特許第5778755号(P5778755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778755
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ヒドロキノンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/56 20060101AFI20150827BHJP
   C07C 39/08 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C07C37/56
   C07C39/08
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-504147(P2013-504147)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公表番号】特表2013-523848(P2013-523848A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011001316
(87)【国際公開番号】WO2011128018
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】10003959.3
(32)【優先日】2010年4月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】カダム,シャフラジュ,ハナマントゥラオ
(72)【発明者】
【氏名】パクニカール,シャシクマール
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−509782(JP,A)
【文献】 特開昭63−150237(JP,A)
【文献】 米国特許第04435601(US,A)
【文献】 JEONG T-S,NOVEL 3,5-DIARYL PYRAZOLINES AS HUMAN ACYL-COA:CHOLESTEROL ACYLTRANSFERASE INHIBITORS,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,英国,ELSEVIER SCIENCE,2004年 6月 7日,V14 N11,P2715-2717
【文献】 Singh I.P.; Shukla V.K.; Dwivedi A.K.; Khanna N.M.,Synthesis of some aromatic aldehydes and phenols as potential male antifertility agents,Indian Journal Of Chemistry Section B Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry,1989年,Vol.28, No.8,pp.692-694
【文献】 WILLIAM E. SMITH,FORMYLATION OF AROMATIC COMPOUNDS WITH HEXAMETHYLENETETRAMINE AND TRIFLUOROACETIC ACID,THE JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1972年12月 1日,V37 N24,P3972-3973
【文献】 MASAKATSU MATSUMOTO,ACID-CATALYZED OXIDATION OF BENZALDEHYDES TO PHENOLS BY HYDROGEN PEROXIDE,THE JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1984年11月 1日,V49 N24,P4740-4741
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/56
C07C 39/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
式中、
R2、R3、R5、R6は、互いに独立してH、A、Cyc、Hal、CN、−(CYY)−OA、−(CYY)−NYY、−O(CYY)−OA、−O(CYY)−NYY、−NH(CYY)−OAまたは−NH(CYY)−NYYであり;
Yは、H、AまたはHalであり;
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルであり、ここで1〜7個のH原子は、Halによって置き換えられていることができ、かつ/またはここで、1つもしくは2つの隣接したCH基は、互いに独立して−CH=CH−および/もしくは−C≡C−基によって置き換えられていることができ;
Cycは、3〜7個のC原子を有するシクロアルキルであり、ここで1〜4個のH原子は、互いに独立してA、Halおよび/またはOYによって置き換えられていることができ;
Halは、F、Cl、BrまたはIであり;および
nは、0、1、2、3、4、5または6である;
で表されるヒドロキノン化合物の製造方法であって、
以下のステップ:
(a)式(II)
【化2】
式中、R2、R3、R5およびR6は、上記で定義した通りの意味を有する、
で表されるフェノール化合物を、
0.3〜0.4当量のヘキサメチレンテトラミンと、有機酸中、還流温度で加熱し、
続いて酸性水溶液である加水分解媒体を加え、得られた混合物を加熱して、式(III)
【化3】
式中、R2、R3、R5およびR6は、上記で定義した通りの意味を有する、
で表される4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド化合物を得ること、
ならびに
(b)式(III)で表される化合物を酸化剤と、溶媒中で酸性条件下で反応させて、式(I)で表される化合物を得ること
を含む、前記方法。
【請求項2】
式(I)で表され、式中、
R2は、Hまたはメチルであり;
R3、R5は、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチルまたはHalであり;
R6は、Hであり;および
Halは、F、ClまたはBrである
化合物の製造のための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールおよび/または2,6−ジエチルベンゼン−1,4−ジオールの製造のための、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)において、有機酸が氷酢酸であり、かつ/または加水分解媒体が硫酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)において、加熱を110℃〜130℃の還流温度で行い、かつ/またはステップ(b)において、反応を15℃〜50℃の間の温度で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)において、酸化剤が過酸化水素であり、かつ/または溶媒がアルコールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)において、酸性条件を、0.2の式(III)で表される化合物に対するモル比における硫酸によって提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の前に、式(III)で表される化合物を、0.2〜5の式(III)で表される化合物対水酸化ナトリウムのモル比における0.1%〜10%の水酸化ナトリウムで精製する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の前に、式(III)で表される化合物を、等モル比の式(III)で表される化合物対水酸化ナトリウムにおける1%〜2%の水酸化ナトリウムで精製する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)の後に、式(I)で表される化合物を、10%〜20%のジチオン酸ナトリウムで精製する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】
式中、R2、R3、R5およびR6は、請求項1による意味を有する、
で表されるヒドロキノン化合物の製造方法であって、置換フェノールをホルミル化し、得られた置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドを酸性条件下で、式(I)で表される対応するヒドロキノンに酸化するステップを有する、前記方法に関する。本発明の他の目的は、2,3,5−トリメチル−ヒドロキノン(TMHQ)および(dl)α−トコフェロールの合成のための中間体2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化反応によって、細胞を損傷する連鎖反応を開始するフリーラジカルが生成し得る。酸化防止剤は、フリーラジカル中間体を除去することによりこれらの連鎖反応を終了し、それら自体が酸化されることにより他の酸化反応を抑制する。有機体は、一緒に作用して、細胞の構成成分、例えばDNA、タンパク質および脂質に対する酸化的損傷を防止する酸化防止剤代謝産物および酵素の複雑なネットワークを含む。酸化的ストレスが多くのヒト疾患の重要な部分であり得るため、薬理学における酸化防止剤の使用は、特に脳卒中および神経変性疾患の治療法として集中的に研究されている。酸化防止剤はまた、健康を維持し、疾患、例えば癌および冠動脈心疾患を防止することを期待して、健康補助食品における成分として、広く使用される。医学における天然の酸化防止剤のこれらの使用に加えて、これらの化合物は、食物および化粧品における保存料、ならびにゴムおよびガソリンの劣化の防止などの多くの工業的使用を有する。具体例は、食物における酸化防止剤として使用される2−tert−ブチルヒドロキノンである。
【0003】
α−トコフェロールが、最も重要な脂溶性酸化防止剤であること、およびそれが、脂質過酸化連鎖反応において生成した脂質ラジカルと反応することにより細胞膜を酸化から保護することが、主張されてきた。2,3,5−トリメチル−ヒドロキノン(TMHQ)は、(dl)α−トコフェロールおよびその酢酸塩ならびに他の誘導体の工業的規模における製造のための重要な物質である。多数のプロセスが記載されているが、過去25年にわたって追随されている最先端技術のプロセスは、尚いくつかの欠点を有する。特に、MNOおよびMNSOスラッジ(酸性水)の生成によって、環境上の課題が生じる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の基礎となる技術的課題は、従来技術の欠点を克服し、ヒドロキノンの製造のための複雑でないプロセス、特に安価であり、容易に入手できる物質から出発し、高い収率を達成するようなプロセスを提供することである。
【0005】
本発明は、式(I)
【化2】
式中、
R2、R3、R5、R6は、互いに独立してH、A、Cyc、Hal、CN、−(CYY)−OA、−(CYY)−NYY、−O(CYY)−OA、−O(CYY)−NYY、−NH(CYY)−OAまたは−NH(CYY)−NYYであり;
Yは、H、AまたはHalであり;
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルであり、ここで1〜7個のH原子は、Halによって置き換えられていることができ、かつ/またはここで、1つもしくは2つの隣接したCH基は、互いに独立して−CH=CH−および/もしくは−C≡C−基によって置き換えられていることができ;
【0006】
Cycは、3〜7個のC原子を有するシクロアルキルであり、ここで1〜4個のH原子は、互いに独立してA、Halおよび/またはOYによって置き換えられていることができ;
Halは、F、Cl、BrまたはIであり;および
nは、0、1、2、3、4、5または6である;
で表されるヒドロキノン化合物の製造方法であって、
【0007】
以下のステップ:
(a)式(II)
【化3】
式中、R2、R3、R5およびR6は、上記で定義した通りの意味を有する、
で表されるフェノール化合物を、
1モル当量未満のホルミル炭素源と、有機酸中で加熱し、
続いて加水分解媒体を加え、得られた混合物を加熱して、式(III)
【化4】
式中、R2、R3、R5およびR6は、上記で定義した通りの意味を有する、
で表される4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド化合物を得ること、
ならびに
【0008】
(b)式(III)で表される化合物を、酸化剤と溶媒中で酸性条件下で反応させて、式(I)で表される化合物を得ること
を含む、前記方法を提供することにより、この課題を解決する。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らによって、Duff反応およびDakin反応を、各々反応条件および精製操作手順における相当な変更の下で連続的に行うことによって、式(I)で表される対応するヒドロキノンが優れた収率で得られることが、例証された。本出願の出願前に、ヘキサメチレンテトラミンをDuff反応において使用して、2,6−二置換フェノールのホルミル化を行うことが知られているに過ぎなかった(Smith JOC 37: 3972-3973 (1972))。また、EP 0650952 A1によって、3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデヒドを、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールおよび1〜3当量のヘキサメチレンテトラミンを氷酢酸中で加熱し、20%(v/v)の硫酸を加え、混合物を再び加熱することにより製造することができることが知られている。
【0010】
2,6−二置換フェノールのホルミル化の方法は、複雑であり、平均的な収率のみをもたらし、高価であり、環境上危機的な(eco-critical)試薬、例えば多量のヘキサメチレンテトラミンを使用する。さらに、4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドのDakin酸化は、アルカリ性条件下で報告されているに過ぎず、それは、ヒドロキノン合成に適していない。本発明の方法の提供によって、置換ヒドロキノンを、置換フェノールの置換4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドへの、1モル当量未満のホルミル炭素源、好ましくはヘキサメチレンテトラミンの使用によるホルミル化、および置換ヒドロキシ芳香族アルデヒドの対応するヒドロキノンへの、好ましくは硫酸によって提供される酸性条件下での酸化で開始する二段階プロセスによって、容易に製造することができる。
【0011】
本発明によって、式(I)で表される化合物の製造のための商業的に魅力的な方法として適用され得る。本発明の意味において、式(I)で表される化合物、ならびにあらゆる他の式(II)および(III)で表される化合物は、以下で、それらの薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、互変異性体、鏡像異性体、ラセミ体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物を含むと定義される。「薬学的に使用可能な誘導体」の用語は、例えば、本発明の化合物の塩およびまたいわゆるプロドラッグ化合物を意味するものと解釈される。化合物の「溶媒和物」の用語は、それらの相互の引力のために生成する、不活性溶媒分子の化合物上への付加体(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば一もしくは二水和物またはアルコキシドである。
【0012】
用語「プロドラッグ」は、例えばアルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されており、有機体中で迅速に切断されて本発明の有効な化合物を生成する、本発明の化合物を意味するものと解釈される。例えばInt. J. Pharm. 115, 61-67 (1995)に記載されているように、これらはまた、本発明の化合物の生分解性高分子誘導体を含む。本発明の化合物が、あらゆる所望のプロドラッグ、例えばエステル、カーボネート、カルバメート、尿素、アミドまたはホスフェートなどの形態であることが同様に可能であり、この場合において、実際に生物学的に活性な形態は、代謝によってのみ放出される。in-vivoで変換されて生物活性剤を提供することができるあらゆる化合物は、本発明の範囲および精神内のプロドラッグである。
【0013】
プロドラッグの様々な形態は、当該分野において周知であり、記載されている(例えばWermuth et al., Chapter 31: 671-696, The Practice of Medicinal Chemistry, Academic Press 1996;Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier 1985;Bundgaard, Chapter 5: 131-191, A Textbook of Drug Design and Development, Harwood Academic Publishers 1991)。前記参考文献は、参照によって本明細書中に組み込まれる。さらに、化学物質が体内で、状況によってはより明白な形態で、適切な個所において所望の生物学的作用を同様に生じさせ得る代謝産物に変換されることが、知られている。本発明のあらゆる化合物からの代謝によってin-vivoで変換されたあらゆる生物学的に活性な化合物は、本発明の範囲および精神内の代謝産物である。
【0014】
本発明の化合物は、純粋なEもしくはZ異性体としてのそれらの二重結合異性体の形態で、またはこれらの二重結合異性体の混合物の形態で存在し得る。可能な場合には、本発明の化合物は、互変異性体、例えばケト−エノール互変異性体の形態であり得る。本発明の化合物のすべての立体異性体は、混合物において、または純粋な、もしくは本質的に純粋な形態のいずれかであることが企図される。本発明の化合物は、あらゆる炭素原子において不斉中心を有することができる。したがって、それらは、それらのラセミ体の形態で、純粋な鏡像異性体および/もしくはジアステレオマーの形態で、またはこれらの鏡像異性体および/もしくはジアステレオマーの混合物の形態で存在し得る。
【0015】
当該混合物は、あらゆる所望の混合比の立体異性体を有し得る。したがって、例えば、1つまたは2つ以上のキラル中心を有し、ラセミ体として、またはジアステレオマー混合物として生じる本発明の化合物を、自体公知の方法によって、それらの光学的に純粋な異性体、すなわち鏡像異性体またはジアステレオマーに分画することができる。本発明の化合物の分離を、キラルな、もしくは非キラル相におけるカラム分離によって、または任意に光学的に活性な溶媒からの再結晶によって、または光学的に活性な酸もしくは塩基を使用して、または光学的に活性な試薬、例えば光学的に活性なアルコールでの誘導体化およびラジカルのその後の除去によって行うことができる。
【0016】
化合物、特に本発明の化合物を定義するために本明細書中で使用する命名法は、一般的に、化合物および特に有機化合物のためのIUPAC組織の規則に基づく。本発明の上記の化合物の説明のために示した用語は、常に、記載または特許請求の範囲において他に示さない限り以下に記載する意味を有する。
【0017】
用語「非置換」は、対応するラジカル、基または部分が置換基を有しないことを意味する。用語「置換」は、対応するラジカル、基または部分が1つまたは2つ以上の置換基を有することを意味する。ラジカルが複数の置換基を有し、様々な置換基の選択が特定される場合には、置換基は互いに独立して選択され、同一である必要はない。ラジカルが複数の具体的に指定された置換基(例えばYY)を有する場合であっても、そのような置換基の表現は、互いに異なってもよい(例えばメチルおよびエチル)。したがって、本発明のあらゆるラジカルの複数の置換が同一であるかまたは異なるラジカルを含み得ることが、理解される。したがって、個々のラジカルが化合物内に多数回出現する場合には、ラジカルは、互いに独立して示した意味を採る。
【0018】
用語「アルキル」、「アルカン」または「A」は、非環式の飽和の、または不飽和の炭化水素ラジカルを指し、それは、分枝状または直鎖状であり得、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有し、すなわちC〜C10アルカニルである。好適なアルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオ−ペンチル、tert−ペンチル、1−、2−、3−または−メチル−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−イコサニル、n−ドコサニルである。
【0019】
本発明の好ましい態様において、「A」は、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Halによって置き換えられていることができ、かつ/またはここで、1つまたは2つの隣接したCH基は、互いに独立して−CH=CH−および/または−C≡C−基によって置き換えられていることができる。より好ましい「A」は、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜5個のH原子は、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよい。
【0020】
最も好ましいのは、C1〜4アルキルである。C1〜4アルキルラジカルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチルまたはブロモメチル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはtert−ブチルである。「A」がメチルまたはエチルを示すのが、本発明の高度に好ましい態様である。「A」のそれぞれの指し示すものが、ラジカルR2、R3、R5、R6、YおよびCycにおいて互いに独立していることを、理解するものとする。
【0021】
本発明の目的のための「シクロアルキル」または「Cyc」の用語は、1〜3個の環を有し、3〜20個、好ましくは3〜12個、より好ましくは3〜9個の炭素原子を含む、飽和の、および部分的に不飽和の非芳香族の環状炭化水素基/ラジカルを指す。一般式(I)で表される化合物への結合を、シクロアルキルラジカルのあらゆる可能な環原子(ring member)を介して行うことができる。好適なシクロアルキルラジカルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロペンテニルおよびシクロオクタジエニルである。
【0022】
本発明の好ましい態様において、「Cyc」は、3〜7個のC原子を有し、ここで1〜4個のH原子が互いに独立してA、Halおよび/またはOYによって置き換えられていてもよいシクロアルキルを示す。さらに、「A」の定義はまた、シクロアルキルを含むものとし、それは、変更すべき個所は変更して「Cyc」に適用するべきものである。
【0023】
本発明の目的のための「アルキルオキシ」または「アルコキシ」の用語は、酸素原子に結合した上記の定義によるアルキルラジカルを指す。一般式(I)で表される化合物への結合は、酸素原子を介している。例は、メトキシ、エトキシおよびn−プロピルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシである。好ましいのは、示した数の炭素原子を有する「C〜C−アルキルオキシ」である。
【0024】
本発明の目的のための「ハロゲン」、「ハロゲン原子」、「ハロゲン置換基」または「Hal」の用語は、1個または、適切な場合には複数個のフッ素(F、フルオロ)、臭素(Br、ブロモ)、塩素(Cl、クロロ)またはヨウ素(I、ヨード)原子を指す。「ジハロゲン」、「トリハロゲン」および「パーハロゲン」の表示は、それぞれ、各置換基が独立してフッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択され得る2つ、3つおよび4つの置換基を指す。「ハロゲン」は、好ましくはフッ素、塩素または臭素原子を意味する。ハロゲンがアルキル(ハロアルキル)またはアルコキシ基(例えばCFおよびCFO)上で置換される場合には、フッ素および塩素が、より好ましい。
【0025】
「ヒドロキシ」の用語は、−OH基を意味する。
指数nは、好ましくは0、1または2である。
【0026】
包括的な式()をさらに、ここで1つの態様においてEP 0599148 B1におけるものと同等に広く定義することができるが、本発明の他の態様は、式(I)で表され、式中、
R2、R3、R5、R6は、互いに独立してH、A、HalまたはOAであり;
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルであり、ここで1〜5個のH原子は、Halによって置き換えられていることができ;および
Halは、F、ClまたはBrである
化合物の製造方法を含む。
【0027】
本発明の好ましい態様において、式(I)で表され、
式中、
R2は、HまたはAであり;
R3、R5は、H、A、HalまたはOAであり;
R6は、Hであり;
Aは、1〜4個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルであり;および
Halは、F、ClまたはBrである
化合物を製造する。
【0028】
式(I)で表される化合物は、好ましくは、以下で二置換または三置換されていることを、理解するものとする。この観点において、ラジカルR3およびR5は、同一であっても異なっていてもよいが、それらは、好ましくは同一である。
【0029】
本発明のより好ましい態様において、式(I)で表され、
式中、
R2は、Hまたはメチルであり;
R3、R5は、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチルまたはHalであり;
R6は、Hであり;および
Halは、F、ClまたはBrである
化合物を、製造する。
【0030】
本発明における最も好ましい態様において、式(I)で表され、
式中、
R2は、Hまたはメチルであり;
R3、R5は、メチルまたはエチルであり;
R6は、Hである
化合物を、製造する。
【0031】
本発明の高度に好ましい態様において、2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールおよび/または2,6−ジエチルベンゼン−1,4−ジオールを、製造する。2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールが、2,3,5−トリメチル−ヒドロキノン(TMHQ)に相当することは言うまでもない。本発明によるTMHQ製造のための魅力的な出発物質は、商業的に容易に入手できる2,3,6−トリメチルフェノールである。中間体2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドは、本発明の開示の前には未だかつて製造されていない。それを、本発明の方法のステップ(a)によって合成され、以下に特徴づけられる。
【0032】
出発物質が商業的に入手できない場合であっても、それらを、文献(例えば標準的学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)に記載されている自体公知の方法によって、すなわち知られており、前記反応に適している反応条件下で製造することができる。所望により、出発物質をまた、それらを単離していない状態で粗製の反応混合物中に残留させるが、それらをさらに本発明の化合物に直ちに変換することにより、in situで生成することができる。他方、反応を段階的に行うことが、可能である。
【0033】
本発明は、ヒドロキノン生成物の所望の高い収率を得るために、Duff反応およびDakin反応の反応条件を調整することを教示する。ステップ(a)のホルミル化反応において、ホルミル炭素源は、好ましくはヘキサメチレンテトラミンまたはホルムアルデヒドおよび酢酸アンモニウムの組み合わせである。ヘキサメチレンテトラミンを使用することが、より好ましく、最も好ましくは、0.01〜0.49モル当量のヘキサメチレンテトラミンを使用する。高度に好ましくは、0.3〜0.4モル当量のヘキサメチレンテトラミンを、収率の実質的な減少を伴わずに使用する。「当量」が、ホルミル炭素源(例えばヘキサメチレンテトラミン)対式(II)で表される化合物のモル比を示すことを、理解するものとする。
【0034】
ホルミル炭素源の式(II)で表されるフェノール化合物とのホルミル化反応を、有機酸、例えばカルボン酸またはスルホン酸中で行う;ホルミル化のためのその好適性を、当業者によって常習的な事項として把握することができる。少数の共通の例は、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸および尿酸を含む。本発明の好ましい側面において、プロセスのステップ(a)を、酢酸中で行う。特に98%〜100%(v/v)の範囲内の氷酢酸を使用して、最低量の不純物の生成と共に収率を最大化するのが、より好都合である。回収した酢酸の使用によって、同一の収率が得られる。
【0035】
有機酸中の式(II)で表されるフェノール化合物およびホルミル炭素源の混合物を、1〜5時間、好ましくは2〜3.5時間にわたって加熱する。上昇した温度の使用が、均一な反応条件を得るのに望ましい。好ましくは、加熱を、80℃〜135℃で、より好ましくは90℃〜135℃で行う。還流温度は、特に大気圧においては、最も好都合かつ効率的であり、したがって90℃〜135℃の範囲内、高度に好ましくは110℃〜130℃の範囲内で好ましい。
【0036】
ステップ(a)における加熱時間に続いて、使用した有機酸(例えば酢酸)の体積の量と大体等量の加水分解媒体で、反応停止する。加水分解媒体は、好ましくは水または酸性水溶液(aqueous acid)、より好ましくは硫酸、最も好ましくは10%〜20%(v/v)の硫酸である。当業者には、本発明の範囲内で適している数種の他のタイプの無機酸水溶液(aqueous inorganic acid)、例えばHCl、HCO、HPOなどが既知であることを、理解するものとする。水性混合物を、さらに短期間、特に0.25〜1時間加熱する。加熱を、上記で示した温度条件下で、しかし高度に好ましくは100℃〜120℃の範囲内で行う。
【0037】
ステップ(a)の反応を、冷却により停止し、式(III)で表される粗製の中間体を、例えば濾過、洗浄および乾燥によって濃縮して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の収率とする。あるいはまた、反応溶液を真空下で濃縮して、有機酸を回収することができるか、またはそれを冷却し、無極性溶媒で抽出する。抽出のための好ましい溶媒は、炭化水素溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレン、またはエーテル、例えばジエチルエーテルおよびtert−ブチルメチルエーテルである。
【0038】
ステップ(b)の前に、式(III)で表される化合物を、例えば、無極性溶媒、例えばヘキサンまたはトルエン中の溶液をシリカゲルパッドに通じ、溶媒を濾液から除去して、固体を提供することによって、精製することができる。あるいはまた、有機相を水相から分離することができ、有機相を、次にアルコール溶媒、特にメタノール中で再結晶する。好ましい終了段階の処理を、無機塩基、より好ましくは水酸化ナトリウム、最も好ましくは0.1%〜10%水酸化ナトリウムによって、0.2〜5の式(III)で表される化合物対水酸化ナトリウムのモル比において行う。高度に好ましくは、1%〜2%の水酸化ナトリウムを、式(III)で表される化合物対水酸化ナトリウムの等モル比において適用して、純度を増強し、同時に収率を、概して上記で示した好ましい範囲内に保持する。
【0039】
ステップ(b)のDakin酸化において、式(III)で表される化合物を、酸化剤、例えば硝酸アンモニウムセリウム(IV)、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩および他の同類のハロゲン化合物、6価クロム化合物(例えばクロム酸および二クロム酸ならびに三酸化クロム、クロロクロム酸ピリジニウム)、クロム酸塩/二クロム酸塩化合物、次亜塩素酸塩および他の次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)化合物、ヨウ素および他のハロゲン、硝酸、亜酸化窒素、四酸化オスミウム、オゾン、過マンガン酸塩、過酸化物化合物、過硫酸、硝酸カリウムまたはスルホキシドと反応させる。本発明の好ましい酸化剤は、過酸化水素、より好ましくは20%〜50%過酸化水素、最も好ましくは30%過酸化水素、高度に好ましくは約1.2モル当量の30%過酸化水素である。
【0040】
当該反応を、一般的に不活性溶媒中で行う。好適な不活性溶媒は、例えば炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム);ケトン、例えばアセトンもしくはブタノン;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル、例えばアセトニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸もしくは酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼン;エステル、例えば酢酸エチル、または前記溶媒の混合物である。好ましいのは、水または有機溶媒である。アルカンまたはアルコール、より好ましくはメタノール、最も好ましくは98%〜100%純度のメタノールを使用することが、より好ましい。
【0041】
さらに、当該反応を、本質的に酸性条件下で行う。それは、好適な例として従来の明細書の経過において既に述べられている有機酸および無機酸を指す。ステップ(b)において、酸性条件を、好ましくは硫酸によって提供する。使用する硫酸の量は、より好ましくは約0.1〜0.3モル当量であるが、最良の結果は、0.2モル当量の濃硫酸を使用することにより得られる。言いかえれば、0.1〜0.3の、最も好ましくは0.1〜0.3の間の式(III)で表される化合物に対するモル比における硫酸、高度に好ましくは0.2の式(III)で表される化合物に対するモル比における硫酸を使用するのが、より好ましい。濃硫酸の純度は、特に少なくとも98%に等しいものとする。しきい値は、「間の」範囲を規定する場合には及ばないことを、理解するものとする。
【0042】
Dakin反応を、好ましくは15℃〜90℃の間の温度で行う。15℃〜50℃の間の温度範囲が、均一な反応条件を得るために尚より望ましい。温度は、0.5〜2時間にわたって行う酸化中に変化し得る。
【0043】
Dakin酸化の完了後に、ヒドロキノンの過剰酸化(over-oxidation)によって生成した過剰の過酸化水素およびキノンを、除去することができる。還元剤は、還元的除去のために好ましい。一般的な還元剤は、第一鉄イオン、水素化リチウムアルミニウム、発生期水素、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸塩化合物、ヒドラジン、亜鉛−水銀アマルガム、水素化ジイソブチルアルミニウム、シュウ酸またはギ酸である。ジチオン酸ナトリウム、最も好ましくは水中の10%〜20%ジチオン酸ナトリウム溶液を使用することが、より好ましい。
【0044】
過剰の過酸化水素をまた、NaHSO、例えば特に10%NaHSO水溶液の添加によって還元的に除去することができる。還元的曝露は、室温において0.5〜1時間である。その後、溶媒を、真空において留去する。60〜75%までのメタノール回収が、収率を改善するために好ましい。溶媒蒸留を冷却により停止し、式(I)で表されるヒドロキノンを、例えば濾過、洗浄および乾燥によって濃縮して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、高度に好ましくは少なくとも85%の収率とする。97%より高い高純度が、特に最終的なヒドロキノン生成物について得られる。
【0045】
式(I)〜(III)、好ましくは式(I)による化合物の塩を、任意に提供する。本発明の化合物を、それらの最終的な非塩形態において使用することができる。他方、本発明はまた、これらの化合物の、様々な有機および無機の酸および塩基から当該分野において知られている手順によって誘導され得るそれらの薬学的に許容し得る塩の形態における使用を包含する。本発明の化合物の薬学的に許容し得る塩形態を、大部分は慣用の方法によって製造する。
【0046】
上記で述べたものに関して、本明細書中で交換可能に使用する「薬学的に許容し得る塩」および「生理学的に許容し得る塩」の表現は、本関連において、特にこの塩形態が、活性成分に対して、以前に使用されていた活性成分の遊離形態または活性成分のあらゆる他の塩形態と比較して改善された薬物動態学的特性を付与する場合には、本発明の化合物をその塩の1種の形態で含む活性成分を意味するものと解釈されることが、明らかである。活性成分の薬学的に許容し得る塩形態はまた、この活性成分に、それが以前有していなかった所望の薬物動態学的特性を初めて提供することができ、さらに体内でのその治療効果に関してこの活性成分の薬力学に対して肯定的な影響を及ぼすことができる。
【0047】
本発明の目的はまた、従属式2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを有する式(III)で表される化合物である。中間体を、本発明の方法のステップ(a)によって製造する。他方、本発明の方法の中間体を、TMHQの製造のために使用することができる。本発明の実行において、当該プロセスによって、TMHQの高い収率での工業的規模における製造が可能になる。2,3,6−トリメチル−フェノールのホルミル化を、50kg規模で標準化し、一方中間体アルデヒドの酸化を、20kg規模で標準化する。生成物は、明るい色であり、安定であり、高純度(>97%)である。最終的な化合物を、本発明の方法によって製造する。本発明およびその態様の先の教示は、目的にかなっている場合には化合物2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド自体に限定せずに有効であり、適用可能である。
【0048】
本発明の範囲において、式(I)で表されるヒドロキノンを製造するための有望で新規なアプローチを提供した。ヒドロキノン合成は、天然と類似し、環境に優しい1個の炭素原子の挿入および除去を伴う。当該プロセスは、式(II)で表される置換フェノールから出発する2つのステップを有する。安価な原料の使用は、経済的プロセスを行うために有益である。式(III)で表される置換ヒドロキシ芳香族アルデヒドの重要な中間体を、純粋な状態で有利に単離し、スペクトルデータによって特徴づけする。
【0049】
さらに、プロセスにおいて生成した不純物は、分光法によって完全に特徴づけされ、中間体および最終生産物におけるそれらの除去は、十分に研究されている。したがって、この方法は、式(II)で表される様々な置換フェノールの式(I)で表される置換ヒドロキノンへの、式(III)で表される対応する置換アルデヒドを介しての変換のための一般的な実用性を有する。本発明の実行において、新規なプロセスによって、TMHQを2,3,6−トリメチルフェノールから出発して製造することが可能になった。最終生成物は、高い収率および高純度(>97%)である。
【0050】
本明細書中で引用したすべての参考文献は、参照によって本発明の開示中にこれによって組み入れられる。
【0051】
本発明が本明細書中に記載した特定の化合物、使用およびプロセスに限定されず、それはそのような事項が当然変化し得るからであることを、理解するべきである。また、本明細書中で使用する専門用語は、特定の態様を記載する目的のためであるに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図せず、それは、添付した特許請求の範囲によって定められるに過ぎないことを、理解するべきである。本明細書において使用するように、添付した特許請求の範囲を含めて、語の単数形、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が他に明確に指示しない限りそれらの対応する複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1種の化合物」への言及は、単一の、または数種の異なる化合物を含み、「1種のプロセス」への言及は、通常の当業者に知られている同等のステップおよび方法への言及を含むなどである。他に定義しない限り、本明細書中で使用したすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野における通常の当業者によって一般的に理解されているものと同一の意味を有する。
【0052】
本発明において必須である手法を、明細書中に詳細に記載する。詳細に記載していない他の手法は、当業者に周知の既知の標準的方法に相当するか、または当該手法は、引用した参考文献、特許出願または標準的な文献に、より詳細に記載されている。本明細書中に記載したものに類似するかまたは同等である方法および物質を、本発明の実行または試験において使用することができるが、好適な例を、以下に記載する。以下の例を、限定によってではなく、例示によって提供する。例の内で、汚染活性を有しない標準的な試薬および緩衝液を、(実際的な場合は常に)使用する。当該例を、特にそれらが特徴の明示的に例証された組み合わせに限定されず、例示した特徴を、本発明の技術的課題が解決される場合には再び制限されずに組み合わせることができるように解釈するべきである。
【0053】
例1:2,6−ジクロロベンゼン−1,4−ジオールの合成
還流冷却器、ポット温度計および機械的攪拌機を取り付けた250mlの3つ首丸底フラスコに、10g(0.061mol)の2,6−ジクロロフェノール、40mlの氷酢酸および3.44g(0.024mol)のヘキサメチレンテトラミンを投入した。反応マス(reaction mass)を、還流で3時間加熱した(透明な溶液が、70℃で得られた)。反応の進行を、TLCによってチェックした。混合物を、100℃で放冷した;30mlの10%硫酸を、ゆっくり加え、100℃で20〜30分間撹拌した。反応マスを、200gの粉砕した氷中に注いだ。固体を濾過し、100mlの水で十分洗浄し、70℃で乾燥し、9.2g(84%)の3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを得た。融点:153〜155℃。
【化5】
【0054】
250mlの丸底フラスコ中に、0.69g(0.007mol)の濃硫酸および40mlのメタノールの溶液を、調製した。4.5g(0.023mol)の3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシル−ベンズアルデヒドを加え、撹拌して、透明な溶液を得た。反応マスを、17〜20℃に冷却し、5.34g(0.047mol)の30%過酸化水素溶液を、撹拌しながら(注意:発熱反応)5〜10分にわたって温度を20〜35℃に維持しながらゆっくり加えた。混合物を、室温で30分間および80℃で60分間撹拌した。反応の完了を、TLCによって確認した。15mlの20%亜ジチオン酸ナトリウム溶液を、20〜25℃で撹拌しながらゆっくり加えた(5〜10分)。混合物を、窒素下で20〜25℃で30分間撹拌した。20mlのメタノール水溶液を、40〜50℃で蒸留した。反応マスを、20〜25℃に冷却し、45mlのプロセス水を、5分にわたって加えた。混合物を、窒素下で10〜15分間撹拌した。生成物を濾過し、25mlのプロセス水で洗浄し、十分に吸引乾燥し、次に真空下で60℃で2時間乾燥して、3.2g(76%)の2,6−ジクロロ−ヒドロキノン(2,6−ジクロロベンゼン−1,4−ジオール)を得た。融点:110〜112℃。
【0055】
例2A:2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールの合成
酢酸(20ml)中の2,3,6−トリメチルフェノール(5g、0.036mol)およびヘキサメチレンテトラミン(2.06g、0.0147mol)の混合物を、115℃で2時間撹拌した。溶媒(10ml)を蒸留し、20%(v/v)のHSO(20ml)を加え、次に混合物を、115℃で20分間撹拌した。混合物を、次に氷冷水(50ml)上に注ぎ、分離した固体を濾過し、冷水(25ml)で十分洗浄し、吸引乾燥した。湿潤した固形状物を、90℃で2時間真空下で乾燥して、2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(4.5g、75%;表1、番号12)を得た。
【0056】
メタノール(40ml)および0.267g(0.0027mol)の硫酸の溶液を調製し、撹拌した。4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチル−ベンズアルデヒド(4.5g、0.027mol)を、この溶液に加え、撹拌して溶解した。30%過酸化水素(3.46g、0.029mol)を、この透明な溶液に5分にわたってゆっくり加えた。添加が完了した後、反応混合物を、室温で30分間撹拌した。溶媒(20ml)を真空において蒸発させ、50mlの20%亜ジチオン酸ナトリウム溶液を、窒素雰囲気下で加えた。反応マスを、20〜25℃で30分間撹拌し、濾過し、冷水で洗浄し、十分吸引乾燥し、その後80℃で真空下で2時間十分乾燥して、2,3,5−トリメチル−ヒドロキノン(2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオール)を淡黄色固体として得た(3.33g、80%;表2、番号13)。
【0057】
例2B:2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールの合成
機械的攪拌機およびポット温度計を装備した500mlの3つ首丸底フラスコに、50g(0.36mol)の2,3,6−トリメチル−フェノール、200mlの氷酢酸および20.61g(0.14mol)のヘキサメチレンテトラミンを投入した。反応マスを、120〜130℃で2時間還流した。反応の完了を、TLCによって確認した。100mlの酢酸を、還流温度で留去した。反応マスを100℃で放冷し、50mlの20%硫酸を、5〜10分にわたってゆっくり加えた。混合物を、100℃で15〜30分間撹拌した。加熱を停止し、反応マスを氷浴中で20℃に冷却した。500mlのプロセス水を加え、20〜25℃で10分間撹拌した。反応マスを濾過し、300mlのプロセス水で洗浄した。粗生成物を、60〜80℃で真空下で乾燥して、54g(90%)の粗製の2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを得た。
【0058】
その後、水酸化ナトリウムの1%の1当量の溶液を、プロセス水中で製造した。54gの粗製の2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを、室温で撹拌しながらそこに加えた。混合物を、15〜20分間撹拌し、濾過した。残留物は、不純物としてこすり取るべきものであった。濾液を採集し、19.75gの氷酢酸で酸性化し、濾過した。生成物を、真空下で吸引乾燥し、60〜80℃で3〜4時間乾燥して、48g(80%)の純粋な2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドをオフホワイトの非晶質固体として得た(表1、番号13)。融点:135〜137℃。
【化6】
【0059】
500mlの丸底フラスコ中に、5.73g(0.058mol)の濃硫酸および432mlのメタノールの溶液を、調製した。48g(0.29mol)の精製した2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを、室温で撹拌しながら加えた。混合物をさらに10〜15分間撹拌して、透明な溶液を得た。反応マスを、17〜20℃に冷却し、38.09g(0.33mol)の30%過酸化水素溶液を、温度を20〜35℃で維持する一方20〜30分にわたって撹拌しながら(注意:発熱反応)ゆっくり加えた。混合物を、室温で30分間撹拌し、反応の完了を、TLCによって確認した。
【0060】
58mlの20%亜ジチオン酸ナトリウム溶液を、20〜25℃で撹拌しながらゆっくり加えた(15〜20分)。混合物を、窒素下で20〜25℃で30分間撹拌した。220mlのメタノール水溶液を、40〜50℃で反応マスから留去した。反応マスを、20〜25℃に冷却し、480mlのプロセス水を、15〜20分にわたって加えた。混合物を、窒素下で10〜15分間撹拌した。生成物を濾過し、250mlのプロセス水で洗浄し、十分吸引乾燥し、真空下で60℃で2時間乾燥して、37.8g(85%)の2,3,6−トリメチル−ヒドロキノン(2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオール)を淡黄色固体として得た(表2、番号14)。融点:172〜174℃。
【0061】
例2C:例2Aおよび2Bの下での(under Examples 2A and 2B)ホルミル化反応の可変条件
2,3,6−トリメチル−フェノールのホルミル化を、最初に反応条件を変化させることにより行った。詳細を表1に列挙する。番号1、2および11を、比較例として考慮し、本発明の範囲の下にあると解釈しない。
【0062】
【表1】
【0063】
例2D:2,3,6−トリメチル−フェノールのホルムアルデヒドおよび酢酸アンモニウムでのホルミル化
例2Aおよび2Bにおいて適用したヘキサメチレンテトラミンの代わりに、酢酸中のホルムアルデヒドおよび酢酸アンモニウムを、以下に例示するようにホルミル化のために使用した。還流冷却器を装備した250mlの3つ首丸底フラスコに、20.4g(0.15mol)の2,3,6−トリメチルフェノールを投入した。100mlの酢酸、3.09g(0.04mol)の酢酸アンモニウムおよび3.243g(0.108mol)のホルマリン溶液を、そこに加えた。反応マスを、120℃で2.5時間にわたって加熱した。反応の完了を、TLCによって確認した。反応マスを、400mlの氷冷水中に撹拌しながら注いだ。固体を濾過し、2×50mlのプロセス水で洗浄した。生成物を真空下で乾燥して、17g(95%)の粗製の2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを得た。粗生成物の1%水酸化ナトリウム溶液での精製によって、13g(73%)の純粋な2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシル−ベンズアルデヒドが得られた。
【0064】
例2E:例2Aおよび2Bの下のDakin酸化の可変条件
2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドのDakin反応を、最初に反応条件を変化させることにより行った。詳細を表2に列挙する。番号1〜12を、比較例として考慮し、本発明の範囲の下にあると解釈しない。
【0065】
【表2】
【0066】
例3:式(I)で表されるさらなる置換ヒドロキノンの合成
本発明の方法論を、現在使用されている他の酸化防止剤の製造のために拡張した。例2Bに従って、表3、番号3および4の化合物を、1:0.4の置換フェノール対ヘキサメチレンテトラミンのモル比および氷酢酸(1molの置換フェノールあたり550mlの有機塩基)を使用することにより製造した。還流時間は、2〜3時間であった。
【0067】
【表3】