(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する乾式蒸発器において、
前記乾式蒸発器の伝熱管内部のアンモニア冷媒の流れ状態が、該アンモニア冷媒を気相と液相とに分離して前記液相が伝熱管底部で層流状態となる気液2層流が形成されているとともに、該伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを前記気液2層流を形成する伝熱管全域に配置し、前記ワイヤコイルによって前記伝熱管内の前記気液2層流にアンモニア冷媒の旋回流を形成させ、
前記アンモニア冷媒と被冷却媒体との間の熱伝達性能を向上させるように構成したことを特徴とする乾式蒸発器。
アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する既設乾式蒸発器のCOP改善方法において、
既設の乾式蒸発器に設けられ、アンモニア冷媒を流す伝熱管の全域で、伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを伝熱管内に配置する第1工程と、
前記ヒートポンプ装置の運転時における、前記乾式蒸発器内部のアンモニア冷媒の伝熱管内部の流れ状態が、アンモニア冷媒が気相と液相とに分離され該液相が管底部で層流状態となる気液2層流を形成されている状態で、前記ワイヤコイルによって伝熱管内にアンモニア冷媒の旋回流を形成させる第2工程とを具えたことを特徴とする既設乾式蒸発器のCOP改善方法。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを構成する冷凍装置、及び蒸発器の冷却機能に加えて、凝縮器より熱を取り出すヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置では、冷媒として代替フロンが広く使用されている。しかし最近では、代替フロンが地球温暖化の要因の一つとなっている影響で、多くの冷凍装置で自然冷媒のアンモニアが見直されて来ている。
【0003】
蒸発器には、冷媒保有量が多い満液式蒸発器(伝熱管外蒸発)と、冷媒保有量が少ない乾式蒸発器(伝熱管内蒸発)の2種類があり、伝熱性能の優れた満液式蒸発器が一般的に使用されてきた。しかし、近年では、環境問題や安全性の点から、冷媒保有量が少ない乾式蒸発器が多く使用されている。特に、毒性及び可燃性を有するアンモニア冷媒はその傾向が強い。
【0004】
代替フロンを使用するときの乾式蒸発器用伝熱管は、伝熱特性の優れた内面溝付き管(Cu系伝熱管)が多く採用され、このため、蒸発器の小型化が可能になった。ところが、アンモニアを冷媒とする冷凍装置等の伝熱管は、腐食問題でCu系伝熱管を使用できず、一般的にSUS製伝熱管が使用されている。SUS製伝熱管はCu系伝熱管と比べ硬度が大きく、内面溝付き管の加工が難しい。そのため、裸管で使用されているのが一般的である。従って、代替フロンを用いた同一冷却能力の乾式蒸発器と比較して、伝熱管長を大きくする必要があり、乾式蒸発器のサイズが大型化している。
【0005】
そのため、アンモニア冷媒を用いた冷凍装置等では、伝熱性能を向上して乾式蒸発器の小型化を図ることが望まれている。多管式シェルアンドチューブ型乾式蒸発器で、蒸発管のパス数の決め方は、圧縮機で同一性能である代替フロン22(HCFC−22)と略同一である。また、蒸発器出口ガス流速が9〜15m/sとなるように設計されるのが一般的であった。熱交換器の伝熱管の熱伝達性能を高める手段として、例えば、特許文献1に、伝熱管の内部に、伝熱面積を増大させるワイヤ螺旋体を設け、熱伝達性能を高めることが開示されている。
【0006】
特許文献2には、アンモニア冷媒が圧縮機の潤滑油として使用される鉱物油がアンモニア冷媒に対して非溶解性であることに起因する問題が開示されている。即ち、潤滑油がアンモニア冷媒に同伴しないため、蒸発器の伝熱管等に滞留して伝熱効率を低下させる。そのため、圧縮機吐出側等、各所に油分離器を設け、冷凍機油を回収する必要があり、構成が複雑化する、等の問題がある。特許文献2のアンモニア冷凍装置は、アンモニア冷媒と相溶性のエーテル化合物を基油とした潤滑油とアンモニア冷媒とを混合した作動流体組成物を潤滑油として用いるものである。これによって、非溶解性に起因した前記問題を解消したものである。
【0007】
特許文献3に開示された満液式冷却器は、圧縮機の潤滑油にアンモニア冷媒と非溶解性の鉱物油を使用するアンモニア冷媒の冷凍装置に関する。この冷凍装置は、直立冷媒液分離供給管を備えた満液式冷却器を用いて、満液式におけるアンモニア冷媒の充てん量を最小にするとともに、非溶解性の鉱物系潤滑油を圧縮機に容易に還流可能にしたものである。
【0008】
特許文献4には、遠洋鰹釣り漁船の活餌装置に組み込まれ、アンモニア冷媒と−20℃のNaClブラインを用いた冷凍装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アンモニア冷媒の蒸発潜熱は代替フロンHCFC−22の約6倍大きく、そのため、同一熱負荷に対して、乾式蒸発器を流れる質量冷媒量が約1/6と少ない。従って、シェルアンドチューブ型乾式蒸発器では、蒸発管のパス数の決め方をHCFC−22と同じように設計すると、蒸発管内で液とガスとが上下に2層に分離して、液は管底部で層流状態となる。即ち、蒸発管の側部や上部はアンモニア液で濡れない状態となるため、伝熱性能が低下し、冷却能力が計算値を大きく下回る。
【0011】
乾式蒸発器内部のアンモニア冷媒の流れ状態は、流速が速くなると、2層流から、アンモニア液が蒸発管の内面全周に接し、中心領域がガス相となる環状流となる。環状流になると、伝熱性能が向上するので、乾式蒸発器における蒸発管側パス数の決め方は、最終パスの出口ガス流速を9〜15m/sではなく、環状流となるように設定する必要がある。即ち、蒸発管のパス数を2倍以上に増やして、流速を大きくする必要がある。しかし、既設の乾式蒸発器のパス数を変更することは、工事費用が増大すると共に、スペースの関係で改造が困難な場合がある。
【0012】
特許文献2に開示されたアンモニア冷凍装置は、相溶性の作動流体組成物を得るために特定の構造のエーテル化合物を用意する必要がある。PAG油などアンモニア冷媒に相溶性の潤滑油は、湿気を吸い込みやすく、水分等が混入すると劣化しやすく、長期保存が容易ではない。また、不溶性油より高価である。そのため、長期に海上を航行する船舶や長期に操業する漁船に搭載された冷凍装置では、必要な時に必要な量の確保、及び品質の維持のための貯蔵管理ができないという問題がある。
【0013】
アンモニア冷媒にはPAG油など相溶性の潤滑油もあるが、前記理由から、アンモニア冷媒と非溶解性の鉱物油を使用したほうが入手の容易性と品質の安定性を確保できる。しかし、前述のように、不溶性油が乾式蒸発器を流れると、伝熱管内に不溶性油が溜まり、極端に伝熱性能を低下させるという問題がある。
【0014】
特許文献3に開示された満液式冷却器は、アンモニア冷媒が重力供給方式となっており、この満液式冷却器が船舶に搭載されたとき、船体がローリング、ピッチング及びヨーイングと運動する船舶では、前記冷凍装置は水平を維持することができず、アンモニア冷媒と潤滑油との分離が阻害されるという問題がある。
【0015】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、アンモニア冷媒を使用し、アンモニア冷媒を非溶解性の潤滑油を使用する乾式蒸発器において、アンモニア冷媒に対する鉱物油の非溶解性に起因する伝熱効率の低下を解決することを第1の目的とする。また、低コストで、冷却能力が高く、かつCOPを向上させて消費電力を低減できる乾式蒸発器を実現することを第2の目的とする。さらに、既設の乾式蒸発器を簡単かつ低コストに改造して伝熱性能を向上させ、COPを向上させることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するため、本発明の乾式蒸発器は、アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する乾式蒸発器において、
前記乾式蒸発器の伝熱管内部のアンモニア冷媒の流れ状態が、該アンモニア冷媒を気相と液相とに分離して前記液相が伝熱管底部で層流状態となる気液2層流が形成されているとともに、該伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを
前記気液2層流を形成する伝熱管全域に配置し、前記ワイヤコイルによって
前記伝熱管内の前記気液2層流にアンモニア冷媒の旋回流を形成させ、
前記アンモニア冷媒と被冷却媒体との間の熱伝達性能を向上させるように構成したものである。
【0017】
乾式蒸発器の伝熱管内で、アンモニア冷媒が気相と液相とに分離した二層流を形成すると、アンモニア液は伝熱管内の底部を流れ、伝熱管の側部や上部はアンモニア液で濡れない状態となる。また、伝熱管の底部に不溶性油が溜まり易い。そのため、伝熱性能が低下する。そこで、気液二層流を形成する伝熱管全域にワイヤコイルを設けると、アンモニア冷媒がワイヤコイルに当って乱流を起すと共に、伝熱管内で底部を流れているアンモニア液がワイヤコイルに沿って旋回する。これによって、蒸発管内の管側面及び管頂面がアンモニア冷媒で濡れ、設計総括伝熱係数(K値、所謂熱通過率kcal/m
2h℃)の大幅な増加が可能になる。
【0018】
このように、ワイヤコイルを設けただけの簡単な手段で、アンモニア冷媒と被冷却媒体との間の熱伝達性能を向上できる。これによって、アンモニア液の蒸発が促進され、乾式蒸発器の冷却能力を増大できる。また、アンモニア冷媒の蒸発温度が上昇するので、ヒートポンプ装置のCOPを向上できる。乾式蒸発器では、蒸発管の略全長に亘り気液二層流が形成されるので、ワイヤコイルを蒸発管の全長に亘り配置するのが効果的である。
【0019】
本発明では、不溶性油を用いても、ワイヤコイルを設けることで、伝熱性能を向上できる。そのため、不溶性油を用いる利便性を確保できる。なお、伝熱管内を流れるアンモニア冷媒量が多く、高質量速度となった場合、伝熱管内の流れは環状流となる。この状態で伝熱管内にワイヤコイルを配置すると、強制旋回流による伝熱性能は約20〜30%程度増加するが、管内の圧力損失が増加するため、逆に冷却能力が低下する。特に、アンモニア冷媒の蒸発温度が低いとき、圧力損失が増加する。
【0020】
本発明において、前記ヒートポンプ装置が、
漁船に搭載された捕獲魚の冷凍保存用冷凍装置であり、前記被冷却媒体が22.0〜23.5重量%の濃度をもつNaClブラインであるとよい。濃度が22.0〜23.5重量%のNaClブラインを用いることで、ブライン温度を−21℃まで冷却できる。そのため、捕獲した魚を最適冷凍保存温度である−19℃以下に保持できる。従って、特に漁船に搭載された捕獲魚の冷凍保存用冷凍装置の直膨式ブラインクーラーに適用されて好適である。なお、NaClブラインの濃度が前記範囲を外れると、NaClブラインを−19℃以下に冷却できない。
【0021】
しかし、NaClブラインの温度が−21.2℃以下になると、NaClブラインが凍結して管壁に結晶が析出し、伝熱性能が極端に低下する。そのため、アンモニア冷媒の蒸発温度を高め、NaClブラインの温度を前記凍結温度以上に調整する必要がある。本発明では、伝熱性能を向上できるので、蒸発温度を高くするのが容易であり、NaClブラインを凍結温度以上に保持し、NaClブラインの凍結を防止するのが容易である。
【0022】
本発明において、ワイヤコイルの外径を伝熱管の内径に合わせて形成し、ワイヤコイルを伝熱管内面に接するように配置す
る。これによって、伝熱管内の底部を流れるアンモニア液に対して確実に乱流を形成できると共に、アンモニア液の伝熱管内面に沿う旋回流を形成できる。そのため、伝熱管内の側面及び頂面をアンモニア冷媒で確実に濡らすことができるので、アンモニア液と被冷却媒体との熱伝達性能をさらに高めることができる。
【0023】
本発明において、ワイヤコイルを形成するワイヤの直径が蒸発管内径の0.12〜0.20倍であり、ワイヤコイルのピッチがワイヤ直径の10〜20倍であるとよい。ワイヤコイルを設けることで、蒸発管内の圧力損失が増加する。即ち、ワイヤの直径が大きく、かつワイヤコイルのピッチが小さいほど、相当直径(=4×流路体積/濡れ縁面積)が小さくなり、ワイヤコイルの設置に伴う圧力損失は増加する。本発明者等は、実験により、ワイヤの直径とワイヤコイルのピッチとを前記数値範囲とすることで、伝熱管内の圧力損失を最低に抑えることができることを見い出した。
【0024】
また、さらに加えて、ワイヤコイルのピッチを伝熱管の下流側ほど大きくするとよい。伝熱管の下流側ほどアンモニア冷媒の乾き度が上昇して、管内を流れるアンモニア冷媒のガス流速が速くなる。そのため、ワイヤコイルのピッチを下流側ほど大きくすることで、圧力損失を抑えることができる。
【0025】
また、本発明の既設乾式蒸発器のCOP改善方法は、 アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する既設乾式蒸発器のCOP改善方法において、
既設の乾式蒸発器に設けられ、アンモニア冷媒
を流す伝熱管の全域で、伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを伝熱管内に配置する第1工程と、
前記ヒートポンプ装置の運転時
における、前記乾式蒸発器内部のアンモニア冷媒の伝熱管内部の流れ状態が、アンモニア冷媒が気相と液相とに分離され該液相が管底部で層流状態となる気液2層流を形成されている状態で、前記ワイヤコイルによって伝熱管内にアンモニア冷媒の旋回流を形成させ
る第2工程
とを具えたことにある。
【0026】
本発明方法によれば、気液二層流を形成して、アンモニア液と被冷却媒体との熱伝達性能が低下する伝熱管の全域にワイヤコイルを設けることで、熱伝達性能を向上できる。これによって、乾式蒸発器でのアンモニア冷媒の蒸発を促進でき、乾式蒸発器の冷却能力を向上できる。また、熱伝達性能を向上することで、アンモニア冷媒の蒸発温度を高めることができるので、ヒートポンプ装置のCOPも向上できる。また、既設の乾式蒸発器の伝熱管に、前記構成のワイヤコイルを設けるだけの極めて簡単かつ低コストな改造で、アンモニア冷媒と被冷却媒体との熱伝達性能を向上できる。
【0027】
本発明方法において、ヒートポンプ装置が冷凍サイクルを構成し漁船に搭載された捕獲魚の冷凍保存用冷凍装置であり、被冷却媒体が22.0〜23.5重量%の濃度をもつNaClブラインであり、
前記第2工程において、蒸発温度をNaClブラインの凍結温度の近傍でかつ該凍結温度の直高温側温度領域に保持して、NaClブラインの凍結を防止するようにするとよい。これによって、簡単かつ低コストな改造で、NaClブラインを凍結温度(−21.2℃)に近くかつ捕獲魚の鮮度を良好に保持可能な−19℃以下の冷凍温度に冷却できるので、漁船に搭載された冷凍装置に好適である。
【0028】
本発明方法において、ワイヤコイルの外径を伝熱管の内径に合わせて形成し、ワイヤコイルを伝熱管内面に接するように配置し、伝熱管の内面に沿うアンモニア液の旋回流を形成させるとよい。これによって、伝熱管内の底部を流れるアンモニア液に対して確実に乱流を形成できると共に、アンモニア液の伝熱管内面に沿う旋回流を形成できる。そのため、伝熱管内の側面及び頂面をアンモニア冷媒で確実に濡らすことができるので、アンモニア液と被冷却媒体との熱伝達性能をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の乾式蒸発器によれば、アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する乾式蒸発器において、アンモニア冷媒が気相と液相とに分離した二層流を形成した伝熱管の全域で、該伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを伝熱管内に配置し、該ワイヤコイルによって蒸発管内にアンモニア冷媒の旋回流を形成させ、アンモニア冷媒と被冷却媒体との間の熱伝達性能を向上させるように構成したので、圧縮機の潤滑油としてアンモニア冷媒に非溶解性の鉱物油を使用することで、潤滑油の入手の容易性と品質の安定性を確保するとともに、ワイヤコイルを設けることで、アンモニア冷媒に対する鉱物油の非溶解性に起因する伝熱効率の低下を解決でき、逆に総括伝熱係数(K値)を大幅に増加できる。また、低コストで、かつ冷却能力が高く、COPを向上させて消費電力を低減できる乾式蒸発器を実現できる。
【0030】
また、本発明方法によれば、アンモニアを冷媒とし、アンモニアに対し非溶解性の潤滑油を用いてヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置に組み込まれ、伝熱管内にアンモニア冷媒を流し、伝熱管外側の被冷却媒体を冷却する既設乾式蒸発器のCOP改善方法において、既設の乾式蒸発器に設けられ、アンモニア冷媒が気相と液相とに分離した二層流を形成した伝熱管の全域で、伝熱管の内径より小さい外径を有するワイヤを螺旋形状にしてなるワイヤコイルを伝熱管内に配置する第1工程と、ヒートポンプ装置の運転時に、該ワイヤコイルによって伝熱管内にアンモニア冷媒の旋回流を形成させ、アンモニア冷媒と被冷却媒体との熱伝達性能を向上させると共に、ヒートポンプ装置のCOPを向上させる第2工程と、からなるので、ワイヤコイルを設けるだけの極めて簡単かつ低コストな改造で、アンモニア冷媒と被冷却媒体との熱伝達性能を向上できる。これによって、乾式蒸発器の冷却能力を高め、かつアンモニア冷媒の蒸発温度を高めることで、ヒートポンプ装置のCOPを向上させて消費電力を低減できる乾式蒸発器を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0033】
本発明を、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に組み込んだ乾式蒸発器に適用した一実施形態を
図1〜
図12に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る冷凍装置10の基本構成図である。
図1において、アンモニア冷媒が循環する冷媒循環路12に、圧縮機14と、凝縮器16と、膨張弁18と、乾式蒸発器(ブラインクーラー)20とが介設されている。アンモニア冷媒は矢印方向に循環する。
【0034】
圧縮機14の吐出側に油分離器22が設けられ、水冷式凝縮器16の下流側に受液器24が設けられている。膨張弁18の上流側に冷媒循環路12を開閉する給液電磁弁26が設けられ、乾式蒸発器20の下流側に、冷媒圧力を検出する圧力センサP、冷媒温度を検出する温度センサT、及びガス過熱度調整器28が設けられている。ガス過熱度調整器28は、これらセンサで検出された圧力及び温度から、アンモニア冷媒の過熱度を算出し、膨張弁18を制御して乾式蒸発器20の出口側過熱度を調整する。
【0035】
図2は、冷凍装置10の全体構成図である。
図2において、圧縮機14から吐出された高圧アンモニアガスは、油分離器22で潤滑油である不溶性油(鉱物油)を分離した後、ラインaから水冷式凝縮器16に流入する。アンモニアガスは水冷式凝縮器16の冷却水で凝縮されて液化する。凝縮されたアンモニア液は、ラインbを通り、受液器24及び給液電磁弁26を経て、膨張弁18で減圧される。減圧された湿り冷媒液は、ラインcから乾式蒸発器20の伝熱管内を流れる際、乾式蒸発器20のシェル側を流れるNaClブライン(濃度23w%)を冷却する。
【0036】
乾式蒸発器20で、アンモニア液はNaClブラインと熱交換し、NaClブラインから顕熱を奪って蒸発し、ラインdに流出する。ラインdを流れるアンモニアガスの圧力は圧力発信器P1で検出され、温度は測温抵抗体T1で検出される。ガス過熱度調整器28は、これらの検出値からアンモニアガスの過熱度を算出し、設定過熱度となるように、膨張弁18の開度を調整する。ラインdの低圧アンモニアガスは、圧縮機14に吸引され、高圧ガスとなって圧縮機14から吐出される。
【0037】
水冷式凝縮器16でアンモニアガスと熱交換し加熱された冷却水は、ラインfを通り、熱交換器30で第2ブライン(エチレングリコール+防錆剤)と熱交換し冷却される。冷却された冷却水は、ラインgから冷却水タンク32に戻る。冷却水タンク32内の冷却水は、ポンプ34で三方弁36を経てクーリングタワー38に送られる。クーリングタワー38で、冷却水は外気との熱交換で加熱され、ラインrから冷却水タンク32に戻る。冷却水タンク32では、測温抵抗体T2で冷却水の温度を検出し、クーリングタワー38のファン回転制御と三方弁36の制御とで、冷却水の温度を制御する。冷却水温の制御により、水冷式凝縮器16のアンモニアガスの凝縮温度を設定温度に保持する。設定温度となった冷却水は、ポンプ40でラインeを介し、水冷式凝縮器16に送られる。
【0038】
乾式蒸発器20で冷却されたNaClブラインは、ラインpを介しブラインタンク42に送られ、一旦貯留される。ブラインタンク42のNaClブラインは、ポンプ44でラインnから熱交換器46に送られ、そこで第2ブラインと熱交換し加熱される。熱交換器46で冷却された第2ブラインは、ラインLからブラインタンク48に送られ、そこで一旦貯留され、再び熱交換器46に送られる。ブラインタンク48に貯留された第2ブラインは、ポンプ50で熱交換器30に送られると共に、ポンプ52でラインkを通り熱交換器46に送られる。測温抵抗体T3でブラインタンク48内の第2ブラインの温度を検出している。熱交換器30に送られる第2ブラインの流量は、第2ブラインの温度に基づいて、三方弁54で制御され、熱交換器46に送られる第2ブラインの流量は三方弁56で制御される。
【0039】
一方、乾式蒸発器20へ流れるNaClブラインの温度は、熱交換器46の出口側ラインoに設けられた測温抵抗体T4で検出される。この検出値に基づいて三方弁56を制御することで、乾式蒸発器20へ流れるNaClブラインの温度を制御する。該検出値が設定温度より高いとき、ブラインタンク48から熱交換器46に送る第2ブラインの流量を低減する。即ち、熱交換器46からラインLを通り、ラインmから三方弁56に流れる流量を増加するようにする。
【0040】
このように、水冷式凝縮器16でアンモニアガスを冷却する冷却水をNaClブラインがもつ冷熱で冷却する場合に、冷却水をNaClブラインで直接冷却することなく、第2ブラインを介して冷却することで、冷却水の凍結を防止する。第2ブラインの温度は常に0℃以上に保持される。なお、ラインcの冷媒の圧力は圧力発信器P2で検出される。ラインoから乾式蒸発器20に流入するNaClブラインの圧力は圧力発信器P3で検出され、温度は測温抵抗体T5で検出される。ラインpのNaClブラインの出口温度は測温抵抗体T6で検出される。
【0041】
本実施形態では、ブラインタンク42に貯留されたNaClブラインの温度は−19℃に保持されている。この温度に保持されたNaClブラインで被冷却物を冷却する。−19℃に保持されたNaClブラインは、漁船で捕獲した魚を冷凍保存する場合、魚の鮮度を高めるのに最適の温度である。そのため、本実施形態の冷凍装置10を漁船に搭載される冷凍装置に適用して好適である。
【0042】
次に、
図3〜
図5により、本実施形態の乾式蒸発器20の構成を説明する。
図3において、乾式蒸発器20は多管式の横型シェルアンドチューブ型熱交換器であり、チューブ側(管側)にアンモニア冷媒が、シェル側(胴側)にNaClブラインが循環する。中央胴部60の両側に配置された端側胴部62及び64で構成されている。中央胴部60の両端には管板66及び68が一体形成され、管板66、68間に多数の伝熱管70が架設されている。伝熱管70はSUS製の裸管で構成され、その内部には、伝熱管70の全長に亘りワイヤコイル72が配設されている。
【0043】
左端側胴部62にフランジ62aが一体形成され、右端側胴部64にはフランジ64aが一体形成されている。フランジ62aが管板66とボルト結合され、フランジ64aが管板68にボルト結合されている。左端側胴部62には、下部に入口管74が接続され、上部に出口管76が接続されている。左端側胴部62の内部は、仕切壁78で5つの領域に分割され、右端側胴部64は仕切壁80で4つの領域に分割されている。仕切壁78と仕切壁80とは、交互に高さをずらして配置されている。これによって、
図4に示すように、伝熱管70は、流れの方向が交互に逆となる8個の管側パス領域R
1〜R
8に分割されている。
【0044】
そのため、入口管74から流入したアンモニア冷媒Nは、流れ方向を8回交互に変えながら(8パス)、左右端側胴部62及び64を経由し、上方に配置された伝熱管70に順々に流入し、その後出口管76から流出する。中央胴部60の両端側上部には、NaClブラインBが流入する入口管82及びNaClブラインBが流出する出口管84が設けられている。また、中央胴部60には、中央胴部60に流入したNaClブラインBが中央胴部60の内部で蛇行するように、上下方向に複数の邪魔板86が設けられている。邪魔板86は、上方又は下方に交互にNaClブラインBの流通路が形成される。
【0045】
図5に示すように、ワイヤコイル72は、円形断面をもち細径の鋼線ワイヤが伝熱管70の内径に合わせて螺旋形状に形成されたものであり、外径側が伝熱管70の内面に接するように配置されている。ワイヤコイル72は伝熱管70の全長に亘り配設されている。ワイヤコイル72の外径Dは伝熱管70の内径と略同一寸法で、例えば17mmであり、鋼線ワイヤの直径は例えば3mmであり、ピッチEは例えば40mmの寸法をもつ。
【0046】
かかる構成において、入口管74から左端側胴部62に流入したアンモニア冷媒Nは、領域R
1〜R
8毎に矢印方向に交互に流れ方向を変えながら、伝熱管70の内部を流れ、出口管76から流出する。一方、NaClブラインBは、入口管82から中央胴部60に流入し、邪魔板86に形成された蛇行流路を流れ、出口管84から流出する。この間にアンモニア冷媒NとNaClブラインBとが熱交換し、アンモニア冷媒NはNaClブラインBから顕熱を奪って蒸発し、NaClブラインBは−19℃に冷却される。
【0047】
図13に示すように、水平管90内を流れる気液二相流の流れの様式は、流速が大きくなるに従って、気泡流から噴霧流まで順々に変化する。2層流及び波状流では、気相f
1と液相f
2とが完全に分離している。
図14及び
図15は、夫々蒸発器における伝熱管内での流れの状態を計算によって求めたものである。即ち、まず気体を空気とし、液体を水として計算し、パラメータη及びψを用い、空気をアンモニアガスに変換し、水をアンモニア液に変換している。
図14は、運転条件が、8パス、蒸発温度Te=−10℃、冷媒量W=409.5kg/h、冷却能力Q=106.4Mcal/hの場合であり、
図15は、運転条件が、8パス、蒸発温度Te=−20℃、冷媒量W=220.9kg/h、冷却能力Q=56.7Mcal/hの場合である。
【0048】
例えば、
図14に示す運転条件の下で、入口乾き度=0.16、出口乾き度=0.84、蒸発温度Te=−10℃の飽和ガス比容積v=0.418m
3/kg、アンモニアガス密度ρg=2.39kg/m
3、アンモニア液密度ρl=652kg/m3、アンモニアの液表面張力σl=28.5dye/cm、アンモニア液粘度μl=0.19Cp、水の粘度μw=1.0Cp、空気密度ρa=1.20kg/m
3、水密度ρw=1,000kg/m
3、水の液表面張力σw=73dye/cmのとき、
η=[(ρg/ρa)(ρl/ρw)]
0.5
=[(2.39/1.2)(652/1,000)]
0.5=1.14
ψ=(σw/ρl)[(μl/μw)(ρw/ρl)]
1/3
=(73/28.5)[(0.19/1.0)(1,000/652)]
1/3
=1.70
となる。
【0049】
また、
図14及び
図15中、Gl及びGgは、アンモニア液及びアンモニアガスの質量流速(kg/m
2・h)であり、○は伝熱管入口、□は伝熱管出口、○又は□に付された数値は伝熱管70が配置されたパス領域R
1〜R
8の数値を示す。
図14及び
図15から、蒸発管の内部で、アンモニア冷媒は、気液が分かれた2層流又は波状流となることがわかる。
【0050】
本実施形態によれば、伝熱管70の全域に亘り、ワイヤコイル72を配設しているので、上下に分かれて層状に流れるアンモニアガス及びアンモニア液に乱流を生ぜしめ、かつアンモニア液によるワイヤコイル72に沿う旋回流s(
図5参照)を生ぜしめる。その結果、下層域で流れるアンモニア液を上方へ旋回させ、伝熱管内面の側面及び上面をアンモニア液で濡らすので、アンモニア冷媒NとNaClブラインBとの熱伝達性能を向上できる。
【0051】
しかも、ワイヤコイル72をアンモニア冷媒の気液が分離した2層流を形成している伝熱管70の全域に配置し、かつワイヤコイル72の外側が伝熱管70の内面に接するように配置しているので、伝熱管70の全域で伝熱管70の底部を流れるアンモニア液に確実に旋回流sを形成できる。また、この旋回流sを確実に伝熱管内面に接触させることができるので、アンモニア冷媒NとNaClブラインBとの熱伝達性能をさらに向上できる。
【0052】
図6は、本実施形態の冷凍装置10における乾式蒸発器20の蒸発温度Teと冷却能力及びCOPとの関係を示す線図である。図中、「TB2」とは乾式蒸発器20の出口でのNaClブラインの温度を示し、黒丸●はワイヤコイル72を設けた本実施形態であり、白丸○はワイヤコイル72を設けない比較例である。本実施形態及び比較例は、どちらも不溶性油(鉱物油)の混入量は全伝熱管内容積の4.5v%である。図からわかるように、ワイヤコイル72を設けることで、乾式蒸発器20の蒸発温度Teが上昇すると共に、冷凍装置10の冷却能力及びCOPが向上している。
【0053】
図7〜
図10は、本実施形態(ワイヤコイル72を設けた場合)及び比較例(ワイヤコイル72を設けない場合)の性能比較を示す線図である。図中の記号の意味は次の通りである。
[比較例]
○・・・・ワイヤコイルなし。冷凍機油ほとんどなし。
●・・・・ワイヤコイルなし。冷凍機油は全伝熱管内容積の4.5v%混入。
[本発明]
□・・・・ワイヤコイルあり(1〜8パスに設置)。冷凍機油は全伝熱管内容積の1.4v%混入。
■・・・・ワイヤコイルあり(1〜8パスに設置)。冷凍機油は全伝熱管内容積の4.5v%混入。
△・・・・ワイヤコイルあり(1〜7パスに設置)。冷凍機油は全伝熱管内容積の1.4v%混入。
▲・・・・ワイヤコイルあり(1〜7パスに設置)。冷凍機油は全伝熱管内容積の4.5v%混入。
【0054】
図11は、黒丸●の運転条件の場合と、黒四角■の運転条件の場合を比較し、前者に対して後者の性能がどれだけ向上したかを示すものである。
図12は、白丸○の運転条件に対して、白四角□の運転条件の場合(図中実線で示す。)及び白△の運転条件の場合(図中破線で示す。)にどれだけ性能が向上したかを示すものである。
図11及び
図12から、本実施形態のとき、総括伝熱係数(K値)、冷却能力Q、COP及び乾式蒸発器20の蒸発温度Teが共に大きく上昇していることがわかる。
【0055】
即ち、本発明の乾式蒸発器20では、比較例と比べて、総括伝熱係数(K値)が約2.5〜3.5倍に上昇し、乾式蒸発器20の蒸発温度Teが約4〜8.5℃上昇している。また、乾式蒸発器20の冷却能力が、比較例と比べて、約1.5〜1.9倍上昇し、冷凍装置10のCOPが約1.2〜1.5倍上昇している。
【0056】
本実施形態によれば、濃度が23w%のNaClブラインを用いているので、NaClブラインを捕獲魚の冷凍保存に最適な−19℃以下に冷却できる。また、乾式蒸発器20の蒸発温度TeをNaClブラインの凍結温度である−21℃まで下げないようにしているので、NaClブラインが凍結して極端に冷却能力が低下するのを防止できる。そのため、漁船に搭載する冷凍装置に用いれば、捕獲魚を長期に新鮮な状態で保存できる。
【0057】
また、本発明者等は、各種運転条件で実験を行い、ワイヤコイル72を形成する鋼線ワイヤの直径が伝熱管内径(=ワイヤコイル72の外径D)の0.12〜0.20倍であり、コイルピッチEがワイヤコイル72の直径Dの10〜20倍であるとき、伝熱管70の内部圧力損失を最低に抑えることができることを見い出した。本実施形態では、鋼線ワイヤの直径3mm/出口管640の外径=3mm/17mm=0.176であり、ワイヤコイル72のピッチE/鋼線ワイヤの直径=40mm/3mm=13.3である。そのため、本実施形態の伝熱管70の内部圧力損失を最低限に抑えることができる。
【0058】
なお、本実施形態で、アンモニア冷媒の流れ方向下流側に位置する伝熱管70ほど、ワイヤコイル72のピッチEを大きくするとよい。伝熱管70の下流側ほどアンモニア冷媒の乾き度が上昇して、伝熱管70内を流れるアンモニア冷媒のガス流速が速くなる。そのため、ワイヤコイル72のピッチを下流側ほど大きくすることで、圧力損失を抑えることができる。
【0059】
本発明方法は、既設の乾式蒸発器を改造してCOPを改善するものである。即ち、前記実施形態を例に取って説明すれば、伝熱管70にワイヤコイル72が設けられていない既設の冷凍装置において、伝熱管70の内部にワイヤコイル72を設けるようにする。これだけの簡単かつ低コストな改造によって、アンモニア冷媒NとNaClブラインBとの熱伝達性能を向上できる。即ち、乾式蒸発器20の中央胴部60の改造や仕切壁78、80の変更、あるいは伝熱管70のパス数を変更する必要がない。
【0060】
かかる簡易な改造によって、乾式蒸発器でのアンモニア冷媒の蒸発を促進でき、乾式蒸発器の冷却能力を向上できる。また、熱伝達性能を向上することで、アンモニア冷媒の蒸発温度を高めることができるので、ヒートポンプ装置のCOPも向上させて消費電力を低減できる。かかる改造は、漁船に搭載された冷凍装置等に対しても同様に簡単に行なうことができる。