特許第5779083号(P5779083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779083
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】加工廃液処理装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/12 20060101AFI20150827BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B24B55/12
   B23Q11/00 U
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-274694(P2011-274694)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-123781(P2013-123781A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹
(72)【発明者】
【氏名】石黒 裕隆
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−062669(JP,A)
【文献】 特開2002−113499(JP,A)
【文献】 特開平11−172237(JP,A)
【文献】 特開2003−326114(JP,A)
【文献】 特開昭52−063177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/12 − 57/00
B23Q 11/00
B01D 35/06
B03C 5/00 − 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン微粒子が混入された加工廃液をシリコン微粒子と清水に分離する加工廃液処理装置において、
加工廃液を処理するための廃液処理槽と、該廃液処理槽に収容された加工廃液からシリコン微粒子を分離するシリコン分離機構を具備し、
該廃液処理槽は、長手方向の一方の端壁に加工廃液流入口が設けられているとともに、他方の端壁に清水流出口が設けられており、
該シリコン分離機構は、該廃液処理槽に長手方向に沿って互に平行に間隔をおいて配設された複数の陰極板と、該複数の陰極板と対面して配設された複数の陽極板を備えた陽極板ユニットとからなり、該陽極板ユニットが着脱可能に構成されている、
ことを特徴とする加工廃液処理装置。
【請求項2】
該陽極板ユニットは、長手方向に沿って複数に分割して構成されている、請求項1記載の加工廃液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を切削する切削装置や被加工物を研削する研削装置等の加工装置に付設され、加工時に供給される加工液の廃液を処理する加工廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように表面にデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより、デバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削手段と、切削ブレードに加工水を供給する加工水供給手段を具備し、該加工水供給手段によって切削水を回転する切削ブレードに供給することにより切削ブレードを冷却するとともに、切削ブレードによる被加工物の切削部に加工水を供給しつつ切削作業を実施する。
【0004】
このようにして分割されるウエーハは、ストリートに沿って切断する前に研削装置によって裏面が研削され、所定の厚さに加工される。研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブル上に保持された被加工物を研削する研削手段とを具備している。この研削手段は、回転スピンドルと、該回転スピンドルの下端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントの下面に着脱可能に装着される研削ホイールとを具備しており、該研削ホイールがホイール基台と該ホイール基台の下面における外周部の砥石装着部に装着された複数の研削砥石とからなっており、研削ホイールを回転し研削水を供給しつつ研削砥石をチャックテーブルに保持された被加工物に押圧することにより被加工物を研削する。
【0005】
上述したように切削装置による切削時や研削装置による研削時に供給された加工液にはシリコンを切削や研削することによって発生するシリコン微粒子が混入される。このシリコン微粒子が混入された加工廃液は環境を汚染することから、加工廃液を処理して排水しなければならず、廃液処理コストがかかるという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、加工廃液をフィルターで濾過して清水を生成し、切削水または研削水として循環して使用する加工廃液処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−95941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上述した加工廃液処理装置は、フィルターを交換しなければならず、生産性が悪いという新たな問題が生じた。特に、厚みが600μm程度のシリコンウエーハを100μm程度の厚みに研削する研削装置に付設する加工廃液処理装置においては、研削屑が多量に発生するため、フィルターを交換する作業が頻繁となる。
また、研削屑としてのシリコン微粒子はフィルターに捕捉されるので、フィルターからシリコン微粒子を回収してシリコンインゴットを再生することも可能であるが、フィルターに浸透したシリコン微粒子を効率よく回収することは困難である。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、切削屑や研削屑としてのシリコン微粒子を含む加工廃液からシリコン微粒子を分離して清水を生成することができるとともに、シリコン微粒子を効率よく回収することができる加工廃液処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、シリコン微粒子が混入された加工廃液をシリコン微粒子と清水に分離する加工廃液処理装置において、
加工廃液を処理するための廃液処理槽と、該廃液処理槽に収容された加工廃液からシリコン微粒子を分離するシリコン分離機構を具備し、
該廃液処理槽は、長手方向の一方の端壁に加工廃液流入口が設けられているとともに、他方の端壁に清水流出口が設けられており、
該シリコン分離機構は、該廃液処理槽に長手方向に沿って互に平行に間隔をおいて配設されマイナスに帯電される複数の陰極板と、該複数の陰極板と対面して配設されプラスに帯電される複数の陽極板を備えた陽極板ユニットとからなり、該陽極板ユニットが着脱可能に構成されている、
ことを特徴とする加工廃液処理装置が提供される。
【0011】
上記陽極板ユニットは、長手方向に沿って複数に分割して構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による加工廃液処理装置は、加工廃液を処理するための廃液処理槽と、廃液処理槽に収容された加工廃液からシリコン微粒子を分離するシリコン分離機構を具備し、廃液処理槽は長手方向の一方の端壁に加工廃液流入口が設けられているとともに、他方の端壁に清水流出口が設けられており、シリコン分離機構は廃液処理槽に長手方向に沿って互に平行に間隔をおいて配設されマイナスに帯電される複数の陰極板と、複数の陰極板と対面して配設されプラスに帯電される複数の陽極板を備えた陽極板ユニットとからなっているので、廃液処理槽の一方の側壁に設けられた加工廃液流入口から廃液処理槽に流入した加工廃液は、陽極板ユニットの複数の陽極板に吸着されるシリコン微粒子と、清水に分離される。このようにして、分離されたシリコン微粒子は陽極板ユニットの複数の陽極板に吸着されて堆積し、清水は廃液処理槽の他方の側壁に設けられた清水流出口を通して流出し清水タンクに搬送される。従って、廃液処理槽の一方の側壁に設けられた加工廃液流入口から加工廃液を所定量ずつ流入することにより、シリコン微粒子を効率よく分離できるとともに、加工廃液から容易に清水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成された加工廃液処理装置の斜視図。
図2図1に示す加工廃液処理装置を構成する廃液処理槽とシリコン剥離手段を分解して示す斜視図。
図3図1におけるA―A線断面図。
図4図1に示す加工廃液処理装置によって分離されたシリコン微粒子を回収するためのシリコン回収装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された加工廃液処理装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には本発明に従って構成された加工廃液処理装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における加工廃液処理装置1は、加工廃液を処理するための廃液処理槽2と、該廃液処理槽2に収容された加工廃液からシリコン微粒子を分離するシリコン分離機構3を具備している。廃液処理槽2は、図2に示すように幅方向に対して長さ方向が大きい底壁21と、底壁21の幅方向両側縁から立設された側壁22、23と、底壁21の長手方向両側縁から立設された端壁24、25によって形成され上側が解放されている。廃液処理槽2を構成する一方の端壁24の下部に加工廃液流入口241が設けられており、他方の端壁25の上部に清水流出口251が設けられている。このように構成された廃液処理槽2は、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されている。なお、底壁21と端壁24、25はそれぞれ中央部が外方に向けて突出して形成されており、廃液処理槽2の両端部にそれぞれ液溜め部を形成する。
【0016】
シリコン分離機構3は、図2および図3に示すように廃液処理槽2内に配設された陰極ユニット31と、廃液処理槽2に着脱可能に装着される陽極板ユニット32とからなっている。陰極ユニット31は、合成樹脂等の絶縁部材によって形成され支持板311と、該支持板311の上面に立設して配設された銅やステンレス鋼等の導電性部材からなる複数の陰極板312とからなっている。支持板311は、幅が上記廃液処理槽2を構成する両側壁22、23の内面間に対応する寸法に相当し、長さが廃液処理槽2を構成する底壁21の長さに略対応する寸法に形成されている。複数の陰極板312は、廃液処理槽2内に長手方向である側壁22、23に沿って互に平行に間隔をおいて配設されている。このように廃液処理槽2内に配設された複数の陰極板312は、上記廃液処理槽2を構成する側壁22に装着された電極端子313に接続されている。
【0017】
陽極板ユニット32は、合成樹脂等の絶縁部材によって形成され支持板321と、該支持板321の下面に配設された銅やステンレス鋼等の導電性部材からなる複数の陽極板322とからなっている。支持板321は、図示の実施形態においては幅が上記廃液処理槽2を構成する両側壁22、23の外面間に対応する寸法に相当し、長さが上記複数の陰極板312の長さの略3分の1に相当する寸法に形成されており、上面に把手323が取り付けられている。複数の陽極板322は、長さ方向に沿って互に平行に間隔をおいて配設されている。この複数の陽極板322は、互いの間隔が上記複数の陰極板312の間隔と同一に設定されるとともに該間隔の2分の1ずらして配設される。この陽極板ユニット32を構成する複数の陽極板322は、支持板321に装着された電極端子324に接続されている。
【0018】
以上のように構成された陽極板ユニット32は、図3に示すように複数の陽極板322を複数の陰極板312の間に挿入し、複数の陰極板312と対面するように装着する。図示の実施形態においては、図1に示すように3個の陽極板ユニット32を廃液処理槽2に着脱可能に装着する。このように構成された加工廃液処理装置1は、各陽極板ユニット32の電極端子324が直流電源4のプラス(+)に接続され、陰極ユニット31の電極端子313が直流電源4のマイナス(−)に接続される。
【0019】
図示の実施形態における加工廃液処理装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図示しない研削装置等の加工装置に装備される加工廃液送出手段から送られ図示しない廃液タンクに収容された加工廃液は、廃液処理槽2の一方の端壁24に設けられた加工廃液流入口241から廃液処理槽2に供給される。このようにして廃液処理槽2に送られた加工廃液にはシリコン微粒子が混入されており、このシリコン微粒子はマイナス(−)に帯電されている。このようにして廃液処理槽2に収容された加工廃液に混入されているシリコン微粒子を分離するには、シリコン分離機構3を構成する陽極板ユニット32の複数の陽極板322に直流電源4のプラス(+)を印可するとともに、陰極ユニット31の複数の陰極板312に直流電源4のマイナス(−)を印可する。この結果、加工廃液に混入されマイナス(−)に帯電されているシリコン微粒子は、マイナス(−)に帯電された陰極ユニット31の複数の陰極板312から反発されプラス(+)に帯電された陽極板ユニット32の複数の陽極板322に吸着する。
【0020】
以上のように、廃液処理槽2の一方の端壁24に設けられた加工廃液流入口241から廃液処理槽2に流入した加工廃液は、陽極板ユニット32の複数の陽極板322に吸着されるシリコン微粒子と、清水に分離される。このようにして、分離されたシリコン微粒子は陽極板ユニット32の複数の陽極板322に吸着されて堆積し、清水は廃液処理槽2の他方の端壁25に設けられた清水流出口251を通して流出し図示しない清水タンクに搬送される。従って、廃液処理槽2の一方の端壁24に設けられた加工廃液流入口241から加工廃液を所定量ずつ流入することにより、シリコン微粒子を効率よく分離できるとともに、加工廃液から容易に清水を生成することができる。
【0021】
上述した加工廃液の処理工程を所定時間実施し、陽極板ユニット32を構成する複数の陽極板322にシリコン微粒子が堆積したならば、陽極板322に堆積したシリコン微粒子を剥離して回収するシリコン回収工程が実施される。このシリコン回収工程は、例えば図4に示すシリコン回収装置5を用いて実施する。シリコン回収装置5は、シリコン回収箱51と、該シリコン回収箱51内に配設されたシリコン剥離手段52とから構成されている。シリコン回収箱51は、長方形状の底板511と、底板511の幅方向両側縁から立設された側板512,513と、底板511の長手方向両側縁から立設された端板514、515によって形成され上側が解放されている。なお、底板511の幅は上記廃液処理槽2を構成する底壁21の幅より陰極板312の1枚分大きく形成され、底板511の長さは上記陽極板ユニット32の長さの3倍程度に設定されている。
【0022】
上記該シリコン回収箱51内に配設されたシリコン剥離手段52は、シリコン回収箱51を構成する底板511の長手方向中央部に立設された複数のブラシ支持板521と、該複数のブラシ支持板521に装着される剥離ブラシ522とならなっている。複数のブラシ支持板521は、図示の実施形態においては長さが上記陽極板ユニット32の長さと同等または短く形成されており、シリコン回収箱51を構成する側板512,513と平行に所定の間隔を持って配設されている。なお、複数のブラシ支持板521の間隔は、上記シリコン分離機構3の陽極板ユニット32を構成する複数の陽極板322の間隔と同一に設定されるとともに該間隔の2分の1ずらして配設される。このようにしてシリコン回収箱51を構成する底板511上に配設された複数のブラシ支持板521には、それぞれ対面する面に剥離ブラシ522が装着される。以上のようにしてシリコン剥離手段52を配設することにより、シリコン回収箱51の長手方向両側には、端板514、515とシリコン剥離手段52との間に上記陽極板ユニット32を収容する空間51a、51bが形成される。
【0023】
上述したシリコン回収装置5を用いて上記陽極板ユニット32を構成する複数の陽極板322に堆積したシリコン微粒子を剥離して回収するシリコン回収工程を実施するには、上述した加工廃液の処理工程を実施することによりシリコン微粒子が堆積した陽極板322を備えた陽極板ユニット32を把手323を持って加工廃液処理装置1の廃液処理槽2から取り外す。そして、シリコン回収装置5を構成するシリコン回収箱51の上方から一方の空間51aに挿入する。次に、陽極板ユニット32をシリコン剥離手段52および他方の空間51bに向けて移動せしめる。この結果、陽極板ユニット32の複数の陽極板322がシリコン剥離手段52を構成する複数のブラシ支持板521間を通過する際に、複数の陽極板322に堆積したシリコン微粒子が複数のブラシ支持板521に装着された剥離ブラシ522によって剥離され、シリコン回収箱51内に回収される。このシリコン回収工程を実施する際には、図示の実施形態においては陽極板ユニット32が3分割して構成されているので、その取扱いが容易である。
【符号の説明】
【0024】
1:加工廃液処理装置
2:廃液処理槽
241:加工廃液流入口
251:清水流出口
3:シリコン分離機構
31:陰極ユニット
311:支持板
312:複数の陰極板
313:電極端子
32:陽極板ユニット
321:支持板
322:複数の陽極板
323:把手
324:電極端子
4:直流電源
5:シリコン回収装置
51:シリコン回収箱
52:シリコン剥離手段
図1
図2
図3
図4