特許第5777520号(P5777520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777520白色発光ランプおよびそれを用いた白色LED照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777520
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】白色発光ランプおよびそれを用いた白色LED照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20150820BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20150820BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20150820BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20150820BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/72 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 11/84 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
   H01L33/00 186
   H01L33/00 432
   H01L33/00 440
   C09K11/08 J
   C09K11/59CPR
   C09K11/64CPM
   C09K11/66CPG
   C09K11/72CPX
   C09K11/84CPC
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-531868(P2011-531868)
(86)(22)【出願日】2010年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2010064382
(87)【国際公開番号】WO2011033910
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年5月13日
【審判番号】不服2014-9268(P2014-9268/J1)
【審判請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2009-215889(P2009-215889)
(32)【優先日】2009年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】白川 康博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 肇
【合議体】
【審判長】 吉野 公夫
【審判官】 星野 浩一
【審判官】 近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−063233(JP,A)
【文献】 特開2008−174621(JP,A)
【文献】 特開2005−340748(JP,A)
【文献】 特開2009−030063(JP,A)
【文献】 特開2008−202044(JP,A)
【文献】 特開2009−081288(JP,A)
【文献】 特開2007−091958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
370nm以上470nm以下に発光ピークを有する紫外もしくは青色発光を出射する半導体発光素子を基板上に配置し、この半導体発光素子からの出射光により励起されて青色発光、緑色発光および赤色発光をそれぞれに出射する青色蛍光体を20質量%以上35質量%以下、緑色蛍光体を1質量%以上10質量%以下、および赤色蛍光体を0.4質量%以上70質量%以下、を含む発光部が上記半導体発光素子の発光面を覆うように形成されており、上記青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体から出射された各発光の混色により白色光を出射する白色発光ランプにおいて、上記赤色蛍光体の主発光ピークが610nm以上630nm以下の波長領域にあり、上記赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域である640nm以上660nm以下に主発光ピークを有する深赤色蛍光体がさらに3質量%以上25質量%以下付加されており、上記赤色発光蛍光体は、
一般式:(La1−x−y,Eu,MS …(4)
(式中、MはSb、Sm、GaおよびSnから選択される少なくとも1種の元素であり、xおよびyは0.01<x<0.15、0≦y<0.03を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体から成る一方、上記深赤色発光蛍光体は、一般式:αMgO・βMgF・(Ge1−xMn)O …(5)
(式中、αおよびβは、3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)で表される組成を有するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体であり、出射される白色光の発光効率が62Lm/W以上であり、且つ、平均演色評価指数Raが96以上であることを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項2】
請求項1記載の白色発光ランプにおいて、前記青色蛍光体は、
一般式:(Sr1−x−y−z,Ba,Ca,Eu(POCl …(1)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)
で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体から成ることを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項3】
請求項1記載の白色発光ランプにおいて、前記緑色蛍光体は、
一般式:(Ba1−x−y−z,Sr,Ca,Eu)(Mg1−uMn)Al1017
…(2)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウムマンガン付活アルミン酸塩蛍光体および
一般式:(Sr1−x−y−z−u,Ba,Mg,Eu,MnSiO …(3)
(式中、x、y、zおよびuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウムマンガン付活珪酸塩蛍光体の少なくとも1種から成ることを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の白色発光ランプにおいて、
前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および深赤色発光蛍光体は10μm以上80μm以下の範囲の平均粒径を有することを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の白色発光ランプにおいて、
前記発光部は、前記半導体発光素子の発光面を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および前記深赤色発光蛍光体を含有する透明樹脂層を有することを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の白色発光ランプにおいて、
前記発光部は、前記半導体発光素子の発光面を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色光体および前記深赤色発光蛍光体を含有しない第1の透明樹脂層と、前記第1の透明樹脂層を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および前記深赤色発光蛍光体を含有する第2の透明樹脂層とを備えることを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の白色発光ランプにおいて、
前記半導体発光素子は370nm以上470nm以下の範囲にピーク波長を有する光を出射する発光ダイオードまたはレーザダイオードであることを特徴とする白色発光ランプ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の白色発光ランプを具備することを特徴とする白色LED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子を具備する白色発光ランプおよびそれを用いた白色LED照明装置に係り、特に演色性および発光効率を改善した白色発光ランプおよびそれを用いた白色LED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)は、電気エネルギーを紫外光や可視光に変換して放射する半導体発光素子であり、長寿命で信頼性が高く、光源として用いた場合に交換作業が軽減されるというような利点を有する。LEDチップを透明樹脂等で封止したLEDランプは、携帯型通信機器、PC周辺機器、OA機器、家庭用電気機器等の表示部に使用される液晶表示装置のバックライト、また信号装置、各種スイッチ類、車載用ランプ、一般照明等の照明装置に幅広く利用されている。
【0003】
LEDランプから放射される光の色調に関しては、LEDチップと種々の発光色を有する蛍光体とを組合せることによって、青色から赤色まで使用用途に応じた可視光領域の光を実現することができる。特に、白色発光型のLEDランプ(白色LEDランプ)は、液晶表示装置のバックライトや車載用ランプ等の用途に急速に普及しており、将来的には蛍光ランプの代替品として大きく伸張することが期待されている。例えば、一般的な蛍光ランプは水銀を用いていることから、将来的には水銀を使用しない白色LEDランプが蛍光ランプに置き換わっていくものと考えられている。
【0004】
現在、普及もしくは試行されている白色LEDランプとしては、青色発光のLEDと黄色蛍光体(YAG等)とを組合せたLEDランプと、発光波長が360〜440nmの紫外発光のLEDと青、緑、赤の各蛍光体の混合物(BGR蛍光体)とを組合せたLEDランプとが知られている。現状では、前者の方が後者より輝度特性に優れることから普及している。しかし、前者の白色LEDランプは光の分布が青色成分と黄色成分とに偏っており、赤色成分の光が不足しているため、光源光として目的の発光色度を有しているものであっても、この光源を用いて物体を見たときの反射光が太陽光の下で見る自然色とは大きく異なり、演色性が低いというような難点を有している。
【0005】
これに対して、後者の紫外発光LEDを用いた白色LEDランプは、輝度が前者より劣るものの、発光や投影光の色ムラが少なく、将来的には白色ランプの主流になることが期待されている。紫外発光LEDを用いた白色LEDランプに関しては、各蛍光体の特性やそれらの組合せ等に基づいて、輝度(明るさ)や演色性等のランプ特性を改善することが進められている(特許文献1,2参照)。例えば、白色LEDランプの明るさを向上させるために、発光ピーク波長が500〜530nmの緑色蛍光体に代えて、発光ピーク波長が540〜570nmの黄色蛍光体を用いることが検討されている。
【0006】
緑色蛍光体に代えて黄色蛍光体を含む混合蛍光体(BYR蛍光体)を適用した白色LEDランプは、BGR蛍光体を用いた白色LEDランプより明るさが向上するため、照明装置用の光源として期待されている。しかしながら、従来の黄色蛍光体を含むBYR蛍光体を適用した白色LEDランプでは、必ずしも十分な特性の改善効果は得られておらず、白色LEDランプの輝度や演色性等をより一層高めることが求められている。一方、黄色蛍光体に関しては、青色発光LEDとの組合せで用いられる蛍光体が種々提案されている。
【0007】
青色発光LEDと組合せて用いられる黄色蛍光体としては、セリウム付活イットリウムアルミン酸塩蛍光体(YAG)、セリウム付活テルビウムアルミン酸塩蛍光体(TAG)、ユーロピウム付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体(BOSS)等が知られている(特許文献3参照)。従来の黄色蛍光体に関しては、青色発光LEDから放出される青色光(発光波長:430〜500nm)で励起したときの発光特性は検討されているものの、紫外発光LEDから放出される発光波長が360〜440nmの光で励起したときの発光特性については十分に検討されておらず、その検討並びに発光特性の改善が求められている。
【0008】
また、白色光の演色性を高めるために、青色発光LEDとUV発光LEDと緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED発光装置も提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、この白色LED発光装置においては、ある程度の演色性の改善は達成されるが、青色光の一部が蛍光体に吸収され易いために、発光部からの輝度が低下し易い難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−171000号公報
【特許文献2】特開2003−160785号公報
【特許文献3】特許第3749243号公報
【特許文献4】米国特許公開US2006/0249739A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、青色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体を含むBGR蛍光体をLED等の半導体発光素子と組合せて使用するにあたって、赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有する深赤色蛍光体をさらに付加し、赤色蛍光体と深赤色蛍光体とを共存させることにより、高輝度と高演色性とを両立させた白色発光ランプおよびそれを用いた白色LED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様に係る白色発光ランプは、370nm以上470nm以下に発光ピークを有する紫外もしくは青色発光を出射する半導体発光素子を基板上に配置し、この半導体発光素子からの出射光により励起されて青色発光、緑色発光および赤色発光をそれぞれに出射する青色蛍光体を20質量%以上35質量%以下、緑色蛍光体を1質量%以上10質量%以下、および赤色蛍光体を0.4質量%以上70質量%以下、を含む発光部が上記半導体発光素子の発光面を覆うように形成されており、上記青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体から出射された各発光の混色により白色光を出射する白色発光ランプにおいて、上記赤色蛍光体の主発光ピークが610nm以上630nm以下の波長領域にあり、上記赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域である640nm以上660nm以下に主発光ピークを有する深赤色蛍光体がさらに3質量%以上25質量%以下付加されており、上記赤色発光蛍光体は、
一般式:(La1−x−y,Eu,MS …(4)
(式中、MはSb、Sm、GaおよびSnから選択される少なくとも1種の元素であり、xおよびyは0.01<x<0.15、0≦y<0.03を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体から成る一方、上記深赤色発光蛍光体は、一般式:αMgO・βMgF・(Ge1−xMn)O …(5)
(式中、αおよびβは、3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)で表される組成を有するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体であり、出射される白色光の発光効率が62Lm/W以上であり、且つ、平均演色評価指数Raが96以上であることを特徴とする。
【0012】
具体的にはピーク波長が370nm以上470nm以下の範囲の光を出射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子から出射された光により励起されて白色光を発光する発光部であって、前記光を吸収してピーク波長が440nm以上470nm以下の範囲の光を発光する青色蛍光体と、前記光を吸収してピーク波長が530nm以上600nm以下の範囲の光を発光する緑色蛍光体と、前記光を吸収してピーク波長が610nm以上630nm以下の範囲の光を発光する赤色蛍光体と、前記光を吸収してピーク波長が640nm以上660nm以下の範囲の光を発光する深赤色蛍光体とを含む発光部とを具備する。
【0013】
なお、上記赤色蛍光体の主発光ピークと深赤色蛍光体の主発光ピークとは、それぞれスペクトル線図において分離して表れる蛍光体を選択することが、発光強度および演色性を改善する上で重要である。ピーク波長が610nm以上630nm以下の範囲の光を発光する赤色蛍光体の発光域と、ピーク波長が640nm以上660nm以下の範囲の光を発光する深赤色蛍光体の発光域と重なるようなブロードな発光域を有する蛍光体では、本発明の効果は得られにくい。
【0014】
さらに上記白色発光ランプにおいて、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および深赤色発光蛍光体は10μm以上80μm以下の範囲の平均粒径を有することが好ましい。
【0015】
また、上記白色発光ランプにおいて、前記発光部は、前記半導体発光素子の発光面を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および前記深赤色発光蛍光体を含有する透明樹脂層を有することが好ましい。
【0016】
さらに、上記白色発光ランプにおいて、前記発光部は、前記半導体発光素子の発光面を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色光体および前記深赤色発光蛍光体を含有しない第1の透明樹脂層と、前記第1の透明樹脂層を覆うように設けられ、前記青色蛍光体、前記黄色蛍光体、前記赤色蛍光体および前記深赤色発光蛍光体を含有する第2の透明樹脂層とを備えることが好ましい。
【0017】
さらに、上記白色発光ランプにおいて、前記半導体発光素子は、370nm以上470nm以下の範囲にピーク波長を有する光を出射する発光ダイオードまたはレーザダイオードであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る白色LED照明装置は、上記本発明に係る白色発光ランプを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の白色発光ランプによれば、赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有する深赤色蛍光体をさらに付加し、赤色蛍光体と深赤色蛍光体とを共存させているため、輝度特性(発光効率)と演色性を共に向上させることができる。このような高演色性と高輝度とを両立させた白色発光ランプは照明用途等に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の一実施形態に係る白色発光ランプの構成を示す断面図である。
図2図2図1に示す白色発光ランプの変形例を示す断面図である。
図3図3は本発明に適用される4種のB,G,R,DR蛍光体の発光スペクトルの一例を示すグラフである。
図4図4は本発明の実施形態に係る白色LEDランプの発光スペクトルの一例を示すグラフである。
図5図5はDR蛍光体を含有せず従来のBGR蛍光体のみで発光部を形成した白色LEDランプの発光スペクトルの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の白色発光ランプを白色LEDランプに適用した実施形態の構成を示す断面図である。同図に示す白色LEDランプ1は、励起源(光源)としてLEDチップ2を有している。励起源はLEDチップ2に限られるものではない。白色発光ランプの励起源としては、発光のピーク波長が370nm以上470nm以下の範囲の発光ダイオードやレーザダイオード等の半導体発光素子が用いられる。
【0022】
励起源としてのLEDチップ2には、InGaN系、GaN系、AlGaN系等の各種の発光ダイオードが用いられる。LEDチップ2の発光ピーク波長は370nm以上430nm以下の範囲であることが好ましい。このようなLEDチップ2を、BGR蛍光体と深赤(DR)蛍光体とを組合せたBGR−DR蛍光体と共に用いることによって、高輝度でかつ色再現性に優れた白色LEDランプ1を実現することができる。ここでは励起源としての発光ダイオードをLEDチップ2と表記し、最終的に白色発光を得るための発光ランプを白色LEDランプ1と表記する。
【0023】
LEDチップ2は配線基板3上に実装されている。配線基板3上には円筒状の枠体4が設けられており、枠体4の内壁面は反射層とされている。枠体4は少なくとも表面が金属等の導電材料で形成されており、LEDチップ2に対する電気配線の一部を構成している。LEDチップ2の上部電極2aはボンディングワイヤ5を介して枠体4と電気的に接続されている。LEDチップ2の下部電極2bは配線基板3の金属配線層6と電気的および機械的に接続されている。枠体4内には透明樹脂7が充填されており、この透明樹脂層7内にLEDチップ2が埋め込まれている。
【0024】
LEDチップ2が埋め込まれた透明樹脂層7は、白色光を得るための蛍光体8を含有している。透明樹脂層7中に分散された蛍光体8は、LEDチップ2から出射される光により励起されて白色光を発光する。すなわち、蛍光体8が分散された透明樹脂層7は、白色光を発光する発光部9として機能するものである。発光部9はLEDチップ2の発光面を覆うように配置されている。透明樹脂層7には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられる。なお、基板3や枠体4等の構成は任意である。
【0025】
発光部9は図2に示すように、蛍光体8を含有しない第1の透明樹脂層7Aと、蛍光体8を含有する第2の透明樹脂層7Bとを備えるように構成してもよい。第1の透明樹脂層7AはLEDチップ2の発光面を覆うように配置されており、第2の透明樹脂層7Bは第1の透明樹脂層7Aを覆うように配置されている。このような構成を有する発光部9は、白色LEDランプ1の発光効率の向上に寄与する。第1の透明樹脂7Aは、例えばLEDチップ2の発光面から500〜2000μmの範囲に配置される。
【0026】
白色光を得るための蛍光体8は、LEDチップ2から出射された光(例えば紫外光や紫色光)を吸収し、ピーク波長が440nm以上470nm以下の範囲の光を発光する青色(B)蛍光体、ピーク波長が535nm以上570nm以下の範囲の光を発光する緑色(G)蛍光体、ピーク波長が590nm以上630nm以下の範囲の光を発光する赤色(R)蛍光体、およびピーク波長が640nm以上660nm以下の範囲の光を発光する深赤色(DR)蛍光体を含んでいる。蛍光体8はBGR蛍光体と深赤(DR)蛍光体との混合蛍光体(BGR−DR蛍光体)である。なお、BGR−DR蛍光体8は同じ色の蛍光体を2種類以上含んでいてもよいし、また青、黄、赤、深赤以外の発光色を有する蛍光体を補助的に含んでいてもよい。BGR−DR蛍光体8は予めB、G、R、DRの各蛍光体を結合剤で結合した状態で透明樹脂層7中に分散させることが好ましい。
【0027】
白色LEDランプ1に印加された電気エネルギーは、LEDチップ2で紫外光や紫色光に変換される。LEDチップ2から出射された光は、透明樹脂層7中に分散されたBGR−DR蛍光体8でより長波長の光に変換される。BGR−DR蛍光体8中に含まれる青色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体および深赤蛍光体からの発光が混色されて放出されることによって、総計として白色光が白色LEDランプ1から発光される。BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のピーク波長が上記範囲内であるとき、輝度や演色性等に優れる白色光を得ることができる。
【0028】
BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のうち、青色蛍光体には
一般式:(Sr1−x−y−z,Ba,Ca,Eu(POCl …(1)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)
で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体が用いられる。式(1)で組成が表されるユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体は、特にピーク波長が370〜430nmの範囲の紫外光または紫色光の吸収効率に優れる。
【0029】
また、BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のうち、緑色蛍光体には
一般式:(Ba1−x−y−z,Sr,Ca,Eu)(Mg1−uMn)Al1017 …(2)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウムマンガン付活アルミン酸塩蛍光体および
一般式:(Sr1−x−y−z−u,Ba,Mg,Eu,MnSiO …(3)
(式中、x、y、zおよびuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウムマンガン付活珪酸塩蛍光体の少なくとも1種が用いられる。
【0030】
さらに、BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のうち、赤色蛍光体には
一般式:(La1−x−y,Eu,MS …(4)
(式中、MはSb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは0.01<x<0.15、0≦y≦<0.03を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体が用いられる。
【0031】
また、BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のうち、深赤色蛍光体には
一般式:αMgO・βMgF・(Ge1−xMn)O …(5)
(式中、αおよびβは、3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)で表される組成を有するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体が用いられる。
【0032】
上記式(5)の組成を有するンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体において、係数のαおよびβが、上記範囲内にある場合には、発光輝度および演色性の改善効果が得られる。Mnの含有量は式(5)中のxの値として0.001〜0.5の範囲とする。xの値が0.001未満であると、赤色発光成分の補強効果を十分に得ることができない。一方、xの値が0.5を超えると600〜700nmの赤色発光成分の増加効果以上に535〜570nmの緑色発光成分の低下が著しくなり、全体の発光効率が低下してしまう。したがって、xの値は0.002〜0.2の範囲であることがより好ましい。
【0033】
図3は、上記Eu付活アルカリ土類アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体((Sr0.95,Ba0.043,Eu0.007(POCl)の発光スペクトル(B)と、ユーロピウムマンガン付活珪酸塩蛍光体(Sr1.48,Ba0.32,Mg0.095,Eu0.1,Mn0.005)SiOの発光スペクトル(G)と、ユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体(La0.885,Eu0.115Sの発光スペクトル(R)と、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(3.5MgO・0.5MgF・(Ge0.99Mn0.01)Oの発光スペクトル(DR)とを比較して示すグラフである。
【0034】
図3から明らかなように、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(DR)は、従来の赤色蛍光体(R)の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有し、630〜670nmの発光強度が増加し、赤味が増強されていることが判明する。これによって、赤色発光成分を補強することが可能となる。
【0035】
赤色蛍光体は青色蛍光体や緑色蛍光体と比べて、波長370〜430nmの範囲の紫外線や紫色光に対する発光効率が劣ることが知られている。このような問題点に対して、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(DR)によって深赤色発光成分を補強することによって、青、黄、赤の各発光成分を混色させて得られる白色光の輝度や演色性を高めることが可能となる。すなわち、従来の赤色発光蛍光体とマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(DR)とを並存させることにより、赤色蛍光体の発光不足を補強して、輝度バランスを向上させることによって、白色光の輝度を高めることができる。さらに、輝度バランスを向上させることで、白色光の演色性を高めることができる。
【0036】
式(3)で示される組成を有する緑色蛍光体では、Eu付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体の発光スペクトルにMnの発光が加わることによって、赤色発光成分が補強されるものと考えられる。このような効果を得る上で、Mnの含有量は式(3)中のuの値として0.0005〜0.02の範囲とする。uの値が0.0005未満であると、赤色発光成分の補強効果を十分に得ることができない。一方、uの値が0.02を超えると600〜700nmの赤色発光成分の増加効果以上に535〜570nmの緑色発光成分の低下が著しくなる。uの値は0.005〜0.02の範囲であることがより好ましい。
【0037】
Euは主として緑色発光を得るための付活剤である。Euの含有量は緑色発光を得るために、式(3)中のzの値として0.025〜0.25の範囲とする。Euの含有量が上記範囲から外れると緑色発光成分の強度等が低下する。Euの含有量はzの値として0.05〜0.2の範囲とすることがより好ましい。
【0038】
EuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体による赤色発光成分の補強効果は、特にピーク波長が370〜430nmの範囲の紫外光や紫色光で励起した場合に顕著に現れる現象である。なお、EuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体をピーク波長が440〜470nmの青色光(青色発光LEDから出射される光)で励起した場合にも、若干発光スペクトルの赤色成分が増強される。式(3)で組成が表されるEuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体は、特に励起源としてピーク波長が370〜430nmの範囲のLEDチップ2を用いた白色LEDランプ1の緑色蛍光体として有効である。
【0039】
ところで、従来のEu付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体((Sr,Ba,Eu)SiO蛍光体)に単にMnを添加しただけでは、蛍光体作製時に蛍光体の体色が黒化して、良好な発光特性を得ることはできない。そこで、この実施形態の緑色蛍光体においては、EuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体((Sr,Ba,Eu,Mn)SiO蛍光体)に、さらにMgを添加している。
【0040】
(Sr,Ba,Eu,Mn)SiO蛍光体にMgを添加することによって、緑色蛍光体としての発光特性を維持することが可能となる。上述した黒化防止効果を得る上で、Mgの含有量は式(3)中のyの値として0.025〜0.105の範囲とする。yの値が0.025未満であると、緑色蛍光体の黒化防止効果を十分に得ることができない。一方、yの値が0.105を超えると535〜570nmの緑色発光成分が低下する。yの値は0.075〜0.105の範囲とすることがより好ましい。
【0041】
Baの含有量はEuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体を緑色蛍光体とする上で、式(3)中のxの値として0.1〜0.35の範囲とする。Baの含有量が上記範囲から外れるとアルカリ土類珪酸塩の結晶構造等が変化して、緑味を帯びた蛍光体となる。xの値は0.1〜0.3の範囲とすることがより好ましい。
【0042】
BGR−DR蛍光体8を構成する各蛍光体のうち、青色蛍光体および赤色蛍光体としてはLEDチップ2から出射される光(特に紫外光や紫色光)を効率よく吸収するものであれば各種の蛍光体を使用することができる。特に、EuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体からなる緑色蛍光体との組合せの点から、青色蛍光体はEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体およびEu付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、赤色蛍光体はEu付活酸硫化ランタン蛍光体であることが好ましい。
【0043】
青色蛍光体としてのEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体は、
一般式:(Sr1−x−y−z,Ba,Ca,Eu(POCl …(1)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)で表される組成を有することが好ましい。式(1)の組成を満足するEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体は、LEDチップ2から出射される光の吸収効率が高く、かつ式(2)、(3)で表される緑色蛍光体との組合せ性に優れるものである。
【0044】
Eu付活アルミン酸塩蛍光体は、
一般式:(Ba1−x−y−z,Sr,Ca,Eu)(Mg1−uMn)Al1017 …(2)
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)で表される組成を有することが好ましい。式(2)の組成を満足するEu付活アルミン酸塩蛍光体は、LEDチップ2から出射される光の吸収効率が高く優れるものである。
【0045】
また、他の緑色蛍光体としては、
一般式:(Sr1-x-y-z-u,Bax,Mgy,Euz,MnuSiO4 …(3)
(式中、x、y、zおよびuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)で表される組成を有するユーロピウムマンガン付活珪酸塩蛍光体が用いられる。
【0046】
赤色蛍光体としてのEu付活酸硫化ランタン蛍光体は、
一般式:(La1−x−y,Eu,MS …(4)
(式中、MはSb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは0.01<x<0.15、0≦y≦<0.03を満足する数である)で表される組成を有することが好ましい。式(4)の組成を満足するEu付活酸硫化ランタン蛍光体は、LEDチップ2から出射される光の吸収効率が高く、かつ式(2)(3)で表される緑色蛍光体との組合せ性に優れるものである。
【0047】
深赤色蛍光体としてのマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体は、
一般式:αMgO・βMgF・(Ge1−xMn)O …(5)
(式中、αおよびβは、3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)で表される組成を有することが好ましい。式(5)の組成を満足するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体は、赤色蛍光体(R)の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有し、630〜670nmの発光強度が増加し、赤味が増強されていることが判明する。これによって、赤色発光成分を補強し、演色性を効果的に改善することが可能となる。
【0048】
図4は上述した青(B)、緑(G)、赤(R)および深赤(DR)の各蛍光体を含むBGR−DR蛍光体8を用いた白色LEDランプ1の発光スペクトルの一例を示している。図4は電流値20mA、ピーク値400nmのLEDチップからの紫外光を、BGR−DR蛍光体で(x,y)色度値が(x=0.300〜0.350,y=0.300〜0.350)の白色光に変換したときの発光スペクトルである。上述した各蛍光体の組合せによれば、青色発光成分のピーク値が450nm、緑色発光成分のピーク値が560nm、赤色発光成分のピーク値が623nm、深赤色発光成分のピーク値が650nmにあり、輝度が370mcd以上、平均演色指数(Ra)が98以上の特性値を得ることができる。
【0049】
一方、図5は青(B)、緑(G)、赤(R)蛍光体のみであり、深赤(DR)色蛍光体を含有しない白色LEDランプ1の発光スペクトルの一例を示している。深赤(DR)色蛍光体を含有しない場合には、発光強度(発光効率)が低下し、平均演色指数(Ra)も92程度に留まることが確認されている。
【0050】
青、黄、赤および深赤の各蛍光体は、例えばそれらの混合物として透明樹脂層7中に分散させる。各蛍光体の混合比率は目的とする白色光の色度に応じて任意に設定される。必要に応じて、青、黄、赤および深赤以外の蛍光体を添加してもよい。発光部9で良質な白色発光を得る上で、各蛍光体の混合比率は青色蛍光体を20〜35質量%、緑色蛍光体を1〜10質量%、赤色蛍光体を0.4〜70質量%、深赤蛍光体を3〜25質量%(青色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体、深赤蛍光体の合計が100質量%)とすることが好ましい。
【0051】
さらに、青、黄、赤および深赤の各蛍光体はそれぞれ10μm以上80μm以下の範囲の平均粒径を有していることが好ましい。ここで言う平均粒径は粒度分布の中位値(50%値)を示すものである。青、黄、赤および深赤の各蛍光体の平均粒径を10〜80μmの範囲とすることによって、LEDチップ2から出射される紫外光や紫色光の吸収効率を高めることができる。従って、白色LEDランプ1の輝度をさらに高めることが可能となる。蛍光体の平均粒径を20〜70μmの範囲とすることがさらに好ましい。
【0052】
青、黄、赤および深赤の各蛍光体は、透明樹脂層7中での分散状態の均一性を高める上で、予め無機結合剤や有機結合剤等の結合剤で一体化し、この状態で透明樹脂層7中に分散させるようにしてもよい。無機結合剤としては微粉化したアルカリ土類ホウ酸塩等が用いられ、有機結合剤としてはアクリル樹脂やシリコーン樹脂等の透明樹脂が用いられる。結合剤を用いて一体化処理することで、各蛍光体がランダムに結び付いて大粒径化する。これによって、透明樹脂層7中での各蛍光体の沈降速度の差等に基づく分散状態の不均一性が解消されるため、白色光の再現性や発光の均一性を高めることが可能となる。
【0053】
この実施形態の白色LEDランプ1は、輝度特性、演色性、色再現性等のランプ特性に優れている。従って、白色LEDランプ1は車載用ランプ、信号装置、各種スイッチ類、一般照明等の照明装置の光源として有効である。本発明の実施形態による照明装置は、光源として1個または複数個の白色LEDランプ1を具備している。白色LEDランプ1は適用する照明装置の構成に応じて、実装基板上に各種の配列で配置されて用いられる。この実施形態の白色LEDランプ1を用いた照明装置は、従来の蛍光ランプの代替品として、高品質の照明を提供するものである。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0055】
(実施例1−22)
青色蛍光体(B)として平均粒径が12μmのEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr0.95,Ba0.043,Eu0.007(PO・Cl)蛍光体(以下、表1で「B1」と略記する)、
緑色蛍光体(G)として平均粒径が15μmのEuおよびMn付活アルカリ土類珪酸塩((Sr1.48,Ba0.32,Mg0.095,Eu0.1,Mn0.005SiO)蛍光体(以下、表1で「G1」と略記する)、
緑色蛍光体として平均粒径が15μmのユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体((Ba0.95,Eu0.05)(Mg0.7Mn0.3)Al1017(以下、表1で「G2」と略記する)、
赤色蛍光体(R)として平均粒径が12μmのEu付活酸硫化ランタン((La0.885,Eu0.115S)蛍光体(以下、表1で「R1」と略記する)、および
深赤色蛍光体(DR)として、平均粒径が12μmであり、かつ表1に示すような組成をそれぞれ有するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を用意した。蛍光体の粒径はレーザー回折法で測定した値である。
【0056】
各蛍光体をそれぞれシリコーン樹脂に30質量%の割合で混合してスラリーを作製した。これら各スラリーを白色LEDランプの発光色度が(x=0.29〜0.34,y=0.29〜0.34)の範囲に入るように、また電球色の色温度が2800Kとなるように、青色蛍光体スラリー、緑色蛍光体スラリー、赤色蛍光体スラリーおよび深赤色蛍光体スラリーを表1に示す重量割合(質量%)で混合し各混合蛍光体を調製した。
【0057】
次に、図2に構成を示した白色LEDランプ1のLEDチップ(発光ピーク波長:399nm,サイズ:300×300μm)2上に、蛍光体を含まないシリコーン樹脂を滴下した後に、上記した各蛍光体を含む混合スラリーを滴下し、140℃で熱処理してシリコーン樹脂を硬化させることによって、各実施例に係る白色LEDランプ1を作製した。得られた白色LEDランプを後述する特性評価に供した。
【0058】
(比較例1)
深赤色蛍光体であるマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を含有させない点およびBGR蛍光体の混合比を表1に示すように調整した点以外は実施例4と同様に処理して、図2に示す構成と同様の構成を有する比較例1に係る白色LEDランプ1を作製し、後述する特性評価に供した。
【0059】
(比較例2)
深赤色蛍光体において、Geに対するMnの含有比率を過少に設定したマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を使用した点以外は実施例4と同様に処理して、図2に示す構成と同様の構成を有する比較例2に係る白色LEDランプ1を作製し、後述する特性評価に供した。
【0060】
(比較例3)
深赤色蛍光体において、Geに対するMnの含有比率を過大に設定したマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を使用した点以外は実施例4と同様に処理して、図2に示す構成と同様の構成を有する比較例2に係る白色LEDランプ1を作製し、後述する特性評価に供した。
【0061】
上記のように調製した各実施例1〜22および比較例1〜3に係る各白色LEDランプに20mAの電流を流して点灯させ、各白色LEDランプの輝度(発光効率)および平均演色指数Raを測定した。なお、上記平均演色指数Raは、日本工業規格(JIS Z 8726−1990:光源の演色性評価方法)に準じて測定した。また、各白色LEDランプの発光特性(輝度、発光効率)は、Instrument System社製CAS 140 COMPACT ARRAY SPECTROMETERおよび大塚電子社製MCPD装置を用いて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【表1】
【0062】
上記表1に示す結果から明らかなように、赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有する所定組成の深赤色蛍光体をさらに付加し、赤色蛍光体と深赤色蛍光体とを共存させた実施例1〜22に係る各白色LEDランプによれば、比較例1〜3と比較して発光効率および演色性が共に優れることが確認された。各実施例で得られた平均演色評価指数Raは95Ra以上(実施例では96〜98Ra)であり、各比較例のものと比較して演色性が大幅に改善されることが判明した。また各実施例では発光効率も62Lm/W以上であり、発光効率も改善されていることが判明した。
【0063】
一方、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を含有させずに、従来のBGR蛍光体のみで構成した比較例1に係る白色LEDランプにおいては、実施例と比較して相対的に発光効率および演色性が共に低下した。また、Geに対するMnの含有比率を過少に設定した深赤色蛍光体を用いた比較例2に係る白色LEDランプによれば、演色性の改善効果はやや認められたが、発光効率の改善効果は無かった。さらに、Geに対するMnの含有比率を過大に設定した深赤色蛍光体を用いた比較例3に係る白色LEDランプによれば、演色性の改善効果はやや認められたが、発光効率が大幅に低下することが再確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の白色発光ランプによれば、赤色蛍光体の主発光ピークよりも長波長領域に主発光ピークを有する深赤色蛍光体をさらに付加し、赤色蛍光体と深赤色蛍光体とを共存させているため、輝度特性(発光効率)と演色性を共に向上させることができる。このような高演色性と高輝度とを両立させた白色発光ランプは照明用途等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…白色LEDランプ、2…LEDチップ、3…配線基板、4…枠体、5…ボンディングワイヤ、6…金属配線層、7…透明樹脂層、7A…第1の透明樹脂層、7B…第2の透明樹脂層、8…BGR−DR蛍光体、9…発光部。
図1
図2
図3
図4
図5