(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電線は、前記芯線と前記管状端子との接合部と、前記熱可塑性樹脂層と前記管状端子との圧着部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電線接続構造体。
前記熱可塑性樹脂層に用いられる樹脂材は、前記被覆層の内層から該熱可塑性樹脂層への可塑剤の移行が抑制される樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電線接続構造体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる電線接続構造体を示す斜視図であり、
図2は、電線接続構造体の長手方向断面を示した断面図である。
電線接続構造体10は、
図1に示すように、管状端子11と、この管状端子11に圧着結合される電線13とを備える。管状端子11は、雌型端子のボックス部20と管状かしめ部30とを有し、これらの橋渡しとしてトランジション部40を有する。管状端子11は、導電性と強度を確保するために基本的に金属材料(本実施形態では、銅または銅合金)の基材で製造されている。なお、管状端子11の基材は、銅または銅合金に限るものではなく、アルミニウムや鋼、またはこれらを主成分とする合金等を用いることもできる。
また、管状端子11は、端子としての種々の特性を担保するために、例えば管状端子11の一部あるいは全部にスズ、ニッケル、銀めっきまたは金等のめっき処理が施されていても良い。また、めっきのみならず、スズ等のリフロー処理を施しても良い。
【0013】
電線13は、
図2に示すように、例えば、金属または合金材料で構成される素線14aを束ねた芯線14を、絶縁樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)で構成する導体絶縁層15で被覆して構成される。芯線14は、所定の断面積となるように、素線14aを撚って構成しているが、この形態に限定されるものではなく単線で構成しても良い。
なお、芯線を構成する金属材料は、高い導電性を有する金属であればよく、本実施形態では、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いているが、これらの他に、銅または銅金属を用いても良い。
【0014】
管状端子11のボックス部20は、例えば雄型端子等の挿入タブの挿入を許容する雌型端子のボックス部である。本発明において、このボックス部の細部の形状は特に限定されない。すなわち、管状端子11は、少なくともトランジション部40を介して管状かしめ部30を備えていれば良く、例えばボックス部を有さなくても良いし、例えばボックス部が雄型端子の挿入タブであっても良い。また、管状かしめ部30に他の形態に係る端子端部が接続された形状であっても良い。本明細書では、本発明の管状端子を説明するために便宜的に雌型ボックスを備えた例を示している。
【0015】
管状かしめ部30は、管状端子11と電線13とを圧着接合する部位である。管状かしめ部30の一端は、電線13を挿入することができる電線挿入口31を有し、他端はトランジション部40に接続されている。管状かしめ部30のトランジション部40側は、溶接等の手段によって閉口しており、トランジション部40側から水分等が浸入しないように形成されている。
管状端子11の金属基材(銅または銅合金)と芯線14(アルミニウムまたはアルミニウム合金)との接合部に水分が付着すると、両金属の起電力(イオン化傾向)の差から芯線14が腐食する。また、管状端子11と芯線14とが同一金属種(例えば、アルミニウム)で形成された場合であっても微妙な合金組成の違いによって、それらの接合部は腐食しやすい。
本構成では、管状かしめ部30は、有底の管状に形成されることにより、外部より水分等の浸入が抑制され、管状端子11と電線13(芯線14)との接合部の腐食を抑えることができる。なお、管状かしめ部30は、管状であれば腐食に対して一定の効果を得られるため、必ずしも長手方向に対して円筒である必要はなく、場合によっては楕円や矩形の管であっても良い。また、径が一定である必要はなく、長手方向で半径が変化していても良い。
【0016】
管状かしめ部30は、例えば、銅または銅合金からなる条材を平面展開した形状に打ち抜き、曲げ加工によって形成される。この場合、ボックス部を一体に設けても良い。
平面状態からの曲げ加工した際に、かしめ部に相当する部位はC字型断面となっているので、開放された両端部を突き合わせて溶接等によって接合することで、管状かしめ部30が形成される。管状かしめ部30の接合は、レーザ溶接が好ましいが、電子ビーム溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接法でもかまわない。また、はんだ、ろう等、接続媒体を使っての接合でも良い。また、管状かしめ部30は、上記したC字型断面の両端部を接合する方法に限らず、深絞り工法で形成されても良い。さらに、連続管を切断するとともに一端側を閉塞して、管状かしめ部30を形成しても良い。
【0017】
管状かしめ部30では、管状かしめ部30を構成する金属基材と電線13とが機械的な圧着接合されることにより、同時に電気的な接合を確保する。かしめ接合は、基材や電線(芯線)の塑性変形によって接合が行われる。従って、管状かしめ部30は、かしめ接合をすることができるように肉厚を設計される必要があるが、人力加工や機械加工等で接合を自由に行うことができるので、特に限定されるものではない。
【0018】
アルミニウムまたはアルミニウム合金は、銅及び銅合金と比較すると接触抵抗が高いため、芯線にアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられた場合には電線と端子との接続に不安がある。このため、管状かしめ部30の内壁面には、電線挿入口31から挿入された電線13の芯線14と接触する位置に、電線の周方向に延びる電線係止溝(不図示)を設け、電線13(芯線14)との接触圧を保つ構成としても良い。
【0019】
管状端子11と電線13とは管状かしめ部30によって圧着接合されている。本実施形態では、管状かしめ部30は、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を備えている。通常、圧着接合すると、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36がそれぞれ塑性変形を起こして、元の径よりも縮径されることで、電線13の芯線先端部14bおよび被覆先端部(圧着部)15aと圧着接合される。
管状かしめ部30と電線13とを圧着する場合には、
図2に示すように、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を、アンビル及びクリンパ(不図示)等の治具を用いて部分的に強圧縮することで塑性変形させる。
図2に示した例では、導体圧着縮径部35が、縮径率が一番高くなっている部分である。
【0020】
ところで、管状かしめ部30では、芯線14を強圧縮して導通を維持する機能と、導体絶縁層15を圧縮してシール性を維持する機能とが要求される。被覆圧着縮径部36では、その断面を略正円にかしめ、導体絶縁層15の全周に渡ってほぼ同等の圧力を与えることにより、全周に渡って均一な弾性反発力を発生させて、シール性を得ることが好ましい。
一方、実際の圧着工程では、アンビル上にセットした導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を備えた管状端子11に、適切な長さの導体絶縁層15をストリップした芯線先端部14bを挿入し、上方からクリンパを下降させ、圧力を加えて、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を、かしめる(圧着する)工法が取られている。
【0021】
被覆圧着縮径部36では,正円成形が好ましいが、アンビルとクリンパの上下からの挟み込みにより圧着加工するため、両工具間の隙間部二箇所に、管状端子の金属材料がはみ出していく挙動が発生する。このため、
図5に示すように、輪切り断面における被覆圧着縮径部36内面の形状は略正円とならず、上記工具間の隙間部に対応する部位37,37が外部へ出っ張った形状となってしまうため、この部位37,37にて被覆圧着縮径部36から導体絶縁層15への圧力が不足し、被覆圧着縮径部36の内面と導体絶縁層15の表面との間に隙間38,38が生じ、この隙間38,38がリーク経路となって水分が浸入する恐れがあった。
また、本実施形態では、管状かしめ部30は、曲げ加工されたC字型断面の両端部を突き合わせてレーザ溶接しているため、この溶接部39にひけが生じ、溶接部39の肉厚が減少するとともに、溶接部39のビードが平滑な内面ではなく不規則な凹凸構造を形成することにより、溶接部39付近の内面がリーク経路となる恐れがあった。
また、溶接部39と隣接し、溶接による熱影響を受ける部位の強度が低下することにより、圧着加工時に溶接部39及びその付近が不均質変形を受けるため、溶接部39付近の内面がリーク経路となる恐れがあった。
また、アンビルとクリンパの上下方向からの圧着加工では、管状かしめ部30の下側(アンビル側)が、上側(クリンパ側)よりも、受ける圧力が強い傾向にあるため、圧着後の導体絶縁層(被覆層)15の弾性反発力も、下側(アンビル側)が上側(クリンパ側)より強くなることがあった。このため、管状かしめ部30における上側(クリンパ側)での弾性反発力が不足し、上側での導体絶縁層15と管状かしめ部30との界面全域がリーク経路となる恐れがあった。
【0022】
このため、本構成では、
図3に示すように、電線13の導体絶縁層(被覆層)15は、芯線14を覆う内層41の外側に熱可塑性樹脂層42が設けられた二層構造となっている。内層41及び熱可塑性樹脂層42は、それぞれ押出し法によって、芯線14の外側に形成される。なお、本実施形態では、導体絶縁層(被覆層)15は、二層構造であったが、熱可塑性樹脂層42を最外層に備えるものであれば、二層以上に構成しても構わないのは勿論である。また、本実施形態では、電線13は、長さ方向(軸方向)の全長に亘って、導体絶縁層(被覆層)15を内層41と熱可塑性樹脂層42との二層構造に形成されているが、少なくとも被覆圧着縮径部36に対応する被覆先端部(圧着部)15aを部分的に二層構造とすれば、他の領域については熱可塑性樹脂層42を設けなくても良い。
【0023】
内層41を構成する絶縁樹脂材としては、上記したポリ塩化ビニル以外にも、例えば、架橋ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム等を主成分とするハロゲン系樹脂や、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、エチレンプロビレンゴム、珪素ゴム、ポリエステル等を主成分とするハロゲンフリー樹脂が用いられ、これらに可塑剤や難燃剤等の添加剤を含んでいても良い。
また、熱可塑性樹脂層42を構成する樹脂材としては、ホットメルトが適している。例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等を主剤としたものが好適であり、これらの複数を混合したものや、別の添加成分を含むもの等でも良い。
熱可塑性樹脂層42を構成する熱可塑性の樹脂材は、内層41を構成する樹脂材との関係で選択するのが好ましく、内層41から熱可塑性樹脂層42への可塑剤の移行が発生し難い種類の樹脂材が好ましい。
例えば、内層41がポリ塩化ビニルを主成分とするハロゲン系樹脂の場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体を基質とするホットメルトを熱可塑性樹脂層42に適用するのが好ましい。また、内層41が、ポリエチレンを主成分とするハロゲンフリー樹脂の場合には、ポリエチレン又はポリオレフィンを基質とするホットメルトを熱可塑性樹脂層42に適用するのが好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂層42の樹脂材の溶融処理温度T
outは、電線接続構造体10を自動車ハーネスで使用する場合には、電線接続構造体10が配置される環境における最高温度以上に設定することが好ましい。例えば、車室内やその周辺で使用されるのであれば、120℃〜160℃の溶融温度を備えた樹脂材が好ましく、エンジン室内で使用されるのであれば、さらに高い180℃程度の溶融温度が好ましい。
一方、管状端子11は、一部または全部にスズめっき等の処理が施されている場合には、樹脂材の溶融温度の上限は、スズの融点である231.9℃を上回らないことが好ましい。
更に、本実施形態では、熱可塑性樹脂層42は、押出し法によって、内層41の外側に形成されるため、熱可塑性樹脂層42の樹脂材の溶融処理温度T
outは、内層41の樹脂材の押出し工法での処理温度(押出工程温度)T
inよりも低い温度とすることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂層42は、内層41に比べて薄く形成されており、熱可塑性樹脂層42の厚みは30μm〜150μmに形成することが好ましい。
熱可塑性樹脂層42の厚みが30μm未満の場合には、導体絶縁層15の内層41周囲、および、圧着時に外部へ出っ張った部位37への熱可塑性樹脂の充填が不十分となるという点で好ましくない。一方、厚みが150μmを超えると、電線13を圧着前に管状かしめ部30挿入する工程において、管状かしめ部30の管内壁と電線13(導体絶縁層15)との干渉を避けるため、管状かしめ部30の管内径を大きくせざるを得なくなり、管状端子11そのものが肥大してしまう。これに加え、過剰な熱可塑性樹脂が、導体圧着縮径部35へ流動し、芯線14の電気抵抗の上昇を起こす可能性がある。さらに、熱可塑性樹脂の厚みが厚すぎることにより、熱可塑性樹脂層42内の圧力均衡が崩れて、管状かしめ部30の管内壁と熱可塑性樹脂層42との間で隙間を生じるおそれがあるという点で好ましくない。
【0025】
本実施形態では、電線13の導体絶縁層15は、内層41と最外層に熱可塑性樹脂層42とを備える二層構造となっている。このため、電線13を管状かしめ部30に圧着接合したのちに、被覆圧着縮径部36を所定温度(例えば、160℃)に加熱すると、
図4に示すように、最外層の熱可塑性樹脂層42が軟化(または溶融)し、この軟化した樹脂材が被覆圧着縮径部36内を流動し、この被覆圧着縮径部36の内面と導体絶縁層15の表面とを密着させる。このため、圧着接合した際に、被覆圧着縮径部36の内面と導体絶縁層15の表面とに隙間が生じたとしても、この隙間に軟化した樹脂材が入りこんで塞ぐことにより、該隙間を通じて管状かしめ部30内に水が浸入することが防止され、芯線14の腐食を防止できる。
【0026】
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
管状端子11の基材として、古河電気工業製の銅合金FAS−680(厚さ0.25mm、H材)を用いた。FAS−680の合金組成は、ニッケル(Ni)を2.0〜2.8質量%、シリコン(Si)を0.45〜0.6質量%、亜鉛(Zn)を0.4〜0.55質量%、スズ(Sn)を0.1〜0.25質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.05〜0.2質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
管状かしめ部30は、曲げ加工されたC字型断面の両端部を突き合わせ、内径3.2mmとなるようにレーザ溶接した。
【0027】
電線13の芯線14は、合金組成が鉄(Fe)を約0.2質量%、銅(Cu)を約0.2質量%、マグネシウム(Mg)を約0.1質量%、シリコン(Si)を約0.04質量%、残部がアルミニウム(Al)および不可避不純物であるアルミ合金線(線径0.42mm)を素線14aとして用いた。この素線14aを19本用いて2.5sq、19本撚りの芯線14にした。
【0028】
また、電線13の導体絶縁層15は、内層41にハロゲンフリー樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体を用い、最外層である熱可塑性樹脂層42には東亜合成株式会社製アロンメルトPPET6125(ポリオレフィン系)の熱可塑性樹脂材を用いた。
内層41は、芯線14の周囲を外径が2.8mmとなるように押出し法により形成し、熱可塑性樹脂層42は、内層41の表面に厚み15μmとなるように押出し法によって形成した。
【0029】
電線13は、ワイヤストリッパを用いて電線端部の導体絶縁層15を剥離して芯線14を露出させる。この状態で電線13を管状端子11の管状かしめ部30に差し込み、管状かしめ部30の導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を、アンビル及びクリンパを用いて部分的に強圧縮することで圧着結合する。
圧着後、被覆圧着縮径部36を160℃で2分間加熱した。
【0030】
環境試験は以下の手順で実施した。
電線13の一端と管状端子11とをそれぞれ把持し、管状端子11の端部にて電線13を屈曲させる動作を繰り返して、屈曲負荷を100回与えた。
次に、管状端子11をキャビティに挿入し、電線側が天井、端子側が地面向きになるようにして、キャビティが中空に浮くように試験装置にセットし、塩水噴霧試験を行った。塩水噴霧試験は、5質量%塩水を35℃に調整し、連続で1000時間噴霧した。
その後、四端子法を用いて、導体圧着縮径部35と芯線14の管状端子11が取り付けられていない側の端部との電気抵抗を測定した。更に、電気抵抗を測定した後に、管状端子11を解体して管状かしめ部30内の芯線14の腐食(劣化)状況を目視で確認した。
【0031】
(実施例2)
熱可塑性樹脂層42の厚みを30μmとした点を除いて、他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0032】
(実施例3)
熱可塑性樹脂層42の厚みを50μmとするとともに、圧着後、被覆圧着縮径部36を加熱する時間を3分間とした。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0033】
(実施例4)
熱可塑性樹脂層42の厚みを150μmとするとともに、圧着後、被覆圧着縮径部36を加熱する時間を3分間とした。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0034】
(実施例5)
内層41の外径を2.7mmとするとともに、熱可塑性樹脂層42の厚みを150μmとした。また、圧着後、被覆圧着縮径部36を加熱する時間を3分間とした。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0035】
(実施例6)
圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0036】
(実施例7)
熱可塑性樹脂層42の厚みを30μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0037】
(実施例8)
熱可塑性樹脂層42の厚みを50μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0038】
(実施例9)
内層41の外径を2.7mmとするとともに、熱可塑性樹脂層42の厚みを100μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0039】
(実施例10)
内層41の外径を2.7mmとするとともに、熱可塑性樹脂層42の厚みを130μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0040】
(実施例11)
熱可塑性樹脂層42には東亜合成株式会社製エバーグリップAS852(ポリオレフィン系)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを80μmとした。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0041】
(実施例12)
熱可塑性樹脂層42には東亜合成株式会社製エバーグリップAS852(ポリオレフィン系)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを80μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0042】
(実施例13)
熱可塑性樹脂層42には、ヘンケル社製ポリアミド系ホットメルト(Macromelt OM681)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを100μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36を加熱する時間を5分間とした。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0043】
(実施例14)
熱可塑性樹脂層42には、ヘンケル社製ポリアミド系ホットメルト(Macromelt OM681)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを100μmとした。圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0044】
(比較例1)
電線13の導体絶縁層15を上記した内層41のみとし、熱可塑性樹脂層42を設けなかった。このため、比較例1では圧着後の加熱もしていない。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0045】
(実施例15)
また、電線13の導体絶縁層15は、内層41にハロゲン系樹脂であるポリ塩化ビニルを用い、最外層である熱可塑性樹脂層42には3M社製Scotch−Weld(登録商標)ホットメルト接着材3747(エチレン酢酸ビニル共重合体系)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42は、内層41の表面に厚み100μmとなるように押出し法によって形成した。圧着後、被覆圧着縮径部36を180℃で2分間加熱した。その他の条件及び環境試験は実施例1と同一とした。
【0046】
(実施例16)
圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例15と同一とした。
【0047】
(実施例17)
熱可塑性樹脂層42には東亜合成株式会社製エバーグリップAS852(ポリオレフィン系)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを80μmとし、圧着後、被覆圧着縮径部36を160℃で2分間加熱した。その他の条件及び環境試験は実施例15と同一とした。
【0048】
(実施例18)
熱可塑性樹脂層42には東亜合成株式会社製エバーグリップAS852(ポリオレフィン系)の熱可塑性樹脂材を用いた。熱可塑性樹脂層42の厚みを80μmとし、圧着後、被覆圧着縮径部36の加熱をしなかった。その他の条件及び環境試験は実施例15と同一とした。
【0049】
(比較例2)
電線13の導体絶縁層15を上記した内層41のみとし、熱可塑性樹脂層42を設けなかった。このため、比較例2では圧着後の加熱もしていない。その他の条件及び環境試験は実施例15と同一とした。
【0050】
上記した実施例1〜18、比較例1〜2の試験結果を表1に示す。この表1では、腐食(劣化)状況を「腐食無し」、「一部の導体表面が変色」、「大部分の導体表面が変色」、「導体の大部分が腐食」の4つに区分けして評価している。この評価において、露出した導体(芯線)表面の80%以上が変色(腐食)したものを大部分、10%を下回ったものを一部とする。
また、電気抵抗の測定試験では、初期に計測した抵抗値からの増分が1mΩ未満のものを◎、3mΩ未満のものを○、3mΩ以上10mΩ未満のものを△、10mΩ以上のものを×として表1に記載した。
【0051】
【表1】
この表1によれば、導体絶縁層15として、内層41の外側に熱可塑性樹脂層42を設けなかった比較例1、2では、初期に計測した抵抗値からの増分が10mΩ以上(×)となると共に、芯線14の大部分が腐食するという結果となった。
これに対し、熱可塑性樹脂層42を設けるとともに、圧着後に加熱したもの(実施例1〜5,11,13,15,17)では、電気抵抗の増分は、3mΩ未満(○)に抑えられ、芯線14の腐食も見られなかった。
【0052】
また、圧着後に加熱をしなかった実施例6〜10,12,14,16,18では、熱可塑性樹脂層42の厚みによって芯線14の表面に腐食による変色が見られた実施例があった。具体的には、熱可塑性樹脂層42の厚みが15μm(実施例6)では、隙間充填が不十分なために浸水経路から塩水が浸入したため、熱可塑性樹脂層42の厚みが130μm(実施例10)では、熱可塑性樹脂層42内部の圧力均衡が崩れて隙間を生じため、導体絶縁層15と被覆圧着縮径部36との隙間を通じて、管状かしめ部30内に水が浸入すること完全に防止できなかったものと考えられる。
このため、圧着後に加熱をしない場合には、熱可塑性樹脂層42の厚みは30μm〜100μmとすることが望ましい。
【0053】
次に、別の実施形態について説明する。
この実施形態では、内層41を構成する樹脂材に融点が200℃以上である高温溶融樹脂材を用い、熱可塑性樹脂層42を構成する樹脂材に融点が150℃以下である低温溶融樹脂材が用いられている。この実施形態においても、電線13は、押出し法によって、長さ方向の全長に亘って、導体絶縁層(被覆層)15を内層41と熱可塑性樹脂層42との二層構造に形成されているが、少なくとも被覆圧着縮径部36に対応する被覆先端部(圧着部)15aに低温溶融樹脂材を塗布して二層構造とすれば、他の領域については熱可塑性樹脂層42を設けなくても良い。また、熱可塑性樹脂層42を最外層に備えるものであれば、二層以上に構成しても構わないのは勿論である。
【0054】
この実施形態では、内層41を構成する高温溶融樹脂材として、ポリアミド系樹脂であるポリアミド系合成繊維やポリエチレンテレフタラートやポリスチレンを用いることができる。一方、熱可塑性樹脂層42を構成する低温溶融樹脂材として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンの他にポリプロピレンを用いることができる。
この実施形態によれば、圧着後の管状かしめ部30(被覆圧着縮径部36)を例えば、150℃に加熱することにより、熱可塑性樹脂層42の樹脂材のみが溶融するため、この溶融した樹脂材が被覆圧着縮径部36の内面と導体絶縁層15の表面とに隙間に入りこんで該隙間を塞ぐことにより、隙間を通じて管状かしめ部30内に水が浸入することが防止され、芯線14の腐食を防止できる。
【0055】
次に、この実施形態の実施例について説明する。
(実施例19)
管状端子11及び電線13の芯線14は、実施例1と同一のものを使用した。
電線13は、線径2.1mmの芯線14上に導体絶縁層15を設け、電線13の外径を2.8mmに形成した。導体絶縁層15は、内層41と最外層としての熱可塑性樹脂層42を備える二層絶縁層に形成した。内層41は、融点が225℃のポリアミド系合成繊維を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.2mmに形成し、熱可塑性樹脂層42は、融点147℃のポリ塩化ビニル(低温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.15mmに形成した。
【0056】
また、電線13は、ワイヤストリッパを用いて電線端部の導体絶縁層15を剥離して芯線14を露出させる。この状態で電線13を管状端子11の管状かしめ部30に差し込み、管状かしめ部30の導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36を、アンビル及びクリンパを用いて部分的に強圧縮することで圧着結合した。圧着後、被覆圧着縮径部36を180℃で加熱した。
【0057】
環境試験は、エアリーク試験により行った。
エアリーク試験は、管状端子11に圧着接続された電線13を、管状端子11を容器に貯溜した水に浸すとともに、管状端子11とは反対側の電線13の端部に、加圧空気供給装置から延びるエアチューブを接続し、加圧空気供給装置から所定の空気圧で加圧空気を注入し、管状かしめ部30から目視により確認可能な気泡が発生する際の圧力を検出した。
上記したエアリーク試験を、初期状態、サーマルショック後、及び、高温放置後についてそれぞれ行った。初期状態においては、空気圧を100kPaに加圧しても気泡は確認されなかった。
【0058】
サーマルショックは、−40℃の環境下に30分放置した後に120℃の環境下に30分放置する工程を1サイクルとし、この工程を1000サイクル行った。
高温放置は、120℃の環境下に120時間放置した。
【0059】
(実施例20)
導体絶縁層15として、内層41には、融点147℃のポリ塩化ビニル(低温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み0.2mmに形成し、熱可塑性樹脂層42には、融点147℃のポリ塩化ビニル(低温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.15mmに形成した。その他の条件及び環境試験は実施例19と同一とした。
【0060】
(実施例21)
導体絶縁層15として、内層41には、融点147℃のポリ塩化ビニル(低温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み0.2mmに形成し、この内層41の外側に、同じく融点が225℃のナイロン(登録商標(高温溶融樹脂材))を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.15mmに形成した。その他の条件及び環境試験は実施例19と同一とした。
【0061】
(実施例22)
導体絶縁層15として、内層41には、融点が225℃のナイロン(高温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.2mmに形成し、この内層41の外側に、同じく融点が225℃のナイロン(高温溶融樹脂材)を用いて、押出し法により厚み(絶縁厚)0.15mmに形成した。その他の条件及び環境試験は実施例19と同一とした。
【0062】
上記した実施例19〜22の試験結果を表2に示す。この表2では、エアリーク試験によって気泡が検出された際の空気圧を記載した。
【0063】
【表2】
この表2によれば、内層41に高温溶融樹脂材を用いるとともに、外層としての熱可塑性樹脂層42に低温溶融樹脂材を用いた実施例19では、初期状態、サーマルショック後、及び、高温放置後のいずれの場合にも、空気圧を100kPaに加圧しても気泡は検出されなかった。この現象は、圧着後、熱可塑性樹脂層42が加熱により結晶部分や非結晶部分が壊れ、流動性を示して融解膨張し、管状端子11(管状かしめ部30)と導体絶縁層15間の微小隙間を圧着によって生じる外周方向への応力で埋める作用が働いたものと考えられる。
一方、実施例20〜22では、初期状態では、気泡の検出はされなかったものの、サーマルショック後、及び、高温放置後には、平均45kPa程度の空気圧で気泡が検出され、本構成による被覆圧着縮径部36と導体絶縁層15との密閉性が安定していることが判明した。