(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料台と第1の対物レンズ又は前記第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズとの間の相対距離を変化させて前記試料の表面に焦点を合わせる合焦手段と、
前記第1の対物レンズ又は前記第2の対物レンズを介して前記試料の表面を撮像する撮像手段と、
前記第2の対物レンズを介して前記撮像手段で撮像された前記試料の表面の画像情報に基づいて、前記くぼみを形成させる複数の試験位置を設定する試験位置設定手段と、
前記試料の表面を複数の所定の範囲に分割し、前記所定の範囲毎に前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置のうち前記所定の範囲に含まれるものについて所定の試験位置を抽出し、前記第1の対物レンズを介して前記抽出された所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を前記所定の範囲内の全ての試験位置と対応付けて記憶手段に記憶させる合焦位置記憶制御手段と、
前記圧子により前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に前記くぼみを形成させるくぼみ付け手段と、
前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に対応付けられた合焦位置を前記記憶手段から取得し、取得した合焦位置及び当該合焦位置と対応する試験位置に基づいて前記試料を移動させた後、前記くぼみ付け手段により形成されたくぼみを、前記第1の対物レンズを介して前記撮像手段により撮像させる撮像制御手段と、
前記撮像制御手段の制御により撮像されたくぼみに基づいて前記試料の硬さを測定する測定手段と、
を備えることを特徴とする硬さ試験機。
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、前記試料台と前記第1の対物レンズとの間の相対距離を変化させて前記試料の表面に焦点を合わせる合焦工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズを配置させ、撮像手段により前記試料の表面を撮像させる第1の撮像工程と、
前記第1の撮像工程で撮像された前記試料の表面の画像情報に基づいて、前記くぼみを形成させる複数の試験位置を設定する試験位置設定工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、前記試料の表面を複数の所定の範囲に分割し、前記所定の範囲毎に前記試験位置設定工程で設定された複数の試験位置のうち前記所定の範囲に含まれるものについて所定の試験位置を抽出し、前記第1の対物レンズを介して前記抽出された所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を前記所定の範囲内の全ての試験位置と対応付けて記憶手段に記憶させる合焦位置記憶制御工程と、
前記試料の上方に前記圧子を配置させ、前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に前記くぼみを形成させるくぼみ付け工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に対応付けられた合焦位置を前記記憶手段から取得し、取得した合焦位置及び当該合焦位置と対応する試験位置に基づいて前記試料を移動させた後、前記撮像手段により前記くぼみ付け工程で形成されたくぼみを撮像させる第2の撮像工程と、
前記第2の撮像工程で撮像されたくぼみに基づいて前記試料の硬さを測定する測定工程と、
を含む硬さ試験方法。
【背景技術】
【0002】
従来、ブリネル硬さ試験機、ビッカース硬さ試験機、ヌープ硬さ試験機等の各種硬さ試験機においては、試料の表面に形成されたくぼみの寸法に基づいて試料の硬さが測定される。
例えば、ビッカース硬さ試験機では、先端が四角錘状の圧子を試料の表面に押し込んで、試料に形成されたくぼみの対角線の長さを光学顕微鏡等で計測し、この計測したくぼみの対角線の長さに基づいて硬さを算出する。そして、上記くぼみの寸法を計測するにあたっては、計測誤差を生じさせないために、くぼみが形成された試料の表面に対する焦点合わせを行う必要がある。
【0003】
上記焦点合わせを行う硬さ試験機として、例えば、くぼみが形成された試料における複数の焦点調整位置を指定し、指定された焦点調整位置に合焦するように撮像部を操作してくぼみを撮像し、指定された焦点調整位置におけるくぼみの合焦度合いを算出してモニタに表示させることで、好適に焦点調整を行うことができるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の硬さ試験機では、試験位置のプログラミングの際に、試料Sのどの位置に硬さ試験を実施するかを確認すべく試料Sの広範囲の画像を取得する必要があり、例えば、
図6に示すように、試料Sを水平方向に移動させて撮像した複数の画像A1〜A9を張り合わせることで、広範囲画像G1が取得される。そして、取得された広範囲画像G1を利用して、硬さ試験が実施される。
【0005】
ここで、
図8のフローチャート及び
図9の硬さ試験機の試験機本体20を示す模式図を参照して、従来の硬さ試験機における広範囲画像G1取得後の処理について説明する。
まず、取得された広範囲画像G1に対し、試験パターンの設定が行われる(ステップS101)。ここで、試験パターンの設定とは、試験条件、試験開始点、行・列数、ピッチ等を設定することである。試験パターンが設定されることにより、
図6に示すように、試験位置P1、P2、…のプログラミングが行われる。
【0006】
試験パターンの設定が行われると、自動的に硬さ試験が開始され、圧子14aと対向する位置に所定の試験位置(初回は試験開始点)が配されるように試料S(試料台2)を移動させ(ステップS102)、当該試験位置に対してくぼみ付けが行われる(ステップS103)。
【0007】
次に、設定された全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われたか否かが判定される(ステップS104)。全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われていない、即ち、くぼみ付けが行われていない試験位置が一つでもあると判定された場合(ステップS104;NO)は、ステップS102へと移行し、圧子14aと対向する位置に次の試験位置が配されるように試料Sを移動させる。一方、全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われたと判定された場合(ステップS104;YES)は、くぼみ読取用の対物レンズ15と対向する位置に所定の読取位置(くぼみ付けが行われた位置)が配されるように試料Sを移動させ(ステップS105)、当該読取位置において焦点を合わせるためのオートフォーカス処理が行われる(ステップS106)。
【0008】
オートフォーカス処理が行われると、読取位置においてくぼみが読み取られ、当該読み取られたくぼみの寸法に基づいて試料Sの硬さ値が算出される(ステップS107)。
【0009】
最後に、全ての読取位置においてくぼみが読み取られたか否かが判定される(ステップS108)。全ての読取位置においてくぼみが読み取られていない、即ち、くぼみが読み取られていない読取位置が一つでもあると判定された場合(ステップS108;NO)は、ステップS105へと移行し、圧子14aと対向する位置に次の読取位置が配されるように試料Sを移動させる。一方、全ての読取位置においてくぼみが読み取られたと判定された場合(ステップS108;YES)は、当該処理を終了する。
【0010】
このように、従来の硬さ試験機では、広範囲画像G1を取得し、取得した広範囲画像G1を利用して試験位置をプログラミングすることで、硬さ試験が実施されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の硬さ試験機では、広範囲画像G1を取得する際に、低倍の対物レンズを用いて高視野の画像(例えば、
図6のA1〜A9)を取得することとなるが、低倍の対物レンズの場合、焦点深度C1が深いという特徴があり、例えば、
図9に示すように、焦点深度C1がくぼみ付けの際の試料Sの高さの許容範囲W1を超えてしまうことがあるため、試料Sの高さの許容範囲W1を超えた位置で位置決めされてしまう虞がある。そして、この状態でくぼみ付けが行われると、くぼみ読取時に測定の誤差が生じるという不具合を生じてしまう。
【0013】
一方、高倍の対物レンズを利用して画像を取得する場合、低倍の対物レンズに比べて焦点深度が浅く、焦点深度が試料Sの高さの許容範囲W1を超えることがないため、試料Sの高さの位置決め精度が高いという利点はあるが、
図6に示すように、取得される画像B1の視野が狭いため、広範囲画像G1を取得するのに非常に多くの画像を取得する必要があり、大変な手間が掛かってしまう。
【0014】
本発明は、試料を適切な高さに位置決めすることが可能であり、且つ硬さ試験の実施時間を短縮することが可能な硬さ試験機、及び硬さ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料台と第1の対物レンズ又は前記第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズとの間の相対距離を変化させて前記試料の表面に焦点を合わせる合焦手段と、
前記第1の対物レンズ又は前記第2の対物レンズを介して前記試料の表面を撮像する撮像手段と、
前記第2の対物レンズを介して前記撮像手段で撮像された前記試料の表面の画像情報に基づいて、前記くぼみを形成させる
複数の試験位置を設定する試験位置設定手段と、
前記試料の表面を複数の所定の範囲に分割し、前記所定の範囲毎に前記試験位置設定手段で設定された複数の試験位置のうち前記所定の範囲に含まれるものについて所定の試験位置を抽出し、前記第1の対物レンズを介して前記抽出された所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を
前記所定の範囲内の
全ての試験位置と対応付けて記憶手段に記憶させる合焦位置記憶制御手段と、
前記圧子により前記
試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に前記くぼみを形成させるくぼみ付け手段と、
前記
試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に対応付けられた合焦位置を前記記憶手段から取得し、取得した合焦位置及び
当該合焦位置と対応する試験位置に基づいて前記試料を移動させた後、前記くぼみ付け手段により形成されたくぼみを、前記第1の対物レンズを介して前記撮像手段により撮像させる撮像制御手段と、
前記撮像制御手段の制御により撮像されたくぼみに基づいて前記試料の硬さを測定する測定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記第1の対物レンズは、倍率が20倍以上のレンズであり、
前記第2の対物レンズは、倍率が5倍以下のレンズであることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、前記試料台と前記第1の対物レンズとの間の相対距離を変化させて前記試料の表面に焦点を合わせる合焦工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズを配置させ、撮像手段により前記試料の表面を撮像させる第1の撮像工程と、
前記第1の撮像工程で撮像された前記試料の表面の画像情報に基づいて、前記くぼみを形成させる
複数の試験位置を設定する試験位置設定工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、
前記試料の表面を複数の所定の範囲に分割し、前記所定の範囲毎に前記試験位置設定工程
で設定された複数の試験位置のうち前記所定の範囲に含まれるものについて所定の試験位置を抽出し、前記第1の対物レンズを介して前記抽出された所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を
前記所定の範囲内の
全ての試験位置と対応付けて記憶手段に記憶させる合焦位置記憶制御工程と、
前記試料の上方に前記圧子を配置させ、前記
試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に前記くぼみを形成させるくぼみ付け工程と、
前記試料の上方に第1の対物レンズを配置させ、前記
試験位置設定手段で設定された複数の試験位置に対応付けられた合焦位置を前記記憶手段から取得し、取得した合焦位置及び
当該合焦位置と対応する試験位置に基づいて前記試料を移動させた後、前記撮像手段により前記くぼみ付け工程で形成されたくぼみを撮像させる第2の撮像工程と、
前記第2の撮像工程で撮像されたくぼみに基づいて前記試料の硬さを測定する測定工程と、
を含む硬さ試験方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、くぼみを形成させる前の段階で試験位置に対応する高さ情報(合焦位置)を取得することができ、くぼみ形成時及びくぼみ読取時にオートフォーカス処理を行うことなく試料を適切な高さに位置決めすることができるので、硬さ試験の実施時間を短縮することができるとともに、くぼみ読取時に測定の誤差が生じるという不具合を生じさせることはない。また、試料の広範囲画像を取得する際は、低倍の第2対物レンズを利用することができるので、高倍の第1対物レンズを使用した場合に比べて多くの画像を取得する必要はなく、硬さ試験の実施時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、
図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0021】
硬さ試験機100は、例えば、ビッカース硬さ試験機であり、
図1、
図2に示すように、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニタ8等を備えている。
【0022】
試験機本体10は、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5等を備えている。
【0023】
硬さ測定部1は、例えば、
図3に示すように、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子14aを備える圧子軸14と対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16等により構成されている。
【0024】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものであり、照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0025】
CCDカメラ12は、例えば、
図3又は
図4に示すように、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、当該試料Sの表面や圧子14aにより試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得し、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバ17を介して、制御部6に出力する。
これにより、CCDカメラ12は、撮像手段として機能する。
【0026】
圧子軸14は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により、試料台2に載置された試料Sに向け移動され、先端部に備えた圧子14aを試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。
【0027】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであり、ターレット16の下面に複数保持されており、ターレット16の回転により試料Sの上方に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
具体的には、対物レンズ15は、高倍対物レンズ(第1の対物レンズ)15aと、高倍対物レンズ15aよりも倍率の低い低倍対物レンズ(第2の対物レンズ)15bと、を備えて構成されている。高倍対物レンズ15aは、具体的には、倍率が20倍以上のレンズであることが好ましい。倍率が20倍以上のレンズであれば、焦点深度が浅く、焦点深度がくぼみ付けの際の試料Sの高さの許容範囲を超えることがないため、試料Sの高さの位置決め精度を高めることができる。一方、低倍対物レンズ15bは、具体的には、倍率が5倍以下のレンズであることが好ましい。倍率が5倍以下のレンズであれば、高視野の画像を取得することができるため、広範囲画像G1を容易に取得することができる。
【0028】
ターレット16は、下面に圧子軸14と複数の対物レンズ15(高倍対物レンズ15a、低倍対物レンズ15b)を取り付け、Z軸方向を中心に回転することにより、当該圧子軸14と複数の対物レンズ15の中の何れか一つを切り替えて試料Sの上方に配置可能なように構成されている。つまり、圧子軸14を試料Sの上方に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成し、対物レンズ15を試料Sの上方に配置することで、当該形成されたくぼみを観察することが可能となる。
【0029】
試料台2は、上面に載置される試料Sを試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子14aの移動方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸,Y軸方向)に移動させる。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させ、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を上下方向に移動させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
この昇降機構部5及びAFステージ4により、合焦手段が構成される。
【0030】
操作部7は、キーボード71、マウス72等により構成されており、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を実行させる。そして、操作部7により所定の入力操作がなされると、その入力操作に応じた所定の操作信号が制御部6に出力される。
【0031】
具体的には、操作部7は、上記キーボード71やマウス72等を介して、くぼみの合焦位置を決定する条件をユーザに選択させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、試料台2(昇降機構部5及びAFステージ4)の移動する範囲(試料台2と対物レンズ15との間の相対距離の範囲)を指定させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、当該硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力させることができる。そして、入力された試験条件値は制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
また、操作部7は、ユーザに、くぼみの合焦位置の決定を手動で行う手動モード、あるいは自動で行う自動モードの何れかを選択させることができる。
【0032】
モニタ8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されており、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、CCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
【0033】
制御部6は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、記憶部63等を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0034】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
【0035】
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0036】
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。より具体的には、記憶部63は、例えば、XYステージ制御プログラム、オートフォーカスプログラム、硬さ測定部制御プログラム等を格納している。
【0037】
CPU61は、記憶部63内に格納されたXYステージ制御プログラムを実行することにより、試料Sの表面の所定領域がCCDカメラ12の真下に位置するようにXYステージ3を移動させる。
また、CPU61は、記憶部63内に格納されたオートフォーカスプログラムを実行することにより、硬さ測定部1のCCDカメラ12によって得られる画像情報に基づいて、AFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対するオートフォーカスを行う。
また、CPU61は、記憶部63内に格納された硬さ測定部制御プログラムを実行することにより、圧子14aを所定の試験力で試料Sの表面に押し付けてくぼみを形成したり、CCDカメラ12によって生成される試料Sの表面の画像情報に基づいてくぼみの対角線長さを計測したりするとともに、計測したくぼみの対角線長さに基づいて試料Sの硬さを算出する。
また、CPU61は、CCDカメラ12によって生成した試料Sの表面の画像情報や、硬さ測定部制御プログラムの実行により算出された試料Sの硬さの算出結果等をモニタ8に表示させる。
【0038】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。この処理は、CPU61が記憶部63に格納されているプログラムを実行することにより実現される。
【0039】
まず、CPU61は、高倍対物レンズ15aを用いて試料Sの表面に焦点を合わせる(ステップS1:合焦工程)。具体的には、高倍対物レンズ15aを介してCCDカメラ12に撮像された画像データに基づいて、昇降機構部5及びAFステージ4(合焦手段)を制御して試料台2を微細に昇降させ、試料Sの表面の任意の位置に対してオートフォーカスを行い、試料Sの高さの位置決めを行う。
【0040】
次に、CPU61は、低倍対物レンズ15bを用いて試料Sの広範囲画像G1を取得させる(ステップS2:第1の撮像工程)。具体的には、
図6に示すように、試料Sを水平方向に移動させて低倍対物レンズ15bを介してCCDカメラ12により撮像した複数の画像A1〜A9を張り合わせることで、広範囲画像G1を取得させる。
【0041】
次に、CPU61は、取得された広範囲画像G1に対し、試験パターンの設定を行う(ステップS3:試験位置設定工程)。ここで、試験パターンの設定とは、試験条件(例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率等)、試験開始点、行・列数、ピッチ等を設定することである。試験パターンを設定することにより、
図6に示すように、試験位置P1、P2、…のプログラミングが行われる。
即ち、CPU61は、低倍対物レンズ15bを介してCCDカメラ12で撮像された試料Sの表面の広範囲画像G1に基づいて、くぼみを形成させる試験位置P1、P2、…を設定する試験位置設定手段として機能する。
【0042】
次に、CPU61は、高倍対物レンズ15aを用いて所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定結果をデータベース化して記憶部63に記憶させる(ステップS4:合焦位置記憶制御工程)。具体的には、ステップS3で設定された試験位置のうち所定の範囲毎に一点(或いは数点)ずつピックアップし、当該ピックアップされた試験位置においてオートフォーカスを行い、合焦した試料Sの高さを合焦位置として測定し、測定された合焦位置を当該所定の範囲内の試験位置と対応付けて記憶部63に記憶させる。例えば、
図7に示すように、所定の範囲(例えば、試験位置P1〜P4を含む範囲)において一点(例えば、試験位置P1)ピックアップし、当該ピックアップされた試験位置P1の合焦位置Z1を当該所定の範囲内の試験位置P1〜P4と対応付けて記憶部63に記憶させる。
即ち、CPU61は、高倍対物レンズ15aを介して、ステップS3で設定された試験位置のうち所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を所定の範囲内の試験位置と対応付けて記憶部63に記憶させる合焦位置記憶手段として機能する。
ここで、所定の範囲毎に一点(或いは数点)ずつピックアップするのは、所定の範囲、即ち、試験位置毎の合焦位置に実質的な差異がみられない範囲においては当該所定の範囲内の全ての試験位置の合焦位置を測定する必要がないからであり、上記のように合焦位置の測定を間引くことにより硬さ試験の実施時間を短縮することができるからである。
【0043】
次に、CPU61は、圧子14aと対向する位置に所定の試験位置(初回は試験開始点)が配されるように試料S(試料台2)を移動させる(ステップS5)。また、ステップS4で当該試験位置に対応する合焦位置が測定されているので、試料Sの高さを当該合焦位置に移動させる。そして、CPU61は、当該試験位置に対して圧子14aによりくぼみを形成させる(ステップS6:くぼみ付け工程)。
即ち、CPU61は、圧子14aにより試験位置にくぼみを形成させるくぼみ付け手段として機能する。
【0044】
次に、CPU61は、設定された全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われたか否かを判定する(ステップS7)。全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われていない、即ち、くぼみ付けが行われていない試験位置が一つでもあると判定した場合(ステップS7;NO)は、ステップS5へと移行し、圧子14aと対向する位置に次の試験位置が配されるように試料Sを移動させる。一方、全ての試験位置に対してくぼみ付けが行われたと判定した場合(ステップS7;YES)は、次のステップS8へと移行する。
【0045】
次に、CPU61は、くぼみ読取用の高倍対物レンズ15aと対向する位置に所定の読取位置(くぼみ付けが行われた位置)が配されるように試料Sを移動させる(ステップS8)。また、ステップS4で当該読取位置に対応する合焦位置が測定されているので、当該合焦位置を記憶部63から取得し、試料Sの高さを当該合焦位置に移動させる。
【0046】
次に、CPU61は、読取位置においてくぼみを読み取り、当該読み取られたくぼみの寸法に基づいて試料Sの硬さ値を算出する(ステップS9:第2の撮像工程、測定工程)。具体的には、高倍対物レンズ15aを介してCCDカメラ12によりくぼみを撮像し、撮像されたくぼみの画像データに基づいてくぼみの対角線の長さを測定し、当該対角線の長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。
即ち、CPU61は、読取位置(試験位置及び合焦位置)に基づいて試料Sを移動させた後、ステップS6で形成されたくぼみを、高倍対物レンズ15aを介してCCDカメラ12により撮像させる撮像制御手段、及びステップS9で撮像されたくぼみに基づいて前記試料の硬さを測定する測定手段として機能する。
【0047】
次に、CPU61は、全ての読取位置においてくぼみが読み取られたか否かを判定する(ステップS10)。全ての読取位置においてくぼみが読み取られていない、即ち、くぼみが読み取られていない読取位置が一つでもあると判定した場合(ステップS10;NO)は、ステップS8へと移行し、圧子14aと対向する位置に次の読取位置が配されるように試料Sを移動させる。一方、全ての読取位置においてくぼみが読み取られたと判定しれた場合(ステップS10;YES)は、当該処理を終了する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機100は、試料台2と高倍対物レンズ15a又は高倍対物レンズ15aよりも倍率の低い低倍対物レンズ15bとの間の相対距離を変化させて試料Sの表面に焦点を合わせる合焦手段(昇降機構部5及びAFステージ4)と、高倍対物レンズ15a又は低倍対物レンズ15bを介して試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、低倍対物レンズ15bを介してCCDカメラ12で撮像された試料Sの表面の画像情報(広範囲画像G1)に基づいて、くぼみを形成させる試験位置P1、P2、…を設定する試験位置設定手段(CPU61)と、高倍対物レンズ15aを介して、試験位置設定手段で設定された試験位置P1、P2、…のうち所定の試験位置で合焦位置を測定し、当該測定された合焦位置を所定の範囲内の試験位置と対応付けて記憶部63に記憶させる合焦位置記憶手段(CPU61)と、圧子14aにより試験位置P1、P2、…にくぼみを形成させるくぼみ付け手段(CPU61)と、試験位置P1、P2、…に対応付けられた合焦位置を記憶部63から取得し、取得した合焦位置及び試験位置P1、P2、…に基づいて試料Sを移動させた後、くぼみ付け手段により形成されたくぼみを、高倍対物レンズ15aを介してCCDカメラ12により撮像させる撮像制御手段(CPU61)と、撮像制御手段の制御により撮像されたくぼみに基づいて試料Sの硬さを測定する測定手段(CPU61)と、を備える。
このため、くぼみを形成させる前の段階で試験位置に対応する高さ情報(合焦位置)を取得することができ、くぼみ形成時及びくぼみ読取時にオートフォーカス処理を行うことなく試料Sを適切な高さに位置決めすることができるので、硬さ試験の実施時間を短縮することができるとともに、くぼみ読取時に測定の誤差が生じるという不具合を生じさせることはない。また、試料Sの広範囲画像G1を取得する際は、高視野の低倍対物レンズ15bを利用することができるので、多くの画像を取得する必要はなく、硬さ試験の実施時間を短縮することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、高倍対物レンズ15aは、倍率が20倍以上のレンズであるので、焦点深度が浅く、焦点深度がくぼみ付けの際の試料Sの高さの許容範囲を超えることがなくなり、試料Sの高さの位置決め精度を高めることができる。また、低倍対物レンズ15bは、倍率が5倍以下のレンズであるので、高視野の画像を取得することができることとなって、広範囲画像G1を容易に取得することができる。
【0050】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、
図5のステップS8で高倍対物レンズ15aと対向する位置に所定の読取位置が配されるように試料Sを移動させ、試料Sの高さを当該合焦位置に移動させた後、オートフォーカス処理を行うことなくくぼみの読み取り動作を行うようにしているが、これに限定されるものではない。上記実施形態では、全ての試験位置において合焦位置を測定しているわけではないため、試料Sの高さを合焦位置に移動させたとしても、試験位置によっては合焦の度合いが低い場合も考えられる。このような場合を想定して、くぼみ読み取り時の合焦度合いを算出するようにし、合焦度合いが低いと判定された場合に、オートフォーカス処理を行わせるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、2つの対物レンズ15(高倍対物レンズ15a、低倍対物レンズ15b)を備える構成を例示して説明したが、これに限定されるものではない。本発明では、少なくとも倍率の異なる2つの対物レンズ15が備わっていればよく、例えば、高倍対物レンズ15a、低倍対物レンズ15bに加えて、中倍対物レンズを備えるようにしてもよい。
【0053】
その他、硬さ試験機100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。