容したルツボ3と、その周囲にヒーター4が配置され、さらにその周囲に断熱筒5が配置されている。チャンバー1の上部からはキャリアガス6が供給され、チャンバー1内を経由し、チャンバー1の底部の排気ガス管7から外部へ排気される。チャンバー1はステンレス等の金属からできており、冷却水を循環させることで熱により損傷されないように保護されている。またルツボ3は外側を黒鉛製、原料を収容する内側は石英製とされる。ヒーター4は黒鉛製の抵抗加熱である。断熱筒5は、断熱性を向上させるとともに耐熱性とするため、主として炭素繊維製とされている。キャリアガス6はアルゴン等の不活性ガスとされる。ただし、これらは特に限定されるものではない。
【0030】
本発明では、図1(a)に示すように、チャンバー1の上部より供給されたキャリアガス6が、断熱筒5とチャンバー1内の側面との間の隙間9及び前記断熱筒5とチャンバー1の底部との間の底部隙間10とを経由してチャンバー1の外部へ排気されている。その結果、図1(b)に示すように、酸化物8がチャンバー1の内壁に広く付着する。これによって、水冷されたチャンバー1の冷却水を介してロスする熱量が大幅に減少する。また、チャンバー1の上部及び排気ガス管7の酸化物8の付着は、後述する従来の場合と比較して非常に少ない。従って、従来法はバッチ間に排気ガス管7を清掃しなければならないが、本発明では排気ガス管7の清掃をすることなく、複数バッチを継続することができる。さらに、従来のようにヒーター4の近傍を通った高温のキャリアガス6がそのまま排気ガス管7を通って排気されることがないので、排気ガス管7を介するエネルギーロスも減少する。
【0031】
このように、本発明においては、ヒーター4の発するエネルギーがチャンバー1内を流れる冷却水によって奪われること等を低減でき、単結晶製造の際における消費電力を抑制できる。その結果、コストダウンをはかることができる。
【0032】
また本発明では、図1(a)に示すように、キャリアガス6が通過する隙間9に連通する底部隙間10を断熱筒5とチャンバー1との間に備える。これによって、前記チャンバー1の底部と前記断熱筒5等との接触面積が低減し、断熱効果が向上するとともに、キャリアガス6がルツボ3と断熱筒5との間の領域を経由することなく、キャリアガス6をチャンバー1の外部へ排気することができる。その結果、HZに酸化物8が付着しHZが劣化することを防ぐことができるとともに、チャンバー1の内壁、特に底部にも酸化物8を広く付着させることができ、それにより良好な断熱効果を得ることができる。
【0033】
この場合、底部隙間10の形成領域を、チャンバー1内の底部の表面積の30%以上とすることが好ましい。これによって、酸化物8がチャンバー1内の底部に付着する面積を増やすことができ、良好な断熱効果を得ることができる。さらに、断熱筒5がチャンバー1底面に接する面積が確実に減少し、ヒーター4の発するエネルギーが底部チャンバー1内を流れる冷却水に奪われることを一層低減することができる。もちろん、排気ガス管7をチャンバー1底部の両端部に設けることによって、底部隙間10を設けることなくキャリアガス6を排気することも可能である。このとき、HZをチャンバー1底部で支持するため、底部隙間10の形成領域は、チャンバー1内の底部の表面積の90%以下とすることが好ましい。
【0034】
一方、従来法のHZ構造を有する単結晶製造装置では、図3(a)のように、チャンバー1の上部より供給されたキャリアガス6が、ルツボ3と断熱筒5の間の領域を経由してチャンバー1の外部へ排気されている。その結果、図3(b)に示すように、単結晶製造に伴い発生する酸化物8が、本発明の場合と比べて、チャンバー1の上部及び排気ガス管7を中心に付着が多く見られる。従って、チャンバー1からのエネルギーロスを低減する効果が少ない上に、上述したように、従来法ではバッチ間に排気ガス管7を清掃しなければならず、本発明の場合と比べてサイクルタイムが伸びて、生産性が低下する。
【0035】
本発明では、上記で説明した本発明の単結晶製造装置を用いて、単結晶を製造することができる。単結晶の製造方法としては、チャンバー内に設けられたルツボ内に高純度の多結晶を充填し、ヒーターにより加熱、溶融して原料融液とし、この原料融液に種結晶を着液させて種付けし、その後種結晶を回転させながら引き上げることで、種結晶の下方に単結晶を成長させ、円柱状の単結晶が製造されるCZ法を用いる。このとき、本発明では、図1に示すように、チャンバー1の上部より供給されたキャリアガス6が、隙間9及び底部隙間10を経由して、排気ガス管7からチャンバー1の外部へ排気される。これにより、酸化物8がチャンバー1内壁に広く付着し、良好な断熱効果を得ることができる。
【0036】
また本発明では、図1(b)に示すように、チャンバー1内の側面及び底部に付着した酸化物8を除去せずに、次バッチの単結晶製造を行うのが好ましい。これにより、次バッチの開始当初から良好な断熱効果を得ることができるとともに、サイクルタイムを削減することができる単結晶製造方法を提供できる。この場合、チャンバー1の上部に付着した酸化物8は、結晶成長中に落下して悪影響を及ばさないようにするため除去するようにする。
【0037】
なお本発明では、単結晶製造中のチャンバー1内の炉内圧を50〜300hPaと常圧より低く保つ。これによって、キャリアガス6の線速を上げ、酸化物8がHZ付近に付着する量を減少させることができる。さらに、チャンバー1の上部に付着した酸化物8が原料融液2内に落下し、単結晶製造に悪影響を与えることを防ぐことができる単結晶製造方法とすることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例、比較例)
実施例、比較例ともに、直径65cm(26インチ)のルツボに180kgのシリコン多結晶原料を仕込み、直径200mmのシリコン単結晶の製造を行った。ガス量、炉内圧はそれぞれアルゴンガス100l/min、100hPa(100mbar)で行った。
【0039】
このとき、実施例では、図1のような装置を用い、チャンバー内の側面と断熱筒の隙間は約20mmとした。また、HZ底部に黒鉛材の嵩上げパーツを敷くことによりHZ底部を50mm嵩上げすることで底部隙間を形成し、チャンバー底面にある排気ガス管をむき出しとした。さらに、チャンバー底部隙間の形成領域はチャンバー底部の表面積の約50%とした。一方、比較例は図3のような装置を用い従来法で単結晶の製造を行った。この装置はキャリアガスのほとんど全部が、ヒーター近傍を通ってそのまま排気される。
【0040】
単結晶製造時の消費電力を調査した所、表1に示すように、比較例(従来法)の消費電力を100としたときの実施例(本発明)の消費電力は96となった。このとき、排気ガス管における酸化物の付着は軽微であった。
【0041】
【表1】
【0042】
以下実施例では、同様の作業を8バッチ連続で繰り返した。ただし、チャンバー上部の酸化物は、操業中にルツボ内の原料融液に落下して単結晶製造に悪影響を及ぼすため、各バッチ後に除去したが、チャンバー内の側面及び底部に付着した酸化物は除去せずに、次バッチの単結晶製造を行った。その結果、表2に示すように、比較例(従来法)の消費電力を100としたときの8バッチ目の実施例(本発明)における消費電力は90となった。このとき、8バッチ後のチャンバー内壁に堆積した酸化物はチャンバー内の側面上部で2〜3mm、チャンバー内の側面下部や底部で1mm程度であった。
【0043】
【表2】
【0044】
このとき図2において、8バッチ連続で前記作業を繰り返したときに、比較例(従来法)に対する実施例(本発明)の消費電力推移を示した。図2に示すように、前記作業を繰り返すごとに実施例(本発明)の消費電力は減少した。また、実施例(本発明)では、バッチごとにHZ全体を解体してチャンバーと排気ガス管を清掃する必要がないため、サイクルタイムの削減効果は8バッチで延べ20時間に及んだ。すなわち、本発明では生産性も向上することがわかる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
1…チャンバー、 2…原料融液、 3…ルツボ、 4…ヒーター、 5…断熱筒、
6…キャリアガス、 7…排気ガス管、 8…酸化物、 9…隙間、 10…底部隙間
図1
図2
図3