特許第5779866号(P5779866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779866多層フィルム及び該フィルムを用いた包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779866
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】多層フィルム及び該フィルムを用いた包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20150827BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20150827BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   B32B27/32 E
   B65D65/40 D
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-260021(P2010-260021)
(22)【出願日】2010年11月22日
(65)【公開番号】特開2012-111068(P2012-111068A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】長野 清巳
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−116944(JP,A)
【文献】 特開2001−219503(JP,A)
【文献】 特開2005−201987(JP,A)
【文献】 特開2003−261171(JP,A)
【文献】 特開2000−334890(JP,A)
【文献】 特開2010−234660(JP,A)
【文献】 特開2005−103882(JP,A)
【文献】 特開2006−027052(JP,A)
【文献】 特開2002−036434(JP,A)
【文献】 特開2009−001007(JP,A)
【文献】 特開2006−001088(JP,A)
【文献】 特開2002−234115(JP,A)
【文献】 特開2005−254458(JP,A)
【文献】 特開2007−245612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/00−47/96
B29C 55/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点(Tg)が100℃以上の環状オレフィン系樹脂を主成分とする最表面になる樹脂層と、オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(B)と、環状オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(A)と、オレフィン系樹脂を主成分とするヒートシール性の樹脂層を、
最表面になる樹脂層/(B)/(A)/ヒートシール性の樹脂層の順に積層してなる多層構成を有することを特徴とする無延伸の多層フィルム。
【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂が、ノルボルネン系重合体(a1)である請求項1記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂の密度が0.88g/cm以上0.940g/cm未満のエチレン系樹脂(b1)である請求項1〜の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項4】
前記オレフィン系樹脂がメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(b2)である請求項1〜の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項5】
前記最表面になる樹脂層の表面がコロナ処理されたものである請求項1〜の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項6】
共押出積層法で積層したものである請求項1〜の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項7】
前記最表面になる樹脂層/前記樹脂層(B)/前記樹脂層(A)の順に積層してなる無延伸の多層フィルムを共押出積層法で製造した後、更に前記ヒートシール性の樹脂層を押出ラミネート法で積層したものである請求項の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項8】
前記最表面になる樹脂層/前記樹脂層(B)/前記樹脂層(A)/前記ヒートシール性の樹脂層の多層構成中における樹脂層(B)と前記ヒートシール性の樹脂層との合計厚さが、当該多層構成の全厚の40〜95%である請求項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項9】
無延伸の多層フィルムの全厚が15〜100μmである請求項1〜の何れか1項記載の無延伸の多層フィルム。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項記載の無延伸の多層フィルムからなることを特徴とする包装材。
【請求項11】
前記無延伸の多層フィルムを単体で用いたものである請求項10記載の包装材。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の無延伸の多層フィルムを用いてなる包装袋であって、前記最表面になる樹脂層/前記樹脂層(B)/前記樹脂層(A)/前記ヒートシール性の樹脂層の多層構成を有する多層フィルムのヒートシール性の樹脂層を内面にして製袋されたものである包装袋。
【請求項13】
自動包装機にて製袋されたものである請求項1記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、工業部品、雑貨、雑誌等を包装する包装材に関するものであって、詳しくは易開封性、印刷適性、ラミ適性、防湿性、包装機械適性、耐カール性等も良好な多層フィルム及び該フィルムを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特殊加工が必要のない手で引き裂いて簡単に開けられる手切れ性の良い包装材としてはセロハン/ポリエチレンの積層体からなる袋が実用化されている。しかしセロハンは吸湿性があるため、湿度による物性変化が大きく、寸法安定性に劣り、カールが発生したり、さらにブロッキングが発生したりする等、ラミネート加工や印刷加工、製袋加工、包装機械適性に問題があった。
【0003】
セロハン代替としてポリエステルフィルムが提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、初期の引裂き強度が高いため、Vノッチ等の切り込みや、微細な連続した穴開け等の特殊加工が必須である。又、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂層からなる包装袋も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ポリスチレンは一般的に防湿性に乏しく、粉体や錠剤等の吸湿性が大きい内容物の包装には、変色や内容成分の劣化等が発生するため、保存期間に制限があった。さらに耐熱性や耐油性にも劣り、包装適性や印刷加工適性にも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−233374号公報
【特許文献2】特開2002−240209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、特殊加工を必要とせずに手で引き裂いて簡単に開けられる手切れ性の良い包装材であって、湿度による物性変化が小さく、カールの発生もなく、寸法安定性に優れ、ラミネート加工や印刷加工、包装機械適性が良好な包装材料として好適に用いることができる多層フィルムと当該包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、環状オレフィン系樹脂(を主成分とする樹脂層と、オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層とを、特定構成になるように積層することによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、環状オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(A)と、オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(B)とが、(A)/(B)/(A)の順に積層してなる多層構成を有することを特徴とする多層フィルムと、これを用いる包装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層フィルムは、特殊加工を施さなくても手で引き裂いて簡単に開ける事ができ、手切れ性が良好な包装材を提供することが可能である。更に、当該多層フィルムは湿度による物性変化がないため、カールの発生を抑制でき、寸法安定性に優れ、更にブロッキングが発生しづらい。これらのことから、ラミネート加工や印刷加工、包装機械適性に優れ、湿度の吸収による内容物劣化も抑制できる。また、適度なヒートシール強度をも有し、医薬品、食品、工業材料用等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の多層フィルムは、環状オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(A)と、オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(B)とが、(A)/(B)/(A)の順に積層してなる多層構成を有することを必須とし、更に樹脂層(A)の上にその他の層が積層されていても良い。尚、本願において「主成分とする」とは、当該樹脂層を形成するために用いる樹脂成分の全質量に対し、50質量%以上で当該特定の樹脂を含有することを言うものであり、好ましくは60質量%以上で含有することを言うものである。
【0010】
前記(A)/(B)/(A)の多層構成を形成させる場合には、両表面の樹脂層(A)に用いる樹脂としては、後述の環状オレフィン系樹脂を主成分とすればよく、両層が全く同一のものからなるものであっても、異なる樹脂種からなるものであっても良い。
【0011】
本発明における樹脂層(A)の主成分である環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0012】
前記ノルボルネン系重合体の原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0013】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0014】
また、前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、得られる多層フィルムの耐熱性及び高剛性の点から100℃以上であることが好ましく、共押出積層法での製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点からは、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは105℃〜180℃である。この様なTgを有する環状オレフィン系樹脂としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が40〜90重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜85重量%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの耐熱性、剛性、手切れ性、防湿性、加工安定性が向上する。尚、本発明におけるガラス転移点(Tg)は、DSCにて測定して得られる値である。
【0015】
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時・スリット時の引き取りや巻き取り適性を考慮すると高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも可能である。
【0016】
また剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋する等の問題がある場合あるいは包装適性を考慮して表裏の温度差を付与させる場合は、Tg100℃未満のノルボルネン系共重合体を配合することにより、落袋強度やヒートシール適性をも向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を含有しないポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の、ポリオレフィン系樹脂やエラストマー樹脂等を配合することも有効である。さらに上記問題の解決手段としては、最表面になる樹脂層(A)に用いる環状オレフィン系樹脂として、前述のような100℃以上のTgを有するものを用い、反対面の樹脂層(A)として、Tgが100℃以下の環状オレフィン系樹脂を単独で、又はTgが100℃以上の環状オレフィン系樹脂と混合する場合にはその配合量を上昇させて用い、更に当該樹脂層(A)上に、後述のように更にその他の樹脂層を積層してなる多層構成を有する多層フィルムとすることも、落下強度を制御することに有効である。
【0017】
前記環状オレフィン系樹脂として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0018】
本発明における樹脂層(B)の主成分であるオレフィン系樹脂としては、各種のエチレン系樹脂やプロピレン系樹脂が挙げられ、前記樹脂層(A)の主成分として用いる環状オレフィン系樹脂との接着性や手切れ性の制御性から、当該オレフィン系樹脂の密度が0.88g/cm以上0.940g/cm未満のエチレン系樹脂(b1)及び/又はメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(b2)であることが好ましい。
【0019】
前記エチレン系樹脂(b1)としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でもシール性、手切れ性とのバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPEが好ましい。
【0020】
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
【0021】
LLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0022】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0023】
前述のようにエチレン系樹脂の密度は0.88〜0.94g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、前記環状オレフィン系樹脂のTgよりも低いことが好ましく、使用する環状オレフィン系樹脂によって、好ましい融点の範囲が決定されるものであるが、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜120℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や環状オレフィン系樹脂との共押出加工性が向上する。また、前記エチレン系樹脂(b1)のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
【0024】
このようなエチレン系樹脂(b1)は前記環状オレフィン系樹脂との相溶性も良いため、積層した際の透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、樹脂層(A)、樹脂層(B)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はVLDPE、LLDPEを用いることが好ましい。
【0025】
前記プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(b2)が好ましい。これらのプロピレン系樹脂を樹脂層(B)として用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材として好適に用いることが出来る。
【0026】
また、これらのプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。尚、融点については、前記エチレン系樹脂について記載したように、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点Tgとの関係において、選択することはもちろんである。
【0027】
本発明の多層フィルムの多層構造は、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)とが、(A)/(B)/(A)の順になるように積層されたものである。即ち環状オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層の間にオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を挟むことにより、手切れ性・防湿性や、包装機械適性を兼備するフィルムが得られるものである。
【0028】
前記(A)/(B)/(A)の多層構造において、フィルムの剛性と手切れ性・防湿性をより高いレベルで兼備し、包装機械特性にも優れたものとする観点からは、樹脂層(B)の厚さが、当該多層構成の全厚の30〜80%にすることが好ましく、40〜70%になるように積層することがより好ましい。
【0029】
前述の(A)/(B)/(A)の多層構造のみからなる多層フィルムを包装材として使用する場合、特にヒートシールして袋等にする場合には、ヒートシール時のシールバーへの樹脂の張り付き等を防止するために、2つの樹脂層(A)に用いる環状オレフィン系樹脂のTgを異なるものとすることが好ましい。具体的には、ヒートシールする側の樹脂層(A)に用いる環状オレフィン系樹脂を低Tg品とし、最表面の樹脂層(A)で用いる環状オレフィン系樹脂を高Tg品とすることにより、製袋が容易となる。
【0030】
又、前述のように、2つの樹脂層(A)に用いる環状オレフィン系樹脂のTgを選択して用いる以外に、樹脂層(A)上にその他の樹脂層を積層することで、製袋を容易にすることもできる。特に樹脂層(A)上に前述の樹脂層(B)、即ちオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を積層することによって、ヒートシール性を向上させることが可能である。このとき、樹脂層(A)上に積層する樹脂層(B)に用いるオレフィン系樹脂は、前述のものが何れも好適に用いることができ、好ましい樹脂種も同じである。2つの樹脂層(A)の中間に配置する樹脂層(B)に用いる樹脂種と、樹脂層(A)上に積層する樹脂層(B)に用いる樹脂種とは、同一であっても、異なるものであっても構わない。
【0031】
前記(A)/(B)/(A)/(B)の多層構造において、フィルムの剛性と手切れ性・防湿性をより高いレベルで兼備し、包装機械特性にも優れたものとする観点からは、樹脂層(B)の合計厚さが、当該多層構成の全厚の40〜95%にすることが好ましく、50〜90%になるように積層することがより好ましい。
【0032】
前記の各樹脂層(A)、(B)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、樹脂層(A)及び(B)の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、多層フィルムの表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の多層フィルムは、フィルムの厚さが15〜100μmのものが好ましく、より好ましくは20〜90μmである。フィルムの厚さがこの範囲であれば、安定した手切れ性、ラミネート加工適性、包装機械適性、優れた防湿性、ヒートシール性等が得られやすくなる。
【0034】
又、本発明の多層フィルムにおいて、表層の前記樹脂層(A)の表面を処理し、最表面の表面張力を40dyne/cm以上、好ましくは42dyne/cm以上とすることが好ましい。この様な処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。この様な表面処理を行なうことにより、当該多層フィルムに印刷やアルミ蒸着等の後工程を施す場合の、インキや接着剤の塗工性が良好となり、インキやアルミ、アンカーコート剤等との密着性に優れ、インキや蒸着アルミの脱落やデラミ等の問題を回避することが容易となる。
【0035】
本発明の多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂層(A)、樹脂層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(A)、または(A)/(B)/(A)/(B)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。また、本発明で用いる環状オレフィン系樹脂と、樹脂層(B)としてエチレン系樹脂を用いた場合には、両者間で融点とTgとの差が大きいため、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0036】
又、(A)/(B)/(A)の多層構成を前述の共押出積層法を用いて積層した後、前述のように樹脂層(B)を積層させる場合は、接着剤を塗布することにより貼合するドライラミネート、加熱ロールの熱圧着で貼合する熱ラミネートや押出ラミネート等の各種積層法を適用し、(A)/(B)/(A)/(B)の多層構成を形成させることが可能である。
【0037】
また、高ヒートシール強度、ホットタック性や高速の包装スピードが必要な場合には、更に樹脂層(B)に上記性能を満足する特殊なヒートシール性樹脂を有するフィルムをラミネートしヒートシール層を形成するか、特殊なヒートシール性樹脂を有するフィルムを押出ラミネートして、ヒートシール層を形成させても良い。
【0038】
本発明の多層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0039】
本発明の多層フィルムを用いる包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋が挙げられる。特に、手で引き裂いて簡単に開けられる手切れ性が良好な包装袋が可能となり、湿度による物性変化が少なく、カールの発生を抑制でき、寸法安定性に優れ、更にブロッキングも発生しづらく、ラミネート加工や印刷加工、包装機械適性に優れる。湿度による内容物劣化も抑制でき、適度のヒートシール強度をも有する点からは、医薬品、食品等に好適に用いることができる。
【0040】
包装袋としては、必要により表面処理を施した樹脂層(A)を最外層とし、反対面の樹脂層(A)[(A)/(B)/(A)の構成のフィルムの場合]、樹脂層(B)[(A)/(B)/(A)/(B)の構成のフィルムの場合]を内側として形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である。
【実施例】
【0041】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0042】
参考例1
表面の樹脂層(A)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:145℃;以下、「COC(1)」という。〕を用いた。反対の樹脂層(A)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:70℃;以下、「COC(3)」という。〕60質量部と超低密度ポリエチレン〔密度:0.880g/cm3、融点85℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「VLLDPE」という。〕40質量部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂として、直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm3、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕を用いた。これらの樹脂をそれぞれ、表面樹脂層(A)用押出機(口径40mm)及び樹脂層(B)用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)/(A)の3層構成で、各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)である共押出多層フィルム(X1)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0043】
実施例2
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂として、直鎖状中密度ポリエチレンLMDPEを用いた。フィルムの層構成が(A)/(B)/(A)の3層構成で、各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルム(X2)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0044】
上記で得た共押出多層フィルム(X2)の、表面処理をしていない側の樹脂層(A)に、帯電防止剤〔花王製「エレストマスター」〕を2%配合した低密度ポリエチレン〔密度:0.920g/cm、融点115℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「LDPE」という。〕を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0045】
実施例3
樹脂層(B)用樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン〔密度:0.900g/cm、融点85℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「LLDPE」という。〕を用いた。フィルムの各層の厚さが4μm/12μm/4μm(合計20μm)となるように実施例2と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X3)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0046】
上記で得た共押出多層フィルム(X3)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に、帯電防止剤を0.2%配合したメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0047】
実施例4
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部及びCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが5μm/10μm/5μm(合計20μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X4)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
【0048】
上記で得た共押出多層フィルム(X4)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0049】
実施例5
表面の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)70質量部とCOC(3)30質量部の樹脂混合物を、内層の樹脂層(A)用樹脂として、MRCPを用いた。内層の樹脂層(A)には、COC(3)を用いた。フィルムの各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X5)を得た。表面の樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0050】
上記で得た共押出多層フィルム(X5)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0051】
実施例6
表面の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)、内層の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(3)を用いた。樹脂層(B)用樹脂として、LLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが2.5μm/20μm/2.5μm(合計25μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X6)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0052】
上記で得た共押出多層フィルム(X6)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に帯電防止剤を0.2%配合したMRCPを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0053】
実施例7
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)20質量部及びCOC(3)40質量部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:125℃;以下、「COC(2)」という。〕40質量部の樹脂混合物を用いた。また樹脂層(B)用樹脂として、LLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが8μm/9μm/8μm(合計25μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X7)を得た。樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
【0054】
上記で得た共押出多層フィルム(X7)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0055】
実施例8
表面の樹脂層(A)用樹脂として、COC(2)70質量部及び高密度ポリエチレン〔密度:0.960g/cm3、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕を30質量部の樹脂混合物を用いた。また樹脂層(B)用樹脂として、LLDPEを用いた。内層の樹脂層(A)用樹脂としては、COC(1)50質量部とCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが9μm/12μm/9μm(合計30μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X8)を得た。表面の樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は41dyne/cmであった。
【0056】
上記で得た共押出多層フィルム(X8)の表面処理をしていない側の樹脂層(A)に帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0057】
実施例9
表面の樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を、内層の樹脂層(A)用樹脂として、COC(3)を用いた。中間の樹脂層(B)用樹脂として、LMDPEを用いた。更に内層の樹脂層(A)上に積層する樹脂層(B)用樹脂として、VLLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが18μm/40μm/18μm/14μm(合計90μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X9)を得た。表面の樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
【0058】
実施例10
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部及びCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。中間の樹脂層(B)用樹脂として、LMDPEを用いた。最外層の樹脂層(B)用樹脂として、VLLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが10μm/25μm/10μm/5μm(合計50μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X10)を得た。表面の樹脂層(A)にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
【0059】
比較例1
表面樹脂層用樹脂としてCOC(1)を用いた。中間層用樹脂として、ホモポリプロピレン〔密度:0.900g/cm3、融点160℃、MFR:7g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「PP」という。〕を用いた。フィルムの各層の厚さが10μm/10μm(合計20μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y1)を得た。表面樹脂層にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。
【0060】
上記で得た共押出多層フィルム(Y1)の中間樹脂層にヒートシール性樹脂として帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0061】
比較例2
表面樹脂層用樹脂としてCOC(1)を用いた。中間層用樹脂として、LMDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが36μm/4μm(合計40μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y2)を得た。表面樹脂層にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。
【0062】
比較例3
表面樹脂層用樹脂として、COC(1)20質量部と、HDPE80質量部の混合物を用いた。中間層用樹脂として、LMDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが4μm/100μm(合計104μm)となるように参考例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y3)を得た。表面樹脂層にコロナ処理を施し、濡れ試薬による表面張力は38dyne/cmであった。
【0063】
上記で得た共押出多層フィルム(Y3)の中間層側に帯電防止剤を0.2%配合したMRCPを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0064】
比較例4
フタムラ化学社製セロハン(#300)上にヒートシール性樹脂として帯電防止剤を0.2%配合したLDPEを溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
【0065】
上記の参考例1、実施例2〜10及び比較例1〜4で得られた多層フィルムを用いて、下記の試験及び評価を行った。
【0066】
手切れ性
上記で得られた多層フィルムを、フィルムに切れ込みを入れずに、2枚重ねをした状態で、スムーズに手で引き裂けるかどうかを下記の基準によって引き裂き性を評価した。評価は長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して、それぞれ実施した。
○:容易に手で引き裂くことができるもの。
×:容易には手で引き裂くことができないもの。
【0067】
インキ密着性
DIC(株)社製表刷りインキアルティマNT白を用い、乾燥後の塗膜の厚さが2μmになるようにコロナ処理を行なった表面に塗布し、乾燥し、評価フィルムを得た。40℃、24時間放置後、インキ塗布表面にニチバン(株)製セロハンテープ(18mm幅)を気泡の入らないように5cmの長さで貼り、この上を5kgの荷重ロールで一定荷重を与えた。手で力強く、高速に剥離した際の、剥離状態を下記の基準によってインキ密着性を評価した。
○:インキが全く剥離しない
△:フィルム面からインキは剥離するが、剥離する面積は10%未満の場合。
×:10%以上の面積でインキが剥離する。
【0068】
高湿度下での包装機械適性
実施例、比較例で作成したフィルムを自動包装機にて、33℃、湿度80%下で下記の条件で縦ピロー包装を行い、製袋した。
包装機:合理化技研株式会社 ユニパッカーNUV472
【0069】
横シール:速度30袋/分、縦ヒートシール温度150℃、エアーゲージ圧4kg/cm、横ヒートシール温度120℃から160℃まで10℃刻みで変更しながら表面処理を施していない樹脂層同士をシールした。縦200mm×横150mmの平袋とした。
【0070】
収縮・シワ試験
横(合掌貼り)シール、縦シールを行なった平袋のシール部の外観観察により収縮およびヒートシールバーへのフィルム融着状況およびシワ等の入り具合により評価した。
○:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等なし
△:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等若干あり
×:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等あり
【0071】
横シール性
上記条件で製袋したフィルムを23℃で自然冷却後、15mm幅の短冊状に試験片を切り出した。この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度の値から、下記の基準によってヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が300g/15mm幅以上。
×:ヒートシール強度が300g/15mm幅未満。
【0072】
耐カール性
上記で得られたフィルムを、縦横10cm四方に切り出し、40℃湿度90%下に24時間保存した。23℃湿度50%に1時間調湿しフィルムのカール状態を観察した。平面にフィルムを広げ両端面が捲り上がった高さを測定し下記の基準によって耐カール性を評価した。
○:高さ3cm未満
△:高さ3cm以上
×:フィルム両端が重なり完全に丸まってしまう
【0073】
上記で得られた結果を表1〜2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】