(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウム二次電池用負極は、黒鉛粒子及び有機系結着剤の混合物と集電体とが加圧、一体化されてなるリチウム二次電池用負極において、加圧、一体化された前記負極のX線回折で測定される回折強度比(002)/(110)が500以下であることを特徴とする。前記回折強度比(002)/(110)は、好ましくは10〜500、より好ましくは10〜400、さらに好ましくは10〜300、特に好ましくは50〜200の範囲とされる。回折強度比(002)/(110)が500を超えると、作製するリチウム二次電池の急速充放電特性及びサイクル特性が低下する。
【0015】
ここで、リチウム二次電池用負極の回折強度比(002)/(110)は、CuKα線をX線源とするX線回折により、回折角2θ=26〜27度付近に検出される(002)面回折ピークと、回折角2θ=70〜80度付近に検出される(110)面回折ピークの強度から下記(1)式により求めることができる。
(002)面回折ピーク強度/(110)面回折ピーク強度 (1)式
【0016】
本発明のリチウム二次電池用負極において、集電体と加圧、一体化された黒鉛粒子及び有機系結着剤の混合物の密度が1.45〜1.95g/cm
3であることが好ましい。前記密度は、1.5〜1.9g/cm
3がより好ましく、1.6〜1.85g/cm
3がさらに好ましく、1.65〜1.8g/cm
3が特に好ましい。本発明の負極における黒鉛粒子及び結着剤の混合物の密度を高くすることにより、この負極を用いて得られるリチウム二次電池の体積当りのエネルギー密度を大きくすることができる。前記黒鉛粒子及び有機系結着剤の混合物の密度が1.45g/cm
3未満では得られるリチウム二次電池の体積当りのエネルギー密度が小さくなる。一方、前記黒鉛粒子及び有機系結着剤の混合物の密度が1.95g/cm
3を超えると、リチウム二次電池を作製するときの電解液の注液性が悪くなるばかりでなく、作製するリチウム二次電池の急速充放電特性及びサイクル特性が低下しやすくなる。
【0017】
一体化後の該黒鉛粒子及び結着剤の混合物の密度は、例えば、一体化成形するときの圧力やロールプレス等の装置のクリアランス等により適宜調整することができる。
【0018】
本発明で用いる黒鉛粒子の結晶のC軸方向の結晶子の大きさLc(002)は500オングストローム以上が好ましく、800オングストローム以上がより好ましく、1000〜10000オングストロームであることが特に好ましい。C軸方向の結晶子の大きさLc(002)が500オングストローム未満では放電容量が小さくなる傾向がある。
【0019】
また、黒鉛粒子の結晶の層間距離d(002)は3.38オングストローム以下が好ましく、3.37オングストローム以下であることがより好ましく、3.36オングストローム以下であることがさらに好ましい。結晶の層間距離d(002)が3.38オングストロームを超えると放電容量が低下する傾向がある。前記Lc(002)及びd(002)はX線広角回折において測定できる。
【0020】
また、本発明のリチウム二次電池用負極に用いる黒鉛粒子は、加圧、一体化後の負極のX線回折で測定される回折強度比(002)/(110)を500以下に設定できるものであればよく、例えば鱗状黒鉛、球状黒鉛、鱗状黒鉛を機械的処理により粒子形状を改質した黒鉛や、複数の材料を混合して用いることもできるが、扁平状の一次粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合させた二次粒子の黒鉛粒子を用いることが好ましい。本発明において扁平状の粒子とは長軸と短軸を有する形状のことであり、完全な球状でないものをいう。例えば鱗状、鱗片状、一部の塊状等の形状のものがこれに含まれる。黒鉛粒子において、複数の扁平状の粒子の配向面が非平行とは、それぞれの粒子の形状において有する扁平した面、換言すれば最も平らに近い面を配向面として、複数の扁平状の粒子がそれぞれの配向面を一定の方向にそろうことなく集合し、黒鉛粒子を形成している状態をいう。
【0021】
この集合又は結合している扁平状の粒子において、結合とは互いの粒子が、例えばピッチ、タール等のバインダを炭素化した炭素質を介して、化学的に結合している状態をいい、集合とは互いの粒子が化学的に結合してはないが、その形状等に起因して、負極を作製する過程においてもその集合体としても形状を保っている状態をいう。機械的な強度の面から、結合しているものが好ましい。
【0022】
また、本発明で使用する黒鉛粒子は、アスペクト比が5以下であることが好ましく、1.2〜5であればより好ましく、1.2〜3であればさらに好ましく、1.3〜2.5であれば特に好ましい。アスペクト比が5以下の黒鉛粒子は、複数の一次粒子を集合又は結合させた二次粒子としてのものでもよく、また、1つの粒子を機械的な力を加えアスペクト比が5以下となるように形状を変えたものでもよく、さらに、これらを組合わせて作製したものでもよい。
【0023】
このアスペクト比が5を超えると、加圧、一体化後の負極のX線回折で測定される回折強度比(002)/(110)が大きくなりやすく、その結果、得られるリチウム二次電池の急速充放電特性及びサイクル特性が低下する傾向がある。このアスペクト比が1.2未満では、粒子間の接触面積が減ることにより、作製する負極の導電性が低下する傾向にある。
【0024】
本発明において、使用する黒鉛粒子が複数の粒子の集合体または結合体として存在している場合は、黒鉛粒子の一次粒子とは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察した際に認められる粒子単位をいう。また、二次粒子とは、この一次粒子が集合または結合している塊をいう。
【0025】
また、アスペクト比は、粒子の長軸方向の長さをA、短軸方向の長さをBとしたとき、A/Bで表される。本発明における黒鉛粒子のアスペクト比は、顕微鏡で一次粒子または二次粒子の黒鉛粒子を拡大し、長軸の長さが10〜50μmの大きさの粒子を任意に10個選択し、A/Bを測定し、その算術平均値をとったものである。
【0026】
1つの二次黒鉛粒子において、扁平状の一次粒子の集合又は結合する数としては、3個以上であることが好ましく、5個以上であればより好ましい。個々の扁平状の一次粒子の大きさとしては、粒径で1〜100μmの粒子を含むことが好ましく、5〜80μmであればより好ましく、5〜50μmであればさらに好ましく、これらが集合又は結合した二次黒鉛粒子の平均粒径の2/3以下であることが好ましい。また、個々の扁平状の一次粒子のアスペクト比は100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。前記一次粒子のアスペクト比の好ましい下限としては1.2であり、球状でないことが好ましい。
【0027】
さらに、本発明における黒鉛粒子は、二次粒子の比表面積が8m
2/g以下のものが好ましく、より好ましくは5m
2/g以下である。該黒鉛粒子を負極に使用すると、得られるリチウム二次電池の急速充放電特性及びサイクル特性を向上させることができ、また、第一サイクル目の不可逆容量を小さくすることができる。比表面積が、8m
2/gを超えると、得られるリチウム二次電池の第一サイクル目の不可逆容量が大きくなる傾向があり、エネルギー密度が小さく、さらに負極を作製する際多くの結着剤が必要になる傾向にある。得られるリチウム二次電池の急速充放電特性、サイクル特性等がさらに良好な点から、比表面積は、1.5〜5m
2/gであることがさらに好ましく、2〜5m
2/gであることが特に好ましい。比表面積の測定は、窒素ガス吸着によるBET法など、既知の方法をとることができる。
【0028】
本発明のリチウム二次電池用負極の製造法は特に制限はないが、例えば、少なくとも黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダを混合し、粉砕した後、該粉砕物と黒鉛化触媒1〜50重量%を混合し、焼成して黒鉛粒子を得、ついで、該黒鉛粒子に有機系結着剤及び溶剤を添加して混合し、該混合物を集電体に塗布し、乾燥して溶剤を除去した後、加圧して一体化することで作製できる。
【0029】
黒鉛化可能な骨材としては、例えば、コークス粉末、樹脂の炭化物等が使用できるが、黒鉛化できる粉末材料であれば特に制限はない。中でも、ニードルコークス等の黒鉛化しやすいコークス粉末が好ましい。また黒鉛としては、例えば天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末等が使用できるが粉末状であれば特に制限はない。黒鉛化可能な骨材又は黒鉛の粒径は、作製する黒鉛粒子の粒径より小さいことが好ましく、平均粒径で1〜80μmがより好ましく、1〜50μmであればさらに好ましく、5〜50μmであれば特に好ましい。また、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛のアスペクト比は、1.2〜500が好ましく、1.5〜300の範囲であればより好ましく、1.5〜100の範囲であればさらに好ましく、2〜50の範囲であれば特に好ましい。ここでアスペクト比測定は、前記と同様の方法で行う。黒鉛化可能な骨材又は黒鉛のアスペクト比が大きくなると、加圧、一体化後の負極のX線回折で測定される回折強度比(002)/(110)が大きくなる傾向があり、1.2未満では黒鉛粒子重量当りの放電容量が小さくなる傾向がある。
【0030】
バインダとしては、例えば、タール、ピッチの他、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の有機系材料が好ましい。バインダの配合量は、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛に対し、5〜80重量%添加することが好ましく、10〜80重量%添加することがより好ましく、20〜80重量%添加することがさらに好ましく、30〜80重量%添加することが特に好ましい。バインダの量が多すぎたり少なすぎたりすると、作製する黒鉛粒子のアスペクト比及び比表面積が大きくなり易い傾向がある。黒鉛化可能な骨材又は黒鉛とバインダの混合方法は、特に制限はなく、例えばニーダー等を用いて行うことができるが、バインダの軟化点以上の温度で混合することが好ましい。具体的にはバインダがピッチ、タール等の際には、50〜300℃が好ましく、熱硬化性樹脂の場合は20〜180℃が好ましい。
【0031】
次に上記混合物を粉砕し、該粉砕物と黒鉛化触媒とを混合する。該粉砕物の粒径は1〜100μmが好ましく、5〜80μmであればより好ましく、5〜50μmであればさらに好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
【0032】
該粉砕物の粒径が100μmを超えると得られる黒鉛粒子の比表面積が大きくなる傾向があり、1μm未満では得られる負極の(002)/(110)比が大きくなる傾向がある。また、該粉砕物の揮発分は0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であればより好ましく、5〜20重量%であればさらに好ましい。揮発分の測定は、該粉砕物を800℃で10分間加熱した時の重量減少が求められる。該粉砕物と混合する黒鉛化触媒としては、黒鉛化触媒としての機能があるものであれば特に制限はないが、例えば鉄、ニッケル、チタン、ケイ素、ホウ素等の金属、これらの炭化物、酸化物などの黒鉛化触媒が使用できる。これらの中で、鉄又はケイ素の化合物が好ましい。また化合物の化学構造としては炭化物が好ましい。これらの黒鉛化触媒の添加量は、黒鉛化触媒と混合する粉砕物と黒鉛化触媒の総量を100重量%としたとき、1〜50重量%が好ましく、5〜30重量%であればより好ましく、7〜20重量%であればさらに好ましい。黒鉛化触媒の量が1重量%未満であると作製する黒鉛粒子の結晶の発達が悪くなるばかりでなく、比表面積が大きくなる傾向があり、一方50重量%を超えると作製する黒鉛粒子に黒鉛化触媒が残存しやすくなる。使用する黒鉛化触媒は粉末状が好ましく、平均粒径が0.1〜200μmの粉末状が好ましく、1〜100μmであればより好ましく、1〜50μmであればより好ましい。
【0033】
次に上記混合物を焼成し、黒鉛化処理を行うが、焼成を行う前に、前記粉砕物と黒鉛化触媒の混合物をプレス等により所定形状に成形してから、焼成してもよい。この場合の成形圧力は1〜300MPa程度が好ましい。焼成は前記混合物が酸化し難い条件で焼成することが好ましく、例えば窒素雰囲気中、アルゴン雰囲気中、真空中、自己揮発性雰囲気中で焼成する方法が挙げられる。黒鉛化の温度は、2000℃以上が好ましく、2500℃以上であることがより好ましく、2700℃以上であればさらに好ましく、2800〜3200℃であることが特に好ましい。黒鉛化の温度が低いと、黒鉛の結晶の発達が悪く、放電容量が低くなる傾向があるとともに添加した黒鉛化触媒が作製する黒鉛粒子に残存し易くなる傾向がある。黒鉛化触媒が作製する黒鉛粒子中に多く残存すると、黒鉛粒子重量当りの放電容量が低下する。黒鉛化の温度が高すぎると、黒鉛が昇華することがある。焼成を、プレス等により所定形状に成形した成形物で行う場合は、黒鉛化後の成形物の見掛け密度は1.65g/cm
3以下が好ましく、1.55g/cm
3以下であればより好ましく、1.50g/cm
3以下であればさらに好ましく、1.45g/cm
3以下であれば特に好ましい。黒鉛化後の成形物の密度が1.65g/cm
3以上では作製する黒鉛粒子の比表面積が大きくなる傾向がある。黒鉛化後の成形物の見掛け密度は、例えば、前記黒鉛化触媒と混合する粉砕物の粒径及び、プレス等により所定形状に成形するときの圧力等により適宜調整することができる。
【0034】
次いで、粉砕し、粒度を調整して負極炭素材料である黒鉛粒子とするが、粉砕方法としては、特に制限はなく、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕方式をとることができる。粉砕後の負極炭素材料の平均粒径は、1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。平均粒径が大きくなりすぎると作製する負極の表面に凹凸ができ易くなり、その結果作製するリチウム二次電池がミクロ短絡しやすくなりサイクル特性が低下する傾向がある。
【0035】
なお、本発明において平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定することができる。
【0036】
得られた前記黒鉛粒子は、有機系結着剤及び溶剤と混練して、ペースト状にし、シート状、ペレット状等の形状に成形される。
【0037】
有機系結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンターポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン伝導率の大きな高分子化合物等が使用できる。
【0038】
前記イオン伝導率の大きな高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリファスファゼン、ポリアクリロニトリル等が使用できる。
【0039】
炭素材料と有機系結着剤との混合比率は、炭素材料100重量部に対して、有機系結着剤を0.5〜20重量部用いることが好ましい。
【0040】
溶剤としては、特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、水等が挙げられる。溶剤として水を使用するバインダの場合は、増粘剤を併用することが好ましい。
【0041】
溶剤の量も特に制限はなく、炭素材料は、有機系結着剤及び溶剤と混練して混合物を作製し、粘度を適宜調整した後、集電体に塗布し、該集電体と加圧、一体化して負極とされる。集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどの金属集電体が使用できる。なお一体化は、例えばロール、プレス等の成形法で行うことができ、またこれらを組み合わせて一体化しても良い。この一体化する際の圧力は1〜200MPa程度が好ましい。
【0042】
このようにして得られた負極は、リチウム二次電池に用いられる。本発明のリチウム二次電池は、リチウム化合物を含む正極と前記本発明の負極を有してなるもので、例えば、正極と負極をセパレータを介して対向して配置し、かつ電解液を注入することにより得ることができ、これは従来の負極を使用したリチウム二次電池に比較して、高容量でサイクル特性、急速充放電特性に優れる。
【0043】
本発明におけるリチウム二次電池の正極はリチウム化合物を含むが、その材料に特に制限はなく、例えばLiNiO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4等を単独又は混合して使用することができる。
【0044】
リチウム二次電池は、正極及び負極とともに、通常、リチウム化合物を含む電解液を含む。
【0045】
電解液としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSO
3CF
3、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピロニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、γ―ブチロラクトン等の非水系溶剤に溶かしたいわゆる有機電解液や、固体若しくはゲル状のいわゆるポリマー電解質を使用することができる。
【0046】
また、電解液には、リチウム二次電池の初回充電時に分解反応を示す添加剤を少量添加することが好ましい。添加剤としては例えば、ビニレンカーボネート、ビフェニール、プロパンスルトン等があげられ、添加量としては0.01〜5重量%が好ましい。
【0047】
セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウム二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
【0048】
図1に円筒型リチウム二次電池の一例の一部断面正面の概略図を示す。
図1に示す円筒型リチウム二次電池は、薄板状に加工された正極1と、同様に加工された負極2がポリエチレン製微孔膜等のセパレータ3を介して重ねあわせたものを捲回し、これを金属製等の電池缶7に挿入し、密閉化されている。正極1は正極タブ4を介して正極蓋6に接合され、負極2は負極タブ5を介して電池底部へ接合されている。正極蓋6はガスケット8にて電池缶(正極缶)7へ固定されている。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0050】
実施例1
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部と、コールタールピッチ30重量部を230℃で2時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕した後、該粉砕物80重量部と平均粒径25μmの炭化珪素20重量部をブレンダーで混合し、該混合物を金型に入れ、100MPaでプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕して負極炭素材料である黒鉛粒子を得た。得られた負極炭素材料から、以下の測定を行った。(1)レーザー回折式粒度分布計による平均粒径、(2)BET法による比表面積、(3)アスペクト比(10個分の平均値)、(4)X線広角回折による結晶の層間距離d(002)及び(5)結晶のC軸方向の結晶子サイズLc(002)。これらの測定値を表1に示す。
【0051】
平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製品名SALD-3000)を用い、50%Dでの粒子径を平均粒径とした。層間距離d(002)はX線回折装置を用い、Cu-Kα線をNiフィルターで単色化し、高純度シリコンを標準物質として測定した。比表面積は、micromeritics社製品名ASAP 2010を用い、液体窒素温度での窒素吸着を多点法で測定、BET法に従って算出した。
【0052】
次いで、得られた負極炭素材料90重量%に、N−メチル−2ピロリドンに溶解した有機系結着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%加えて混練して黒鉛ペーストを作製した。この黒鉛ペーストを厚さが10μmの圧延銅箔に塗布し、さらに、120℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、垂直プレスで10MPaで圧縮して試料電極を得た。この試料電極の、(6)黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を測定したところ、1.20g/cm
3であり、厚さは96μmであった。得られた試験電極を、X線回折装置により、(002)及び(110)回折ピークを測定し、各ピークトップ強度から、(7)(002)/(110)強度比を測定した。その結果を表1に併記する。なお、(4)、(5)及び(6)のX線回折において、X線源:CuKα線/40KV/20mA、ステップ幅0.02°とした。
【0053】
作製した試料電極を2cm
2の大きさに打ち抜き、3端子法による定電流充放電を行い、下記のように充放電容量及び放電容量維持率の測定を行った。
図2に、本測定に用いたリチウム二次電池の概略図を示す。試料電極の評価は、
図2に示すようにビーカ型ガラスセル9に電解液10としてLiPF
6をエチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)(ECとMECは体積比で1:2)の混合溶媒に1モル/リットルの濃度になるように溶解した溶液を入れ、試料電極11、セパレータ12及び対極13を積層して配置し、さらに参照極14を上部から吊るしてモデル電池を作製した。なお、対極13及び参照極14には金属リチウムを使用し、セパレータ4にはポリエチレン微孔膜を使用した。得られたモデル電池を用いて試料電極11と対極13の間に、試料電極の面積に対して、0.2mA/cm
2の定電流で0V(V vs. Li/Li+)まで充電し、0.2mA/cm
2の定電流で1V(V vs. Li/Li+)まで放電する試験を行い、(8)単位体積当りの放電容量を測定した。
【0054】
さらに同様の方法で100サイクル充放電を繰り返し、(9)第一サイクル目の放電容量を100とした時の放電容量維持率を測定した。
【0055】
また、0.2mA/cm
2の定電流で0V(V vs. Li/Li+)まで充電し、6.0mA/cm
2の定電流で1V(V vs. Li/Li+)まで放電する試験を行い、(10)0.2mA/cm
2の定電流で放電した時の放電容量を100とした時の放電容量維持率を測定した。
【0056】
各測定結果を表1に併記する。
【0057】
実施例2
垂直プレスの圧力を10MPaの代わりに23MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.45g/cm
3にした以外は、実施例1と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0058】
実施例3
垂直プレスの圧力を31MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.55g/cm
3にした以外は、実施例1と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0059】
実施例4
垂直プレスの圧力を50MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.65g/cm
3にした以外は、実施例1と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0060】
実施例5
垂直プレスの圧力を85MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.75g/cm
3にした以外は、実施例1と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0061】
実施例6
垂直プレスの圧力を143MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.85g/cm
3にした以外は、実施例1と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0062】
実施例7
中国産天然黒鉛をジェットミルで粉砕して、鱗片状天然黒鉛粒子を作製した。該黒鉛粒子の平均粒径、比表面積、アスペクト比、d(002)、Lc(002)測定結果を表1に併記する。該黒鉛粒子を用いて、垂直プレスの圧力を2MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.00g/cm
3にした以外は実施例1と同様の方法で試験電極を作製した。実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0063】
比較例1
垂直プレスの圧力を27MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.50g/cm
3にした以外は、実施例7と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【0064】
比較例2
垂直プレスの圧力を42MPaとすることにより黒鉛粒子とPVDFの混合物層の密度を1.65g/cm
3にした以外は、実施例7と同様の方法で試験電極を作製し、実施例1と同様の方法で、(002)/(110)強度比、単位体積当りの放電容量、100サイクル後の放電容量維持率、放電電流6.0mA/cm
2時の放電容量維持率を測定した。測定結果を表1に併記する。
【表1】
【0065】
表1に示されるように、本発明のリチウム二次電池用負極は、高容量で、サイクル特性及び急速放電特性に優れ、リチウム二次電池に用いて好適であることが示された。