特許第5778038号(P5778038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5778038-硬化性樹脂組成物 図000030
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778038
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/00 20060101AFI20150827BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150827BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/33 20060101ALI20150827BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20150827BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C08G59/00
   C08L63/00 Z
   C08L101/02
   C08K5/33
   C08F2/46
   G02F1/1339 505
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2011-544304(P2011-544304)
(86)(22)【出願日】2011年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2011059675
(87)【国際公開番号】WO2012002028
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-146273(P2010-146273)
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(74)【代理人】
【識別番号】100161481
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 有未子
(72)【発明者】
【氏名】科野 裕克
(72)【発明者】
【氏名】福永 博哉
(72)【発明者】
【氏名】板野 和幸
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−275166(JP,A)
【文献】 特開2009−230095(JP,A)
【文献】 特開2009−162842(JP,A)
【文献】 特開2009−114424(JP,A)
【文献】 特開2009−227955(JP,A)
【文献】 特開2008−231347(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/054276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 5/00−5/59
C08F 2/46
G02F 1/1339
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有する硬化性樹脂組成物。
(A)下記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光ラジカル開始剤
(B)ラジカル硬化性樹脂
(C)潜在性エポキシ硬化剤
(D)エポキシ樹脂
【化1】
(式中、1は、R11はCNを表し、2は、R11又はOR11を表し、
11は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
11表わされる置換基の水素原子は、更にOR21又はCOO21置換されていてもよく、
21は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
21表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく
11及びR21表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく
3及びR4は、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN又はハロゲン原子を表し、
12及びR13は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1の整数を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、N33又はPR34を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表し
5はOH,COOH又は下記一般式(II)で表される基を表す。)
【化2】

(式中、Z1は、結合手であって、−O−、−S−、−NR22−、−NR22CO−、−SO2、−OCO−又は−COO−を表し、
2は、結合手であって、1〜3のR6で置換された炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数7〜30の芳香族炭化水素で置換された脂肪族炭化水素基を表し、
2で表される結合手のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−又は−SCO−により1〜5回中断されていてもよく、Z2で表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキレンであってもよく
22は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、
6は、OR41、SR41、OCOR41、COOR41、CN又はハロゲン原子を表し、
41、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し
は1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
上記(C)潜在性エポキシ硬化剤の融点が、50〜110℃である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(B)ラジカル硬化性樹脂が、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーである請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(B)ラジカル硬化性樹脂の比率が、上記(B)ラジカル硬化性樹脂と上記(D)エポキシ樹脂の合計を100重量部としたとき、40〜90重量部である請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記(A)上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系ラジカル開始剤0.05〜5重量%、上記(B)ラジカル硬化性樹脂20〜90重量%、上記(C)潜在性エポキシ硬化剤4〜60重量%、及び上記(D)エポキシ樹脂5〜60重量を含有する請求項1〜4の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる封止剤。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶滴下工法用シール剤。
【請求項8】
液晶滴下工法に用いられる液晶組成物が、重合性官能基を有する液晶化合物を含有することを特徴とする請求項7に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項9】
上記重合性官能基が、(メタ)アクリル基である請求項8に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項10】
請求項7〜9の何れか1項に記載の液晶滴下工法用シール剤を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、液体又は液晶を封止する封止剤に関するものである。更に詳しくは、重合性液晶組成物を封止する液晶滴下工法用シール剤及びこれを用いた液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体又は液晶を封止する材料は、液晶表示素子、色素増感太陽電池、有機EL素子等に用いられている。例えば、液晶表示素子には液晶材料の封止剤として、色素増感太陽電池にはアセトニトリル、プロピレンカーボネート等の有機溶剤電解液、又は、イオン性液体の封止剤として、有機EL素子には、固体封止における液体封止剤を封止するダム材として用いられている。これまでの、封止剤(シール剤)は、未硬化の状態で液体又は液晶に接触するため、封止剤の樹脂成分等が溶出し、汚染することで素子の性能及び信頼性を低下させるという問題がある。また、溶出により封止剤が脆くなり、決壊が起こりやすくなるという問題がある。このように、液体又は液晶への溶出性が低い封止剤が求められている。
【0003】
一方、液晶表示素子の製造法は、製造工程の短縮を目的として、従来の真空注入方式から、液晶滴下工法が主流となっている。この工法は、電極付き基板に、シール剤により表示素子枠をディスペンス描画し、該描画枠内へ液晶滴下の後、もう一方の電極付き基板を、真空下にて、貼り合わせる。次に、シール部に、紫外線を照射して仮硬化を行い、その後、液晶アニールと熱硬化を兼ねた加熱による本硬化を行うことで液晶表示素子を作製する工法である。この工法では、光硬化と熱硬化による2段階硬化を採用することで、硬化時間の短縮ができ、液晶表示素子の製造工程の短縮が可能となる。
【0004】
液晶パネルは、情報を1画面に出来るだけ多く表示するため、高精細化、高速化の傾向にある。
更に近年では、一枚のガラス基板(マザーガラス)から出来るだけ多くの液晶パネルを切り出す設計がなされている。これに伴い、液晶を封止する材料は、カラーフィルターを有する基板においてはブラックマトリクス上に塗工され、対向基板(TFT基板)においてはTFT配線上に懸かって塗工されるようになってきた。よって、UV硬化時にカラーフィルター、TFT基板どちらの面からUV照射してもシール剤に照射されない影部が生じ、この影部にてシール剤成分が未硬化であると、シール剤成分が熱硬化時に液晶へ染み出すためシール周辺部の表示特性を低下させてしまうという問題があった。
このため、上記影部の出来るだけ深部まで光硬化でき、液晶への溶出物が少ない光ラジカル開始剤及びシール剤が求められてきた。
【0005】
回転粘性係数の低いアルケニル基を有する液晶化合物は、動画対応等応答速度を速めるため、TN、VA、IPS−LCDモード等のTFT用ネマチック液晶材料中に、多くの場合配合されている。液晶組成物に対して未硬化のシール剤が接触した場合に、シール剤から液晶へ光ラジカル開始剤が移行することでアルケニル基の光劣化が引き起こされる。
【0006】
特許文献1〜7には、オキシムエステル構造を有する光ラジカル開始剤を用いた液晶シール剤が開示されている。従来のオキシムエステル構造を有する光ラジカル開始剤は、感度が不十分である場合、シール剤の硬化が弱く、樹脂成分や開始剤自体が液晶組成物中に溶出し、電気特性を低下させ、また、感度が高いオキシムエステル化合物においても、開始剤の分解物が液晶組成物中に溶出し、電気特性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−179797号公報
【特許文献2】特開2008−231347号公報
【特許文献3】特開2009−114424号公報
【特許文献4】特開2009−162842号公報
【特許文献5】特開2009−227955号公報
【特許文献6】特開2009−230095号公報
【特許文献7】特開2009−275166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光硬化及び熱硬化の2段階硬化を特長とし、液体又は液晶との接触時における汚染性が低く、接着強度が高い硬化性樹脂組成物、特に光硬化の際にTFT配線又はブラックマトリクス等により影となる部分(影部)であっても、十分に光硬化できる硬化性樹脂組成物並びにこれを用いた封止剤、液晶滴下工法用シール剤及び液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行い、光硬化性樹脂成分として、特定の構造を有するオキシムエステル系光ラジカル開始剤及びラジカル硬化性樹脂、並びに熱硬化性樹脂成分として、潜在性エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂を硬化性樹脂組成物の有効成分とすることで、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0010】
即ち、本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、下記の(A)〜(D)成分を含有する硬化性樹脂組成物、好ましくは、更に、下記(1)〜(4)の何れか、特に好ましくは、下記(1)〜(4)の全てを有する硬化性樹脂組成物を提供するものである。(A)下記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光ラジカル開始剤
(B)ラジカル硬化性樹脂
(C)潜在性エポキシ硬化剤
(D)エポキシ樹脂
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
11、R12及びR13で表わされる置換基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、−NR22−OR23、−NCOR22−OCOR23、−C(=N−OR21)−R22、−C(=N−OCOR21)−R22、CN、ハロゲン原子、−CR21=CR2223、−CO−CR21=CR2223、COOR21又はエポキシ基で置換されていてもよく、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
21、R22及びR23で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR24−、−NR24COO−、−OCONR24−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、
24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
3及びR4は、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN又はハロゲン原子を表し、
a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34を表し、 R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
31、R32、R33及びR34で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく、
5はOH,COOH又は下記一般式(II)で表される基を表す。)
【化2】
(式中、Z1は、結合手であって、−O−、−S−、−NR22−、−NR22CO−、−SO2−、−CS−、−OCO−又は−COO−を表し、
2は、結合手であって、1〜3のR6で置換された炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜30の芳香族炭化水素で置換された脂肪族炭化水素基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
2で表される結合手のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR22−、−NR22COO−、−OCONR22−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、Z2で表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキレンであってもよく、
6は、OR41、SR41、CONR4243、NR42COR43、OCOR41、COOR41、SCOR41、OCSR41、COSR41、CSOR41、CN又はハロゲン原子を表し、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R41、R42及びR43で表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R42とR43は、一緒になって環を形成していてもよく、
cは1〜3の整数を表す。)
【0011】
(1)上記(C)潜在性エポキシ硬化剤の融点が50〜110℃である。
(2)上記(B)ラジカル硬化性樹脂が、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーである。
(3)上記(B)ラジカル硬化性樹脂の比率が、上記(B)ラジカル硬化性樹脂と(D)エポキシ樹脂の合計を100重量部としたとき、40〜90重量部である。
(4)上記(A)上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系ラジカル開始剤0.05〜5重量%、上記(B)ラジカル硬化性樹脂20〜90重量%、上記(C)潜在性エポキシ硬化剤4〜60重量%、及び上記(D)エポキシ樹脂5〜60重量を含有する。
【0012】
また、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を用いてなる封止剤及び液晶滴下工法用シール剤を提供するものであり、
また、本発明は、上記液晶滴下工法用シール剤を用いてなる液晶表示素子を提供するものである。
また、本発明は、上記一般式(I)で表わされるオキシムエステル系ラジカル開始剤を含有する液晶滴下工法用シール剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光硬化及び熱硬化の2段階硬化を特長とする封止剤、特に液晶滴下工法用シール剤に好適な硬化性樹脂組成物であり、光硬化性樹脂成分としてオキシムエステル系光ラジカル開始剤及びラジカル硬化性樹脂、並びに、熱硬化性樹脂成分として潜在性エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂を有効成分とするため、液体又は液晶への汚染性が低く、シール強度も高く、光硬化の際にTFT配線又はブラックマトリクス等により影となる部分(影部)であっても、十分な光硬化性が得られる程高感度であり、生産性が高く、特に、重合性官能基を有する化合物を含有する液体又は液晶を封止することに適している。よって、液晶表示素子、色素増感太陽電池、有機EL素子に好適であり、高分子安定型ディスプレイ液晶表示素子に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)〜(c)は、実施例の影部反応率の評価に於いて用いた試験片を示す図であり、図1(a)は、一部がアルミで蒸着されたガラス基板である試験片を示し、図1(b)は図1(a)の試験片のアルミ非蒸着部/アルミ蒸着部の境界線上にシール剤が塗工された様子を示し、図1(c)は活性エネルギー線照射後のシール剤部分の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記(A)〜(D)成分を含有する。下記成分のうち(A)及び(B)成分は、光硬化性樹脂成分であり、下記(C)及び(D)成分は、熱硬化性樹脂成分である。以下、各成分について順に説明する。
(A)上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光ラジカル開始剤
(B)ラジカル硬化性樹脂
(C)潜在性エポキシ硬化剤
(D)エポキシ樹脂
【0016】
<(A)光ラジカル開始剤>
本発明に用いられる(A)光ラジカル開始剤は、上記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物である。
【0017】
上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、及びR34、並びに上記一般式(II)中の、R22、R41、R42、及びR43で表される炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、及びR34、並びに上記一般式(II)中の、R22、R41、R42、及びR43で表される炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスレニル、上記アルキル基で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アンスリル等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、及びR34、並びに上記一般式(II)中の、R22、R41、R42、及びR43で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、α−メチルベンジル、α、α−ジメチルベンジル、フェニルエチル等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、及びR24で表される炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チエニル、テトラヒドロフリル、ジオキソラニル、ベンゾオキサゾール−2−イル、テトラヒドロピラニル、ピロリジル、イミダゾリジル、ピラゾリジル、チアゾリジル、イソチアゾリジル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、ピペリジル、ピペラジル、モルホリニル等の5〜7員複素環が好ましく挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)中の、R12とR13、R22とR23、及び上記一般式(II)中、R42とR43が一緒になって形成し得る環、並びにR31、R32、R33及びR34が隣接するベンゼン環と一緒になって形成し得る環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環が好ましく挙げられる。
【0022】
また、上記一般式(I)中の、R3及びR4、上記一般式(II)中の、R6で表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22及びR23を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0023】
また、上記一般式(II)中の、Z2で表される1〜3のR6で置換された炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチル、6−ヒドロキシヘキシル、7−ヒドロキシヘプチル、8−ヒドロキシオクチル、9−ヒドロキシノニル、10−ヒドロキシデシル、2,2−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、1−カルボキシプロピル、2−カルボキシプロピル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、5−カルボキシペンチル、6−カルボキシへキシル、スルファニルメチル、2−スルファニルエチル、1−スルファニルプロピル、2−スルファニルプロピル、3−スルファニルプロピル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、シアノメチル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル、2−エチルオキシエチル、2−フェニルオキシエチル、2−メチルスルファニルエチル、4−ヒドロキシシクロヘキシル、2−エチル−2、3−ジヒドロキシプロパン−1−イル、2−エチル−1,3−プロパン−2−イル、2−(N−メチルアセトアミジル)−エタン−1−イル等が挙げられる。
【0024】
また、上記一般式(II)中の、Z2で表される1〜3のR6で置換された炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、2−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−エトキシフェニル、2−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、2,4−ジカルボキシフェニル、2−スルファニルフェニル、4−スルファニルフェニル、4−メチルスルファニルフェニル、4−シアノフェニル、4−(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン−1−イル、6−ヒドロキシナフタレン−2−イル、4−ヒドロキシナフタレン−1−イル、4−フルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル等が挙げられる。
【0025】
また、上記一般式(II)中の、Z2で表される1〜3のR6で置換された炭素原子数7〜30の芳香族炭化水素で置換された脂肪族炭化水素基としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル、2−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル、2−(4’−ヒドロキシメチルフェニル)エチル、9−(4’−ヒドロキシフェニル)ノニル等が挙げられる。
【0026】
また、上記一般式(II)中の、Z2で表される1〜3のR6で置換された炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、5−ヒドロキシフラン−2−イル、4−ヒドロキシフラン−2−イル、5−ヒドロキシチオフェン−2−イル、5−エトキシフラン−2−イル、5−(3’−ヒドロキシプロピルスルファニル)チオフェン−2−イル、N−メトキシメチルピロール−2−イル等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基、並びに上記一般式(II)中の、Z2で表される結合手のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR22−、−NR22CO−、−NR22COO−、−OCONR22−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、この時中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断し得る基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。
また、上記一般式(I)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33及びR34で表される置換基、並びに上記一般式(II)中の、Z2で表される基、及びR41、R42及びR43で表される置換基のアルキル(アルキレン)部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよい。
【0028】
上記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物の中でも、上記一般式(I)中のXが硫黄原子又はNR33であり、同式中のR33が、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である化合物;下記一般式(III)で表される化合物;
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X、a及びbは上記一般式(I)と同じである。)
上記一般式(I)中のR5が上記一般式(II)で表わされる基であり、同式中のZ1が−O−又は−OCO−である化合物は、感度が高く、製造が容易であるため好ましい。
【0029】
また、上記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物の中でも、上記一般式(I)中のR5が上記一般式(II)で表わされる基であり、同式中のR6がZ2の末端の水素を置換している化合物は製造が容易であるため好ましい。尚、本発明において末端の水素原子とは(1)置換基がアルキル基である場合は結合部から最も炭素原子数の多いアルキル鎖末端のメチル基の水素原子であり、(2)置換基が無置換環構造である場合は環に結合している全ての水素であり、(3)置換基がアルキル基で更に置換基されている環構造である場合は環を更に置換しているアルキル鎖末端のメチル基の水素原子のことを言う。
【0030】
更に、上記一般式(I)中のR1が、炭素原子数1〜20のアルキル基、特に炭素原子数1〜10のアルキル基である化合物は、製造が容易であり、硬化性樹脂組成物への溶解性に優れるため好ましい。
また、上記一般式(I)中のR2が、炭素原子数1〜20のアルキル基、特に炭素原子数1〜5のアルキル基である化合物は、製造が容易であり、光ラジカル開始剤としての感度が高いため好ましい。
【0031】
また、上記一般式(I)中のa及びbが0である化合物、即ちR3及びR4で表わされる基を有さない化合物は、製造が容易であるため好ましい。
【0032】
また、上記一般式(I)中のR5が上記一般式(II)で表わされる基である場合、同式中のZ2が、炭素原子数1〜20のアルキル基、−O−、−COO−又は−OCO−により1〜5回中断された炭素原子数1〜20のアルキル基、特に炭素原子数1〜20のアルキル基である化合物は、硬化性樹脂組成物への溶解性に優れるため好ましい。
また同式中のR6が、OH、SH、CONH2、COOH、特にOH、COOHである化合物は、液晶の汚染性が低いため好ましい。
【0033】
また、下記一般式(IV)で表わされる化合物は、原料の入手が容易であるため好ましい。
【化3A】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X、a及びbは上記一般式(I)と同じである。)
【0034】
従って、上記一般式(I)で表わされるオキシムエステル化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物No.1〜No.108が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【化18】
【0050】
上記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物は、特に限定されないが、例えば、特開2000−80068号報に記載の方法で製造できる。方法の一つとしては、下記〔化19〕に示す反応式に従って、以下の方法により製造する方法が挙げられる。
即ち、ケトン体1と亜硝酸エステルを塩酸存在下で反応させることにより、オキシム化合物2を得る。続いて、該オキシム化合物2に、酸無水物3又は酸クロリド3'を反応させることにより、上記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物を得る。下記反応式では、上記一般式(I)中のXが硫黄原子の場合を記載しているが、同式中のXが酸素原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34であるものも、上記の方法に準じて製造することができる。
【0051】
【化19】
(式中、R1、R2及びR5は上記一般式(I)と同じである。)
【0052】
また、本発明において、上記(A)光ラジカル開始剤は、(B)ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して0.5〜8重量部配合するのが好ましく、1〜4重量部配合するのがより好ましい。上記(A)光ラジカル開始剤の配合量が0.5重量部未満であると、硬化不足を生じ、耐湿熱バリア性、接着強度を低下させ、8重量部を超えると、開始剤残渣が液晶組成物を汚染し、表示不良を起こすため好ましくない。
【0053】
<(B)ラジカル硬化性樹脂>
本発明で用いられる(B)ラジカル硬化性樹脂は、ラジカル重合性官能基を有し、紫外線等の光を照射することにより重合して硬化する光硬化性樹脂である。上記ラジカル重合性官能基とは、紫外線等の活性エネルギー線によって重合しうる官能基を意味し、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基等が挙げられる。(B)ラジカル硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、速やかに反応が進行することや接着性が良好であるという点から、(メタ)アクリレート、特に、(B’)分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーが好適である。
【0054】
上記(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とから誘導されるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートと、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート等のイソシアネートと付加反応する反応性化合物との誘導体等が挙げられる。これらの誘導体はカプロラクトンやポリオール等で鎖延長させてもよい。市販品としては、例えば、U−122P、U−3,40P、U−4HA、U−1084A(以上、新中村化学工業社製);KRM7595、KRM7610、KRM7619(以上、ダイセルサイテック社製)等が挙げられる。
【0056】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とから誘導されたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、市販品としては、例えば、EA−1020、EA−6320、EA−5520(以上、新中村化学工業社製);エポキシエステル70PA、エポキシエステル3002A(以上、共栄社化学社製)等が挙げられる。
また、その他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、グリセリンジメタクリレート等が挙げられる。
【0057】
また、上記(B)ラジカル硬化性樹脂としては、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基とをそれぞれ少なくとも1つ以上有するエポキシ/(メタ)アクリル樹脂も好適に用いることができる。
上記エポキシ/(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂のエポキシ基の一部分を常法に従って、塩基性触媒の存在下(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られる化合物、2官能以上のイソシアネート1モルに水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを1/2モル、続いてグリシドールを1/2モル反応させて得られる化合物、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートにグリシドールを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ/(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、例えば、UVAC1561(ダイセルサイテック社製)、4HBAGE(日本化成社製)等が挙げられる。
【0058】
上記(B)ラジカル硬化性樹脂の中でも、2官能又は多官能グリシジルエーテルのアクリレート変性樹脂、特にビスフェノールAグリシジルエーテルのアクリレート変性樹脂を含有するラジカル硬化性樹脂が、液晶滴下工法用シール剤に用いた場合、シール剤から液晶への溶出が低く汚染性が低いため好ましい。上記(B)ラジカル硬化性樹脂中における上記2官能又は多官能グリシジルエーテルのアクリレート変性樹脂の比率は、(B)ラジカル硬化性樹脂全体を100重量部とした場合、60〜100重量部が好ましい。該比率が60%重量部未満のものは液晶への溶出が大きく配向乱れを生じる。
【0059】
上記(B)ラジカル硬化性樹脂の比率が、上記(B)ラジカル硬化性樹脂と上記(D)エポキシ樹脂の合計を100重量部としたとき、40〜90重量部、特に50〜85重量部であると接着強度が向上するため好ましい。該使用量が40重量部未満であると、樹脂が液晶へ溶出するため望ましくない。また該使用量が90重量部を超えると、接着力が低下するため望ましくない。
【0060】
<(C)潜在性エポキシ硬化剤>
本発明に用いられる潜在性エポキシ硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール類、グアナミン類、イミダゾール類、ウレア類及びメラミン等が挙げられる。
【0061】
上記変性ポリアミンとしては、ポリアミン類のエポキシ付加変性物、アミド化変性物、マンニッヒ変性物等が挙げられる。
【0062】
上記変性ポリアミンに用いられるポリアミン類としては、特に制限はないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノプロパン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、メシチレン−2,6−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。
【0063】
上記エポキシ付加変性物は、上記ポリアミン類と、エポキシ化合物とを、常法によって付加反応させることによって製造することができる。
上記エポキシ付加変性物に用いられる上記エポキシ化合物としては、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が適している。これらエポキシ化合物は1種類又は2種類以上混合して使用される。
【0064】
上記脂環族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0065】
上記脂環族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業社製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0066】
上記脂環族エポキシ化合物の中でも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ化合物が、硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0067】
また、上記芳香族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール又は、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂等が挙げられる。
【0068】
更に、上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0069】
上記芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、エピコート801、エピコート828(以上、油化シェルエポキシ社製)、PY−306、0163、DY−022(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、KRM−2720、EP−4100、EP−4000、EP−4901、EP−4010、EP−4080、EP−4900、ED−505、ED−506(以上、ADEKA社製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学社製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638(以上、東都化成社製)、TEPIC−S(日産化学社製)、エピクロンN−665、エピクロンN−740、エピクロンHP−7200、エピクロンHP-4032(以上、DIC社製)等を挙げることができる。
【0070】
上記アミド化変性物は、上記ポリアミン類と、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸等のカルボン酸類とを、常法によって反応させることによって製造することができる。
【0071】
上記マンニッヒ化変性物は、上記ポリアミン類と、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、及びフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド化反応性箇所を有するフェノール類とを、常法によって反応させることによって製造することができる。
【0072】
上記ヒドラジド類としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0073】
上記ウレア類としては、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、イソホロンジイソシアネート−ジメチルウレア、トリレンジイソシアネート−ジメチルウレア等が挙げられる。
【0074】
これらの(C)潜在性エポキシ硬化剤の中でも、保存安定性(ポットライフ)、低液晶汚染性の点から、ジシアンジアミド、変性ポリアミン及びヒドラジド類、特に変性ポリアミン及びヒドラジド類が好ましく用いられる。
【0075】
更に、(C)潜在性エポキシ硬化剤の中でも、融点が50〜110℃であるものは、工程がより簡略化できるため好ましく。融点が60℃〜80℃のものは更に好ましい。また、硬化剤の融点が40℃未満のものはシール剤配合時に硬化してしまうため安定性に問題があり好ましくなく、120℃より高いものは熱硬化工程が長くなり、短時間化させるために加熱温度を上げると液晶組成物へのダメージが大きくなり好ましくない。
【0076】
また、本発明において、上記(C)潜在性エポキシ硬化剤は、(D)エポキシ樹脂100重量部に対して0.3〜100重量部配合するのが好ましく、60〜100重量部配合するのがより好ましい。上記(C)潜在性硬化剤の配合量が0.3重量部未満であると、硬化不足を生じ耐湿熱バリア性、接着強度を低下させ、100重量部を超えると、未反応の硬化剤による液晶汚染を生じ、表示不良を起こすため好ましくない。
【0077】
<(D)エポキシ樹脂>
本発明に用いられる(D)エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類、及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化アクリロニトリル−ブタジエン共重合物、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの或いは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。中でも好ましく用いられるものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−プロピレンオキシド変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化共役ジエン重合体、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられ、更に25℃にて、液体又は過冷却にて液状であるものは本発明の硬化性樹脂組成物中において析出が起こりにくく、エポキシ樹脂が均一に混ざりやすいため特に好ましい。また、分子内にエポキシ基を2個以上有する場合、反応性に優れ、シール剤の接着性にも優れるため好ましい。尚、過冷却にて液状とは、無溶剤又は溶剤で希釈した状態のものを、加熱して溶解させた後、無溶剤の場合は冷却、溶剤にて希釈したものは溶剤を留去後に冷却し、25℃において析出物が無い状態を言う。
【0078】
尚、(D)エポキシ樹脂は、(B)ラジカル硬化性樹脂がエポキシ基を有する場合、用いなくてもよい。
【0079】
以上説明した本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光ラジカル開始剤、上記(B)ラジカル硬化性樹脂、上記(C)潜在性エポキシ硬化剤、及び上記(D)エポキシ樹脂を含有するが、これら各成分の硬化性樹脂組成物における含有量は、上記(A)オキシムエステル系光ラジカル開始剤が好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、上記(B)光硬化性樹脂が好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜60重量%、上記(C)潜在性エポキシ硬化剤が好ましくは4〜60重量%、より好ましくは6〜30重量%、及び上記(D)エポキシ樹脂が好ましくは5〜60重量%、より好ましくは8〜40重量%である。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて(E)充填剤を加えることもできる。上記(E)充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、活性炭、コアシェルゴム、ブロック共重合高分子、ガラスフィラー、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、珪石粉、瀝青物、繊維素、粘土、雲母、アルミニウム粉末、エロージール、ベントナイト等が挙げられ、これらの中でも、耐湿熱バリア性能、接着強度の点から、溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、 水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが好ましく、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクが更に好ましい。これら充填材は2種以上を混合して用いても良い。
【0081】
上記(E)充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中、好ましくは0〜50重量%程度、より好ましくは20〜40重量%である。
【0082】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、接着強度を向上させ、耐湿信頼性が優れた液晶滴下工法用シール剤を得るために、(F)シランカップリング剤を含有することが好ましい。(F)シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3− アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられ、これらの中でも、接着強度の点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、該重合性官能基がエポキシ基及び/又は(メタ)アクリル基であるものがより好ましい。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。
【0083】
上記(F)シランカップリング剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中、好ましくは0〜5.0重量%、より好ましくは0.3〜3.0重量%である。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、(G)その他の添加物を添加しても良い。このような(G)その他の添加物の例としては、例えば有機溶媒、顔料、レベリング剤、消泡剤、導通材料、稀釈剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0085】
上記(G)その他の添加物の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中、好ましくは合計で30重量%以下とする。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、上記光硬化樹脂成分、上記熱硬化樹脂成分、更に必要に応じ、各種添加剤の所定量を添加し、溶解混合する。次いでこの混合物を公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより製造することができる。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下で説明する封止剤の他に、フィルムや造形物等の単独の硬化物としても用いることができる。
【0088】
本発明の封止剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いたものであり、液体又は液晶の化合物又は組成物を封止する封止剤、特に液晶滴下工法用シール剤として好ましく用いられ、封止される化合物又は組成物の種類に制限されず封止することができる。上記液体又は液晶の化合物又は組成物としては、液晶組成物、有機EL材料や、太陽電池等に用いられる有機半導体材料等が例に挙げられるが、重合性官能基を有する液晶化合物及び/又は重合性化合物を含有する重合性液晶組成物、特に、炭素−炭素不飽和二重結合を有する液晶化合物及び/又は重合性化合物を含有する重合性液晶組成物の封止に好ましく用いられる。かかる炭素−炭素不飽和二重結合を有する液晶化合物及び/又は重合性化合物としては、側鎖に共役又は共役してないアルケニル基、スチリル基、アリル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリル基、マレイミド基等を有する液晶化合物及び/又は重合性化合物等が挙げられ、(メタ)アクリル基を有する液晶化合物及び/又は重合性化合物が好ましい。
【0089】
本発明の封止剤を液晶滴下工法用シール剤として用いる場合、25℃における粘度が100〜800Pa・sであることが好ましく、200〜600Pa・sであることが好ましく、250〜350Pa・sであることが特に好ましい。25℃における粘度が100Pa・s未満の場合、シール剤の形状が保持できず基板上に広がってしまうため好ましくなく、800Pa・sを超える場合、シール剤の塗工が困難であり、生産性も低いため好ましくない。
【0090】
次いで本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、封止剤(シール剤)として、本発明の液晶滴下工法用シール剤を用いたものであり、例えば、所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、その周囲を本発明の液晶滴下工法用シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されるという構造を有する。封入される液晶としては、その種類は限定されないが、上述した重合性液晶組成物に対してより効果が大きい。また使用される基板としては、ガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。
その製法としては、例えば本発明の液晶滴下工法用シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、一対の基板の一方にディスペンサ等により液晶滴下工法用シール剤を塗布した後、該液晶滴下工法用シール剤の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機により液晶シール部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500mJ/cm2〜6000mJ/cm2、より好ましくは1000mJ/cm2〜4000mJ/cm2の照射量が好ましい。その後、90〜130℃で0.5〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示素子を得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示素子は、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。上記スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶滴下工法用シール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0092】
製造例1〜5は、(A)上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光ラジカル開始剤である化合物No.2、No.26、No.44、No.45及びNo.46の製造例を示し、製造例6及び7は、(B)ラジカル硬化性樹脂であるビスフェノールAエポキシアクリレート変性樹脂及びビスフェノールFエポキシメタクリレート変性樹脂の製造例を示し、製造例8及び9は、(C)潜在性エポキシ硬化剤の製造例を示し、実施例1〜9及び比較例1〜9は、本発明の硬化性樹脂組成物からなるシール剤及び比較用硬化性樹脂組成物からなるシール剤の製造例並びに評価例を示す。
【0093】
[製造例1]化合物No.2の製造
<ステップ1>アシル化
ジクロロエタン92gと塩化アルミ21.7g(163 mmol)からなる溶液に、4−(フェニルチオ)安息香酸15g(65mmol)を加え、次いで、6℃以下でプロピオニルクロライド9.0g(97mmol)を滴下した。1時間攪拌後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルを加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。更に有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒し、下記[化20]に示すアシル体aを18.7g得た。
【0094】
【化20】
【0095】
<ステップ2>オキシム化
上記<ステップ1>で得られたアシル体aの10.0g(35mmol)と濃塩酸3.6g(35mmol)とジメチルホルムアミド30gからなる溶液に、亜硝酸イソブチル5.4g(52mmol)を加え、室温で3.5時間攪拌した。攪拌後、反応液に、酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。固体の析出した有機層にヘキサンを加え、ろ過した。得られた固体を減圧乾燥し、下記[化21]に示すオキシム体aを8.6g得た。
【0096】
【化21】
【0097】
<ステップ3>オキシムエステル化
上記<ステップ2>で得られたオキシム体aの4.0g(13mmol)と、ピリジン2.1g(27mmol)とジメチルホルムアミド12gからなる溶液を、−10℃以下の状態にし、無水酢酸1.6g(15mmol)を滴下し、滴下後5℃で2時間攪拌した。攪拌後、反応液に、酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒し、化合物No.2を4.5g得た。
【0098】
[製造例2〜5]化合物No.26及び化合物No.44〜化合物No.46の製造化合物No.26、No.44、及びNo.45及びNo.46は、製造例1に記載した方法に従って、対応するケトンから製造した。
【0099】
[製造例6]ビスフェノールAエポキシアクリレート変性樹脂の製造
反応フラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂であるアデカレジンEP−4100(ADEKA社製、エポキシ価185g/eq)90g、及びトルエン133gを加え撹拌した。そこにトリエチルアミン1g、メトキシフェノール0.55g、及びアクリル酸51.7gを加え95℃まで加熱し、その温度で22時間撹拌した。反応はエポキシ価測定による残量が1%以下になるまで行った。70℃まで冷却しトルエン400gを加え、水250gで1回洗浄し、NaOH水溶液(0.1N)250gで3回洗浄し、更に、純水250gで、水層の電気伝導度が1μS/cmになるまで洗浄した。エバポレーターで脱溶媒(60℃)し、収量125.1g(収率94.1%)、粘度(25℃)911Pa・s、及び酸価0mgKOH/gのビスフェノールAエポキシアクリレート変性樹脂を得た。尚、粘度はE型回転粘度計にて25℃、1.5rpm/minにおける値を示す。
【0100】
[製造例7]ビスフェノールFエポキシメタクリレート変性樹脂の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるアデカレジンEP−4100をビスフェノールF型エポキシ樹脂であるアデカレジンEP−4900(ADEKA社製、エポキシ価170g/eq)に変更し、アクリル酸をメタクリル酸に変更した以外は製造例6と同様の手法で、収量127g(収率94%)、粘度(25℃)120Pa・S、及び酸価0mgKOH/gのビスフェノールFエポキシメタクリレート変性樹脂を得た。
【0101】
[製造例8]潜在性エポキシ硬化剤No.1の製造
反応フラスコ中の1,3−ビスアミノシクロヘキサン140gに、アデカレジンEP−4100の250gを100℃で添加した。その後140℃に上げ、2時間付加反応を行い、ポリアミンNo.1を得た。このポリアミンNo.1の25gに、融点100℃のフェノールノボラック樹脂であるMP−800K(旭有機材工業製、軟化点73℃)3gを加え、150℃にて1時間溶融マスキング反応を行い、潜在性エポキシ硬化剤No.1を得た。得られた潜在性エポキシ硬化剤No.1をジェットミルにて5μm以下の粒径に粉砕した。融点は78℃であった。
【0102】
[製造例9]潜在性エポキシ硬化剤No.2の製造
反応フラスコ中のプロピレンジアミン100gを60℃に加温し、これにアデカレジンEP−4100の340gを温度90〜100℃に保ち攪拌しながら少しずつ加え反応を行った。添加終了後、フラスコの温度を140℃に上げ、1.5時間付加反応を行い、ポリアミンNo.2を得た。ポリアミンNo.2の25gに、MP−800Kの8gを加え150℃にて1時間溶融マスキング反応を行い、潜在性エポキシ硬化剤No.2を得た。得られた潜在性エポキシ硬化剤No.2をジェットミルにて5μm以下の粒径に粉砕した。融点は80℃であった。
【0103】
[実施例1〜9及び比較例1〜9]シール剤の製造及び評価
以下に示す<原料>を下記[表1]又は[表2]の割合で配合し、三本ロールミルにて分散、混練を行った後、更に遊星式撹拌脱泡装置にて脱泡し、実施例1〜9及び比較例1〜9のシール剤を得た。尚、潜在性エポキシ硬化剤とエポキシ樹脂の配合は、対応する原料の反応基のモル比を合わせることで決定した。得られたシール剤を用いたテストセルの硬化性(反応率)及び溶出性を評価した。結果を下記[表1]及び[表2]に示す。実施例2並びに比較例2、4、6及び7のシール剤については影部反応率を評価した。結果を[表3]に示す。
【0104】
<原料>
(A−1)製造例1で得られた化合物No.2
(A−2)製造例2で得られた化合物No.26
(A−3)製造例3で得られた化合物No.44
(A−4)製造例4で得られた化合物No.45
(A−5)製造例5で得られた化合物No.46
(A'−1)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
(A'−2)2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン
(A'−3)1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
(A'−4)エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)
(A'−5)2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
(B−1)製造例6で得られたビスフェノールFエポキシメタクリレート変性樹脂
(B−2)製造例7で得られたビスフェノールAエポキシアクリレート変性樹脂
(C−1)製造例8で得られた潜在性エポキシ硬化剤No.1
(C−2)製造例9で得られた潜在性エポキシ硬化剤No.2
(C−3)アミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製):ヒドラジド系硬化剤、融点120℃
(D−1)EP−4000(ADEKA社製):ビスフェノールA−プロピレンオキシド変性グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
(D−2)EPR−4030(ADEKA社製):NBR変性型エポキシ樹脂
(E−1)SE−2500(アドマテック社製:シリカゲル):平均粒径0.5μm:充填剤
(E−2)F.351(ガンツ化成社製:コアシェルゴムフィラー):平均粒径0.3μm:充填剤
(F)Z−6040(東レ・ダウコーニング社製):シランカップリング剤
【0105】
<反応率>
1.1mm厚のガラス板に、実施例1〜9及び比較例1〜9の各シール剤をディスペンサで塗布し、同様のガラス板にて貼り合わせ、直径3mm程度の円形に押し伸ばし、試験片を作製した。超高圧水銀灯にて、300nm以下の波長をカットしたUV(3000mJ/cm2)を照射した。ラマン分光測定装置にて、照射前後のアクリル基ピーク面積(1635cm-1)及びREFピーク面積(1607cm-1)から反応率を算出した。
【0106】
<溶出性>
実施例1〜9及び比較例1〜9の各シール剤0.15gと下記[化22]に示す組成よりなる液晶組成物0.5gとをバイアル瓶の中で6時間接触させた。その後上澄みの液晶組成物を抜き取り、液体クロマトグラフィーで光ラジカル開始剤が検出されなかったものを○、検出されたものを×とした。
【0107】
<影部反応率>
図1(a)に示すように、ガラス基板の一部にアルミを蒸着させた。次に図1(b)に示すように、上記ガラス基板のアルミ非蒸着部1/アルミ蒸着部2の境界線上に、実施例2並びに比較例2、4、6及び7のシール剤3をディスペンサで塗布した。このガラス基板と、あらかじめ離型剤が塗工されたブラックマトリクス基板とを貼り合わせ試験片とした。該試験片のガラス基板側から、超高圧水銀灯にて、300nm以下の波長をカットしたUV(3000mJ/cm2)を照射した後、貼り合わせた試験片を剥がし、図1(c)の境界線4から影部方向に0、10、20、50、80μm離れた地点の反応率を測定した。反応率の算出は上記反応率の算出方法と同じであり、下記[表3]には境界線上(0μm離れた地点)の反応率を100として相対比として示した。
【0108】
【化22】
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
以上の結果より、本発明のシール剤は光硬化性が高く、液晶汚染性が低く、影部まで光硬化が可能なシール剤であり、該シール剤は液晶表示素子に有用であることは明らかである。
【符号の説明】
【0113】
1 アルミ非蒸着部
2 アルミ蒸着部
3 シール剤
4 境界線(照射部/影部)
5 影部
図1