特許第5778619号(P5778619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778619
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20150827BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20150827BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20150827BHJP
   G01L 11/02 20060101ALI20150827BHJP
   G01L 13/06 20060101ALI20150827BHJP
   G01L 23/06 20060101ALI20150827BHJP
   G01L 23/18 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   G01L9/00 303A
   H01L29/84 B
   G01L7/00 K
   G01L9/00 B
   G01L11/02
   G01L13/06 R
   G01L23/06
   G01L23/18
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-105306(P2012-105306)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-234853(P2013-234853A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】下山 勲
(72)【発明者】
【氏名】松本 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英俊
(72)【発明者】
【氏名】グェン ミン ジューン
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】新荻 正隆
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特公平7−1215(JP,B2)
【文献】 特表2009−537831(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102073(WO,A1)
【文献】 特許第5674167(JP,B2)
【文献】 Hidetoshi TAKAHASHI,Kiyoshi MATSUMOTO,and Isao SHI,AIR PRESSURE SENSOR FOR AN INSECT WING,Technical Digest of 22nd IEEE International Confer,イタリア,IEEE,2009年 1月25日,ISSN:1084−6999,,825−828,ISBN:978−1−4244−2977−6
【文献】 高橋英俊,松本潔,下山勲,MEMSセンサを用いた昆虫型羽ばたき翼における差圧計測,日本機械学会2009年度年次大会講演論文集(6),日本,社団法人 日本機械学会,2009年 9月12日,通計番号:No.09−1,135,136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2013/057765
の調査報告が利用できたので、追加的な調査は省略された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯域の圧力変動を検出する圧力センサであって、
キャビティと、該キャビティの内部と外部とを連通する連通開口と、が形成されたセンサ本体と、
半導体材料により基端部から先端部に向けて一方向に延びる板状に形成され、基端部が前記センサ本体に片持ち状に支持された状態で前記連通開口の内側に配設され、前記キャビティの内部と外部との圧力差に応じて撓み変形するカンチレバーと、
前記カンチレバーの変位を測定する変位測定部と、を備え、
前記カンチレバーの外周縁と前記連通開口の開口端との間には、該カンチレバーの外周縁に沿ってギャップが形成され、
前記周波数帯域における下限周波数fLOW(Hz)は、下記式(1)によって設定されていることを特徴とする圧力センサ。
LOW >k・(G2/V)・・・(1)
〔式中、kは比例定数、Gは前記ギャップの幅(μm)、Vは前記キャビティの容積(ml)である。〕
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記比例定数kは、0.005〜0.02の範囲内とされていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力センサにおいて、
前記下限周波数fLOW は、下記式(2)を満たすことを特徴とする圧力センサ。
LOW >k・(G2/V)>fnoise・・・(2)
〔式中、fnoiseは、ノイズ周波数(Hz)である。〕
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記変位測定部は、前記カンチレバーの基端部に形成されたピエゾ抵抗を備えることを特徴とする圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力差に基づいて圧力変動を検出する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力変動を検出する圧力センサ(差圧センサ)として、例えば、透孔又は凹部を有する基板と、通気孔を有する収納容器と、収納容器内に配設され、透孔内又は凹部内で振動可能に基板に片持ち支持された圧電素子と、を具備した圧力センサが知られている(特許文献1参照)。
この圧力センサによれば、通気孔を介して収納容器内に伝わる圧力変動に反応して圧電素子が振動するので、この圧電素子の電圧変化に基づいて圧力変動を検出することが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−208827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の圧力センサでは、その用途等に応じた周波数帯域内において圧力変動を検出することができるように設計がなされる。この際、圧力変動の検出感度としては、例えば上記特許文献1の圧力センサを例に挙げると、圧電素子の形状や、透孔又は凹部の容積や、透孔又は凹部と外気との間を出入りする流量等によって決定がなされ、特に圧電素子の形状によって大きく左右される。
【0005】
しかしながら、圧電素子は圧電体の両面に電極膜等を具備する構成とされ、その構造上、薄型化を図り難く、変形量を大きく確保することが難しい。従って、圧力変動検出に限度があり、微小な圧力変動の検出を行う場合には不十分であった。
【0006】
また、検出することができる圧力変動の上限周波数は、圧電素子の共振周波数近傍であると考えられるが、その一方、下限周波数については、設計指針が何ら得られていないのが現状である。そのため、ゆっくりと圧力変動した場合、どの程度のレベルまで測定することができるのか否かといったことを正確に把握することは困難であった。
よって、設計パラメータを変えたものを複数種類作製し、これらの結果を複数組み合わせることで、下限周波数を実測するしか手立てがなかった。従って、検出できる下限周波数を任意の値に設定するといったことは、実際上困難とされている。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、微小な圧力変動の検出を精度良く行うことができると共に、圧力変動の下限周波数を所望する値に設定でき、検出できる圧力変動の周波数帯域を任意に設定することができる圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る圧力センサは、所定の周波数帯域の圧力変動を検出する圧力センサであって、キャビティと、該キャビティの内部と外部とを連通する連通開口と、が形成されたセンサ本体と、半導体材料により基端部から先端部に向けて一方向に延びる板状に形成され、基端部が前記センサ本体に片持ち状に支持された状態で前記連通開口の内側に配設され、前記キャビティの内部と外部との圧力差に応じて撓み変形するカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を測定する変位測定部と、を備え、前記カンチレバーの外周縁と前記連通開口の開口端との間には、該カンチレバーの外周縁に沿ってギャップが形成され、前記周波数帯域における下限周波数fLOW(Hz)は、下記式(1)によって設定されていることを特徴とする。
LOW >k・(G2/V)・・・(1)〔式中、kは比例定数、Gは前記ギャップの幅(μm)、Vは前記キャビティの容積(ml)である。〕
【0009】
本発明に係る圧力センサによれば、センサ外部の圧力が変動すると、キャビティの外部と内部との間に圧力差が生じ、この圧力差に応じてカンチレバーが撓み変形する。また、この変形後、時間の経過と共にギャップを通じて圧力伝達媒体がキャビティの内部と外部との間を流動するので、キャビティの内部と外部との圧力が徐々に均衡状態となり、カンチレバーの撓みが徐々に小さくなって元の状態に復帰する。従って、変位測定部によるカンチレバーの変位測定(撓み変形測定)の結果に基づいて、圧力変動を検出することができる。
特に、シリコン等の半導体材料を利用して半導体プロセス技術によりカンチレバーを形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化し易く、微小な圧力変動の検出を精度良く行うことができる。
【0010】
ところで、ギャップの幅が大きい場合には、キャビティの内部と外部との圧力差が得られ難くなるので、圧力変動の下限周波数が上昇する傾向にある。これに対してギャップの幅が小さい場合には、キャビティの内部と外部との圧力差を維持しておき易いので、微小な圧力変動であっても検出し易く、圧力変動の下限周波数が低下する傾向にある。
また、キャビティの容積が小さい場合には、ギャップの幅が大きい場合と同様に、キャビティの内部と外部との圧力差が得られ難くなるので、圧力変動の下限周波数が上昇する傾向にある。これに対してキャビティの容積が大きい場合には、ギャップの幅が小さい場合と同様に、キャビティの内部と外部との圧力差を維持しておき易いので、圧力変動の下限周波数が低下する傾向にある。
【0011】
そして、本発明者らは、これらの一般的な関係をさらにつきつめて、下限周波数と、ギャップの幅と、キャビティの容積と、の関係が上記式(1)の関係式を満たすことを見出した。これにより、ギャップの幅及びキャビティの容積の値を変化させるだけの簡便な設計で、従来ではなしえなかった圧力変動の下限周波数を所望する値に設定することが可能となる。従って、検出することができる圧力変動の周波数帯域を任意に設定することができ、各種の用途に幅広く対応でき、最適な性能を発揮し易い高品質な圧力センサとすることができる。
【0012】
(2)上記本発明に係る圧力センサにおいて、前記比例定数kは、0.005〜0.02の範囲内とされていることが好ましい。
【0013】
この場合には、ギャップの幅が1μm〜10μmの範囲内で、且つキャビティの容積が0.5ml〜5mlの範囲内において、下限周波数をより正確に所望する値に設定することが可能となる。
【0014】
(3)上記本発明に係る圧力センサにおいて、前記下限周波数fLOWは、下記式(2)を満たすことが好ましい。
LOW >k・(G2/V)>fnoise・・・(2)
〔式中、fnoiseは、ノイズ周波数(Hz)である。〕
【0015】
この場合には、圧力変動の下限周波数をノイズカットしたい周波数よりも高くすることができるので、例えば大気圧変動の影響を受け難い圧力センサとすることができ、検出対象の圧力変動を集中して検出でき、センサとしての価値をさらに高めることができる。
【0016】
(4)上記本発明に係る圧力センサにおいて、前記変位測定部は、前記カンチレバーの基端部に形成されたピエゾ抵抗を備えることが好ましい。
【0017】
この場合には、ピエゾ抵抗を利用するので自己変位検出型のカンチレバーとすることができ、圧力変動の検出をさらに高精度に検出することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る圧力センサによれば、微小な圧力変動の検出を精度良く行うことができると共に、圧力変動の下限周波数を所望する値に設定でき、検出できる圧力変動の周波数帯域を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る実施形態を示す図であって、圧力センサの平面図である。
図2図1に示すA−A線に沿った圧力センサの断面図である。
図3図1に示す圧力センサの出力の一例を示す図である。
図4図1に示す圧力センサの動作の一例を示す図である。
図5図1に示す圧力センサにおいて、外気圧と、内気圧と、外気圧と内気圧との差圧と、の関係を示す図である。
図6図1に示す圧力センサを利用した第1検証試験の結果を示す図である。
図7図1に示す圧力センサを利用した第2検証試験の結果を示す図である。
図8図1に示す圧力センサを利用した第3検証試験の結果を示す図である。
図9図1に示す圧力センサを利用した第4検証試験の結果を示す図である。
図10図1に示す圧力センサを利用した第5検証試験の結果を示す図である。
図11図1に示す圧力センサを利用した第6検証試験の結果を示す図である。
図12図1に示す圧力センサを利用した第7検証試験の結果を示す図である。
図13図1に示す圧力センサを利用した第8検証試験の結果を示す図である。
図14】本発明に係る圧力センサの変形例を示す平面図である。
図15図14に示す検出回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る圧力センサの実施形態について図面を参照して説明する。
<圧力センサの構成>
図1及び図2に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、所定の周波数帯域の圧力変動を検出するセンサであって、例えばシリコン支持層2a、シリコン酸化膜等の酸化層2b、及びシリコン活性層2cを熱的に張り合わせたSOI基板2を利用して形成され、センサ本体3と、カンチレバー4と、変位測定部5と、を備えている。
【0021】
上記センサ本体3は、例えばSOI基板2におけるシリコン支持層2a及び酸化層2bによって、上方に開口する有底筒状に形成されている。センサ本体3の内部空間は、キャビティ(空気室)10として機能し、上方に開口した部分はキャビティ10の内部と外部とを連通する連通開口11として機能する。
なお、図示の例では、センサ本体3は平面視長方形状に形成されているが、この形状に限定されるものではない。
【0022】
上記カンチレバー4は、センサ本体3の長手方向に沿いながら基端部4aから自由端とされた先端部4bに向けて一方向に延びる板状に形成されており、基端部4aがセンサ本体3に片持ち状に支持された状態で連通開口11の内側に配設されている。
【0023】
より具体的には、このカンチレバー4は、例えばSOI基板2におけるシリコン活性層2cからなり、基端部4aを介してセンサ本体3における周壁部3aの一部の上面に一体的に固定されることで、片持ち支持されている。この際、カンチレバー4のサイズとしては、連通開口11の開口端に近接する平面視長方形状とされており、連通開口11を略閉塞している。これにより、カンチレバー4は、基端部4aを中心としてキャビティ10の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形可能とされる。
【0024】
なお、センサ本体3における周壁部3aの残りの部分の上面には、SOI基板2におけるシリコン活性層2cからなる枠部12が一体的に固定されている。また、カンチレバー4の外周縁と連通開口11の開口端との間には、カンチレバー4の外周縁に沿って幅Gのギャップ13が平面視コの字状に形成されている。
【0025】
なお、図示の例では、センサ本体3の長手方向側の幅と、短手方向側の幅と、が共に同じ幅Gで形成されたギャップ13を例にしているが、例えば、長手方向側の幅と、短手方向側の幅と、が異なる幅となるようにギャップ13を形成しても良いし、幅寸法が適宜変化するようにギャップ13を形成しても構わない。
この場合、最も幅広とされた部分の幅寸法を幅Gとして、後述する式(1)で用いれば良い。
【0026】
カンチレバー4の基端部4aには、平面視コの字状の貫通孔15が形成されており、該カンチレバー4が撓み変形し易い設計とされている。但し、この貫通孔15の形状は、上記形状に限定されるものではない。また、この貫通孔15は、必須なものではなく、形成されていなくても構わない。
【0027】
更に、カンチレバー4の基端部4aには、該カンチレバー4の撓み量(変位量)に応じて抵抗値が変化するピエゾ抵抗20が、貫通孔15をセンサ本体3の短手方向から挟み込むように形成されている。これらピエゾ抵抗20には、導電性材料からなる配線部21が接続されており、この配線部21及びピエゾ抵抗20を含む全体的な形状が平面視U字状とされている。また、ピエゾ抵抗20には、該ピエゾ抵抗20の抵抗値変化に基づいてカンチレバー4の変位を測定する検出回路22が接続されている。
【0028】
これにより、検出回路22を通じて一方のピエゾ抵抗20に所定電圧が印加されると、この電圧印加に起因する電流は、貫通孔15を回り込むようにして、一方のピエゾ抵抗20から配線部21を経由して他方のピエゾ抵抗20に流れる。
そのため、検出回路22は、カンチレバー4の変位(撓み変形)に応じて変化するピエゾ抵抗20の抵抗値変化を電気的な出力信号として取り出すことが可能とされている。従って、この出力信号(センサ出力)に基づいてカンチレバー4の変位を測定でき、圧力変動を検出することが可能となる。
【0029】
なお、上記ピエゾ抵抗20は、例えばリン等のドープ剤(不純物)をイオン注入法や拡散法等の各種の方法によりドーピングされることで形成されている。また、ピエゾ抵抗20及び配線部21上には、図示しない絶縁膜が保護膜として被膜されており、外部との電気的な接触の防止がなされている。
また、上記したピエゾ抵抗20、配線部21及び検出回路22は、カンチレバー4の変位を測定する変位測定部5として機能する。
【0030】
(圧力センサの作動)
次に、上述した圧力センサ1を利用して、圧力変動を検出する場合について説明する。
はじめに、図3(A)に示す期間Aのように、キャビティ10の外部の圧力(以下、外気圧Poutと称する)と、キャビティ10の内部の圧力(以下、内気圧Pinと称する)との圧力差がゼロである場合には、図4(A)に示すように、カンチレバー4は撓み変形することがない。
【0031】
ここで、図3(A)に示す時刻t1以降の期間Bのように、例えば外気圧Poutがステップ状に上昇すると、キャビティ10の外部と内部との間に圧力差が生じるので、図4(B)に示すようにカンチレバー4はキャビティ10の内部に向けて撓み変形する。
すると、カンチレバー4の撓み変形に応じてピエゾ抵抗20に歪が生じ、抵抗値が変化するので、図3(B)に示すように上記出力信号が増大する。
【0032】
また、外気圧Poutの上昇以降、ギャップ13を介してキャビティ10の外部から内部へと圧力伝達媒体が流動するので、図3(A)に示すように、内気圧Pinが時間の経過と共に外気圧Poutよりも遅れながら、且つ外気圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
これにより、内気圧Pinが外気圧Poutに徐々に近づくので、キャビティ10の外部と内部との圧力が均衡状態になりはじめ、カンチレバー4の撓みが徐々に小さくなり、図3(B)に示すように上記出力信号が徐々に低下する。
【0033】
そして、図3(A)に示す時刻t2以降の期間Cのように、内気圧Pinが外気圧Poutに等しくなると、図4(C)に示すように、カンチレバー4の撓み変形が解消されて元の状態に復帰し、図3(B)に示すように上記出力信号が再びゼロになる。
【0034】
このように、カンチレバー4の変位に基づいた出力信号の変動をモニタすることで、圧力変動を検出することができる。
特に、SOI基板2のシリコン活性層2cを利用して半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化(例えば数十〜数百nm)し易い。従って、微小な圧力変動の検出を精度良く行うことができる。
【0035】
そして、本実施形態の圧力センサ1は、以下の各種用途に適用することができる。
例えば、自動車用ナビゲーション装置に適用することが可能である。この場合、例えば圧力センサ1を利用して高低差に基づく気圧差を検出できるので、高架道路と高架下道路とを正確に判別してナビゲーション結果に反映させることができる。
また、携帯用ナビゲーション装置に適用することも可能である。この場合、例えば圧力センサ1を利用して高低差に基づく気圧差を検出できるので、ユーザが建物内の何階に位置しているのかを正確に判別してナビゲーション結果に反映させることができる。
更には、室内の気圧変化を検出することが可能であるので、例えば建物や自動車の防犯装置に適用することも可能である。
【0036】
このように、圧力センサ1を各種用途に適用することが可能であるが、本実施形態の圧力センサ1によればその用途に応じて、検出することができる圧力変動の周波数帯域(Hz)を予め設定しておくことが可能である。この点、以下に詳細に説明する。
【0037】
はじめに、上限周波数については、カンチレバー4の最大共振周波数とすることができるので、例えばカンチレバー4のサイズ、材質や厚み等により振動特性を適宜変化させることで、所望する値に設定することが可能である。
【0038】
次いで、下限周波数の設定について説明する。
まず、ギャップ13の幅Gが大きい場合には、キャビティ10の内部と外部との圧力差が得られ難くなるので、圧力変動の下限周波数が上昇する傾向になる。これに対して、ギャップ13の幅Gが小さい場合には、キャビティ10の内部と外部との圧力差を維持しておき易いので、微小な圧力変動であっても検出し易く、圧力変動の下限周波数が低下する傾向にある。
【0039】
また、キャビティ10の容積Vが小さい場合には、ギャップ13の幅Gが大きい場合と同様に、キャビティ10の内部と外部との圧力差が得られ難くなるので、圧力変動の下限周波数が上昇する傾向になる。これに対して、キャビティ10の容積Vが大きい場合には、ギャップ13の幅Gが小さい場合と同様に、キャビティ10の内部と外部との圧力差を維持しておき易いので、圧力変動の下限周波数が低下する傾向にある。
【0040】
ここで、本発明者らは、上記した一般的な関係をさらにつきつめて、下限周波数と、ギャップ13の幅Gと、キャビティ10の容積Vと、が下記式(1)の関係式を満たすことを見出した。
【0041】
下限周波数(fLOW )>k・(G2/V)・・・(1)
式中、Gはギャップ13の幅(μm)、Vはキャビティ10の容積(ml)である。また、kは比例定数であって、例えば0.005〜0.02の範囲内で選択される。
【0042】
これにより、ギャップ13の幅G及びキャビティ10の容積Vの値を変化させるだけの簡便な設計で、従来ではなしえなかった圧力変動の下限周波数を所望する値に設定することが可能となる。
従って、上限周波数及び下限周波数の両方を自在に設定でき、検出することができる圧力変動の周波数帯域を任意に設定することができ、各種の用途に幅広く対応でき、且つ最適な性能を発揮し易い高品質な圧力センサ1とすることができる。
【0043】
以下、上記式(1)の根拠について、その検証試験結果と共に説明する。
まず、上述したように圧力変動が生じた際、カンチレバー4は撓み変形するが、その変形は、図3からも明らかなように外気圧Poutと内気圧Pinとの差(差圧)に比例する。このとき、外気圧Poutの変動が遅くなるほど(周波数が小さいほど)、カンチレバー4の撓み変形は小さくなると共に、外気圧Poutに対してカンチレバー4の撓み変形の位相が進んで、その位相差は大きくなる。
図5に、外気圧Poutの周波数を変化させた場合における、外気圧Poutと、内気圧Pinと、(外気圧Pout−内気圧Pin)と、の関係を示す。
【0044】
図5に示すように、上記位相差は外気圧Poutの周波数が1Hzの場合が最も小さく、外気圧Poutの周波数が0.5Hz、0.1Hzと小さくなるにつれて大きくなっていることが明らかに認められる。この点は、ギャップ13の幅G及びキャビティ10の容積Vの値に関係なく、共通して認められる現象である。
【0045】
次いで、ギャップ13の幅G及びキャビティ10の容積Vの値をそれぞれ変化させた場合における、検証試験結果について、図6図13を参照して説明する。
具体的には、ギャップ13の幅G及びキャビティ10の容積Vの値をそれぞれ変化させた場合における、外気圧Poutと、外気圧Poutと内気圧Pinとの差圧(センサ出力)と、の関係について検証を行った。
図6図13における各図において、
(A)は、外気圧Poutの周波数を変化させた場合における、外気圧Poutと内気圧Pinとの差圧の振幅をプロットしたものであり、
(B)は、外気圧Poutの周波数を変化させた場合における、位相差をプロットしたものである。
【0046】
(検証試験1)
キャビティ10の容積Vを0.5mlとし、ギャップ13の幅Gが1μm、3μm、5μm、10μmとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。この際、外気圧Poutを1.2paで周期的に変動させた。なお、各圧力センサは、ギャップ13の幅Gが異なるだけで、その構成は上記実施形態の圧力センサ1と同一である。
【0047】
その結果、図6(A)に示すように、ギャップ13の幅Gが小さいほど、検出することができる外気圧Poutの圧力変動の下限周波数が実際に低下することが確認できた。また、図6(B)に示すように、特定の位相差において、外気圧Poutの圧力変動の下限周波数はギャップ13の幅Gの2乗にほぼ比例していることが確認できた。
【0048】
具体的には、図6(B)に示すように、例えば位相差45degとなる下限周波数は、ギャップ13の幅Gが1μmの場合に比べて、10μmの方が100倍程度大きいことが認められる。また、ギャップ13の幅Gが5μmの場合に比べて、10μmの方が4倍程度大きいことが認められる。
【0049】
(検証試験2)
次いで、キャビティ10の容積Vを1mlに変更し、ギャップ13の幅Gが1μm、3μm、5μm、10μmとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図7(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験1と同様の結果を得ることができた。
【0050】
(検証試験3)
次いで、キャビティ10の容積Vを2mlに変更し、ギャップ13の幅Gが1μm、3μm、5μm、10μmとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図8(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験1と同様の結果を得ることができた。
【0051】
(検証試験4)
次いで、キャビティ10の容積Vを4mlに変更し、ギャップ13の幅Gが1μm、3μm、5μm、10μmとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図9(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験1と同様の結果を得ることができた。
【0052】
(検証試験5)
次いで、ギャップ13の幅Gを1μmとし、キャビティ10の容積Vを0.5ml、1ml、2ml、4mlとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。この際、外気圧Poutを1.2paで周期的に変動させた。なお、各圧力センサ1は、ギャップ13の幅Gが異なるだけで、その構成は上記実施形態の圧力センサ1と同一である。
【0053】
その結果、図10(A)に示すように、キャビティ10の容積Vが大きくなるほど、検出することができる外気圧Poutの圧力変動の下限周波数が実際に低下することが確認できた。また、図10(B)に示すように、特定の位相差において、気圧Poutの圧力変動の下限周波数はキャビティ10の容積Vにほぼ反比例していることが確認できた。
【0054】
具体的には、図10(B)に示すように、例えば位相差45degとなる下限周波数は、キャビティ10の容積Vが4ml、2ml、1ml、0.5mlの順に小さくなるにつれて、それぞれ2倍程度大きくなることが認められる。
【0055】
(検証試験6)
次いで、ギャップ13の幅Gを3μmに変更し、キャビティ10の容積Vが0.5ml、1ml、2ml、4mlとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図11(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験5と同様の結果を得ることができた。
【0056】
(検証試験7)
次いで、ギャップ13の幅Gを5μmに変更し、キャビティ10の容積Vが0.5ml、1ml、2ml、4mlとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図12(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験5と同様の結果を得ることができた。
【0057】
(検証試験8)
次いで、ギャップ13の幅Gを10μmに変更し、キャビティ10の容積Vが0.5ml、1ml、2ml、4mlとされた4つの圧力センサについて検証試験を行った。その結果、図13(A)、(B)に示すように、この場合であっても検証試験5と同様の結果を得ることができた。
【0058】
以上の各検証試験の結果から、圧力変動の下限周波数は、特定の位相差において、ギャップ13の幅Gの2乗に比例し、且つキャビティ10の容積Vに反比例することが認められた。このことにより、上記式(1)を見出すことができた。
【0059】
なお、比例定数kは、下限周波数の補正値であり、0.005〜0.02の範囲内で選択されることが好ましい。特に、ギャップ13の幅Gが1μm〜10μmの範囲内で、且つキャビティ10の容積Vが0.5ml〜5mlの範囲内において、下限周波数をより正確に所望する値に設定し易い。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態において、圧力変動の下限周波数を設定する際に、下記式(2)に基づいて設定することが好ましい。
LOW >k・(G2/V)>fnoise・・・(2)
式中、fnoiseは、ノイズ周波数(Hz)である。
こうすることで、圧力変動の下限周波数をノイズカットしたい周波数よりも高くすることができるので、例えば大気圧変動の影響を受けにくい圧力センサとすることができ、センサとしての価値をさらに高めることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、ピエゾ抵抗20を利用してカンチレバー4の変位を測定する構成としたが、例えば、カンチレバー4に検出光を照射し、その反射光の受光位置に基づいてカンチレバー4の変位を測定する方式(いわゆる光てこ方式)であっても構わない。
但し、上記実施形態のように、ピエゾ抵抗20を利用することで自己変位検出型のカンチレバーとすることができるので、外光等の影響を受けることなく、圧力変動の検出を高精度に行い易い。
【0063】
また、上記実施形態において、図14に示すように、レファレンス用のカンチレバー30をさらに備え、検出回路22が2つのカンチレバー4、30の出力の差分を検出するように構成しても構わない。
上記レファレンス用のカンチレバー30は、カンチレバー4と構成が同一とされ、例えばセンサ本体3に一体的に片持ち支持された状態で固定されている。但し、このレファレンス用のカンチレバー30は、外気に対して開放状態とされており、外気圧Poutの圧力変動に起因して撓み変形しない構成とされている。
【0064】
また、この場合の検出回路22は、例えば図15に示すように、ブリッジ回路31(ホイートストンブリッジ回路)と、基準電圧発生回路32と、作動増幅回路33と、出力回路34と、を備えている。
【0065】
ブリッジ回路31は、カンチレバー4のピエゾ抵抗20〔以下、第1ピエゾ抵抗40(抵抗値R1)と称する〕、及び、レファレンス用のカンチレバー30のピエゾ抵抗〔以下、第2ピエゾ抵抗41(抵抗値R2)と称する〕が直列接続されてなる枝辺と、固定抵抗42(抵抗値R3)と固定抵抗43(抵抗値R4)とが直列接続されてなる枝辺と、が基準電圧発生回路32に対して並列に接続されている。
【0066】
なお、ブリッジ回路31において、第1ピエゾ抵抗40と第2ピエゾ抵抗41との接続点は作動増幅回路33の反転入力端子に接続され、固定抵抗42、43同士の接続点は作動増幅回路33の非反転入力端子に接続されている。
【0067】
基準電圧発生回路32は、ブリッジ回路31に対して所定の基準電圧Vccを印加する。作動増幅回路33は、ブリッジ回路31における2つの固定抵抗42、43同士の接続点と、第1ピエゾ抵抗40と第2ピエゾ抵抗41との接続点と、の間の電位差を検出し、その電位差を所定増幅率にて増幅して出力する。
なお、上記電位差は、第1ピエゾ抵抗40の抵抗値と第2ピエゾ抵抗41の抵抗値との差分(R1−R2)、つまりカンチレバー4と、レファレンス用のカンチレバー30と、の出力の差分に応じた値となる。
【0068】
このように検出回路22を構成することで、温度変化等の環境変化や、振動等の外乱に起因する出力変動分(ノイズ分)を相殺することができ、外気圧Poutの圧力変動に応じた出力信号だけを取り出すことが可能となる。従って、所望の周波数帯域の圧力変動をさらに精度良く検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…圧力センサ
3…センサ本体
4…カンチレバー
4b…カンチレバーの先端部
4a…カンチレバーの基端部
5…変位測定部
10…キャビティ
11…連通開口
20…ピエゾ抵抗
図1
図2
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図15