特許第5776981号(P5776981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776981
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ネットワーク中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/801 20130101AFI20150820BHJP
   H04L 12/911 20130101ALI20150820BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20150820BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H04L12/801
   H04L12/911
   H04L12/70 100Z
   H04L12/28 200M
   H04L12/28 200D
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-31506(P2012-31506)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-168832(P2013-168832A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑田 斉
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/147909(WO,A1)
【文献】 特開2010−206698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/801
H04L 12/28
H04L 12/70
H04L 12/911
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを受信する受信ポートと、
前記フレームの内容を管理する処理を実行する制御部と、
前記受信ポートにより受信された前記フレームの受信量を測定する測定部と、
前記受信ポートにより受信された前記フレームを、特定のグループを含む複数のグループに分類するために、前記受信量に関する基準値を予め規定する基準値規定部と、
前記測定部により測定された前記フレームの受信量が前記基準値規定部に規定された基準値を超えているか否かを判断することにより、前記受信ポートにより受信された前記フレームが、前記複数のグループのうちいずれのグループに属するかを判断する判断部と、
前記判断部による判断結果が、前記特定のグループに属するとの判断結果である場合、前記受信ポートにより受信された前記フレームの内容を、前記制御部に送信する送信部と
を備え
前記基準値規定部は、
前記基準値として、第1基準値、及び前記第1基準値よりも値が大きい第2基準値を規定しており、
前記判断部は、
前記受信量が前記第1基準値を超えており、かつ、前記受信量が前記第2基準値を超えていない場合、前記特定のグループに属するものと判断する
ネットワーク中継装置。
【請求項2】
請求項に記載のネットワーク中継装置において、
前記複数のグループは、
前記特定のグループの他に、第1非特定のグループ及び第2非特定のグループを含み、
前記判断部は、
前記受信量が前記第1基準値を超えていない場合は前記第1非特定のグループに属するものと判断し、
前記受信量が前記第2基準値を超えている場合は前記第2非特定のグループに属するものと判断する
ネットワーク中継装置。
【請求項3】
請求項又はに記載のネットワーク中継装置において、
前記第2基準値から前記第1基準値を減算した値は、
ネットワーク中継装置にて設定可能な最小の値である
ネットワーク中継装置。
【請求項4】
フレームを受信する受信ポートと、
前記フレームの内容を管理する処理を実行する制御部と、
前記受信ポートにより受信された前記フレームの受信量を測定する測定部と、
前記受信ポートにより受信された前記フレームを、特定のグループを含む複数のグループに分類するために、前記受信量に関する基準値を予め規定する基準値規定部と、
前記測定部により測定された前記フレームの受信量が前記基準値規定部に規定された基準値を超えているか否かを判断することにより、前記受信ポートにより受信された前記フレームが、前記複数のグループのうちいずれのグループに属するかを判断する判断部と、
前記判断部による判断結果が、前記特定のグループに属するとの判断結果である場合、前記受信ポートにより受信された前記フレームの内容を、前記制御部に送信する送信部と
を備え、
前記基準値規定部は、
前記基準値として、第1基準値、及び前記第1基準値と同じ値の第2基準値を規定しており、
前記判断部は、
前記受信量が前記第1基準値及び前記第2基準値を超えた場合であっても、超過量が一定の値の範囲内であれば前記特定のグループに属するものと判断する
ネットワーク中継装置。
【請求項5】
請求項に記載のネットワーク中継装置において、
前記複数のグループは、
前記特定のグループの他に、第1非特定のグループ及び第2非特定のグループを含み、
前記判断部は、
前記受信量が前記第1基準値及び前記第2基準値を超えていない場合は前記第1非特定のグループに属するものと判断し、
前記受信量が前記第1基準値及び前記第2基準値を超えている場合であって、前記超過量が前記一定の値の範囲内にない場合、前記第2非特定のグループに属するものと判断する
ネットワーク中継装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載のネットワーク中継装置において、
前記制御部は、
前記送信部により送信された前記フレームの内容を記憶する
ネットワーク中継装置。
【請求項7】
請求項2又は5に記載のネットワーク中継装置において、
前記送信部は、
前記判断部による判断結果が、前記第1非特定のグループ又は前記第2非特定のグループのいずれかに属するとの判断結果である場合、前記受信ポートにより受信された前記フレームの内容を前記制御部に送信しない
ネットワーク中継装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載のネットワーク中継装置において、
前記測定部、前記基準値規定部、前記判断部及び前記送信部は、
同一の集積回路に設けられている
ネットワーク中継装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載のネットワーク中継装置において、
前記受信ポートは、
複数設けられており、
前記送信部は、
前記フレームの内容に、複数の前記受信ポートの中から前記特定のグループに属すると判断されたフレームを受信した受信ポートを特定するための情報を付加して送信する
ネットワーク中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ルータ等の通信装置間で、パケットやフレームによって通信を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術は、特に、パスが伝達するトラフィック量に応じてパス容量の増減を判断する技術であり、2段階以上の判断基準を有するパス容量増加判断ステップやパス容量減少判断ステップを採用している。
【0004】
このため、特許文献1の技術によれば、パス容量増加判断ステップやパス容量減少判断ステップによって長期及び短期のトラフィック変動の双方を考慮したパス容量の増加又は減少の判断を行うことができ、トラフィックロスを防ぎつつ、高品質なパスを上位レイヤネットワークに提供することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−43646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ネットワーク中継装置においては、マイクロバーストが発生することがある。ここで、「マイクロバースト」とは、バースト的なトラフィックに起因する短期的かつランダムな通信状態の変化であり、突発的に短時間に大量の通信が発生する状態である。
【0007】
具体的には、マイクロバーストは、1秒未満でバーストするトラフィック特性であり、数秒間隔でのトラフィックのプロットでは平均化されてしまい検知することができないものである。
そして、このようなマイクロバーストが、スイッチのどのポートで発生しているのかを特定し、マイクロバーストの発生元(悪質なユーザ)がどこ(誰)であるのかを特定し、さらにそれをリアルタイムで検知したいという要望がある。
【0008】
ここで、マイクロバーストの発生元を特定するための要件は、以下の通りである。
(1)マイクロバーストを検知することができること。
マイクロバーストは、突発的に短時間に大量の通信が発生する状態であるため、いつどこで発生するか分からない。そのため、マイクロバーストを検知するためには、ネットワーク中継装置の各通信ポートのトラフィックを常時監視する必要がある。
(2)中継中のフレームの送信元を特定することができること。
中継中のフレームの送信元を特定するためには、ネットワーク中継装置の制御部で、中継中のフレームの内容をキャプチャ(捕獲)する必要がある。
【0009】
上記(1)(2)の要件を両方とも満たす手法として、ネットワーク中継装置の制御部で、ネットワーク中継装置の各通信ポートのトラフィックを常時監視し、中継中のフレームの内容をキャプチャ(捕獲)する手法(要するに、制御部で中継中のフレームの内容を常時監視する手法)が考えられる。しかし、この手法では、制御部による常時監視が必須となるため、制御部における処理負担、及び性能面を考えると、非現実的である。
【0010】
そこで本発明は、制御部における処理負担をできるだけ少なくしつつ、マイクロバーストの発生元を特定することができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のネットワーク中継装置は、フレームを受信する受信ポートと、前記フレームの内容を管理する処理を実行する制御部と、前記受信ポートにより受信された前記フレームの受信量を測定する測定部と、前記受信ポートにより受信された前記フレームを、特定のグループを含む複数のグループに分類するために、前記受信量に関する基準値を予め規定する基準値規定部と、前記測定部により測定された前記フレームの受信量が前記基準値規定部に規定された基準値を超えているか否かを判断することにより、前記受信ポートにより受信された前記フレームが、前記複数のグループのうちいずれのグループに属するかを判断する判断部と、前記判断部による判断結果が、前記特定のグループに属するとの判断結果である場合、前記受信ポートにより受信された前記フレームの内容を、前記制御部に送信する送信部とを備えるネットワーク中継装置である。
また、本発明のネットワーク中継装置は、フレームの中継を制御する制御部と、前記フレームを受信する受信ポートと、前記受信ポートにより受信された前記フレームの受信量を測定する測定部と、前記測定部により測定された前記フレームの受信量が所定範囲に属する場合、該所定範囲に属している間における前記フレームの内容を前記制御部に送信する送信部とを備えるネットワーク中継装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御部における処理負担をできるだけ少なくしつつ、マイクロバーストの発生元を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のネットワークシステム10を示す図である。
図2】第1実施形態のネットワーク中継装置20の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態のスイッチングLSI40の動作について説明する概念図である。
図4】第1実施形態のスイッチングLSI40により実行される情報処理の一部の内容を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態のネットワーク中継装置20−2の構成を示すブロック図である。
図6】第2実施形態のスイッチングLSI40の動作について説明する概念図である。
図7】第2実施形態のスイッチングLSI40により実行される情報処理の一部の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態のネットワークシステム10を示す図である。
ネットワークシステム10は、互いに接続された複数のネットワーク中継装置20(20a〜20d)と、ネットワーク中継装置20に接続された複数の外部端末30(30a〜30d)等とを備えている。
【0015】
ネットワーク中継装置20は、フレームを中継するスイッチであり、複数のポート22を有する。複数のポート22は、フレームを受信する受信ポート、及びフレームを送信する送信ポートとして機能する。各ネットワーク中継装置20同士は、通信ケーブル24によって接続されている。
【0016】
〔外部端末〕
外部端末30は、ユーザによって操作される情報処理装置であり、例えばデスクトップ型やノート型のパーソナルコンピュータを適用することができる。ネットワーク中継装置20と外部端末30とは、通信ケーブル24によって接続されている。なお、図示の例では、ネットワーク中継装置20と外部端末30とは、通信ケーブル24を介して直接接続されているが、ハブ等の中継装置を介して間接的に接続されていてもよい。
【0017】
図2は、第1実施形態のネットワーク中継装置20の構成を示すブロック図である。
ネットワーク中継装置20は、ポート22、スイッチングLSI(Large Scale Integration、大規模集積回路)40、中継部50、メモリ60及び制御部70を備える。
【0018】
〔ポート〕
ポート22は、ネットワーク中継装置20に設けられたポートの数に応じて複数設けられている。図示の例では、3つのポート22のみ図示している。
【0019】
〔スイッチングLSI〕
スイッチングLSI40は、符号化又は復号化等の処理を行って、ポート22から中継部50へ、又は中継部50からポート22へフレームを送信する。
また、スイッチングLSI40は、測定部42、基準値規定部44、判断部46及び送信部48を有する。
【0020】
〔測定部〕
測定部42は、ポート22により受信されたフレームの受信量(受信帯域)を監視しており、ポート22により受信されたフレームの受信量を測定する。
【0021】
〔基準値規定部〕
基準値規定部44は、ポート22により受信されたフレームを、特定のグループを含む3つのグループ(特定のグループ、第1非特定のグループ、第2非特定のグループ)に分類するために、フレームの受信量に関する基準値を予め規定している。
【0022】
〔判断部〕
判断部46は、測定部42により測定されたフレームの受信量が基準値規定部44に規定された基準値を超えているか否かを判断することにより、ポート22により受信されたフレームが、3つのグループのうちいずれのグループに属するかを判断する。
【0023】
〔送信部〕
送信部48は、判断部46による判断結果が、特定のグループに属するとの判断結果である場合、ポート22により受信されたフレームの内容を、ネットワーク中継装置20を制御する制御部70に送信する。この場合、送信部48は、ポート22により受信されたフレームをそのまま複製(コピー)し、複製したフレームを制御部70に送信する。
また、送信部48は、複製したフレームを制御部70に送信する際には、複製したフレームの内容に、複数のポート22の中から特定のグループに属すると判断されたフレームを受信したポート22を特定するための情報(受信ポート番号等)を付加して送信する。
【0024】
〔中継部〕
中継部50は、メモリ60及び制御部70と協働して、MAC(Media Access Control)層の機能等を担当する。
中継部50は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によって構成される。また、中継部50は、入力処理ユニット52及び出力処理ユニット54を有する。
【0025】
〔メモリ〕
メモリ60は、読み出し及び書き込みが可能な記憶装置であり、FDB(Forwarding Data Base、転送データベース)62を格納している。FDB62には、ポート22の番号及びMACアドレスが相互に関連付けられて登録される。
【0026】
〔フレーム内容記憶部〕
また、メモリ60には、フレーム内容記憶部64が格納されている。フレーム内容記憶部64には、送信部48から送信されてきたフレームの内容や、ポート22を特定するための情報(受信ポート番号)が記憶される。
【0027】
〔入力処理ユニット〕
入力処理ユニット52は、フレーム中の宛先MACアドレスに基づいて、FDB62等を参照しながら、出力先のポート22を設定し、フレームを出力処理ユニット54へ送信する処理を行う。また、入力処理ユニット52は、スイッチングLSI40から受け取ったフレーム中の送信元MACアドレスを、フレームを受信したポート22の番号と対応付けてFDB62に登録する処理を行う。
【0028】
〔出力処理ユニット〕
出力処理ユニット54は、入力処理ユニット52から受け取ったフレームを、スイッチングLSI40へ送信する。
【0029】
〔制御部〕
制御部70は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)によって構成され、ネットワーク中継装置20を制御する。また制御部70は、フレーム内容管理部76を有する。
【0030】
〔フレーム内容管理部〕
フレーム内容管理部76は、スイッチングLSI40の送信部48から送信されてくる情報を管理する処理を実行する。具体的には、送信部48から送信されてきたフレームの内容と、ポート22を特定するための情報(受信ポート番号)とを組み合わせて、フレーム内容記憶部64に記憶する処理を実行する。
【0031】
ここで、フレーム内容記憶部64に記憶されるフレームには、例えば、宛先のMACアドレス、送信元のMACアドレス、宛先のIP(Internet Protocol)アドレス、送信元のIPアドレス、仮想的なネットワークの識別番号を示すVID(VirtualLAN ID)等が含まれる。
【0032】
図3は、第1実施形態のスイッチングLSI40の動作について説明する概念図である。なお、図中、縦軸はフレームの受信帯域を示しており、横軸は時間を示している。
【0033】
ここで、第1実施形態のスイッチングLSI40の基準値規定部44では、2段階の基準値を規定している。1つ目の基準値は第1基準値であり、2つ目の基準値は第1基準値よりも値が大きい第2基準値である。
例えば、第1基準値は、ネットワーク中継装置20が受信することができる最大の受信帯域(受信量)である最大受信帯域(最大受信量)の「99.9%」の値とし、第2基準値は、後述する最小設定単位である「64kバイト/秒」程度、第1基準値よりも大きい値とするとよい。
【0034】
また、第1実施形態では、受信帯域の値に基づいて、以下のように領域を設定している。
緑領域:受信帯域の値が0以上の値であり、かつ、第1基準値未満の値である場合
黄領域:受信帯域の値が第1基準値以上であり、かつ、第2基準値未満の値である場合
赤領域:受信帯域の値が第2基準値以上の値である場合
【0035】
そして、第1実施形態では、受信フレームを3つのグループに分類するために、緑領域を第1非特定のグループとし、黄領域を特定のグループとし、赤領域を第2非特定のグループと規定している。
【0036】
このため、判断部46は、フレームの受信量が第1基準値を超えていない場合、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するものと判断する。
また、判断部46は、フレームの受信量が第1基準値を超えており、かつ、第2基準値を超えていない場合、受信したフレームが特定のグループ(黄領域)に属するものと判断する。
さらに、判断部46は、フレームの受信量が第2基準値を超えている場合、第2非特定のグループ(赤領域)に属するものと判断する。
【0037】
ここで、第2基準値から第1基準値を減算した値は、ネットワーク中継装置20にて設定可能な最小の値(最小設定単位)である。この最小設定単位は、ネットワーク中継装置20の仕様や性能によって変化する値となるが、例えば「64kバイト/秒」ごとに基準値を設定できる装置であれば、第2基準値から第1基準値を減算した値は、設定可能な最低帯域である「64kバイト/秒」となる。このように、第1基準値と第2基準値との間隔を最小の値に設定する理由は、特定のグループに対応する黄領域をなるべく小さな領域に設定するためである。
【0038】
〔時刻t0〜t1〕
時刻t0〜t1において、ポート22にて受信帯域が比較的小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0039】
〔時刻t1〜t2〕
時刻t1〜t2において、ポート22にて受信帯域が大きいフレームが受信されている。このため、図中の波形が急激に立ち上がっている。しかし、この波形は、特定のグループに対応する黄領域に達するほどの波形ではない。この場合、判断部46は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0040】
〔時刻t2〜t3〕
時刻t2〜t3において、ポート22にて受信帯域が小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0041】
〔時刻t3〜t4〕
時刻t3〜t4において、ポート22にて受信帯域が大きいフレームが受信されている。このため、図中の波形が急激に立ち上がっている。そして、この波形は、特定のグループに対応する黄領域を超えて、第2非特定のグループに対応する赤領域に達するほどの波形である。この場合、判断部46は、受信したフレームが特定のグループ(黄領域)に属するフレームであると判断した後に、第2非特定のグループ(赤領域)に属するフレームであると判断する。
【0042】
そうすると、送信部48は、判断部46が特定のグループ(黄領域)に属するフレームであると判断している最中は、ポート22により受信されたフレームの内容を、ネットワーク中継装置20を制御する制御部70に送信する。すなわち、送信部48は、測定部42により測定されたフレームの受信量が所定範囲(特定のグループに対応する範囲)に属する場合、該所定範囲に属している間におけるフレームの内容を制御部70に送信する。ただし、判断部46が第2非特定のグループ(赤領域)に属するフレームであると判断している場合には、何も動作を行わない。
【0043】
〔時刻t4以降〕
時刻t4以降において、ポート22にて受信帯域が比較的小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0044】
図4は、第1実施形態のスイッチングLSI40により実行される情報処理の一部の内容を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS10:まず、スイッチングLSI40の測定部42からスイッチングLSI40の判断部46に対して、フレームの受信量(受信帯域)が通知される。
【0046】
ステップS12:ついで、スイッチングLSI40の判断部46は、フレームの受信量が第1基準値未満であるか否かを判断する。
その結果、スイッチングLSI40の判断部46により、フレームの受信量が第1基準値未満であると判断された場合(Yes)、制御処理は終了となる。
一方、スイッチングLSI40の判断部46により、フレームの受信量が第1基準値以上であると判断された場合(No)、制御処理はステップS14に進む。
【0047】
ステップS14:さらに、スイッチングLSI40の判断部46は、フレームの受信量が第2基準値未満であるか否かを判断する。
その結果、スイッチングLSI40の判断部46により、フレームの受信量が第2基準値未満であると判断された場合(Yes)、制御処理はステップS16に進む。
一方、スイッチングLSI40の判断部46により、フレームの受信量が第2基準値以上であると判断された場合(No)、制御処理は終了となる。
【0048】
ステップS16:送信部48は、ポート22により受信されたフレームの内容を、ネットワーク中継装置20を制御する制御部70に送信する。なお、制御部70に送信されたフレームの内容は、フレーム内容管理部76によって管理される。
以上の手順を終えると制御処理は終了となるが、これら一連の流れは、スイッチングLSI40が動作している間はループ状態で実行される処理となる。
【0049】
このように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)受信したフレームを受信量に応じてグループ分けし、特定のグループ(黄領域)に属する場合に限ってフレームの内容を制御部70に送信するため、的を絞ってフレームの内容を制御部70に送信することができる。したがって、中継中のフレームの内容を常時制御部で監視する手法と比較して、制御部70における処理負担をできるだけ少なくしつつ、マイクロバーストの発生元を特定することができる。
(2)マイクロバーストは、いつどこで発生するか分からないものであるが、スイッチングLSI40側でフレームの受信量を監視しているため、正確にマイクロバーストを検知することができるとともに、制御部70の処理負担も軽減させることができる。
【0050】
(3)受信量が特定のグループに対応する黄領域に到達しさえすれば、制御部70にフレームの内容が送信されるため、受信量が特定のグループ(黄領域)に滞在する時間が極端に短時間であったとしても、制御部70にフレームの内容を確実に送信することができる。
(4)受信量が特定のグループに対応する黄領域を抜けて、第2非特定のグループに対応する赤領域に移行した場合は、制御部70にはフレームの内容が送信されないため、制御部70にフレームの内容が送信され続けるということがない。
【0051】
(5)マイクロバーストが発生した場合には、受信量が特定のグループに対応する黄領域に到達するため、制御部70のフレーム内容管理部76は、フレーム内容記憶部64に、送信部48から送信されてきたフレームの内容や、ポート22を特定するための情報を記憶することになる。このため、例えばネットワーク管理者がフレーム内容記憶部64に記憶されている情報を分析することにより、マイクロバーストを発生させる起因となった外部端末30や、影響を受けた(パケットロスが発生した)外部端末30を特定することができる。例えば、送信元MACアドレスや受信ポート番号を確認することにより、問題を発生させている外部端末30を特定することができる。これにより、その外部端末30を利用しているテナント(通信事業者がネットワークサービスを提供している会社等)も特定することができる。なお、本実施形態では、制御部70は、フレーム内容記憶部64にフレームの内容を記憶した時点で処理を終了しているが、そこからさらに進んで制御部70内でフレームの内容を解析したり、制御部70から管理用の外部端末30にフレームの内容を送信したりしてマイクロバーストが発生したことを通知することもできる。
【0052】
(6)第1基準値及び第2基準値を用いて、特定のグループ(黄領域)を規定しているため、マイクロバーストのみならず、様々なトラフィック特性に対応することができる。例えば、マイクロバーストを特定するためには、本実施形態のように第1基準値及び第2基準値を最大受信帯域に接近させた設定とすればよい。一方、第1基準値及び第2基準値に関しては、任意に変更可能な値とすることで、例えば第1基準値を最大受信帯域(最大受信量)の「70%程度」に設定することにより、マイクロバーストほどはないが、ある程度突発的なトラフィック特性を特定することもできる。
【0053】
(7)特定のグループの他に、第1非特定のグループ及び第2非特定のグループを設定しているため、特定のグループをより明確なグループとすることができる。また、特定のグループに対応する黄領域は、第1非特定のグループに対応する緑領域と、第2非特定のグループに対応する赤領域との間に挟まれて配置される領域となるため、特定のグループに対応する黄領域を1つの閉じられた領域とすることができ、制御処理の複雑化を抑制し、より明確な制御処理を実現することができる。
【0054】
(8)第2基準値から第1基準値を減算した値は、ネットワーク中継装置20にて設定可能な最小の値であるため、特定のグループに対応する黄領域をなるべく小さな領域とすることができ、受信帯域の波形が黄領域に滞在し続けることを抑制し、結果として、制御部70の処理負担を軽減させることができる。
【0055】
(9)送信部48は、判断部46による判断結果が、第1非特定のグループ(緑領域)又は第2非特定のグループ(赤領域)のいずれかに属するとの判断結果である場合、ポート22により受信されたフレームの内容を制御部70に送信しない。このため、受信したフレームが特定のグループ(黄領域)以外に属している場合の制御部70の処理負担を軽減させることができるのみならず、スイッチングLSI40側の処理負担も軽減させることができる。
【0056】
(10)測定部42、基準値規定部44、判断部46及び送信部48は、同一の集積回路(スイッチングLSI40)に設けられているため、受信量を測定してからフレームの内容を送信するまでの一連の処理を同一の回路群内で完結させることができ、処理の迅速化を図ることができる。また、ここまでの一連の処理は、制御部70に関連しない処理となるため、制御部70の処理負担も軽減させることができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態のネットワーク中継装置20−2の構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と共通する事項については、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0058】
第2実施形態のネットワーク中継装置20−2は、第1実施形態のものと比較して、基準値規定部44−2による基準値の設定内容と、判断部46−2による判断内容が異なるものとなっている。
【0059】
基準値規定部44−2は、基準値として、第1基準値、及び第1基準値と同じ値の第2基準値を規定している。このため、第2実施形態では、第1基準値と第2基準値とが同じ値となり、実質的に1つの共通基準値を規定していることになる。
【0060】
判断部46−2は、測定部42により測定されたフレームの受信量が基準値規定部44−2に規定された共通基準値(第1基準値及び第2基準値)を超えているか否かを判断することにより、ポート22により受信されたフレームが、3つのグループのうちいずれのグループに属するかを判断する。
【0061】
図6は、第2実施形態のスイッチングLSI40の動作について説明する概念図である。なお、図中、縦軸はフレームの受信帯域を示しており、横軸は時間を示している。
【0062】
ここで、第2実施形態のスイッチングLSI40の基準値規定部44−2では、1つの共通基準値(第1基準値及び第2基準値)を規定している。例えば、共通基準値は、最大受信帯域(最大受信量)の「99.9%」と設定することができる。
【0063】
また、第2実施形態では、受信帯域の値に基づいて、以下のように領域を設定している。
緑領域:受信帯域の値が0以上の値、かつ、共通基準値未満の値である場合
赤領域:受信帯域の値が共通基準値以上の値である場合
このため、第2実施形態では、第1実施形態のように幅のある黄領域が存在しないことになるが、黄領域は、共通基準値上に存在している。
【0064】
そして、第2実施形態でも同様に、受信フレームを3つのグループに分類するために、緑領域を第1非特定のグループとし、黄領域を特定のグループとし、赤領域を第2非特定のグループと規定している。
【0065】
判断部46−2は、フレームの受信量が共通基準値を超えていない場合、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するものと判断する。
また、判断部46−2は、フレームの受信量が共通基準値を超えている場合、受信したフレームが第2非特定のグループ(赤領域)に属するものと判断する。
さらに、判断部46−2は、フレームの受信量が共通基準値を超えた場合であっても、超過量が一定の値の範囲内(例えば3kバイト程度以内)であれば特定のグループ(黄領域)に属するものと判断する。
【0066】
本実施形態では、超過量が一定の値の範囲内にあるか否かの判断は、最大バケツサイズの仕組みを利用して判断することとしている。ここで、「最大バケツサイズ」とは、フレームの受信量がある一定の境界を越えた場合であっても、設定した最大バケツサイズの分だけは、一定の境界を越えてないものとみなして、最大バケツサイズの容量に限って通信を許容する値である。
【0067】
そして、この最大バケツサイズを設定することにより、フレームの受信量が各領域を移行する際の応答性を調整することができる。
例えば、最大バケツサイズを「0」に設定すると、領域の境界を超えたその時点で次の領域に移行したものとなる。
一方、最大バケツサイズを例えば「3kバイト」に設定すると、領域の境界を超えたとしても、3kバイト分までは領域の境界を超えていないものとみなされ、3kバイト分までは、境界を超える前の領域に滞在しているものとして、境界を超える前の領域に関する動作を行うことができる。
【0068】
そして、本実施形態では、緑領域と赤領域との境界(実質的には、黄領域と赤領域との境界)に関して3kバイト分の最大バケツサイズを設定しており、緑領域から赤領域に移行したとしても、3kバイト分までの超過量は黄領域での動作が行われることになる。
なお、最大バケツサイズを3kバイトに設定すれば、3kバイト分はフレームの内容を制御部70に送信することができる。また、最大バケツサイズを3kバイトに設定している理由は、3kバイト程度のデータ量があればフレームの内容を充分に解析することができるからである。なお、本実施形態では、最大バケツサイズを3kバイトに設定しているが、最大バケツサイズは、フレームの内容を解析するのに必要なデータ量に合わせて変更することで、チューニングすることも可能である。
【0069】
〔時刻t0〜t1〕
時刻t0〜t1において、ポート22にて受信帯域が比較的小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46−2は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0070】
〔時刻t1〜t2〕
時刻t1〜t2において、ポート22にて受信帯域が大きいフレームが受信されている。このため、図中の波形が急激に立ち上がっている。しかし、この波形は、共通基準値に達するほどの波形ではない。この場合、判断部46−2は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0071】
〔時刻t2〜t3〕
時刻t2〜t3において、ポート22にて受信帯域が小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46−2は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するものと判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0072】
〔時刻t3〜t4〕
時刻t3〜t4において、ポート22にて受信帯域が大きいフレームが受信されている。このため、図中の波形が急激に立ち上がっている。そして、この波形は、共通基準値を超えて、第2非特定のグループに対応する赤領域に達するほどの波形である。この場合、判断部46−2は、一定の超過分(3kバイト分)に限って、受信したフレームが特定のグループ(黄領域)に属するフレームであると判断した後に、一定の超過分をさらに超えたフレームに関しては第2非特定のグループ(赤領域)に属するフレームであると判断する。
【0073】
そうすると、送信部48は、判断部46−2が特定のグループ(黄領域)に属するフレームであると判断している最中は、ポート22により受信されたフレームの内容を、ネットワーク中継装置20−2を制御する制御部70に送信する。ただし、判断部46−2が第2非特定のグループ(赤領域)に属するフレームであると判断している場合には、何も動作を行わない。
【0074】
〔時刻t4以降〕
時刻t4以降において、ポート22にて受信帯域が比較的小さいフレームが受信されている。この場合、判断部46−2は、受信したフレームが第1非特定のグループ(緑領域)に属するフレームであると判断する。このため、送信部48は、何も動作を行わない。
【0075】
図7は、第2実施形態のスイッチングLSI40により実行される情報処理の一部の内容を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS20:まず、スイッチングLSI40の測定部42からスイッチングLSI40の判断部46−2に対して、フレームの受信量(受信帯域)が通知される。
【0077】
ステップS22:ついで、スイッチングLSI40の判断部46−2は、フレームの受信量が共通基準値未満であるか否かを判断する。
その結果、スイッチングLSI40の判断部46−2により、フレームの受信量が共通基準値未満であると判断された場合(Yes)、制御処理は終了となる。
一方、スイッチングLSI40の判断部46−2により、フレームの受信量が共通基準値以上であると判断された場合(No)、制御処理はステップS24に進む。
【0078】
ステップS24:さらに、スイッチングLSI40の判断部46−2は、フレームの受信量の超過量が一定の値未満であるか否かを判断する。なお、ここでの超過量とは、共通基準値からの超過量である。
その結果、スイッチングLSI40の判断部46−2により、超過量が一定の値未満であると判断された場合(Yes)、制御処理はステップS26に進む。
一方、スイッチングLSI40の判断部46−2により、超過量が一定の値以上であると判断された場合(No)、制御処理は終了となる。
【0079】
ステップS26:送信部48は、ポート22により受信されたフレームの内容を、ネットワーク中継装置20−2を制御する制御部70に送信する。なお、制御部70に送信されたフレームの内容は、フレーム内容管理部76によって管理される。
以上の手順を終えると制御処理は終了となるが、これら一連の流れは、スイッチングLSI40が動作している間はループ状態で実行される処理となる。
【0080】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下のような効果がある。
(1)第1実施形態では2つの基準値を規定していたが、第2実施形態では1つの基準値である共通基準値を規定している。このため、特定のグループに対応する黄領域の幅が実質的になくなり、第1非特定のグループに対応する緑領域と、第2非特定のグループに対応する赤領域とが連続する領域となる。したがって、共通基準値を超える瞬間にだけ制御部70にフレームの内容を送信することができるという効果がある。
(2)また、第2実施形態では、超過量に関する一定の値を極端に小さい値(例えば、第1実施形態で規定している最小設定単位よりも小さい値)に設定することで、特定のグループに対応する黄領域の幅を実質的になくすことができる。これにより、受信量が特定のグループに対応する黄領域に滞在し続けるということを回避することができ、その結果として、フレームの内容が制御部70に送信され続けてしまうということを抑止することができる。すなわち、上述した第1実施形態の制御方式を採用すると、受信帯域の値によっては受信帯域が継続的に黄領域の中に入り続ける場合があり、その場合は制御部70にフレームの内容がコピーされ続けてしまうおそれがある。これに対して、第2実施形態の制御方式を採用すれば、第一基準値と第二基準値とが同じ値である共通基準値を採用しているため、受信帯域が継続的に黄領域の中に入り続けることがなく、制御部70にフレームの内容がコピーされ続けてしまうというおそれを回避することができる。
【0081】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。
例えば、ネットワークシステムを構成するネットワーク中継装置の数、ポートの数、各種設定値等は、一例として示したものであり、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
10 ネットワークシステム
20(20a〜20d),20−2 ネットワーク中継装置
22 ポート
24 通信ケーブル
30(30a〜30d) 外部端末
40 スイッチングLSI
42 測定部
44,44−2 基準値規定部
46,46−2 判断部
48 送信部
50 中継部
52 入力処理ユニット
54 出力処理ユニット
60 メモリ
62 FDB
64 フレーム内容記憶部
70 制御部
76 フレーム内容管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7