(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合性液晶組成物がベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造である円盤状液晶化合物を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の製造方法の第一露光工程においては、光重合開始剤の光吸収波長の偏光紫外線を照射する工程を含む。光重合開始剤には種々の光吸収波長を有する化合物が知られているが、具体的には、波長280〜320nm、又は波長320〜380nmのどちらかの波長の偏光を主成分として照射することが好ましく、波長320~380nmの偏光紫外線を使用することがより好ましい。
この場合において、光重合開始剤を複数含有する場合、偏光紫外線を照射する光吸収波長は、含有する一の光重合開始剤の光吸収波長である。
主成分とは少なくとも選択した波長領域において、少なくとも80%以上の積算強度、さらに好ましくは90%以上の積算強度を持つことが好ましい。
【0015】
第一露光工程における露光強度は、偏光紫外線の強度があまり強いと正面位相差が小さくなってしまうので、20mW/cm
2以下の強度が好ましく、15mW/cm
2以下がより好ましく、10mW/cm
2以下が特に好ましいが、5mW/cm
2を下回らないことが好ましい。
第一露光工程における偏光紫外線の照射時間は、タクトタイムを短縮し、生産性を向上させる観点から、60秒以下であることが好ましく、30秒以下がより好ましく、15秒以下が特に好ましいが、1秒を下回らないことが好ましい。
照射時の温度については特に制限が無いが、重合性液晶組成物がキラルネマチック相を呈する温度に保つ必要がある。
【0016】
第二露光工程は、波長200〜400nmの非偏光紫外線を照射するが、第一露光工程で選択した波長以外の波長を含有する非偏光紫外線を照射することが好ましい。このとき、第一露光工程で選択した波長以外の波長は、少なくとも20%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは60%以上の強度を持つことが好ましい。
第二露光工程における露光量は50mW/cm
2以上が好ましく、100mW/cm
2以上がより好ましく、400mW/cm
2以上が特に好ましいが、2000mJ/cm
2を超えないことが好ましい。2000mJ/cm
2を超えると得られるフィルムの黄変傾向が強くなる。
第二露光工程における露光量は200mJ/cm
2以上が好ましく、400mJ/cm
2以上がより好ましく、600mJ/cm
2以上が特に好ましいが、2000mJ/cm
2を超えないことが好ましい。2000mJ/cm
2を超えると得られるフィルムの黄変傾向が強くなる。
【0017】
露光時の雰囲気は、第一及び第二露光工程とも窒素やアルゴンなどの不活性ガスによる置換をせずに、空気中で行うことが好ましい。不活性ガスによる置換は、タクトタイムを長くし、製造コスト上不利となる。
【0018】
本願発明において用いる光重合開始剤は光ラジカル開始剤を使用するのが好ましい。具体的には、
波長280~320nmで主な吸収波長を有するものとして、「Irgacure-184」、「Irgacure-184D」、「Irgacure-907」、「Irgacure-369」を挙げることができ、
波長320~380nmで主な吸収波長を有するものとして、「Irgacure-651」、「ルシリンTPO」(BASF社製)、オキシムエステルである「Irgacure OXE 01」及び「Irgacure OXE 02」(以上、チバスペシャリティケミカルズ社製)を挙げることができる。
重合開始剤において、光吸収波長においてラジカルを発生し最も高い感度を有する。この観点から、360nm付近に高い感度を有する「Irgacure OXE 01」が特に好ましい。
【0019】
光重合開始剤は2種以上を併用することが好ましく、この場合、2種の重合開始剤は、それぞれ異なった光吸収波長有することが好ましく、280~320nmに主な吸収波長を有するもの、320~380nmに主な吸収波長を有するもののから少なくとも1種づつ使用することがより好ましい。
【0020】
重合開始剤の重合性液晶組成物中の合計添加量は1〜6%が好ましく、1〜5%が更に好ましく、3〜5%が特に好ましい。添加量が少ないと硬化性が悪くなり、添加量が多いと重合性液晶組成物の液晶としての性質が損なわれやすくなる。
特に、「Irgacure OXE 01」を使用する場合は1%以上含有させることが好ましい。
【0021】
本願発明の製造方法において、キラルネマチック相を呈する重合性液晶組成物は、ガラスもしくはプラスチック基板に塗布するなどの方法で層を形成してから第一露光工程を適用する。塗布する場合には、重合性液晶組成物を溶媒に溶解させ、これを基板上に塗布し、さらに溶媒を揮発させる方法を挙げることができる。重合性液晶を溶剤に溶解させないで、そのまま、基板上に塗布することも可能である。好適な有機溶媒として例えばトルエン、キシレン、クメンなどのアルキル置換ベンゼンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、シクロペンンタノン等を挙げることができる。さらにこれらの溶媒にジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N-メチルピロリジノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を添加しても良い。溶媒を揮発させる方法としては60〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃での加熱を、15〜120秒、さらに好ましくは30〜90秒の間行う方法を例示することができる。この加熱の他に、減圧乾燥を組み合わせることもできる。塗布の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。基板は、配向処理しなくてもよいが、配向処理をしておくことが好ましい。ガラス基板の場合にはポリイミド配向膜、もしくは光配向膜を形成し、基板界面では水平一軸配向させることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法で使用する重合性液晶組成物のキラルネマチック相の下限温度は40℃より低いことが好ましく、30℃より低いことが更に好ましく、20℃より低いことが特に好ましい。キラルネマチック相の上限温度は、60℃より高いことが好ましく、80℃より高いことが好ましく、100℃より高いことが特に好ましい。
【0023】
キラルネマチック相の螺旋ピッチは、キラルネマチック相の選択反射が可視光域にでないように設計することが好ましい。つまり、赤外領域、もしくは紫外領域に設計するのが好ましく、紫外領域に設計するのが特に好ましい。
【0024】
(重合性液晶化合物)
本発明の製造方法で使用する重合性液晶組成物は重合性液晶化合物を必須の構成成分とするが、その含有量は重合性液晶組成物中に40〜97%、更に好ましくは60〜95%、特に好ましくは80〜90%含有させることが好ましい。
重合性液晶化合物として具体的には一般式(II)
【0026】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R
1は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜25のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良く、あるいはR
1は一般式(II-a)
【0027】
【化2】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)で表される化合物が好ましい。
【0028】
一般式(II)において、Spがアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。)、MGが一般式(II-b)
【0029】
【化3】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH
2 CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、nは0、1、2又は3を表す。)で表される構造を表し、Pが一般式(II-c)又は、一般式(II-d)
【0031】
(式中、R
21、R
22、R
23、R
31、R
32、R
33はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基を表すことが好ましい。
一般式(II)で表される化合物のうち、重合性官能基を一つ有する化合物として具体的には一般式(III)
【0032】
【化5】
(式中、Z
3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z
4は水素原子又はメチル基を表し、W
3は単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、vは0〜18の整数を表し、uは0又は1を表し、D、E及びFはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y
6及びY
7はそれぞれ独立的に単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH
2CH
2O-、-OCH
2CH
2CH
2-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-又は-OCOCH
2CH
2-を表し、Y
8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表すが、W
3が単結合を表す場合vは2〜18の整数を表す。)で表される化合物を含有させることが好ましい。
【0033】
一般式(III)で表される化合物は、液晶下限温度を下げる効果を有するために有用であるが、その添加量は5〜60%が好ましく、10〜50%が更に好ましく、15〜40%が特に好ましい。添加量が多いと得られる二軸性フィルムの耐熱性を損なう傾向がある。
【0034】
一般式(III)で表される化合物には、液晶性骨格を重合性官能基の間にスペーサーを有する化合物と有さない化合物を含む。一般式(III)において、W
3が単結合以外の置換基を表し、vが2〜18の整数を表す場合がスペーサーを有する化合物に相当し、具体的には以下の一般式(IV-1)から一般式(IV-9)で表される化合物が好ましい。
【0036】
(式中、X
1は水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数1から20のアルキル基を表す。)。X1としては水素原子が好ましく、Sとしては3、4、6が好ましい。そのような化合物の中でも、式(IV-5)、式(IV-1)、式(IV-6)の化合物が好ましい。式(IV-1)の化合物の場合、Rとしてはメチル基が特に好ましい。
一方、一般式(III)において、W
3が単結合を表し、vが0を表す場合がスペーサーを有さない化合物に相当し、具体的に以下の構造が好ましい。
【0040】
(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す。)
一般式(II)で表される化合物のうち、重合性官能基を二つ有する化合物としては一般式(IV)
【0042】
(式中、Z
5、Z
6は水素原子、メチル基を表し、G、H及びIはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、mは0から3の整数を表し、W
1及びW
2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物が好ましい。
【0043】
一般式(IV)で表される化合物は、フィルム化した際に高い耐熱性を得るのに効果的であるが、その添加量は30〜85%が好ましく、40〜80%が更に好ましく、50〜75%以下が特に好ましい。
更に具体的には以下に挙げることができる。
【0047】
(式中、j、k、l及びmはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
以上のような化合物の中でも、(II-8)、(II-9)であらわされる化合物が好ましい。j、kは3、4、6である化合物を用いることが化合物製造コスト及び液晶温度範囲を適切に設定できる点から好ましい。
【0048】
また、重合性液晶組成物に円盤状化合物を使用しても良い。このような円盤状化合物としては、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造であることが好ましく、一般式(V)
【0049】
【化14】
(式中、R
5はそれぞれ独立して一般式(V-a)で表される置換基を表す。)
【0050】
【化15】
(式中、R
6及びR
7はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R
8は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表すが、該アルコキシ基中の水素原子は一般式(V-b)、一般式(V-c)又は一般式(V-d)で表される置換基によって置換されていても良い。)
【0051】
【化16】
(式中、R
81、R
82、R
83、R
84、R
85、R
86はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される構造を有することがさらに好ましく、一般式(V)においてR
8の内少なくとも一つは一般式(V-b)、一般式(V-c)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが好ましく、R
8の全てが一般式(V-b)、一般式(V-c)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
さらに、一般式(V-a)は具体的には一般式(V-e)
【0052】
【化17】
(式中nは2〜9の整数を表す)で表される構造を有することが特に好ましい。
(キラル化合物)
本発明の製造方法で用いる重合性液晶組成物にはキラルネマチック相を得ることを目的としてキラル化合物を含有させる。キラル化合物のなかでも、分子中に重合性官能基を有する化合物が特に好ましい。重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。キラル化合物の添加量は、化合物の螺旋誘起力によって適宜調整することが必要であるが、15%以下が好ましい。キラル化合物の具体的例としては、式(a)〜(g)の化合物を挙げることができる。
【0053】
【化18】
(式中、nは2〜12の整数を表す)これらの化合物のなかでも(a)の化合物が好ましい。この場合、nは2もしくは4が合成コストの観点からもっとも好ましい。
【0054】
(各種添加剤)
本発明の製造方法において使用する重合性液晶組成物には光吸収剤を添加することが好ましい。光吸収剤としては、波長280〜400nmにおいて吸収帯を有するが、波長300〜390nmにおいて吸収帯をもつことが更に好ましく、320〜380nmにおいて吸収帯を持つことが特に好ましい。具体的な構造としては2重結合を分子内に有することが好ましい。2重結合としては、炭素-炭素2重結合、炭素-窒素2重結合が好ましい。また、分子として直線性が良いものが好ましい。この光吸収剤は、液晶性を示しても、また示さなくてもよい。
具体的には、一般式(I)
【0055】
【化19】
(式中、X
1からX
4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボキシ基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、又はアルケニルオキシ基を表し、l及びoはそれぞれ独立して1から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立して1から4の整数を表し、L
1からL
3はそれぞれ独立して単結合又は−CH=CH−を表すが、L
1からL
3の少なくとも二つは−CH=CH−を表す。)で表される化合物が好ましく、一般式(Ia)
【0057】
(式中、X
1からX
4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボキシ基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、又はアルケニルオキシ基を表し、l及びoはそれぞれ独立して1から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立して1から4の整数を表す。)で表される化合物がより好ましく、
式(I-1)
【0058】
【化21】
で表される化合物が特に好ましい。本化合物は360nm付近に吸収帯を有する。光吸収剤の添加量は0.1~4%以下が好ましく、0.2~3%が更に好ましく、0.3~2%が特に好ましい。
光吸収剤の吸収帯は、波長320〜380nmの中にあることが好ましい。
【0059】
本発明の製造方法で使用する重合性液晶組成物には1000〜15000ppmの重合禁止剤を含有させることが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。より具体的にはメトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを挙げることができる。
重合性液晶組成物には、塗布したときに良好なプラナー配向を迅速に得ることを目的として、一般式(VI)
【0061】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物を含有させることが好ましい。
【0062】
一般式(VI)で表される化合物は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、又は塩素化流動パラフィンが挙げられる。これ以外にも、フッ素原子が導入された化合物はムラ抑制の観点からも有効である。 一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する化合物のうち、好適な構造として、式(VI-a)〜式(VI-f)
【0064】
で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。中でも、式(VI-a)〜式(VI-e)で表される構造がより好ましく、式(VI-a)及び式(VI-c)で表される構造が特に好ましい。又、式(VI-a)〜式(VI-f)で表される繰り返し単位を有する化合物を2種以上共重合させた共重合体も好ましい。この場合、式(VI-a)及び式(VI-b)を有する共重合体、式(VI-a)及び式(VI-c)を有する共重合体、式(VI-a)及び式(VI-f)を有する共重合体、及び、式(VI-a)、(VI-b)及び式(VI-f)を有する共重合体がより好ましく、式(VI-a)及び式(VI-b)を有する共重合体、及び、式(VI-a)、(VI-b)及び式(VI-f)を有する共重合体が特に好ましい。
【0065】
該化合物の重量平均分子量は、小さすぎるとチルト角を減じる効果が乏しくなり、大きすぎると配向が長時間安定しないため最適な範囲が存在する。具体的には、200〜1000000であることが好ましく、300〜100000であることがさらに好ましく、400〜80000であることが特に好ましい。
【0066】
又、該化合物を、重合性液晶組成物中に0.01〜5質量%含有することが好ましく、0.05〜2質量%含有することがより好ましく、0.1〜1質量%含有することが特に好ましい。
【0067】
本発明の製造方法で用いる重合性液晶組成物には、塗布した際に表面の平滑性を確保することを目的として、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の区別はない。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等をあげることができ、特に含フッ素界面活性剤、シリコーン誘導体が好ましい。
【0068】
更に具体的には「MEGAFAC F−110」、「MEGAFACF−113」、「MEGAFAC F−120」、「MEGAFAC F−812」、「MEGAFAC F−142D」、「MEGAFAC F−144D」、「MEGAFAC F−150」、「MEGAFAC F−171」、「MEGAFACF−173」、「MEGAFAC F−177」、「MEGAFAC F−183」、「MEGAFAC F−195」、「MEGAFAC F−824」、「MEGAFAC F−833」、「MEGAFAC F−114」、「MEGAFAC F−410」、「MEGAFAC F−493」、「MEGAFAC F−494」、「MEGAFAC F−443」、「MEGAFAC F−444」、「MEGAFAC F−445」、「MEGAFAC F−446」、「MEGAFAC F−470」、「MEGAFAC F−471」、「MEGAFAC F−474」、「MEGAFAC F−475」、「MEGAFAC F−477」、「MEGAFAC F−478」、「MEGAFAC F−479」、「MEGAFAC F−480SF」、「MEGAFAC F−482」、「MEGAFAC F−483」、「MEGAFAC F−484」、「MEGAFAC F−486」、「MEGAFAC F−487」、「MEGAFAC F−489」、「MEGAFAC F−172D」、「MEGAFAC F−178K」、「MEGAFAC F−178RM」、「MEGAFAC R−08」、「MEGAFAC R−30」、「MEGAFAC F−472SF」、「MEGAFAC BL−20」、「MEGAFAC R−61」、「MEGAFAC R−90」、「MEGAFAC ESM−1」、「MEGAFAC MCF−350SF」(以上、DIC株式会社製)
【0069】
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、ネオス社製)
【0070】
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)
【0071】
「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)等の例をあげることができる。
【0072】
界面活性剤の好ましい添加量は、重合性液晶組成物中に含有される界面活性剤以外の成分や、使用温度等によって異なるが、重合性液晶組成物中に0.01〜1質量%含有することが好ましく、0.02〜0.5質量%含有することがさらに好ましく、0.03〜0.1質量%含有することが特に好ましい。含有量が0.01質量%より低いときは膜厚ムラ低減効果が得にくい。一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物の含有量と界面活性剤の含有量の合計が0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.4質量%含有することがさらに好ましく、0.1〜0.2質量%含有することが特に好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、%は質量%を表す。正面位相差Reは大塚電子製のRETS-100にて測定した(波長は589nm)。厚み方向の位相差は、位相差の角度依存性を大塚電子製のRETS-100にて測定し、コンピュータシミュレーションソフトLCD-Master(株式会社シンテック社製)によるフィッティングにより求めた。
(参考例1) 重合性液晶組成物の調製
式(II-9-a)の液晶性アクリレート化合物36.47%
【0074】
【化24】
式(II-9-b)の液晶性アクリレート化合物15.63%
【0075】
【化25】
式(II-8-a)の液晶性アクリレート化合物13.03%
【0076】
【化26】
式(IV-5-a)の液晶性アクリレート化合物21.71%
【0077】
【化27】
式(a-1)のキラルアクリレート化合物9.12%
【0078】
【化28】
式(e-1)のキラルアクリレート化合物3.04%
【0079】
【化29】
光吸収剤(I-1)0.74%
【0080】
【化30】
流動パラフィン0.26%、p-メトキシフェノール0.09%からなる重合性液晶組成物(A)を調整した。光吸収剤(I−1)は360nm付近に吸収帯を有する。
【0081】
(実施例1)
参考例1で調製した重合性液晶組成物(A)が95.84%、360nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤Irgacure OXE-01(チバスペシャリティケミカルズ社製)4.16%からなる重合性液晶組成物(B)を調整した。
更に重合性液晶組成物(B)40%、シクロヘキサノン60%から重合性液晶溶液(B)を調製した。これをラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm
2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた(第一露光工程)。さらに同じ高圧水銀ランプから発生する紫外線をバンドパスフィルター、偏光フィルターを通すことなく、非偏光UV(強度30mW/cm
2)を27秒照射した(第二露光工程)。
図1に高圧水銀ランプに非偏光UVの発光スペクトルを示す。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは43nm、厚み方向の位相差Rthは152nmであった。これを230℃で4時間加熱したところ、正面位相差Reは27nm、厚み方向の位相差Rthは124nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは63%、厚み方向の位相差は70%になった。
【0082】
(実施例2)
参考例1で調製した重合性液晶組成物(A)が95.84%、360nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤Irgacure OXE-01(チバスペシャリティケミカルズ社製)2.50%、310nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤Irgacure OXE-01(チバスペシャリティケミカルズ社製)1.66%からなる重合性液晶組成物(C)を調製した。重合性液晶組成物(A)に代えて重合性液晶組成物(C)を用いた以外は実施例1と同様にして二軸性フィルムを作製した。正面位相差Reは39nm、厚み方向の位相差Rthは138nmであった。これを230℃で4時間加熱したところ、正面位相差Reは27nm、厚み方向の位相差Rthは97nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは69%、厚み方向の位相差は70%になった。
【0083】
(比較例1)
実施例1で調整した重合性液晶溶液(B)を、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm
2)を300秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた(第一露光工程)。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは45nm、厚み方向の位相差Rthは200nmであった。これを230℃で4時間加熱したところ、正面位相差Reは27nm、厚み方向の位相差Rthは124nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは60%、厚み方向の位相差は62%になった。
【0084】
(比較例2)
実施例1で調整した重合性液晶溶液(B)を、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm
2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた(第一露光工程)。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは43nm、厚み方向の位相差Rthは152nmであった。これを230℃で4時間加熱したところ、正面位相差Reは25nm、厚み方向の位相差Rthは90nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは58%、厚み方向の位相差は59%になった。
【0085】
以上の結果を表1にまとめた。比較例1と比較例2から、露光時間が少なくなると、ReとRthの残存率が小さくなる、つまり加熱による位相差の変化率が大きくなってしまうことがわかる。実施例1、実施例2及び比較例2との比較から、同じ第一露光条件でも、第二露光を行うことによって、ReとRthの残存率を大きくできる、つまり加熱による位相差の変化率を小さくできることがわかる。
【0086】
【表1】