特許第5776618号(P5776618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776618
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ネットワークスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/711 20130101AFI20150820BHJP
   H04L 12/891 20130101ALI20150820BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H04L12/711
   H04L12/891
   H04L12/28 200Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-93104(P2012-93104)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-223078(P2013-223078A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】青島 健次
(72)【発明者】
【氏名】澤口 力
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−078906(JP,A)
【文献】 特開2009−246524(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01993253(EP,A1)
【文献】 国際公開第2012/037783(WO,A1)
【文献】 特開2011−130155(JP,A)
【文献】 特開平05−083280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/711
H04L 12/28
H04L 12/891
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートの障害を検知する障害検知部と、
受信したユニキャストフレームを転送する際に、当該転送先のポートで障害が検知され、かつ、当該転送先のポートを含む複数のポートにリンクアグリゲーショングループが設定されているとき、前記受信したユニキャストフレームを、前記転送先のポートと同じリンクアグリゲーショングループが設定されている他のポートに強制的に転送する強制転送処理部と、
を備え
リンクアグリゲーショングループ毎に設定され、分散IDと転送先のポートの識別子とを対応付けるLAG用転送先テーブルを備え、
前記強制転送処理部は、受信したユニキャストフレームの転送先のポートで障害が検知されているとき、当該転送先のポートに設定されているリンクアグリゲーショングループの前記LAG用転送先テーブルを検索して障害の発生していないポートの識別子を特定し、前記受信したユニキャストフレームの転送先のポートの識別子を、当該特定したポートの識別子に強制的に変更するように構成され、
前記障害検知部は、ポートの障害の発生の有無をリンクテーブルに記憶するように構成され、
前記強制転送処理部は、前記LAG用転送先テーブルに転送先として記憶されたポートの識別子を順次抽出すると共に前記リンクテーブルを参照することを繰り返して、障害の発生していないポートの識別子を特定するように構成される
ネットワークスイッチ。
【請求項2】
筐体内に複数のラインカードを備えたシャーシ型スイッチからなり、
前記障害検知部と前記強制転送処理部は、前記複数のラインカードのそれぞれに搭載される
請求項に記載のネットワークスイッチ。
【請求項3】
前記障害検知部は、前記各ラインカード間で互いに定期的にポートの障害情報を含む疎通確認フレームを送受信することにより、ポートの障害の発生を互いに通知するように構成される
請求項記載のネットワークスイッチ。
【請求項4】
前記障害検知部は、任意のラインカードから前記疎通確認フレームを所定時間受信しないとき、当該ラインカードの全てのポートで障害が発生したと判断するように構成される
請求項記載のネットワークスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワークスイッチの1つとして、シャーシ型スイッチやボックス型スイッチが知られている。シャーシ型スイッチは、筐体内に複数のラインカードを備えたものである。
【0003】
ネットワークスイッチとして、FDB(Forwarding Database)を搭載し、そのFDBに基づいてフレーム転送を行うものがある。なお、FDBとは、宛先MACアドレスと出力ポート(シャーシ型スイッチの場合は転送先のラインカードの識別子及び出力ポートの識別子、ボックス型スイッチの場合は出力ポートの識別子のみ)、あるいはリンクアグリゲーショングループ(Link Aggregation Group、以下LAGという)の識別子)を対応付けるデータベースである。また、LAGとは、複数の伝送路を束ね、仮想的に1つの伝送路として用いる技術であり、LAGに設定された複数のポートは全体で1つのポートとして扱われる。シャーシ型スイッチでは、各ラインカードにFDBが搭載される。
【0004】
一例としてシャーシ型スイッチでのフレーム転送の動作を説明する。シャーシ型スイッチでユニキャストフレームを受信すると、当該フレームを受信したラインカードが、自身に搭載されたFDBを参照して、受信したフレームの宛先MACアドレスに対応する転送先のラインカードの識別子及び出力ポートの識別子(あるいはLAGの識別子)を抽出し、抽出した転送先にフレーム転送を行う。
【0005】
FDBを参照して抽出した転送先(出力ポート)がLAGである場合、そのLAG用に設定されたLAG用転送先テーブル(LAG宛ユニキャスト宛先判定テーブル)を参照し、所定の方法で設定された分散IDに応じた転送先のラインカードの識別子及び出力ポートの識別子を抽出することになる。LAG用転送先テーブルは、分散IDと転送先のラインカードの識別子及び出力ポートの識別子とを対応付けるデータベースであり、LAGごとに設定される。
【0006】
なお、受信したフレームの宛先MACアドレスがFDBに登録されていない場合は、当該フレームを宛先不明フレーム(アンノウン)として、自ラインカードの受信ポート以外の全てのポート及び他の全てのラインカードに転送する処理(フラッディングという)を行う。
【0007】
ところで、ネットワークスイッチにおいて、ポートに障害が発生すると、その障害が発生したポートに転送されるユニキャストフレームの中継が正常に行われなくなり、通信断となってしまう。よって、ポートに障害が発生した場合には、なるべく短時間でバックアップ経路へ切り替えを行うことが望ましい。
【0008】
従来のシャーシ型スイッチでは、装置内のラインカードで障害が発生したことを検知すると、通常は、その障害を検知したラインカードに対応するFDBエントリをソフトウェアにより消去する(FDBフラッシュという)。FDBフラッシュが実施されると、ユニキャストフレームは宛先不明フレームとしてフラッディングされることになり、バックアップ経路への切り替えが行われることになる。
【0009】
ただし、LAGが設定されているポートに障害が発生した場合には、上述のようなFDBフラッシュは行われず、所謂LAGの縮退が行われることになる。具体的には、LAG用転送先テーブルをソフトウェアにより書き換え、障害を検知したポートへ転送行わないようにする(つまり、リンクダウンしたポートからリンクアップされているポートに出力先を切り替える)。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1〜3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−136013号公報
【特許文献2】特開2010−263395号公報
【特許文献3】特開2009−027758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のネットワークスイッチでは、LAGが設定されているポートに障害が発生した場合に、ポートの障害検知から出力先の変更まで(ソフトウェアによるLAG用転送先テーブルの書き換えが完了するまで)に数百ms程度かかってしまい、通信断となる時間が非常に長くなってしまうという問題がある。以下、この理由を具体的に説明する。
【0013】
図5(a)に示すように、3つのラインカード42a,42b,42c(LC1,LC2,LC3)を備えたシャーシ型スイッチ41において、2つのラインカード42b,42cにわたってLAG10が設定されている場合を考える。
【0014】
ラインカード42a(LC1)にユニキャストフレームが入力されると、まず、ラインカード42aに搭載されたFDB43を参照して、受信したユニキャストフレームの宛先MACアドレスに対応する転送先を抽出する。ここでは、転送先がLAG10であったとする。
【0015】
さらに、転送先がLAG(LAG10)であるから、LAG用転送先テーブル44を参照して、所定の方法で設定された分散IDに応じた転送先のラインカードの識別子及び出力ポートの識別子を抽出する。ここでは、転送先がラインカード42b(LC2)のポート1であったとする。入力されたユニキャストフレームは、転送先であるラインカード42bに転送され、ラインカード42bのポート1から出力される。
【0016】
ここで、図5(b)に示すように、シャーシ型スイッチ41のラインカード42b(LC2)に障害が発生したとする。この場合、ラインカード42b(LC2)の全てのポートに障害が発生したことになる。
【0017】
従来のシャーシ型スイッチ41では、ラインカードやポートの障害は、シャーシ型スイッチ41内の管理カード(図示せず)にて検知される。この場合、ラインカード42b,42c(LC2,LC3)にLAG(LAG10)が設定されているので、管理カードは、例えば、全てのラインカードに制御フレームを送信して、各ラインカードのLAG用転送先テーブル44を書き換え、LAGの縮退を行うことになる。LAG用転送先テーブル44の書き換えが完了するまで、転送先がラインカード42b(LC2)であるユニキャストフレームは通信断となる。
【0018】
LAG用転送先テーブル44の書き換えが完了すると、ユニキャストフレームはラインカード42c(LC3)に転送されることとなり、これにより経路の切り替えが行われる。
【0019】
このように、シャーシ型スイッチ41では、管理カードでポート(ラインカード)の障害を検知した後に、全てのラインカードの対応するLAG用転送先テーブル44をソフトウェアにより書き換える必要があり、さらにLAG用転送先テーブル44を書き換える動作自体にも時間がかかってしまうため、結果的に、ポートの障害検知から経路切り替えまでに数百ms程度の時間がかかってしまう。
【0020】
ここでは一例としてシャーシ型スイッチ41について説明したが、ボックス型スイッチにおいても、LAGが設定されているポートに障害が発生した際には、LAG用転送先テーブルをソフトウェアにより書き換える必要があり、シャーシ型スイッチ41と同様に、ポートの障害検知から経路切り替えまでに数百ms程度の時間がかかってしまう。障害検知から経路切り替えまでの時間は通信断となるため、できるだけ短縮することが望ましい。
【0021】
本発明は、上記事情に鑑み為されたものであり、LAGが設定されているポートに障害が発生した際のバックアップ経路への切り替え時間を短縮可能なネットワークスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、ポートの障害を検知する障害検知部と、受信したユニキャストフレームを転送する際に、当該転送先のポートで障害が検知され、かつ、当該転送先のポートを含む複数のポートにリンクアグリゲーショングループが設定されているとき、前記受信したユニキャストフレームを、前記転送先のポートと同じリンクアグリゲーショングループが設定されている他のポートに強制的に転送する強制転送処理部と、を備えたネットワークスイッチである。
【0023】
リンクアグリゲーショングループ毎に設定され、分散IDと転送先のポートの識別子とを対応付けるLAG用転送先テーブルを備え、前記強制転送処理部は、受信したユニキャストフレームの転送先のポートで障害が検知されているとき、当該転送先のポートに設定されているリンクアグリゲーショングループの前記LAG用転送先テーブルを検索して障害の発生していないポートの識別子を特定し、前記受信したユニキャストフレームの転送先のポートの識別子を、当該特定したポートの識別子に強制的に変更するように構成されてもよい。
【0024】
前記障害検知部は、ポートの障害の発生の有無をリンクテーブルに記憶するように構成され、前記強制転送処理部は、前記LAG用転送先テーブルに転送先として記憶されたラインカードの識別子を順次抽出すると共に前記リンクテーブルを参照することを繰り返して、障害の発生していないポートの識別子を特定するように構成されてもよい。
【0025】
筐体内に複数のラインカードを備えたシャーシ型スイッチからなり、前記障害検知部と前記強制転送処理部は、前記複数のラインカードのそれぞれに搭載されてもよい。
【0026】
前記障害検知部は、前記各ラインカード間で互いに定期的にポートの障害情報を含む疎通確認フレームを送受信することにより、ポートの障害の発生を互いに通知するように構成されてもよい。
【0027】
前記障害検知部は、任意のラインカードから前記疎通確認フレームを所定時間受信しないとき、当該ラインカードの全てのポートで障害が発生したと判断するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、LAGが設定されているポートに障害が発生した際のバックアップ経路への切り替え時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施の形態に係るネットワークスイッチの概略構成図である。
図2図1のネットワークスイッチにおいて、疎通確認フレームの経路を示す図である。
図3図1のネットワークスイッチの動作を説明する図である。
図4】(a)はLAG用転送先テーブルの一例、(b)はリンクテーブルの一例を示す図である。
図5】(a),(b)は、従来のネットワークスイッチの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態に係るネットワークスイッチの概略構成図である。本実施の形態では、一例として、ネットワークスイッチ1がシャーシ型スイッチである場合を説明する。
【0032】
図1に示すように、ネットワークスイッチ1は、筐体11内に複数のラインカード3を備えている。ここでは、3つのラインカード3a〜3c(LC1,LC2,LC3)を備える場合を示しているが、ラインカード3の数はこれに限定されるものではない。ネットワークスイッチ1は、例えばリングネットワークに適用される。
【0033】
各ラインカード3は、中継経路であるクロスバースイッチ2を介して装置内で相互に接続されている。ここでは、2つのクロスバースイッチ2a,2b(図1ではクロスバースイッチ1,クロスバースイッチ2として示している)を備えて中継経路を冗長化した場合を示しているが、クロスバースイッチ2の数はこれに限定されるものではない。
【0034】
各ラインカード3には、フレーム処理部4と、転送処理部5と、が搭載されている。
【0035】
フレーム処理部4は、FDB6を参照して、受信したフレームの宛先MACアドレスに対応する転送先のポートの識別子(シャーシ型スイッチの場合はラインカード3およびポートの識別子)あるいはLAGの識別子を抽出し、その抽出した転送先の情報を基に、受信したフレームに、フレームの種別、転送先のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を含む機器内転送用ヘッダを付与して、転送処理部5に出力する。
【0036】
ここでいうフレームの種別とは、当該フレームがユニキャストフレームであるか、宛先不明フレームであるか、ブロードキャストフレームであるか等を識別するためのものである。例えば、受信したフレームの宛先MACアドレスがFDB6に登録されていればユニキャストフレーム、FDB6に登録されていなければ宛先不明フレーム、受信したフレームの宛先MACアドレスがブロードキャストアドレスであればブロードキャストフレーム、と判断する。
【0037】
本実施の形態では、フレーム処理部4にさらにLAG用転送先テーブル7を備え、LAGに対応できるようにしている。LAG用転送先テーブル7は、分散IDと転送先のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)とを対応付けるデータベースであり、複数のラインカード3のそれぞれに搭載されると共に、LAG毎に設定される。フレーム処理部4は、FDB6を参照して抽出した転送先がLAGである場合、そのLAG用に設定されたLAG用転送先テーブル7を参照し、所定の方法で設定された分散IDに応じた転送先のラインカード3の識別子及び出力ポートの識別子を抽出することになる。なお、分散IDを決定する方法は種々提案されているが、どのような方法を採用してもよい。
【0038】
また、フレーム処理部4は、受信したフレームの送信元MACアドレスと、当該フレームを受信したポートとを関連付けて、FDB6の学習を行うようになっている。FDB6の学習方法は公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0039】
転送処理部5は、フレーム処理部4で付与した機器内転送用ヘッダに基づき、フレームの転送処理を行うものである。転送処理部5は、機器内転送用ヘッダ内のフレームの種別がユニキャストフレームであるときは、当該フレームを転送先のポートのみに転送し、機器内転送用ヘッダ内のフレームの種別が宛先不明フレームであるときは、当該フレームを自ラインカード3の受信ポート以外の全てのポート及び他の全てのラインカード3(ただし、VLANが同じに設定されているポートに限る)に転送する(フラッディングする)。
【0040】
さて、本実施の形態に係るシャーシ型スイッチ1は、障害検知部8と、リンクテーブル9と、強制転送処理部10と、をさらに備えている。
【0041】
障害検知部8は、ポートの障害やラインカード3の障害を検知するものである。なお、ここでいうラインカード3の障害とはラインカード3間で通信に障害が発生している状態をいい、ラインカード3の故障の他、中継経路等に障害が発生した場合も含むものとする。
【0042】
本実施の形態では、障害検知部8を、複数のラインカード3のそれぞれに搭載し、各ラインカード3間で互いに定期的にポートの障害情報を含む疎通確認フレームを送受信することにより、ポートの障害の発生を互いに通知するように構成した。
【0043】
また、障害検知部8は、任意のラインカード3から疎通確認フレームを所定時間受信しないとき、当該ラインカード3に障害が発生したと判断するように構成される。ラインカード3に障害が発生した場合、当該ラインカード3の全てのポートで障害が発生したと判断されることになる。
【0044】
障害検知部8は、ポートの障害の発生の有無をリンクテーブル9に記憶させるように構成される。リンクテーブル9は、ポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)と障害の発生の有無を対応づけるデータベースである。
【0045】
このように構成することで、任意のポートで障害が発生した場合にはその情報を全てのラインカード3が検知できることとなり、ラインカード3間で障害の情報を共有することが可能になる。障害検知部8、リンクテーブル9、および強制転送処理部10は、共にフレーム処理部4内に備えられる。
【0046】
本実施の形態では、疎通確認フレームを1000pps(1msに1回)の送信周期で送信するように障害検知部8を構成した。これにより、各ラインカード3のフレーム処理部4間において、転送処理部5及びクロスバースイッチ2経由で、非常に短い間隔で疎通確認フレームを送受信し、ポートの障害検知やラインカード3の障害検知(中継経路の健全性の確認を含む)を高速に行うことが可能になる。本実施の形態では、任意のラインカード3から疎通確認フレームを3.5ms(疎通確認フレームの送信周期の3.5倍)受信しないときに、当該ラインカード3にて障害が発生したと判断するようにした。
【0047】
一例として、図示左側のラインカード3a(LC1)のフレーム処理部4から送信される疎通確認フレームの経路を示すと、図2のようになる。図2に示すように、本実施の形態ではクロスバースイッチ2を2つ備えているため、図示左側のクロスバースイッチ2aを通る経路(破線)と、図示右側のクロスバースイッチ2bを通る経路(一点鎖線)の2つの経路を介して、疎通確認フレームが送信される。
【0048】
強制転送処理部10は、複数のラインカード3のそれぞれに搭載され、受信したユニキャストフレームを転送する際に、当該転送先のポートで障害が検知され、かつ、当該転送先のポートを含む複数のポートにLAGが設定されているとき、受信したユニキャストフレームを、転送先のポートと同じLAGが設定されている他のポートに強制的に転送するものである。
【0049】
より具体的には、強制転送処理部10は、受信したユニキャストフレームの転送先のポートで障害が検知されているとき、当該転送先のポートに設定されているLAG(ここではLAG10)のLAG用転送先テーブル7を検索して障害の発生していないポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を特定し、受信したユニキャストフレームの転送先のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を、特定したポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)に強制的に変更するように構成される。
【0050】
本実施の形態では、強制転送処理部10は、LAG用転送先テーブル7に転送先として記憶されたポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を順次抽出すると共にリンクテーブル9を参照することを繰り返して、障害の発生していないポートの識別子を特定するように構成される。
【0051】
これにより、転送先のポートに障害があるユニキャストフレームは、転送先のポートと同じLAGに設定されている他のポートから出力されるようになり、バックアップ経路への切り替え(擬似的なLAGの縮退)が行われることになる。強制転送処理部10における機器内転送用ヘッダ内のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)の変更は、ハードウェアによる処理で行われるため、ポートの障害を検知した後、瞬時にバックアップ経路へ切り替えることが可能になる。
【0052】
以下、本実施の形態に係るネットワークスイッチ1の動作を説明する。
【0053】
図3に示すように、2つのラインカード3b,3c(LC2,LC3)にわたってLAG10が設定されており、そのうちのラインカード3b(LC2)に障害が発生した場合を考える。
【0054】
ラインカード3aの障害検知部8は、ラインカード3bから疎通確認フレームを所定時間(ここでは3.5ms)受信しないことで、ラインカード3bの障害を検知する。このラインカード3bの障害の検知は、シャーシ型スイッチ1の全てのラインカード3a,3cで略同時に行われる。ラインカード3aの障害検知部8は、ラインカード3bの全てのポートに障害が発生したことをリンクテーブル9に記憶する。
【0055】
ラインカード3a(LC1)にユニキャストフレームが入力されると、まず、ラインカード3aに搭載されたFDB6を参照して、受信したユニキャストフレームの宛先MACアドレスに対応する転送先を抽出する。ここでは、転送先がLAG10であったとする。
【0056】
さらに、転送先がLAG(LAG10)であるから、LAG10のLAG用転送先テーブル7を参照して、所定の方法で設定された分散IDに応じた転送先のポートの識別子(ラインカードおよびポートの識別子)を抽出する。ここでは、LAG用転送先テーブル7が図4(a)のように設定されており、かつ、分散ID(LBID)が1であったとする。この場合、転送先はラインカード3b(LC2)のポート1となる。なお、図4(a)において、例えば2.1はラインカード3b(LC2)のポート1を表しており、ピリオドの前がラインカード3の識別子、ピリオドの後がポートの識別子を表している。
【0057】
次に、強制転送処理部10が、リンクテーブル9を参照し、転送先のポートに障害が発生しているかを確認する。ここでは、ラインカード3b(LC2)の障害が検知されているため、図4(b)に示すように、リンクテーブル9では、ラインカード3b(LC2)の全てのポートに障害が発生していると記憶されている。なお、図4(b)において、Downはリンクダウン(つまり障害が発生している状態)、Upはリンクアップ(つまり障害が発生していない状態)を表している。
【0058】
強制転送処理部10は、リンクテーブル9を参照して、転送先のポート(2.1)に障害が発生していることを認識すると、LAG10のLAG用転送先テーブル7を検索して障害の発生していないポートの識別子を特定する。
【0059】
本実施の形態では、LAG10のLAG用転送先テーブル7に転送先として記憶されたポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を分散IDが小さいものから順に抽出すると共に、リンクテーブル9を参照することを繰り返し、障害の発生していないポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を特定する。ここでは、ラインカード3c(LC3)のポート1(3.1)が特定されることになる。
【0060】
なお、本実施の形態では、LAG用転送先テーブル7からのポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)の抽出を、分散IDが小さいものから順に行ったが、これに限らず、分散IDが大きいものから順に行ってもよいし、分散IDでなくLAGのメンバポートの番号順に抽出を行うようにしてもよい。
【0061】
障害の発生していないポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を特定した後、強制転送処理部10は、受信したユニキャストフレームの転送先のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)を、当該抽出したポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子、ここではラインカード3c(LC3)のポート1)に強制的に変更するように構成される。
【0062】
その後、転送先のポートの識別子(ラインカード3およびポートの識別子)が変更されたユニキャストフレームは、転送処理部5に出力され、ラインカード3(LC3)に転送された後、ラインカード3c(LC3)のポート1から出力される。ラインカード3b(LC2)の障害を検知してから、ユニキャストフレームを障害が発生していないラインカード3c(LC3)へ迂回させるまでにかかる時間は数十ms程度であり、従来の数百msと比較して通信断となる時間の大幅な短縮が可能である。
【0063】
その後、図示しない管理カードからの制御フレーム等によりLAG用転送先テーブル7の書き換えが実施されると、LAG用転送先テーブル7の転送先からラインカード3bが除去され、LAGの縮退がなされて従来通りの制御に移行する。つまり、本発明の処理は、LAG用転送先テーブル7の書き換えを実施するソフトウェアの処理を待つ間に、通信不可となるユニキャストフレームを、ハードウェアで強制的にリンクアップしている他のメンバポートへ迂回させる処理、と換言することもできる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態に係るネットワークスイッチ1は、ポートの障害を検知する障害検知部8と、受信したユニキャストフレームを転送する際に、当該転送先のポートで障害が検知され、かつ、当該転送先のポートを含む複数のポートにLAGが設定されているとき、受信したユニキャストフレームを、転送先のポートと同じLAGが設定されている他のポートに強制的に転送する強制転送処理部10と、を備えている。これにより、従来と比較して、ポートに障害が発生した際のバックアップ経路への切り替え時間、すなわち通信断となる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、障害検知部8を、複数のラインカード3のそれぞれに搭載しており、各ラインカード3間で互いに定期的にポートの障害情報を含む疎通確認フレームを送受信することにより、ポートの障害の発生を互いに通知するように構成しており、かつ、任意のラインカード3から疎通確認フレームを所定時間受信しないとき、当該ラインカード3の全てのポートで障害が発生したと判断するように構成している。これにより、障害の検知を高速に(例えば3.5ms以内に)行うことができ、ポートやラインカード3に障害が発生した際のバックアップ経路への切り替え時間をより短縮することが可能となり、通信断となる時間を数十ms程度と非常に短時間にすることが可能になる。
【0066】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば、上記実施の形態では、疎通確認フレームを用いてポートやラインカード3の障害検知を行ったが、独自の方式でポートやラインカード3の障害検知を行うようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、障害検知部8を複数のラインカード3のそれぞれに搭載したが、これに限らず、従来通り管理カードに障害検知部8を搭載してもよい。この場合、各ラインカード3で障害を認識するまでの時間が長くなってしまうが、この場合でも、従来必須であったLAG用転送先テーブル7の書き換えが終了するまでの時間は短縮できるので、従来と比較してバックアップ経路への切り替え時間、すなわち通信断となる時間は短縮できる。
【0069】
上記実施の形態では、一例として、本発明をシャーシ型スイッチに適用する場合を説明したが、本発明はボックス型スイッチにも適用可能である。この場合、疎通確認フレーム等による障害発生情報の共有が不要となるので、よりシンプルな構成とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ネットワークスイッチ
2 クロスバースイッチ
3 ラインカード
4 フレーム処理部
5 転送処理部
6 FDB
7 LAG用転送先テーブル
8 障害検知部
9 リンクテーブル
10 強制転送処理部
11 筐体
図1
図2
図3
図4
図5