(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱処理を、温度80〜150℃で1〜100時間の条件(ただし、温度が80℃の場合は熱処理時間を10時間以上とする)で行う、請求項1に記載の端子の製造方法。
電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として有してなり、前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm2である端子材。
電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上の端部に最表層として有してなり、前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm2である端子材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銅もしくは銅合金は、例えば、近赤外領域(例えば、波長1.08μm)のレーザ光の銅に対する反射率は90%以上と大きい。この為、銅もしくは銅合金の基材をレーザ溶接する場合、近赤外領域でのレーザ光の反射率が大きいのでレーザ溶接の効率が悪く、溶接速度を速めることができなかった。
【0007】
銅のレーザ溶接の効率の悪さを改善するためには、銅の表面にレーザ光を吸収しやすい金属をめっき処理により付けることが知られている。しかし、スズまたはスズ合金では、そもそもスズ自体の近赤外線レーザ光の反射率が約60〜80%であって、これ以上向上させるには限界がある。また、銅の表面にめっき等で形成したスズには、一般的に表面に薄い酸化スズの皮膜を生じているが、薄い酸化スズ皮膜の場合、近赤外線レーザ光の反射率は、例えば、波長約1μmのレーザ光の反射率が約70〜80%である。このため、ある程度のレーザ溶接の効率向上は可能であったが、十分な溶融を高速で実現するには、さらなるレーザ溶接の効率の向上が必要であった。例えば、スズめっき処理を施す場合においても、そのめっき処理の形態がレーザ溶接性に影響するため、効率の良いめっき処理形態を実現する必要があった。
【0008】
一方、このような金属層を設けないで、銅もしくは銅合金をレーザ溶接するには、レーザ出力を高めることが考えられる。しかし、レーザ光の出力が高すぎるとレーザ光発振装置にレンズ冷却システムを必要とすることから、現状では500W級の出力システムとなるが、最大出力の500Wで使用すると、レーザ出力に使用している半導体発光素子の劣化が著しく短寿命となってしまうため、400Wが限界となる。
しかも、レーザ溶接の溶接速度を速くできても、ブローホールや割れが発生したり、溶接部の機械強度が低かったり、溶接部の板厚が非溶接部の板厚から変化してしまうこと等の欠陥があった。
【0009】
従って、本発明は、欠陥が少なく、レーザ溶接の溶接効率に優れる、端子の製造方法、該製造方法で得られた端子、端子材、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、銅もしくは銅合金からなる基材の表面に、近赤外の波長領域を有するレーザ光の吸収が良好な金属としてスズめっき層またはスズ合金めっき層を設けて、種々検討した。この検討の過程で、スズ層またはスズ合金層の表面に生じるスズの酸化皮膜を所定のレーザ光の反射率が低い(つまりレーザ光の吸収が良い)状態として形成することで、前記基材のレーザ溶接性を向上させることができることを見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、上記課題は以下の手段により解決される。
(1)電線と圧着接合する管体かしめ部を有する端子の製造方法であって、
銅または銅合金製基材を用意し、
湾曲されて前記管体かしめ部を形成する管展開部を与える領域上に前記基材の最表層としてスズ層またはスズ合金層を形成し、
前記最表層が形成された基材を熱処理に付して、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜をスズ層またはスズ合金層の表面に形成させ、
前記熱処理に付した基材を端子の展開形状に打ち抜き、
前記打ち抜いた基材の前記管展開部を湾曲させて互いに突き合わせて管体に成形し、
突き合わせた部分を近赤外線レーザ光照射によるレーザ溶接によって接合して前記管体かしめ部を形成する
各工程をこの順に有してなる、端子の製造方法。
(2)前記熱処理を、温度80〜150℃で1〜100時間の条件(ただし、温度が80℃の場合は熱処理時間を10時間以上とする)で行う、(1)に記載の端子の製造方法。
【0012】
(3)前記(1)または(2)に記載の製造方法で製造されてな
り、前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm2である端子。
【0013】
(4)電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として有してな
り、
前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm2である端子材。
(5)電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上の端部に最表層として有してな
り、
前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm2である端子材。
(
6)前記(4)
または(5)に記載の端子材の管体かしめ部となる管展開部が湾曲されて展開端部同士が互いに突き合わせた部分がレーザ溶接で接合されてなる端子。
【0014】
(
7)前記(3)または(
6)に記載の端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続する電線の終端接続構造体の製造方法であって、前記管体かしめ部内に前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を挿入し、前記管体かしめ部をかしめて前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を前記管体かしめ部内に圧着接続する、電線の終端接続構造体の製造方法。
【0015】
(
8)前記(3)または(
6)に記載の端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続した電線の終端接続構造体。
【0016】
(
9)
銅または銅合金製基材上に、スズ層またはスズ合金層を有してなり、該スズ層またはスズ合金層の最表面には、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜を有し、
前記スズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して50〜200mC/cm
2である
、端子用の銅または銅合金板材。
【発明の効果】
【0017】
本発明の端子材によれば、前記スズ層またはスズ合金層の表面に近赤外領域のレーザ光の反射率が良好な状態でスズの酸化皮膜を設けることによって当該スズ層またはスズ合金層の表面がレーザ光の吸収性が高い(レーザ光の反射率が低い)ために効率よくレーザ溶接を行うことができるので、端子を簡便な方法で効率よく製造するのに好適である。
本発明の端子材の製造方法は、前記端子材を簡便な方法で効率よく製造することができる方法として好適である。
本発明の端子の製造方法は、前記端子を簡便な方法で効率よく製造することができる方法として好適である。
本発明の板材によれば、前記スズ層またはスズ合金層の表面がレーザ光の吸収性が高い(レーザ光の反射率が低い)ために効率よくレーザ溶接を行うことができるので、端子材や端子を簡便な方法で効率よく製造するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の端子は、管体構造を有する端子である。
本発明の端子材は、波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を、管展開部上に、好ましくは少なくともその管展開部の溶接される領域の表面に、最表層として、有する。そして、この波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を最表層として設けることによって、端子材(基材)のレーザ光の反射率を低く(つまりレーザ光の吸収率を高く)して、レーザ溶接効率を大きく高めることが可能である。酸化スズにはSnO
2、SnO等の形態があり、これらが混合した状態もあるが、その組成に関わらず、本発明の条件で酸化スズを生成させることで、レーザ光の反射率が低くなる。
【0020】
以下、スズ層またはスズ合金層の表面に設けられるこの波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜を、単に前記スズの酸化皮膜ともいう。また、この波長1.08μmのレーザ光の反射率が60%以下であるスズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を、単に前記スズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層ともいう。
本発明においては、波長1.08μmのレーザ光の反射率は60%以下であるが、現実的には30%〜60%が好ましく、30%〜40%がより好ましい。
【0021】
<<端子の基材>>
<基材>
本発明の端子の基材は、効率よくレーザ溶接することが可能な基材であれば、特に制限されるものではないが、電子部品の端子として使用するのに適した金属材料が好ましい。電子部品の端子および接続構造体を作製するためには、導電性と強度およびばね性を確保するために、銅もしくは銅合金が好ましく、銅合金が特に好ましい。
銅としては、タフピッチ銅や無酸素銅等が挙げられる。
銅合金の例としては、例えば、黄銅(例えば、CDA(Copper Development Association)のC2600、C2680)、リン青銅(例えば、CDAのC5210)、コルソン系銅合金(Cu−Ni−Si−(Sn,Zn,Mg,Cr)系銅合金)等が挙げられ、なかでもコルソン系銅合金が好ましい。
【0022】
コルソン系銅合金の例としては、例えば、古河電気工業株式会社製の銅合金FAS−680、FAS−820(いずれも商品名)、三菱伸銅製の銅合金MAX−375、MAX251(いずれも商品名)などを用いることができる。また、CDAのC7025等を用いることもできる。
上記FAS−680の合金組成の一例は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.55質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.1質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。上記FAS−820の合金組成の一例は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.65質量%、マグネシウム(Mg)を0.1質量%、およびクロム(Cr)を0.15質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
【0023】
また、他の銅合金組成の例としては、例えば、Cu−Sn−Cr系銅合金、Cu−Sn−Zn−Cr系銅合金、Cu−Sn−P系銅合金、Cu−Sn−P−Ni系銅合金、Cu−Fe−Sn−P系銅合金、Cu−Mg−P系銅合金、Cu−Fe−Zn−P系銅合金などを挙げることができる。
ここで、以上に記載した必須元素以外に不可避不純物を含んでいても良いことは当然である。
【0024】
基材の厚さには特に制限はないが、0.08〜0.64mmが好ましい。
【0025】
<スズ層またはスズ合金層>
以下、前記スズ層またはスズ合金層について、代表として、スズめっき層またはスズ合金めっき層を例に説明する。
本発明では、少なくともレーザ光を照射する側の銅もしくは銅合金の表面もしくはレーザ光照射される領域に、銅や銅合金よりもレーザ光を吸収しやすいスズ層またはスズ合金層を配設し、その表面に前記スズの酸化皮膜を設けることによって、レーザ光の反射率を低下させるものである。
スズ合金の例としては、スズコバルト、スズパラジウム、スズ銅、スズビスマス、スズ銀等が挙げられる。
【0026】
この表面に前記スズの酸化皮膜を設ける前のスズ層またはスズ合金層の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、スズやスズ合金の電気めっき処理の他、無電解めっき法、溶融めっき法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相成長法、等の種々の皮膜形成技術を用いることができる。この内、操作性やコストなどの観点から、めっき処理を施してスズ層やスズ合金層を設けることが好ましい。
【0027】
<<めっき処理>>
めっき処理は、常法によって、基材に脱脂および酸洗いをこの順に施した後で行う。
【0028】
<めっき前処理(電解脱脂処理、酸浸漬処理)>
電解脱脂槽、水洗槽、酸洗槽、水洗槽に順次通してめっき前処理を行った。
(電解脱脂処理)
処理液: 10%水酸化ナトリウム水溶液
処理温度: 60℃
陰極電流密度: 3.5 A/dm
2
処理時間: 30秒
(酸浸漬処理)
処理液: 10%硫酸水溶液
処理温度: 25℃
浸漬処理時間: 30秒
【0029】
本発明において、スズまたはスズ合金めっき処理は、常法に従って行うことができる。例えば、めっき浴温度20〜60℃、電流密度1〜25A/dm
2の条件でめっきを施すことが好ましい。
【0030】
<スズ層またはスズ合金層の近赤外領域のレーザ光の反射率低下処理>
本発明においては、スズ層またはスズ合金層の表面の近赤外領域のレーザ光の反射率を、波長1.08μmのレーザ光の反射率で60%以下まで低下させることがでる処理方法であれば、どのような方法でも採用することができる。例えば、スズめっき層またはスズ合金めっき層の表面の性状、構成、化学組成を変化させてもよい。代表的には、めっき処理後に、以下に述べる特定の熱処理を行うことによって前記スズの酸化皮膜を得ることができる。
【0031】
本発明では、レーザ光が照射される面側に形成されたスズめっき層もしくはスズ合金めっき層の表面に前記スズの酸化皮膜を形成するものであり、前記表面の少なくともそのレーザ溶接に必要な部分に、前記スズの酸化皮膜を均一に形成するものである。ここで、均一にとは、スズの酸化皮膜が基材面方向に形成されていることをいい、このスズの酸化皮膜の厚さの均一性を問うものではない。
【0032】
前記スズの酸化皮膜を形成する前のスズ層またはスズ合金層の厚みは、通常0.2〜2μm、好ましくは0.3〜1μm、さらに好ましくは0.3〜0.5μmである。
本発明においては、このような厚みのスズ層またはスズ合金層を有する基材を以下の条件で、熱処理することが好ましい。
なお、熱処理の雰囲気は特に限定されるものでなく、酸素加圧下で行うと酸化スズへの酸化反応は促進されるが、酸化されすぎて、微妙な調整が困難である。従って、ゆっくり酸化させる方法が好ましく、常温常圧下〔例えば、25℃、101kPa(1atm)〕であっても良いし、加圧下〔例えば、203kPa(2atm)以上1.01MPa(10atm)以下〕としてもよい。なお、密閉容器を使用することで、高湿度、高温、例えば、相対湿度100%(R.H.)の条件下で行ってもよい。このうち、常圧下であれば、乾燥空気雰囲気下〔例えば、相対湿度30%(R.H.)以下〕とすることが好ましい。一方、加圧下であれば、湿度100%RHのプレッシャークッカー(例えば、温度105℃の高温高湿)内で熱処理を施してもよい。
【0033】
熱処理温度は、80℃以上が好ましく、80〜150℃がより好ましい。
熱処理時間は、80℃の場合、少なくとも10時間以上の熱処理時間とすることが必要で、100時間以下とすることが好ましい。80℃を超える熱処理温度であれば、1時間を超える熱処理時間であればよく、100時間以下とすることが好ましい。また、100℃〜150℃の範囲であれば、1時間以上の熱処理時間であればよく、好ましくは10時間以上であり、100時間以下とすることが好ましい。
本発明においては、前記形成されるスズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量に換算して
、50〜200mC/cm
2であ
る。
この厚み、すなわちカソード還元法における電荷量に換算されるスズの酸化皮膜は、上記熱処理条件で調製することができる。
【0034】
カソード還元法における電荷量の測定は、以下のようにして測定することができる。
図1に示す回路を有する電荷量測定装置を組む。電解セルEは,1000ml容器とし、0.1N(規定)のKCl溶液を満たした。比較電極を、Ag/AgCl電極とし、レコーダー(YOKOGAWA3057)へ接続して、時間ごとの電圧を記録した。定電流電源には、北斗電工製ポテンショスタット・ガルバノスタットHA−151を用い、試料測定面に対し、0.1mA/cm
2の電流を通電した。試料は、1cm角を露出させ他をテープでマスクし、露出部をPt対極Cへ正対させた状態でセットし、通電を開始した。通電中の電位を測定すると、
図2に示すようなカーブが呈示された。酸化スズが還元反応を進行している間は、一定の電位に滞留する。この滞留時間tと通電電流密度1mA/cm
2とを乗じた値が、反応の電荷量であり、還元電気量またはカソード還元量(ミリクーロン/cm
2、または、mC/cm
2)である。
カソード還元量(mC/cm
2)とは、酸化スズを強制的に金属スズに還元させた場合に必要とされる総電気容量である。また、酸化スズが全てSnOであったと仮定し、SnOの比重を用いて換算し、この値を基に、カソード還元量(mC/cm
2)の値を1.061倍するとスズの酸化皮膜厚さ(nm)の値が得られる。
【0035】
前記スズの酸化皮膜がその表面に形成された後のスズ層またはスズ合金層の厚さは、前記スズの酸化皮膜が形成される前と実質的に変化がなく、通常0.2〜2μm、好ましくは0.3〜1μm、さらに好ましくは0.3〜0.5μmである。この前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層の厚さが前記の範囲内であれば、良好な溶接性向上効果が奏される。
【0036】
前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層は、レーザ照射によるレーザ溶接後には、レーザ溶接部(後述の
図3などの、符号50)において基材の銅合金に溶融されて取り込まれている。これは、溶接前に前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層として存在していたスズまたはスズ合金が、溶接により、凝固組織内に取り込まれ、基材の銅母相内に固溶した状態であるか、および/または、Cu−Sn金属間化合物として銅母相内/外に晶出した状態である。なお、溶融部の外側までスズやスズ合金が付着していても良く、この場合は、スズやスズ合金の一部は基材中に取り込まれずに溶接後にも基材の表面に残留する。
【0037】
<<レーザ溶接方法>>
本発明では、溶接方法はどのような方法でも構わないが、レーザ溶接方法が好ましく、特に、対向面同士を突き合せてレーザ溶接する突き合わせレーザ溶接方法が好ましい。
【0038】
具体的には、基材を打抜きプレスし、バレル部を有する長方形の端子(連鎖型)を作製し、バレルを円形(筒状)に成形し、突き合せた部分をレーザ溶接するのが好ましい。
なお、基材の打抜きプレスは、任意の各種のポンチとダイが使用でき、必要に応じてクリアランスを調整する。
【0039】
本発明においては、前記スズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を、レーザ光の照射部位に設けることを特徴とする。このためには、前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を、かしめ部(
図3などでの符号30で示した部分)を形成する端子材の管展開部に設ける。少なくとも、管展開部の溶接部(
図3などでの符号50で示した部分)を形成する領域とその近傍に、前記酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を設けることが必要である。
また、この前記酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層は、プレス打ち抜き加工した端子材のかしめ部(30)を形成する管展開部上に、もしくは、管展開部の端部、すなわち管展開部の溶接部(50)を形成する領域とその近傍に、設けられていれば良く、端子材の全面に設けられていても良い。例えば、全面にめっきを施して前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を設ける場合は、プレス打ち抜き加工した端子材全体をめっき浴に浸漬してめっきを行う。かしめ部(30)を形成する管展開部の端部のみにめっきする場合は、めっきが不要な部分にマスクをしてからめっき浴に浸漬してめっきを行っても良い。
【0040】
さらには、管体かしめ部(30)を形成する管展開部を一旦馬蹄形状(∩状)に中間成形し、馬蹄形の両端部のみをめっき浴に浸漬することで、管展開部の端面とその周囲のみに部分めっきを行うことも可能である。この場合は、めっき完了後に、管展開部が管体になるように再度プレス成形することになる。
あるいはまた、管展開部のみに例えば板材の相当領域にストライプめっきを施して前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を設けてもよい。
さらにはまた、管展開部の溶接部(50)を形成する領域とその近傍のみに例えば板材の相当領域にスポットめっきを施して前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を設けてもよい。
【0041】
<レーザ光>
レーザ溶接に用いるレーザ光は、この目的に使用できるのであればどのような波長領域のレーザ光でも構わないが、近赤外領域〜赤外領域が好ましく、近赤外領域がさらに好ましく、近赤外線レーザ光を発振するファイバレーザ加工機を使用するのが特に好ましい。
近赤外線レーザ光は、発振波長が700nm〜2.5μmであり、好ましくは1000nm〜2000nmであり、波長1084nm±5nmのレーザ光の発振波長のレーザ光を用いることが特に好ましい。このようなレーザ光としては、イットリビウム(Yt)ドープガラスファイバレーザ光(発振波長1084nm)、エルビウム(Er)ドープガラスファイバレーザ光(発振波長1550nm)等がある。
【0042】
近赤外レーザ光の発振装置としては、連続発振するファイバレーザ装置、連続発振するYAGレーザ光発振装置、ガラスレーザ光発振装置等が挙げられるが、拡がり角の狭さ、レーザ光のビーム径の細さ、レーザ連続発振の安定性等からファイバレーザ発振器を用いることが好ましい。
【0043】
ここで、ビーム品質はシングルモードでもマルチモードでも用いることができる。レーザ出力は100〜600Wが好ましく、100〜400Wの出力でレーザ溶接を行うことが好ましい。また、集光スポット径は、ジャストフォーカス位置で20μm±5μmとし、出力密度が380MW/cm
2となる条件が好ましい。掃引速度は、100mm/秒以上が好ましく、300mm/秒以上がより好ましい。
【0044】
このような装置としては、例えば、古河電気工業株式会社製のASF1J218シリーズやASF1J221シリーズ(いずれも商品名)が挙げられる。
【0045】
<<端子、接続構造体>>
本発明の好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0046】
図3は本発明のレーザ溶接方法で製造された端子1の好ましい一実施形態を示している。この端子1は、雌型端子のボックス部20と、電線が挿入された後、圧着によって電線と端子の基材とを接続する管体かしめ部30を有し、管体かしめ部30とボックス部20を連結するトランジション部40を有する。ここで、溶接部50(図中、斜線で示す部分)は、対向する管展開部の打ち抜き端部同士を突き合わせてレーザ溶接されて管体かしめ部を形成している。前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層が溶融されたスズまたはスズ合金(以下、これらを併せてスズ成分ともいう)が、溶接部50で銅基材に取り込まれていることは、前述の通りである。
【0047】
雌型端子のボックス部20は、例えば雄型端子等の挿入タブの挿入を許容するボックス部である。本発明において、このボックス部20の細部の形状は特に限定されない。すなわち、本発明の端子の他の実施形態ではボックス部を有さなくてもよく、例えば、前記ボックス部に替えて雄型端子の挿入タブであっても良い。また他の形態に係る端子の端部であっても良い。本明細書では、本発明の端子を説明するために便宜的に雌型端子の例を示している。どのような接続端部を有する端子であっても、トランジション部40を介し管体かしめ部30を有していれば良い。
【0048】
管体かしめ部30は、
図4の長手方向の断面図の一部として示すように、基材32の内壁面33に、電線60、好ましくは絶縁被覆を剥いだ導体群(樹脂被覆された導体の複数の導体群)との接触圧を保つための、電線係止溝34aもしくは34bを有していてもよい。このような電線係止溝を設けることで、溝の山によって接圧を大きくすることが行われる。
図4において、電線係止溝34aは矩形断面の溝であり、電線係止溝34bは半円形断面の溝である。このような電線係止溝は、管体かしめ部30を形成する前に、基材そのものに加工を施しておくと、端子1を効率よく生産することができる。
【0049】
管体かしめ部30は、端子1と電線(図示せず)とを圧着接合する部位である。その一端はアルミニウム電線等の電線あるいはその導体を挿入することができる電線挿入口(導体挿入口)31を有し、他端はトランジション部40に接続されている。管体かしめ部30は、そのトランジション部40側で、例えばプレス加工等の潰し加工によって管体かしめ部30の対向する2つの管壁(通常は上下の管壁)を潰した上で、例えばレーザ溶接などの溶接加工によって閉口されて、この閉口部を底部とし前記電線もしくは導体の挿入口(31)で開口する「缶状」の構造を有している。端子1の基材(銅または銅合金など)とアルミニウム電線との接点に水分が付着すると、両金属の起電力の差からいずれかの金属(合金)が腐食してしまうので、管体かしめ部30は外部より水分等が侵入しないような管体構造となっている。
【0050】
電線挿入口31から電線が挿入されるので、電線係止溝34aおよび34bの両方またはいずれか一方が芯線と接触する位置に設けられるのが好ましい。電線は、通常芯線とこれを覆う絶縁被覆とからなっている。そして、電線と端子の電気的接合は、先端の絶縁被覆部を除去(皮むき)した芯線が端子のかしめ部と圧着接合されることで行われる。従って、接圧を十分に確保することが、電気的性能の維持に繋がるので、電線係止溝のような溝が必要となる。このような溝はセレーションとも呼ばれる。
そして、少なくとも一本以上の電線係止溝がかしめ部30の内面に設けられることで、端子と電線とが確実に圧着されるので、長期信頼性に優れる。
【0051】
管体かしめ部30は、本発明においては、好ましくは、
図5に示すように、管体かしめ部30aと強かしめ部を有し、強かしめ部は圧縮率が異なる複数の領域からなるのが好ましい。後述する
図10には、本発明で特に好ましい第一の強かしめ部30bと第二の強かしめ部30cを有するものを示した。
通常、圧着接合すると、管体かしめ部30は塑性変形を起こして、元の径よりも縮径されることで、電線60との圧着接合をなす。
図10に示した例では、第二の強かしめ部30cが、縮径率が一番高くなっている部分である。このように圧着接合を2段階の縮径で行ってもよい。
図5は、端子1に、絶縁被覆61された電線60の絶縁被覆を剥がした(皮むきした)導体(芯線)が挿入された接続構造体10を示す。電線60は、絶縁被覆61と図示しない電線の芯線とからなっている。電線60は裸線であってもよいが、防食の観点から通常は絶縁被覆された電線を用いる。
【0052】
本発明の電線の終端接続構造体は、アルミニウム系材料からなる電線と銅系材料からなる端子の基材との異種金属間腐食の防止に寄与する。また、レーザ溶接部50およびその近傍の熱影響部の機械特性は、レーザ溶接前の基材よりも低下しているものの、大きく損なうことなく、実用上、レーザ溶接部50および熱影響部の破損しない程度以上の機械特性を保持している。したがって、レーザ溶接部50および熱影響部は、製造時および使用時にレーザ溶接部が破損しにくく、端子製造時の歩留まりおよび端子の長期信頼性に寄与する。その一方で、レーザ溶接部50および熱影響部は、基材である端子板材よりも柔らかい焼きなまし部ともすることができるため、電線と端子の圧着箇所のスプリングバックを防ぐことができ、この点からも端子の長期信頼性に優れる。
上記スプリングバックとは、加工部分が元の形状に戻ろうとする現象である。すなわち、電線(図示せず)と圧着接合させた管体かしめ部の変形部分が弾性力等でもとの形状に戻ろうとするため、管体かしめ部30の内面と電線との間に隙間ができてしまう。このようなスプリングバックが端子の圧着部で起こると、電線60と端子1との接点不良を招くことは勿論、間隙に水分の侵入を許しやすくなり腐食の原因となる恐れがある。
【0053】
本発明の電線の終端接続構造体10を製造する場合、管体かしめ部30のレーザ溶接部50を積極的に塑性変形させる圧着接合が好ましい。端子1の管体かしめ部30と電線60とを圧着する場合は、専用の治具やプレス加工機等で行う。このとき、管体かしめ部30の全体を縮径させても良いが、管体かしめ部を凹型のように部分的に強加工して圧着する場合もある。このときは、レーザ溶接部50の塑性変形量が大きくなるように位置を調整すると良い。すなわち、レーザ溶接部50の直上(外側)にプレス加工時の凸部先端があたるように調整すると、レーザ溶接部50の変形量が大きくなる。このようにすると、比較的軟らかいレーザ溶接部50が塑性変形の多くを担うことができるために、スプリングバックの低減に寄与することができる。
【0054】
図6は、二片の切り口面を突き合わせて、突き合わせ部36をファイバレーザ溶接装置FLでレーザ光Lを照射して、レーザ溶接している状態を模式的に示したものである。端子1は、導電性と強度を確保するために基本的に金属材料(銅合金等)の基材で作製されている。また、レーザ溶接部50の形状は特に制限はない。レーザ溶接部50のように管体かしめ部30の長手方向に帯形状に形成するのが好ましい。
【0055】
<電線>
本発明の接続構造体で使用する電線は、特に限定されるものではないが、アルミニウム電線が好ましい。アルミニウム電線60は、一般にアルミニウム芯線64とこれを覆う絶縁被覆61とからなっている(
図10参照)。本発明では、樹脂被覆されたアルミニウム芯線の導体62を複数束ねた導体群63を絶縁被覆61されたアルミニウム電線が好ましい。
アルミニウム芯線の合金組成には、特に制限はなく、各種の任意のものを用いることができる。
【0056】
<<端子材および端子と、それらの製造方法>>
次に、端子1の製造方法について説明する。この端子1は管体かしめ部30を有し、この管体かしめ部30にレーザ溶接部(前記
図3参照。)50を有するので、この構成を達成し得るならば製造方法は限定されるものではない。
【0057】
端子1および端子材32は、好ましくは以下のようにして製造される。
銅または銅合金からなり、端子材32を打ち抜く基材の少なくとも管体かしめ部30を形成する部分(管展開部30)の上に特定のスズ層またはスズ合金層を設ける。次いで、上述の熱処理に付してスズの酸化皮膜をスズ層またはスズ合金層の表面に形成する。その後に、
図7に示されるように、この基材を打ち抜いて、長手方向に連なるよう(連鎖型)に端子1を平面展開した端子形状に加工して作製した複数の端子材32を得る。次いで、曲げ加工によってボックス部20およびトランジション部40を形成する。このようにすると生産効率の点で好ましい。一方、銅または銅合金からなる板材を平面展開した端子形状に打ち抜いて本発明の端子材の形状を得て、このかしめ部を形成する部分の上に前記スズ層またはスズ合金層を設け、次いで、上述の熱処理に付してスズの酸化皮膜をスズ層またはスズ合金層の表面に形成する。その後に、曲げ加工によってボックス部20およびトランジション部40を形成する。このように、めっき処理工程と打ち抜き工程の工程順は適宜選択される。なお、基材としての板材または条材の特定の領域にSn層を設けた後に、個々の端子材32に打ち抜いてもよい。
次いで、曲げ加工等によって湾曲させて突き合わせた管展開部をレーザ溶接して管体かしめ部30を形成する。従って、端子形状に打ち抜かれた端子材は、ボックス部20、トランジション部40および管体かしめ部30を曲げ加工等によって形成できる形状を一体に有している。管体かしめ部30を曲げ加工等によって形成できる管展開部の形状としては、代表的には矩形であるが、一端が閉塞できる形状であれば特に限定されず、例えば、略扇形状、矩形またはこれらの組み合わせ形状を有していてもよい。ボックス部20およびトランジション部40を形成可能な形状はボックス部20およびトランジション部40の形状に応じて適宜に選択される。加えて、端子材は、少なくとも管展開部の表面に前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層が形成されている。このような形状および前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を最表層として有する本発明の端子材は、電線と圧着接合するかしめ部となる管展開部の部分を湾曲させて突き合わせて管体に成形し、突き合わせた部分を接合してかしめ部を形成する端子の製造方法に好適に供される。
【0058】
管体かしめ部30を形成するとき、平面状の管展開部は曲げ加工等によってC字型断面となっているので、この開放部分の端面を突き合わせてレーザ溶接することによって接合し、管体かしめ部30とする。管体かしめ部30の好ましい製造方法としては、
図6を用いて上記で説明したとおり、近赤外線レーザ光を発振するファイバレーザ加工機を用いたレーザ溶接にて行う。
【0059】
通常、銅合金は発振波長が近赤外線領域のレーザ光の吸収効率が悪いため、溶接幅を細くできなかったり、熱影響部(HAZ)の幅を狭くできなかったりする場合がある。また、銅合金はレーザ溶接により溶接部とその近傍の機械特性が低下することがある。そこで、レーザ溶接部50となる管展開部の表面に近赤外レーザ光の吸収が銅合金よりもよい前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を形成すること、およびファイバレーザ光のようなエネルギー密度が高いレーザ光を用いることで、上記課題は克服される。また、ファイバレーザ光による溶接によって、管体かしめ部30の突き合わせ部を溶接しながら、レーザ溶接部50を焼きなまし部とすることもできる。このように、一工程で管体かしめ部30の溶接加工と焼きなまし加工を行うことができるので、効率よく端子1を製造することができる。
【0060】
端子材の最表層である前記スズ層またはスズ合金層のスズの酸化皮膜表面は、近赤外線レーザ光の反射が銅合金表面よりも少ないため、近赤外線レーザ光の吸収性が良い。分光光度測定法による近赤外光の反射率測定では、通常のスズ層表面は、60〜80%程度の反射率であり、スズの酸化皮膜表面は60%以下の反射率であり、90%以上の反射率がある銅合金表面よりも低くなっている。このように近赤外レーザ光の吸収性が高い前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を形成した領域に近赤外レーザ光が照射されると、融点の低いスズ層またはスズ合金層が速やかに溶融して溶融池を形成し、これによりレーザ光の吸収がさらに高まり、その下地の管展開部表面が溶融し、さらにその溶融領域がレーザ光を吸収して管展開部の突き合わせ部分を溶融していくことで溶接が進行する。このように、前記スズの酸化皮膜を表面に有するスズ層またはスズ合金層を形成することで、レーザ光が前記スズ層またはスズ合金層で吸収されて熱に変換され、その熱によってこのスズ層またはスズ合金層が溶融し、その溶融したスズまたはスズ合金が溶接に寄与するため、さらに溶接性が向上する。
【0061】
<<板材>>
本発明の板材は、前記銅または銅合金からなる基材上に、好ましくはその管体かしめ部上の前記所定の部分に、前記スズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層を有しているものである。基材の種類、前記スズの酸化皮膜をその表面に有するスズ層またはスズ合金層、これらの詳細および好ましい範囲などは、前述の通りである。
この板材の幅は、前記端子材を、例えばプレス加工に打ち抜くことができる幅であれば特に制限はない。例えば、板材の幅は10mm〜60mm、好ましくは15〜40mmとすることができる。
ここで、本発明の板材はもっと幅狭のいわゆる板材をも包含する意味である。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例1
(1)板試験片の作製
基材として、厚み0.25mmの銅合金(古河電気工業株式会社製、FAS−680(商品名))の板材を使用し、該基材に脱脂および酸洗いをこの順に施し、下記めっき浴にて、浴温度30℃、電流密度5A/dm
2の条件でめっきを施し、最表層に、厚さ1μmのスズ層を有する基材(スズめっき基材)を作製した。
【0064】
<Snめっき処理>
処理液:硫酸スズ 80g/リットル、硫酸 50ミリリットル/リットル
処理温度:25℃
電流密度:3A/dm
2
めっき時間を調整し、めっき厚が1μmのSnめっき層を形成した。
【0065】
なお、スズ層の厚さは、蛍光X線膜厚計によって測定した、板試験片の端部上のスズ層の平均厚さである。
【0066】
上記基材を下記表1に記載の熱処理条件(熱処理雰囲気、温度、時間)で熱処理してスズの酸化皮膜を生成し、この時に、スズ層の表面のスズの酸化皮膜の厚さが、カソード還元法における電荷量(還元量)に換算して下記表1に記載の量になるように調製して、板試験片を作製した。
上記カソード還元法の還元量および波長1.08μmの近赤外レーザ光の反射率は、以下のようにして測定した。
【0067】
(カソード還元量の測定)
前記
図1を参照して説明したカソード還元法による電荷量測定装置により測定した。
【0068】
(波長1.08μmの近赤外レーザ光の反射率の測定)
日立ハイテク製の分光光度計U−4100、3cm角のサンプルにて、波長1.08μmにおける反射率を測定した。
【0069】
(2)プレス
このようにして得られた各板試験片を打抜きプレスし、
図7にプレス打ち抜き直後で成形前の状態を示すメス端子(連鎖型)を作製した。管体かしめ部30の長辺部の長さは8mmである。
【0070】
(3)突き合せ溶接
図8に示すように、展開状態の管体かしめ部30を円形(筒状)に成形し、管体かしめ部30を作製した。そして、前記
図6を参照して説明したように、その突き合わせ部分を、波長約1.08μmのファイバレーザ溶接装置(古河電気工業株式会社製、ASF1J221シリーズ(商品名))を用いて、ジャストフォーカス(集光スポット径が20μm)に設定することにより、出力密度が380MW/cm
2となる条件で、掃引速度90〜300mm/秒で、レーザ溶接した。
【0071】
(3)端子成型
さらに、
図9に示すように、管体かしめ部30のトランジション部40の片端を平らに潰して成形し、レーザ溶接によって封じて、管体かしめ部30をトランジション部40側で片端を封止した端子を作製した。
【0072】
(4)圧着
図10に示すように、電線導体を端子へ挿入し、上/下方向からクリンパ/アンビルにより圧着し、下記表1に記載の試料の接続構造体を作製した。
【0073】
(溶接性)
前記レーザ溶接における溶接性を、掃引速度と板厚の貫通状態から、以下の基準で評価した。
A(優):300mm/秒以上で板厚を貫通した
B(良):100mm/秒以上300mm/秒未満で板厚を貫通した
C(劣):100mm/秒で板厚を貫通できなかったか、あるいは、全く溶接ができなかった
【0074】
これらの結果をまとめて、下記表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上記表1から、本発明の試料
102、104〜106はいずれも波長1.08μmでの反射率が60%以下であり、溶接性
が優れ、レーザ溶接の効率が高いことがわかった。
一方、参考例の試料101、103はカソード還元量で規定されるスズ酸化物の量が本発明で規定する範囲を外れていたので、溶接性が本発明例よりも劣っていた。
一方、比較例の試料10aと10bでは、いずれも波長1.08μmでの反射率が60%を越えており、この結果、比較例の試料10aと10bは、いずれも溶接性に劣るものであった。
【0077】
これに加えて、本発明の試料
102、104〜106
、参考例の試料101、103はいずれも、比較の試料10a、10bと比較して、レーザ溶接の溶接速度が速く溶接性が向上されたことに加えて、ブローホールや割れの発生がなく、溶接部の強度(溶接強度)が溶接前の基材と遜色がない高い機械強度を保持するかあるいは強度が向上し、溶接部の板厚が非溶接部の板厚から変化してしまうことがなく、これらの欠陥を防ぐことができたことを確認した。