(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」および/ または「メタクリ」を意味する。
【0029】
本発明の実施形態に係る電子デバイス封止用樹脂組成物は、(A)下記化学式(1)で表される末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン重合体、(B)光重合開始剤、を含み、質量平均分子量が5万以上の熱可塑性樹脂を含まない。
【化1】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水酸基またはH
2C=C(R
7)−COO−を、R3およびR4はそれぞれ独立して炭素数1〜16の置換、非置換のNを含まない二価の有機基を、R5、R6、R7は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。lおよびmはそれぞれ独立して0または1を、nは15〜150を示す整数であり、x:y=0〜100:100〜0である。ただし、R1およびR2がいずれも水酸基である場合はない。)
【0030】
(A)ポリブタジエン重合体は、例えば水酸基末端アルコキシル化ポリブタジエン重合体、または/および水酸基末端ポリブタジエン重合体と低分子量(メタ)アクリレートエステルとのエステル交換、直接エステル化によって、または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物あるいは無水物との反応によって、生成させることができる。エステル交換および直接エステル化は、好適な工業的方法である。とりわけエステル交換の場合、対応する水酸基末端アルコキシル化ポリブタジエン重合体、または/および水酸基末端ポリブタジエン重合体と低分子量(メタ)アクリレートエステル(好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピルまたはイソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチルまたはイソブチルまたはt−ブチル(メタ)アクリレートから選択され得る) の間のエステル交換反応を含んでいる。その場合、金属アルコキシド、金属酸化物、ルイス酸、またはエステル交換反応を促進するための公知の他の触媒またはそれらの組み合わせから選択される、少なくとも一つの触媒によって、エステル交換反応を促進することが好ましい。第二選択としては、対応する水酸基末端アルコキシル化ポリブタジエン重合体、または/および水酸基末端ポリブタジエン重合体のアクリル酸またはメタクリル酸、ハロゲン化物または無水物による直接エステル化反応を含み得る。アクリル酸またはメタクリル酸による直接エステル化において、硫酸、p−トルエンスルホン酸メタンスルホン酸、またはエステル化反応を促進する公知の他の強い無機酸あるいは有機酸から選択されるエステル化触媒を使用することができる。
【0031】
前記水酸基末端アルコキシル化ポリブタジエン重合体は、水酸基末端ポリブタジエンとアルキレンオキシドの反応を含んでなる工程によって調製される。具体的には、in−situ重合法または遊離ポリブタジエン樹脂とアルキレンオキシドの間の二次的反応ステップのいずれかによって、アルキレンオキシドをポリブタジエン樹脂中へ取り込むことができる。水酸基末端を形成するために、アルキレンオキシドをその場で活性重合混合物へ添加するアニオン重合を含んでなる工程によってポリブタジエン樹脂を製造する場合には、in−situ重合法が好適に用いられる。アルキレンオキシドを二次的反応ステップにおいて添加する場合には、アニオン重合またはフリーラジカル重合によってポリブタジエン樹脂を得ることができる。その他、アルコール、ジオールまたはポリヒドロキシル材料をアルコキシル化する公知の方法で、アルキレンオキシドをポリブタジエン樹脂中に組み込んでもよい。
【0032】
前記アルキレンオキシドは、公知の全てのものから選択し得る。好適な例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシドの両方、およびスチレンオキシド、並びにこれらの混合物が含まれる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドまたはそれらの混合物は、最も好適である。アルキレンオキシド単位の数は、水酸基あたり1〜約100個で変動し得る。好適な範囲は1〜約30個である。
【0033】
ポリブタジエン重合体の質量平均分子量は、好ましくは500以上50,000未満、より好ましくは1,000以上10,000未満、さらに好ましくは1,000以上5,000以下である。分子量が50,000以上であると、水蒸気の透過の抑制効果は高いが、電子デバイス封止用樹脂組成物の粘度が高くなり、塗布性が低下して電子デバイス封止用樹脂組成物と基材との間に空気がトラップされることがある。分子量が500未満であると、架橋密度が高くなりすぎて、硬化後の電子デバイス封止用樹脂組成物の耐屈曲性が不足する場合がある。なお、本発明における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。
【0034】
ポリブタジエン樹脂の微細構造は、1,2構造対1,4構造および1,4構造部分でのシス対トランス構造の比率で表される。1,2構造量は、しばしばビニル含有量と称される。ポリブタジエンのビニル含有量は、約5%〜約90%で変動し得る。シス対トランス構造の比率は、約1:10〜約10:1で変動し得る。
【0035】
ポリブタジエン重合体は、水素化されていてもよく、シスおよびトランスの2種の1,4構造はエチレン構造に、1,2構造は1−ブテン構造に変わる。水素化により二重結合を減少させて、熱安定性、耐候性、耐薬品性、水蒸気バリア性などを向上させる場合には、下記化学式(2)〜(4)に示すように、ブタジエン骨格が有する不飽和結合の50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上水素化するとよい。なお(A)成分のポリブタジエン重合体は、化学式(2)〜(4)で表される末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン重合体であって、ブタジエン骨格が有する不飽和結合の50%以上が水素化されたものを含む概念である。
【化2】
【化3】
【化4】
(式(2)〜(4)中、R1およびR2はそれぞれ独立して水酸基またはH
2C=C(R
7)−COO−を、R3およびR4はそれぞれ独立して炭素数1〜16の置換、非置換のNを含まない二価の有機基を、R5、R6、R7は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。lおよびmはそれぞれ独立して0または1を、nは15〜150を示す整数であり、x:y=0〜100:100〜0である。ただし、R1およびR2がいずれも水酸基である場合はない。)
【0036】
一方で、1,4構造が多い高シスーポリブタジエンの場合には、水素化後の構造は結晶性のポリエチレン構造に近くなり、ガラス転移温度も水素添加率の増加に伴って上昇する。また、1,2構造が多い場合、1,2構造の連鎖にシンジオタクチック又はアイソタクチックの立体規則性があると結晶性が発現する可能性があり、これらの物性変化により、粘度上昇に伴う塗布性の低下や、硬化後の屈曲性の不足が起こる場合があるため、これらを抑制する場合には、90%未満の水素添加率が好ましく、80%未満がより好ましい。一分子あたりの水酸基の平均数は、約1〜3で変動しうるが、好ましくは約1.5〜3 、より好ましくは1.5〜2.5である。
【0037】
前記(A)ポリブタジエン重合体を含んでなる組成物は、紫外線あるいは電子線(EB、Electtron Beam)などの放射線の照射または過酸化物の添加によって、もしくはマイケル付加法によって硬化できる。
【0038】
(B)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、カヤキュア−BP100(ベンゾフェノン、日本化薬株式会社製)、サンヨーOBA(ベンゾイル安息香酸、日本製紙株式会社製)、サンヨーOBM(ベンゾイル安息香酸メチル、日本製紙株式会社製)、トリガノール12(4−フェニルベンゾフェノン、アクゾ)、カヤキュア−MBP(3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、日本化薬株式会社製)、カヤキュア−BMS(〔4−(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、日本化薬株式会社製)、エザキュア−TZT(2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、Lamberti)、イルガキュア651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、BASF社製)、等が挙げられる。
【0040】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、としては、例えば、ダロキュア1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、BASF社製)、ダロキュア1116(1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、BASF社製)、イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)、ダロキュア953(1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、BASF社製)、ダロキュア2959(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、BASF社製))等が挙げられる。
【0041】
チオキサンソン系光重合開始剤としては、例えば、ニッソキュア−TX(チオキサンソン、日本曹達株式会社製)、ニッソキュア−MTX(2−メチルチオキサンソン、日本曹達株式会社製)、カヤキュア−RTX(2,4−ジメチルチオキサンソン、日本化薬株式会社製)、カヤキュア−CTX(2,4−ジクロロチオキサンソン、日本化薬株式会社製)、カヤキュア−DETX(2,4−ジエチルチオキサンソン、日本化薬株式会社製))、カヤキュア−DITX(2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、日本化薬株式会社製))等が挙げられる。
【0042】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ニッソキュア−BO(チオキサンソン、日本曹達株式会社製)、ニッソキュア−MBO(ベンゾインメチルエーテル、日本曹達株式会社製)、ニッソキュア−EBO(ベンゾインエチルエーテル、日本曹達株式会社製)、イルガキュア65(ベンジルメチルケタール、BASF社製)等が挙げられる。
【0043】
その他の光重合開始剤としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられ、商品名としては、例えば、キュアンタキュア−PDO(ワードブレンキンソップ社製)等が挙げられる。
【0044】
光重合開始剤の量は、有効な量であり、典型的には、(メタ)アクリレート100質量部あたり、0.01〜20質量部の範囲である。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の選択は、封止用樹脂組成物で用いられる(メタ)アクリレート、および所望の硬化速度に少なくとも部分的に依存し、1種類または2種類以上を任意の配合割合で使用しても良い。
【0045】
本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、質量平均分子量が5万以上の熱可塑性樹脂を含まない。質量平均分子量が5万以上の熱可塑性樹脂を含むと、粘度が高くなり、塗布性が低下する。
【0046】
本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、(C)反応性希釈剤を含有していることが好ましい。(C)反応性希釈剤は、電子デバイス封止用樹脂組成物の粘度を低下させ、塗布を容易にするものである。また、電子デバイス封止用樹脂組成物の硬化の際に重合し得るものであり、そのため単なる希釈成分と比較して水分の透過性が低く、封止される電子的構成要素、活性有機部品の水分への曝露を阻止できるか、または最低限に抑えられる。さらに最適量を含有させた場合、水蒸気バリア性を向上させることができる。また、重合するため電子デバイス封止樹脂組成物中に含まれる低分子量成分をほとんど増加させずに電子デバイスを封止することができ、デバイス中の電極等の金属構成要素の腐食を阻止できるまたは最低限に抑えられる。
【0047】
(C)反応性希釈剤としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルモノマー及びポリチオール化合物等から選択される液体光重合性モノビニルモノマーなどを用いることができ、粘度を低下させる効果を奏し、(A)ポリブタジエン重合体と硬化系が同じで制御がし易いという観点から、(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン・(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメチロール・(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロール・ジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール・ジ(メタ)アクリレート、ノナンジオール・ジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル・アクリレート、トリシクロデカンジメタノール・ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート・トリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル等が挙げられる。これらの中でも、粘度の低下効果が大きく、水蒸気バリア性が高い、二官能の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。さらに(A)ポリブタジエン重合体との組合せにより、水蒸気バリア性を向上させる効果が高くなるヘキサンジオール・ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
N−ビニルモノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。ポリチオール化合物としては、分子内にメルカプト基を2〜6個有するものであれば特に制限はなく、例えば、炭素数2〜20程度のアルカンジチオール等の脂肪族ポリチオール類;キシリレンジチオール等の芳香族ポリチオール類;アルコール類のハロヒドリン付加物のハロゲン原子をメルカプト基で置換してなるポリチオール類;ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール類;分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸又はβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール類等が挙げられる。
【0050】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物における(A)成分と(C)成分との含有比率(A):(C)は、粘度、水蒸気バリア性の観点から、質量比で、5:95〜70:30であることが重要であり、好ましくは10:90〜60:40、より好ましくは20:80〜60:40、さらに好ましくは20:80〜50:50である。(A)成分と(C)成分とを最適な含有比率にすることで、粘度を低下かつ、水蒸気バリア性を大きく向上させることができる。含有比率が最適でない場合には、粘度の低下効果が小さく塗布条件に制限ができたり、粘度は低下させられても水蒸気バリア性には効果が奏しない場合がある。
【0051】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物は、(D)数平均分子量が5万未満である炭化水素化合物を含有することが好ましい。(D)成分の炭化水素化合物は、本発明において、電子デバイス封止用樹脂組成物の水分の透過性を低下させ、封止される電子的構成要素、活性有機部品の水分への曝露を抑制する効果を奏するものである。
【0052】
炭化水素化合物は様々な数平均分子量を有し得るが、好ましくは300以上50,000未満、より好ましくは500以上30,000未満、さらに好ましくは500以上10,000以下である。分子量を50,000未満とすることで、電子デバイス封止用樹脂組成物の粘度を大きく上げることなく水蒸気バリア性を向上させることができる。数平均分子量が300未満であると、電子デバイス封止用樹脂組成物は活性有機部品を直接または薄膜の被覆膜を介して封止するので、封止対象である活性有機部品、特に低い仕事関数の金属層からなる電極層に影響を与え、デバイスの寿命を短くしてしまうことがある。また、数平均分子量が50,000未満であっても、質量平均分子量が50,000以上であると、電子デバイス封止用樹脂組成物の粘度を大きく上げ、塗布性を著しく損なうため、好ましくない。
【0053】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物における(A)成分及び(C)成分の合計と、(D)成分の含有比率[(A)+(C)]:(D)は、水蒸気バリア性、粘度、硬化後の耐屈曲性の観点から、質量比で、20:80〜70:30で配合することが可能であり、[(A)+(C)]:(D)は30:70〜50:50であることが好ましい。
【0054】
炭化水素化合物は飽和炭化水素化合物であってもよいし、不飽和炭化水素化合物であってもよい。炭素−炭素の二重結合などの不飽和結合は、水素添加、マレイン化、エポキシ化、アミノ化、または類似の方法により修飾されていてもよい。水素添加は、水蒸気バリア性、透明性、他の飽和炭化水素化合物との相溶性が向上することがあり好ましい。マレイン化、エポキシ化、アミノ化は、カバーおよび基材を互いに接着させる接着性、他の官能基含有化合物との相溶性が向上することがあり好ましい。
【0055】
使用可能な炭化水素化合物の例としては、ナフテンオイル、パラフィンオイル、低分子ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン、ポリイソプレン等の液状ゴム、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、またはそれの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
炭化水素化合物を使用する場合、1種類の炭化水素化合物または複数の炭化水素化合物の組み合わせを使用することができるが、本発明者らは、鋭意検討した結果、水蒸気バリア性に加えて可塑化効果を有する(d1)炭化水素系軟化剤と、水蒸気バリア性に加えて接着性向上の効果を有する(d2)炭化水素系粘着付与剤を少なくとも含有することで、より低粘度で高い水蒸気バリア性を得られることを見出した。
【0057】
(d1)炭化水素系軟化剤及び(d2)炭化水素系粘着付与剤を併用することで、粘度が低く、かつ高い水蒸気バリア性を得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推定される。すなわち、(D)成分の炭化水素化合物は低分子化合物であるため、硬化前の電子デバイス封止樹脂組成物の粘度を大きく上げることはない。一方、硬化後は、(A)成分および(B)成分あるいは(A)〜(C)成分が重合して形成する網目構造の内部に、(D)成分の炭化水素化合物がはまり込んで隙間を埋め、水蒸気バリア性を向上させていると考えられる。ここで、可塑化効果を有する(d1)炭化水素系軟化剤がなく(d2)炭化水素系粘着付与剤だけだと、隙間を埋めるように網目構造にはまり込むことができない、または入り込んでも硬すぎて隙間が生じてしまうので、水蒸気バリア性が向上しないと考えられる。逆に、(d2)炭化水素系粘着付与剤がなく(d1)炭化水素系軟化剤だけだと、網目構造の隙間を埋められたとしても炭化水素化合物自身の水蒸気ガスバリア性が不十分であるために、水蒸気バリア性はほとんど向上しないと考えられる。
【0058】
(d1)炭化水素系軟化剤の具体的な例としては、CALSOL 5120(ナフテン系オイル、Calumet Lubricants Co.社製)、KAYDOL(パラフィン系、白色鉱油、Witco Co.社製)、TETRAX(Nippon Oil Co.社製)、PARAPOL 1300(ExxonMobil Chemical Co.社製)、およびINDOPOL H−300(BPO Amoco Co.社製)、Glissopal(低分子ポリイソブチレン、BASF社製)、日石ポリブテン(イソブテンを主体として一部ノルマルブテンをカチオン重合して得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持ったポリブテン、JX日鉱日石エネルギー株式会社製株式会社製)、ニッサンポリブテン(イソブテンとノルマルブテンのカチオン重合によるポリブテン、日油株式会社製)、パールリーム(水素化ポリブテン、日油株式会社製)、クラプレンLIR(液状イソプレンゴム、株式会社クラレ製)、クラプレンLBR(液状ブタジエンゴム、株式会社クラレ製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
(d2)炭化水素系粘着付与剤の例としては、CLEARON(水素化テルペン系樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製株式会社製)、ESTERGUM及びSUPER ESTER(水素化ロジン系樹脂または水素化ロジンエステル系樹脂、荒川化学工業株式会社製)、PINECRYSTAL(不均化ロジン系樹脂または不均化エステルロジン系樹脂、荒川化学工業株式会社製)、ESCOREZ 5300及び5400シリーズ(石油ナフサの熱分解により生成されたペンテン、イソプレン、ピペリン及び1,3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られたC5系水素化ジシクロペンタジエン系樹脂、ExxonMobil Chemical Co.社製)、EASTOTAC(C5系水素化ジシクロペンタジエン系樹脂、Eastman Chemical Co.社製)、ESCOREZ 5600シリーズ(部分水素化芳香族修飾ジシクロペンタジエン系樹脂、ExxonMobil Chemical Co.社製)、ARCON(石油ナフサの熱分解により生成されたインデン、ビニルトルエン及びα−またはβ−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られたC9系水素化石油樹脂、荒川化学工業株式会社製)、I−MARV(C5留分及びC9留分の共重合水素化石油樹脂、出光興産株式会社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
上述以外の例としては、非水素化脂環式炭化水素樹脂として、C5、C9、C5/C9炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、芳香族修飾ポリテルペン樹脂、またはロジン誘導体が挙げられる。非水素化脂環式炭化水素樹脂を用いる場合、典型的には別の水素化または部分的水素化粘着付与剤と併用される。非水素化脂環式炭化水素樹脂は、電子デバイス封止用樹脂組成物の総重量に対して約30質量%未満の量で用いてもよい。
【0061】
炭化水素系粘着付与剤は、水素化石油樹脂、具体的には水素化脂環式石油樹脂を含んでいてもよい。水素化脂環式石油樹脂の具体例としては、ESCOREZ 5300シリーズ(ExxonMobil Chemical社製)、I−MARV Pシリーズ(出光興産株式会社製)が挙げられる。水素化脂環式石油樹脂は、その水蒸気バリア性及び透明性が高いため、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂であってもよい。電子デバイス封止用樹脂組成物で使用可能な水素化脂環式石油樹脂の質量平均分子量は、典型的には200〜5,000であり、水素化脂環式石油樹脂の質量平均分子量は500〜3,000であることが好ましい。質量平均分子量が5,000を超えた場合、接着性が乏しくなるか、または(d1)炭化水素系軟化剤との適合性が低下する場合がある。
【0062】
炭化水素系粘着付与剤は、電子デバイス封止用樹脂組成物の接着性、使用温度、塗布条件に少なくとも部分的に依存して変化し得る軟化温度または軟化点(環球法軟化温度)を有する場合がある。環球法軟化温度は一般に約50℃〜200℃とすることができ、約80℃〜150℃であることが好ましい。市販の一般的な炭化水素系粘着付与剤の環球法軟化温度の範囲は、前述の範囲であるためこれらを用いればよい。例えば、ESCOREZ 5300シリーズでは、ESCOREZ 5380の軟化点が86℃、ESCOREZ 5300が105℃、ESCOREZ 5320が124℃、ESCOREZ 5340が140℃であるので、適宜選択することができる。
【0063】
(d1)炭化水素系軟化剤および(d2)炭化水素系粘着付与剤を使用する場合、(d1)炭化水素系軟化剤としてポリブテン、(d2)炭化水素系粘着付与剤として水素化ジシクロペンタジエン系樹脂の組み合わせを使用することができる。また、(d1)炭化水素系軟化剤としてポリブテン、(d2)炭化水素系粘着付与剤として非水素化脂環式炭化水素樹脂の組み合わせを使用することができるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物においては、(d1)炭化水素系軟化剤を多く含むとことで水蒸気バリア性、硬化後の耐屈曲性が向上し、(d2)炭化水素系粘着付与剤を多く含有すると水蒸気バリア性が大きく向上するため好ましい。(d2)炭化水素系粘着付与剤は、ほとんどが石油、精油、松脂由来の疎水性化合物であるため水蒸気バリア性が高い。(d1)と(d2)の含有比率(d1):(d2)は、質量比で、20:80〜80:20であると相乗効果が見られる。
【0065】
電子デバイス封止用樹脂組成物には充填剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、安定剤、またはこれらの幾つかの組み合わせを添加してもよい。添加剤の量は、典型的には、(A)ポリブタジエン重合体の硬化速度に悪影響を与えないように、または電子デバイス封止用樹脂組成物の物理的特性に悪影響を与えないように選択される。
【0066】
使用可能な充填剤の例としては、カルシウムまたはマグネシウムの炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びドロマイト)、ケイ酸塩(例えば、カオリン、焼成粘土、葉蝋石、ベントナイト、絹雲母、ゼオライト、タルク、アタパルジャイト、及び珪灰石)、ケイ酸(例えば、珪藻土、及びシリカ)、水酸化アルミニウム、パーライト、硫酸バリウム(例えば、沈降硫酸バリウム)、硫酸カルシウム(例えば、石こう)、亜硫酸カルシウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
充填剤は異なる粒径を有してもよい。例えば、可視域において高透過率を有する電子デバイス封止用樹脂組成物を提供することが望ましい場合、充填剤の平均一次粒径は1〜100nmの範囲であることが好ましく、さらに5〜50nmの範囲内であることがこのましい。また、低水分透過性を改善するためにプレートまたは鱗状の形態の充填剤を使用する場合は、これらの平均粒径は0.1〜5μmの範囲内であることが好ましく、充填剤の封止用樹脂組成物への分散可能性の観点から、疎水性表面処理親水性充填剤を用いることが可能である。疎水性表面処理親水性充填剤は、任意の従来の親水性充填剤を疎水処理によって変性することで得ることができる。例えば、親水性充填剤の表面を、n−オクチルトリアルコキシシランなどの疎水基を含有するアルキル、アルキルまたはアルキルシラン結合剤、ジメチルジクロロシラン及びヘキサメチルジシラザンなどのシリル化剤、水酸基末端を有するポリジメチルシロキサン、ステアリルアルコールなどの高級アルコール、またはステアリン酸などの高級脂肪酸で処理することが可能である。なお、本発明における平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により求められたものである。
【0068】
シリカ充填剤の例としては、ジメチルジクロロシランで処理された製品、例えば、AEROSIL−R972、R974またはR9768(Nippon Aerosil Co.,Ltd.社製)、ヘキサメチルジシラザンで処理された製品、例えば、AEROSIL−RX50、NAX50、NX90、RX200またはRX300(Nippon Aerosil Co.,Ltd.社製)、オクチルシランで処理された製品、例えば、AEROSIL−R805(Nippon Aerosil Co.,Ltd.社製)、ジメチルシリコーン油で処理された製品、例えば、AEROSIL−RY50、NY50、RY200S、R202、RY200またはRY300(Nippon Aerosil Co.,Ltd.社製)、およびCAB ASIL TS−720(Cabot Co.,Ltd.社製)として市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
充填剤は単独でまたは組み合わせて使用してもよい。充填剤を含む場合は、添加される充填剤の量は電子デバイス封止用樹脂組成物の総量に対して一般に0.01〜20質量%である。
【0070】
また、粒子の表面改質剤として用いられないカップリング剤を添加して、電子デバイス封入用組成物の接着性を改善してもよい。このようなカップリング剤は、典型的には、有機成分と反応または相互作用する部分および無機成分と反応または相互作用する部分を有する。有用なカップリング剤の例としては、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.社製、KBM502)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.社製、KBM802)、およびグリシジルプロピルトリメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.社製、KBM403)が挙げられる。
【0071】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリック酸アミド系化合物、およびベンゾフェノン系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤を使用する場合、紫外線吸収剤は封止用樹脂組成物の全体量に対して約0.01質量%〜3質量%の量で用いることが可能である。
【0072】
使用可能な酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール系化合物およびリン酸エステル系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤を使用する場合、酸化防止剤は封止用樹脂組成物の総量に対して約0.01〜2質量%の量で用いることが可能である。
【0073】
使用可能な安定剤の例としては、フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、イミダゾール系安定剤、ジチオカルバメート系安定剤、リン系安定剤、硫黄エステル系安定剤、およびフェノチアジンが挙げられるがこれらに限定されない。安定剤を使用する場合、安定剤は封止用樹脂組成物の総量に対して約0.001〜3質量%の量で用いることが可能である。
【0074】
電子デバイス封止用樹脂組成物は公知の様々な方法により調製することができる。例えば、電子デバイス封止用樹脂組成物は上記化合物を完全に混合することにより調製できる。組成物を混合するためにニーダーまたは3本ロールなどの任意の混合器を使用することができる。得られる組成物は、電子デバイス封止用樹脂組成物として用いることもできるし、他の成分と組み合わせて電子デバイス封止用樹脂組成物を形成することもできる。
【0075】
本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、スクリーン印刷法または類似の方法を用いて基材、カバーまたは電子デバイスの任意の構成要素等にコーティングして、電子デバイスを封止することができる。電子デバイス封止用樹脂組成物の基材等へのコーティングは、公知の方法、例えばダイコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、カレンダリング等を用いて実施することもできる。また、封止する際は、常温(25℃)〜100℃、好ましくは常温(25℃)〜80℃で、圧力をかけないで貼合するか、または1.0MPa以下の圧力で30秒〜5分間加圧して貼合するとよい。その後、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、紫外線等の照射により硬化させることにより、封止材として電子デバイスを封止することになる。封止材の厚みは適宜設計することができ、例えば約5〜200μm、約10〜100μm、または約25〜100μm等の種々の厚さとすることができる。
【0076】
本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、水を僅かしか含まないか、全く含まないため、電子デバイスに対する電子デバイス封止用樹脂組成物自身による水分の悪影響が最低限に抑えられる。また、水分の透過性が低いため、封入される電子的構成要素、活性有機部品の水分への曝露を阻止できるか、または最低限に抑えられることができる。また、電子デバイス封止用樹脂組成物は、酸性成分を僅かしか含まないか、全く含まないよう設計することができるため、電子デバイス中の電極等の金属構成要素の腐食を阻止できるか、または最低限に抑えられる。
【0077】
また、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、良好な接着特性を呈する。また、電子デバイス封止用樹脂組成物は十分な塗布性を有するため、封止される電子デバイス内の空隙として空気がほとんど捕捉されないか、全く捕捉されない。さらに、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、電子デバイス用途で用いられる接着剤で問題となることが多いガスの放出を低減することができる。また、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、基材フィルム上に塗布し、または塗布した後に封止用樹脂組成物が硬化しない1J/cm2未満の低い紫外線を照射してシート状に成形して接着性封入層とし、取扱性を改善することもできる。なお、本明細書において、基材フィルムと接着性封入層を含むシートを接着性封入用シートという。接着性封入用シートを用いて封止を行う場合には、50℃〜100℃、0.3〜1.0MPaの圧力で30秒〜5分間、加熱加圧して貼合するとよい。
【0078】
本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、電磁スペクトルの可視領域(約380nm〜約800nmの波長領域)において高い透過率(少なくとも約80%)を有してもよい。電子デバイス封止用樹脂組成物が可視領域においてかかる高透過率を有する場合、光を遮断することなしに電子デバイスの発光または受光表面の側に封止材として配置して封止することができる。
【0079】
加えて、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、多様な電子デバイスで用いることができる。本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物を適用した電子デバイスでは、衝撃または振動により基体のズレや剥離が生じる封止の不具合の発生を最低限に抑えることができる。また、硬化後の耐屈曲性を向上させた電子デバイス封止用樹脂組成物を用いることができる電子デバイスとして、フレキシブルディスプレイが挙げられる。電子デバイス封止用樹脂組成物を用いることができる電子デバイスの他の種類としては、有機発光ダイオード、光起電力電池、薄膜トランジスタ、及びタッチスクリーンが挙げられる。
【0080】
次に、上記電子デバイスが有機エレクトロルミネッセンスデバイスである場合について説明する。有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、少なくともアノード、発光層、およびカソードを有する活性有機部品発光ユニットを有しており、該活性有機部品の上、上方、または周囲には、本明細書に記載されたいずれかの電子デバイス封止用樹脂組成物を塗布して硬化させることにより封止材が形成されている。なお、活性有機部品は、本明細書に記載された複数の電子デバイス封止用樹脂組成物をそれぞれ硬化させた封止材により封止されていてもよいし、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物を用いて形成された封止材と他の封止材とを併用して封止されていてもよい。
【0081】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、活性有機部品発光ユニットを積層体と称することもある。積層体は、種々の構成を有してもよく、例えば、組み込まれている1つの発光ユニット、または2つ以上の発光ユニットの組み合わせを含んでもよい。また、積層体の任意構成要素の一つとして、色フィルタ層を含んでもよい。
【0082】
積層体はデバイスの基材上に担時されていてもよい。デバイスの基材は、剛性を有しているか、硬質(容易に屈曲しない)であってもよいし、可撓性を有していてもよい。硬質基材は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス、および金属等の無機材料を含んでもよく、ポリエステル、ポリイミド、及びポリカーボネート等の樹脂材料を含んでもよい。可撓性を有する基材は樹脂材料で構成され、例えば、フッ素含有ポリマー(例えば、三フッ化ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式ポリオレフィン、またはエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含んでもよい。
【0083】
デバイスの形状、構造、寸法等は限定されない。デバイスの基材は、プレート形状を有することが多い。デバイスは透明、無色、半透明、または不透明であってもよい。基材は、SiO、SiN、DLF(ダイヤモンド様被膜)、またはDLG(ダイヤモンド様ガラス)等の無機材料を含む気体遮断層でコーティングしてもよい。気体遮断層被膜はまた、その上にポリマーと無機層が交互に配置される可撓性可視光透過性基材を含んでもよく、これらの被膜は米国特許第7,018,713 B2号(Padiyath et al.)に記載されている。気体遮断層は、真空蒸着、物理蒸着、及びプラズマCVD(化学蒸着)等の方法を用いて形成してもよい。
【0084】
アノードは一般に有機発光層にホールを供給する働きをする。アノードには、任意の公知のアノード材料を使用することができる。アノード材料の仕事関数は一般に4.0eV以上であり、アノード材料の好適な例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムおよびインジウム酸化スズ(ITO)などの半導体金属酸化物、金、銀、クロムおよびニッケルのような金属、およびポリアニリンおよびポリチオフェンなどの有機電気導電性材料が挙げられるがこれらに限定されない。アノードは、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVDまたはプラズマCVDによって形成されるフィルム形状のものを通常含む。いくつかの用途において、アノードはエッチング等でパターニングされてもよい。アノードの厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜50μmとすることができる。
【0085】
アノードとともに用いるカソードは、一般に、電子を有機発光層中に注入する働きをする。カソードには、任意の公知のカソード材料を使用することができる。カソード材料の仕事関数は通常4.5eV以下であり、カソード材料の好適な例としては、Li、Na、KおよびCs等のアルカリ金属、LiF/Al等の複合体材料、MgおよびCa等のアルカリ土類金属、金、銀、インジウムおよびイッテリビウム等の希土類金属、並びにMgAg等の合金が挙げられるがこれらに限定されない。カソードは、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVDまたはプラズマCVDによって形成されるフィルム形状のものを通常含む。いくつかの用途において、カソードはエッチング等でパターニングされてもよい。カソードの厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜50μmとすることができる。
【0086】
アノードとカソードとの間に配置される発光ユニットは様々な層構造を有することができる。例えば、発光ユニットは有機発光層のみを含む単層構造であってもよく、または、有機発光層/電子輸送層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層有機発光層/電子輸送層/電子注入層、あるいは電子注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層のような多層構造であってもよい。これらの層のそれぞれを以下に説明する。
【0087】
有機発光層は、少なくとも1つの発光材料を含むことができ、任意でホール輸送材料、電子輸送材料等を含んでもよい。発光材料は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造で通常使用される発光材料を使用することができる。発光材料としては、金属錯体、低分子量蛍光性着色材料、蛍光性ポリマー化合物、またはリン光材料を挙げることができる。金属錯体の好適な例としては、トリス(8−キノリノレート)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(ベンゾキノリノレート)ベリリウム錯体(BeBq2)、ビス(8−キノリノレート)亜鉛錯体(Znq2)、およびフェナントロリン系ユーロピウム錯体(Eu(TTA)3(フェン))が挙げられるがこれらに限定されない。低分子量蛍光性着色材料の好適な例は、ペリレン、キナクリドン、クマリン及び2−チオフェンカルボン酸(DCJTB)を含むがこれらに限定されない。蛍光性ポリマー化合物の好適な例としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、9−クロロメチルアントラセン(MEH−PPV)、およびポリフルオレン(PF)が挙げられるがこれらに限定されない。リン光材料の好適な例としては、プラチナオクタエチルポルフィリン、およびシクロメタル化イリジウム化合物が挙げられる。
【0088】
有機発光層は、上述のような発光材料から任意の好適な方法を用いて形成することができる。例えば、有機発光層は、真空蒸着または物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成することができる。有機発光層の厚さは特に限定されないが、一般に約5nm〜100nmとすることができる。
【0089】
有機発光ユニットは、ホール輸送材料からなるホール輸送層および/またはホール注入層を含んでもよい。ホール輸送材料は、一般に、アノードからホールを噴射し、ホールを輸送し、またはカソードから噴射される電子をブロックする働きをする。ホール輸送材料の好適な例としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(m−トリル)−1,3−フェニレンジアミン(PDA)、1,1−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TPAC)、および4,4’,4”−トリス[N,N’,N”−トリフェニル−N,N’,N”−トリ(m−トリル)アミノ]−フェニレン(m−MTDATA)が挙げられるがこれらに限定されない。ホール輸送層およびホール注入層は、それぞれ真空蒸着および物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成することができる。これら層の厚さは特に限定されないが、一般に5nm〜100nmとすることができる。
【0090】
有機発光ユニットは、電子輸送材料からなる電子輸送層および/または電子注入層を含むことができる。電子輸送材料は電子を輸送する、またはアノードから噴射されるホールをブロックする働きをする。電子輸送材料の好適な例としては、2−(4−第三級−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、および3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)AIQが挙げられるがこれらに限定されない。電子輸送層および電子注入層はそれぞれ真空蒸着及び物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成することができる。これら層の厚さは特に限定されないが、一般に5nm〜100nmとすることができる。
【0091】
本明細書に開示される有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、上記積層体を本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物を用いた封止材により封止することができる。封止材は、基材上に配置された積層体の露出面全体を覆う層の状態で形成することができる。
【0092】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物が単独で接着特性を有するため、封止材を積層するために別途接着層を設ける必要がない。すなわち、さらに接着剤を積層することが省略され、製造プロセスの簡易化することができ、また信頼性が強化され得る。さらに、従来技術と異なり、積層体を電子デバイス封止用樹脂組成物で覆うことができるので積層体とカバーとの間に中空部が残らない。中空部がないと水分透過が減少し、それによりデバイス特性の劣化を防ぐことができるとともにコンパクトで薄いデバイスを得ることができる。中空部があることが望ましい場合、デバイスを取り囲む接着剤のガスケットを用いてもよい。
【0093】
さらに、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物はスペクトラムの可視領域(380nm〜800nm)で透明性を有することができる。電子デバイス封止用樹脂組成物の平均透過性は、80%以上または90%以上とすることができるので、電子デバイス封止用樹脂組成物が有機エレクトロルミネッセンスデバイスの発光効率を実質的に低減させることはない。このことは、トップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスで特に有益である。
【0094】
積層体の外側には、積層体の上部及び底部を保護するための不動態フィルムを設けてもよい。不動態フィルムは、SiO、SiN、DLG、またはDLF等の無機材料からなり、例えば、真空蒸着及びスパッタリング等の被膜形成法を用いて形成することができる。不動態フィルムの厚さは特に限定されないが、一般に約5nm〜100nmである。
【0095】
積層体の外側には、水分および/または酸素を吸収することのできる材料またはその材料からなる層を配置することもできる。かかる層は所望の効果を得られる限りいずれの場所に配置されてもよい。
【0096】
上記の構成要素に加えて、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは公知の様々な構成要素を追加的に含むことができる。
【0097】
フルカラー装置が所望の場合は、白色発光部分を有する有機エレクトロルミネッセンスデバイスを色フィルタと組み合わせて使用することができる。かかる組み合わせは3色発光法では不要である。さらに、色変換法(CCM)や、色純度を補正する色フィルタを採用している有機エレクトロルミネッセンスデバイスを組み合わせて使用することが可能である。
【0098】
また、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは最外層として保護被膜を有してもよい。この保護被膜は、水蒸気遮断特性または酸素遮断特性を有する保護被膜であってもよく、このような保護被膜は「気体遮断被膜」または「気体遮断層」とも呼ばれる。気体遮断層は水蒸気遮断特性を有する様々な材料で形成され得る。好適な材料には、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレントリフルオライド、ポリクロロトリフルオエチレン(PCTEF)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン及びエチレン−ビニルアルコールコポリマー)を含むポリマー層が挙げられるがこれらに限定されない。かかるポリマー層、またはかかるポリマー層を無機薄膜(例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、DLG、またはDLF)で、フィルム形成法(例えば、スパッタリング)を用いてコーティングして得られる積層体も使用することができる。また、気体遮断層は、その上に、ポリマー層と無機層とが交互に配置された可撓性可視光透過性基材を有していてもよい。これらの保護被膜としては、米国特許第7,018,713 B2号(Padiyath et al.)に記載されているものを使用することができる。気体遮断層の厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜500μmとすることができる。
【0099】
本明細書に開示される有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、種々の分野における照明またはディスプレイ手段として利用することができる。用途としては、例えば、蛍光ランプの代わりに使用される照明装置や、コンピュータ装置、テレビ受信機、DVD(デジタルビデオディスク)、オーディオ機器、測定機械設備、携帯電話、PDA(携帯情報端末)およびパネル等の表示装置や、バックライトおよびプリンタ等の光源アレイ等が挙げられる。
【0100】
また、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、基材上に配置される金属および金属酸化物からなる構成要素を封入するために用いてもよい。例えば、電子デバイス封止用樹脂組成物は、酸化インジウムスズ(ITO)等の実質的に透明な導電性金属がガラス等の基材上に、または三酢酸セルロース等のポリマー被膜上に沈着しているタッチスクリーンに用いてもよい。電子デバイス封止用樹脂組成物は、金属および/または基材を腐食させる恐れのある酸性要素を全く含まないか、含んでいても少量とすることができるため、金属および/または基材の腐食を防止することができる。
【0101】
また、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物は、光起電力電池の上、上方、または周囲に配置される封止材として用いてもよい。光起電力電池は、アレイ状に構成されたもの(相互接続されている一連の光起電力電池)でもよく、アレイ状に構成された複数の光起電力電池の一部または全部が本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物により封止されていてもよい。
【0102】
一般に、光起電力電池は、光を電気に変換するために用いられる半導体デバイスであり、太陽電池と呼ばれる場合もある。光起電力電池は、光に曝露されると、プラス電極とマイナス電極との間に電圧を発生させ、結果として電子を流す。電圧の大きさは電池の表面に形成される光起電ジャンクションに対して光が衝突する強度に比例する。典型的には、太陽電池や太陽電池モジュールが、所定の装置へ電力を供給する、あるいは蓄電するために公的な電圧を生じさせるように相互接続されて、単一電気発生ユニットとして機能する太陽電池アレイを形成する。
【0103】
光起電力電池で用いられる半導体材料は、結晶質または多結晶質シリコンまたは薄膜シリコン、例えば非晶質、半結晶質シリコン、ガリウムヒ素、二セレン化銅インジウム、有機半導体、CIG等を含む。光起電力電池には、ウエハによる半導体材料と薄膜による半導体材料の2種が使用されている。ウエハによるものは、単一結晶または多結晶インゴットから機械的に鋸引きする、または鋳造することにより作製される半導体材料の薄いシートである。薄膜によるものは、スパッタリングまたは化学蒸着プロセス等を用いて基材または超基材(supersubstrate)上に配置される半導体材料の連続層である。
【0104】
ウエハおよび薄膜の光起電力電池は、モジュールが1つ以上の支持体を必要とする程度に脆性であることが多い。支持体は剛性、例えばガラスプレート剛性材料で形成されていてもよく、または可撓性材料、例えば金属膜および/またはポリイミドまたはポリエチレンテレフタレート等の好適なポリマー材料からなるシートで形成されていてもよい。支持体は、光起電力電池と光源との間に位置する最上層や基材とすることができ、この場合、支持体は光源からの光を通過させる。これに代えてまたはこれに加えて、支持体は、光起電力電池の後に位置する底層であってもよい。
【0105】
電子デバイス封止用樹脂組成物は、光起電力電池の上、上方、または周囲に配置することができる。電子デバイス止用樹脂組成物を用いることにより、光起電力電池を環境から保護することができる、およびび/または電池を支持体に接着させることができる。電子デバイス封止用樹脂組成物は、同じ組成または異なる組成からなる幾つかの封止材のうちの1つとして適用してもよい。さらに、電子デバイス封止用樹脂組成物は、電池に直接塗布した後に硬化してもよいし、予め電子デバイス封止用樹脂組成物をシート状に成形した接着性封入層を光起電力電池に積層し、その後接着性封入層を硬化させてもよい。
【0106】
図1は、光起電力電池1Aの断片構造を示す図であり、光起電力電池1Aは、素子状態の光起電力電池101Aが接着性封入用層102A,103Aにより封入されてなる。また、接着性封入用層102A,103Aの外側の面には、前面側の基材104Aおよび裏面側の基材105Aがそれぞれ設けられている。
【0107】
図2は、変形例による光起電力電池1Bの断片構造を示す図であり、光起電力電池1Bは、素子状態の光起電力電池101Bが化学蒸着等の好適な方法により前面側の基材104B上に配置されている。そして、例えば取り外し可能な基材フィルム(図示しない)を含む接着性封入用シートの接着性封入用層103Bを光起電力電池1B上に配置し、基材フィルムを剥離してその上に裏面側の基材105Bを積層した状態で、接着性封入用層103Bを硬化させることにより、素子状態の光起電力電池101Bが封止されている。光起電力電池1Bにおいては、取り外し可能な基材フィルムを含む接着性封入用シートの接着性封入用層103Bを裏面側の基材105Bに貼合し、基材フィルムを剥離してその面を素子状態の光起電力電池101Bに貼合して、接着性封入用層102Bを硬化させてもよい。
【0108】
図3は、別の例示的な光起電力電池1Cの断片構造を示す図であり、化学蒸着等の好適な方法により素子状態の光起電力電池101Cが裏面側の基材105C上に配置されている。そして、例えば取り外し可能な基材フィルム(図示しない)を含む接着性封入用シートの接着性封入用層102Cを用いて素子状態の光起電力電池101Cが封止されている。必要に応じて前面側の基材を利用してもよいし、取り外し可能な基材フィルムを前面側の基材として使用してもよい。
【0109】
電子デバイス封止用樹脂組成物は、薄膜トランジスタの半導体層の上、上方、または周囲に配置することもできる。薄膜トランジスタは、半導体材料で形成された薄膜と、基材に接触する誘電体層および金属を配置することにより作製される特別な種類の電界効果トランジスタである。薄膜トランジスタを用いて発光デバイスを駆動することができる。
【0110】
有用な半導体材料としては、光起電力電池について上述したものおよび有機半導体が挙げられる。有機半導体としては、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン等の小分子、及びポリ(3−ヘキシルチオフェン)を含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを含む芳香族または他のコンジュゲート電子系が挙げられる。無機材料の蒸着は、化学蒸着または物理蒸着を用いて実施することができる。有機材料の蒸着は、小分子の真空蒸着またはポリマー若しくは小分子の溶液流延により実施することができる。
【0111】
薄膜トランジスタは、一般に、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート誘電体と、ゲート誘電体に隣接したソース電極及びドレイン電極と、ゲート誘電体に隣接し、且つソース及びドレイン電極に隣接した半導体層とを含む(例えば、S.M.Sze,Physics of Semiconductor Devices,2nd edition,John Wiley and Sons,page 492,New York(1981)参照)。これらの構成要素は、様々な構成で組み立てることができる。
【0112】
薄膜トランジスタとしては、例えば、米国特許第7,279,777 B2号(Bai et al.)に開示されている薄膜トランジスタが挙げられる。
図4は、かかる薄膜トランジスタ2Aの断面構造を示す。基材201と、基材201上に配置されるゲート電極202と、ゲート電極202上に配置される誘電体材料203と、誘電体材料203および基板201の上に配置される任意の表面改質被膜204と、表面改質被膜204上に設けられた半導体層205と、半導体層205に接触するソース電極206およびドレイン電極207と、を含む。半導体層205の少なくとも一部は、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物を用いた封止材208により封止されている。
【0113】
薄膜トランジスタの別の例として、米国特許第7,352,038 B2号(Kelley et al.)に開示されている例示的な薄膜トランジスタが挙げられる。
図5は、かかる薄膜トランジスタ2Bの断面構造を示す。薄膜トランジスタ2Bは、基材209上に配置されるゲート電極210を有し、ゲート電極210上にはゲート誘電体211が配置されている。実質的非フッ素化ポリマー層212は、ゲート誘導体211と有機半導体層213との間に介在する。ソース電極214及びドレイン電極215は、有機半導体層213上に設けられる。有機半導体層213の少なくとも一部は、本発明による電子デバイス封止用樹脂組成物を用いた封止材216により封止されている。
【0114】
以下、実施例により本発明についてさらに説明するが、実施例はいかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。
【0115】
(実施例1〜
11、参考例1〜19および比較例1〜7)
下記(A)および(C)、(d1)、(d2)の各成分を表1〜4に示した割合(質量部)で、(B)成分は、(A)成分および(C)成分の合計の3質量%の割合で配合し、適宜溶媒としてトルエンを添加して溶液を調整した。溶液を真空容器で脱溶媒し、それぞれ実施例1〜
11、参考例1〜19および比較例1〜7の電子デバイス封止用樹脂組成物を得た。各組成物の水蒸気バリア性、塗布性、信頼性について評価を行った。
【0116】
(A)ポリブタジエン重合体
A1:EMA−3000(末端アクリル基導入ポリブタジエン、ウレタン結合なし、Mn3000、日本曹達株式会社製)
A2:CN308(末端アクリル基導入ポリブタジエン、ウレタン結合なし、水素化、Mw4600、Sartomer社製)
A3:TEAI−1000(末端アクリル基導入ポリブタジエン、ウレタン結合あり、水素化、Mn1000、日本曹達株式会社製)
A4:BI−3000(ポリブタジエン、ウレタン結合なし、水素化、Mn3000、日本曹達株式会社製)
メタクリレート化ポリイソプレン:UC−203(イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物オリゴマー、Mn35,000、株式会社クラレ製)
【0117】
(B)光重合開始剤
B1:ESACURE TZT(2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、Lamberti社製)
B2:ESACURE KIP 100F(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとのブレンド、Lamberti社製)
B3:Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)
【0118】
(C)反応性希釈剤
C1:1.6HX−A(1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、共栄社化学株式会社製)
C2:DCP−A(ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、共栄社化学株式会社製)
C3:CD595(1,10−デカンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
C4:ライトエステルID(イソデシルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)
【0119】
(d1)炭化水素系軟化剤
d1−1:ニッサンポリブテン 200N(ポリブテン、Mn2650、日油株式会社製)
d1−2:Glissopal 1000(ポリイソブチレン、Mn1000、BASF社製)
d1−3:ニッサンポリブテン 015N(ポリブテン、Mn580、日油株式会社製)
d1−4:Oppanol B10N(ポリイソブチレン、Mw36,000、Mn12,000、BASF社製)
d1−5:クラプレン LIR30(液状イソプレンゴム、Mw29,000、Mn28,000、株式会クラレ社製)
d1−6:Oppanol B15N(ポリイソブチレン、Mw75,000、Mn22,000、BASF社製)
【0120】
(d2)炭化水素系粘着付与剤
d2−1:ESCOREZ 5320(C5系水素化ジシクロペンタジエン系樹脂、軟化点124℃、Mw640、Mn430、ExxonMobil Chemical社製)
d2−2:I−MARV P100(C5ジシクロペンタジエン/C9共重合系水素化石油樹脂、軟化点100℃、Mw660、出光興産株式会社製)
d2−3:ESCOREZ 1310(C5系石油樹脂、軟化点94℃、Mw1600、Mn1000、ExxonMobil Chemical社製)
d2−4:パインクリスタルKE311(水素化ロジンエステル系樹脂、軟化点95℃、Mn580、荒川化学工業株式会社製)
【0121】
実施例・
参考例・比較例に係る各組成物の水蒸気バリア性、塗布性、信頼性、耐屈曲性について評価を行った。
【0122】
(水蒸気バリア性)
実施例・
参考例・比較例に係る電子デバイス封止用樹脂組成物を25μm厚となるように、ベーカー式アプリケーターにてガラスプレート上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて波長365nmの紫外線を5J/cm
2を照射して硬化させ、試験用シートを得た。得られたシートをしわやたるみがないよう低湿度チャンバと高湿度チャンバの間に装着し、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック株式会社製、GTR−10XAWT)、ガスクロマトグラフ(ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製、G2700T)を用いて、JIS K7129Cに準拠し、40℃、90%RH及び60℃、90%RHの透湿度を求めた。水蒸気バリア性は以下の評価基準に従って、5段階で評価した。なお、評価においてD以上のものは合格品、Eは不合格品を意味する(以下、同じ)。
A Excellent
:60℃の透湿度が100g/m
2day以下かつ40℃の透湿度が20g/m
2day以下
B Very Good
:60℃の透湿度が100g/m
2day以下かつ40℃の透湿度が50g/m
2day以下
C Good
:60℃の透湿度が100g/m
2day以下かつ40℃の透湿度が100g/m
2day以下
D Average
:60℃の透湿度が100g/m
2day以上かつ40℃の透湿度が100g/m
2day以下
E Poor
:60℃及び40℃の透湿度が100g/m
2day以上
【0123】
(塗布性)
条件1として、以下の手順で封止用樹脂組成物の塗布実験を行った。JIS R 3202に準拠した1.2mm厚のフロートガラスを30mm×30mmの大きさで調整し、四辺にベゼルとして3mm幅を残して、金属カルシウムを100nmの厚みで蒸着し、ガラス基板を作成した。一方、電子デバイス封止用樹脂組成物は別のフロートガラスに25μm厚となるように塗布した。電子デバイス封止用樹脂組成物を塗布した面を下にして、塗布ガラスとガラス基板を合せ、基板ガラス/電子デバイス封止用樹脂組成物/ガラスの構成の試験サンプルを得た。次に、試験サンプルの周りに上述の1.2mm厚のフロートガラスを2枚と厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム1枚を重ねて置いてクリアランスを確保した状態で真空ラミネータにて80℃、0.6MPaの圧力で1分間加圧した。加圧後のサンプルをラミネータから取り出し、高圧水銀灯にて波長365nmの紫外線を5J/cm
2を照射して硬化を行った後、貼合が行われているか、2つのガラスの間をボイドなく封止用樹脂組成物が充填できているかを目視にて観察した。条件2は、ラミネータでの加圧を常温にした以外は条件1と同様の条件で行った。条件3は、ガラス基板のベゼル部分に高さ5μm幅150μmピッチ2mmのダミー配線をストライプ状に設けた以外は条件1と同様の条件で行った。条件4は、ラミネータでの加圧を常温にした以外は条件3と同様の条件で行った。塗布性は以下の評価基準に従って、5段階で評価した。
A Excellent
:すべての条件でボイドが観察されないサンプルが得られた
B Very Good
:条件1、2、3でボイドが観察されないサンプルが得られた
C Good
:条件1および2でボイドが観察されないサンプルが得られた
D Average
:条件1でボイドが観察されないサンプルが得られた
E Poor
:いずれの条件でもボイドが観察された、または貼合ができていなかった
【0124】
(信頼性)
塗布性試験でボイドが観察されなかったサンプルを、40℃、90%RHで1000時間処理し、その後、室温(25℃)まで冷却した後、カルシウム蒸着膜の変化から電子デバイス封止用樹脂組成物を介して水分浸入量を測定した。信頼性は以下の評価基準に従って、2段階で評価した。
A Excellent
:1000時間後の水分浸入量が3mm以下
E Poor
:1000時間後の水分浸入量が3mm以上、またはボイドや剥がれの発生が観察された
【0125】
(耐屈曲性)
実施例・
参考例・比較例に係る電子デバイス封止用樹脂組成物を100μm厚のPETフィルムに25μm厚となるように塗布した。電子デバイス封止用樹脂組成物を塗布した面を下にして、塗布フィルムと別な100μm厚のPETフィルムとをボイドが入らないように貼り合せた後、高圧水銀灯にて波長365nmの紫外線を5J/cm
2を照射して硬化を行い、100μm厚PETフィルム/25μm厚の封止用樹脂組成物/100μm厚PETフィルムの構成の試験サンプルを得た。次に、得られた試験サンプルをJIS K 5600−5−1 1999に準じ、25mm直径のマンドレルを使って耐屈曲性試験を行った。耐屈曲性は以下の評価基準に従って、3段階で評価した。
A Excellent
:サンプルの曲げが可能、かつ、フィルムからの剥がれ、サンプルの変色、割れが観察されなかった
D Average
:サンプルの曲げが可能だが、白化などの変色が観察された
E Poor
:サンプルが曲げられなかった、または、試験後のサンプルに剥がれ、割れが観察された
【0130】
表1〜3に示すように、実施例1〜
11、参考例1〜19は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン重合体と光重合開始剤を含み、質量平均分子量が5万以上の熱可塑性樹脂を含まない組成であるため、水蒸気バリア性と塗布性を両立し、信頼性評価において良好な結果となった。さらに、実施例1
〜11、参考例14,17,19は、ポリブタジエン重合体と反応性希釈剤の質量比が、6:94〜70:30であり、請求項に規定の5:95〜70:30となる範囲で反応性希釈剤を含むので、良好な水蒸気バリア性を有しつつ塗布性が向上した。また、参考例1、2、4〜6、8、9は、ポリブタジエン重合体と反応性希釈剤との合計と平均分子量が5万未満である炭化水素化合物との質量比が、請求項に規定の20:80〜70:30となる範囲で平均分子量が5万未満である炭化水素化合物を含むので、良好な水蒸気バリア性を示した。
【0131】
表4に示すように、比較例1および比較例2は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン重合体がウレタン結合を有するため、互いに水素結合を形成して粘度が高くなり、塗布性に劣る結果となった。比較例3は、(メタ)アクリロイル基を含まない、単なるポリブタジエン重合体から構成された組成のため、水蒸気バリア性に劣る結果となった。比較例4は(メタ)アクリロイル基含むがポリブタジエン以外の構造の重合体であるため、水蒸気バリア性に劣る結果となった。比較例5及び6は、質量平均分子量が5万以上の熱可塑性樹脂を含むため、耐屈曲性は優れたが、粘度が高くなり、塗布性に劣る結果となった。比較例7は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン重合体を含まない組成であるため、水蒸気バリア性及び耐屈曲性に劣る結果となった。