特許第5778244号(P5778244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778244ダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造および梱包方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778244
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造および梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/672 20060101AFI20150827BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20150827BHJP
   B65D 59/08 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B65D85/672
   B65D77/26 S
   B65D59/08
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-501461(P2013-501461)
(86)(22)【出願日】2012年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2012072637
(87)【国際公開番号】WO2013035749
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-196753(P2011-196753)
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】青山 真沙美
【審査官】 加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163184(JP,A)
【文献】 特開2010−228805(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2604907(JP,Y2)
【文献】 特開2007−161286(JP,A)
【文献】 実開昭58−046765(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/672
B65D 59/08
B65D 77/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のコアと、前記コアに巻きつけられ、所定の形状にプリカットされた長尺のダイシングダイボンディングフィルムと、からなるロールと、
前記コアの中空部に対応する凸部を有する側板と、
前記ロールと前記側板とを固定する2本から4本のバンドと、
を具備し、
前記バンドは、0℃から30℃において、長手方向の伸縮率が±1%以内であり、
前記凸部が前記コアの両端に嵌るように取り付けられ、
少なくとも2本の前記バンドは、前記側板の部位で互いに交差し、
一対のそれぞれの前記側板が上下方向に向くように載置された状態で、上側の前記側板を上方に持ち上げた際の前記側板間の距離変化量が、前記側板を持ち上げる前の前記側板間の距離の1%以下であることを特徴とするダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造。
【請求項2】
前記バンドで固定された前記側板および前記ロールが2つ以上並べられて梱包箱内に収容されることを特徴とする請求項1記載のダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造。
【請求項3】
前記側板の前記凸部とは逆側の面に凹部が設けられ、少なくとも2本の前記バンドが、前記凹部において交差することを特徴とする請求項1記載のダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造。
【請求項4】
少なくとも2本の前記バンドが、交差部で互いに固定されていることを特徴とする請求項1記載のダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造。
【請求項5】
所定の形状にプリカットされた長尺のダイシングダイボンディングフィルムを中空のコアに巻きつけて、ロールを形成し、
前記コアの中空部に対応する凸部を有する一対の側板を、前記凸部が前記コアの両端に嵌るように前記ロールに取り付け、
0℃から30℃において、長手方向の伸縮率が±1%以内のバンドを用い、
一対のそれぞれの前記側板が上下方向に向くように載置された状態で、上側の前記側板を上方に持ち上げた際の、前記側板間の距離変化量が、前記側板を持ち上げる前の前記側板間の距離の1%以下となるように、前記ロールと前記側板を、前記側板で交差するように2本から4本の前記バンドで固定することを特徴とするダイシングダイボンディングフィルムの梱包方法。
【請求項6】
前記バンドを設けた後、少なくとも2本の前記バンドを互いの交差部で固定することを特徴とする請求項5記載のダイシングダイボンディングフィルムの梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する際に用いるダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造およびこの梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハを個々のチップに切断分離する際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの2つの機能を併せ持つダイシングダイボンディングフィルムが開発されている。このようなダイシングダイボンディングフィルムとしては、通常プリカット加工が施されている。
【0003】
図8は、ダイシングダイボンディングフィルムの一例としてフィルム100を示す図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は図8(a)のD−D線断面図である。フィルム100は、離型フィルム103、接着剤層105、円形ラベル部107aおよび周辺部107bからなる粘着フィルム107等により構成される。
【0004】
接着剤層105は、ウエハの形状に対応する円形に加工されたものであり、離型フィルム103上に配置される。粘着フィルム107は、ダイシング用のリングフレームの形状に対応する円形部分の周辺領域が除去されたものである。粘着フィルム107の円形ラベル部107aは、接着剤層105を覆い、外周部が離型フィルム103と接触する。
【0005】
図8(b)に示すように、接着剤層105と円形ラベル部107aとが積層した部分は、粘着フィルム107の周辺部107bよりも厚い。このため、製品としてロール状に巻かれた際に、接着剤層105と円形ラベル部107aの積層部分と、周辺部107bとの段差が重なりあい、柔軟な接着剤層105表面に段差が転写される恐れがある。このような転写痕が発生すると、接着剤層105と半導体ウエハとの接着不良により、ウエハの加工時に不具合が生じるおそれがある。
【0006】
一方、このような転写痕の発生を抑制するためには、テープの巻き取り力を弱くする方法がある。しかし、この方法では、輸送時の振動などにより製品の巻きずれが生じる恐れがある。
【0007】
これに対し、このようなラベル痕を防止するために、プリカット形状を工夫する方法が考案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−2173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のようにプリカット形状を工夫する方法では、形状の調整が難しい上、フィルムの巻取り張力が強くなればラベル痕の発生を防止することはできない。したがって、巻取張力の調整が必要になる。また、従来の梱包方法では、コイルを持ち運びする場合に、製品の一部分に力が加わり、または、手を滑らせて製品を落下させるなど、製品にダメージを与える恐れがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、巻ずれを確実に抑え、取り扱い性にも優れるダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造およびこの梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために第1の発明は、中空のコアと、前記コアに巻きつけられ、所定の形状にプリカットされた長尺のダイシングダイボンディングフィルムと、からなるロールと、前記コアの中空部に対応する凸部を有する側板と、前記ロールと前記側板とを固定する2本から4本のバンドと、を具備し、前記バンドは、0℃から30℃において、長手方向の伸縮率が±1%以内であり、前記凸部が前記コアの両端に嵌るように取り付けられ、少なくとも2本の前記バンドは、前記側板の部位で互いに交差し、一対のそれぞれの前記側板が上下方向に向くように載置された状態で、上側の前記側板を上方に持ち上げた際の前記側板間の距離変化量が、前記側板を持ち上げる前の前記側板間の距離の1%以下であることを特徴とするダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造である。
【0012】
前記バンドで固定された前記側板および前記ロールが2つ以上並べられて梱包箱内に収容されてもよい。
【0013】
前記側板の前記凸部とは逆側の面に凹部が設けられ、少なくとも2本の前記バンドが、前記凹部において交差してもよい。少なくとも2本の前記バンドが、交差部で互いに固定されていてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、一対の側板でロールを挟み込むため、フィルムが輸送中等において巻ずれることがない。また、側板およびロールが、少なくとも2本のバンドが交差するように固定されているため、側板がずれることがない。また、バンドの長手方向の伸縮率が0℃から30℃において±1%以下であり、さらにハンドリング時の側板間距離の変化量を1%以下とすることで、ハンドリング時においても確実にフィルムの巻ずれを防止することができる。
【0015】
また、ロールを2つ以上並べて梱包箱に収納することで、梱包箱の段積み性にも優れる。また、側板の外面に凹部を形成し、凹部でバンドが交差するようにすることで、当該バンドをつかみやすく、ロールを梱包箱から取り出す作業などのハンドリング性が良い。また、バンド同士の交差部を固定することで、バンドのずれを防止することができる。
【0016】
第2の発明は、所定の形状にプリカットされた長尺のダイシングダイボンディングフィルムを中空のコアに巻きつけて、ロールを形成し、前記コアの中空部に対応する凸部を有する一対の側板を、前記凸部が前記コアの両端に嵌るように前記ロールに取り付け、0℃から30℃において、長手方向の伸縮率が±1%以内のバンドを用い、一対のそれぞれの前記側板が上下方向に向くように載置された状態で、上側の前記側板を上方に持ち上げた際の、前記側板間の距離変化量が、前記側板を持ち上げる前の前記側板間の距離の1%以下となるように、前記ロールと前記側板を、前記側板で交差するように2本から4本の前記バンドで固定することを特徴とするダイシングダイボンディングフィルムの梱包方法である。
【0017】
前記バンドを設けた後、少なくとも2本の前記バンドを互いの交差部で固定してもよい。
【0018】
第2の発明によれば、フィルムの巻ずれを確実に防止できるとともに、ハンドリング性にも優れ、転写痕の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、巻ずれを確実に抑え、取り扱い性にも優れるダイシングダイボンディングフィルムの梱包構造およびこの梱包方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】梱包構造1を示す分解斜視図。
図2】梱包構造1を示す斜視図。
図3】側板3を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
図4】側板3の圧縮強度試験方法を示す概略図。
図5】梱包構造1を示す分解斜視図。
図6】梱包構造1を持ち上げた状態を示す図。
図7】ロール5の収納形態を示す図。
図8】フィルム100を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のD−D線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、梱包構造1を示す分解斜視図、図2は、梱包構造1を示す斜視図である。梱包構造1は、主にロール5、側板3、収納袋11、バンド15、梱包箱13等から構成される。
【0022】
ロール5は、中空のコア7に対してフィルム9が巻きつけられて構成される。なお、フィルム9は、図8に示したフィルム100と略同様のものであり、表面に凹凸が形成されるダイシングダイボンディングフィルムである。
【0023】
コア7に対するフィルム9の巻取張力は、例えば10N〜20N程度であることが望ましい。フィルム9の巻取張力が20Nを超えると、前述の凹凸形状に伴う転写痕が発生する。また、フィルム9の巻取張力が10N未満では、フィルム9に巻きずれ等が生じる恐れがあるためである。なお、詳細は後述するが、通常、巻ずれを考慮して、フィルムの巻取張力は15N程度に設定されるが、本発明では、従来にない梱包構造を採用することで、より低い8N程度で巻き取っても巻ずれが生じることがない。
【0024】
ロール5は、収納袋11に入れられる。なお、フィルム9を構成する粘着剤や接着剤に、光(紫外線)硬化性組成物等を用いる場合には、収納袋11としては、これらの光等を透過しないものを用いることができる。
【0025】
収納袋11にロール5を入れ、脱気、ヒートシールされた状態で、その両端部には側板3が設けられる。図3は、側板3を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。
【0026】
側板3は、中央から放射状にリブが形成された略矩形形状の部材である。側板3の上面の略中央には、凹部17が設けられる。また、側板3の下面側の略中央には、凸部19が設けられる。凸部19は、側板の下方に突出する略円柱状の部位である。側板3の外縁部には、凸部19の形成方向と同方向にリブが形成される。リブの間は連続した板状であっても、図3に示すように貫通した穴が空いていてもよい。また、側板3の略矩形形状の四隅は角度を有していてもよいし、図3(a)に示すように弧を描いていてもよい。上下方向からかかる力を緩和し割れにくくするためには、穴が空いている、または/および弧を描いている方が望ましい。なお、側板3の形状は、図示した例に限られず、側板3の外形や、凹部17、凸部19の形状や大きさ、リブ形状等については、適宜設定することができる。また、側板3は、金型等を用いて一括成形で製造してもよいし、略矩形形状の板と凸部19などのパーツに分けて別々に製造してから組合せて成形してもよい。パーツごとに製造すると製品を分解して収納できるため、取扱いしやすい。
【0027】
また、フィルム9は、半導体装置を製造するために用いられるため、通常、クリーンルーム内で取り扱われる。このため、梱包構造1を構成するコア7、側板3、収納袋11、バンド15等は、クリーンルーム内で取り扱い可能な樹脂等で構成される。すなわち、紙、段ボール、繊維等の素材は不適である。樹脂としては、特に生分解性の樹脂を用いると環境負荷低減化が図れるためより望ましい。
【0028】
ここで、側板3の側方からの1500Nの圧縮力に対する変形量は2%以下であることが望ましい。図4は、側板3の圧縮強度試験方法を示す概略図である。図4に示すように、側板3の側方(凹部17、凸部19の形成方向と垂直な方向)に治具21を配置し、治具21に対して1500Nの力で圧縮力を付与させて(図中矢印C方向)、この際の圧縮変形量を測定した。その変形量が元の幅に対して2%を超えると、輸送時や後述するバンドでの固定時に、側板3が変形して、これに伴ってフィルム9に巻ずれ等が生じる恐れがある。
【0029】
図1図2に示すように、側板3の凸部19は、コア7の両端部の中空部に嵌められて取り付けられる。ここで、側板3をロール5に取り付けた状態で、ロール5(フィルム9)は側板3によって挟み込まれる。このため、フィルム9は、ロール状態において、その両側部が側板3で固定される。
【0030】
ここで、側板3をコア7に押し込んだ際、側板3によってフィルムの側端部が損傷しないように、コア7の幅は、フィルム9の幅と略同一またはやや小さいことが望ましい。また、側板3をコア7に嵌めた際に、側板3でフィルム9の両側端部を確実に保持するためには、必要に応じて、側板3とフィルム9側端部の隙間に緩衝用の弾性部材等を配置してもよい。また、側板3のサイズをロール5の外径よりもやや大きくし、ロール5が側板3の外縁部のリブの内部に収まるようにすれば、梱包箱内面とロール5との接触を防止することができる。
【0031】
図2に示すように、一対の側板3が上下端に取り付けられたロール5に対して、側板3およびロール5は2本のバンド15で固定される。バンド15は少なくとも2本が交差するように側板3およびロール5(収納袋11)の外部に全周に渡って設けられて、側板3およびロール5が固定される。
【0032】
バンドを2本とする場合、2本のバンド15は、側板3の略中央で交差する。すなわち、2本のバンド15の交差部は、凹部17(図3)の位置となる。したがって、2本のバンド15の交差部近傍は、側板3と接触せず、側板3(凹部17)との間に隙間が形成される。したがって、ロール5を持ち上げる際、凹部17で形成される隙間に手(指)を挿入して、バンド15の交差部をつかんで持ち上げることができる。したがって、梱包箱からの取り出し時や、複数のロール5が並べられた状態から、ロール5を容易に持ち上げることができる。
【0033】
また、図5に示す梱包構造1aのように、さらにバンドを増やして4本してもよい。この場合、4本のバンドは、2本ずつを井型状に形成される。したがって、中央部での交差が難しくなりロール5を容易に持ち上げることはやや困難になるが、斜向かいの交差部分に指などを差し入れて持ち上げることでバランス良くロール5を取り出すことが出来る。また、バンド4本の場合は1本と3本を互いに交差するように掛けても良い。いずれにしても1箇所以上の交差部を設けることでロール5を容易に持ち上げることが出来るようになる。
【0034】
なお、2本のバンド15の交差部は、互いに固定してもよい。例えば、バンド15同士を融着や接着、または他の結束部材を用いて固定してもよい。また、側板3の外縁部にバンドが嵌められる浅い溝を設け、バンドが掛かる位置を固定することで、交差部が凹部17(図3)の位置に来るように誘導してもよい。このようにすることで、交差部の位置がずれることがなく、ハンドリングがより容易となる。
【0035】
また、バンド15としては、クリーンルーム内に持ち込み可能な樹脂製であることが望ましい。特に生分解性の樹脂を用いると環境負荷低減化が図れるためより望ましい。また、前述のように、バンド15をつかんでロール5を持ち上げる際に、バンドが切れることがないように、引張破断強度もしくは5%モジュラスが200N以上であることが望ましい。
【0036】
図6(a)は、梱包構造1(梱包箱除く)を示す正面図である。一対の側板3が上下方向に位置するようにロール5が配置される。この状態では、バンド15によって両側板3は、ロール5に対して確実に固定される。この際の側板3間の距離をH1とする。
【0037】
次に、図6(b)に示すように、この状態から上方の側板3を持ち上げる(図中矢印B方向)。ロール5を完全に持ち上げた際の側板3間の距離をH2とする。すなわち、(H2−H1)は、梱包構造の自重によって、バンド15の伸びおよび側板3の遊びによって生じる、距離の変化量となる。
【0038】
本発明では、梱包構造の重量、バンド15の強度、側板3の遊び等を考慮して、この側板間距離の変化量(H2−H1)が、H1の1%以下となるように設定されることが望ましい。すなわち、梱包構造の重量が設定されると、それに対して、上述の関係となるように、バンド15の強度および側板3の遊びが設定される。また、ダイシングダイボンディングフィルムは輸送、保管などの時は5℃以下の環境に置かれ、ハンドリングする時は常温下に置かれることから温度変化による影響が小さい方が好ましい。具体的には、バンド15は0から30℃において、長手方向の伸縮率が±1%以内であることが望ましい。
【0039】
このようにして形成されるロール5等は、図1図2に示すように、梱包箱13に挿入される。なお、梱包箱13は、運搬・保管時に保護するものであり、クリーンルーム内で取り扱われる前に、内部のロール5等は取り出される。このため、梱包箱13は段ボール製でも良い。
【0040】
また、図では、2つのロール5を梱包箱13に収納する例を示すが、本発明はこれに限られない。しかし、輸送時の梱包箱の段積み性や、取り扱い性を考慮すると、一つの梱包箱13に対して、2巻または4巻のロール5を収納することが望ましい。1巻のロール5では、梱包箱13の底面積が小さくなり不安定になるため、複数段に段積みすることが困難となる。また、6巻以上になると、梱包箱13の大きさが大きくなり、また重くなるため、取り扱いが困難となる。このため、2巻または4巻のロール5を梱包箱13に収納することが望ましい。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、ロール5が側板3で挟み込まれるため、通常よりも巻取張力が弱くとも、巻ずれの発生を防止することができる。また、側板3の凸部19がコア7に嵌めこまれるため、側板3は運搬時等にずれることがない。また、側板3の強度が十分であるため、変形等による位置ずれも防止することができる。
【0042】
また、側板3には凹部が形成され、バンド15が凹部17の位置で交差するため、容易にバンド15の交差部をつかんでロール5を持ち上げることができる。また、交差部が互いに固定、もしくはバンドが掛かる位置が固定されていれば、交差部の位置がずれることがない。
【0043】
また、側板3を上下方向に配置して、上部の側板3を持ち上げた際の側板間距離の変化量を元の側板間距離の1%以下とすることで、取り扱い時に巻ずれが生じることを防止することができる。
【0044】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0045】
各種の梱包形態に対して、その評価を行った。評価対象のフィルムとしては、図8に示すようなダイシングダイボンディングフィルムを作成して用いた。以下、各構成の製造方法を説明する。
【0046】
<粘着フィルムの作製>
溶媒のトルエン400g中に、n−ブチルアクリレート128g、2−エチルヘキシルアクリレート307g、メチルメタアクリレート67g、メタクリル酸1.5g、重合開始剤としてベンゾイルペルオキシドの混合液を、適宜、滴下量を調整し、反応温度および反応時間を調整し、官能基をもつ化合物(1)の溶液を得た。
【0047】
次にこのポリマー溶液に、放射線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物(2)として、別にメタクリル酸とエチレングリコールから合成した2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.5g、重合禁止剤としてハイドロキノンを適宜滴下量を調整して加え反応温度および反応時間を調整して、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)の溶液を得た。続いて、化合物(A)溶液中の化合物(A)100質量部に対してポリイソシアネート(B)として日本ポリウレタン社製:コロネートLを1質量部を加え、光重合開始剤として日本チバガイギー社製:イルガキュアー184を0.5質量部、溶媒として酢酸エチル150質量部を化合物(A)溶液に加えて混合して、放射線硬化性の粘着剤組成物を調製した。
【0048】
続いて、調製した粘着剤層組成物を厚さ100μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体基材フィルムに、乾燥膜厚が20μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥し、粘着フィルム1Aを作製した。
<離型フィルム>
離型フィルム2Aとして厚さ25μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0049】
<接着フィルムの作製>
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量197、分子量1200、軟化点70℃)50質量部、シランカップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5質量部、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン3質量部、平均粒径16nmのシリカフィラー30質量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、更にビーズミルを用いて90分混練した。
【0050】
これにアクリル樹脂(質量平均分子量:80万、ガラス転移温度−17℃)100質量部、6官能アクリレートモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5質量部、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体0.5質量部、キュアゾール2PZ(四国化成(株)製商品名、2−フェニルイミダゾール)2.5質量部を加え、攪拌混合し、真空脱気し、接着剤を得た。上記接着剤を離型フィルム2A上に塗布し、110℃で1分間加熱乾燥して、膜厚が20μmのBステージ状態(熱硬化性樹脂の硬化中間状態)の塗膜を形成し、離型フィルム2A上に接着剤層3Aを形成し、冷蔵保管した。
【0051】
<プリカット加工>
冷蔵保管していた接着剤層3Aが形成された離型フィルム2Aを常温に戻し、接着剤層に対して、離型フィルムへの切り込み深さが10μm以下になるように調整して直径220mmの円形プリカット加工を行った。その後、接着剤層の不要部分を除去し、粘着フィルム1Aをその粘着剤層が接着剤層と接するように、離型フィルム2Aを室温でラミネートした。そして、粘着フィルム1Aに対して、離型フィルムへの切り込み深さが10μm以下となるように調節して接着剤層と同心円状に直径290mmの円形プリカット加工を行ってウエハ加工用テープ4Aを作製した。
【0052】
以上により制作されたフィルムをそれぞれの方法で梱包した。
【0053】
(実施例1)
プリカット加工したウエハ加工用テープ4Aを巻き始めと巻き終わりに約1.2mのラベルのない部分を設け、10Nで300枚を巻き取った。これをポリエチレン製の袋に収納し、脱気後、ヒートシールして図3の形状のポリプロピレン製の側板を両端部に取り付けた。さらに、PPバンド2本が十字になるように掛けて融着して接合した。側板間距離の変化量(図5のH2−H1)は側板間距離(H1)の0.3%とした。同じものを2巻作製し、図7(a)に示すように、段ボール箱である梱包箱13に2巻収納して、実施例1のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0054】
(実施例2)
図7(b)に示すように、梱包箱13aに4巻収納した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0055】
(実施例3)
側板間距離の変化量が1%となるようにPPバンドを掛けた以外は実施例1と同様にして、実施例3のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0056】
(実施例4)
バンド4本を井型状に掛けた以外は実施例1と同様にして、実施例4のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0057】
(実施例5)
PPバンド2本を融着させず、側板の四辺の外縁部に溝を設けてバンドを掛けた以外は実施例1と同様にして、実施例5のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0058】
(比較例1)
巻取り張力が40Nであること以外は実施例1と同様にして、比較例1のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0059】
(比較例2)
図7(c)に示すように、梱包箱13bに1巻収納した以外は実施例1と同様にして、比較例2のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0060】
(比較例3)
側板がダンボール製であること以外は実施例1と同様にして、比較例3のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
【0061】
(比較例4)
側板間距離の変化量が2%となるようにPPバンドを掛けたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のウエハ加工用テープ梱包体を得た。
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表中の「巻きずれ」および「転写痕」は、以下のように評価した。まず、各梱包体を1ヶ月間冷蔵庫内(5℃)で保管後、輸送用トラックに載せて平塚〜神戸間(約1000km)を冷蔵状態のまま往復した。その後、各梱包体を開梱し、ロールを常温に戻してから包装袋を開封し、コアのみを固定して自然荷重でロールを1分間放置した際の巻きずれの有無を観察し、巻きずれが2mm以内であれば「○」、巻きずれが2mm以上であれば「×」とした。
【0064】
次に、ロールを解き、目視にて転写痕の有無を観察して評価した。様々な角度から目視観察しても転写痕又はボイドが確認できないものを「◎」とし、角度によっては、若干の転写痕又はボイドが確認出来るものを「○」とし、どの角度から目視観察しても、フィルム上に転写痕又はボイドが確認できるものを「×」とした。
【0065】
また、各梱包体を3段に積み、1ヶ月間冷蔵庫内(5℃)で保管後、運搬用台車に載せ0.01〜0.25m/secの加速度にて、荷崩れの有無を観察した。荷崩れが無かった場合には「○」、荷崩れが有った場合には「×」とした。
【0066】
また、各梱包体を開梱し、ロールを取出す際のハンドリング性を評価した。非常に取り扱いやすく、ハンドリング性及び生産性に優れるものを「◎」とし、取り扱いやすく、ハンドリング性及び生産性がよいものを「○」とし、取り扱い難く、ハンドリング性及び生産性に劣るものを「×」とした。
【0067】
側板を使用した実施例1〜3および比較例1〜3では巻きずれの発生は無かったが、側板間距離の変化量が大きい比較例4では巻きずれが発生した。側板間距離の変化量を小さくすることで巻きずれを防止可能であることが分かった。
【0068】
転写痕に関しては各実施例、比較例ともに完全に抑制することは出来なかったものの、巻取り張力が40Nと高い比較例1において、「×」評価となった。すなわち、巻取張力によって転写痕の発生に差が出ることが分かった。
【0069】
段積み性については、1巻を梱包箱に収納した比較例2において荷崩れが発生した。梱包箱には2巻以上収納した方が段積みした場合の安定性が大きいことが分かった。
【0070】
ハンドリング性については、バンドを強く梱包した実施例1〜2、5及び比較例1では製品取出しが容易であった。実施例3ではバンドが若干ゆるいため製品の取出し性にやや劣った。実施例4ではバンドの交差部分にくぼみがないため取り出すきっかけがつかみにくい点でハンドリング性にやや劣った。比較例2では製品の取出しは容易であるが、1巻ずつ梱包箱に収納してあるため、1巻ずつ開梱する必要があり生産性が若干劣る。比較例3ではダンボール製の側板を使用しているため、製品を使用するクリーンルームにそのまま持ち込むことが出来ず、クリーンルーム外で側板を外してハンドリングする必要があり、ハンドリング性について劣っている。比較例4ではバンド強度が弱いため持ちにくくハンドリング性が劣った。
【符号の説明】
【0071】
1………梱包構造
3………側板
5………ロール
7………コア
9………フィルム
11………収納袋
13、13a、13b………梱包箱
15………バンド
17………凹部
19………凸部
21………治具
100………フィルム
101………コア
103………離型フィルム
105………接着剤層
107………粘着フィルム
107a………円形ラベル部
107b………周辺部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8