(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リニア正温度係数素子の温度係数値を、過電流保護の対象が有する温度特性と略等しくなるように選択することにより、前記過電流保護特性の温度依存性が補償されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用電源供給装置。
前記バックアップ制御回路は、前記ゲートドライバICの停止により起動させる前記IPS回路の前記異常検出部で使用される過電流保護特性を、電線限界過電流特性をカバーするように調整し、
前記異常検出部は、前記調整された過電流保護特性に基づいて前記遮断閾値を決定する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の車両用電源供給装置。
前記IPS回路は、過熱保護手段を有して前記過電流保護回路に具備される前記半導体スイッチの近傍に配置され、いずれかの前記IPS回路の前記過熱保護手段が過熱を検出すると、当該のIPS回路、又は当該のIPS回路を含む一部の前記IPS回路、またはすべての前記IPS回路を停止させる
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車両用電源供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、温度センサーが必要となるだけでなく、CPUを用いて制御するため、ADコンバータやメモリ等も必要になり、回路構成が複雑になってサイズが大きくなりコスト高となってしまう。また、CPU演算による制御のため、制御サイクルやサンプリングレート等の影響を受け、リアルタイム性が低下してしまうといった問題もある。
【0009】
また特許文献2の従来技術では、検出抵抗値がセンス抵抗のMOSFETによるため、自由度が低く抵抗値も小さくなる。その結果、入出力電流値が大きくなって回路を損失させるおそれがある。また、温度特性に基づいて過電流保護の設定値を変更することはできない。
【0010】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で温度特性の調整が容易な電流検出手段を備えるとともに、電流保護特性を調整可能として冗長的な電力供給が可能な車両用電源供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の車両用電源供給装置の第1の態様は、車両に搭載されたバッテリから負荷への電力供給をオン/オフする半導体スイッチと、前記半導体スイッチを流れる負荷電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部から前記負荷電流に相当するセンス電圧を入力して所定の遮断閾値と比較し、前記センス電圧が前記遮断閾値を超えているときに異常検出信号を出力する異常検出部と、前記半導体スイッチをオンまたはオフに駆動させるスイッチ駆動部と、所定の操作スイッチからの操作信号に従って前記半導体スイッチをオンまたはオフに駆動させるための制御信号を前記スイッチ駆動部に出力するとともに、前記異常検出部から前記異常検出信号を入力すると前記半導体スイッチをオフに駆動させるための制御信号を前記スイッチ駆動部に出力する制御部と、を具備する過電流保護回路を2以上備え、前記2以上の過電流保護回路のそれぞれの前記電流検出部と、前記異常検出部と、前記スイッチ駆動部と、前記制御部と、が1つのゲートドライバIC上に形成され、さらに、前記半導体スイッチと、前記電流検出部と、前記異常検出部と、前記スイッチ駆動部と、前記制御部と、を具備するIPS(Intelligent Power Switch)回路を2以上備え、前記
電流検出部が、前記半導体スイッチに近接させて配置されたリニア正温度係数素子を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記半導体スイッチは、発生した熱を外部に放熱させるための放熱パターンを有し、前記リニア正温度係数素子が前記
放熱パターン上に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記放熱パターンは、前記リニア正温度係数素子が配置された位置からの放熱が抑制される形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記異常検出部で使用される前記遮断閾値は、所定の過電流保護特性に基づいて決定されており、前記過電流保護特性の温度依存性が補償されるように、前記リニア正温度係数素子の温度係数値が選択されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記リニア正温度係数素子の温度係数値を、過電流保護の対象が有する温度特性と略等しくなるように選択することにより、前記過電流保護特性の温度依存性が補償されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記2以上のIPS回路に接続されたバックアップ制御回路を備え、前記ゲートドライバICは、過熱を検出すると該ゲートドライバICを停止させるIC過熱検出部と、故障を検出すると該ゲートドライバICを停止させる自己診断部と、を具備し、前記IC過熱検出部または前記自己診断部の作動により前記ゲートドライバICが停止すると、前記バックアップ制御回路は、所定の前記IPS回路を起動させて該IPS回路の前記半導体スイッチをオンにすることを特徴とする。
【0017】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記バックアップ制御回路は、前記操作スイッチから前記操作信号を入力し、該操作信号がオンとなっている前記半導体スイッチを具備する前記IPS回路を起動させることを特徴とする。
【0018】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記バックアップ制御回路は、前記ゲートドライバICの停止により起動させる前記IPS回路の前記異常検出部で使用される過電流保護特性を、電線限界過電流特性をカバーするように調整し、前記異常検出部は、前記調整された過電流保護特性に基づいて前記遮断閾値を決定することを特徴とする。
【0019】
本発明の車両用電源供給装置の他の態様は、前記IPS回路は、過熱保護手段を有して前記過電流保護回路に具備される前記半導体スイッチの近傍に配置され、いずれかの前記IPS回路の前記過熱保護手段が過熱を検出すると、当該のIPS回路、又は当該のIPS回路を含む一部の前記IPS回路、またはすべての前記IPS回路を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構成で温度特性の調整が容易な電流検出手段を備えるとともに、電流保護特性を調整可能として冗長的な電力供給が可能な車両用電源供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態における車両用電源供給装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る車両用電源供給装置を、
図1を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用電源供給装置について、その概略構成を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態の車両用電源供給装置100は、複数の過電流保護回路101と複数のIPS(Intelligent Power Switch)回路102を備えており、それぞれの回路はバッテリ10からそれぞれに接続された負荷20への電力供給をオン/オフするためのスイッチ110を有している。スイッチ110には、半導体スイッチが用いられている。以下では、過電流保護回路101に設けられた半導体スイッチ110とIPS回路102に設けられた半導体スイッチ110とを区別して説明するときは、前者をIC側半導体スイッチ110aとし後者をIPS側半導体スイッチ110bとする。
【0025】
過電流保護回路101は、IC側半導体スイッチ110aのオン/オフを制御するとともに、IC側半導体スイッチ110aの過電流を防止してこれを保護する機能を有している。過電流保護回路101は、IC側半導体スイッチ110a以外がゲートドライバIC103上に設けられている。ゲートドライバIC103は、複数の過電流保護回路101に加えて、バッテリ10と各負荷20とを接続する電源ラインの電線を保護するための電線保護部161と、自身の過熱を検出するためのIC加熱検出部162と、それ自身の故障等を検出するためのIC自己診断部163とを備えている。
【0026】
一方、IPS回路102は、ロジック制御が可能で自己保護機能や診断機能を持つことができるIPD(Intelligent Power Device)の1つである。また、本実施形態のIPS回路102は、それ自身の過熱等を検出して保護するIPS自己保護部171を有している。各IPS回路102は、ゲートドライバIC103が故障したときの処理を行うバックアップ制御回路104に接続されている。
【0027】
車両用電源供給装置100は、バッテリ10から車両に搭載されている複数の負荷20への電力供給を制御している。所定の負荷20に電力を供給するために運転者等が所定の操作スイッチ(図示せず)をオンに操作すると、車両用電源供給装置100では、操作スイッチからの操作信号30に従って、バッテリ10から所定の負荷20への電源ラインに設けられた半導体スイッチ110がオンに制御される。また、所定の負荷20への電力供給を停止するように操作スイッチ(図示せず)をオフに操作すると、操作スイッチからの操作信号30に従って所定の半導体スイッチ110がオフに制御される。
【0028】
次に、過電流保護回路101及びIPS回路102の詳細な構成を、
図2を用いて詳細に説明する。
図2(a)は、本実施形態の車両用電源供給装置100における過電流保護回路101の詳細な構成を示すブロック図であり、
図2(b)は、IPS回路102の詳細な構成を示すブロック図である。過電流保護回路101とIPS回路102は、IPS回路102がIPS自己保護部171を有している点を除いて、同じ構成を有している。
【0029】
過電流保護回路101及びIPS回路102は、半導体スイッチ110と、半導体スイッチ110を経由して負荷20に供給される負荷電流(Iload)を検出する電流検出部120と、半導体スイッチ110における過電流や過熱を検出する異常検出部130と、異常検出部130で異常が検出されると半導体スイッチ110をオフに制御させる制御部140と、半導体スイッチ110のオン/オフを制御するスイッチ駆動部150と、を備えている。また、スイッチ駆動部150には、半導体スイッチ110をオンにするのに必要な電圧まで昇圧させるチャージポンプ151が接続されている。
【0030】
半導体スイッチ110には、nチャネル形パワーMOSFETが用いられている。半導体スイッチ110のドレイン端子側111がバッテリ10に接続され、ソース端子側112が負荷20に接続されている。また、ゲート端子113は、スイッチ駆動部150を介してチャージポンプ151に接続されている。スイッチ駆動部150でチャージポンプ151からゲート端子113に所定の駆動電圧を出力させるように制御されると、半導体スイッチ110がオンになってバッテリ10から負荷20に負荷電流(Iload)が流れる。一方、チャージポンプ151からゲート端子113に駆動電圧が入力されなくなると、半導体スイッチ110がオン状態からオフ状態に切り換わり、負荷20への電力供給が停止される。
【0031】
電流検出部120は、温度補償回路121、差動増幅器122、Pチャネル形MOSFET123、及びI/V変換回路124を備えている。温度補償回路121は、温度によって抵抗値(Rs1とする)が変化する感温抵抗器で構成されており、一端(入力側)がバッテリ10に接続され他端(出力側)が差動増幅器122の反転入力端子に接続されている。また、差動増幅器122の非反転入力端子は、半導体スイッチ110と負荷20とを接続する電線に接続されている。さらに、差動増幅器122の出力端子はPチャネル形MOSFET123のゲート端子に接続されている。Pチャネル形MOSFET123のドレイン端子及びソース端子は、それぞれ温度補償回路121の出力側及びI/V変換回路124に接続されている。
【0032】
電流検出部120を上記のように構成することにより、半導体スイッチ110のソース端子側の電圧と温度補償回路121の出口側の電圧とが一致するように、Pチャネル形MOSFET123を流れる電流Isが調整される。半導体スイッチ110のドレイン端子及び温度補償回路121の入力側は、ともにバッテリ10に接続されていることから、電流Isは、半導体スイッチ110のドレイン・ソース間電圧Vdsと温度補償回路121の端子間電圧とが等しいときの電流値となる。すなわち、電流Isは、半導体スイッチ110に流れる負荷電流Iloadに比例する電流値を示し、その比例係数は半導体スイッチ110の抵抗値Rdsと温度補償回路121の抵抗値Rs1より与えられる。
【0033】
上記のように、Pチャネル形MOSFET123に流れる電流Isは負荷電流Iloadに比例することから、電流Isを用いて負荷電流Iloadを検出することができる。以下では、電流Isをセンス電流Isと称する。温度補償回路121の抵抗値Rs1が大きいほど、センス電流Isは小さくなる。センス電流Isは、I/V変換回路124で電圧に変換され、センス電圧Vsとして異常検出部130に出力される。
【0034】
異常検出部130は、比較器131を備えており、半導体スイッチ110における過電流や過熱を検出して保護する機能を有している。比較器131は2つの入力端子を有しており、一方の入力端子に電流検出部120からの出力であるセンス電圧Vsが入力され、他方の入力端子に所定の遮断閾値Vrefが入力される。この遮断閾値Vrefは、これに相当する電流値が半導体スイッチ110の過電流保護特性を満たすように設定される。
【0035】
比較器131は、センス電圧Vsと遮断閾値Vrefとを比較し、センス電圧Vsが遮断閾値Vrefより大きくなると、異常検出信号を制御部140に出力する。これにより、後述するように、当該の過電流保護回路101またはIPS回路102内の半導体スイッチ110が遮断される。
【0036】
制御部140は、外部の操作スイッチから入力する操作信号30に従って、スイッチ駆動部150に対して所定の制御信号を出力する。すなわち、操作スイッチから負荷20の起動を要求する操作信号を入力すると、スイッチ駆動部150に対し半導体スイッチ110をオンにさせる制御信号を出力する。また、操作スイッチから負荷20の停止を要求する操作信号30を入力すると、スイッチ駆動部150に対し半導体スイッチ110をオフにさせる制御信号を出力する。制御部140はまた、異常検出部130から異常検出信号を入力し、これをスイッチ駆動部150に出力している。異常検出信号は、通常は異常不検出の信号が出力されており、異常検出部130で異常が検出されると、異常検出の信号に切り替えられる。
【0037】
スイッチ駆動部150は、制御部140からスイッチ110をオフにさせる制御信号を入力しているときは、チャージポンプ151からの駆動電圧を半導体スイッチ110のゲート端子113に印加させない。これにより、半導体スイッチ110はオフの状態となり、バッテリ10から負荷20への電力供給が停止される。また、制御部140からスイッチ110をオンにさせる制御信号を入力し、かつ異常検出信号が異常不検出のときは、チャージポンプ151から半導体スイッチ110のゲート端子113に所定の駆動電圧を印加させる。これにより、半導体スイッチ110はオンの状態となり、バッテリ10から負荷20への電力供給が行われる。
【0038】
半導体スイッチ110がオンの状態にあるとき、制御部140から入力している異常検出信号が異常不検出から異常検出に切り替わると、制御部140から入力する制御信号がスイッチ110をオンにさせる信号であっても、半導体スイッチ110をオフの状態に切り替える。これにより、バッテリ10から負荷20への電力供給が停止される。
【0039】
上記構成の本実施形態の過電流保護回路101及びIPS回路102では、半導体スイッチ110の過電流や過熱を高精度に検出できるようにするために、半導体スイッチ110に流れる負荷電流Iloadが精度よく得られるようにすることが重要となる。そのためには、電流検出部120の温度補償回路121を流れるセンス電流Isと負荷電流Iloadとの関係がより正確に決定されている必要がある。センス電流Isと負荷電流Iloadとは、半導体スイッチ110の抵抗値Rdsと温度補償回路121の抵抗値Rs1とから決まる比例係数で比例する関係にある。
【0040】
しかしながら、抵抗値Rdsは半導体スイッチ110の温度の影響を受け、抵抗値Rs1は温度補償回路121の温度の影響を受ける。そのため、半導体スイッチ110と温度補償回路121のそれぞれの温度条件が異なると、上記の比例係数が変化してしまい、センス電流Isから負荷電流Iloadを精度良く求めることができなくなってしまう。そこで、半導体スイッチ110の温度条件と温度補償回路121の温度条件を同等にする、あるいは両者の温度条件の差を補償することができる構成とするのが好ましい。このような構成を実現するために、本実施形態では温度補償回路121にリニア正温度係数素子(感温抵抗)を用いている。
【0041】
リニア正温度係数素子は、抵抗値が周囲温度にほぼ比例して変化する抵抗器である。本実施形態では、リニア正温度係数素子を用いた温度補償回路121を半導体スイッチ110に熱結合させることで、半導体スイッチ110の温度変化をセンス電流Isに精度よく反映させるようにしている。
【0042】
温度補償回路121を半導体スイッチ110に熱結合させるために、
図3に一例を示すように、温度補償回路121を半導体スイッチ110に近接させて配置する。
図3は、半導体スイッチ110と温度補償回路121との位置関係を模式的に示す平面図である。半導体スイッチ110は、基板116上に配置されている。また、半導体スイッチ110で発生した熱を外部に放出させるために半導体スイッチ110の周囲に放熱パターン115が形成されているが、半導体スイッチ110との熱結合をさらに高めるために、温度補償回路121を放熱パターン115上に配置するのがよい。なお、温度補償回路121の周辺での放熱を抑制するために、放熱パターン115のうち温度補償回路121が配置されている位置から外部に放熱させるためのパターン部分115aについては、その形状を細くして伝熱しにくくするのがよい。
【0043】
上記のように、温度補償回路121にリニア正温度係数素子(感温抵抗)を用いることで、電流検出部120の温度特性を簡単な構成(低コスト、小型)で改善することができる。また、温度補償回路121の回路構成が簡単なことから、温度特性のばらつきを低減することができる。本実施形態では、温度補償回路121を半導体スイッチ110に直接熱結合させていることから、半導体スイッチ110の温度を測定するための温度モニター等も必要としない。
【0044】
さらに、温度補償回路121にリニア正温度係数素子(感温抵抗)を用いることで、半導体スイッチ110がオン状態のときの抵抗温度特性(以下では、FETオン抵抗温度特性という)に対し、異常検出部130で用いる遮断閾値を決定するための過電流保護特性を調整することが可能となる。すなわち、感温抵抗の温度係数値を適切に選択することにより、過電流保護特性の温度特性(温度依存性)を、電線発煙特性、ヒューズ溶断、負荷特性、等の過電流を検出する対象に応じて最適に調整することが可能となる。
【0045】
一例として、半導体スイッチ110を過電流保護の対象とするときは、半導体スイッチ110のFETオン抵抗温度特性と同程度の温度係数値(4500〜6800ppm/℃)を有する感温抵抗を温度補償回路121に用いるのがよい。これにより、半導体スイッチ110のFETオン抵抗温度特性が感温抵抗の温度特性で補償され、異常検出部130の遮断閾値を決定するための過電流保護特性を、ほぼ温度依存性のないものとすることができる。
【0046】
また、電線限界過電流特性、負荷電流特性、あるいはヒューズ溶断特性等を過電流保護の対象とするときは、半導体スイッチ110のFETオン抵抗温度特性と温度補償回路121の感温抵抗の温度特性との差分が過電流保護対象の温度特性と同等になるように、感温特性の温度係数値(例えば、2500〜4500ppm/℃)を選択するのがよい。これにより、過電流保護対象の温度特性が補償されることになり、異常検出部130で用いる過電流保護特性をほぼ温度依存性のないものとすることができる。
【0047】
温度補償回路121は、半導体スイッチ110の外部に取り付けられることから、その取付が容易であり、電線発煙特性、ヒューズ溶断、負荷特性等の温度特性に最適なものを選択して取り付けることが容易にできる。また、温度補償回路121の抵抗値Rs1を大きくすることで、センス電流Isを小さくするができる。さらに、過渡的(瞬時)な大電流が発生した場合でも、温度補償回路121への熱伝達に遅れがあるため、その間に保護機能を動作させることも可能となる。
【0048】
上記のように構成された複数の過電流保護回路101は、IC側半導体スイッチ110aを除いてゲートドライバIC103上に形成されている。ゲートドライバIC103は、それ自身の過熱を検出するためのIC加熱検出部162と、それ自身の故障等を検出するためのIC自己診断部163を備えている。そして、IC加熱検出部162でゲートドライバIC103の過熱が検出されるか、あるいはIC自己診断部163でゲートドライバIC103の故障等が検出されると、ゲートドライバIC103が停止される。その結果、すべての過電流保護回路101が停止され、それぞれのIC側半導体スイッチ110aがすべてオフ状態になる。
【0049】
さらに、IPS回路102もゲートドライバIC103との間で、操作信号の入力や異常検出等の信号の入出力を行っている。そのため、ゲートドライバIC103が停止するとIPS回路102もすべて停止し、それぞれのIPS側半導体スイッチ110bがすべてオフ状態になる。その結果、バッテリ10からの全出力シャットダウンの状態になってしまう。
【0050】
全出力シャットダウンの状態になると、例えば安全走行に必要な負荷への電力供給も行われなくなり、極めて危険な状態になるおそれがある。そこで、本実施形態の車両用電源供給装置100では、ゲートドライバIC103とは別の、IPS回路102側にバックアップ制御回路104を設け、ゲートドライバIC103が停止したときに、IPS回路102に接続された特定の負荷20に電力供給を行わせるようにしている。バックアップ制御回路104は、ゲートドライバIC103とは別に設けられていることから、ゲートドライバIC103が停止したときも動作可能に構成することができる。
【0051】
バックアップ制御回路104は、ゲートドライバIC103のIC加熱検出部162あるいはIC自己診断部163からゲートドライバIC103の故障情報を入力すると、外部操作スイッチからの操作信号30に応じて所定のバックアップ制御を行う。すなわち、ゲートドライバIC103の故障により全出力シャットダウンの状態になると、バックアップ制御回路104は、重要な負荷20への電源ラインとなっているIPS回路102を起動させてIPS側半導体スイッチ110bをオンにする。
【0052】
バックアップ制御回路104によるバックアップ制御の一例を、
図4を用いて以下に説明する。
図4は、バックアップ制御回路104によるバックアップ制御の一例を示す説明図である。ここでは、負荷20の一例として、夜間の走行に重要なヘッドランプを対象に説明する。2つのヘッドランプへの電力供給のオン/オフは、左側のヘッドランプ(H−LP L)に対してはIC側半導体スイッチ110aを用い、右側のヘッドランプ(H−LP R)に対してはIPS側半導体スイッチ110bを用いるものとする。
【0053】
ゲートドライバIC103の停止によって全出力シャットダウンとなり、2つのヘッドランプへの電力供給も停止されると、ヘッドランプが左右両方とも消灯されて夜間の走行中の場合には極めて危険な状態となる。そこで、本実施形態では、ヘッドランプの操作スイッチの状態によらず(ヘッドランプが点灯されているか否かによらず)、ゲートドライバIC103が停止したときは安全側に一方のヘッドランプを自動点灯させるようにする。バックアップ制御回路104を用いることで、ゲートドライバIC103の故障時に負荷20を安全側に動作させるようにすることが可能となる。なお、ここでは操作スイッチの状態によらず安全側にヘッドランプを自動点灯させる場合について説明するが、これに限定されず、操作スイッチの状態に応じて半導体スイッチ110をオンまたはオフにするようにしてもよい。
【0054】
図4では、同図(a)にゲートドライバIC103の状態、同図(b)にヘッドランプの操作スイッチの状態、及び同図(c)に左右のヘッドランプの点等状態、がそれぞれ示されている。ここでは、ゲートドライバIC103が正常状態で、ヘッドランプの操作スイッチがオン状態にあって、左右のヘッドランプがともに点灯している状態からの動作を示している。
【0055】
図4において、時刻t1の時点でヘッドランプの操作スイッチをオンからオフに操作している。これにより、ヘッドランプは左右両方とも消灯する。その後、時刻t2においてゲートドライバIC103が故障して全出力シャットダウンが発生している。このとき、バックアップ制御回路104は安全側の動作として、右側のヘッドランプ(H−LP R)の電源を制御しているIPS回路102に対しオン操作の要求信号を出力する。これにより、当該IPS回路102のIPS側半導体スイッチ110bがオン状態となり、右側のヘッドランプ(H−LP R)のみが点灯される。
【0056】
その後、時刻t3においてゲートドライバIC103が正常に復帰すると、バックアップ制御回路104からIPS回路102に出力されていたオン操作の要求信号が停止される。これにより、当該IPS回路102は、操作スイッチからの操作信号に従ってIPS側半導体スイッチ110bをオフにし、右側のヘッドランプが消灯される。ここでは、ヘッドランプの操作スイッチがオフ状態のときにゲートドライバIC103が故障した場合を例に説明したが、ヘッドランプの操作スイッチがオン状態のときには、ゲートドライバIC103の故障により左側のヘッドランプ(H−LP L)のみが消灯となり、ゲートドライバIC103の正常復帰後は再び左右のヘッドランプが点灯される。
【0057】
上記では、ゲートドライバIC103の故障時は、安全側の動作として、バックアップ制御回路104がIPS102に対しオン操作の要求信号を出力して右側のヘッドランプを自動点灯させるものとしたが、これに限定されず、例えばバックアップ制御回路104が操作スイッチから操作信号を入力し、操作信号がオンのときに右側のヘッドランプを点灯させるようにしてもよい。
【0058】
バックアップ制御回路104は、ゲートドライバIC103の故障に伴って起動させるIPS回路102に対し、電源ライン(電線)の保護を兼ねた過電流検出を行わせるようにすることも可能である。これは、IPS回路102の異常検出部130において遮断閾値を設定するのに用いる過電流保護特性が、電線限界過電流特性をカバーするように設定されることで可能となる。過電流保護特性を調整するにより、ゲートドライバIC103が故障した場合には、一定の制約はあるものの、重要な負荷20への電力供給を可能にするとともに、電線を保護することも可能となる。このように、バックアップ制御回路104により電源確保のための冗長性が高められるとともに、ゲートドライバIC103故障に伴うリスクを軽減させることが可能となる。
【0059】
ゲートドライバIC103の故障時に、バックアップ制御回路104によりIPS回路102の異常検出部130で用いる過電流保護特性を調整させることにより、電源ライン(電線)の保護を兼ねた過電流検出が行われるようにした一例を、
図5を用いて以下に説明する。
図5は、バックアップ制御回路104により調整される過電流保護特性の一例を説明するためのグラフであり、横軸が経過時間を示し、縦軸が電流値を示している。同図では、電線発煙特性、電線保護特性、及びゲートドライバIC103が正常時のIPS側半導体スイッチ110bの過電流保護特性を、それぞれ符号51、52、53で示している。
【0060】
ゲートドライバIC103が正常時には、ゲートドライバIC103に設けられている電線保護部161において、電線の過電流を監視して保護している。すなわち、
図5に示す電線発煙特性51及び電線保護特性52については、電線保護部161で監視が行われている。そのため、ゲートドライバIC103が故障すると、電線保護部161による電線保護が行えなくなってしまう。そこで本実施形態では、バックアップ制御回路104からの指令により、IPS回路102の異常検出部130で電線保護も行わせるように過電流保護特性を調整している。
図5に示す一例では、ゲートドライバIC103の故障に伴って、異常検出部130で用いる過電流保護特性を、符号53で示すものから符号54に示すものに変更している。
【0061】
ゲートドライバIC103が正常時の過電流保護特性53は、IPS側半導体スイッチ110bの過電流保護を目的として設定されたものであり、比較的高い電流まで許容している。これに対し、電線発煙特性51及び電線保護特性52は、短時間の過電流に対しては高い電流まで許容しているものの、所定の時間経過後は許容される過電流を大幅に低減している。そのため、過電流保護特性53で過電流を監視しているだけでは、過電流の経過時間が長くなると電線発煙特性51及び電線保護特性52を超過してしまい、電線を保護できなくなってしまうおそれがある。
【0062】
そこで本実施形態では、過電流保護特性を符号53で示すものから符号54で示すものに変更することにより、過電流の時間が長くなっても電線発煙特性51及び電線保護特性52を超過させないようにしている。過電流保護特性54に基づいて異常検出部130の遮断閾値を設定させることにより、短時間の過電流に対して低い電流値しか許容されなくなるものの、過電流の時間が長くなっても電線を保護することが可能となる。
【0063】
本実施形態の車両用電源供給装置によれば、電流検出部120の温度補償回路121にリニア正温度係数素子(感温抵抗)を用いることで、簡単な構成で電流検出することが可能となる。また、リニア正温度係数素子の温度特性を適切に選択することで、異常検出部130で用いる過電流保護特性を好適に調整することができる。さらに、ゲートドライバIC103の故障時には、IPS回路102の異常検出部130で用いる過電流保護特性を電線の保護が可能となるように調整することができ、冗長的な電力供給が可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る車両用電源供給装置を、
図6を用いて以下に説明する。
図6は、本実施形態の車両用電源供給装置の概略構成を示すブロック図である。
図6に示す本実施形態の車両用電源供給装置200では、説明簡単のため1つの過電流保護回路101と1つのIPS回路102のみを記載しており、それ以外の過電流保護回路101及びIPS回路102の記載を省略している。
【0065】
ゲートドライバIC103のIC加熱検出部162が作動して全出力シャットダウンとなるのは、過電流保護回路101のIC側半導体スイッチ110aやIPS回路102のIPS側半導体スイッチ110b等の発熱部位における温度上昇が主な原因である。このうち、IPS回路102は、IPS自己保護部171の機能の一つとして過熱保護機能を有しており、IPS回路102の過熱を検出するとIPS側半導体スイッチ110bをオフにして過熱を防止することができる。これに対し、IC側半導体スイッチ110aによる過熱は、IC加熱検出部162で検出されるように構成されており、IC加熱検出部162で過熱が検出されると、当該のIC側半導体スイッチ110aだけでなく、すべての半導体スイッチ110がオフにされて全出力シャットダウンとなってしまう。
【0066】
そこで、本実施形態の車両用電源供給装置200では、IPS自己保護部171を有するIPS回路102をIC側半導体スイッチ110aの近傍等に配置することにより、IPS回路102の過熱だけでなく、近傍のIC側半導体スイッチ110aの過熱もIPS自己保護部171で検出できるようにしている。そして、IPS側半導体スイッチ110bまたはIC側半導体スイッチ110aによる過熱をIPS自己保護部171で検出すると、当該のIPS側半導体スイッチ110bを停止させる。あるいは、すべてのIPS側半導体スイッチ110bを停止させるようにしてもよい。これにより、車両用電源供給装置200の過負荷状態を軽減してIC加熱検出部162が作動しないようにする。
【0067】
上記説明のように、本実施形態の車両用電源供給装置200によれば、ゲートドライバIC103のIC加熱検出部162が作動して全出力シャットダウンとなる前に、IPS回路102のIPS自己保護部171でIPS側半導体スイッチ110bまたはIC側半導体スイッチ110aの過熱を検出させて当該またはすべてのIPS側半導体スイッチ110bをオフにさせることにより、過負荷状態を軽減してIC加熱検出部162を作動させないようにすることが可能となる。
【0068】
本実施形態の車両用電源供給装置200において、IC加熱検出部162による全出力シャットダウンが発生する前に、IPS回路102のIPS自己保護部171を用いて過負荷状態を軽減させた一例を、
図7を用いて以下に説明する。
図7では、同図(a)に従来のIC加熱検出部162による全出力シャットダウンの一例を示し、同図(b)に本実施形態の車両用電源供給装置200において過負荷状態が軽減される一例を示している。なお、符号61はIC加熱検出部162で過熱を検出するために用いられるIC過熱保護動作ラインを示し、符号62はIPS自己保護部171で過熱を検出するために用いられるIPS過熱保護動作ラインを示している。
【0069】
同図(a)に示す従来例では、発熱源である半導体スイッチ110によりゲートドライバIC103の温度63が上昇し、その温度がIC過熱保護動作ライン61に達した経過時間taの時点で、IC側半導体スイッチ110a及びIPS側半導体スイッチ110bのすべてがオフにされている。これにより、全出力シャットダウンが発生する。
【0070】
これに対し、同図(b)に示す本実施形態の車両用電源供給装置200では、経過時間tbの時点で、特に温度上昇の大きいIPS回路102の温度64がIPS過熱保護動作ライン62に達したことをIPS自己保護部171が検出し、IPS側半導体スイッチ110bをすべてオフにしている。経過時間tbは、
図7(a)に示す経過時間taよりも短い時間である。ここでは、過負荷状態に対する緩和効果を大きくするために、すべてのIPS側半導体スイッチ110bをオフにするものとしているが、当該のIPS半導体スイッチ110bのみ、あるいはこれを含む一部のIPS半導体スイッチ110bをオフにするようにしてもよい。
【0071】
すべてのIPS側半導体スイッチ110bをオフにしたことにより過負荷状態が大幅に緩和されるが、ここではIC側半導体スイッチ110aによる発熱が大きく、ゲートドライバIC103の温度65がさらに上昇するものとしている。そして、経過時間tcの時点でIC加熱検出部162が過熱を検出し、IC側半導体スイッチ110aをすべてオフにして全出力シャットダウンとしている。しかしながら、全出力シャットダウンが発生するまでの経過時間tcは、従来例の経過時間taより大幅に延長される。その結果、経過時間tcに達するまでに全出力シャットダウンを回避するための適切な処理を行う余裕が与えられる。
【0072】
本実施形態の車両用電源供給装置200によれば、IPS自己保護部171を有するIPS回路102をIC側半導体スイッチ110aの近傍に配置することにより、IPS側半導体スイッチ110bによる過熱だけでなく、IC側半導体スイッチ110aによる過熱もIPS自己保護部171を用いて検出することができ、過熱を検出するとIPS側半導体スイッチ110bの一部またはすべてをオフにして過負荷状態を緩和することが可能となる。これにより、全出力シャットダウンの発生を回避、または遅らせることが可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る車両用電源供給装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における車両用電源供給装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。