【実施例】
【0026】
[実施例1]
Ni−Si合金熱電対材料合金を作製して、熱電対の負極合金としての評価を行った。
(Ni−Si熱電対合金料の作製)
表1のように組成を変化させたNi−Si熱電対合金を作成した。残部はNiである。
具体的には、Co以外の原料成分を所定量配合した後、溶解させ、メルトダウン後にAlを添加して、次いで鋳造、冷却し鋳塊とし、該鋳塊を旋盤で外削後、熱間鍛造により直径15mmの丸棒とし,さらに溝ロールで7mmの線材とした。該線材に対し、適宜中間焼鈍(850℃×2時間)を行い、直径3.2mmまで冷間伸線加工して最終焼鈍(950℃×4.5m/min)を施した。
【0027】
(Ni−Si熱電対合金のCo効果評価)
最終焼鈍を施した線材を白金線と接続し、下記の比較校正法により200〜1000℃の範囲で熱起電力の測定を行った。このとき、評価基準はASTM E230−96のTable38における、200〜1000℃の単線熱起電力値基準値からの偏差が全温度域で76μV未満をGood、76μV以上をBadとして判定した。
【0028】
[比較校正法]
ASTM E220 に規定された条件および手順に準拠して行った。概略は以下のとおりである。測定装置は、
図5に記載されたものを採用した(ASTM E220 の
図1を引用)。検流計(Galvanometer)には市販のデジタルマルチメーターを用い電位(起電力)を測定した。具体的には、基準熱電対(Reference Thermocouple)と試験熱電対(Test Thermocouple)の熱起電力を温度に換算し、それぞれの温度差より試験熱電対の誤差を測定した。基準熱電対には、R型のものを適用した。図示した2つの熱電対は1つの電気炉(図示せず)に挿入され、200℃から1000℃まで昇温させることにより試験を行った。
【0029】
【表1】
資料NoがCから始まる試料は比較例で、太字下線部分が規定値を外れる。以下の表も同様。
【0030】
試験C15(比較例)として、特開2007−270185号公報に開示されたK型熱電対用合金(Si 2.50質量%、Co 1.20質量%、Cu 2.50質量%、Fe 0.15質量%、Mg 0.012質量%)を用いて同様の評価試験を行った。その結果、熱起電力の偏差はBadを大きく下回る結果であった。
【0031】
上記の結果より、Coの含有量が0.05質量%未満では、主成分のSi、Feがわずかに変動した場合、熱起電力特性に、大きな変動を生じる。Co含有量は、0.05〜0.5質量%の範囲では、成分のSi、Feに変動を生じた場合においても、熱起電力特性への影響が低減される。しかし、前記0.5質量%を超えると前記単線熱起電力値基準値より、熱起電力特性がプラス方向に逸脱を生じる。このことからCo含有量は、0.05〜0.5質量%に規定される。
【0032】
[実施例2]
Feの含有量の異なるNi−Si合金熱電対材料合金を作製して、熱電対の負極合金としての評価を行った。
(Ni−Si熱電対合金試料の作製)
Si:4.40質量%、Co:0.13質量%、Al:0.02質量%、残部がNiとする以外は、実施例1に記載した同様な方法で、Feの添加量を表2のように変化させた試料を作製した。
【0033】
(Ni−Si熱電対合金のFe影響評価)
実施例1と同様に比較校正法により評価を行った。
【0034】
【表2】
【0035】
Fe含有量が0.05質量%未満では前記単線熱起電力値基準値より熱起電力特性がプラス方向に逸脱を生じる。
また前記0.20質量%を超えると前記単線熱起電力値基準値より熱起電力特性がマイナス方向に逸脱するという問題が生じることから、Fe含有量は、0.05〜0.20質量%が望ましい。
【0036】
[実施例3]
Caの含有量の異なるNi−Si合金熱電対材料合金を作製して、熱電対の負極合金としての評価を行った。
(Ni−Si熱電対合金料の作製)
Si:4.40質量%、Fe:0.12質量%、Co:0.13質量%、Al:0.02質量%、残部がNiとする以外は、Caの添加量を表3のように変化させた試料を、それぞれ8試料ずつ作成した。具体的には、Ca以外の原料成分を所定量配合した後、溶解させ、さらにメルトダウン後にCaを添加した。次いで鋳造、冷却し鋳塊とし、該鋳塊を旋盤で外削後、熱間鍛造により直径15mmの丸棒とし,さらに溝ロールで7mmの線材とした。該線材に対し、適宜中間焼鈍(850℃×2時間)を行い、直径3.2mmまで冷間伸線加工して最終焼鈍(950℃×4.5m/min)を施した。
【0037】
(Ni−Si熱電対合金のCa効果評価)
最終焼鈍を施した線材を白金線と接続し、前記比較校正法により200〜1000℃の範囲で熱起電力の測定を行った。製作した8試料について熱起電力を測定し、各測定温度の熱起電力基準からの偏差を求めた。それぞれの熱起電力基準からの各測定温度における熱起電力の測定値の偏差データを用いて、これらの8個の偏差データが正規分布を有する母集団のデータと見なして標準偏差を求め、さらに前記標準偏差σから3σを求めて各温度における測定データのばらつきを評価した結果を表3に示す。
評価基準は、200〜1000℃の温度範囲における3σの最大値が20μV未満であるものをA1、20μV以上30μV未満であるものをA2、30μV以上であるものをA3として判定した。
【0038】
【表3】
【0039】
この結果から、Ca含有量が0.005〜0.02質量%の範囲(好ましくは0.005〜0.05質量%の範囲)では、製作毎の熱起電力の変動が低減される効果を有することが分かる。この結果から、Caを所定の範囲で添加することで、熱起電力のばらつきを防止できる。
【0040】
[実施例4]
(Ni−Si熱電対合金料の作製)
Co:0.13質量%、Fe:0.12質量%、Al:0.02質量%、残部がNiとする以外は、実施例1に記載した同様な方法で、Siの添加量を表4のように変化させた試料を作製した。
【0041】
(熱電対合金のSi影響評価)
実施例1と同様に比較校正法により評価を行った。
(Ni−Si熱電対合金の磁性評価)
最終焼鈍を施した線材の磁性を確認するため、室温下において磁石を用いて各試料の磁性確認を行った。このとき、磁性のあるものをBad、磁性のないものをGoodとして判定した。なお、磁性の有無はN型熱電対用負極とフェライト磁石を接触させ吸着させ評価した。吸着の有無で判断した。この磁性は磁場が発生する環境下でN型熱電対用負極使用される場合、磁場の影響により測定値に影響を生じ、正確な温度計測が出来ない場合があるため、通常ないことが好ましい。
(Ni−Si熱電対合金の加工性評価)
試料作製での熱間鍛造、溝ロール加工、伸線加工中において、試料に割れが発生した場合をBad、割れの発生がない場合をGoodで評価した。
【0042】
【表4】
【0043】
上記の結果より、Si含有量が3.0質量%未満では、ASTM E230−96に記載のTable38の単線熱起電力値基準値より、熱起電力特性がプラス方向に逸脱するということがあることが分かる。さらに、合金に磁性を付与することができることも分かる。Siの含有量が5.0質量%以上になると、熱間工程、伸線工程で割れが発生し加工が困難であった。これらのことから、Si含有量は、3.0〜5.0質量%の範囲に規定される。
【0044】
[実施例5]
Alの含有量を変えて、Ni−Si合金熱電対材料合金を作製して、熱電対の負極合金としての評価を行った。
(Ni−Si熱電対合金料の作製)
Si:4.40質量%、Fe:0.12質量%、Co:0.13質量%、残部がNiとする以外は実施例1に記載した同様な方法で、Alの添加量を表5のように変化させた試料を作成した。
(Ni−Si熱電対合金のAl影響)
実施例1と同様に比較校正法により評価を行った。
【0045】
【表5】
【0046】
Alの含有量が0.01質量%未満では前記単線熱起電力値基準値より熱起電力特性がマイナス方向に逸脱するということがあることが分かる。また前記0.10質量%を超えると前記単線熱起電力値基準値より熱起電力特性がプラス方向に逸脱することが分かる。これらのことから、Al含有量は、0.01〜0.10質量%に規定される。
【0047】
[実施例6]
(熱起電力の耐久性評価試料作製)
上記と同様な方法で表6に示すNi−Si熱電対合金を作製した。評価試料はφ3.2mmとした。また、耐久性評価のために同線径のN型熱電対正極合金と表6に示す試料を接続したN型熱電対を作製した。熱起電力耐久性試験は、合金試料を900℃の大気中で所定時間保持した後、1000℃における熱起電力値の経時変化を測定することにより、1000℃での初期特性値からの特性変化を評価したものである。
【0048】
【表6】
【0049】
熱起電力耐久性試験結果を
図6に示す。
図6より、本発明合金は、従来の合金と比較し高温状時間の環境下において、熱起電力特性の経時変化が従来よりも抑制されており、熱起電力耐久性に優れていることが分かる。
【0050】
上記実施例では、いずれも線材形状のものを用いて評価したが、任意の形状で使用することができる。例えば、板・条・棒等にも用いることができる。また、上記実施例は、いずれも熱電対用途として評価をしたが、例えばJIS C 1610規定(熱電対用補償導線)の補償導線にも適用可能である。