特許第5776700号(P5776700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776700
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20150820BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20150820BHJP
   H01L 35/18 20060101ALI20150820BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20150820BHJP
   H01L 35/14 20060101ALI20150820BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H01L35/32 A
   H01L35/18
   H01L35/16
   H01L35/14
   H02N11/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-545677(P2012-545677)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2011075918
(87)【国際公開番号】WO2012070395
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-262269(P2010-262269)
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅宏
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0072454(US,A1)
【文献】 特開2009−016812(JP,A)
【文献】 実開平02−026387(JP,U)
【文献】 特開2008−182160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/16、35/00−37/04、
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面に隣接する第二側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第二側面に隣接する第三側面の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部とで構成されると共に、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面全面並びに第四側面全面に亘って形成された全面被覆部並びに全面被覆部と該第二側面と第四側面に隣接する第三側面の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成され、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置されると共に、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項3】
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面に隣接する第二側面全面に亘って形成されかつ部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面に隣接する第三側面の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部とで構成されると共に、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項4】
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面全面並びに第四側面全面に亘って形成されかつ一方が部分的に欠損している部分欠損被覆部並びに他方が全面被覆部若しくは部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面と第四側面に隣接する第三側面の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成され、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置されると共に、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項5】
上記伝熱構造部材の高熱伝導部が、アルミニウム、銅から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
上記伝熱構造部材における低熱伝導部の熱伝導度が、0.1W/mK以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項7】
上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体に向けて配置される伝熱構造部材の低熱伝導部における第三側面の短辺の長さが、熱電変換ユニット集合体における熱電変換ユニット単体の幅方向2列分の長さに略等しいことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度差を利用して熱を電気に変換する熱電変換モジュールに係り、特に、発電量が小さく、製造効率が低かった従来の課題を改善できる熱電変換モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進む中、再生可能なエネルギーの積極的活用と、既存エネルギーにおいて省エネルギーが必須の状況にある。中でも、人類が使用するエネルギーの6割強が熱として捨てられている状況下、その排熱の活用は特に重要と考えられている。
【0003】
その一つの手法が、排熱から発電する熱電変換素子である。仮に、捨てられている熱の5%が電気に変換できるならば、現在使用している電気量の約10%の増加が見込める。この電気量分を発電する発電所の建設を考えた場合、上記排熱利用の発電は膨大な寄与をもたらすことになる。
【0004】
ところで、ゼーベック効果を利用した従来の熱電変換素子は、p型の素子とn型の素子を“π”の字状に結合して下基板に垂直に立てる構造になっている。そして、n型−p型−n型−p型というように各素子を直列につなぐ必要があり、かつ、その一端を高温部、他端を低温部として温度差をつけることにより、温度差に応じた発電がなされるものであった。しかし、一般的に使用されている熱電変換素子の材料はBi−Te系であり、この材料が脆い材質の上、半田での接合が難しいという事情があるため、ほとんど手作りでしか熱電変換素子は作られていなかった。このため、発電目的としてはなかなか大量に使用されていない事情があった。
【0005】
このような技術的背景下、特許文献1と非特許文献1において、効率良く発電を行えるとする熱電変換素子が提案されている。すなわち、この熱電変換素子は、p型材料からなる薄膜のp型熱電変換素子とn型材料からなる薄膜のn型熱電変換素子とが直列接続となるように成膜され、その両側に電極を成膜して熱電変換ユニットを構成すると共に、熱電変換ユニットの両面に熱伝導率の異なる2種類の材料で構成された柔軟性を有するフィルム状基板を設けた構造を有するもので、熱電変換ユニット側に熱伝導率の低い絶縁体であるポリイミド樹脂等の材料にて皮膜を設け、熱電変換ユニットの接合面と反対側に熱伝導率の高い銅等の金属材料が上記フィルム状基板の外面の一部分に位置するように設けられたものであった。
【0006】
このような構造を採ることにより、上記フィルム状基板の上下面に温度差を加えたときの各層の熱流束の違いからフィルム状基板内部に温度差を生じさせ、フィルム状基板の厚さ方向の温度勾配をフィルム状基板の面内方向の温度勾配に効率よく変換させ、この温度勾配を利用して熱電変換ユニットで効率良く発電を行おうとするものであった。そして、特許文献1と非特許文献1に記載の発明は、機械的強度が高く、加工性に優れ、自動化が容易で大量生産が可能であり、更に、フレキシブルであることを生かし曲面等への設置も可能であるため設置場所が制限されない発電効率の高い熱電変換素子を提供することを目的としていた。
【0007】
具体的には、マスクを利用し、上記フィルム状基板を構成する樹脂シート上に素子構造を制御しながらスパッタリング法によりp型、n型の熱電材料をそれぞれ成膜して熱電変換ユニットを形成し、かつ、熱電変換ユニット上に別の樹脂シート(他方のフィルム状基板)を貼り付けることで熱電変換ユニットをサンドイッチする。次に、この接着した樹脂シートの両外側面上でかつp型、n型の熱電変換素子の接合部に相当する部位に、銅等の熱伝導の良い金属により上記接合部と同等サイズで同形のパターンを形成する。
【0008】
実際には、銅(図1中、material-Bと示す)が片面に塗布あるいは貼付されたポリイミドシート(図1中、material-Aと示す)を利用して、その裏面にp型とn型の熱電変換ユニット(図1中、TE materialと示す)を形成し、もう1枚のポリイミドシートの銅が付いていない裏面側を上記熱電変換ユニット上に接着し、かつ、貼り合わせシートの両表面にある銅薄膜をエッチングして所望のパターンを切る。この構造体の断面を図1に示す。この銅の部分が、高温部、低温部に接触することになる。そこからの熱伝導により、樹脂シート面に平行な熱電変換ユニット内に温度差がついて発電するというものであった。
【0009】
但し、特許文献1と非特許文献1に記載された上記方法では、高温側、低温側の温度接触部(以下、温度接触部と称する)からの熱伝導が樹脂(ポリイミドシート)内での熱拡散による熱伝導のみのため、熱電変換ユニットへの熱伝導性が低く、熱電変換ユニット内での温度勾配が付きにくいことから発電量が小さくなってしまうという課題が存在した。
【0010】
そこで、この課題を解決するため、本発明者が多数の熱電変換構造体を検討した結果、シート型の熱電変換ユニットにおいては、縦方向の温度差をシート内の横方向の温度差に転換することが重要であることを発見し、例えば柱状の伝熱棒(熱伝導率の高い銅等の材料から成る高熱伝導部)が断熱材(基板)中を略貫通するように設置した構造の熱電変換モジュールを提案している(特許文献2の図8図16を参照)。このような構造とすることにより、高温部、低温部の温度が各温度接触部と各基板を介して効率よく熱電変換ユニットに伝わるようになり、これにより熱電変換モジュール内の横方向の大きな温度差が実現されることになる結果、発電量を増加、改善させることが可能となった。
【0011】
しかし、上記伝熱棒が断熱材中を略貫通する特許文献2に記載の熱電変換モジュールではその構造が複雑となるため、その分、熱電変換モジュールを製造する際の効率が悪いという課題があり、未だ改善の余地を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−186255号公報
【特許文献2】特開2009−16812号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】NEDO平成18年度研究助成事業成果報告会 産業技術研究助成事業「エネルギー・環境技術」プロジェクトID:03B70010c=「低温廃熱利用のためのシート状フレキシブル熱電変換素子の研究開発」の発表資料
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような問題に着目してなされたもので、温度接触部からの熱伝導が樹脂内での熱拡散による熱伝導のみのため、この熱伝導性の低さから温度勾配を付けに難いことに起因して発電量が小さいといった特許文献1の上記課題を改善し、かつ、特許文献2の熱電変換モジュールにおいてその構造が複雑になったことに伴う製造効率が低いといった課題を解消できる熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、この課題を解決するため、高熱伝導性の伝熱棒が断熱材(基板)中を貫通する特許文献2の構造体に変えて、本発明者は以下のような新たな構造体を検討した。すなわち、長尺直方体形状の低熱伝導部とこの側面を部分的に被覆する断面略L字形状若しくは略コ字形状の高熱伝導部とで構成された単純構造の伝熱構造部材をまず製造し、この伝熱構造部材を二次元的に複数連続して配列させた伝熱構造部材集合体を製造する。
【0016】
そして、この伝熱構造部材集合体をp型材料からなるp型熱電変換素子とn型材料からなるn型熱電変換素子が接続された熱電変換ユニットの両面に配置させた場合、上記断熱材(基板)中に高熱伝導性の伝熱棒を貫通させる煩雑な製造工程を経ることなく特許文献2に記載された熱電変換モジュールと略同等に機能する熱電変換モジュールが簡便に得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
【0017】
すなわち、第一の発明に係る熱電変換モジュールは、
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面に隣接する第二側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第二側面に隣接する第三側面の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部とで構成されると共に、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とし、
また、第二の発明に係る熱電変換モジュールは、
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面全面並びに第四側面全面に亘って形成された全面被覆部並びに全面被覆部と該第二側面と第四側面に隣接する第三側面の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成され、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置されると共に、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする。
【0018】
次に、第三の発明に係る熱電変換モジュールは
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面に隣接する第二側面全面に亘って形成されかつ部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面に隣接する第三側面の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部とで構成されると共に、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とし、
第四の発明に係る熱電変換モジュールは、
p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられ、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有する熱電変換モジュールにおいて、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面全面並びに第四側面全面に亘って形成されかつ一方が部分的に欠損している部分欠損被覆部並びに他方が全面被覆部若しくは部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面と第四側面に隣接する第三側面の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成され、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置されると共に、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第一および第三の発明に係る熱電変換モジュールによれば、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面に隣接する第二側面全面に亘って形成された全面被覆部若しくは部分欠損被覆部と該第二側面に隣接する第三側面の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部とで構成されると共に、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されているため、断熱材(基板)中に高熱伝導性の伝熱棒を貫通させるような煩雑な製造工程を経ることなく特許文献2に記載された熱電変換モジュールと略同等に機能する熱電変換モジュールを得ることができることから、長尺直方体形状の低熱伝導部と断面略L字形状の高熱伝導部とで構成される単純構造の伝熱構造部材を量産しておくことにより、特許文献2に記載された熱電変換モジュールと略同等に機能する熱電変換モジュールを簡便に製造することが可能となる。
【0020】
また、第二および第四の発明に係る熱電変換モジュールにおいても、
複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体により上記基板を構成し、各伝熱構造部材が、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面、第二側面、第三側面および第四側面を有する長尺直方体形状の低熱伝導部と、この低熱伝導部の第一側面全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面全面並びに第四側面全面に亘って形成された全面被覆部若しくは部分欠損被覆部並びに全面被覆部若しくは部分欠損被覆部と該第二側面と第四側面に隣接する第三側面の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成され、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面側を上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体側に向けて上記伝熱構造部材集合体がそれぞれ配置されると共に、各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面の高熱伝導部で被覆された部分被覆部がp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体の各伝熱構造部材における低熱伝導部の第三側面に対峙する第一側面の高熱伝導部で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部に接続されているため、断熱材(基板)中に高熱伝導性の伝熱棒を貫通させるような煩雑な製造工程を経ることなく特許文献2に記載された熱電変換モジュールと略同等に機能する熱電変換モジュールを得ることができることから、長尺直方体形状の低熱伝導部と断面略コ字形状の高熱伝導部とで構成される単純構造の伝熱構造部材を量産しておくことにより、特許文献2に記載された熱電変換モジュールと略同等に機能する熱電変換モジュールを簡便に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】特許文献1の従来例に係る熱電変換素子の主要部構成を示す断面図。
図2図2(A)は第一の発明に係る熱電変換モジュールに組み込まれる伝熱構造部材の概略斜視図、図2(B)は第二の発明に係る熱電変換モジュールに組み込まれる伝熱構造部材の概略斜視図、図2(C)は第三の発明に係る熱電変換モジュールに組み込まれる伝熱構造部材の概略斜視図、図2(D)は第四の発明に係る熱電変換モジュールに組み込まれる伝熱構造部材の概略斜視図。
図3図3(A)は第一の発明に係る熱電変換モジュールの概略平面図、図3(B)は図3(A)の概略断面図。
図4図4(A)は第二の発明に係る熱電変換モジュールの概略平面図、図4(B)は図4(A)の概略断面図。
図5図5(A)は本発明に係る熱電変換モジュールを製造する際に用いられるp型材料用マスクの一例を示す平面図、図5(B)は上記p型材料用マスクを用いて形成されたp型熱電変換素子のパターンを示す概略斜視図。
図6図6(A)は本発明に係る熱電変換モジュールを製造する際に用いられるn型材料用マスクの一例を示す平面図、図6(B)は上記n型材料用マスクを用いて形成されたn型熱電変換素子のパターンを示す概略斜視図。
図7図7(A)はp型熱電変換素子とn型熱電変換素子とが接続された熱電変換ユニットを二次元的に複数配列させた熱電変換ユニット集合体の平面図、図7(B)はp型熱電変換素子とn型熱電変換素子とが直接接続された熱電変換ユニットのパターンを示す概略斜視図。
図8】本発明に係る熱電変換モジュールのp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位を示す説明図。
図9】実施例1において適用された伝熱構造部材の概略斜視図。
図10】実施例1に係る熱電変換モジュールの熱電対による温度測定を行った位置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明に係る熱電変換モジュールは、熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に設けられかつ熱伝導率の異なる材料により構成される上記基板(例えば、特許文献1のフィルム状基板)として、複数の伝熱構造部材が二次元的に連続して配列された伝熱構造部材集合体を適用することを最大の特徴としている。
【0024】
以下、伝熱構造部材集合体を構成する伝熱構造部材について説明する。
1.伝熱構造部材
上記熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面に設けられる伝熱構造部材集合体の伝熱構造部材は、熱伝導率の低い材料から成る低熱伝導部と熱伝導率の高い材料から成る高熱伝導部とで構成され、簡便に量産できるように単純な構造を有していることが好ましく、例えば、以下の構造体が例示される。
【0025】
(1)2.5面型伝熱構造部材
「2.5面型伝熱構造部材」と仮称した一例目の伝熱構造部材100は、図2(A)に示すように、長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面1に隣接する第二側面2全面に亘って形成された全面被覆部と該第二側面2に隣接する第三側面3の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部3aとから成る断面略L字形状の高熱伝導部21とで構成される。
【0026】
そして、2.5面型伝熱構造部材100を集合させて熱電変換モジュールに組み込むには、図3(B)に示すように複数の伝熱構造部材100についてその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に連続して配列させて伝熱構造部材集合体110を構成し、かつ、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3側を図3(B)に示す熱電変換ユニット集合体200側に向けて伝熱構造部材集合体110を配置させると共に、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが熱電変換ユニット集合体200のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接するように調整すればよい。
【0027】
尚、複数の伝熱構造部材100をその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に配列させて上記伝熱構造部材集合体110を構成するには、例えば図3(B)に示すようにポリイミド樹脂等から成るシート201上に接着剤を介し伝熱構造部材100を貼り付ける方法が挙げられる。また、上記熱電変換ユニット集合体200側に向けて配置される伝熱構造部材100の低熱伝導部20における第三側面3の短辺の長さについては、例えば、図3(A)(B)に示すように熱電変換ユニット集合体200における熱電変換ユニット単体の幅方向2列分の長さに略等しく設定すればよい。
【0028】
(2)3.5面型伝熱構造部材
「3.5面型伝熱構造部材」と仮称した二例目の伝熱構造部材101は、図2(B)に示すように、長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面1にそれぞれ隣接する第二側面2全面並びに第四側面4全面に亘って形成された全面被覆部並びに全面被覆部と該第二側面2と第四側面4に隣接する第三側面3の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部3aとから成る断面略コ字形状の高熱伝導部21とで構成される。
【0029】
そして、3.5面型伝熱構造部材101を集合させて熱電変換モジュールに組み込むには、図4(B)に示すように複数の伝熱構造部材101についてその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に連続して配列させて伝熱構造部材集合体111を構成し、かつ、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3側を図4(B)に示す熱電変換ユニット集合体210側に向けて伝熱構造部材集合体111を配置させると共に、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが熱電変換ユニット集合体210のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接するように調整すればよい。
【0030】
尚、複数の伝熱構造部材101をその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に配列させて上記伝熱構造部材集合体111を構成するには、例えば図4(B)に示すようにポリイミド樹脂等から成るシート211上に接着剤を介し伝熱構造部材101を貼り付ける方法が挙げられる。また、上記熱電変換ユニット集合体210側に向けて配置される伝熱構造部材101の低熱伝導部20における第三側面3の短辺の長さについては、例えば、図4(A)(B)に示すように熱電変換ユニット集合体210における熱電変換ユニット単体の幅方向2列分の長さに略等しく設定すればよい。
【0031】
(3)部分欠損2.5面型伝熱構造部材
「部分欠損2.5面型伝熱構造部材」と仮称した三例目の伝熱構造部材102は、図2(C)に示すように、長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面1に隣接する第二側面2全面に亘って形成されかつ部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面2に隣接する第三側面3の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略L字形状の高熱伝導部21とで構成される。尚、三例目の伝熱構造部材102において第二側面2の高熱伝導部21を部分的に欠損させている理由は、複数の伝熱構造部材について第二側面2の部分欠損被覆部と高熱伝導部21で被覆されていない第四側面4が互いに接するように二次元的に連続して配列させた際、第二側面2の高熱伝導部21を部分的に欠損させ、熱伝変換ユニット集合体との間の熱伝導度を調整して最適な熱伝導状態を得るためである。
【0032】
尚、この部分欠損2.5面型伝熱構造部材103を集合させて熱電変換モジュールに組み込む方法は、上記2.5面型伝熱構造部材の場合と同一である。
【0033】
(4)部分欠損3.5面型伝熱構造部材
「部分欠損3.5面型伝熱構造部材」と仮称した四例目の伝熱構造部材103は、図2(D)に示すように、長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面にそれぞれ隣接する第二側面2全面並びに第四側面4全面に亘って形成されかつ一方が部分的に欠損している部分欠損被覆部並びに他方が全面被覆部若しくは部分的に欠損している部分欠損被覆部と該第二側面2と第四側面4に隣接する第三側面3の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部とから成る断面略コ字形状の高熱伝導部21とで構成される構造体である。尚、第二側面2と第四側面4の少なくとも一方の高熱伝導部21を部分的に欠損させている理由は「部分欠損2.5面型伝熱構造部材」と同様である。
【0034】
(5)高熱伝導部を構成する熱伝導率の高い材料(高熱伝導材料)
本発明に係る伝熱構造部材の高熱伝導部を構成する熱伝導率の高い材料(高熱伝導材料)としては金属等が好ましく、具体的には、銅、アルミニウム等の金属、Cu−Ni−Si系合金、Al−Zn−Mg系合金、Be−Cu系合金等の熱伝導度の高い合金やセラミックス等が挙げられる。その中でも、アルミニウム、銅から選ばれる1種であることが好ましい。
【0035】
また、低温側に配置される伝熱構造部材集合体と高温側に配置される伝熱構造部材集合体の高熱伝導部を構成する高熱伝導材料については、両方とも同一の材料で構成してもよいし異なる材料を用いて構成してもよく任意である。
【0036】
(6)低熱伝導部を構成する熱伝導率の低い材料(低熱伝導材料)
本発明に係る伝熱構造部材の低熱伝導部を構成する熱伝導率の低い材料(低熱伝導材料)としては、ポリイミド、発砲スチロール等の樹脂あるいはガラス等が挙げられる。尚、高熱伝導材料の場合と同様、低温側に配置される伝熱構造部材集合体と高温側に配置される伝熱構造部材集合体の低熱伝導部を構成する低熱伝導材料については、両方とも同一の材料で構成してもよいし異なる材料を用いて構成してもよく任意である。
【0037】
また、低熱伝導部を構成する材料は、電気的に絶縁材料で熱伝導率のできるだけ低い材料が望ましく、目的によって上述したポリイミド、発砲スチロール等の樹脂材料あるいはガラス材料を使い分けることができる。また、上記低熱伝導部は熱伝導率が低い方が望ましく、特に、熱伝導率が0.1W/mK以下であることが好ましい。また、低熱伝導部の厚さについては、厚い方が、熱電変換素子間の温度差が大きくなるので望ましい。但し、低熱伝導部があまり厚くなると、本発明に係る熱電変換モジュールを太陽電池の裏面に貼付して発電しようとした場合、太陽電池自体の温度上昇が問題になる可能性があるが、低熱伝導部の厚さが数mm程度では温度上昇の影響はさほど大きくない。
【0038】
また、本発明に係る伝熱構造部材は、長尺直方体形状の低熱伝導部に接着剤を用いて断面略L字形状若しくは略コ字形状の高熱伝導部を固定するが、適用する接着剤については、特に熱伝導度等にこだわる必要はなく、特別な制限は無い。
【0039】
2.熱電変換モジュール
次に、上記伝熱構造部材集合体を基板に適用した本発明の熱電変換モジュールについて説明する。
【0040】
(1)2.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュール
2.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールは、図3(A)(B)に示すように、p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体(図3では熱電変換ユニット集合体200)両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられると共に、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有するものである。また、上記基板は、複数の伝熱構造部材100を二次元的に連続して配列させた伝熱構造部材集合体110により構成されている。また、各伝熱構造部材100は、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面1に隣接する第二側面2全面に亘って形成された全面被覆部と該第二側面2に隣接する第三側面3の隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部3aとから成る断面略L字形状の高熱伝導部21とで構成されている。そして、上記伝熱構造部材集合体110の各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3側を上記熱電変換ユニット集合体200側に向けて上記伝熱構造部材集合体110がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部で被覆された部分被覆部3aがp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体110の各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3に対峙する第一側面1の高熱伝導部21で被覆された全面被覆部が、熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部(図示せず)に接続されていることを特徴としている。
【0041】
2.5面型伝熱構造部材が適用された第一の発明に係る熱電変換モジュールによれば、図3(A)(B)に示すように低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが、上記熱電変換ユニット集合体200のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されている。このため、高温側の温度接触部(図示せず)に全面被覆部(高熱伝導部21)が接続された低熱伝導部20の第一側面1からの熱(温度)が、低熱伝導部20の第二側面2全面を被覆する高熱伝導部21と第三側面3の部分被覆部3aを介しp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子に伝わり、また、p型熱電変換素子またはn型熱電変換素子からの熱(温度)も、他方側の第三側面3の部分被覆部3aと第二側面2全面を被覆する高熱伝導部21を介し反対側に位置する低温側の温度接触部(図示せず)に接続された第一側面1の全面被覆部(高熱伝導部21)に効率よく伝わることから、熱電変換ユニット集合体200内に大きな温度差を実現させることが可能となる。
【0042】
(2)3.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュール
3.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールは、図4(A)(B)に示すように、p型材料から成る薄膜のp型熱電変換素子とn型材料から成る薄膜のn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体(図4では熱電変換ユニット集合体210)両面に、熱伝導率の高い材料と低い材料を組み合わせて構成された基板がそれぞれ設けられると共に、一方の基板を高温側にかつ他方の基板を低温側に配置した構造を有するものである。また、上記基板は、複数の伝熱構造部材101を二次元的に連続して配列させた伝熱構造部材集合体111により構成されている。また、各伝熱構造部材101は、それぞれ長さ方向に伸びる第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する長尺直方体形状の低熱伝導部20と、この低熱伝導部20の第一側面1全面に亘って形成された全面被覆部と該第一側面1にそれぞれ隣接する第二側面2全面並びに第四側面4全面に亘って形成された全面被覆部並びに全面被覆部と該第二側面2と第四側面4に隣接する第三側面3の各隣接側部分面に亘って形成された部分被覆部3aとから成る断面略コ字形状の高熱伝導部21とで構成されている。そして、上記伝熱構造部材集合体111の各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3側を上記熱電変換ユニット集合体210側に向けて上記伝熱構造部材集合体111がそれぞれ配置され、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aがp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の上記接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されており、かつ、上記伝熱構造部材集合体111の各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3に対峙する第一側面1の高熱伝導部21で被覆された全面被覆部が熱伝導率の高い材料で構成された温度接触部(図示せず)に接続されていることを特徴としている。
【0043】
3.5面型伝熱構造部材が適用された第二の発明に係る熱電変換モジュールによれば、図4(A)(B)に示すように低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが、上記熱電変換ユニット集合体210のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接されている。このため、高温側の温度接触部(図示せず)に全面被覆部(高熱伝導部21)が接続された低熱伝導部20の第一側面1からの熱(温度)が、低熱伝導部20の第二側面2と第四側面4の各全面を被覆する高熱伝導部21と第三側面3の部分被覆部3aを介しp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子に伝わり、また、p型熱電変換素子またはn型熱電変換素子からの熱(温度)も、他方側の第三側面3の部分被覆部3aと第二側面2と第四側面4の各全面を被覆する高熱伝導部21を介し反対側に位置する低温側の温度接触部(図示せず)に接続された第一側面1の全面被覆部(高熱伝導部21)に効率よく伝わることから、熱電変換ユニット集合体210内に大きな温度差を実現させることが可能となる。
【0044】
(3)熱電変換材料
本発明に係る熱電変換ユニットに適用するp型、n型の熱電変換材料としては、高性能を有するIrSb、BiTe、PbTe等のカルコゲン系化合物の他、熱電特性は低いが資源的に豊富なFeSi、SiGe等の珪化物が挙げられる。また、Si半導体中のキャリアー濃度を1024(1/m)程度になるようにP、B、Al等種々の添加元素の単独または複合添加とその添加量を調整することにより、ゼーベック係数が極めて大きく、熱電変換効率を著しく高めたSi利用熱電変換材料も利用することができる。
【0045】
(4)温度接触部
本発明に係る熱電変換モジュールの各伝熱構造部材100、101、102、103における低熱伝導部20の第三側面3に対峙する第一側面1の高熱伝導部21で被覆された全面被覆部が接続される上記温度接触部の表面は、略黒色の酸化物膜あるいは熱伝導率の高い材料で被覆されていることが好ましい。上記材料としては、銅の酸化物、熱伝導度が高く対環境性の高い樹脂材料等が挙げられ、これにより、高温部、低温部の温度に追随しやすくなり、熱電変換モジュール内部での温度勾配が大きくなり、大発電が可能となり好ましい。
【0046】
また、本発明に係る熱電変換モジュールにおいては、低温側に配置されかつ高熱伝導部21で被覆された第一側面1の全面被覆部表面を粗面化することが好ましい。上記表面を粗面化するには、砂吹き付け若しくはやすり等で傷つけることを行えばよく、表面の粗さについては、実効的な表面積が見かけ上の面積の2倍あるいはそれ以上となるように粗くなっていれば効果が大きく、これにより熱伝達係数が2倍以上となるため有効である。
【0047】
また、本発明に係る熱電変換モジュールにおいては、低温側に配置されかつ高熱伝導部21で被覆された第一側面1の全面被覆部表面に放熱板を付加した構成を採ることも可能である。このような構成を採ることにより、実効的な表面積を、見かけ上(単に寸法から見られる)表面積の2倍以上にすることが可能で、大きな熱伝達係数(20W/mK以上)を得ることが可能となり、高温部と低温部の大きな温度差が得られ、発電量を大きくできる利点を有する。
【0048】
3.熱電変換モジュールの製造
本発明に係る熱電変換モジュールは、長尺直方体形状の低熱伝導部とこの側面を部分的に被覆する断面略L字形状若しくは略コ字形状の高熱伝導部とで構成された伝熱構造部材を二次元的に複数連続して配列させて得られた伝熱構造部材集合体を、上述したようにp型熱電変換素子とn型熱電変換素子とが直接若しくは金属材料を介し接続された熱電変換ユニットを二次元的に単数あるいは複数配列させた熱電変換ユニット単体あるいはその集合体両面にそれぞれ配置し、一方の伝熱構造部材集合体を高温側に配置しかつ他方の伝熱構造部材集合体を低温側にそれぞれ配置した構造を有している。
【0049】
そして、上記熱電変換ユニットを形成するには、例えば、厚さ50μm程度のポリイミド樹脂シートの一方の面に、図5(A)に示すようなp型用マスクを固定し、この状態でスパッタリング装置内に配置し、図5(B)に示すようにp型材料を、例えば1μm厚程度成膜する。
【0050】
その後、図6(A)に示すようなn型マスクを固定し、p型材料と同じ膜厚となるようにn型材料を1μm厚程度成膜する。薄膜のp型熱電変換素子11と薄膜のn型熱電変換素子12とが接続された図7(B)に示す熱電変換ユニット10を二次元的に複数配列させた熱電変換ユニット集合体(図7A参照)が得られ、更に、図7(A)に示すように熱電変換ユニット10が複数直列に配列された列ごとに電極13、14を付けて、電極を有する熱電変換ユニット集合体を得る。
【0051】
そして、例えば、2.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールを製造するには、まず、図2(A)に示した複数の2.5面型伝熱構造部材100についてその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に連続して配列させて一対の伝熱構造部材集合体110を製造する。
【0052】
次に、得られた一対の伝熱構造部材集合体110について、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3側を図3(B)に示した熱電変換ユニット集合体200(図7Aの符号10で示した熱電変換ユニットが二次元的に複数配列された熱電変換ユニット集合体に相当する)側に向けて配置し、かつ、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが、熱電変換ユニット集合体200のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位(図8において符号15で示す部位)に熱的に接続または近接するように調整した後、各伝熱構造部材100における低熱伝導部20の第三側面3に対峙する第一側面1の高熱伝導部21で被覆された全面被覆部の一方を温度接触部(高温側)に接続させ、他方を上記温度接触部(低温側)に接続させて2.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールを製造することができる。
【0053】
尚、熱電変換ユニット集合体のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位に熱的に接続または近接させる各低熱伝導部20における第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aの接触幅については、図3(B)に示す高温側と低温側とで必ずしも一致していなくともよく任意である。
【0054】
また、複数の2.5面型伝熱構造部材100をその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に配列させて一対の伝熱構造部材集合体110を製造するには、例えば図3(B)に示すように厚さ50μm程度のポリイミド樹脂等から成るシート201上に接着剤を介し伝熱構造部材100を貼り付ける方法により得ることができる。この場合、伝熱構造部材100が貼り付けられた一方のシート201裏面側に上記電極を有する熱電変換ユニット集合体が形成されていることが望ましいが、上記熱電変換ユニット集合体を別のシート(上記ポリイミド樹脂シート)に予め形成した後、その両面側から一対の伝熱構造部材集合体110を配置する方法でもよい。
【0055】
次に、例えば、3.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールを製造するには、まず、図2(B)に示した複数の3.5面型伝熱構造部材101についてその第二側面2と第四側面4が互いに接するように二次元的に連続して配列させて一対の伝熱構造部材集合体111を製造する。
【0056】
そして、得られた一対の伝熱構造部材集合体111について、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3側を図4(B)に示した熱電変換ユニット集合体210(図7Aの符号10で示した熱電変換ユニットが二次元的に複数配列された熱電変換ユニット集合体に相当する)側に向けて配置し、かつ、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3の高熱伝導部21で被覆された部分被覆部3aが、熱電変換ユニット集合体210のp型熱電変換素子またはn型熱電変換素子の接続部位若しくはその近傍部位(図8において符号15で示す部位)に熱的に接続または近接するように調整した後、各伝熱構造部材101における低熱伝導部20の第三側面3に対峙する第一側面1の高熱伝導部21で被覆された全面被覆部の一方を温度接触部(高温側)に接続させ、他方を上記温度接触部(低温側)に接続させて3.5面型伝熱構造部材が適用された熱電変換モジュールを製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0058】
[実施例1]
実施例1に係る熱電変換モジュールを構成する材料として以下のものを適用した。
【0059】
(1)熱電変換ユニット
熱電変換ユニットの1ユニット(1個のp型熱電変換素子と1個のn型熱電変換素子から成る最少構成部)のサイズを5mm×5mmとした。
【0060】
この熱電変換ユニットを電気的に直列あるいは適宜並列に形成して10cm×10cmを1モジュールとした。
【0061】
(2)2.5面型伝熱構造部材
(2−1)低熱伝導部
低熱伝導部を構成する材料として発泡スチロール(熱伝導度は、0.03W/mK程度)を用い、厚さ2mmの発泡スチロール板を10mm×100mmの短冊状に切断して、第一側面1、第二側面2、第三側面3および第四側面4を有する「2.5面型伝熱構造部材」の低熱伝導部20とした。
【0062】
(2−2)高熱伝導部
高熱伝導部を構成する材料として厚さ0.05mmの銅板を用い、この銅板を13mm×100mmに切断した。
【0063】
その上で、上記銅板の長辺に対し2箇所で平行に折り目を入れ、短辺上で10mmの点を通るもの、更に2mmのところで内側に90度角度で折り目を入れた。
【0064】
(2−3)2.5面型伝熱構造部材
そして、上記銅板(高熱伝導部21)と発泡スチロール(低熱伝導部20)を、接着剤を用いて固着し、図9に示す実施例1に係る「2.5面型伝熱構造部材」を作製した。
【0065】
尚、得られた図9に示す「2.5面型伝熱構造部材」の内、1mmの幅で長辺方向に伸びる銅板(高熱伝導部21)の部分被覆部位(部分面)3aを上記熱電変換ユニット側に向けて配置し、接着することで熱電変換モジュールが得られる。
【0066】
(3)2.5面型伝熱構造部材集合体
図9に示す「2.5面型伝熱構造部材」10個を二次元的に連続して配列し、図10に示すように厚さ50μmのポリイミドシート91上に貼り付けて実施例1に係る「2.5面型伝熱構造部材集合体」を作製した。ここで、「2.5面型伝熱構造部材」をポリイミドシート91上に接着するとき、高熱伝導性の接着剤を適用することが好ましく、本実施例1においては、米国Diemat社製の接着剤「DM440K2」を使用した。
【0067】
同様に、厚さ50μmの上記ポリイミドシート91上に10個の「2.5面型伝熱構造部材」を二次元的に連続して貼り付けて、もう一組の「2.5面型伝熱構造部材集合体」を作製した。
【0068】
(4)伝熱試験
次に、得られた一対の「2.5面型伝熱構造部材集合体」について、銅板(高熱伝導部21)の部分被覆部(部分面)3a側を各々対向させ、上記熱電変換ユニット集合体を介在させること無く、図10に示すように各々の部分被覆部(部分面)3aが5mmだけずれるように配置した後、各々の部分被覆部(部分面)3aの近傍(図10中、符号A点、B点で示す箇所)に熱電対を介在させた状態で一対の「2.5面型伝熱構造部材集合体」を接合させて「伝熱試験」用の媒体を得た。
【0069】
そして、図10に示すように、一方の「2.5面型伝熱構造部材集合体」における低熱伝導部20の高熱伝導部21で全面被覆された第一側面1側を、高温側で100℃に保持した金属板に接着し、他方の「2.5面型伝熱構造部材集合体」における低熱伝導部20の高熱伝導部21で全面被覆された第一側面1側を、低温側で30℃に保持した金属板に接続した。図10の符号A点が高温部に相当し、図10の符号B点が低温部に相当する。
【0070】
このような配置条件で符号A点と符号B点の温度を計測したところ、符号A点の温度は82℃、符号B点の温度は47℃であり、符号A点と符号B点の温度差は35℃あった。
【0071】
この結果、一対の「2.5面型伝熱構造部材集合体」間に熱電変換ユニット集合体を介在させて熱電変換モジュールを構成した場合、熱電変換ユニット集合体(1モジュール:10cm×10cm)が配置されるべき平面内に大きな温度差を作ることが可能となることが確認できた。
【0072】
(5)熱電変換モジュール
次に、上記「2.5面型伝熱構造部材集合体」間に熱電変換ユニット集合体を介在させて実施例1に係る熱電変換モジュールを製造した。
【0073】
具体的には、一方の「2.5面型伝熱構造部材集合体」を製造する前の厚さ50μmのポリイミドシート上に、図5図7に示した上述の方法に従って、上記熱電変換ユニットを電気的に直列に形成して10cm×10cmの熱電変換ユニット集合体(1モジュール)を得た後、熱電変換ユニット集合体が形成されたポリイミドシートの裏面側に、10個の「2.5面型伝熱構造部材」を二次元的に連続して貼り付けて、熱電変換ユニット集合体を裏面に有する「2.5面型伝熱構造部材集合体」を製造した。
【0074】
尚、上記熱電変換ユニットは、厚さ1μmのp型材料[(BiSb)Te]から成るp型熱電変換素子と厚さ1μmのn型材料(BiTe)から成るn型熱電変換素子とで構成される最小構成部を1ユニットとしている。
【0075】
そして、熱電変換ユニット集合体を裏面に有する「2.5面型伝熱構造部材集合体」と有しない「2.5面型伝熱構造部材集合体」について、銅板(高熱伝導部21)の部分被覆部(部分面)3a側を各々対向させ、上記熱電変換ユニット集合体を介在させた状態で図10に示すように各々の部分被覆部(部分面)3aが5mmだけずれるように配置し接合させた後、一方の「2.5面型伝熱構造部材集合体」における低熱伝導部20の高熱伝導部21で全面被覆された第一側面1側を高温側で100℃に保持した金属板に接着し、他方の「2.5面型伝熱構造部材集合体」における低熱伝導部20の高熱伝導部21で全面被覆された第一側面1側を低温側で30℃に保持した金属板に接続して発電を行ったところ、0.4Wの発電量があった。
【0076】
上記温度条件は、真夏の太陽電池の裏面の温度(約100℃)、大気温(約30℃)を想定している。
【0077】
この結果から、実施例1に係る熱電変換モジュールを太陽電池の裏側に貼った場合の発電量に換算すると、約4%の性能アップに相当することが確認された。
【0078】
すなわち、本来、15%の変換効率のシリコン太陽電池が19%の変換効率を実現したことに相当し、実施例1に係る熱電変換モジュールの寄与の大きいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば発電量を増加、改善させた熱電変換モジュールを簡便に製造することが可能となり、また、この熱電変換モジュールを太陽電池の裏面側に接着させることにより太陽電池の実効的な発電効率を上げることが可能となる。従って、本発明に係る熱電変換モジュールは太陽電池に組み込まれて利用される産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0080】
1 第一側面
2 第二側面
3 第三側面
3a 部分被覆
4 第四側面
10 熱電変換ユニット
11 p型熱電変換素子
12 n型熱電変換素子
13 電極
14 電極
15 各熱電変換素子の接続部位若しくは近傍部位
20 低熱伝導部
21 高熱伝導部
100 2.5面型伝熱構造部材
101 3.5面型伝熱構造部材
102 部分欠損2.5面型伝熱構造部材
103 部分欠損3.5面型伝熱構造部材
110 伝熱構造部材集合体
111 伝熱構造部材集合体
200 熱電変換ユニット集合体
201 シート
210 熱電変換ユニット集合体
211 シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10