【文献】
今泉 英明 Hideaki IMAIZUMI,グリーンネットワークに向けたリンク省電力化手法 Link Power Saving Method towards Green Networks,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.108 No.476 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2009年 3月 2日,第108巻,pp.105-110
【文献】
吉兼 昇 Noboru Yoshikane,イーサネットリンクアグリゲーションと連携したインタフェース適応制御によるWDMトランスポンダの省電力化に関する一検討 A Study of Energy-Efficient WDM Transponder utilizing Adaptive Interface Control with Link-Aggregation of Ethernet Links,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.110 No.392 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2011年 1月20日,第110巻,pp.87-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用される前記レーンの数を増やす場合、前記光トランシーバの起動開始から前記光トランシーバの起動に必要な時間の経過後に、使用される前記レーンの数が増やされる、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光伝送システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係るネットワークシステム10を示している。ネットワークシステム10は、例えばユーザによって設置されるLAN(ローカルエリアネットワーク)12を含んでおり、LAN12は、端末14、及び、端末14に接続されたユーザスイッチ16を含んでいる。
【0011】
また、ネットワークシステム10は、例えば通信事業者によって設置される広域ネットワーク18を含んでおり、広域ネットワーク18は、OSI(Open
Systems Interconnection)参照モデルにてレイヤ2レベルで、LAN12間を接続している。
【0012】
広域ネットワーク18は、ユーザスイッチ16に接続される収容スイッチ20、並びに、収容スイッチ20間に配置される光伝送システム21を含む。
収容スイッチ20及びユーザスイッチ16は、それぞれスイッチングハブからなり、収容スイッチ20に接続されるユーザスイッチ16の数等は、図示した数に限定されることはない。
【0013】
光伝送システム21は、1対の伝送装置、即ちマスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sを含む。
マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sの各々は、通信ケーブルを介して収容スイッチ20に接続されるアクセスポート24、及び、通信ケーブルを介して相互に接続されるインターコネクションポート26を有する。アクセスポート24は、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sが中継すべきデータを送受信するためのポートである。インターコネクションポート26は、マスター伝送装置22Mとスレーブ伝送装置22Sの接続に用いられる。インターコネクションポート26間を接続する通信ケーブルは、光ファイバーからなる。
【0014】
〔マスター伝送装置〕
以下、マスター伝送装置22Mの構成について説明する。
図2は、マスター伝送装置22Mの物理的及び機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
マスター伝送装置22Mは、短距離用光トランシーバ28、短距離用PHY−LSI(物理層大規模集積回路)30、MAC−LSI(媒体アクセス制御大規模集積回路)32、長距離用PHY−LSI34、長距離用光トランシーバ36、光合分波器38、制御装置40、及び、記憶ユニット42を有する。
【0015】
〔短距離用光トランシーバ〕
アクセスポート24は、短距離用光トランシーバ28に一体に設けられている。短距離用光トランシーバ28は、例えば、40GBASE−SR4の規格に準拠している。短距離用光トランシーバ28は、アクセスポート24によって受信された光信号を電気信号に変換し、電気信号を短距離用PHY−LSI30に渡す。また、短距離用光トランシーバ28は、短距離用PHY−LSI30から受け取った電気信号を光信号に変換し、光信号をアクセスポート24から送信する。
【0016】
〔短距離用PHY−LSI〕
短距離用PHY−LSI30は、短距離用光トランシーバ28から受け取った電気信号の送信符号に復号化処理等の処理を施し、送信符号をフレームに変換する。また、短距離用PHY−LSI30は、MAC−LSI32から受け取った電気信号のフレームに符号化処理等の処理を施し、フレームを送信符号に変換する。
【0017】
なお、短距離用PHY−LSI30は、受信バッファ46及び必要トラフィック量測定部48を有し、受信バッファ46は、短距離用光トランシーバ28から受け取った電気信号の送信符号を一時的に保存する。
必要トラフィック量測定部48は、受信バッファ46に保存されている送信符号の量に基づいて必要トラフィック量Mtを定期的に測定し、制御装置40に通知する。必要トラフィック量測定部48が必要トラフィック量Mtを測定及び通知する間隔T1は、例えば1秒である。
【0018】
なお、必要トラフィック量Mtは、所定時間T2当たりに、マスター伝送装置22Mのアクセスポート24によって受信される送信符号の量であり、本実施形態では時間T2は1秒である。以下では、必要トラフィック量Mtを時間T2で除した値を、必要伝送速度Mt/T2ともいう。
【0019】
〔MAC−LSI〕
MAC−LSI32は、短距離用PHY−LSI30から受け取ったフレームを長距離用PHY−LSI34に渡すとともに、逆に、長距離用PHY−LSI34から受け取ったフレームを短距離用PHY−LSI30に渡す機能を有する。
【0020】
また、MAC−LSI32は、フレーム判定部50及びフレーム挿抜部52を有する。
フレーム判定部50は、スレーブ伝送装置22Sから送信されてきた交渉フレームF1、起動通知フレームF2、及び、停止通知フレームF3をそれぞれ特定し、制御装置40に渡す機能を有する。
【0021】
図3(a)は、交渉フレームF1のフォーマットを示している。スレーブ伝送装置22Sは、定期的に交渉フレームF1を送信する。スレーブ伝送装置22Sが交渉フレームF1を送信する間隔T3は、マスター伝送装置22Mが交渉フレームF1を受信する間隔でもあり、例えば1秒である。
【0022】
交渉フレームF1には、宛先MACアドレスとして、マスター伝送装置22MのMACアドレスが格納され、送信元MACアドレスとして、スレーブ伝送装置22SのMACアドレスが格納され、そして、タイプとして、交渉フレームF1を表す値が格納される。また、交渉フレームF1には、必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbが格納され、更に、サポートレーン数が格納されていてもよい。
【0023】
図3(b)は、起動通知フレームF2及び停止通知フレームF3のフォーマットを示している。起動通知フレームF2及び停止通知フレームF3には、宛先MACアドレスとして、マスター伝送装置22MのMACアドレスが格納され、送信元MACアドレスとして、スレーブ伝送装置22SのMACアドレスが格納され、そして、タイプとして、起動通知フレームF2及び停止通知フレームF3を表す値がそれぞれ格納される。
【0024】
再び
図2を参照すると、フレーム挿抜部52は、短距離用PHY−LSI30から受け取ったフレームを、所定の場合に記憶ユニット42に渡す機能を有する。また、フレーム挿抜部52は、記憶ユニット42に保存されているフレームを、所定の場合に長距離用PHY−LSI34に渡す機能を有する。
【0025】
〔長距離用PHY−LSI〕
長距離用PHY−LSI34は、IEEE802.3ba 40/100GbEの規格に準拠しており、本実施形態では40Gbpsの通信速度に対応している。
具体的に、長距離用PHY−LSI34は分配部54を有し、分配部54は、MAC−LSI32から受け取ったフレームに符号化処理及びスクランブル化処理を施し、複数のブロックからなるブロック列にフレームを変換する。
そして、分配部54は、ブロック列を1列乃至4列のレーンにブロック単位で巡回的に振り分ける分配処理を行い、各レーンを通じて、長距離用光トランシーバ36にブロックを渡す。
【0026】
また、長距離用PHY−LSI34は、長距離用光トランシーバ36から、1列乃至4列のレーンを通じてブロックを受け取った場合、スキュー調整処理を施してから、ブロックを整列させてブロック列を再現する整列処理を行う。それから、長距離用PHY−LSI34は、デスクランブル化処理及び復号化処理を施し、ブロック列をフレームに変換し、フレームをMAC−LSI32に渡す。
【0027】
ここで、分配部54は、制御装置40からの命令に基づいて、ブロックを振り分けるべきレーンの数(以下、使用レーン数NLともいう)を調整する機能を有する。つまり、使用レーン数NLは可変である。マスター伝送装置22Mでは、ブロックのための物理的なレーンとして、4つのレーンが設けられているが、使用レーン数NLに合わせて、実際に使用されるレーンの数が変更される。
なお、レーンには、送信側のレーン及び受信側のレーンがあるが、使用されるレーンの数が変更されると、送信側及び受信側のレーンの両方の数が変更される。
【0028】
使用レーン数NLが1つの場合、マスター伝送装置22Mからスレーブ伝送装置22Sに向けた通信速度は10Gbpsであり、使用レーン数NLが1つ増える毎に、通信速度が10Gbpsずつ増えていく。つまり、1つのレーン当たりの通信速度S1は10Gbpsである。
なお、長距離用PHY−LSI34は、100Gbpsの通信速度に対応していてもよく、この場合には、最大で4列又は10列の物理的なレーンが使用される。つまり、物理的なレーンの数や、使用レーン数NLの上限は、4列に限定されることはない。
【0029】
〔長距離用光トランシーバ〕
マスター装置22Mは、4つの長距離用光トランシーバ36を有し、1つの物理的なレーンに1つの長距離用光トランシーバ36が配置されている。長距離用光トランシーバ36の各々は、IEEE802.3ba 40/100GbEの規格に準拠しており、本実施形態では10Gbpsの通信速度S1に対応している。
【0030】
具体的には、長距離用光トランシーバ36は、E/O(電気光変換)部56及びO/E(光電気変換部)58を有する。E/O部56は発光素子を含んでおり、長距離用PHY−LSI34からレーンを通じて受け取ったブロックの電気信号を光信号に変換し、光信号を光合分波器38に向けて送信する。O/E部58は受光素子を含んでおり、光合分波器38から受信した光信号を電気信号に変換し、レーンを通じて長距離用PHY−LSI34に渡す。
なお本発明においては、フレーム、送信符号、ブロック列、及び、ブロックを区別せずに単にデータともいう。
【0031】
長距離用光トランシーバ36が送信する光信号の波長は、長距離用光トランシーバ36間で異なっており、マスター伝送装置22Mとスレーブ伝送装置22Sの間でも異なっている。
また、長距離用光トランシーバ36は電源制御部60を含み、電源制御部60は、制御装置40からの命令に基づいて、E/O部56及びO/E部58への電力の供給をオン・オフする。つまり、電源制御部60は、E/O部56及びO/E部58の起動及び停止を制御しており、換言すれば、長距離用光トランシーバ36の起動及び停止を個別に制御している。
【0032】
〔光合分波器〕
光合分波器38は、E/O部56から受信した光信号を多重化する。多重化された光信号は、インターコネクションポート26から、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信される。また、光合分波器38は、インターコネクションポート26によって受信された、多重化された光信号を分波する。分波された光信号はO/E部58に渡される。
インターコネクションポート26は、光合分波器38を介して、長距離用光トランシーバ36と接続される。
【0033】
〔制御装置〕
制御装置40は、例えばCPU(中央演算処理装置)によって構成される。制御装置40は、機能でみたときに、目標レーン数演算部62、制御フレーム生成部64、使用レーン数制御部66、光トランシーバ制御部68、フレーム挿抜制御部70を有する。
【0034】
〔目標レーン数演算部〕
目標レーン数演算部62は、使用するレーンの目標数(以下、目標レーン数Ncという)を所定の演算式に基づいて、定期的に演算する。目標レーン数演算部62が目標レーン数Ncを演算する間隔T4は、例えば3秒である。
【0035】
〔目標レーン数演算式〕
具体的には、次式:
Nc=ROUNDUP(MAX(Mt+X+Mb,St+Y+Sb)/T2/S1)・・・(1)
に基づいて、目標レーン数Ncが演算される。
ただし、目標レーン数Ncは、使用レーン数NLの最小値NLmin以上最大値NLmax以下の範囲に制限される。つまり、式(1)で演算された値が最小値NLmin未満である場合(Nc<NLmin)、目標レーン数Ncとして最小値NLminが用いられ(Nc=NLmin)、式(1)で演算された値が最大値NLmax超である場合(Nc>NLmax)、目標レーン数Ncとして最大値NLmaxが用いられる(Nc=NLmax)。本実施形態では、最小値NLminは1であり、最大値NLmaxは4である。
【0036】
なお式(1)中、ROUNDUP()は、括弧内の数字を小数点第1位で切り上げて整数にする関数である。MAX()は、括弧内の2つの数値(Mt+X+Mb),(St+Y+Sb)のうち、大きい方を選択する関数である。
そして、Mtはマスター伝送装置22Mの必要トラフィック量であり、Mbはマスター伝送装置22Mの記憶ユニット42に保存されているフレームの量(以下、ストックデータ量ともいう)である。Xは適当な定数であり、0であってもよい。
【0037】
制御装置40は、所定の間隔T1で、必要トラフィック量測定部48及び記憶装置制御部74から、必要トラフィック量Mt及びストックデータ量Mbをそれぞれ取得しており、目標レーン数演算部62は、最新の必要トラフィック量Mt及びストックデータ量Mbを用いて、目標レーン数Ncを演算する。
【0038】
また、Stはスレーブ伝送装置22Sの必要トラフィック量であり、Sbはスレーブ伝送装置22Sのストックデータ量である。Yは適当な定数であり、0であってもよい。制御装置40は、交渉フレームF1を受信することによって、例えば1秒の間隔T3で、必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを繰り返し取得している。目標レーン数演算部62は、最新の必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを用いて、目標レーン数Ncを演算する。
更に、S1は、1つのレーン当たりの伝送速度であり、例えば10Gbpsである。
【0039】
〔制御フレーム生成部〕
制御フレーム生成部64は、演算された目標レーン数Ncを含む制御フレームF4を所定の場合に生成し、MAC−LSI32及び長距離用PHY−LSI34等を通じて、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信する。
具体的には、演算された目標レーン数Ncと使用レーン数NLとの比較結果に基づいて使用レーン数NLが変更される場合に、制御フレーム生成部64は、制御フレームF4を生成して送信する。
【0040】
図3(c)は、制御フレームF4のフォーマットを示している。制御フレームF4には、宛先MACアドレスとして、スレーブ伝送装置22SのMACアドレスが格納され、送信元MACアドレスとして、マスター伝送装置22MのMACアドレスが格納され、そして、タイプとして、制御フレームF4を表す値が格納される。また、制御フレームF4には、目標レーン数Ncが格納される。
【0041】
〔使用レーン数制御部〕
再び
図2を参照すると、使用レーン数制御部66は、使用レーン数NLが、演算された目標レーン数Ncに一致するように、分配部54を操作する。
【0042】
〔光トランシーバ制御部〕
光トランシーバ制御部68は、目標レーン数Ncに起動状態の長距離用光トランシーバ36の数(以下、起動数NDともいう)が一致するように、電源制御部60を操作して長距離用光トランシーバ36を個別に起動又は停止させる。
【0043】
〔フレーム挿抜制御部〕
フレーム挿抜制御部70は、短距離用PHY−LSI30から長距離用PHY−LSI34に向けて、MAC−LSI32を通過しようとするフレームの流れから、所定の場合にフレームの一部を抜き出し、記憶ユニット42に記憶させる。
具体的には、フレーム挿抜制御部70は、使用レーン数NLに基づいて規定される伝送速度NL・S1が、必要伝送速度Mt/T2を下回っている場合に、下回っている量に対応する量にて、記憶ユニット42にフレームを保存させる。
【0044】
また、フレーム挿抜制御部70は、記憶ユニット42に保存されているフレームを、所定の場合にMAC−LSI32に向けて送信させ、長距離用PHY−LSI34に向けてMAC−LSI32を通過するフレームの流れに挿入する。
具体的には、フレーム挿抜制御部70は、使用レーン数NLに基づいて規定される伝送速度NL・S1が、必要伝送速度Mt/T2を上回っている場合に、上回っている量に対応する量にて、記憶ユニット42に保存されているフレームを、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信する。
【0045】
〔記憶ユニット〕
記憶ユニット42は、記憶装置72及び記憶装置制御部74を有する。記憶装置72は、フレームを一時的に保存するためのものであり、記憶装置制御部74は、記憶装置72とMAC−LSI32の間でのフレームの送受信を、フレーム挿抜制御部70からの命令に従って制御する。
【0046】
〔スレーブ伝送装置〕
以下、スレーブ伝送装置22Sの構成について説明する。なお、スレーブ伝送装置22Sの構成のうち、マスター伝送装置22Mと同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して説明を簡略化若しくは省略する。
図4は、スレーブ伝送装置22Sの物理的及び機能的な構成を概略的に示すブロック図である。スレーブ伝送装置22Sの制御装置40は、交渉フレーム生成部76、及び、起動・停止通知フレーム生成部78を有する。
【0047】
〔交渉フレーム生成部〕
交渉フレーム生成部76は、定期的に交渉フレームF1を生成し、MAC−LSI32及び長距離用PHY−LSI34等を通じて、マスター伝送装置22Mに向けて送信する。
交渉フレーム生成部76は、交渉フレームF1の生成直前に、必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを必要トラフィック量測定部48及び記憶装置制御部74からそれぞれ定期的に取得し、取得した最新の必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを交渉フレームF1に格納する。
なお、必要トラフィック量Stは、所定の時間T2当たりに送信すべき送信符号の量であり、ストックデータ量Sbは、記憶ユニットに保存されているデータの量である。
【0048】
〔起動・停止通知フレーム生成部〕
起動・停止通知フレーム生成部78は、所定の場合に起動通知フレームF2又は停止通知フレームF3を生成し、MAC−LSI32及び長距離用PHY−LSI34等を通じて、マスター伝送装置22Mに向けて送信する。
【0049】
〔マスター伝送装置の動作〕
以下、
図5を参照して、マスター伝送装置22Mの動作として、マスター伝送装置22Mが実行するプログラム(メインルーチン)の概略的な構成について説明する。
【0050】
メインルーチンは、例えば、マスター伝送装置22Mの起動とともに実行される。メインルーチンでは、まず、初期設定が行われる(S10)。具体的には、全ての長距離用光トランシーバ36を起動させるために、起動数NDが、最大値NDmaxである4に設定される。また、使用レーン数NLが、最大値NLmaxである4に設定されるとともに、繰り返し回数nが1に設定される。
【0051】
初期設定S10の後、マスター伝送装置22Mは、フレームの中継を開始し(S12)、この後、交渉フレームF1を受信したか否かを判定する(S14)。本実施形態では、マスター伝送装置22Mは1秒の間隔T3で交渉フレームF1を受信するため、1秒間隔でステップS14の判定結果がYesになる。
【0052】
マスター伝送装置22Mは、交渉フレームF1を受信すると、交渉フレームF1に含まれる必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを取得する(S16)。また、マスター伝送装置22Mは、必要トラフィック量測定部48及び記憶装置制御部74から、最新の必要トラフィック量Mt及びストックデータ量Mbをそれぞれ取得する(S18)。
【0053】
ステップS18の後、マスター伝送装置22Mは、記憶ユニット42にフレームが保存されているか否か、即ち、ストックデータ量Mbが0よりも大であるか否かを判定する(S20)。
ステップS20の判定結果がYesの場合、マスター伝送装置22Mは、使用レーン数NLによって規定される伝送速度NL・S1が、必要伝送速度Mt/T2を上回っているか否かを判定する(S22)。ステップS22の判定結果がYesの場合、マスター伝送装置22Mは、記憶ユニット42に保存されているフレームを、所定の量(以下、バッファ送信量ΔMbともいう)だけ、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信する(S24)。
【0054】
具体的には、バッファ送信量ΔMbは、次式:
ΔMb=NL・S1・T2−(Mt+X)・・・(2)
にて求められる。
なお、定数Xの大きさによっては、バッファ送信量ΔMbが負の値になることがあるが、その場合には、記憶ユニット42に保存されているフレームは送信されない。
【0055】
ステップS24の後、繰り返し回数nが3であるか否かが判定される(S26)。また、ステップS20若しくはステップS22の判定結果がNoの場合にも、ステップS26が実行される。
ステップS26の判定結果がNoの場合、マスター伝送装置22Mは繰り返し回数nを1つ増やし(S28)、再びステップS14を実行する。
【0056】
〔レーン数調整サブルーチン〕
一方、ステップS26の判定結果がYesの場合、繰り返し回数nを1に戻した後(S30)、
図6に示すレーン数調整サブルーチンSR32が実行される。レーン数調整サブルーチンSR32では、目標レーン数Ncが演算される(S40)。演算された目標レーン数Ncは、使用レーン数NLと比較される(S42)。
【0057】
ステップS42の比較の結果、目標レーン数Ncが使用レーン数NLに等しい場合(Nc=NL)、レーン数調整サブルーチンSR32が終了し、ステップS14が実行される。
【0058】
一方、ステップS42の比較の結果、目標レーン数Ncが使用レーン数NLよりも大きく、且つ、使用レーン数NLの最大値NLmaxよりも小さい場合(NLmax>Nc>NL)には、レーン数増サブルーチンSR44が実行される。また、目標レーン数Ncが使用レーン数NLよりも小さく、且つ、使用レーン数NLの最小値NLminよりも大である場合(NLmin<Nc<NL)には、レーン数減サブルーチンSR46が実行される。
【0059】
〔レーン数増サブルーチン〕
図7は、レーン数増サブルーチンSR44を示している。レーン数増サブルーチンSR44では、必要伝送速度Mt/T2が、現在の伝送速度NL・S1よりも大きいか否かが判定される(S50)。
ステップS50の判定結果がYesの場合、マスター伝送装置22Mは、スレーブ伝送装置22Sに送信されるべきフレームの一部を所定の量(以下、オーバーフロー量ΔMt)だけ抜き取って、記憶ユニット42へ転送する動作を開始する(S52)。
【0060】
オーバーフロー量ΔMtは、次式:
ΔMt=Mt+X−NL・S1・T2・・・(3)
にて求められる。
記憶ユニット42に転送されたフレームは、記憶装置72に保存される。ただし、記憶装置72の容量が不足した場合には、転送されたフレームは破棄される。
【0061】
ステップS52の後、若しくは、ステップS50の判定結果がNoの場合、制御フレームF4が生成され、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信される(S54)。
それから、目標レーン数Ncと起動数NDの差(Nc−ND)に対応する数だけ起動数NDが増やされ、停止中の長距離用光トランシーバ36が起動させられる(S56)。つまり、起動数NDの数が目標レーン数Ncに一致させられる。
【0062】
ステップS56の後、マスター伝送装置22Mは、起動通知フレームF2の受信を待ち(S58)、起動通知フレームF2を受信すると、使用レーン数NLを、目標レーン数Ncと使用レーン数NLの差(Nc−NL)に対応する数だけ増やす(S60)。
【0063】
なお、ステップS56での長距離用光トランシーバ36の起動開始から、ステップS60での使用レーン数NLの変更までの間には、長距離用光トランシーバ36の起動に必要な時間だけ間隔が設けられる。例えば、長距離用光トランシーバ36の起動開始から起動終了までに必要な時間が2000msである場合、2000ms以上の間隔が設けられる。
ステップS60の後、記憶ユニット42へのフレームの転送が停止され(S62)、レーン数増サブルーチンSR44が終了する。
【0064】
〔レーン数減サブルーチン〕
図8は、レーン数減サブルーチンSR46を示している。レーン数減サブルーチンSR46では、目標レーン数Ncを含む制御フレームF4が生成され、スレーブ伝送装置22Sに向けて送信される(S70)。
ステップS70の後、マスター伝送装置22Mは、停止通知フレームF3の受信を待ち(S72)、停止通知フレームF3を受信すると、使用レーン数NLを、使用レーン数NLと目標レーン数Ncの差(NL−Nc)とに対応する数だけ減らす(S74)。
【0065】
それから、長距離用光トランシーバ36の起動数NDと目標レーン数Ncの差(ND−Nx)に対応する数だけ起動数NDが減らされ、起動中の長距離用光トランシーバ36が停止させられる(S76)。
〔スレーブ伝送装置の動作〕
以下、
図9を参照して、スレーブ伝送装置22Sの動作として、スレーブ伝送装置22Sが実行するプログラム(メインルーチン)の概略的な構成について、マスター伝送装置22Mのメインルーチンと異なる部分を中心に説明する。
【0066】
スレーブ伝送装置22Sは、必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを間隔T1で繰り返し取得する(S84)。そして、必要トラフィック量St及びストックデータ量Sbを含む交渉フレームF1を生成し、マスター伝送装置22Mに向けて送信する(S86)。
【0067】
ステップS88,S90,S92は、必要トラフィック量Mt、ストックデータ量Mb及び定数Xに代えて、必要トラフィック量St、ストックデータ量Sb及び定数Yが用いられ、フレームの送信先がマスター伝送装置22Mである以外は、ステップS20,S22,S24とそれぞれ同じである。
なお、スレーブ伝送装置22Sにおけるバッファ送信量ΔSbは、次式:
ΔSb=NL・S1・T2−(St+Y)・・・(4)
にて求められる。
【0068】
ステップS92の後、制御フレームF4を受信したか否かが判定される(S94)。ステップS94の判定の結果、制御フレームF4を受信していれば、レーン数調整サブルーチンSR96が実行される。
【0069】
〔レーン数調整サブルーチン〕
図10は、スレーブ伝送装置22Sが実行するレーン数調整サブルーチンSR96を示している。
スレーブ伝送装置22Sは、レーン数調整サブルーチンSR96が実行されると、制御フレームF4に含まれる目標レーン数Ncを取得し、使用レーン数NLと比較する(S100)。
【0070】
ステップS100の比較の結果、目標レーン数Ncが使用レーン数NLよりも大きい場合、レーン数増サブルーチンSR102が実行され、目標レーン数Ncが使用レーン数NLよりも小さい場合、レーン数減サブルーチンSR104が実行される。
なお、マスター伝送装置22Mは、使用レーン数NLを変更する場合のみ制御フレームF4を送信するので、ステップS100の比較結果において、Nc=NLとなることはない。
【0071】
〔レーン数増サブルーチン〕
図11は、スレーブ伝送装置22Sが実行するレーン数増サブルーチンSR102を示している。
ステップS106,S108は、必要トラフィック量Mt、ストックデータ量Mb及び定数Xに代えて、必要トラフィック量St、ストックデータ量Sb及び定数Yが用いられている以外は、ステップS50,S52とそれぞれ同じである。
なお、スレーブ伝送装置22Sにおけるオーバーフロー量ΔStは、次式:
ΔSt=St+Y−NL・S1・T2・・・(5)
にて求められる。
【0072】
ステップS110,S114,S116は、ステップS56,S60,S62とそれぞれ同じである。ステップS110とステップS114の間に、起動通知フレームF2が生成され、マスター伝送装置22Mに向けて送信される(ステップS112)。起動通知フレームF2は、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sが、ステップS60及びステップS114を同期してほぼ同時に行うためのトリガーとしての役割を有する。
なお、ステップS110での長距離用光トランシーバ36の起動開始から、ステップS114での使用レーン数NLの変更までの間には、長距離用光トランシーバ36の起動に必要な時間だけ間隔が設けられる。
【0073】
〔レーン数減サブルーチン〕
図12は、スレーブ伝送装置22Sが実行するレーン数減サブルーチンSR104を示している。
ステップS120,S122は、ステップS74,S76とそれぞれ同じである。ステップS120の前に、停止通知フレームF3が生成され、マスター伝送装置22Mに向けて転送される。
停止通知フレームF3は、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sが、ステップS74及びステップS120を同期してほぼ同時に行うためのトリガーとしての役割を有する。
【0074】
上述した一実施形態の光伝送システム21は、複数のレーンを使用して並列的に光信号を送受信可能であり、高速の伝送速度NL・S1を実現可能である。
一方、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、適時更新される目標レーン数Ncに基づいて、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sが、長距離用光トランシーバ36の起動数NDを調整する。すなわち、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sは、必要最低限の数の長距離用光トランシーバ36を使用してフレームの送受信を行いながら、不要な長距離用光トランシーバ36を停止させることで、省電力化を図っている。
【0075】
そして、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、マスター伝送装置22Mが、必要トラフィック量Mt,Stに基づいて目標レーン数Ncを演算しており、マスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sにおける長距離用トランシーバ36の起動数NDが過不足無く適切に調整される。
【0076】
また、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、長距離用トランシーバ36の起動開始から起動終了までの間、必要伝送速度がMt/T2,St/T2が伝送速度NL・S1を上回ると、オーバーフロー量ΔMt,ΔStだけ、フレームが記憶ユニット42に転送される。このため、長距離用トランシーバ36の起動にある程度の時間がかかっても、オーバーフローによるフレームの破棄が防止される。
【0077】
更に、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、伝送速度NL・S1が必要伝送速度Mt/T2,St/T2を上回ると、記憶ユニット42に保存されているフレームが、バッファ送信量ΔMb,ΔSbだけ、スレーブ伝送装置22S又はマスター伝送装置22Mに向けて送信される。このため、記憶ユニット42に保存されたフレームが速やかに送信され、光伝送システム21を介したフレームの送受信が円滑に行われる。
【0078】
また更に、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、マスター伝送装置22Mが、必要トラフィック量Mt,St及びストックデータ量Mb,Sbに基づいて目標レーン数Ncを演算しており、記憶装置72に保存されたフレームが、速やかに送信される。このため、円滑な通信が確保される。
【0079】
また、上述した一実施形態の光伝送システム21においては、長距離用トランシーバ36の起動開始から長距離用トランシーバ36の起動に必要な時間の経過後に、使用レーン数NLが増やされるので、起動中の長距離用トランシーバ36に送信すべきデータが渡されることが無く、長距離用トランシーバ36でのフレームロスが防止される。
【0080】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、上述した一実施形態に変更を加えた形態も含む。
【0081】
例えば、上述した一実施形態のマスター伝送装置22M及びスレーブ伝送装置22Sは、光合分波器38を有していたが、複数の通信ケーブルを用いて相互に接続する場合には、光合分波器38は不要である。
【0082】
上述した一実施形態のマスター伝送装置22Mは、必要トラフィック量Mt,Mb及び定数X,Yに加えて、ストックデータ量Mb,Sbに基づいて、目標レーン数Ncを演算したけれども、必要トラフィック量Mt,Mb及び定数X,Yのみに基づいて、目標レーン数Ncを演算してもよい。
最後に、上述した一実施形態で用いられている装置の具体的な構成や処理手順はいずれも好ましいものであって、これらに限定されることはないのは勿論である。