特許第5776780号(P5776780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776780
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20150820BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20150820BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G06K19/077 272
   G06K19/077 140
   H01Q1/40
   H01Q7/00
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-536394(P2013-536394)
(86)(22)【出願日】2012年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2012074932
(87)【国際公開番号】WO2013047680
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-217165(P2011-217165)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 俊博
(72)【発明者】
【氏名】石坂 裕宣
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田崎 耕司
(72)【発明者】
【氏名】細井 博之
(72)【発明者】
【氏名】角田 譲
(72)【発明者】
【氏名】成田 博明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博樹
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−165678(JP,A)
【文献】 特開2006−189961(JP,A)
【文献】 特開2007−102348(JP,A)
【文献】 特開2005−056221(JP,A)
【文献】 特開2000−276569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/14
H01Q 1/40
H01Q 7/00
H01Q 9/26− 9/27
H04B 1/59
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層のアンテナと、前記アンテナに重ならないようにワイヤボンディングで接続された大きさが0.6mm□以下のICチップと、このICチップおよび前記アンテナを封止する封止材とを有し、
前記アンテナが、前記ICチップの外周部に配置され、間隙を有して隣接する構成成分を含むコイルアンテナであり、前記アンテナの間隙には前記封止材が配置されており、
前記アンテナが、断面視で、きのこのように傘を有しており、
前記アンテナの導線幅に対する導線間距離が0.2mm対0.2mm〜0.05mm対0.05mmの範囲であり、
前記アンテナのインダクタンスLと前記ICチップの静電容量Cとを含めて形成される電気回路の電磁界シミュレータによる共振周波数fが、ICチップの動作周波数またはその付近であり、
前記間隙を有して隣接するアンテナの構成部分の間に容量成分が生じ、さらに前記アンテナの間隙に配置された前記封止材の比誘電率が寄与することにより、前記間隙を有して隣接するアンテナの構成部分が静電容量を提供し、前記ICチップとこの外周部に配置されるアンテナとを有する構成全体の実質的な静電容量を、前記ICチップ単体の静電容量よりも増加させるRFIDタグ。
【請求項2】
単層のアンテナと、金属の層を介して配置され、前記アンテナにワイヤボンディング接続で電気的に接続された大きさが0.6mm□以下のICチップと、このICチップおよび前記アンテナを封止する封止材とを有し、
前記アンテナが、前記ICチップの外周部に配置され、間隙を有して隣接する構成成分を含むコイルアンテナであり、前記アンテナの間隙には前記封止材が配置されており、
前記アンテナが、断面視で、きのこのように傘を有しており、
前記アンテナの導線幅に対する導線間距離が0.2mm対0.2mm〜0.05mm対0.05mmの範囲であり、
前記アンテナのインダクタンスLと前記ICチップの静電容量Cとを含めて形成される電気回路の電磁界シミュレータによる共振周波数fが、ICチップの動作周波数またはその付近であり、
前記間隙を有して隣接するアンテナの構成部分の間に容量成分が生じ、さらに前記アンテナの間隙に配置された前記封止材の比誘電率が寄与することにより、前記間隙を有して隣接するアンテナの構成部分が静電容量を提供し、前記ICチップとこの外周部に配置されるアンテナとを有する構成全体の実質的な静電容量を、前記ICチップ単体の静電容量よりも増加させるRFIDタグ。
【請求項3】
請求項1または2において、
アンテナのインダクタンスLとICチップの静電容量Cとを含めて形成される電気回路の共振周波数fが、下記(1)式に基づいて、電磁界シミュレータにより求められる共振周波数であるRFIDタグ。
【数1】
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、
ICチップの動作周波数が0.86〜0.96GHzであり、アンテナのインダクタンスLとICチップの静電容量Cとを含めて形成される電気回路の共振周波数fが、0.
2〜2GHzであるか、
または、ICチップの動作周波数が13.56MHzであり、前記共振周波数fが1
3.56〜29MHzであるか、
または、ICチップの動作周波数が2.45GHzであり、前記共振周波数fが2〜
2.45GHzであるRFIDタグ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、RFIDタグの大きさが、縦13mm以下、横13mm以下及び高さ1.0mm以下、または縦4mm以下、横4mm以下及び高さ0.4mm以下、または縦2.5mm以下、横2.5mm以下及び高さ0.3mm以下、または縦1.9mm以下、横1.9mm以下及び高さ0.3mm以下であるRFIDタグ。
【請求項6】
請求項1〜の何れかにおいて、動作周波数帯が13.56MHz〜2.48GHzであるRFIDタグ。
【請求項7】
請求項1〜の何れかにおいて、動作周波数帯が0.86〜0.96GHzであるRFIDタグ。
【請求項8】
請求項1〜の何れかにおいて、封止材の比誘電率が2.6以上であるRFIDタグ。
【請求項9】
請求項1〜の何れかにおいて、エポキシと炭素とシリカを主成分とした封止材を用いることで耐熱性を向上させたRFIDタグ。
【請求項10】
請求項1〜の何れかにおいて、ステンレス板上にレジストでパターンを形成し、めっきによってレジストがない部分に金属の層又はアンテナとなる金属を形成し、レジスト剥離後にICチップを搭載して前記金属とICチップを電気的に接続し、前記金属と前記ICチップを封止材によって封止し、ステンレス板のみを剥がすことによって得る、アンテナと、このアンテナに接続されたICチップと、このICチップおよび前記アンテナを封止する封止材とを有するRFIDタグ。
【請求項11】
請求項10において、金属がニッケルを主成分とする金属であるRFIDタグ。
【請求項12】
請求項10または11において、めっきにより形成された金属が、RFIDタグ表層側よりも中心側の方が太いRFIDタグ。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかにおいて、金属が表面に露出しているRFIDタグ。
【請求項14】
請求項13に記載のRFIDタグを共に封止することで、RFIDタグの金属が表面に露出していない半導体パッケージ。
【請求項15】
ステンレス板上にレジストでパターンを形成し、めっきによってレジストがない部分に金属の層又はアンテナとなる金属を形成し、レジスト剥離後にICチップを搭載して前記金属とICチップを電気的に接続し、前記金属と前記ICチップを封止材によって封止し、ステンレス板のみを剥がすことによって得る、アンテナと、このアンテナに接続されたICチップと、このICチップおよびアンテナを封止する封止材とを有する請求項1〜10の何れかに記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項16】
請求項15において、金属がニッケルを主成分とする金属であるRFIDタグの製造方法。
【請求項17】
請求項15または16において、めっきにより形成された金属が、RFIDタグ表層側よりも中心側の方が太いRFIDタグの製造方法。
【請求項18】
請求項1517の何れかにおいて、金属が封止材の表面に露出しているRFIDタグの製造方法。
【請求項19】
請求項18において、金属が封止材の表面に露出したRFIDタグを共に封止することで、RFIDタグの金属が表面に露出していない半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタと共に用いて非接触で情報の送受信を行うRFID(radio frequency identification)タグに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の情報や識別、管理、偽造防止の目的で、商品、包装、カード、書類などにはICチップを搭載した非接触式RFIDタグが多数利用されている。ICチップには商品の名称、価格などあらゆる情報が書き込まれており、場合により製造日や製造所、残金などの情報をあとでリーダライタによって書き込むことが出来るものもある。管理、販売、使用する際にはリーダライタによってICチップの情報を無線で読み取り、利用できる。このようにしてRFIDタグは商品管理の利便性向上や安全性の向上、また人為的ミスをなくすなど大きなメリットをもたらしている(特許文献1参照)。
【0003】
RFIDタグは、商品に取り付けたりカードに内蔵したりするという性格上、小型薄型化の要求も強い。特に、従来ロット番号を刻印・記入して管理したりあるいは管理そのものが出来ていなかったものへの利用として近年着目されている。具体的には眼鏡や時計あるいは医療用サンプルなどの小型多品種品の管理であり、商品(サンプル)の製造所、作業者、製造日、使用材料、寸法、特性、在庫数管理などに役立ち、管理作業者の手間を減らしてかつミスを防ぐことができる。これらのような利便性のある管理システム実現のためには、RFIDタグの小型化が必要不可欠となる。
【0004】
小型のRFIDタグとしては、図1に示すように、ICチップ上に直接アンテナ形成したもの(オンチップアンテナ)が考えられているが、通信距離が短い(1mm以下)問題があった。実際に使用する現場において通信距離が1mm以下程度というほぼ接触状態でしか通信できないRFIDタグよりは、通信距離が2〜3mm以上のRFIDタグのほうが作業効率がよく作業の自由度も高くなるため有用である。そのため、図1のようなオンチップアンテナにおいて通信距離を長くしようとするとICチップのサイズを拡大する必要があるため、コスト高になる問題があった(特許文献2、3参照)。
【0005】
一方、通信距離が比較的長い(2〜3mm以上)RFIDタグとしては、図2に示すように、フィルム基材上にアンテナを形成し、ICチップを搭載したRFIDタグが使用されているが、サイズが大きい(数cm□以上)問題があった(特許文献4参照)。なお、数cm□とは、一辺が2〜3cmの正方形を意味する。以下でも同様である。
【0006】
一方、ICパッケージ内にアンテナを形成するという量産性に優れた技術が報告されている(特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−347635号公報
【特許文献2】特開2001−344464号公報
【特許文献3】特開2006−221211号公報
【特許文献4】特開2011−103060号公報
【特許文献5】特開2001−52137号公報
【特許文献6】特開2010−152449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、サイズが数mm□オーダーでかつ通信距離がその10倍程度の数cmオーダーであるようなRFIDタグは、産業上利用価値が非常に高いにもかかわらず、提供されていなかった。
【0009】
本発明は、安価であり、さらに小型で通信距離が数mm以上である信頼性に優れた超小型のRFIDタグを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明は、小型(1.9〜13mm□)であっても、数cm以上の通信距離を確保可能で、しかも従来のオンチップアンテナに比べてコストを低減可能なRFIDタグを提供するものである。また半導体装置の製造工程などにおいて行われるはんだリフローや射出成型など250〜300℃数秒の耐熱性を有し、かつ半導体装置の使用中の発熱にも耐えるRFIDタグを提供するものである。
【0011】
ステンレス板90上にレジスト100でパターンを形成し、めっきによってレジスト100がない部分にアンテナ20等となる金属を形成し、レジスト100剥離後にICチップ30を搭載して前記アンテナ20とICチップ30を電気的に接続し、前記アンテナ20と前記ICチップ30を封止材10によって封止し、ステンレス板90のみを剥がし、ダイシング等で切断することによって1.9〜13mm□以下の大きさのRFIDタグ80を得る。
【0012】
このとき、アンテナ20のインダクタンスとICチップ30の静電容量を含めて形成される電気回路の共振周波数が、ICチップ30の動作周波数付近となるように、アンテナ20を設計する。
【0013】
特にアンテナ20をコイル形状とすることで、上記電気回路をLC共振回路として容易に設計することができ、かつ小面積で効率的にインダクタンスを得ることが出来るため、小型化することが可能となる。
【0014】
エポキシと炭素とシリカを主成分とした封止材10を用いることで耐熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
小型(1.9〜13mm□)であっても、数cm以上の通信距離を確保可能で、しかも従来のオンチップアンテナに比べてコストを低減可能なRFIDタグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来のRFIDタグの概略図である。
図2】従来のRFIDタグの概略図である。
図3】本実施形態のRFIDタグ80の製造方法を説明する図である。
図4】本実施形態のRFIDタグ80の製造方法を説明する図である。
図5】本実施形態のRFIDタグ80の製造方法を説明する図である。
図6】本実施形態のRFIDタグ80の製造方法を説明する図である。
図7】本実施形態のRFIDタグ80の概略図である。
図8】本実施形態のRFIDタグ80の製造方法を説明する図である。
図9】本実施形態のRFIDタグ80のアンテナ20の形状を示す図である。
図10】ICチップ30を接続したコイル状アンテナ20の電気的等価回路を示す図である。
図11】実験に用いたRFIDタグの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態として、封止材10中にアンテナ20を形成する方法を中心に、以下にRFIDタグ80の製造方法を説明する。
【0018】
図3に示すように、ステンレス板90上に絶縁性レジスト100を形成し、アンテナ20、ICチップ30を乗せるパッド等を形成する部分のレジスト100を除去する。
【0019】
次に、図4に示すように、めっき工程によってレジスト100が除去された部分に金属がめっきされた金属層が設けられ、アンテナ20等を形成する。
【0020】
その後、図5に示すように全てのレジスト100を除去することで、アンテナ20等の金属配線がステンレス板90上に残る。また、ICチップ30を乗せるパッドもステンレス板90上に残る。
【0021】
次に、図6に示すように、ICチップ30を乗せるパッド上に、ダイボンドフィルム(図示せず)などでICチップ30を固定し、ICチップ30とアンテナ20をワイヤボンディング40などで電気的に接続する。なおほとんど全てのアンテナ20は配線場所を調整することでフリップチップ接続することも可能である。
【0022】
ここで、ICチップ30を乗せるパッドを構成する金属層は、ICチップ30の下方を電磁的に遮蔽することにより、ICチップ30における高周波発振の安定した動作に寄与している。また、後述するICチップ30をステンレス板90から剥離する際にICチップ30に加わる応力を低減してICチップ30を保護する。
【0023】
その後、ステンレス板90上において前記めっき金属ごと封止材10で封止し、封止材硬化後にステンレス板90を剥がすことで、図7のように封止材10中にアンテナ20、ICチップ30が封止されたRFIDタグ80を作製できる。
【0024】
このとき、図4におけるめっき工程において、図8に示すようにレジスト100の高さよりもめっきにより形成されるアンテナ20等の金属の高さを高くすることで、きのこのように傘を有するアンテナ20等の金属を形成することが出来る。このように形成したアンテナ20等の金属は、ステンレス板90を剥がす時に封止材10にしっかりと引っかかるため、一部または全部がステンレス板90に残ってしまう不具合を効果的に防ぐ。
【0025】
なお前記めっき金属としてニッケルを主成分とする金属を用いることは、めっきによるアンテナ20等の形成が可能で、かつステンレス板90からの剥離性も良好なため、好適である。
【0026】
アンテナ20の形状の代表的な例を図9に示す。また、図9にはICチップ30及びワイヤボンディングしたワイヤ40も図示している。アンテナ20の形状は、メアンダラインアンテナ、ループアンテナなどアンテナとして広く用いられているものが利用できる。図9(a)はループアンテナ、図9(b)はメアンダラインアンテナ、図9(c)は渦アンテナ、図9(d)はループアンテナの他の形態、図9(e)はコイル状アンテナを示している。
【0027】
そのほかにコイル形状のものは特にRFIDタグ80用アンテナとしては小型化することができる。アンテナ20の設計手法については後述する。またコイル形状の場合、巻線コイルを接着剤などで搭載することも可能だが、本発明のようにレジスト形成の後にめっきで形成するコイル状のアンテナ20のほうがインダクタンスなどの性能が安定しており、また線幅0.05mmなどの微細な配線を形成することが出来るため小型化に有利であり、量産性にも優れているため、産業上有効である。
【0028】
また、このようなアンテナ20の形状をとり、さらに基材1と封止材10の比誘電率が寄与することにより、間隙を有して隣接する構成部分を含むアンテナ20は、隣接する構成部分が容量的に結合し、これらの間に静電容量を提供する。これにより、ICチップ30とこの外周部に配置されるアンテナとを有する構成全体の実質的な静電容量である実効静電容量は、ICチップ30単体の静電容量よりも著しく増加することになる。ここで、実質的な静電容量とは、ICチップ30の外周部にアンテナを配置した構成におけるICチップ30が提供する静電容量である。
【0029】
図7は、封止後のRFIDタグ80を示す断面図である。ICチップ30、アンテナ20、ワイヤ40を一括して封止することでそれらを保護する。ワイヤボンディングのワイヤ40も封止するため、封止後の厚み又は高さは0.2〜1.0mm程度となる。
【0030】
封止材10としては通常半導体で使用されている封止材を使用することが出来、比誘電率は2.6〜4.5程度である。半導体パッケージ自体の性能を高めるためには封止材10の比誘電率は低いほうが好ましいが、比誘電率が高ければインダクタンスが増加するためアンテナ20を小型化することができる。
【0031】
本RFIDタグ80は、従来であれば基材部分となるステンレス板90を剥離するので、金属配線が露出している。保護層がない分、薄型化が可能である。これにより例えばRFID供給メーカーは薄いRFIDタグ80を半導体パッケージ等のメーカーに提供することが可能となり、RFIDタグ80を半導体パッケージ内等に一括して封止することで金属部分は表面に現れなくなる。
【0032】
RFIDタグ80単体においては、表面に露出している金属部分に防錆処理を行うことで金属の腐食を抑えることが出来る。あるいはRFIDタグ80単体で用いる場合にはRFIDタグ80においてアンテナ20等の金属が露出している面に絶縁性のレジスト等を形成することでICチップ30やアンテナ20等の金属配線部分は封入され、外部からはまったく触れられない構造となり、環境劣化の観点からも偽造防止の観点からも安全性・信頼性が向上する。
【0033】
このように作製されたRFIDタグ80は、小型であるにもかかわらず自身にアンテナとチップを内蔵しているため、端子を外部の部品(例えばアンテナパターンを形成した基板)などにはんだ実装したり電気的接続したりする必要がない。すなわち管理したい対象物に対して特別な装置や部品を用いずに、接着剤やテープなどで誰でも簡便に装着できるという利便性を有する。
【0034】
このようにして作製されたRFIDタグ80の耐熱性はほぼ封止材10の性能で決定され、封止材10の耐熱性が数秒であれば250〜300℃かつ定常的にはほぼ150℃以上であるため、従来のPETなどにアンテナを形成しているRFIDタグに比べて耐熱性が高く、高温でも正常に動作する。
【0035】
ICチップ30は読み取り専用のものでもよいが、情報を書き込めるもののほうが、作業履歴などを随時書き込めるため管理に好適である。
【0036】
<アンテナ20の設計手法>
アンテナ20の設計は、アンテナ線の形状、線の太さ、線の長さ、などによって決まる共振周波数を指標とする。この共振周波数を、使用するICチップ30の動作周波数に近づけることによって、リーダライタからの電力をアンテナ20が受け取り、ICチップ30に伝えて、ICチップ30が動作する。
【0037】
共振周波数をアンテナの図面から解析的に導出することは一般的に難しい。実際にはアンテナを試作して実験的に測定するか、電磁界シミュレータを用いて共振周波数を求める場合が多い。特に本発明品は小型なのでアンテナの試作を手作業で正確に行うことは不可能であり、前記レジスト100を形成してからめっきで金属のアンテナ20を作製するような方法で試料を作製・評価してその結果をフィードバックするような試行錯誤は時間もコストもかかってしまうことから、本明細書では電磁界シミュレータ(アンシス・ジャパン株式会社製シミュレータソフト HFSS)を用いて設計することで時間およびコストを削減した。シミュレータにはアンテナ20の形状、材質、およびICチップ30の静電容量、封止材10の形状と屈折率、ワイヤ40に相当する導体、ICチップ30に見立てた電力ポートを最低でも入力する必要があり、シミュレーション結果から共振周波数を得る。この場合の共振周波数とは、回路のインピーダンスの虚数部がゼロとなる周波数のことである。
【0038】
設計の原理を理解しやすいのはコイル状アンテナ20の両端にICチップ30を接続した場合の電気的閉回路を考えることであり、単純なLC共振回路と見立てることが出来る。図9(e)コイル状アンテナ20の電気的等価回路を図10に示す。この場合の共振周波数fは、コイル状アンテナ20の等価回路であるコイル50のインダクタンスL、ICチップ30の等価回路であるコンデンサ60の静電容量Cを用いて、次の(1)式となる。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、Cは使用するICチップ30の選定によって変えられ、Lはコイル状アンテナ20の形状(特にコイル状アンテナ20の直径と巻数)によって調整することが出来、その結果、目的の共振周波数fを実現することができる。特にLの調整は有効で、コイル状アンテナ20の直径を大きくしたり巻数を増やすことでLが増加し、その結果fは減少する。
【0041】
上記式において、ICチップ30の静電容量Cとしては、ICチップ30の外周部にアンテナ20(コイル50)を配置した構成における実効静電容量が適用される。本実施の形態では、間隙を有して隣接するアンテナ20の構成部分の間に容量成分が生じ、さらに基材1と封止材10の比誘電率が寄与することにより、アンテナ20は静電容量を提供する。これにより、ICチップ30とこの外周部に配置されるアンテナとを有する構成全体の実質的な静電容量である実効静電容量は、ICチップ30単体の静電容量よりも著しく増加している。したがって、上記式から明らかなように、所望の共振周波数fは、より小さなインダクタンスLによって実現できるようになる。このことによって、直径と巻数を低減するなどしてコイル50の寸法を小型化し、ひいてはRFIDタグ全体を小型化することが可能になる。
【0042】
ただし使用するICチップ30が指定されたり、アンテナ20の搭載面積が小さく制限されていたりプロセス上アンテナ20の線幅をあまり細く出来ない場合などは、目標としているRFIDタグ80の寸法内で希望の共振周波数を実現できない場合もある。
【0043】
なお正確にはコイル状アンテナ20には線間に浮遊容量C’が存在するため、(1)式より複雑である。
【0044】
RFIDタグ80(ICチップ30)の共振周波数(動作周波数)は、電波法上特に商業的に利用価値が高い13.56MHz〜2.48GHzの範囲とすることが好ましい。特にUHF帯(Ultra High Frequency Band)の動作周波数0.86〜0.96GHz付近のRFIDの場合、電波の波長は30cm程度であるが、一方でUHF帯用のICチップの大きさは通常0.6mm□以下であるため、オンチップアンテナ方式ではICチップが正常に動作するようなアンテナをICチップ上に形成することは不可能である。しかし本発明の方式を用いることで従来の数cm□のアンテナを用いずとも数mm□の単層のアンテナでRFIDタグが動作するという優れた特長がある。また、大きさが数mm角で、導線幅/導線間幅が数10μm〜数100μmのアンテナでよいため、銅箔等の金属層をエッチングすること等により容易に形成できる。さらに、単層のアンテナでよいため、多層化する必要がないので、基材の片面に金属層として銅箔を貼り合せた、銅箔付きポリイミド基材の銅箔を用いて形成することができる。このため、低コストの汎用の材料を用い、汎用のプロセスで形成することができる。
【0045】
本発明のRFIDタグ80は、半導体装置内などに埋め込んで使用することが出来る。また、両面テープなどでラベルのように商品やサンプルに貼り付けて管理などに利用することが出来、商品を販売する際などに容易に取り外すことも可能である。
【実施例】
【0046】
<読取り評価の方法と実験結果>
リーダライタはLS産電株式会社製 UI−9061(出力1W)を用いた。リーダライタの読取り部を中心として、周囲25cm四方に障害物がない状態で、RFIDタグ80の読取り評価を行った。リーダライタでRFIDタグ80を読取れる時の、リーダライタ読取り部からRFIDタグ80までの最大距離(以後、読み取り距離という)を測定した。なおこのとき使用したICチップの大きさは0.5mm×0.5mm×0.1mm程度、静電容量は0.77pF、動作周波数は0.86〜0.96GHz付近である。
【0047】
表1は、図11に示すようなポリイミド基板1上にエッチングにてアンテナ20を形成し、UHF帯で動作するICチップ30をワイヤボンディング後に封止したサンプルを測定してもっとも読み取り距離が長かった時の値を示した結果である。
【0048】
この表1から、ICチップと接続されて電気的閉回路を形成する、コイルアンテナ及びループアンテナ2では、電磁界シミュレータによる共振周波数が、0.2〜2GHzであり、概ね、他のアンテナに比べて、ICチップの動作周波数0.9GHz程度に近い。また、読み取り距離も、電気的閉回路を形成しない、メアンダラインアンテナ、ループアンテナ1、渦アンテナに比べて、読取り良好な結果となっている。また、電磁界シミュレータによる共振周波数が、0.5〜1.5GHzとなった、実験例1a、1b、2a、2b、3b、4c、5cでは、5mm以上の通信距離が得られた。特に、ICチップの動作周波数0.9GHz程度に近い、共振周波数1〜1.1GHzとなった、実験例1a、2b、3bでは、20mmを超える通信距離が得られた(最大の読取り距離は37mm)。
【0049】
【表1】
【0050】
ここで、RFタグ80の大きさが縦4mm以下×横4mm以下の場合、高さ0.4mm以下とすることができる。RFIDタグ80の大きさが縦2.5mm以下×横2.5mm以下の場合、高さ0.3mm以下とすることができる。RFIDタグ80の大きさが縦1.9mm以下×横1.9mm以下の場合、高さ0.3mm以下とすることができる。
【0051】
表2は、本発明に係る図7に示すサンプルの読み取り距離の測定結果である。表1において読取り良好であったサンプル2種類とほぼ同じ大きさ・形状のアンテナ20を形成したRFIDタグ80を各20個程度試作して測定した。その結果、読取り距離は4mm□品では29.5mm、2.5mm□品では19.9mmであった。
【0052】
【表2】
【0053】
アンテナ20を作製するにあたり、導線幅および導線間距離は太いほうが歩留まりよく安定して製造することが可能である。そこで、プロセス上の制約から導線幅/導線間距離が決められた場合、数cm以上の読取り距離を確保しつつどれだけ小型化できるかを考察した。その結果、UHF帯では導線幅/導線間距離が0.2mm/0.2mmの場合はRFIDタグ80の外径を4mm□程度まで小さくすることが限界であることが判明した。また導線幅/導線間距離が0.1mm/0.1mmの場合はRFIDタグ80の外径を2.5mm□程度まで小さくすることが限界であることが判明した。また導線幅/導線間距離が0.05mm/0.05mmの場合はRFIDタグ80の外径を1.9mm□程度まで小さくすることが限界であることが判明した。
【0054】
表3は、ICチップの大きさが0.5mm×0.5mm×0.1mm程度、動作周波数13.56MHz、静電容量17pFのICチップを使用した場合のシミュレーション結果および実験結果である。電磁界シミュレータによる共振周波数が29MHzとなった実験例6bでは、12mmの通信距離が得られ、特に、電磁界シミュレータによる共振周波数が14MHzとなった実験例7bでは、110mmの通信距離が得られた。また、HF帯(High Frequency Band)の動作周波数13.56MHzにおいては、周波数がUHF帯よりも低くなるため、コイル状アンテナ20のインダクタンスを大きくする必要があり、導線幅/導線間距離が0.1mm/0.1mmの場合はRFIDタグ80の外径を13mm□程度まで小さくすることが限界であることが判明した。
【0055】
【表3】
【0056】
ここで、RFIDタグ80の大きさが縦13mm以下×横13mm以下の場合、高さ1.0mm以下とすることができる。
【0057】
表4は、ICチップの大きさが0.5mm×0.5mm×0.1mm程度、動作周波数2.45GHz、静電容量0.7pFのICチップを使用した場合のシミュレーション結果および実験結果である。電磁界シミュレータによる共振周波数が2GHzとなった実験例8a及び電磁界シミュレータによる共振周波数が2.1GHzとなった実験例9bでは、4mmの通信距離が得られた。また、導線幅/導線間距離が0.1mm/0.1mmの場合はRFIDタグ80の外径を1.9mm□程度まで小さくすることが限界であることが判明した。
【0058】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のRFIDタグは、商品、包装、カード、書類、眼鏡、時計(特に腕時計など小型のもの)、半導体、医療用途(患者から採取したサンプル等)などの製品の管理、識別、情報提示、情報記録、偽造防止の目的として使用することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 基材
10 封止材
20 アンテナ
30 ICチップ
40 ワイヤボンディングのワイヤ
50 コイル(アンテナ)
60 コンデンサ(ICチップ)
70 抵抗(ICチップ。シミュレーション時に設定するポート)
80 RFIDタグ
90 ステンレス板
100 レジスト
図1
図2
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図4
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図10
図11