【文献】
WANG Z.-M. et al,Surfactant-Mediated Synthesis of a Novel Nanoporous Carbon-Silica Composite,Chemistry of Materials,2003年 7月29日,Vol.15,P.2926-2935
【文献】
YANG S. et al,Graphene-Based Nanosheets with a Sandwich Structure,Angewandte Chemie. International Edition,2010年 5月28日,Vol.49,P.4795-4799
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(f)における金属酸化物前駆体化合物、及び金属前駆体化合物が、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、金属アルコキシド、金属硫酸塩、金属炭酸塩、及び金属オキソ硫酸塩からなる群から選択される請求項7又は8に記載の製造方法。
上記ナノ材料が、被覆/グラフェン又はグラフェンオキシド/被覆の配列を有するサンドイッチ形態の層構造の上面及び反対面に被覆されている請求項13に記載の2次元サンドウィッチナノ材料。
【背景技術】
【0002】
2次元(2−D)ナノ材料は、基本的に2つの次元において有限ではないが、3番目の次元(厚さ)がナノスケールに制限されている材料である。これにより、このような大部分の粒子材料においては、厚さに対する長さの比が極めて大きくなる。グラフェンは、6個の炭素原子がsp
2共有結合した6員環でなる平面層を有するという点で2−Dナノ材料である。グラファイトは、これらグラフェンの複数の層から構成されている。グラフェンは、極めて高い機械的強度及び高い導電性を有する。しかし、グラフェン及びグラフェンに基づく機能性2次元ナノ材料は、グラフェンの製造に困難性があることから、それらの応用が妨げられている。
【0003】
グラフェンは、先ず、接着ストリップを高配向性熱分解グラファイト(HOPG)に施し、この接着ストリップをグラファイトとともに引きはがして、何層かのグラフェン層をこの接着ストリップに接着させ、この層をシリコンウェハに移すことで製造される。この方法は、非常に時間がかかり且つ低収率であるが、極めて高純度のグラフェン粒子を得るために今日においても用いられている。
【0004】
他の方法として化学蒸着(CVD)があり、この方法では、炭素源を蒸発させて触媒担体に蒸着させる。この方法では、安定してグラフェン粒子が生産されるが、媒体中にグラフェンの「自由」粒子の懸濁が起こらない。また、グラフェンは、金属基板上におけるエピタキシャル成長により得ることができる。また、SiCを、1100℃を超える温度に加熱することで、グラフェンを生じる方法もある。これら両方法により、表面被覆されたグラフェンが製造されるが、グラフェンの「自由」粒子は存在しない。
【0005】
グラフェン粒子を製造する他の方法としては、グラファイトの溶液剥離である。この方法では、グラファイトを、N−メチルピロリドン等の有機溶媒中で、溶媒とグラファイト表面の正の相互作用により剥離してグラフェン粒子とする。このためには、特別な溶媒が必要であり、例えば、グラフェンを機能的とするために他の金属層に施す等の処理が必要であるという課題がある。更に、グラフェン粒子は再び素早く集積する傾向にあるので、単層の収率が低くしかならない。
【0006】
また、グラフェン粒子は、水性懸濁液中でグラフェンオキシド粒子を化学還元することにより得ることができる。しかし、この方法は、グラフェン中にある一定の割合の酸化された基を残すことになり得る。グラフェンオキシドは、多数の酸素含有基により容易に水中に分散し得るが、結果として得られるアニオン特性により、グラフェンオキシドはSiO
2のような無機化合物には、ほぼ適合しない。更に、水性グラフェンオキシド懸濁液の還元により製造されるグラフェン懸濁液においては、水中において分散性が低く、したがって凝集するので、個々のグラフェン粒子を得ることが極めて困難となる。
【0007】
また、グラフェンオキシドを、熱的手段(Aksay, Chem. Mater. 2007, 19, 4396〜4404ページ)によりグラフェンに転化することができる。しかし、グラフェン粒子は、高温において塊になり、個々のグラフェンの粒子群を得ることは難しい。
【0008】
それにもかかわらず、グラフェンの良好な性質、例えばその高い電子移動度により、非常に良好な導電性が得られ及び室温において量子ホール効果が生じることで、グラフェンの機能を連続させる。
【0009】
特許文献1には、グラフェン及び金属酸化物に基づくナノ複合素子を製造する方法が開示されている。この方法では、グラファイトフレークを化学的に酸化し、生じたグラファイトオキシドを急速な熱拡散により剥離して、部分的にグラフェンに変換する。剥離されたグラフェン粒子は、ナトリウムドデシルスルフェートを含む水性分散液(粒子の安定用)の製造に使用される。金属酸化物前駆体を分散液に添加し、分散されたグラフェン粒子に蒸着し、ナノ複合素子材料を形成する。この製造方法により、グラフェン粒子は、10〜500の炭素/酸素比を有する。グラフェン粒子中における酸素原子により、表面において陰イオン性界面活性剤を吸着することが、いくらか難しくなる。
【0010】
グラフェンオキシドは、グラフェン及びグラファイトの酸化により得られ、1つの層に炭素原子が6員環に結合された状態からなり、酸素含有基を含む。グラフェンオキシドは、機能的な2次元ナノ材料の製造のための出発点として同様に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、下記のように詳細に説明される。
【0023】
本明細書において、グラファイトは、複数の平面であり炭素原子が相互にsp
2−共有結合で結合して成る6員環により形成された層が相互に積層して複数の平面をなす炭素を意味するものとして理解される。
【0024】
「グラフェン」は、厳密に言えば、グラファイト構造における単一の炭素層、すなわち、6個の炭素原子がsp
2−共有結合で6角形状に結合されて成る6員環が配置された単一層として理解される。
【0025】
本発明の目的のために、「グラフェン」は、6個の炭素原子が相互にsp
2−共有結合で6角形状に結合されて成る6員環が配置された単一層を、10層以下で形成する材料を意味し、好ましくは5層以下、より好ましくは2層以下、及び更に好ましくは1層以下である。
【0026】
「グラファイトオキシド」は、複数の層により構成された3次元構造を意味する。この複数の層は、それぞれ、部分的にカルボニル、カルボキシル、アルコール、及びエポキシ基により官能化されるC
6−環から成るものである。これら個々の層は、グラファイト中においてもはや平面上ではないが、その酸化度に応じて、全体的、或いは部分的に平面からジクザク状に突出する。
【0027】
本発明の目的のための「グラファイトオキシド」は、エポキシ基、アルコール基、カルボキシル基、及び/又はカルボニル基等の酸素官能基の影響をうけたC
6−環から形成される層を、10層以下、好ましくは5層以下、より好ましくは2層以下、更に好ましくは単層で形成される材料を意味するとして理解される。
【0028】
本発明において「粒子」は、グラフェンオキシド粒子、及びグラフェン粒子の総称として使用される。
【0029】
本発明において「2次元ナノ材料及びサンドウィッチ要素」とは、原則として2次元方向において無限であるが、3次元方向において任意の被覆を含んでも0.3nm〜500nmの範囲の大きさに制限されているプレートレット形状の粒子を意味する。なお、この寸法は電子顕微鏡で測定される。グラフェン及びグラフェンオキシドに基づく本発明のサンドウィッチ粒子は、その上面及びその底面において被覆され被覆/グラフェン又はグラフェンオキシド被覆が連続するサンドウィッチ形状の層状構造を有する被覆は1層以上で構成されていても良い。
【0030】
本発明の方法の工程a)は、
(a1)グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、又は
(a2)グラフェン粒子、グラファイトの溶液剥離に有用な一種以上の溶媒、並びに一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物を準備する工程を有する。
【0031】
グラファイトオキシド粒子は、通常、工程(a1)にしたがう混合物を準備するために使用される。グラファイトオキシド粒子の製造方法は、当業者により知られている。通常、グラファイトオキシドは、グラファイトの酸化により製造される。酸化により、酸素原子がグラファイトに埋め込まれ、第1級アルコール、エポキシ基、カルボニル基、及びカルボキシル基が生じる。これらの基は、個々の層の間の隙間に広がり、相互の層の分離がより容易となる。また、グラファイトの酸化層は、酸素含有基が含まれることから、より親水性が高く、水中に分散しやすい。
【0032】
酸化グラファイトの製造方法は、当業者により知られている。通常、この製造方法は、グラファイトを酸化剤及び酸(より好ましくは強酸)で処理する工程を含む。使用される酸化剤は、より好ましくは塩素酸塩及び過マンガン酸塩であり、硫酸及び硝酸が酸として特に使用される。
【0033】
「L. Staudenmaier, Ber. Dt. Chem. Ges. 31, (1898), 1481, and L. Staudenmaier, Ber. Dt. Chem. Ges. 32, (1899), 1394」には、グラファイトを発煙硝酸及び濃縮硫酸の存在下で塩素酸カリウム及び過マンガン酸カリウムと反応させることにより酸化グラファイト(この文献では、graphitic acidと記載している)を製造する方法が開示されている。
【0034】
「W.S. Hummers, R.E. Offeman, J. Am. Chem. Soc. 80 (1958), 1339」には、グラファイトを硫酸の存在下で塩素酸カリウム及び過マンガン酸カリウムと反応させることにより酸化グラファイトを製造する方法が開示されている。
【0035】
また、酸化グラファイトを製造するための前駆体として膨張性グラファイトを使用しても良い。この場合、グラファイトを第1の工程で膨張させる。そして、得られた物を、例えばボールミルに置く。最後の工程は、熱酸化又は硫酸の存在下による酸化の何れかによる上述の化学修飾である。
【0036】
更に、上記混合物は、水、並びに一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む。好適な界面活性剤については後述する。
【0037】
グラファイトオキシド粒子から処理を行うように(a1)の混合物が準備される場合には、グラファイトオキシド粒子は、少なくとも部分的にグラフェンオキシド粒子に剥離され、したがって、混合物がグラフェンオキシド粒子を含むこととなる。
【0038】
(a2)の混合物を準備するために、グラファイト粒子が、通常、一種以上の好適な溶媒中に懸濁される。この方法において、グラファイト粒子は、有機溶媒中で溶液剥離されて個々の層にわかれ、一種以上の非プロトン性溶媒中のグラフェン粒子の懸濁液が得られる。この工程は、グラフェンの表面エネルギーと等しい表面エネルギーの溶媒を用いて実現される。溶媒の表面エネルギーが55〜90mJ/m
2であることにより、グラフェン粒子におけるグラファイト粒子(Hernandez et al., arXiV: 0805.2850 v1)の剥離が確実に実行される。好適な溶媒は、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びN−メチルピロリドンである。
【0039】
更に、グラファイトの溶液剥離に有用な溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、及びシクロヘキサンを含む。
本発明においては、N−メチル−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、及びシクロヘキサンを含む群から選択される溶媒を用いることが好ましく、ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0040】
ピログラファイト、電気黒鉛、及び膨張黒鉛が特に好ましいが、天然に生じるグラファイト及び人工的に製造されるグラファイトを用いることもできる。
【0041】
更に、(a1)或いは(a2)にしたがい(a)において提供される混合物は、一種以上の陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を含む。
【0042】
陽イオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物の群から選択されることが好ましく、より好ましくはC
nH
2n+1N(R)
3Hal(ただし、n=12、14、16、及び18、Hal=Cl及びBr、及びR=CH
3又はC
2H
5であり、Rは同一でも異なっていても良い。)、特に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、及びセチルトリエチルアンモニウムブロマイドである。
【0043】
一種以上の非イオン性界面活性剤は、好ましくは、エチレンオキシドを含むC
2−C
4−アルキレンオキシドブロックコポリマーの群から選択される。このコポリマーは、例えば、BASF SE社製でPluronic(登録商標)の名で市販されている。
【0044】
一種以上の陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤が存在することにより、グラフェン/グラフェンオキシドと無機材料との間の不適合という問題、及び凝集の問題を避けることができる。陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤は、強く負に帯電したグラフェンオキシドの表面に静電気的に吸着されるか、或いはグラフェン構造のπ電子による相互作用でグラフェンの表面に吸着される。そして、陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤は、グラフェン又はグラフェンオキシド粒子の表面の上面及び底面において規則的な微細構造状に集合する。例えば、グラフェンオキシド粒子上に吸着されるセチルトリメチルアンモニウムブロマイドは被覆が施された後に、約2nmサイズのメソポーラスを構成する管状ミセルを形成する。
【0045】
グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を含む(a1)の混合物を準備するために、又はグラフェン粒子、グラファイトの溶液剥離に有用な一種以上の溶媒、及び陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を含む(a2)の混合物を準備するために、グラファイトオキシド又はグラファイト粒子から出発する混合物が、通常、グラファイトオキシド粒子又はグラファイト粒子の剥離をそれぞれ機能的に及び改善するために、エネルギーが入力されることで処理される。このようなエネルギーの入力は、超音波、撹拌、振動、及び他の当業者により知られている方法を用いて行われる。例えばUltra−Turrax(登録商標)攪拌機等の撹拌装置、粉砕装置、及び分散装置は、当業者により知られているものを使用することができる。
【0046】
(a1)の混合物を準備するために、本発明では、全質量に対して0.005〜5質量%のグラファイトオキシド粒子、より好ましくは0.01〜5質量%のグラファイトオキシド粒子、さらに好ましくは0.01〜2質量%のグラファイトオキシド粒子を含む混合物から工程が進められることが好ましい。一種以上の陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤の濃度は、混合物の全質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.2〜1質量%である。
【0047】
(a2)の混合物を準備するために、本発明では、全質量に対して0.01質量%のグラファイト粒子、より好ましくは0.5質量%のグラファイト粒子、さらに好ましくは1質量%のグラファイト粒子を含む混合物から工程が進められることが好ましい。この混合物は、当該混合物の全質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.2〜1質量%の一種以上の陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を含む。
【0048】
全てのグラファイトオキシド粒子又はグラファイト粒子が、単層のグラフェン粒子に剥離されるわけではない場合、上記混合物を準備する工程において、少なくともいくらかの剥離されていない粒子を、注意深く遠心分離等することで混合物から除去しても良い。
【0049】
本発明によれば、工程(a1)において提供される混合物が、好ましくは、全質量に対して0.005〜5質量%、より好ましくは全質量に対して0.01〜5質量%のグラフェンオキシド粒子を含み、工程(a2)において提供される混合物が、好ましくは、全質量に対して0.001〜5質量%、より好ましくは全質量に対して0.01〜1質量%のグラフェン粒子を含む。
【0050】
本発明の方法における工程(b)は、一種以上のゾル前駆体化合物を工程(a)で得られた混合物に添加する工程を含む。「ゾル前駆体化合物」とは、特定の混合物において現れる条件下において、いわゆるゾルと呼ばれる形態をとる化合物を意味する。ここで、「ゾル」とは、当業者により公知の「ゾル−ゲル法」において使用される語として理解されるべきである。「ゾル−ゲル法」において、ゾル前駆体は初めにゾルに変換されて、その後、ゲルに変換される。ゾル−ゲル法は、例えば、「W. Stober et al., J. Colloid Interf. Sci 26 (1968), page 62」に記載されている。
【0051】
本発明において、一種以上のゾル前駆体化合物を、SiO
2前駆体化合物、ZrO
2前駆体化合物、TiO
2前駆体化合物、CeO
2前駆体化合物、Al
2O
3前駆体化合物、Fe
2O
3前駆体化合物、Fe
3O
4前駆体化合物は、MgO前駆体化合物、ZnO前駆体化合物、酸化クロムの前駆体化合物、Co
2O
3前駆体化合物、酸化モリブデンの前駆体化合物、酸化タングステンの前駆体化合物、酸化ハフニウムの前駆体化合物、Y
2O
3前駆体化合物、及び水溶性架橋ポリマー、及びポリマー前駆体から成る群から選択することが好ましい。
【0052】
本発明によれば、金属アルコキシドが、Me(OR)
nから選択されることが好ましい。ただし、Me=Zn、Mgに対してn=2、Me=Al、Y、Fe、Cr、Coに対してn=3、 Me=Si、Zr、Ti、Ce、Mo、W、Hfに対してn=4、及びRは、一以上のOH基で置換可能であり、相互に同一でも異なっていても良いC
1−からC
8−アルキルである。
【0053】
特に非常に好ましくは、一種以上のゾル前駆体化合物が、水ガラス、及びSi(OR)
4から選択される。ただし、Si(OR)
4において、Rは、HCH
3、C
2H
5、C
2H
4OH、n−C
3H
7、i−C
3H
7、n−C
4H
9、及びt−C
4H
9であり、同一でも異なっていても良い。
【0054】
本発明によれば、可溶性架橋性ポリマー及びポリマー前駆体が、メラミンホルムアルデヒド樹脂前駆体、及びレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂前駆体から選択されることが好ましい。
【0055】
工程(b)における一種以上のゾル前駆体化合物は、通常、工程(a)で得られた混合物にゆっくりと添加され、液体状態とされる。この混合物を溶液に添加するか、溶媒無しで添加しても良い。工程(b)において添加された一種以上のゾル前駆体化合物の濃度は、混合物(a)内に存在するグラフェンオキシド粒子、又はグラフェン粒子に対して、通常、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.2〜1%である。
【0056】
使用されるゾル前駆体化合物に応じて、ゾル用の触媒及び/又はゲル形成用の触媒を、酸や塩基等の工程(b)の最中又は工程(b)より前に添加しても良い。
【0057】
グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子に吸着されて、相互に凝集してメソポーラス構造を形成する界面活性剤分子は、グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子にある一種以上のゾル前駆体化合物からの制御された核生成及びゾル又はゲルの成長のための分子テンプレートを形成する。
【0058】
本発明の方法における工程(c)は、工程(b)で得られた混合物をゾル−ゲル法で反応させる工程を含み、ゲルは、界面活性剤の分子がグラフェンオキシド又はグラフェン粒子に吸着していることで、不均一核生成工程において溶媒中ではなくグラフェンオキシド又はグラフェン粒子の表面に析出される。これは、当業者により液晶テンプレート機構として知られている(GS Arttard, Nature 378 (1995), 366〜368ページ)。この方法において、ゾル前駆体化合物は、ゾル及びさらにはゲルに転化する。
【0059】
工程(c)は、通常、0.5時間から2日間、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜8時間の期間にわたって実行される。工程(c)における温度は、通常、系に応じて、特に、使用される溶媒及び/又は分散液に応じて10〜80℃である。
【0060】
続いて、グラフェンオキシド粒子及びグラフェン粒子は、上記特定のゲルにより、上面及び底面の両方において被覆を呈する。このゲルは、一市場の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性活性剤により粒子の表面に形成された上述のテンプレートにしたがって配列される。これにより、均一且つ構造化された、ゲルによる粒子表面の被覆が得られる。
【0061】
その後被覆されたグラフェンオキシド粒子及びグラフェン粒子には、例えば、分離や乾燥等のさらなる処理が行われる。
【0062】
工程(c)に続いて工程(d)において被覆されたグラフェンオキシド粒子又は被覆されたグラフェン粒子から、洗浄又は加熱によって界面活性剤分子を除去する被覆された粒子を、水、又はメタノール、エタノール、及びプロパノール等の溶媒により洗浄しても良い。一方で、界面活性剤分子を、不活性雰囲気下において50〜500℃の加熱を行うことにより除去しても良い。界面活性剤粒子の除去を、工程(e)におけるグラフェンオキシド粒子の加熱の際に行っても良い。これにより、グラフェンオキシドをグラフェンに転化し、工程(d)及び(e)を共に実行することができる。また、界面活性剤分子を、任意に行う焼成工程で除去しても良い(後述する)。
【0063】
被覆された粒子を除去及び乾燥した後に、焼成工程を任意に行う。この焼成工程では被覆された粒子を、酸素含有ガス又は不活性ガスの存在下において高温で焼成する。SiO
2被覆された粒子の場合、例えば、2時間以上の焼成を行う。焼成を、例えば、大気雰囲気下において2〜8時間で5〜600℃で行うことが好ましい。
【0064】
被覆された触媒は、乾燥状態において通常、75〜95質量%、好ましくは80〜92質量%、より好ましくは85〜90質量%のグラフェンオキシド又はグラフェンを含み、通常は、5〜25質量%、好ましくは8〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%の、ゲルから形成された被覆を含む。
【0065】
工程(a)が、(a1)にしたがう混合物を準備する場合被覆されたグラフェンオキシド粒子を、不活性ガス雰囲気下で、少なくとも1分の間、任意に500℃以上に加熱する。これにより、グラフェンオキシドをグラフェンに還元することができる(工程(e))。好ましくは被覆されたグラフェンオキシド粒子を、少なくとも30分の間、より好ましくは1時間以上の間、不活性ガス雰囲気下で加熱する。当該加熱は、通常、12時間以上実行することはなく、好ましくは6時間以上実行することは無い。加熱の温度は、好ましくは、500〜1000℃の範囲である。
【0066】
本発明の実施の形態において、方法は、
(a)
(a1)グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、
を準備する工程、
(b)一種以上のゾル前駆体化合物を工程(a)から得られた混合物に添加する工程、
(c)工程(b)からの混合物をゾル/ゲル法により反応させ、グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子にゲルを形成する工程、
(d)一種以上の界面活性剤を除去する工程、及び
(e)任意に被覆されたグラフェンオキシド粒子を、不活性ガス雰囲気下において1分以上の間、500℃以上に加熱し、グラフェンオキシドをグラフェンに還元する工程、
を有し、
特に好ましくは、実際に工程(e)を実行する。
【0067】
特に好ましい実施の形態では、工程(b)においてSiO
2前駆体化合物から、より好ましくは水ガラス及びSi(OR)
4から一種以上のゾル前駆体化合物を選択し、上述の工程を実行する。ただし、Rは、H、 CH
3、 C
2H
5、C
2H
4OH、n−C
3H
7、i−C
3H
7、n−C
4H
9、及びt−C
4H
9から選択され、同一種で合っても異種であっても良い。
【0068】
本発明にしたがう、グラフェン及び/又はグラフェンオキシドに基づくSiO
2被覆された2−Dサンドウィッチナノ材料は、他の2−Dサンドウィッチナノ材料を製造するためのテンプレートとして使用されることが特に好ましい。従って、本発明は、上述の工程を含む方法を提供する。この方法においては、工程(b)における一種以上のゾル前駆体化合物をSiO
2前駆体化合物から選択する。更に、本発明の方法は、下記の各工程を含む。
【0069】
(f)SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子、又はSiO
2被覆されたグラフェン粒子に、金属酸化物前駆体、金属前駆体化合物、及び炭素前駆体化合物から選択される一種以上の前駆体化合物を含ませる工程、
(g)一種以上の前駆体化合物を、対応する金属酸化物、対応する金属、又は炭素に転化する工程、及び
(h)SiO
2をグラフェンオキシド粒子、又はグラフェン粒子から除去する工程。
【0070】
従って、本実施の形態にしたがう工程は、
(a)
(a1)グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、又は
(a2)グラフェン粒子、グラファイトの溶液剥離に有用な一種以上の溶媒、並びに一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、を準備する工程、
(b)一種以上のゾル前駆体化合物を工程(a)からの混合物に添加する工程、
(c)工程(b)からの混合物をゾル/ゲル法により反応させ、グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子にゲルを形成する工程、
(d)一種以上の界面活性剤を除去する工程、及び
(e)任意に被覆されたグラフェンオキシド粒子を、不活性ガス雰囲気下において1分以上の間、500℃以上に加熱し、グラフェンオキシドをグラフェンに還元する工程、
(f)SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子、又はSiO
2被覆されたグラフェン粒子に、金属酸化物前駆体、金属前駆体化合物、及び炭素前駆体化合物から選択される一種以上の前駆体化合物を含浸させる工程、
(g)一種以上の前駆体化合物を、対応する金属酸化物、対応する金属、又は炭素に転化する工程、及び
(h)SiO
2をグラフェンオキシド粒子、又はグラフェン粒子から除去する工程、
を全て含む。
【0071】
工程(f)は、SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子、又はSiO
2被覆されたグラフェン粒子に、一種以上の金属酸化物前駆体、一種以上の金属前駆体化合物、及び/又は一種上の炭素前駆体化合物を含ませる工程を含む。各々の前駆体化合物は、元々界面活性剤分子により充填されていたSiO
2被覆内における空間/孔部に、最終的に充填される。
【0072】
一種以上の金属酸化物前駆体化合物、及び/又は一種以上の金属前駆体化合物は、好ましくは、金属ハロゲン化物、金属硝酸エステル、金属アルコキシド、金属硫酸エステル、金属炭酸塩、及び金属硫酸塩から選択される。一種以上の炭素前駆体化合物は、スクロース、グルコース、及びピッチから選択される。
【0073】
SiO
2被覆粒子は、当業者により公知の方法を用いて問題となっている種類の方法において含浸される。この方法は、例えば、湿潤含浸法である。この方法では、含浸されるべき多孔質材料が、対応する前駆体を過剰に含む溶液内で懸濁され、例えば1〜24時間の間に数回撹拌される。次いで、上述の前駆体を過剰に含む溶液が濾過により取り除かれる。他の好適な方法は、初期湿潤含浸法である。この方法では、含浸すべき多孔質材料を、対応する前駆体化合物の溶液と混合する。混合は、前駆体化合物の溶液の量が、多孔質材料における孔部の体積に相当するように行われる。上記方法において得られる懸濁液は、機械的に混合される。
【0074】
金属及び/又は金属酸化物前駆体化合物及び/又は炭素前駆体化合物用に有用な溶媒は、水及び/又はメタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコールを含む。含浸溶液における前駆体化合物の濃度は、通常、含浸溶液の全質量に対して10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%の範囲である。
【0075】
通常、前駆体化合物は被覆されていない粒子に対する前駆体化合物の質量比が0.1:1〜50:1、好ましくは0.5:1〜20:1、より好ましくは1:1〜10:1となるように使用される。
【0076】
含浸の後に、粒子は通常、分離され、任意に洗浄されて乾燥される。
【0077】
工程(g)は、高温下において含浸された粒子を処理する工程を含む。この処理により、特定の前駆体化合物が、所望の化合物に変換され得る。炭素前駆体化合物で含浸された粒子は、通常、不活性ガス雰囲気下において、600〜900℃、好ましくは650〜800℃、より好ましくは700〜800℃の範囲の温度まで加熱される。加熱時間は、1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。金属酸化物前駆体化合物を転化するために、含浸された粒子を、通常、酸素含有雰囲気下(例えば、空気)において200〜500℃の範囲の温度、好ましくは300〜400℃の範囲の温度まで加熱する。加熱時間は、通常、2〜10時間、好ましくは4〜8時間である。金属前駆体を転化するために、含浸され被覆された粒子は、通常、還元雰囲気下(例えば、水素の存在下)において、200〜600℃、好ましくは300〜500℃の範囲の温度まで加熱される。加熱時間は、通常、4〜10時間、好ましくは5〜8時間である。
【0078】
工程(h)において、水性水酸化ナトリウム溶液又はHF等に溶解させることで二酸化シリコンを除去する被覆された触媒を、例えば濃度の高い水性水酸化ナトリウム溶液内において、水性水酸化ナトリウム溶液を繰り返し交換しつつ室温で12〜24時間撹拌しても良い。工程(f)〜(h)に記載されている方法は、基本的に当業者により知られており、ナノキャスティングと呼ばれている。この方法についての記載は、例えば、「A. Rumplecker et al., Chem. Mater. 19 (2007),485ページ」にある。
【0079】
本発明の一つの実施の形態において、上記工程(f)、(g)、及び(h)は、独立して、単独で又は他と一緒になって1回以上相互に繰り返される。例えば、含浸工程は被覆粒子に対して前駆体化合物を多く含浸させるために、繰り返し実行しても良い。同様に、極めて完全に近い転化を実現できるように、一種以上の前駆体化合物の転化を繰り返し実行しても良い。工程(h)は、同様に、連続的に繰り返し実行しても良い。この場合、SiO
2用の溶媒として繰り返し同じ種類のものを用いても良いし、異なる種類のものを用いても良い。
【0080】
被覆粒子は、通常、乾燥状態において、70〜95質量%、好ましくは80〜95質量%、より好ましくは85〜90質量%のグラフェンオキシド又はグラフェンを含み、通常、5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%の、炭素、金属、及び/又は金属酸化物から選択された被覆物を含む。
【0081】
また、本発明は、上述の方法により得られる2次元サンドウィッチナノ材料を準備する。
【0082】
更に、本発明は、上述の方法により得られるサンドウィッチナノ材料を、他のナノ材料を製造するためのテンプレートとして使用する方法を提供する。この使用方法は、当業者にはナノキャスティングと呼ばれている上述の原理により生じるものである。ナノキャスティングにおいて、工程(a)の自己凝集する界面活性剤分子により形成された構造における「雄型」及び「雌型」が、各場合において製造される。従って、工程(c)において、SiO
2が被覆を形成し、次の界面活性剤分子が除去され、元々界面活性剤分子により充填されていた隙間/孔部が、炭素前駆体化合物等により充填される。次に、炭素前駆体化合物が、元々、界面活性剤分子により形成されていた3次元構造を有する炭素に転化される。そして、SiO
2は、炭素の微細構造を残すために除去される。そして、この炭素の微細構造は、同様に、金属酸化物前駆体化合物等の前駆体化合物により再度含浸され、酸素含有雰囲気下における加熱により炭素が除去され、元のSiO
2層の構造を有する金属酸化物層が残される。
【0083】
更に、本発明は、上述の方法により得られる二次元サンドウィッチナノ材料を、それぞれ上述の方法により得られる二次元サンドウィッチナノ材料を含む触媒、センサー、キャパシタ、1次及び2次電気化学セル、及び燃料電池に使用する方法を準備する。
【0084】
上述の方法により得られる二次元サンドウィッチナノ材料は、グラフェン粒子の製造のために使用しても良い。同様に、グラフェン粒子を製造するためのこの方法は、工程(a)〜(e)を含む上述の好ましい実施の形態で行うことができる。なお、この場合、工程(b)において一種以上のゾル前駆体化合物は、SiO
2前駆体化合物から選択される。工程(a)が、(a1)の混合物を準備する場合、工程(e)を、グラフェンオキシド粒子をグラフェン粒子に転化するために実行する。そして、工程(e)の後、工程(f)(グラフェンオキシド粒子からのSiO
2の除去)を実行する。特に、本発明の実施の形態は、
(a)
(a1)グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、又は
(a2)グラフェン粒子、グラファイトの溶液剥離に有用な一種以上の溶媒、並びに一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、
を準備する工程、
(b)一種以上のゾル前駆体化合物を工程(a)からの混合物に添加する工程、
(c)工程(b)からの混合物をゾル/ゲル法により反応させ、グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子にゲルを形成する工程、
(d)一種以上の界面活性剤を除去する工程、及び
(e)任意に被覆されたグラフェンオキシド粒子を、不活性ガス雰囲気下において1分以上の間、500℃以上に加熱し、グラフェンオキシドをグラフェンに還元する工程、及び
(g)SiO
2を除去する工程、
を含む。
【0085】
ここでは特に、グラフェンオキシドからグラフェン粒子を製造することが好ましい。対応する方法は、
(a)
(a1)グラフェンオキシド粒子、水、及び一種以上の陽イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む混合物、
(b)一種以上のゾル前駆体化合物を工程(a)からの混合物に添加する工程、
(c)工程(b)からの混合物をゾル/ゲル法により反応させ、グラフェンオキシド粒子又はグラフェン粒子にゲルを形成する工程、
(d)一種以上の界面活性剤を除去する工程、及び
(e)任意に被覆されたグラフェンオキシド粒子を、不活性ガス雰囲気下において1分以上の間、500℃以上に加熱し、グラフェンオキシドをグラフェンに還元する工程、及び
(f)SiO
2を除去する工程、
を含む。
【0086】
また、本発明は、上述の方法により得られる2次元サンドウィッチナノ材料を、グラフェン粒子の製造のために使用する方法を含む。
【0087】
本発明の実施の形態は、実施例により、より詳細に説明される。
【0088】
実施例1:SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子の製造
Hummer法(Hummers, W.S. & Offeman, R.E.; J. Am. Chem. Soc. 80 (1958),1339〜1139ページ)により、グラフェンオキシドをグラファイトフレークから製造した。そして、先ず、合成された30mgのグラファイトオキシドを、500mlの脱塩水中に1gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド及び40mgのNaOHを含む水性溶液内に懸濁し、これを3時間、超音波処理した。続いて、磁気撹拌棒を用いて懸濁液を40℃で2時間撹拌し、この懸濁液に1mlのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をゆっくりと添加した。得られた混合物を12時間反応させ、続いて、SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子を、加熱されたエタノールで洗浄し、80℃で6時間の間、分離及び乾燥処理を行った。
【0089】
電界放射電子顕微鏡法による電子顕微鏡検査、及び透過型電子顕微鏡により、粒子が200nm〜数μmの大きさを有し、2nmサイズのメソポーラス構造を有することが明らかになった。自由シリカ粒子又は被覆されていないグラフェンオキシド粒子は見られなかった。このことは、予測どおり、界面活性剤分子が。静電気相互作用によりグラフェンオキシド粒子の表面に吸着されていることを示しており、これにより、グラフェンオキシドの表面におけるオルトケイ酸テトラエチルの不均一な核生成が、溶液内で均一な核生成となった。平面状の粒子の主平面に対して直交する方向の粒子厚さを、原子間力顕微鏡法による分析により測定した。測定の結果、当該厚さは、ほぼ28±1nmであった。
【0090】
実施例2:SiO
2被覆されたグラフェンオキシド粒子からのSiO
2被覆されたグラフェン粒子の製造
実施例1のとおりに製造された、メソポーラスSiO
2で被覆されたグラフェンオキシド粒子を、アルゴン雰囲気下において800℃で3時間熱分解処理した。これにより、粒子はSiO
2被覆により保護されているので、粒子を凝集させなくとも、グラフェンオキシドがグラフェンに効率的に還元される。SiO
2被覆されたグラフェン粒子のモルフォロジー及び構造は、熱処理の間でも安定しており、メソポーラス構造は熱分解の間でも損なわれない。このことは、電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡による検査で示された。実施例2により得られたSiO
2被覆されたグラフェン粒子を、窒素吸着法により検査すると、均一なメソポーラスの特徴である窒素吸着等温線のIV型を示すことがわかった。ポアのサイズ分布を、Barrett−Joyner−Halenda法にしたがい2nmと計算した。吸着データにより、980m
2g
-1という非常に高い比表面積が示された。この比表面積の値は、従来製造されていたメソポーラス二酸化シリコンと比較してかなり大きな値である。
【0091】
実施例3:メソポーラス炭素で被覆されたグラフェン粒子の製造
実施例2のSiO
2被覆されたグラフェン粒子に対して、エタノールのスクロース溶液を繰り返し含浸させた。含浸は、40℃で撹拌することにより行った。含浸による最終生成物において、SiO
2被覆されたグラフェン粒子に対するスクロースの比は、2:1に固定された。次に、スクロース含有粒子を乾燥して、アルゴン雰囲気中において700℃で3時間熱分解させた。次に、得られた粒子から水性NaOH溶液においてSiO
2を除去し、メソポーラス炭素により被覆されたグラフェン粒子を得た。
【0092】
電界放射電子顕微鏡法による炭素被覆粒子の検査により、炭素層が、テンプレートとして使用されたSiO
2被覆グラフェン粒子と同一のサイズを有し、単分散性の高い構造を有することが明らかとなった。X線検査により被覆中の炭素がその構造中にアモルファス形態で存在することがわかった。窒素吸着法により吸着及び脱着の検査を行ったことにより、910m
2g
-1の比表面積(Brunauer−Emmett−Teller式にしたがう)を示すことがわかった。粒子はIV型等温線を示し、したがって、炭素被覆グラフェン粒子中に多数のメソポーラス及びマイクロポーラスの存在が示唆されている。
【0093】
実施例4:Co
3O
4で被覆されたグラフェン粒子の製造
実施例2のSiO
2被覆されたグラフェン粒子に対して、エタノールの硝酸コバルト溶液を繰り返し含浸させた。含浸は、40℃で撹拌することにより行った。含浸において、SiO
2被覆されたグラフェン粒子に対する硝酸コバルトの比は、2.3:1であった。硝酸コバルトにより含浸された粒子を、空気中において350℃で5時間加熱した。次に、得られた粒子から水性NaOH溶液においてSiO
2を除去した。メソポーラス炭素により被覆されたグラフェン粒子を得た。高分解能透過電子顕微鏡により、Co
3O
4がメソポーラス構造を有するが、結晶構造であることがわかった。
【0094】
実施例5:リチウムイオン二次電池における炭素被覆グラフェン粒子の使用
電気化学的試験を2032個のボタン電池で実行した。実施例3の炭素被覆グラフェン粒子、カーボンブラック(Super−P)、及びポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)を、80:10:10の質量比で混合し、該混合物を銅箔(99.6%、Goodfellow社製)にはけ塗りすることで作用電極を製造した。対向電極としてリチウム箔を使用した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)(体積比1:1,industries Ltd)中にLiPF
6の単極溶液(unimolar solution)から成る。電池を、アルゴンが充填されたグルーブボックス内で組み立てた。このグルーブボックス内では、水分及び酸素の濃度は、ともに1ppm未満であった。0.01〜3.00Vの電圧範囲において種々の充電/放電レートで電気化学的出力を測定した。結果を表1及び2に示す。