特許第5778518号(P5778518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778518ポリアセタール樹脂組成物、及び摺動部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778518
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物、及び摺動部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20150827BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150827BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C08L59/00
   C08L1/00
   C08K5/13
   C08K5/103
   C08K5/25
   C08K5/3492
   C08L77/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-175842(P2011-175842)
(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公開番号】特開2013-40223(P2013-40223A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】川口 邦明
(72)【発明者】
【氏名】水口 一浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克利
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 美紀
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 孝司
(72)【発明者】
【氏名】花房 和人
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/119810(WO,A1)
【文献】 特開2008−266486(JP,A)
【文献】 特開2004−269806(JP,A)
【文献】 特開平07−258517(JP,A)
【文献】 特開平06−128453(JP,A)
【文献】 特開2006−143869(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/065687(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/119826(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/049926(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/049927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/00
C08K 5/00
C08L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安定末端基量が0.5重量%以下である(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
アスペクト比が1〜20、αセルロース含有率が99.5〜100%の(b)セルロース繊維パウダーを10〜150重量部、
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜3重量部、
アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の(d)窒素含有化合物を0.01〜3重量部、
分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体を0.2〜2重量部含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が10〜50g/10分である、請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
下記の測定方法によるホルムアルデヒド発生量が47ppm以下である、請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
(測定方法)
8gのポリアセタール樹脂組成物から構成される樹脂ペレットを、200℃に調整された金属製シリンダーに内に充填し、前記樹脂ペレットを溶融させた状態で5分間保持した。続いて、前記金属製シリンダーに連結されたガラス製吸収ビンに窒素を流しながら溶融樹脂から発生したホルムアルデヒドガスを窒素気流と共に排出することで、吸収ビン内の蒸留水にホルムアルデヒドガスを吸収させた。蒸留水に吸収されたホルムアルデヒドをJIS K0102に準拠した方法で定量し、評価試料(樹脂組成物)に対する割合として算出した。
【請求項4】
JIS K7218に記載されたA法に基づいて、請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、前記中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた場合の、前記中空円筒試験片の摩耗量が4.7mg以下であり、前記炭素鋼材(S45C)の磨耗量が0.2mg以下である摩耗特性を有する請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
JIS K7218に記載されたA法に基づいて、請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、前記中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた後の、前記中空円筒試験片の前記炭素鋼材に対する摩擦係数が0.3μs以下である摩擦特性を有する請求項1から4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドの発生が少なく、摺動性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びそのポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などにおいて優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。
【0003】
ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。その中で、再生可能資源であるセルロース系物質の有効活用が注目され、これをポリアセタール樹脂に配合することによりポリアセタール樹脂組成物としての特性を改善することが検討されている。
【0004】
特許文献1には、ポリアセタール樹脂にパルプを配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。ここでは、機械的強度、耐熱性、燃焼性(燃焼時の樹脂のドリッピング)などの改善が示されている。しかし、特許文献1に記載のポリアセタール樹脂組成物の調製方法では、組成物中にパルプの凝集が生じて欠陥を生じやすい上、ホルムアルデヒドの発生が少なく、且つ摺動性に優れた樹脂組成物を得ることが難しく、実用的に優れた成形品を製造することが難しい。
【0005】
また、特許文献2には、ポリアセタール樹脂と、特定の嵩密度の繊維状セルロース系物質を配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。ここでは、繊維状セルロース系物質を使用しているため、繊維状セルロース系物質の凝集は比較的抑えられた結果が得られてはいる。しかし、特許文献2に記載の樹脂組成物の調製方法についても、ホルムアルデヒドの発生が少なく、且つ摺動性に優れた樹脂組成物を得ることが難しく、実用的に優れた成形品を製造することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−217447号公報
【特許文献2】特開2010−150313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から知られた技術では、上記のように、ホルムアルデヒドの発生量が少なく、摺動性に優れた樹脂組成物を得ることが難しい。本発明は、これらの課題を解決し、ホルムアルデヒドの発生量が少なく、摺動性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びそのポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の(a)ポリアセタール樹脂と、特定の(b)セルロース繊維パウダーと、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特定の(d)窒素含有化合物と、特定の(e)長鎖脂肪酸誘導体とを組み合わせて配合することにより、上記課題が解決し目的を達成し得るポリアセタール樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 不安定末端基量が0.5重量%以下である(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、アスペクト比が1〜20、αセルロース含有率が98〜100%の(b)セルロース繊維パウダーを10〜150重量部、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜3重量部、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の(d)窒素含有化合物を0.01〜3重量部、分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体を0.01〜3重量部含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記(a)ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が10〜50g/10分である、(1)記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0011】
(3) 下記の測定方法によるホルムアルデヒド発生量が100ppm以下である、(1)又は(2)記載のポリアセタール樹脂組成物。
(測定方法)
8gのポリアセタール樹脂組成物から構成される樹脂ペレットを、200℃に調整された金属製シリンダーに内に充填し、前記樹脂ペレットを溶融させた状態で5分間保持した。続いて、前記金属製シリンダーに連結されたガラス製吸収ビンに窒素を流しながら溶融樹脂から発生したホルムアルデヒドガスを窒素気流と共に排出することで、吸収ビン内の蒸留水にホルムアルデヒドガスを吸収させた。蒸留水に吸収されたホルムアルデヒドをJIS K0102に準拠した方法で定量し、評価試料(樹脂組成物)に対する割合として算出した。
【0012】
(4) JIS K7218に記載されたA法に基づいて、(1)から(3)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、前記中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた場合の、前記中空円筒試験片の摩耗量が20mg以下であり、前記炭素鋼材(S45C)の磨耗量が0.2mg以下である摩耗特性を有する(1)から(3)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0013】
(5) JIS K7218に記載されたA法に基づいて、請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、前記中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた後の、前記中空円筒試験片の前記炭素鋼材に対する摩擦係数が0.3μs以下である摩擦特性を有する(1)から(4)いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0014】
(6) (1)から(5)いずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部品。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド発生量が少なく、摺動性に優れる。したがって、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、摺動部品の原料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
<(a)ポリアセタール樹脂>
(a)成分のポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−OCH−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマーが代表的な樹脂である。更に、ポリアセタール樹脂には、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入された共重合体や、オキシメチレン基の繰返しからなる重合体単位と他の重合体単位とを有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
一般に、ポリアセタールホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドやトリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)の重合により製造され、通常、その末端をエステル化することにより、熱分解に対して安定化されている。
【0019】
これに対して、ポリアセタールコポリマーは、一般的に、ホルムアルデヒド又は一般式(CHO)n[式中、nは3以上の整数を示す]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー(例えばトリオキサン)と、環状エーテルや環状ホルマールなどのコモノマーとを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0020】
ポリアセタールコポリマーの主原料としては、トリオキサンやテトラオキサンなどが挙げられ、通常、トリオキサンが使用される。
【0021】
コモノマーには、環状エーテル、グリシジルエーテル化合物、環状ホルマール、環状エステル(例えば、β−プロピオラクトンなど)、ビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルエーテルなど)などが含まれる。
【0022】
環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0023】
グリシジルエーテル化合物としては、例えば、アルキル又はアリールグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなど)、アルキレン又はポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、アルキル又はアリールグリシジルアルコールなどが挙げられる。
【0024】
環状ホルマールとしては、例えば、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、トリオキセパンなどが挙げられる。
【0025】
これらのコモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのコモノマーのうち、通常、環状エーテル及び/又は環状ホルマールが用いられ、特に、エチレンオキシドなどの環状エーテルや、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールなどの環状ホルマールが好ましい。
【0026】
これらのコモノマー(例えば、環状エーテル及び/又は環状ホルマール)単位の割合は特に限定されないが、ポリアセタール樹脂全体に対して、一般的には0.1〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは0.5〜15重量%(特に1〜10重量%)程度である。
【0027】
本発明において使用する(a)成分のポリアセタール樹脂は、不安定末端基量が0.5重量%以下であることが必須である。ここで不安定末端基量とは、ポリアセタール共重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解しやすい部分の量を示す。かかる不安定末端基量は、ポリアセタール共重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlと共に耐圧密閉容器に入れ、180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタール共重合体に対する重量%で表したものである。
【0028】
(a)成分のポリアセタール樹脂が上記の末端特性を有するものではなく、上限値を上回る場合、ホルムアルデヒド発生量が十分に低いポリアセタール樹脂組成物を得ることが困難となる。このような観点から、(a)成分のポリアセタール樹脂は、不安定末端基量が0.5重量%以下のものであり、好ましくは0.3重量%以下である。一方、不安定末端基量の下限は特に限定されるものではない。
【0029】
(a)成分のポリアセタール樹脂のメルトインデックスは、10〜100g/10分の範囲が好ましく、特に、10〜50g/10分の範囲が好ましい。メルトインデックスが過小及び過大の場合には、本発明の効果が十分に得られない場合がある。なお、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じて、190℃、2.16kgf(21.2N)の条件下で測定した値である。
【0030】
<(b)セルロース繊維パウダー>
本発明に使用する(b)セルロース繊維パウダーは、精製パルプを原料とし、パウダー形状としたものであり、そのアスペクト比は1〜25である。特に、好ましいアスペクト比は1.2〜20である。(b)セルロース繊維パウダーのアスペクト比が25を上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化するため好ましくない。なお、アスペクト比は、SEM(走査電子顕微鏡)又は光学顕微鏡による観察などにより測定することができる。また、セルロース繊維パウダーのアスペクト比は、セルロース繊維パウダーが粒子形状となっている場合は、その粒子形状から算出することができる。
【0031】
また、(b)セルロース繊維パウダーの好ましい平均繊維長は10〜350μmであり、特に、20〜320μmが好ましい。(b)セルロース繊維パウダーの平均繊維長が10μmを下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、350μmを上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化し、また、ポリアセタール樹脂組成物の分解が進行する場合があるため好ましくない。なお、上記平均繊維長は、SEM又は光学顕微鏡による観察などにより測定することができる。また、セルロース繊維パウダーの平均繊維長は、セルロース繊維パウダーが粒子形状となっている場合は、その粒子径の値を用いることができる。
【0032】
また、(b)セルロース繊維パウダーのαセルロース含有率の範囲は98〜100%(重量%)であり、特に、99〜100%の範囲が好ましい。αセルロース含有率が98%を下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の分解が進行する場合があり、製造が難しくなる場合があるため好ましくない。
【0033】
(b)セルロース繊維パウダーの配合量は、(a)成分のポリアセタール樹脂100重量部に対して10〜150重量部であり、好ましくは15〜100重量部である。(b)セルロース繊維パウダーの配合量が10重量部を下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、150重量部上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化するため好ましくない。
【0034】
<(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(c)ヒンダードフェノール系化合物を用いることで、機械的特性の改善が安定して得られる。(c)ヒンダードフェノール系化合物としては、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。
【0035】
本発明において、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)成分のポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。
【0036】
<(d)窒素含有化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の(d)窒素含有化合物を用いることで、機械的特性の改善が安定して得られ、溶融安定性も向上する。
【0037】
アミノトリアジン化合物としては、メラミン又はその誘導体[メラミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)など]、グアナミン又はその誘導体、及びアミノトリアジン樹脂[メラミンの共縮合樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−メラミン樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂など)、グアナミンの共縮合樹脂など]などが挙げられる。
【0038】
グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物[モノグアナミン類(ベンゾグアナミン及びその官能基置換体など)、α−又はβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体、ポリグアナミン類、アラルキル又はアラルキレングアナミン類など]、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物[アセタール基含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類(CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなど)、イソシアヌル環含有グアナミン類、イミダゾール環含有グアナミン類など]などが挙げられる。又、上記のメラミン、メラミン誘導体、グアナミン系化合物のアルコキシメチル基がアミノ基に置換した化合物なども含まれる。
【0039】
ヒドラジド化合物としては、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物(ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジドなど)、脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなど)、芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、2−ナフトエ酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドなど)、ヘテロ原子含有カルボン酸ヒドラジド系化合物、ポリマー型カルボン酸ヒドラジド系化合物などが挙げられる。
【0040】
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されるポリアミドが含まれる。又、2種以上の異なったポリアミド形成成分により形成される共重合ポリアミドも含まれる。
【0041】
具体的なポリアミドの例としては、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド及びこれらの共重合体などが挙げられる。又、ポリアミドハードセグメントとポリエーテル成分などの他のソフトセグメントの結合したポリアミド系ブロックコポリマーの使用も可能である。
【0042】
アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれる(d)窒素含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)成分のポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。
【0043】
<(e)長鎖脂肪酸誘導体>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体の少なくとも一種を用いることで、ホルムアルデヒド発生量が低く、磨耗量及び摩擦係数の低減に優れた樹脂組成物が安定して得られ、樹脂組成物の溶融加工性も向上する。
【0044】
分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体としては、長鎖脂肪酸とアルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0045】
長鎖脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、炭素数10以上の一価の不飽和脂肪酸、炭素数10以上の二価の脂肪酸(二塩基性脂肪酸)などが例示され、その一部の水素原子が他の置換基で置換されたものも使用できる。
【0046】
本発明のポリアセタール樹脂組成物に使用する、分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体の具体例としては、エチレングリコールモノパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノベヘン酸エステル、エチレングリコールモノジモンタン酸エステル、グリセリンモノ又はジパルミチン酸エステル、グリセリンモノ又はジステアリン酸エステル、グリセリンモノ又はジベヘン酸エステル、グリセリンモノ又はジモンタン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ又はジパルミチン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ又はジステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ又はジベヘン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ又はジモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至トリパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至トリステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至トリベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至トリモンタン酸エステル、ポリグリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、ポリグリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、ポリグリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ソルビトールモノ乃至トリパルミチン酸エステル、ソルビトールモノ乃至トリステアリン酸エステル、ソルビトールモノ乃至トリベヘン酸エステル、ソルビトールモノ乃至トリモンタン酸エステル、又、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のパルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、モンタン酸エステルなどが挙げられる。
【0047】
分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(e)成分のポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.1〜2.5重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。特に(e)成分の含有量が0.2〜2重量部であれば、本発明の樹脂組成物を成形して摺動部品とした場合に、相手材との摩擦が非常に小さくなる。
【0048】
<その他の成分>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、(a)ポリアセタール樹脂と(b)セルロース繊維パウダーとの密着性を改善する物質を配合することができる。ここで、密着性を改善する物質としては、イソシアネート化合物、イソチオシオネート化合物、及びそれらの変性体イソシアネート化合物、熱可塑性ポリウレタン樹脂、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体、ホウ酸化合物などが挙げられる。
【0049】
さらに、本発明の樹脂組成物には目的とする用途に応じてその物性を改善するため、公知の各種の添加物を配合し得る。添加物の例を示せば、各種の着色剤、滑剤、核剤、界面活性剤、異種ポリマー、有機高分子改良剤及び無機、有機、金属などの繊維状、粉粒状、板状の充填剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。
【0050】
<ポリアセタール樹脂組成物の調製方法>
本発明において、上記ポリアセタール樹脂組成物の調製方法の具体的態様は特に限定されるものではなく、一般に合成樹脂組成物又はその成形品の調製法として公知の設備と方法により調製することができる。すなわち、必要な成分を混合し、押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。特に、本発明の樹脂組成物の調製に使用される押出機としては、機械的特性の改善とセルロース繊維パウダーの分散性の両立の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
【0051】
上記ポリアセタール樹脂組成物を構成する成分の配合は、任意のいかなる段階、例えば、(a)成分のポリアセタール樹脂に一旦加えても、或いは樹脂組成物の調製時に加えてもよく、又最終成形品を得る直前で、添加、混合することも可能であるが、特に、機械的特性の改善とセルロース繊維パウダーの分散性の両立の観点から、(b)セルロース繊維パウダーは押出機のサイド側から他の原料とは独立に供給し、混合することが好ましい。
【0052】
上記のように得られた本発明のポリアセタール樹脂組成物は溶融試料から発生するホルムアルデヒド量を低くできる。本発明における好ましいポリアセタール樹脂組成物は、溶融試料からのホルムアルデヒド発生量が100ppm以下のものである。ここで、ホルムアルデヒド発生量は、実施例で詳述する如く、ペレット状の組成物(試料)8gを、200℃に調整された金属製シリンダーに内に充填し、溶融させた状態で5分間保持した後、排出された溶融樹脂から発生する量をJIS K0102に準拠した方法で定量したものである。
【0053】
<ポリアセタール樹脂組成物の成形方法ならびに用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物を原料として、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)を採用することで、種々の成形品を成形することができる。特に、射出成形に好適である。
【0054】
また、上記のように得られた本発明のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品は摺動性に優れる。具体的には、本発明の樹脂組成物を原料として用いれば、JIS K7218に記載されたA法に基づいて、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた場合の、中空円筒試験片の摩耗量が20mg以下であり、炭素鋼材(S45C)の磨耗量が0.2mg以下である摩耗特性を有する成形品を製造可能である。
【0055】
また、本発明の樹脂組成物を原料として用いれば、JIS K7218に記載されたA法に基づいて、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる中空円筒試験片を成形し、中空円筒試験片と炭素鋼材(S45C)とを、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させた後の、中空円筒試験片の炭素鋼材に対する摩擦係数が0.3μs以下である摩擦特性を有する成形品を製造可能である。
【0056】
したがって、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建材、生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品など各種用途に利用することができる。特に、摺動性が求められる機構部品、具体的には、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどの摺動部品に好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
<使用成分>
使用した成分の詳細は、以下のとおりである。
(a)ポリアセタール樹脂
(a−1)トリオキサン96.5重量%と1,3−ジオキソラン3.5重量%を共重合して得られるポリアセタール樹脂、不安定末端基量0.2重量%、メルトインデックス=27g/10分(ポリプラスチックス(株)製)
(b)セルロース繊維パウダー
(b−1)ARBOCEL BWW40、アスペクト比10、平均繊維長200μm、αセルロース含有率約99.5重量%(レッテンマイヤー社製)
(b−2)KCフロックW−50GK アスペクト比1〜2、αセルロース含有率99重量%以上(日本製紙ケミカル製)
(b−3)ARBOCEL ZZ 8−1、アスペクト比24.4、平均繊維長1100μm、αセルロース含有率75〜85重量%(レッテンマイヤー社製)
(b’)その他のセルロース系物質
(b’−4)パルプ、αセルロース含有率約95重量%((株)日本製紙グループ製)
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(c−1)ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(d)窒素含有化合物
(d−1)メラミン
(e)分子中に少なくとも1つの水酸基を有する長鎖脂肪酸誘導体
(e−1)グリセリンモノステアリン酸エステル
(e’)その他の長鎖脂肪酸誘導体
(e’−2)エチレンビスステアリルアミド
(e’−3)ペンタエリスリトールステアリン酸フルエステル
(e’−4)ステアリン酸ステアリル
【0059】
<実施例1〜5、比較例1〜7>
表1に示す割合で、(a)ポリアセタール樹脂、(b)セルロース繊維パウダー、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、及び分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体を二軸押出機で溶融混錬し、ペレット状のポリアセタール樹脂組成物を調製した。
【0060】
なお、(b)セルロース繊維パウダーは二軸押出機のサイド側から独立にフィーダーから供給して混合した。また、比較例7では(b)セルロース繊維パウダーに代えて、(b’)その他のセルロース系物質を使用し、比較例2〜5、7では分子中に少なくとも1つの水酸基を有する(e)長鎖脂肪酸誘導体に代えて、(e’)その他の長鎖脂肪酸誘導体を使用した。得られたペレットを用いて、射出成形機により所定の試験片を成形し、試験評価を行った。結果を表1に示す。
〔押出条件〕
押出機:TEX−30α(L/D=38.5)、(株)日本製鋼所製
スクリュー回転数:129rpm
バレル温度:C2=160℃、C3〜C11・D=200℃
〔成形条件〕
成形機:ROBOSHOT S2000i100B、スクリュー径28mm、ファナック社製
シリンダー温度:200℃
金型温度:90℃(水温調)
【0061】
〔試験方法〕
試験方法の詳細は、以下のとおりである。
【0062】
(1)ホルムアルデヒド発生量
実施例、比較例で調製したペレット状の組成物(試料)8gを、200℃に調整された金属製シリンダーに内に充填し、上記樹脂ペレットを溶融させた状態で5分間保持した。ここで、使用した金属製シリンダーは、蒸留水を入れたガラス製吸引ビンと連結している。
続いて、上記金属製シリンダーに連結されたガラス製吸収ビンに窒素を流しながら、溶融樹脂から発生したホルムアルデヒドガスを、窒素気流と共に、ガラス製吸引ビン内の蒸留水に排出することで、吸収ビン内の蒸留水にホルムアルデヒドガスを吸収させた。蒸留水に吸収されたホルムアルデヒドをJIS K0102に準拠した方法で定量し、評価試料(組成物)に対する割合として算出した。
【0063】
(2)摺動性
JIS K7218に準拠した回転式摩擦磨耗試験機を用い、実施例及び比較例の樹脂組成物から成形した同規格A法指定の中空円筒試験片を、炭素鋼材(S45C)を相手材として、150rpm、20kgfの条件で24時間摺動させ、自材(樹脂組成物)の磨耗量(mg)、及び、S45Cの磨耗量(mg)を測定した。又、同条件にて、摺動試験を行った24時間後の摩擦係数を測定した。
【0064】
表1の結果の比較から、本発明の要件を満たすポリアセタール樹脂組成物(実施例1〜5)は、低いホルムアルデヒド発生量と、低い磨耗量を示すことがわかる。特に、実施例2〜5では、低い摩擦係数も示すことがわかる。一方、(e)長鎖脂肪酸誘導体が本発明の要件を満たさない比較例1〜5の場合には、磨耗量や摩擦係数の値が高めであることがわかる。
【0065】
さらに、セルロース繊維パウダーが本発明の要件を満たさない比較例6では、押出性が不良で評価不能であり、比較例7では、ホルムアルデヒド発生量が高く、磨耗量や摩擦係数の値が高めであることがわかる。
【0066】
【表1】