特許第5776864号(P5776864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5776864
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ネマチック液晶組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/30 20060101AFI20150820BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20150820BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/14
   C09K19/16
   C09K19/18
   C09K19/20
   C09K19/32
   C09K19/34
   G02F1/13
【請求項の数】20
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2015-508349(P2015-508349)
(86)(22)【出願日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2014071903
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179541(P2013-179541)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】金親 昌和
(72)【発明者】
【氏名】竹内 清文
(72)【発明者】
【氏名】大澤 政志
(72)【発明者】
【氏名】東條 健太
(72)【発明者】
【氏名】楠本 哲生
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/018796(WO,A1)
【文献】 特開2009−292730(JP,A)
【文献】 国際公開第98/011897(WO,A1)
【文献】 特開平06−239776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K19/00−19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、前記液晶組成物が一般式(LC0)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする液晶組成物。
【化1】
(式中、R01は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、
01〜A03はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表し、
【化2】
(該構造中シクロヘキサン環の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように、−O−で置換されていてもよく、該構造中ベンゼン環の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、X03及びX04はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表す。)
式中の部分構造式(LC0−Ph)は式(LC0−Np)であることもでき
【化3】
01、X02及びX05はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
01は−Cl、−F、−OCHF、−CF、−OCF、炭素数2〜5のフッ素化されたアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基を表し、
01〜Z05はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、存在するZ01〜Z05の内の少なくとも1つは−OCF−又は−CFO−であり、
01及びW02はそれぞれ独立して−CH−又は−O−を表すが、Z02が−OCH−を表し、且つm02が0を表す場合、又は、Z02が単結合を表し、m02が1を表し、A02が以下の構造を表し、
【化4】
且つZ03が−OCH−を表す場合、W01及びW02の内の少なくとも1つは−O−を表し、
01〜m03はそれぞれ独立して0〜2の整数を表し、m01+m02+m03は0、1又は2を表し、A01、A02、A03、Z01、Z03及び/又はZ05が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記液晶組成物が一般式(LC1)〜一般式(LC5)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1に記載の液晶組成物。
【化5】
(式中、R11〜R41はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、R51及びR52はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、後述のA51又はA53がシクロヘキサン環の場合は−OCF、−CF、−OCF=CF又は−OCH=CFであってもよく、A11〜A42はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【化6】
(該構造中シクロヘキサン環の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように、−O−で置換されていてもよく、該構造中ベンゼン環の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、X61及びX62はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表す。)を表し、A51〜A53はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【化7】
(式中、シクロヘキサン環中の1つ又は2つ以上の−CHCH−は−CH=CH−、−CFO−又は−OCF−で置換されていてもよく、ベンゼン環中の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよい。)を表し、X11〜X43はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y11〜Y41は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表し、Z31〜Z42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、存在するZ31及びZ32の内少なくとも1つは単結合でなく、Z51及びZ52はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m11〜m51はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、m31+m32及びm41+m42はそれぞれ独立して1、2、3又は4を表し、A23、A31、A32、A41、A42、A52、Z31、Z32、Z41、Z42及び/又はZ52が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。但し、一般式(LC0)で表される化合物は含まない。)
【請求項3】
01が炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基であり、Y01は−Cl、−F、−OCHF、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF、−OCF=CF又は−OCH=CFである一般式(LC0)で表される化合物を1種以上含有し、その含有量の合計が多くとも70質量%である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
一般式(LC0)で表される化合物を1種以上含有し、下記事項の少なくとも1つを満たす請求項2又は3に記載の液晶組成物。
・一般式(LC1)で表される化合物を多くとも20質量%含有する
・一般式(LC2)で表される化合物を多くとも40質量%含有する
・一般式(LC3)で表される化合物を多くとも50質量%含有する
・一般式(LC4)で表される化合物を多くとも60質量%含有する
・一般式(LC5)で表される化合物を多くとも75質量%含有する
【請求項5】
一般式(LC0)で表される化合物を含有する液晶組成物が下記事項の少なくとも1つを満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶組成物。
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−2)〜一般式(LC0−6)で表される化合物であり、該一般式(LC0−2)〜一般式(LC0−6)で表される化合物を多くとも40質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−10)〜一般式(LC0−11)、一般式(LC0−13)〜一般式(LC0−1、一般式(LC0−16)〜一般式(LC0−17)で表される化合物であり、該一般式(LC0−10)〜一般式(LC0−11)、一般式(LC0−13)〜一般式(LC0−1、一般式(LC0−16)〜一般式(LC0−17)で表される化合物を多くとも60質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−28)、一般式(LC0−30)〜一般式(LC0−34)、一般式(LC0−36)〜一般式(LC0−3)で表される化合物であり、該一般式(LC0−28)、一般式(LC0−30)〜一般式(LC0−34)、一般式(LC0−36)〜一般式(LC0−3)で表される化合物を多くとも60質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−48)〜一般式(LC0−51)で表される化合物であり、該一般式(LC0−48)〜一般式(LC0−51)で表される化合物を多くとも30質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−52)〜一般式(LC0−53)で表される化合物であり、該一般式(LC0−52)〜一般式(LC0−53)で表される化合物を多くとも40質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−56)〜一般式(LC0−59)で表される化合物であり、該一般式(LC0−56)〜一般式(LC0−59)で表される化合物を多くとも50質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−61)〜一般式(LC0−6、一般式(LC0−65)、一般式(LC0−67)で表される化合物であり、該一般式(LC0−61)〜一般式(LC0−6、一般式(LC0−65)、一般式(LC0−67)で表される化合物を多くとも20質量%含有する
・一般式(LC0)で表される化合物が、一般式(LC0−68)〜一般式(LC0−74)で表される化合物であり、該一般式(LC0−68)〜一般式(LC0−74)で表される化合物を多くとも15質量%含有する
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、R01、A01〜A03、Z01〜Z05、X01〜X04、W01、W02及びY01は請求項1と同じ意味を表す。)
【請求項6】
一般式(LC2)で表される化合物が、一般式(LC2−1)から一般式(LC2−14)で表される化合物である請求項2〜5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化13】
(式中、X23、X24、X25及びX26はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CF又はOCFを表し、X22、R21及びY21は請求項2と同じ意味を表す。)
【請求項7】
一般式(LC3)で表される化合物が、一般式(LC3−4)〜一般式(LC3−5)、一般式(LC3−14)〜一般式(LC3−15)、一般式(LC3−18)〜一般式(LC3−22)、一般式(LC3−25)〜一般式(LC3−26)、一般式(LC3−30)〜一般式(LC3−32)で表される化合物群及び又は一般式(LC3−0−1)から一般式(LC3−0−38)、(LC3−0−54)から一般式(LC3−0−59)、(LC3−0−90)から一般式(LC3−0−97)で表される化合物群より選ばれる化合物である請求項2〜6のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
(式中、Rは一般式(LC3)におけるR31と同じ意味を表し、X33、X34、X35、X36、X37及びX38はそれぞれ独立してH、Cl、F、CF又はOCFを表し、X32、R31、A31、Y31及びZ31は請求項2と同じ意味を表し、−F,CF,OCFは−F、−CF又は−OCFのいずれかを表す。)
【請求項8】
一般式(LC4)で表される化合物が、一般式(LC4−2)、一般式(LC4−12)〜一般式(LC4−17)、一般式(LC4−21)〜一般式(LC4−23)で表される化合物群より選ばれる化合物である請求項2〜7のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化20】
【化21】
(式中、X44、X45、X46及びX47はそれぞれ独立してH、Cl、F、CF又はOCFを表し、X42、X43、R41及びY41は請求項2と同じ意味を表す。)
【請求項9】
一般式(LC5)で表される化合物が一般式(LC5−1)から一般式(LC5−26)で表される化合物である請求項2〜8のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化22】
(式中、R51及びR52は請求項2と同じ意味を表す。)
【請求項10】
一般式(LC5)で表される化合物が下記で表される化合物であり、その化合物の含有量の合計が多くとも70質量%である請求項2〜9のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化23】
(式中、alkyl及びalkyl*はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を表し、alkenyl及びalkenyl*はそれぞれ独立して下式の炭素数2〜5のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表す。)
【請求項11】
光学活性化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項12】
11からR41が炭素数2〜5のアルケニル基である一般式(LC1)から一般式(LC4)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項2から11のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
一般式(LC1)におけるA11がテトラヒドロピラン−2,5−ジイル基である化合物、一般式(LC2)に存在するA21〜A23のうち少なくとも1つがテトラヒドロピラン−2,5−ジイル基である化合物、一般式(LC3)に存在するA31〜A32のうち少なくとも1つがテトラヒドロピラン−2,5−ジイル基である化合物、一般式(LC4)に存在するA41〜A42のうち少なくとも1つがテトラヒドロピラン−2,5−ジイル基である化合物及び一般式(LC5)に存在するA51〜A53のうち少なくとも1つがテトラヒドロピラン−2,5−ジイル基である化合物で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項2から12のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
一般式(LC3)に存在するZ31〜Z32のうち少なくとも1つが−CFO−又は−OCH−である化合物、一般式(LC4)に存在するZ41〜Z42のうち少なくとも1つが−CFO−又は−OCH−である化合物及び一般式(LC5)に存在するZ51〜Z52のうち少なくとも1つが−CFO−又は−OCH−である化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項2から13のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項15】
一般式(LC5)で表される化合物を30〜70質量%含有し、液晶組成物の20℃での粘度ηが20mPa・s以下である請求項2から14のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項16】
重合性化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から15のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項17】
酸化防止剤を1種又は2種以上含有する請求項1から16のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
UV吸収剤を1種又は2種以上含有する請求項1から17のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項20】
液晶組成物と接する面の配向層として、光配向技術を用いて作製した配向膜を設けた請求項19記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な誘電率異方性(Δε)が正の値を示すネマチック液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いた垂直配向を特徴としたVA型や水平配向を特徴としたIPS(イン・プレーン・スイッチング)型/FFS型等がある。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は水分、空気、熱、光などの外的要因に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であり、かつ駆動電圧が低いことが求められる。さらに液晶組成物は個々の表示素子に対してあわせ最適な誘電率異方性(Δε)または及び屈折率異方性(Δn)等を最適な値とするために、数種類から数十種類の化合物から構成されている。
【0003】
垂直配向型ディスプレイではΔεが負の液晶組成物が用いられており、TN型、STN型又はIPS型等の水平配向型ディスプレイではΔεが正の液晶組成物が用いられている。近年、Δεが正の液晶組成物を電圧無印加時に垂直に配向させ、IPS型/FFS型電界を印加する事で表示する駆動方式も報告されており、Δεが正の液晶組成物の必要性はさらに高まっている。一方、全ての駆動方式において低電圧駆動、高速応答、広い動作温度範囲が求められている。すなわち、Δεが正で絶対値が大きく、粘度(η)が小さく、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が要求されている。また、Δnとセルギャップ(d)との積であるΔn×dの設定から、液晶組成物のΔnをセルギャップに合わせて適当な範囲に調節する必要がある。加えて液晶表示素子をテレビ等へ応用する場合においては高速応答性が重視されるため、γの小さい液晶組成物が要求される。
【0004】
液晶組成物の構成成分として、Δεが正の液晶化合物である式(A−1)や(A−2)で表される化合物を使用した液晶組成物の開示があるが(特許文献1から4)、これら液晶組成物は十分に低い粘性を実現するに至っていなかった。また、連結基が−CFO−、−OCF−である化合物として、一般式(A−3)や(A−4)で表された化合物およびこれらを使用した液晶組成物の開示はあるが、これら液晶組成物においても十分に低い粘性を実現するに至っていなかった。(特許文献5から21)。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO96/032365号
【特許文献2】特開平09−157202号
【特許文献3】WO98/023564号
【特許文献4】特開2003−183656号
【特許文献5】特開平2−289529号
【特許文献6】特許公報3122199号
【特許文献7】WO96/011897号
【特許文献8】WO97/037960号
【特許文献9】特開平10−204016号
【特許文献10】特開2008−69153号
【特許文献11】US−4818431号
【特許文献12】DE4132006号
【特許文献13】US−7361388号
【特許文献14】US−7674507号
【特許文献15】US−7767277号
【特許文献16】WO2006−515283号
【特許文献17】WO2008−545669号
【特許文献18】WO2010−500980号
【特許文献19】EP−156554号
【特許文献20】特開2011−136998号
【特許文献21】US−7361388号
【特許文献22】特開平10−67988号
【特許文献23】特開平11−29771号
【特許文献24】特開2003−176251号
【特許文献25】特表2003−533557号
【特許文献26】特表2004−529214号
【特許文献27】特開2005−220355号
【特許文献28】特開2005−232455号
【特許文献29】特開2006−328400号
【特許文献30】特開2007−51291号
【特許文献31】特表2007−501301号
【特許文献32】特表2007−503485号
【特許文献33】特開2009−84560号
【特許文献34】特開2009−179813号
【特許文献35】特開2009−185285号
【特許文献36】特開2010−275390号
【特許文献37】特開2012−117062号
【特許文献38】US−5976407号
【特許文献39】US−7001646号
【特許文献40】US−7175891号
【特許文献41】US−7250198号
【特許文献42】US−7604851号
【特許文献43】US−7704566号
【特許文献44】US−8168083号
【特許文献45】US−2010/0308267号
【特許文献46】US−2011/0024682号
【特許文献47】US−2011/0315924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、所望の屈折率異方性(Δn)に調整され、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)の低減及びネマチック相の下限温度の上昇を抑えることによりネマチック相の温度範囲を悪化させることなく、粘度(η)が十分に低く、なおかつ、誘電率異方性(Δε)が正の液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々のフルオロベンゼン誘導体を検討し、特定の化合物を組み合わせることにより前記課題を解決することができることを見出し、本件発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、前記液晶組成物が一般式(LC0)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする液晶組成物を提供し、更に、当該液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R01は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、
01〜A03はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表し、
【0012】
【化3】
【0013】
(該構造中シクロヘキサン環の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように、−O−で置換されていてもよく、該構造中ベンゼン環の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、X03及びX04はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表す。)
式中の部分構造式(LC0−Ph)は式(LC0−Np)であることもでき
【0014】
【化4】
【0015】
01、X02及びX05はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
01は−Cl、−F、−OCHF、−CF、−OCF、炭素数2〜5のフッ素化されたアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基を表し、
01〜Z05はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、存在するZ01〜Z05の内の少なくとも1つは−OCH−、−OCF−又は−CFO−であり、
01及びW02はそれぞれ独立して−CH−又は−O−を表し、
01〜m03はそれぞれ独立して0〜2の整数を表し、m01+m02+m03は0、1又は2を表し、A01、A02、A03、Z01、Z03及び/又はZ05が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の液晶組成物は、Δεが正であってその絶対値が大きくできるという特徴を有する。またηも低く、回転粘性(γ)も小さく、液晶性に優れ、広い温度範囲で安定な液晶相を示す。更に、熱、光、水等に対し、化学的に安定であり、溶解性が良好であるため、低温での相安定も良く、低電圧駆動が可能である実用的で信頼性の高い液晶組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の液晶組成物は、一般式(LC0)
【0018】
【化5】
【0019】
で表される化合物を1種以上含有する。これらの一般式(LC0)中、R01は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、直鎖であることが好ましい。R01がアルケニル基の場合、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環との連結点を表す。)A01がトランス−1,4−シクロヘキシレン基の場合、これらは好ましく、式(R1)、式(R2)、式(R4)が更に好ましい。
【0020】
【化6】
【0021】
01〜A03はそれぞれ独立して、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基及びテトラヒドロピラン基が好ましい。この場合、これらの化合物の群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することが本発明の課題解決のために好適である。
【0022】
一般式(LC0)の部分構造(LC0−Ph)は、
【0023】
【化7】
【0024】
下式のいずれかの部分構造から選ばれることが特に好ましい。
【0025】
【化8】
【0026】
01及びZ05はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−OCF−又は−CFO−が好ましく、存在するZ01〜Z05の少なくとも1つは−OCH−、−OCF−又は−CFO−であるが、Z02及び〜Z05のうち一つが−OCF、−CFO−、−OCH−を表すことが好ましく、残りも単結合、−OCF、−CFO−、−OCH−を表すことが更に好ましい。
式中の部分構造式(LC0−Ph)は式(LC0−Np)であることもできる。
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、X01、X02及びX05はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
01は−Cl、−F、−OCHF、−CF、−OCF、炭素数2〜5のフッ素化されたアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基を表す。)
01〜X05はFであることが大きな誘電率異方性(Δε)又は同程度の誘電率異方性(Δε)に対し顕著に低い粘度(η)となることから好ましい。一般式(LC0)の式中F置換の数は、既に一般式(LC0)に記載されている2個を含め、2〜7個が好ましい。
【0029】
01はF、CF、OCF、−OCF=CF又は−OCH=CFである化合物を組み合わせて使用することが特に好ましく、ネマチック相の下限温度を改善し、液晶組成物の低温動作や保存性を好ましくする。
【0030】
01〜m03はそれぞれ独立して0〜2の整数を表すことが出来るが、m01+m02+m03が0の化合物と1の化合物とを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0031】
更に一般式(LC0)で表される化合物は、下記事項の少なくとも1つを満たす化合物であることが好ましい。
【0032】
・Z01が存在し、Z01が−OCH−、−OCF−又は−CFO−である化合物
・Z02が−OCH−、−OCF−又は−CFO−である化合物
・Z03が存在し、Z03が−OCH−、−OCF−又は−CFO−である化合物
・Z04が−OCH−、−OCF−又は−CFO−である化合物
・Z05が存在し、Z05が−OCH−、−OCF−又は−CFO−である化合物
・W01及びW02が共に−CH−である化合物
・W01、W02の1つが−O−である化合物
・W01及びW02が共に−O−である化合物
・m01+m02+m03が0である化合物
・m01が0で、m02が0で、m03が1である化合物
・m01が0で、m02が1で、m03が0である化合物
・m01が1で、m02が0で、m03が0である化合物
・m01が1で、m02が0で、m03が1である化合物
・m01が1で、m02が1で、m03が0である化合物
・m01が0で、m02が1で、m03が1である化合物
・m01が2であって、一方のZ01が−OCH−、−OCF−又は−CFO−で、他方のZ01が単結合である化合物
・m02が1又は2であって、Z02とZ03の内の1つが−OCH−、−OCF−又は−CFO−で、残りのZ02とZ03が単結合である化合物
・m03が1又は2であって、Z04とZ05の内の1つが−OCH−、−OCF−又は−CFO−で、残りのZ04とZ05が単結合である化合物
一般式(LC0)で表される液晶化合物は、下記一般式(LC0−a)から(LC0−d)
(式中、R01、A01からA03、Z01からZ05、X01、X02及びY01は一般式(LC0)における同じ意味を表し、2個以上存在する場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物であることがより好ましい。本発明の液晶組成物は、一般式(LC0)で表される化合物として、(LC0−a)から(LC0−d)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0033】
【化10】
【0034】
一般式(LC0)で表される化合物は、下記一般式(LC0−1)から一般式(LC0−74)で表される化合物であることがさらに好ましい。一般式(LC0−1)から一般式(LC0−9)で表される化合物は、大きい誘電率異方性(Δε)と顕著に低い粘度(η)を有すると同時に優位な相溶性を有することから特に好ましい。一般式(LC0−10)から一般式(LC0−67)で表される化合物は、大きい誘電率異方性(Δε)と比較的低い粘度(η)を有すると同時に高いネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)を有することから特に好ましい。
【0035】
一般式(LC0)で表される化合物を含有する液晶組成物において、下記事項の少なくとも1つを満たすことが更に好ましい。
【0036】
・一般式(LC0−2)〜一般式(LC0−9)で表される化合物であって、多くとも40質量%含有する
・一般式(LC0−10)〜一般式(LC0−18)で表される化合物であって、多くとも60質量%含有する
・一般式(LC0−28)〜一般式(LC0−38)で表される化合物であって、多くとも60質量%含有する
・一般式(LC0−48)〜一般式(LC0−51)で表される化合物であって、多くとも30質量%含有する
・一般式(LC0−52)〜一般式(LC0−53)で表される化合物であって、多くとも40質量%含有する
・一般式(LC0−56)〜一般式(LC0−59)で表される化合物であって、多くとも50質量%含有する
・一般式(LC0−60)〜一般式(LC0−67)で表される化合物であって、多くとも20質量%含有する
・一般式(LC0−68)〜一般式(LC0−74)で表される化合物であって、多くとも15質量%含有する
・一般式(LC0−2)〜一般式(LC0−5)、一般式(LC0−7)、一般式(LC0−11)〜一般式(LC0−15)、一般式(LC0−17)、一般式(LC0−18)、一般式(LC0−20)、一般式(LC0−28)〜一般式(LC0−30)、一般式(LC0−34)、一般式(LC0−35)、一般式(LC0−39)、一般式(LC0−41)、一般式(LC0−45)、一般式(LC0−46)、一般式(LC0−56)〜一般式(LC0−61)、一般式(LC0−68)又は一般式(LC0−74)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
(式中、R01、A01〜A03、Z01〜Z05、X01〜X04、W01、W02及びY01は請求項1と同じ意味を表す。)
01が炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基であり、Y01は−Cl、−F、−OCHF、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF、−OCF=CF又は−OCH=CFである一般式(LC0)の化合物が、多くとも70質量%含有することが好ましい。
【0042】
本発明は、更に、前記液晶組成物が一般式(LC1)〜一般式(LC5)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することが好ましい。特に、一般式(LC0)で表される化合物を1種以上含有し、下記事項の少なくとも1つを満たすことを特徴とする液晶組成物が好適である。
【0043】
・一般式(LC1)で表される化合物を多くとも20質量%含有する
・一般式(LC2)で表される化合物を多くとも40質量%含有する
・一般式(LC3)で表される化合物を多くとも50質量%含有する
・一般式(LC4)で表される化合物を多くとも60質量%含有する
・一般式(LC5)で表される化合物を多くとも75質量%含有する
【0044】
【化15】
【0045】
(式中、R11〜R41はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、R51及びR52はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、後述のA51又はA53がシクロヘキサン環の場合は−OCF、−CF、−OCF=CF又は−OCH=CFであってもよく、A11〜A42はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0046】
【化16】
【0047】
(該構造中シクロヘキサン環の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように、−O−で置換されていてもよく、該構造中ベンゼン環の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、X61及びX62はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表す。)を表し、A51〜A53はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0048】
【化17】
【0049】
(式中、シクロヘキサン環中の1つ又は2つ以上の−CHCH−は−CH=CH−、−CFO−又は−OCF−で置換されていてもよく、ベンゼン環中の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよい。)を表し、X11〜X43はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y11〜Y41は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表し、Z31〜Z42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、存在するZ31及びZ32の内少なくとも1つは単結合でなく、Z51及びZ52はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m11〜m51はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、m31+m32及びm41+m42はそれぞれ独立して1、2、3又は4を表し、A23、A31、A32、A41、A42、A52、Z31、Z32、Z41、Z42及び/又はZ52が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。但し、一般式(LC0)で表される化合物は含まない。)
これらの一般式(LC1)から一般式(LC5)中、R11〜R41はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよいが、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、直鎖であることが好ましく、R51及びR52はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよいが、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、直鎖であることが好ましい。R11〜R52がアルケニル基の場合、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。
【0050】
【化18】
【0051】
(各式中の黒点は環との連結点を表す。)
11〜A42はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又はテトラヒドロピラン基が好ましい。A11〜A42にテトラヒドロピラン基が含まれる場合には、A11、A21及びA31であることが好ましい。A51〜A53はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基又は3−フルオロ−1,4−フェニレン基が好ましい。
【0052】
11〜X43はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。Y11〜Y41は−F、−CF又は−OCFが好ましい。Z31〜Z42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−が好ましく、存在するZ31及びZ32の内少なくとも1つは単結合でない。m42が0の場合、Z41はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−又は−(CH−を表す。Z51及びZ52はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−が好ましく、単結合、−CHCH−、−OCF−又は−CFO−が更に好ましく、単結合が特に好ましい。m21は0又は1の整数を表すことが好ましい。m31〜m42はそれぞれ独立して0〜2の整数を表すことが好ましく、m31+m32及びm41+m42はそれぞれ独立して1、2又は3が好ましい。m51は1又は2の整数を表すことが好ましい。A23、A31、A32、A41、A42、A52、Z31、Z32、Z41、Z42及び/又はZ52が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0053】
一般式(LC1)で表される化合物は、下記一般式(LC1−1)から一般式(LC1−4)
【0054】
【化19】
【0055】
(式中、R11は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、、X11、X12はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y11は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表す。)で表される化合物であることがより好ましい。
【0056】
一般式(LC2)で表される化合物は、下記一般式(LC2−1)から一般式(LC2−14)
【0057】
【化20】
【0058】
(式中、R21は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、X22〜X26はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y21は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表す。)で表される化合物であることがより好ましい。
【0059】
一般式(LC3)で表される化合物は、一般式(LC3−1)から一般式(LC3−32)で表される化合物群及び又は一般式(LC3−0−1)から一般式(LC3−0−97)
【0060】
【化21】
【0061】
【化22】
【0062】
【化23】
【0063】
【化24】
【0064】
【化25】
【0065】
【化26】
【0066】
(式中、Rは一般式(LC3)におけるR31と同じ意味を表し、X33、X34、X35、X36、X37及びX38はそれぞれ独立してH、Cl、F、CF又はOCFを表し、X32、R31、はR31は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、X32は−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y31は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表し、−F,CF,OCFは−F、−CF又は−OCFのいずれかを表す。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0067】
一般式(LC4)で表される化合物は、下記一般式(LC4−1)から一般式(LC4−32)
【0068】
【化27】
【0069】
【化28】
【0070】
(式中、X44、X45、X46及びX47はそれぞれ独立してH、Cl、F、CF又はOCFを表し、R41は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、X42、X43はそれぞれ独立して−H、−Cl、−F、−CF又は−OCFを表し、Y41は−Cl、−F、−CF、−OCF、−CFCF、−CHFCF、−OCFCF、−OCHFCF又は−OCF=CFを表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0071】
一般式(LC5)で表される化合物は、下記一般式(LC5−1)から一般式(LC5−26)
【0072】
【化29】
【0073】
(式中、R51及びR52はそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよい。)で表される化合物であることが好ましい。本発明の液晶組成物において、一般式(LC5)で表される化合物が1種又は2種以上含有することが好ましく、含有量が20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0074】
更に、一般式(LC5)で表される化合物として下記化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を多くとも70質量%含有することが更に好ましい。
【0075】
【化30】
【0076】
(式中、alkyl及びalkyl*はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を表し、alkenyl及びalkenyl*はそれぞれ独立して下式の炭素数2〜5のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表す。)
本発明の液晶組成物は、20℃での粘度ηが20mPa・s以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の液晶組成物は、光学活性化合物を1種又は2種以上含有することが出来る。光学活性化合物は、液晶分子を捩らせて配向させることが可能であればどんなものでも使用できる。通常この捩れは温度で変化するので所望の温度依存性を得るために複数の光学活性化合物を使用することも出来る。ネマチック液晶相の温度範囲や粘度などに悪影響しないようにするために、捩れ効果の強い光学活性化合物を選んで使用することは好ましい。この様な光学活性化合物として、コレステリックノナネイトなどの液晶や下記一般式(Ch−1)から一般式(Ch−6)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0078】
【化31】
【0079】
(式中、Rc1、Rc2、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、但しRは光学活性を有する分岐鎖基又はハロゲン置換基を少なくとも1は有しており、Zc1、Zc2、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表しD、Dはシクロヘキサン環又はベンゼン環を表し、シクロヘキサン環中の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように−O−で置換されていてもよく、また該環注の1つ又は2つ以上の−CHCH−は−CH=CH−、−CFO−又は−OCF−で置換されていてもよく、ベンゼン環中の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、該環中の1つ以上の水素原子がF、Cl、CHで置換されていてもよく、t、tは0、1、2、3を表し、MG*、Qc1、Qc2、は下記の構造
【0080】
【化32】
【0081】
(式中、D、Dはシクロヘキサン環又はベンゼン環を表し、シクロヘキサン環中の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように−O−で置換されていてもよく、また該環注の1つ又は2つ以上の−CHCH−は−CH=CH−、−CFO−又は−OCF−で置換されていてもよく、ベンゼン環中の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、該環中の1つ以上の水素原子がF、Cl、CHで置換されていてもよい。)を表す。
【0082】
本発明の液晶組成物は、重合性化合物を1種又は2種以上含有してもよく、重合性化合物が、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造である円盤状液晶化合物であることが好ましい。
【0083】
具体的には重合性化合物が一般式(PC)
【0084】
【化33】
【0085】
で表される重合性化合物であることが好ましい。(式中、Pは重合性官能基を表し、Spは炭素原子数0〜20のスペーサー基を表し、Qp1は単結合、−O−、−NH−、−NHCOO−、−OCONH−、−CH=CH−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−OOCO−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は−C≡C−を表し、p及びpはそれぞれ独立して1、2又は3を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、Rp1は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、O原子が直接隣接しないように、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、あるいはRp1はP−Sp−Qp2−であることができ、P、Sp、Qp2はそれぞれ独立してP、Sp、Qp1と同じ意味を表す。)
より好ましくは、重合性化合物一般式(PC)におけるMGが以下の構造
【0086】
【化34】
【0087】
で表される重合性化合物である。
(式中、C01〜C03はそれぞれ独立して1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン-2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF、OCF、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Zp1及びZp2はそれぞれ独立して−COO−、−OCO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CHCHCOO−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−OCOCHCH−、−CONH−、−NHCO−又は単結合を表し、pは0、1又は2を表す。)
ここで、Sp及びSpはそれぞれ独立してアルキレン基である場合、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つ又は2つ以上のCH基はO原子が直接隣接しないように−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていてもよい。また、P及びPはそれぞれ独立して下記の一般式
【0088】
【化35】
【0089】
のいずれかであることが好ましい。
(式中、Rp2からRp6はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
より具体的には、重合性化合物一般式(PC)が一般式(PC0−1)から一般式(PC0−6)
【0090】
【化36】
【0091】
(式中、pはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)で表される重合性化合物であることが好ましい。さらに具体的には、一般式(PC1−1)から一般式(PC1−9)
【0092】
【化37】
【0093】
(式中、pは0、1、2、3又は4を表す。)で表される重合性化合物が好ましい。その内、Sp、Sp、Qp1及びQp2が単結合であることが好ましく、P及びPが式(PC0−a)であることが好ましく、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基であることがより好ましく、p+pが2、3又は4であることが好ましく、Rp1がH、F、CF、OCF、CH又はOCHであることが好ましい。更に、一般式(PC1−2)、一般式(PC1−3)、一般式(PC1−4)及び一般式(PC1−8)で表される化合物が好ましい。
【0094】
また、一般式(PC)におけるMGが一般式(PC1)−9で表される円盤状液晶化合物であることも好ましい
【0095】
【化38】
【0096】
(式中、Rはそれぞれ独立してP−Sp−Qp1又は一般式(PC1−e)の置換基を表し、R81及びR82はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R83は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表し、該アルコキシ基中の少なくとも1つの水素原子は前記一般式(PC0−a)から(PC0−d)で表される置換基で置換されている。)
重合性化合物の使用量は好ましくは0.05〜2.0質量%である。
【0097】
本発明の重合性化合物を含有する液晶組成物は、該重合性化合物を重合させて液晶表示素子を作製する。この際に、未重合成分を所望量以下に低減することが求められており、液晶組成物に対し、一般式(LC0)における部分構造にビフェニル基及び又はターフェニル基を有する化合物を含有することが好ましい。さらに具体的には、一般式(LC0−10)から一般式(LC0−27)、一般式(LC0−48)から一般式(LC0−53)、一般式(LC0−60)から一般式(LC0−68)で表される化合物が好ましく、一種又は二種以上を選び、0.1〜40質量%含有させることが好ましい。また、一般式(PC1−1)から一般式(PC1−3)、一般式(PC1−8)又は一般式(PC1−9)で表される重合性化合物からなる群の中で併用することが好ましい。
【0098】
前記液晶組成物は、さらに酸化防止剤を1種又は2種以上含有することもでき、さらにUV吸収剤を1種又は2種以上含有することもできる。酸化防止剤としては、下記一般式(E−1)及び又は一般式(E−2)で表される中から選ぶことが好ましい。
【0099】
【化39】
【0100】
(式中、Re1は炭素数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲンで置換されていてもよく、
e1、Ze2はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し
はシクロヘキサン環又はベンゼン環を表し、シクロヘキサン環中の1つ又は2つ以上の−CH−は酸素原子が直接隣接しないように−O−で置換されていてもよく、また該環注の1つ又は2つ以上の−CHCH−は−CH=CH−、−CFO−又は−OCF−で置換されていてもよく、ベンゼン環中の1つ又は2つ以上の−CH=は窒素原子が直接隣接しないように、−N=で置換されていてもよく、該環中の1つ以上の水素原子がF、Cl、CHで置換されていてもよく、qは0、1、2又は3を表す。)
本発明の液晶組成物は、液晶表示素子特にアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子として、例えばTNモード、OCBモード、ECBモード、IPS(FFS電極を含む)モード又はVA−IPSモード(FFS電極を含む)に使用することが出来る。ここで、VA−IPSモードとは、電圧無印加時に、誘電率異方性が正の液晶材料(Δε>0)を基板面に対し垂直に配向させ、同一基板面上に配置した画素電極と共通電極により液晶分子を駆動する方法であり、画素電極と共通電極で発生する湾曲電界の方向に液晶分子が配列することから、容易に画素分割やマルチドメインを形成することができ、応答にも優れる利点がある。非特許文献Proc.13th IDW,97(1997)、Proc.13th IDW,175(1997)、SID Sym.Digest,319(1998)、SID Sym.Digest,838(1998)、SID Sym.Digest,1085(1998)、SID Sym.Digest,334(2000)、Eurodisplay Proc.,142(2009)によれば、EOC、VA−IPSなど種々の呼称がされているが、本発明においては以下「VA−IPS」と略称する。
【0101】
一般的にTN、ECB方式におけるフレデリックス転移の閾値電圧(Vc)は次の式
【0102】
【数1】
【0103】
IPS方式においては次の式
【0104】
【数2】
【0105】
VA方式は次の式で表される。
【0106】
【数3】
【0107】
(式中、Vcはフレデリックス転移(V)、Πは円周率、dcellは第一基板と第二基板の間隔(μm)、dgapは画素電極と共通電極の間隔(μm)、dITOは画素電極及び/又は共通電極の幅(μm)、<r1>、<r2>、及び<r3>は外挿長(μm)、K11はスプレイの弾性定数(N)、K22はツイストの弾性定数(N)、K33はベンドの弾性定数(N)を表し、Δεは誘電率の異方性を表す。)
一方、VA−IPS方式においては、本発明等は下記数4が適用されることを見出した。
【0108】
【数4】
【0109】
(式中、Vcはフレデリックス転移(V)、Πは円周率、dcellは第一基板と第二基板の間隔(μm)、dgapは画素電極と共通電極の間隔(μm)、dITOは画素電極及び/又は共通電極の幅(μm)、<r>、<r‘>、<r3>は外挿長(μm)、K33はベンドの弾性定数(N)、Δεは誘電率の異方性を表す。)数4からセル構成としては、dgapをなるべく小さく、dITOをなるべく大きくすることにより、低駆動電圧化が図れ、使用する液晶組成物としてはΔεの絶対値が大きく、K33が小さいものを選択することにより、低駆動電圧化が図れる。
【0110】
本発明の液晶組成物を用いて作製する液晶表示素子は、液晶分子を基板面に配向させる方法として、ポリイミド又はポリアミド化合物等を使用しラビング処理で作製することができる。また、カルコン、シンナメート又はシンナモイル化合物等を使用し光配向技術により作製こともできる。また、新たな配向方法として、配向層に重合性液晶化合物が組み込まれ、重合性液晶化合物を重合させる方法も適用することもできる。
【0111】
本発明の液晶組成物は、好ましいΔε、K11、K33などを調整することが出来る。
【0112】
液晶組成物の屈折率異方性(Δn)と表示装置の第一の基板と、第二の基板との間隔(d)の積(Δn・d)は、視角特性や応答速度に強く関連する。そのため、間隔(d)は3〜4μmと薄くなる傾向にある。積(Δn・d)は、TN、ECB、IPS(無印加時の液晶配向が基板面に略水平)方式の場合0.31〜0.33が特に好ましい。VA−IPS方式においては、両基板に対して垂直配向の場合0.20〜0.59が好ましく、0.30〜0.40が特に好ましい。このように各種表示素子のモードの種類によって、積(Δn・d)の適性値が異なるため、各種モードに適した液晶組成物の屈折率異方性(Δn)は0.070〜0.110の範囲、0.100〜0.140の範囲、あるいは、0.130〜0.180の範囲であり、これらの各々異なった範囲の屈折率異方性(Δn)を有する液晶組成物を作製することができる。
【0113】
重合性化合物として一般式(PC)で表される化合物含有した本発明の液晶組成物は、電圧印加下あるいは電圧無印加下で該液晶組成物中に含有する重合性化合物を重合させて作製した高分子安定化のTNモード、OCBモード、ECBモード、IPSモード又はVA−IPSモード用液晶表示素子を提供できる。具体的には、二枚の基板間に重合性化合物を含有する液晶組成物を狭持し、電圧印加下あるいは電圧無印加下で紫外線等のエネルギーによって液晶組成物中の重合性化合物を重合させることで作製することができる。この液晶表示素子においては、重合性化合物の高分子化によって液晶分子の配向状態を記憶化させることができ、それによって配向状態の安定性を向上させることができる。また、応答速度の改善も期待できる。
【実施例】
【0114】
以下、例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらによって限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0115】
液晶組成物の物性として、以下のように表す。
TN-I :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T-n :ネマチック相の下限温度(℃)
ε⊥ :25℃での分子長軸方向に対し垂直な方向の誘電率
Δε :25℃での誘電率異方性
no :25℃での常光に対する屈折率
Δn :25℃での屈折率異方性
Vth :25℃での周波数1KHzの矩形波を印加した時の透過率が10%変化するセル厚6μmのセルでの印加電圧(V)
η20 :20℃でのバルク粘性(mPa・s)
γ :回転粘性(mPa・s)
化合物記載に下記の略号を使用する。
【0116】
【表1】
【0117】
【化40】
【0118】
(実施例1)(比較例1)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
Ex−1は本願の一般式(LC0)で表される化合物を含有した液晶組成物であり、Ref−1は本願の一般式(LC0)で表される化合物を含有しない液晶組成物である。Ex−1のγは74mPa・sであり、Ref−1のγは96mPa・sであった。一般式(LC0)で表される化合物と部分構造で相違する化合物を含有したRef−1に比べ、実施例1の方がはるかに低粘度であり、本発明の組み合わせが非常に優れたものであることがわかる。
(実施例2)
以下に、一般式(LC5)の化合物で構成した液晶組成物とその物性値を示す。
【0121】
【表3】
【0122】
以下に、Mix-AとMix−Bを用いて調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
(実施例3)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0125】
【表5】
【0126】
(実施例4)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0127】
【表6】
【0128】
(実施例5)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0129】
【表7】
【0130】
(実施例6)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0131】
【表8】
【0132】
(実施例7)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0133】
【表9】
【0134】
(実施例8)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0135】
【表10】
【0136】
(実施例9)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0137】
【表11】
【0138】
(実施例10)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0139】
【表12】
【0140】
(実施例11)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0141】
【表13】
【0142】
(実施例12)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0143】
【表14】
【0144】
(実施例13)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0145】
【表15】
【0146】
(実施例14)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0147】
【表16】
【0148】
(実施例15)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0149】
【表17】
【0150】
(実施例16)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0151】
【表18】
【0152】
(実施例17)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0153】
【表19】
【0154】
(実施例18)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0155】
【表20】
【0156】
(実施例19)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0157】
【表21】
【0158】
(実施例20)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0159】
【表22】
【0160】
(実施例21)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0161】
【表23】
【0162】
(実施例22)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0163】
【表24】
【0164】
(実施例23)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0165】
【表25】
【0166】
(実施例24)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0167】
【表26】
【0168】
(実施例25)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0169】
【表27】
【0170】
(実施例26)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0171】
【表28】
【0172】
(実施例27)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0173】
【表29】
【0174】
(実施例28)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0175】
【表30】
【0176】
(実施例29)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0177】
【表31】
【0178】
(実施例30)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0179】
【表32】
【0180】
(実施例31)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0181】
【表33】
【0182】
(実施例32)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0183】
【表34】
【0184】
(実施例33)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0185】
【表35】
【0186】
(実施例34)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0187】
【表36】
【0188】
(実施例35)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0189】
【表37】
【0190】
(実施例36)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0191】
【表38】
【0192】
(実施例37)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0193】
【表39】
【0194】
(実施例38)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0195】
【表40】
【0196】
(実施例39)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0197】
【表41】
【0198】
(実施例40)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0199】
【表42】
【0200】
(実施例41)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0201】
【表43】
【0202】
(実施例42)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0203】
【表44】
【0204】
(実施例43)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0205】
【表45】
【0206】
(実施例44)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0207】
【表46】
【0208】
(実施例45)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0209】
【表47】
【0210】
(実施例46)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0211】
【表48】
【0212】
(実施例47)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0213】
【表49】
【0214】
(実施例48)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0215】
【表50】
【0216】
(実施例49)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0217】
【表51】
【0218】
(実施例50)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0219】
【表52】
【0220】
(実施例51)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0221】
【表53】
【0222】
(実施例52)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0223】
【表54】
【0224】
(実施例53)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0225】
【表55】
【0226】
(実施例54)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0227】
【表56】
【0228】
(実施例55)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0229】
【表57】
【0230】
(実施例56)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0231】
【表58】
【0232】
(実施例57)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0233】
【表59】
【0234】
(実施例58)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0235】
【表60】
【0236】
(実施例59)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0237】
【表61】
【0238】
(実施例60)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0239】
【表62】
【0240】
(実施例61)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0241】
【表63】
【0242】
(実施例62)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0243】
【表64】
【0244】
(実施例63)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0245】
【表65】
【0246】
(実施例64)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0247】
【表66】
【0248】
(実施例65)
以下に、調製した液晶組成物とその物性値を示す。
【0249】
【表67】
【0250】
(実施例66)
以下に、本発明の液晶組成物における20℃のγの物性値を示す。本発明の液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)の大きさに対してγは比較的小さく、本発明の組み合わせが非常に優れたものであることがわかる。
【0251】
実施例9のγ:46mPa・s
実施例11のγ:53mPa・s
実施例20のγ:87mPa・s
実施例28のγ:81mPa・s
実施例34のγ:50mPa・s
実施例44のγ:47mPa・s
実施例47のγ:58mPa・s
実施例56のγ:84mPa・s
(実施例67及び68)
櫛形電極構造の透明電極を同一基板に一対設けた第一の基板と電極構造を設けない第二の基板を使用し各々の基板上に垂直配向性の配向膜を形成し、第一の基板と第二の基板をギャップ間隔4.0ミクロンのIPS用空セルを作製した。この空セルに実施例46及び50で示された液晶組成物を注入し液晶表示素子を作製し、電気光学特性を測定した。
【0252】
当該各実施例の液晶組成物に対して、式(PC−1)−3−1で表される重合性化合物
【0253】
【化41】
【0254】
を添加し均一溶解することにより重合性液晶組成物を調製した。作製した重合性液晶組成物を上述のIPS用空セルに挟持した後、周波数1KHzで1.8Vの矩形波を印加しながら、300nm以下の紫外線をカットするフィルターを介して、高圧水銀灯により液晶セルに紫外線を照射した。セル表面の照射強度が20mW/cmとなるように調整して600秒間照射して、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させた垂直配向性液晶表示素子を得た。これらの表示素子の電気光学特性を測定した。結果を以下の表に示す。
【0255】
【表68】
【0256】
液晶組成物のみで作製した液晶表示素子と比較して、非常に速いものであった。
【要約】
屈折率異方性およびネマチック相−等方性液体相転移温度を低減又は上昇させることなく、粘度が十分に低く、液晶表示素子に用いた際に表示不良のない誘電率異方性が正の液晶組成物として、正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、前記液晶組成物が一般式(LC0)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有し、一般式(LC1)から一般式(LC5)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する液晶組成物を提供する。高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた液晶表示素子が提供され、液晶ディスプレイとして非常に実用的であり、特別にセルギャップを薄くすることなく高速応答化に有効である。