特許第5778756号(P5778756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778756含窒素芳香族化合物及び有機電界発光素子
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  • 特許5778756-含窒素芳香族化合物及び有機電界発光素子 図000037
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778756
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】含窒素芳香族化合物及び有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/14 20060101AFI20150827BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150827BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C07D471/14 101
   C07D471/14CSP
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-504615(P2013-504615)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2012052937
(87)【国際公開番号】WO2012124412
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-57753(P2011-57753)
(32)【優先日】2011年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】石山 貴也
(72)【発明者】
【氏名】林田 広幸
(72)【発明者】
【氏名】坂井 満
(72)【発明者】
【氏名】新名 将司
(72)【発明者】
【氏名】白石 和人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和明
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/107244(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/126234(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/136109(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/136595(WO,A1)
【文献】 特開2010−135467(JP,A)
【文献】 特開2006−135146(JP,A)
【文献】 特開2006−193729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/14
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2)で表される含窒素芳香族化合物。
【化1】
式中、環Aは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表し、環Bは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1b)で表される複素環を表し、YはC−R又はNを表すが、1〜4つのYはNである。XはN−Zを表す。Rは、水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜50の芳香族複素環基を表す。Zはジベンゾフラン、又はジベンゾチオフェンから水素を除いて生じる1価の基を表し、ここでジベンゾフラン、及びジベンゾチオフェンは、置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜28のジアリールアミノ基、炭素数6〜18のホスファニル基、又は炭素数3〜18のシリル基である(但し、Zの炭素数は50以下である。)。
【請求項2】
含窒素芳香族化合物が、化合物1-33である請求項1に記載の含窒素芳香族化合物。
【化2】
(1-33)
【請求項3】
一般式(2)において、Yの1つまたは2つがNであることを特徴とする請求項1に記載の含窒素芳香族化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の含窒素芳香族化合物を有機層中に含むことを特徴とする有機電界発光素子
【請求項5】
上記含窒素芳香族化合物を含む有機層が、発光層、正孔輸送層、電子輸送層及び正孔阻止層から選ばれる少なくとも一つの層である請求項4記載の有機発光素子
【請求項6】
上記含窒素芳香族化合物を含む有機層が、発光層または正孔輸送層であることを特徴とする請求項4記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
上記含窒素芳香族化合物を含む有機層が、基板上に積層された陽極と陰極の間に、発光層を有する有機電界発光素子の発光層であり、該発光層が燐光発光性ドーパントと上記含窒素芳香族化合物をホスト材料として含有する請求項4記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な含窒素芳香族化合物及びこれを用いた有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、有機化合物からなる発光層に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)は、その最も簡単な構造としては発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。すなわち、有機EL素子では、両電極間に電界が印加されると、陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入され、これらが発光層において再結合し、光を放出する現象を利用する。
【0003】
近年、有機薄膜を用いた有機EL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層と8-ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(以下、Alq3という)からなる発光層とを電極間に薄膜として設けた素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた素子と比較して大幅な発光効率の改善がなされたことから、自発光・高速応答性といった特徴を持つ高性能フラットパネルや有機EL照明への実用化を目指して進められてきた。
【0004】
また、素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光ではなく燐光を用いることも検討されている。上記の芳香族ジアミンからなる正孔輸送層とAlq3からなる発光層とを設けた素子をはじめとした多くの素子が蛍光発光を利用したものであったが、燐光発光を用いる、すなわち、三重項励起状態からの発光を利用することにより、従来の蛍光(一重項)を用いた素子と比べて、3〜4倍程度の効率向上が期待される。この目的のためにクマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体を発光層とすることが検討されてきたが、極めて低い輝度しか得られなかった。また、三重項状態を利用する試みとして、ユーロピウム錯体を用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。近年では、特許文献1に挙げられるように発光の高効率化や長寿命化を目的にイリジウム錯体等の有機金属錯体を中心に燐光発光ドーパント材料の研究が多数行われている。
【0005】
高い発光効率を得るには、前記ドーパント材料と同時に、使用するホスト材料が重要になる。ホスト材料として提案されている代表的なものとして、特許文献2で紹介されているカルバゾール化合物の4,4'-ビス(9-カルバゾリル)ビフェニル(以下、CBPという)が挙げられる。CBPはトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(以下、Ir(ppy)3という)に代表される緑色燐光発光材料のホスト材料として使用した場合、CBPの正孔を流し易く電子を流しにくい特性上、電荷注入バランスが崩れ、過剰の正孔は電子輸送層側に流出し、結果としてIr(ppy)3からの発光効率が低下する。
【0006】
有機EL素子で高い発光効率を得るには、高い三重項励起エネルギーを有し、かつ両電荷(正孔・電子)注入輸送特性においてバランスがとれたホスト材料が必要である。更に、電気化学的に安定であり、高い耐熱性と共に優れたアモルファス安定性を備える化合物が望まれており、更なる改良が求められている。
【0007】
特許文献3においては、以下に示すインドロカルバゾール化合物が開示されているものの、有機半導体として有用なペリフェラル置換体の開示のみである。

【0008】
特許文献4においては、以下に示すインドロカルバゾール化合物が開示されているものの、青色発光ポリマーとしてフルオレンとの共重合体を開示するのみである。

【0009】
また、特許文献5においては、以下に示すインドロカルバゾール化合物が開示されているものの、インドロカルバゾール骨格が複数連結する化合物を開示するにとどまる。

【0010】
また、特許文献6及び7においては、インドロカルバゾール構造を含む膨大な範囲の一般式が開示されているが、インドロカルバゾールの両末端のベンゼン環にヘテロ原子が導入された化合物については何ら開示も示唆も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2003-515897号公報
【特許文献2】特開2001-313178号公報
【特許文献3】特開2006-193729号公報
【特許文献4】特開2004-204234号公報
【特許文献5】WO2007-063754号公報
【特許文献6】特表2008-545630号公報
【特許文献7】WO2009/148015号公報
【発明の概要】
【0012】
有機EL素子を照明やフラットパネルディスプレイ等の表示素子に応用するためには、素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状に鑑み、高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子及びそれに適する化合物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、次項に示す特定の構造を有する含窒素芳香族化合物を有機EL素子として用いることで優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物に関する。

【0015】
式中、環Aは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表し、環Bは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1b)で表される複素環を表し、YはC−R又はNを表すが、1〜4つのYはNである。XはN−Zを表す。Rは、水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜50の芳香族複素環基を表す。Zはジベンゾフラン、又はジベンゾチオフェンから水素を除いて生じる1価の基を表し、ここでジベンゾフラン、及びジベンゾチオフェンは、置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜28のジアリールアミノ基、炭素数6〜18のホスファニル基、又は炭素数3〜18のシリル基である。但し、Zの炭素数は50以下である。
本発明の含窒素芳香族化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、一般式(2)は上記一般式(1)のXがN-Zに特定されたものと理解される。
【0016】
一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物の中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい化合物として挙げられる。


一般式(2)中、環A、環B、Y及びZは一般式(1)と同意である。
【0017】
一般式(2)において、環BのXがN−Zであること、又はYの1つまたは2つがNであることが好ましい。また、一般式(1)において、Yの1つまたは2つがNであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記一般式(1)または(2)で表される含窒素芳香族化合物を含む有機電界発光素子に関する。
【0019】
本発明の有機電界発光素子は、上記一般式(1)または(2)で表される化合物を含む有機層が発光層、正孔輸送層、電子輸送層及び正孔阻止層から選ばれる少なくとも一つの層であることが好ましい。また、本発明の燐光発光素子は、上記一般式(1)または(2)で表される化合物を含む有機層が発光層または正孔輸送層であることがより好ましく、該発光層が燐光発光性ドーパントと一般式(1)または(2)で表される化合物をホスト材料として含有する層であることも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】有機EL素子の一構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の含窒素芳香族化合物は、一般式(1)で表される。以下、本発明の含窒素芳香族化合物を、本発明の化合物、又は一般式(1)で表される化合物とも言う。
【0022】
一般式(1)において、環Aは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表す。また、環Bは2つの隣接環と任意の位置で縮合する式(1b)で表される複素環を表す。しかし、式(1b)において、Xを含む辺では隣接環と縮合することができないので、一般式(1)の骨格の種類は限定される。
【0023】
式(1b)においてXはそれぞれ独立してN−Z、O、S又はSeを表す。好ましくはN−Z、O又はSであり、より好ましくはN−Zである。
【0024】
ここで、Zは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜50の芳香族複素環基を表す。好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜30の芳香族複素環基である。XがN−Zである場合は、一般式(1)中にZが2個存在することになるが、この2個のZは同一でも、異なってもよい。ここで、芳香族複素環基は、4環以上の縮合複素環を含まない。また、これらの基は4環以上の縮合複素環を置換基として有しない。
【0025】
Zが炭素数1〜30のアルキル基である場合、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。アルキル基の具体例としては、無置換の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、又はオクチル基が挙げられる。上記アルキル基は直鎖であっても、分岐していてもよい。
【0026】
上記アルキル基は置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の芳香族複素環基である。
【0027】
上記アルキル基が置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10である。好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0028】
本明細書中、炭素数の計算において、置換基を有する場合はその置換基の炭素数も含む。
【0029】
Zが炭素数3〜30のシクロアルキル基である場合、その炭素数は好ましくは3〜20、より好ましくは5〜10である。シクロアルキル基の具体例としては、無置換の場合、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基が挙げられる。好ましくはシクロペンチル基、又はシクロヘキシル基が挙げられる。
【0030】
上記シクロアルキル基は置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の芳香族複素環基である。
【0031】
上記シクロアルキル基が置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10である。好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
Zが炭素数2〜30のアルケニル基、又は炭素数2〜30のアルキニル基である場合、これらの炭素数は好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10である。アルケニル基又はアルキニル基の具体例としては、無置換の場合、エチレニル基、プロピレニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、アセチレニル基、プロピニル基、ブチニル基、又はペンチニル基が挙げられる。好ましくはエチレニル基、プロピレニル基、ブテニル基、アセチレニル基、又はプロピニル基が挙げられる。上記アルケニル基及びアルキニル基は直鎖であっても、分岐していてもよい。
【0033】
上記アルケニル基又はアルキニル基は置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の芳香族複素環基である。
【0034】
Zが炭素数6〜50の芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は好ましくは6〜30、より好ましくは6〜18である。Zが炭素数3〜50の芳香族複素環基である場合、炭素数は好ましくは3〜30、より好ましくは3〜18である。ここで、芳香族複素環基は4環以上の縮合複素環を含まない。
【0035】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の具体例としては、無置換の場合、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物等から水素を除いて生じる1価の基が挙げられる。好ましくはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、イソインドール、インダゾール、プリン、イソキノリン、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、インドール、カルバゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる1価の基が挙げられる。
【0036】
なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。その場合、窒素と結合するAの結合位置は限定されず、連結された芳香環の末端部の環であっても中央部の環であってもよい。ここで、芳香環は芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を総称する意味である。また、連結された芳香環に少なくとも1つの複素環が含まれる場合は芳香族複素環基に含める。
【0037】
ここで、芳香環が複数連結されて生じる1価の基は、例えば、下記式で表わされる。


(式(3)〜(5)中、Ar1〜Ar6は、置換又は無置換の芳香環を示す。)
【0038】
ここで、4環以上の縮合複素環を含まない芳香族複素環基とは、単環の芳香族複素環基又は2〜3環の縮合芳香族複素環基を意味し、この芳香族複素環基は置換基を有してもよい。なお、この芳香族複素環基が、例えば式(3)で表わされるような芳香環が複数連結されて生じる基である場合、この芳香環はいずれも4環以上の縮合芳香族複素環基であることはない。
【0039】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は置換基を有しても良く、これらが置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜28のジアリールアミノ基、炭素数6〜18のホスファニル基、又は炭素数3〜18のシリル基である。好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のジアリールアミノ基である。尚、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基において芳香環が複数連結している場合、分岐して連結する芳香族基は置換基としては扱わない。また、置換基がジアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基の場合、2つのアルキル基及びアリール基は同一でも異なっていても良く、アリール基は複素環基であっても良い。
【0040】
Zが芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であって、置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10である。好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0041】
一般式(1)において、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。好ましくは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない炭素数3〜20の芳香族複素環基を表す。
【0042】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の具体例は上記Zを構成するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基と同様である。また、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基が置換基を有する場合もZにおける場合と同様である。
【0043】
芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない芳香族複素環基の具体例は総炭素数が異なることを除いて上記Zを構成する芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない芳香族複素環基と同様である。また、これら芳香族炭化水素基又は4環以上の縮合複素環を含まない芳香族複素環基が置換基を有する場合もZにおける場合と同様である。
【0044】
一般式(1)において、YはC−RまたはNを表すが、1〜4つYはNである。また、両末端の6員環にはYが各4つあるが、そのYがNである数は各々2以下が好ましく、より好ましくは合計で2以下である。なお、Rの具体例は上記と同意である。
【0045】
一般式(2)の化合物は、一般式(1)の化合物の好ましい態様を示す。XがN-Zに特定された以外は、共通の記号は一般式(1)と同じ意味を有する。
【0046】
本発明の含窒素芳香族化合物は、アザインドール誘導体を出発原料とし、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。
【0047】
例えば、一般式(1)において、XがN−Zで表される骨格は、Tetrahedron,1999,2371−2380に示される合成例を参考にして以下の反応式により合成することができる。
【0048】

【0049】
また、一般式(1)において、XがO、S、Seのいずれかで表される骨格についても前述の合成例を用いて合成することができる。
【0050】

【0051】
前述の反応式で得られる化合物のうち、含窒素5員複素環を有する場合、その5員複素環の窒素上の水素を、例えばウルマン反応などのカップリング反応により、対応する置換基に置換させることで、一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物を合成することができる。
【0052】
一般式(1)で表される本発明の化合物の具体例を以下に示すが、本発明の化合物はこれらに限定されない。
【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】





【0061】
次に、本発明の有機EL素子について説明する。
【0062】
本発明の有機EL素子は、基板上に積層された陽極と陰極の間に、少なくとも一つの発光層を有する有機層を有し、且つ少なくとも一つの有機層は、一般式(1)で表される化合物を含む。一般式(1)で表される化合物を含む層は、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、又は正孔阻止層であることがよく、発光層、又は正孔輸送層であることがより好ましい。
【0063】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0064】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々表わす。本発明の有機EL素子では発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また、発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有しても良い。励起子阻止層は発光層の陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、基板、陽極、発光層及び陰極を必須の層として有するが、必須の層以外の層に、正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することがよく、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することがよい。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0065】
なお、図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0066】
−基板−
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機EL素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。
【0067】
−陽極−
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0068】
−陰極−
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0069】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0070】
−発光層−
発光層は蛍光発光層、燐光発光層のいずれでも良いが、燐光発光層であることが好ましい。
【0071】
発光層が蛍光発光層である場合、蛍光発光材料は少なくとも1種の蛍光発光材料を単独で使用しても構わないが、蛍光発光材料を蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含むことが好ましい。
【0072】
発光層における蛍光発光材料としては、一般式(1)で表される化合物を用いることができるが、該化合物を他の何れかの有機層に使用する場合は、多数の特許文献等により知られている蛍光発光材料を選択して使用することもできる。例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族化合物、スチリル化合物、ジケトピロロピロール化合物、オキサジン化合物、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、ランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくは、ナフタセン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタセン、ヘキサセン、アンタントレン、ナフト[2,1‐f]イソキノリン、α−ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5‐f]キノリン、又はベンゾチオファントレンなどが挙げられる。これらは置換基としてアリール基、複素芳香環基、ジアリールアミノ基、又はアルキル基を有していてもよい。
【0073】
前記蛍光発光材料を蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含む場合、蛍光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲にあることがよい。
【0074】
通常、有機EL素子は、陽極、陰極の両電極より発光物質に電荷を注入し、励起状態の発光物質を生成し、発光させる。電荷注入型の有機EL素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起されると言われている。第57回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集(19p−ZK−4及び19p−ZK−5)に示されているように、特定の蛍光発光物質は、系間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆系間交差され蛍光を放射し、熱活性遅延蛍光を発現することが知られている。本発明の化合物を用いた有機EL素子でも遅延蛍光を発現することができる。この場合、蛍光発光及び遅延蛍光発光の両方を含むこともできる。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があっても良い。
【0075】
発光層が燐光発光層である場合、燐光発光ドーパントとホスト材料を含む。燐光発光ドーパント材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。かかる有機金属錯体は、前記先行技術文献等で公知であり、これらが選択されて使用可能である。
【0076】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、(Bt)2Iracac等の錯体類、(Btp)Ptacac等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0077】



【0078】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0079】
発光層におけるホスト材料としては、一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物を用いることが好ましい。しかし、該一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物を発光層以外の他の何れかの有機層に使用する場合は、発光層に使用する材料は一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物以外の他のホスト材料であってもよい。また、一般式(1)で表される含窒素芳香族化合物と他のホスト材料を併用してもよい。更に、公知のホスト材料を複数種類併用して用いてもよい。
【0080】
使用できる公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。
【0081】
このような他のホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8―キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0082】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0083】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0084】
正孔阻止層には一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることが好ましいが、該化合物を他の何れかの有機層に使用する場合は、公知の正孔阻止層材料を用いてもよい。また、正孔阻止層材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0085】
−電子阻止層−
電子阻止層とは、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料から成り、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0086】
電子阻止層の材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることが好ましいが、後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0087】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。
【0088】
励起子阻止層の材料としては、例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0089】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0090】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることが好ましいが、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0091】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0092】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることが好ましいが、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。なお、実施例2、5及び8以外の実施例は参考例であると理解される。
【0094】
実施例1
化合物(1−1)の合成
【0095】

【0096】
大気雰囲気下、7−アザインドール11.9 g (101 mmol)、アセトニトリル(MeCN) 67 mlを加え、50℃で5分撹拌した。得られた溶液にN−ヨードスクシンイミド(NIS)25.0 g (111 mmol)を加え、50℃で2時間撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、析出した結晶をろ取した。結晶を水 150ml、次いでMeCN 150mLでリスラリーして中間体 (A−1)を22.7 g( 101 mmol、収率100 mol%)得た。
【0097】
大気雰囲気下、インドール 100 g(854 mmol)、二炭酸t−ブチル(Boc2O) 203g(931mmol)、ジクロロメタン(CH2Cl2)1600 ml、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP) 10.4 g(85.1 mmol)を加え、室温で2時間30分撹拌した。反応溶液に1N-塩酸200mlを加えて攪拌し、水層と有機層とを分画した。有機層に飽和食塩水200mlを加えて攪拌し、水層と有機層とを分画した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、硫酸ナトリウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、中間体(A−2)を184 g(847 mmol、収率99 mol%)得た。
【0098】
窒素雰囲気下、中間体(A−2)63.3g(290 mmol)、トリイソプロピルボレート(B(OiPr)3) 99.6g(530mmol)、THFを370 ml加え、0℃まで冷却し、リチウムジイソプロピルアミド/THF溶液(LDA)185 ml(2.0mol/l)を滴下した。反応溶液を室温まで戻し、2時間攪拌後、2N−塩酸 370mlを加えて、水層と有機層とを分画した。水層をTHF(300 ml)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去し、中間体(A−3)を74.0 g (283 mmol、収率98 mol%)得た。
【0099】
中間体(A−1 )68.4 g(280 mmol)、中間体(A−3) 73.0 g(280 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)15.6 g(13.5 mmol)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)75.3 gの水(280 ml)溶液、トルエン960 ml、エタノールを510 ml加え、70℃で加熱しながら4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、水層と有機層とを分画した。水層をトルエン(350 ml)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−4)を78.7 g (236 mmol、収率84 mol%)得た。
【0100】

【0101】
中間体(A−4) 38.7 g(116mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA)100 mlを加え、室温にて2時間30分撹拌した。TFAを減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−5)を26.0 g (111 mol、収率96 mol%)を得た。
【0102】
中間体(A−5) 26.0 g(111 mmol)、(ジメチルアミノ)アセトアルデヒドジエチルアセタール22.5 g(139 mmol)、酢酸50 mlを加え、140℃で加熱しながら16時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−6)を 15.9 g (61.8mmol、収率55 mol%)得た。
APCI-TOFMS, m/z 257 [M+H]+
【0103】
窒素雰囲気下、中間体(A−6) を3.6 g (13.9 mmol)、ヨードベンゼンを130 g (634 mmol)、ヨウ化銅8.5 g (44.5 mmol)、炭酸カリウム12.2 g (88.5 mmol)を加え、210℃で加熱しながら17時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、セライト545を加えてろ取し、ヨードベンゼンを減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として化合物(1−1)を 3.3 g (8.1 mmol、収率59 mol%)得た。
APCI-TOFMS, m/z 410 [M+H]+
1H-NMR(DMSO-d6) :8.39 (d, J=8.8Hz,1H), 8.25-8.27(m,1H) , 8.23(dd, J=4.6,1.5Hz,1H),7.63-7.79(m,9H), 7.54-7.59(m,1H), 7.31-7.41(m,3H), 7.24 (d, J=7.8Hz,1H), 6.84(dd, J=8.1,4.6Hz,1H), 5.92(dd, J=8.1,1.5Hz,1H)
【0104】
実施例2
化合物(1−33)の合成

【0105】
窒素雰囲気下、中間体(A−6)を5.5g(22mmol)、2−ブロモジベンゾベンゼン17g(65mmol)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンン(DMI)100ml、ヨウ化銅16g(82mmol)、炭酸カリウム20g(150mmol)を加え、210℃で加熱しながら24時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、セライト545を加えてろ取し、ヨードベンゼンを減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として化合物(1−33)を 8.5g (14mmol、収率62 mol%)得た。
APCI-TOFMS, m/z 622 [M+H]+
1H-NMR(DMSO-d6) :δ8.86(d, J=2.0Hz,1H), 8.67(d, J=2.2Hz,1H), 8.42-8.67(m,4H), 8.31(d, J=8.5Hz,1H), 8.29(d, J=8.1Hz,1H), 8.10-8.17(m,3H), 7.84(dd, J=8.3,2.2Hz,1H), 7.74(dd, J=8.3,2.2Hz,1H), 7.55-7.62(m,2H), 7.47-7.52(m,2H), 7.32-7.39(m,4H), 6.38 (dd, J=8.1,4.9Hz,1H), 5.94 (dd, J=8.1,1.4Hz,1H)
【0106】
実施例3
化合物(1−46)の合成

【0107】
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60.5%品)2.7g(68mmol)、DMF20 mlを加え、室温で0.5時間撹拌した。得られた懸濁液に中間体(A−6)7.0g(27mmol)のDMF(200 ml)溶液を加え、室温で30分撹拌した。得られた懸濁液にヨードブタン20g(110mmol)加え、130℃で20時間撹拌した。反応溶液に蒸留水(700ml)を撹拌しながら加え、析出した固体をろ取した。得られた固体をリスラリーにて精製を行い、白色固体として化合物(1−46)を6.3g(17mmol、収率64 mol%)を得た。
APCI-TOFMS, m/z 370 [M+H]+
1H-NMR(DMSO-d6) :δ8.86(dd, J=8.1,1.2Hz,1H), 8.50(dd, J=4.6,1.2Hz,1H), 8.36 (d, J=8.5Hz,1H), 8.18(d, J=7.6Hz,1H), 7.73(d, J=8.3Hz,1H), 7.57(d, J=8.5Hz,1H), 7.41(dd, J=7.1,1.2Hz,1H), 7.35(dd, J=8.0,4.6Hz,1H), 7.24 (t, J=7.0Hz,1H), 4.93 (t, J=7.3Hz,2H), 4.62 (t, J=7.3Hz,2H),1.80-1.94(m,4H), 1.33-1.41(m,4H), 0.91 (t, J=7.3Hz,3H), 0.84 (t, J=7.3Hz,3H)
【0108】
実施例4
膜厚110 nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、ITO上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)をスピンコート法により25 nmの厚さに形成した。次に、真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5 Paで正孔輸送層として4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を40 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、ホスト材料としての合成例1で得た化合物(1−1)と、燐光発光ドーパントとしてのトリス(2‐フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)とを異なる蒸着源から、共蒸着し、40 nmの厚さに発光層を形成した。発光層中のIr(ppy)3の濃度は6.0 wt%であった。次に、電子輸送層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)を20 nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1.0 nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を130 nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0109】
得られた有機EL素子の初期特性として、素子に外部電源を接続して100 mA/cm2の電流が流れるように直流電圧を印加し、そのときの輝度(cd/m2)、電圧(V)、視感発光効率(lm/W)を測定した。以下の実施例及び比較例で得られた有機EL素子についても同様に測定した。結果を表1に示す。なお、素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。
【0110】
実施例5
発光層のホスト材料として、化合物(1−33)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0111】
実施例6
発光層のホスト材料として、化合物(1−46)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0112】
比較例1
発光層のホスト材料として、下記化合物(H−1)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。

【0113】
比較例2
発光層のホスト材料として、下記化合物(H−2)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。

【0114】
比較例3
発光層のホスト材料として、下記化合物TAZを用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。


【0115】
実施例5〜6で得られた有機EL素子の素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。
【0116】
【表1】
【0117】
実施例7
膜厚110 nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、ITO上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)をスピンコート法により25 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送用材料(HTM)として化合物(1-1)をテトラヒドロフランに溶解して0.4wt%溶液に調製し、スピンコート法により厚さ20nmの正孔輸送層を製膜した。次に、真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paでホスト材料として、4,4'-ビス(9-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)と、燐光発光ドーパントとしてのIr(ppy)3とを異なる蒸着源から、共蒸着し、50 nmの厚さに発光層を形成した。発光層中のIr(ppy)3の濃度は10.0 wt%であった。次に、電子輸送層としてAlq3を30 nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてLiFを0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてAlを150 nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0118】
得られた有機EL素子の初期特性として、素子に外部電源を接続して100 mA/cm2の電流が流れるように直流電圧を印加し、そのときの輝度(cd/m2)、電圧(V)、視感発光効率(lm/W)を測定した。以下の実施例及び比較例で得た有機EL素子についても同様に測定した。結果を表2に示す。
【0119】
実施例8
正孔輸送用材料として、化合物(1−33)を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0120】
実施例9
正孔輸送用材料として、化合物(1−46)を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0121】
比較例4
正孔輸送層として化合物(H−1)を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0122】
実施例7〜9で得た有機EL素子の発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。結果を表2に示す。HTMは正孔輸送用材料である。
【0123】
【表2】
【0124】
実施例10
化合物(2-1)の合成

【0125】
中間体(A−1 )75.9 g(310mmol)、ベンゾフラン−2−ボロン酸(A−7) 50.0 g(30.9 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)4.3 g(3.8 mmol)、2規定の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液390ml、トルエン815 ml、エタノールを490 ml加え、70℃で加熱しながら21時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、水層と有機層とを分画した。水層をトルエン(350 ml)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−8)を14.1 g (60 mmol、収率19 mol%)得た。
APCI-TOFMS, m/z 235 [M+H]+
【0126】
中間体(A−8) 5.0 g(20.0 mmol)、(ジメチルアミノ)アセトアルデヒドジエチルアセタール5.2 g(32.1 mmol)、酢酸65 mlを加え、140℃で加熱しながら96時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−9)を 1.3 g (4.9mmol、収率25 mol%)得た。
FD−MS, m/z 258 [M]
【0127】
窒素雰囲気下、中間体(A−9)を1.3 g (13.9 mmol)、ヨードベンゼンを32 g (156 mmol)、ヨウ化銅2.0 g (10.7 mmol)、炭酸カリウム2.9 g (21.1 mmol)を加え、210℃で加熱しながら24時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、セライト545を加えてろ取し、ヨードベンゼンを減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、固体として化合物(2−1)を1.3 g (3.7 mmol、収率73 mol%)得た。
FD-MS, m/z 334 [M]
1H-NMR(DMSO-d6) :8.63 (d, J=8.8Hz,1H), 8.51-8.53(m,1H), 8.22 (d, J=8.0Hz,1H), 7.82(d,J=8.0Hz,1H), 7.48-7.80(m,6H), 7.20-7.45(m,4H)
【0128】
実施例11
化合物(3-1)の合成

【0129】
中間体(A−1)69.7 g(286mmol)、ベンゾチオフェン−2−ボロン酸(A−10) 50.5 g(284 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)5.3 g(4.6 mmol)、2規定の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液360ml、トルエン815 ml、エタノールを490 ml加え、70℃で加熱しながら22時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、水層と有機層とを分画した。水層をトルエン(350 ml)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−11)を10.3 g (41 mmol、収率14 mol%)得た。
APCI-TOFMS, m/z 251 [M+H]+
【0130】
中間体(A−11)5.0 g(20.0 mmol)、(ジメチルアミノ)アセトアルデヒドジエチルアセタール4.8 g(30.0 mmol)、酢酸78 mlを加え、140℃で加熱しながら96時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、中間体(A−12)を 2.3 g (8.4mmol、収率42 mol%)得た。
FD−MS, m/z 274 [M]
【0131】
窒素雰囲気下、中間体(A−12)を2.3 g (8.4 mmol)、ヨードベンゼンを53 g (260 mmol)、ヨウ化銅3.4 g (17.8 mmol)、炭酸カリウム4.9g (35.2 mmol)を加え、210℃で加熱しながら24時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、セライト545を加えてろ取し、ヨードベンゼンを減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、固体として化合物(3−1)を 1.9 g (5.5 mmol、収率65 mol%)得た。
FD-MS, m/z 350 [M+H]+
1H-NMR(DMSO-d6) :8.53 (d, J=8.2Hz,1H), 8.47-8.50(m,1H), 8.16 (d, J=8.0Hz,1H), 7.84(d,J=8.0Hz,1H), 7.45-7.78(m,6H), 7.21-7.43(m,4H)
【0132】
実施例12
発光層のホスト材料として、化合物(2−1)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0133】
実施例13
発光層のホスト材料として、化合物(3−1)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0134】
実施例4と同様にして素子の評価を行った。実施例12〜13で得た素子発光スペクトルの極大波長は530nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。発光特性を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例14
正孔輸送用材料として、化合物(2−1)を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0137】
実施例15
正孔輸送用材料として、化合物(3−1)を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0138】
実施例7と同様にして素子の評価を行った。実施例14〜15で得た素子発光スペクトルの極大波長は530nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。発光特性を表4に示す。
【0139】
【表4】
【産業上の利用の可能性】
【0140】
本発明の含窒素芳香族化合物の骨格は化合物末端複素環の窒素原子上の孤立電子対により電荷移動の向上が期待される。また、末端複素環及び窒素上の置換基により、イオン化ポテンシャル、電子親和力、三重項励起エネルギーの各種エネルギー値の制御が可能となると考えられる。これを用いた有機EL素子は優れた電荷移動により効率の向上が期待できる。加えて、良好なアモルファス特性と高い熱安定性を示し、また電気化学的に安定であることから、駆動寿命が長く、耐久性の高い有機EL素子を実現すると考えられる。
【0141】
本発明による有機EL素子は、発光特性、駆動寿命ならびに耐久性において、実用上満足できるレベルにあり、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。
図1