(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリジメチルシロキサン骨格ポリマーが結合することにより表面修飾された平均分散粒子径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子と、シリコーン樹脂と、反応触媒とを含有してなる複合組成物であって、
前記シリコーン樹脂は、ビニル変性シリコーン及びハイドロジェン変性シリコーンを含有し、
前記反応触媒は、ヒドロシリル化反応触媒を含有してなり、
前記ポリジメチルシロキサン骨格ポリマーは、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、モノヒドロキシエーテル末端ポリジメチルシロキサンの群から選択された1種または2種であることを特徴とする無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物。
前記ビニル変性シリコーンは、両末端ビニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニルジフェニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニル−フェニルメチルシリコーン、両末端ビニル−ジエチルシリコーン、側鎖ビニル−ジメチルシリコーン、ビニルメチルシリコーン、ビニルメトキシシリコーン、ビニルレジン分散体の群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物。
前記ハイドロジェン変性シリコーンは、両末端ハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、メチルハイドロジェン−フェニルメチルシリコーン、ハイドライドレジンの群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物。
前記無機酸化物粒子の前記複合組成物中の含有率が、1質量%以上かつ90質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物。
請求項1ないし7のいずれか1項記載の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物を、所定の形状に成形し固化するか、または前記複合組成物を固化した後に成形してなることを特徴とする透明複合体であって、
シリコーン樹脂中に、ポリジメチルシロキサン骨格ポリマーが結合することにより表面修飾された無機酸化物粒子が平均分散粒子径1nm以上かつ20nm以下にて分散するとともに、前記シリコーン樹脂中にヒドロシリル化反応触媒を含有してなり、
前記ポリジメチルシロキサン骨格ポリマーは、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、モノヒドロキシエーテル末端ポリジメチルシロキサンの群から選択された1種または2種であることを特徴とする透明複合体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物及び透明複合体を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
[無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物]
本実施形態の無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物(以下、単に「複合組成物」と称することもある。)は、無機酸化物粒子をシリコーン樹脂中に分散してなる複合組成物であり、少なくとも、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーが結合することにより表面修飾された平均分散粒子径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子と、シリコーン樹脂と、反応触媒とを含有してなる複合組成物である。
【0023】
ここで「複合組成物」とは、特定の形状を有さず、一度変形すると元の形状には戻らない不可逆的な変形性を有するものであって、後述の透明複合体の原料となるものである。
この複合組成物の状態としては、例えば、液状やチクソトロピー性を有するゲル状の状態にあるものを示すものとする。
【0024】
無機酸化物粒子の成分である無機酸化物としては、特に限定されないが、ケイ素(Si)等の非金属元素の酸化物、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、セリウム(Ce)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)等の金属元素の酸化物が挙げられる。
【0025】
このような無機酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3、FeO、Fe
3O
4)、酸化銅(CuO、Cu
2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化モリブデン(MoO
3)、酸化インジウム(In
2O
3、In
2O)、酸化スズ(SnO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化タングステン(WO
3、W
2O
5)、酸化鉛(PbO、PbO
2)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2、Ce
2O
3)、酸化アンチモン(Sb
2O
3、Sb
2O
5)酸化ゲルマニウム(GeO
2、GeO)等が挙げられる。
【0026】
このような無機酸化物には、スズ添加酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ:Yttria Stabilized Zirconia)等の複合酸化物も含まれる。
このような無機酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、シリコーン樹脂との複合組成物を高屈折率化する場合には、高い屈折率を有し、可視光線に対して無色透明であり、硬度も高い酸化ジルコニウム(ZrO
2)や酸化チタン(TiO
2)が好適である。
【0027】
また、シリコーン樹脂との複合組成物を低屈折率化する場合には、例えば、中空シリカ粒子や多孔質シリカ粒子のような粒子内に空隙を有することで粒子全体として低屈折率となる無機酸化物粒子を用いることが好ましい。
【0028】
この無機酸化物粒子の複合組成物中における平均分散粒子径は、1nm以上かつ20nm以下であることが好ましい。
ここで、無機酸化物粒子の平均分散粒子径を1nm以上かつ20nm以下と限定した理由は、平均分散粒子径が1nm未満であると、この粒子を構成する粒子の一次粒子径も1nm未満と極めて小さくなり、したがって、結晶性が乏しくなり、屈折率等の粒子特性を発現することが難しくなるからであり、一方、平均分散粒子径が20nmを超えると、レイリー散乱の影響が大きくなり、複合組成物の透明性が低下したり、あるいは、この複合組成物を成形・固化して得られる透明複合体の透明性が低下するからである。
【0029】
このように、無機酸化物粒子は、ナノメートルサイズの粒子であるから、この無機酸化物粒子をシリコーン樹脂中に分散させた複合組成物、あるいは、この複合組成物を成形・固化してなる透明複合体においても、光散乱が小さく、複合組成物や透明複合体の透明性を維持することが可能である。
【0030】
この無機酸化物粒子の複合組成物中の含有率は、1質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上かつ90質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上かつ85質量%以下である。
ここで、無機酸化物粒子の含有率を1質量%以上かつ90質量%以下と限定した理由は、含有率が1質量%未満であると、無機酸化物粒子の量が少なすぎてしまい、無機酸化物粒子をシリコーン樹脂と複合化した場合にシリコーン樹脂の光学特性や機械的特性の変化が発現し難くなり、結果として無機酸化物粒子を複合化させる効果が得られなくなるので好ましくない。一方、含有率が90質量%を越えると、無機酸化物粒子の分散性が十分に確保できなくなったり、複合組成物中における流動性が低下し、成形性が悪化したりするので好ましくない。
【0031】
次に、この無機酸化物粒子の表面修飾について説明する。
この無機酸化物粒子の表面は、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤により修飾されている。
この表面修飾剤は、ポリジメチルシロキサン骨格、特に直鎖状のポリジメチルシロキサン骨格を主鎖に有し、この主鎖の片末端(一端側)に官能基である極性基を1基のみ有している。そのため、この官能基(極性基)が無機酸化物粒子の表面へ選択的に結合すると、他端側、すなわちシロキサン骨格部分は揃って粒子外側(無機酸化物粒子の表面から遠ざかる方向)を向く形となる。
【0032】
しかも、このシロキサン骨格部分とシリコーン樹脂とは相溶性が高く、かつ親和性も良好であるから、このポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤により表面修飾された無機酸化物粒子は、シリコーン樹脂中に均一に分散することができ、良好な複合組成物を形成することができる。
【0033】
ここで、「直鎖状のポリジメチルシロキサン骨格」とは、ポリジメチルシロキサン骨格に枝分れ(分岐)がないことを示している。
ここで、このポリジメチルシロキサン骨格に枝分れ(分岐)があったり、あるいは、官能基である極性基がシロキサン骨格の中間に位置している(官能基がシロキサン骨格の中間に位置するケイ素に結合している)場合には、シロキサン骨格の少なくとも一部は、無機酸化物粒子の表面方向を向いたり、粒子表面に平行な方向を向いたりし易い。この場合、無機酸化物粒子の外側に向いたシロキサン骨格の量が減少することになり、無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との間の相溶性や親和性が低下する虞が生じる。さらに、シロキサン骨格の方向に統一性が無くなるために、シロキサン骨格同士の絡み合いや立体障害が生じ、やはり無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との間の相溶性や親和性が低下する虞がある。
【0034】
また、この表面修飾剤は極性基を1基のみ有している1官能基であり、しかも、この官能基が無機酸化物粒子との結合に使用されるので、無機酸化物粒子に結合した表面修飾剤には官能基が存在しない。したがって、従来の多官能ポリシロキサンを用いた場合に、未反応で残留している官能基が原因となって発生するシリコーン樹脂との相溶性の悪化、例えば白濁化等が発生する虞が無く、安定した複合組成物を得ることができる。
【0035】
このような表面修飾剤としては、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、モノヒドロキシエーテル末端ポリジメチルシロキサンのうちいずれか1種または2種を有することが好ましい。
これらの表面修飾剤が有する末端基のうち、モノグリシジルエーテル末端は、グリシジル基の一部であるエポキシ基の部分が開環して無機酸化物粒子の表面の水酸基と結合するものであり、また、モノヒドロキシエーテル末端は、末端の水酸基と無機酸化物粒子の表面の水酸基とが脱水縮合することで結合するものである。
【0036】
これらの表面修飾剤のうち、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサンは、もとより水酸基を含有しておらず、また、モノヒドロキシエーテル末端ポリジメチルシロキサンは、無機酸化物粒子と結合する官能基のみに水酸基を有している。したがって、いずれの表面修飾剤においても、無機酸化物粒子の表面に結合した後は、水酸基を有さないか、もしくは無機酸化物粒子の表面近傍に存在し、シリコーン樹脂との相溶を妨げない状態となっている。
【0037】
また、これらの表面修飾剤により表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との複合組成物から得られた透明複合体は、収縮率が小さい。これにより、透明複合体におけるポアやクラックの発生が無く、また硬化したシリコーン樹脂中における無機酸化物粒子の分散性も良好に保たれ、欠陥のない透明複合体が得られることとなる。
【0038】
本実施形態の無機酸化物粒子は、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーにより表面修飾されているので、シリコーン樹脂に対しては、相溶性や分散性が優れたものとなっている。したがって、シリコーン樹脂自体には特段の制限は無く、通常のシリコーン樹脂であれば問題なく使用することができる。
これらのシリコーン樹脂の中でも、特に、室温(25℃)以上かつ150℃程度以下で硬化物が得られるヒドロシリル化反応を用いたシリコーン樹脂が特に好ましく、このようなシリコーン樹脂としては、ビニル変性シリコーンおよびハイドロジェン変性シリコーンが好適である。
【0039】
ビニル変性シリコーンとしては、両末端ビニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニルジフェニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニル−フェニルメチルシリコーン、両末端ビニル−ジエチルシリコーン、側鎖ビニル−ジメチルシリコーン、ビニルメチルシリコーン、ビニルメトキシシリコーン、ビニルレジン分散体等が挙げられる。これらのビニル変性シリコーンは、1種類を選択使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
ハイドロジェン変性シリコーンとしては、両末端ハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、メチルハイドロジェン−フェニルメチルシリコーン、ハイドライドレジン等が挙げられる。これらのハイドロジェン変性シリコーンは、1種類を選択使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
このハイドロジェン変性シリコーンにおいては、下記の式(1)
【化2】
(但し、R
1〜R
8は相互に独立な任意の有機基(Hを除く)、mは1以上の整数、nは0を含む正の整数である)
に示す側鎖ハイドロジェン変性シリコーンを含有していることが好ましい。
ここで、側鎖ハイドロジェン変性シリコーンが好ましい理由は、ビニル変性シリコーンとヒドロシリル化反応等により重合硬化してシリコーン樹脂重合体を形成する際に、末端ハイドロジェン変性シリコーンに比べて反応性が高く、さらに反応基であるハイドロジェン変性シリコーンの量が多くできることから架橋密度が高くなり、結果として得られたシリコーン樹脂重合体の特性を向上させることができるからである。
【0042】
さらにまた、上記の式(1)に示す側鎖ハイドロジェン変性シリコーンにおけるmとnとの比(m/(m+n))は、0.25以上かつ1以下であることが好ましい。
ここで、mとnとの比(m/(m+n))を0.25以上かつ1以下に限定した理由は、この比が0.25未満であると、硬化時の架橋密度が少なすぎるために、無機酸化物粒子の凝集・相分離速度がシリコーン樹脂の硬化速度よりも速くなり、その結果、シリコーン樹脂との硬化の際に透明性が失われるからである。
【0043】
なお、mとnの比(m/(m+n))が大きくなるほど、下記の式(2)
【化3】
に示すハイドロジェン含有ユニットの含有率が高くなり、透明複合体を形成した後もビニル変性シリコーンと未反応のユニットの割合が増加すると考えられるが、この未反応ハイドロジェン含有ユニットが透明複合体の特性に及ぼす影響はほとんど無い。したがって、側鎖ハイドロジェン変性シリコーンにおけるmとnの比(m/(m+n))の最大値は1であってよい。
【0044】
上記の式(1)においては、R
1〜R
8は相互に独立な任意の有機基(Hを除く)であり、その一部または全てが同一であってもよい。なおここで「一部が同一」とは、例えば、R
1とR
3とR
4とH
6とが同一であり、かつR
1とR
2とR
5とR
7とR
8とは相互に異なる、というように、一部のみが同一種である場合だけでなく、例えば、R
1とR
3とR
4とが同一かつR
2とR
5とR
7とR
8が同一であり、かつR
1とR
2とR
6とは相互に異なる、というような、その一部同士が同一の組み合わせであってもよい。
また、「有機基」とは、特性基、官能基、置換基等の有機物からなる基全般を表すものであって、例えば、アルキル基、アルコキシ基等が含まれる。
【0045】
このシリコーン樹脂としては、無機酸化物粒子等と混合後の複合組成物の特性として、特定の形状を有さず、一度変形すると元の形状には戻らない不可逆的な変形性を有するものであって、後述の透明複合体の原料となるものであり、例えば液状やチクソトロピー性を有するゲル状の状態にあるものであればよく、その重合度は特に限定されない。
【0046】
すなわち、複合組成物が上記特性を有するものであれば、モノマー(単量体)、オリゴマー(2〜数百程度の重合体)、ポリマー(数百以上の重合体)のいずれでもよく、またこれらを組み合わせることで重合度に幅を持たせたものを用いてもかまわない。
また、このシリコーン樹脂においては、その特性を損なわない範囲で酸化防止剤、離型剤、カップリング剤、無機充填剤等を添加してもよい。
【0047】
本実施形態の複合組成物は、反応触媒を含有している。
この反応触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒を含有していることが好ましい。このヒドロシリル化反応触媒としては貴金属系触媒が挙げられ、貴金属の粉体、貴金属塩、貴金属錯体等を適宜選択することができる。貴金属系触媒の中では白金族系触媒が好ましく、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等を挙げることができ、特に、白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉体、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、本実施形態の複合組成物は、有機溶媒を含有することができる。
ここで、複合組成物が有機溶媒を含有する利点としては、次のような点が上げられる。
第1の利点としては、複合組成物の粘度制御が挙げられる。例えば、無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との混合物が高粘度の場合、流動性が悪化し、後述の透明複合体の成形性の低下や取り扱いの容易性が低下するという問題が生じる場合がある。そこで、これらの問題を解消するために、有機溶媒を混合物に添加することにより、この混合物の粘度を所望の粘度にまで低下させることが可能になる。
【0049】
第2の利点としては、混合・分散の容易化が挙げられる。例えば、表面修飾剤により修飾された無機酸化物粒子を、まず、使用するシリコーン樹脂と相溶性の高い有機溶媒中に分散させて無機酸化物粒子分散液とし、この無機酸化物粒子分散液とシリコーン樹脂とを混合・攪拌すれば、無機酸化物粒子のシリコーン樹脂に対する分散性が非常に高くなるので好ましい。
【0050】
この有機溶媒としては、疎水性溶媒を用いることが好ましい。その理由は、表面修飾された無機酸化物の分散性が高く、シリコーン樹脂との相溶性が高い溶媒として、疎水性溶媒が適しているからである。
このような疎水性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素含有溶媒が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
この有機溶媒の含有率は、上記等の溶媒添加効果が得られるものであれば特に限定はされないが、通常、表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との合計量に対して400質量%以下であることが好ましい。その理由としては、有機溶媒が過剰に存在すると、この複合組成物を用いて後述の透明複合体を形成する際に、粘度が低すぎて成形性に難が生じたり、あるいは有機溶媒の除去に時間を要したりするので、好ましくないからである。
【0052】
[複合組成物の製造方法]
本実施形態の複合組成物の製造方法は、まず、無機酸化物粒子の表面を、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーにより修飾し、次いで、この表面修飾された平均分散粒子径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子と、シリコーン樹脂と、反応触媒とを混合する方法である。
【0053】
ここで、無機酸化物粒子の表面を、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーにより修飾する方法としては、まず、無機酸化物粒子の表面に予め特定の分散剤を結合させて疎水性溶媒(有機溶媒)への分散性を持たせた後に、この無機酸化物粒子を疎水性溶媒中に分散させ、得られた分散液に片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤を加えることで、この疎水性溶媒中にて無機酸化物粒子の表面に予め結合している特定の分散剤と、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤とを置換させる方法を挙げることができる。
【0054】
始めに、無機酸化物粒子の表面に特定の分散剤を結合させて、疎水性溶媒への分散性を持たせる。
この特定の分散剤とは、分散剤が結合した無機酸化物粒子が疎水性溶媒に容易に分散するものであり、かつ、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーよりなる表面修飾剤が共存する場合に、無機酸化物粒子表面において、既に結合している特定の分散剤と当該表面修飾剤とが、容易に置換を起こすことができるものである。
【0055】
特定の分散剤としては、有機酸化合物または有機塩基化合物を挙げることができ、有機酸化合物としてはカルボン酸、リン酸、スルホン酸等が、有機塩基化合物としてはアミン、フォスファゼン塩基等が挙げられる。
これらの分散剤の中でも、無機酸化物粒子を分散させる分散剤として機能し、かつ表面修飾剤との反応時には良好に脱離させることが可能であることから、カルボン酸やアミンが好適に用いられる。
【0056】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸から選択された1種または2種以上を選択して用いればよい。また、アミンとしては、例えば、ピリジン、ビピリジンなどの芳香族アミンや、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ブチルアミンなどの脂肪族アミンから選択された1種または2種以上を選択して用いればよい。
【0057】
次いで、表面に特定の分散剤を結合させた無機酸化物粒子を、疎水性溶媒中へ分散させる。
疎水性溶媒としては、当該無機酸化物粒子が安定に分散するものであればよいが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの含塩素溶媒が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0058】
次いで、無機酸化物粒子を分散させた疎水性溶媒に、既に述べた片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤を加え、この表面修飾剤を無機酸化物表面に既に結合している特定の分散剤と置換させることにより、無機酸化物粒子の表面を修飾する。
この片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤の無機酸化物粒子に対する質量比は、無機酸化物粒子の全質量に対して5質量%以上かつ200質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ100質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上かつ100質量%以下である。
【0059】
ここで、表面修飾剤の質量比を5質量%以上かつ200質量%以下と限定した理由は、表面修飾剤の質量比が5質量%未満であると、表面修飾剤の量が少なすぎて無機酸化物粒子の表面を十分に修飾することができず、したがって、この表面修飾が不十分な無機酸化物粒子のシリコーン樹脂への相溶が困難となり、シリコーン樹脂との複合化の際に透明性が失われるからであり、一方、表面修飾剤の質量比が200質量%を超えると、複合組成物における表面修飾剤の割合が無視できなくなる程増大し、したがって、複合組成物の特性に大きく影響を及ぼすこととなり、特性の低下を引き起こす虞があるからである。
【0060】
このように、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤を用い、この表面修飾剤を疎水性溶媒中で無機酸化物粒子と反応させることにより、表面修飾剤の官能基(極性基)は無機酸化物粒子へ選択的に配向・結合し、一方他端側は疎水性溶媒中に分散しようとして、無機酸化物粒子の外側を向く形となる。したがって、これらの表面処理剤は、官能基部分を無機酸化物粒子と結合し、他端側は無機酸化物粒子に対して放射状に離れるような形となる。
以上により、表面が片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーにより修飾された平均分散粒子径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子が得られる。
【0061】
次いで、この表面修飾された平均分散粒子径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子と、シリコーン樹脂と、反応触媒とを混合する。この際、必要に応じて有機溶媒を加えてもよい。
ここで、シリコーン樹脂自体には特段の限定は無く、上述したヒドロシリル化反応により硬化可能なビニル変性シリコーンおよびハイドロジェン変性シリコーンの組み合わせであれば問題なく使用することができる。
【0062】
すなわち、ビニル変性シリコーンとしては、両末端ビニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニルジフェニル−ジメチルシリコーン、両末端ビニル−フェニルメチルシリコーン、両末端ビニル−ジエチルシリコーン、側鎖ビニル−ジメチルシリコーン、ビニルメチルシリコーン、ビニルメトキシシリコーン、ビニルレジン分散体等の中から、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて選択使用することができる。
【0063】
また、ハイドロジェン変性シリコーンとしては、両末端ハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、メチルハイドロジェン−フェニルメチルシリコーン、ハイドライドレジン等の中から、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて選択使用することができる。
【0064】
また、ハイドロジェン変性シリコーンにおいては、上記の式(1)に示す側鎖ハイドロジェン変性シリコーンを含有していることが好ましい。
ここで、側鎖ハイドロジェン変性シリコーンが好ましい理由は、ビニル変性シリコーンとヒドロシリル化反応等により重合硬化してシリコーン樹脂重合体を形成する際に、末端ハイドロジェン変性シリコーンに比べて反応性が高く、さらに反応基であるハイドロジェン変性シリコーンの量が多くできることから架橋密度が高くなり、結果として得られたシリコーン樹脂重合体の特性を向上させることができるからである。
【0065】
さらにまた、上記の式(2)に示す側鎖ハイドロジェン変性シリコーンにおけるmとnとの比(m/(m+n))は0.25以上かつ1以下であることが好ましい。
ここで、mとnとの比(m/(m+n))を0.25以上に限定した理由は、この比が0.25未満であると、硬化時の架橋密度が少なすぎるために、無機酸化物粒子の凝集・相分離速度がシリコーン樹脂の硬化速度よりも速くなり、その結果、シリコーン樹脂との硬化の際に透明性が失われるからである。
【0066】
なお、mとnとの比(m/(m+n))が大きくなるほど、上記の式(2)に示すハイドロジェン含有ユニットの含有率が高くなり、透明複合体を形成した後もビニル変性シリコーンと未反応のユニットの割合が増加すると考えられるが、この未反応ハイドロジェン含有ユニットが透明複合体の特性に及ぼす影響はほとんど無い。従って、側鎖ハイドロジェン変性シリコーンにおけるmとnとの比(m/(m+n))の最大値は1であってよい。
【0067】
表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを混合する方法は、特に限定されず、ミキサー、各種ミル、超音波の印加等、従来知られている方法を用いればよい。
【0068】
ここで、表面修飾剤により表面が修飾された無機酸化物粒子は、粒子のままの状態でシリコーン樹脂と混合することも可能ではあるが、この表面修飾された無機酸化物粒子のシリコーン樹脂中における分散性や混合の容易性を高めるためには、予め、この表面修飾された無機酸化物粒子を使用するシリコーン樹脂に対して相溶性の高い有機溶媒(疎水性溶媒)中に再分散させておき、得られた無機酸化物粒子分散液とシリコーン樹脂とを混合・攪拌することが好ましい。
【0069】
すなわち、無機酸化物粒子を、ある程度の粘度を有するシリコーン樹脂に対して直接投入して撹拌した場合、この無機酸化物粒子を粘性を有するシリコーン樹脂中に均一にかつ粒子の凝集を防ぎつつ分散させることが難しく、得られた分散体中の無機酸化物粒子の分散性も悪く、さらには無機酸化物粒子を粘性を有するシリコーン樹脂中に分散させる工程自体、多大な労力を要する。
【0070】
一方、表面修飾された無機酸化物粒子を一旦、シリコーン樹脂に対して相溶性の高い有機溶媒中に再分散させた場合、有機溶媒自体が低粘度であるから、無機酸化物粒子は有機溶媒中に均一に分散し、低粘度の無機酸化物粒子分散液となる。そこで、この無機酸化物粒子が均一に分散された分散液とシリコーン樹脂とを混合すれば、液体同士が混合されることから、シリコーン樹脂がある程度の粘度を有するものとしても分散液と均一に混合され、その結果、無機酸化物粒子はシリコーン樹脂中に容易かつ均一に分散することとなる。さらには低粘度の無機酸化物粒子分散液と粘性を有するシリコーン樹脂とを混合する工程自体、溶液同士の混合工程であるから、多大な労力を必要としない。
【0071】
さらに、表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との混合物が高粘度であった場合、この混合物の流動性が悪化し、ひいては後述の透明複合体の成形性の低下や取り扱いの容易性が低下するという問題が生じる場合がある。
この問題を防ぐためには、無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを混合する際に、適当な溶媒、例えば、表面修飾された無機酸化物の分散性が高くかつシリコーン樹脂との相溶性も高い有機溶媒を添加し、得られた混合物の粘度を低下させておくことが好ましい。
【0072】
このような有機溶媒としては、疎水性溶媒を用いることが好ましく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素含有溶媒が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、この有機溶媒の含有率は、上記の溶媒添加効果が得られるものであれば特に限定はされないが、通常、表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との合計量に対して400質量%以下であることが好ましい。その理由としては、有機溶媒が過剰に存在すると、この複合組成物を用いて後述の透明複合体を形成する際に、粘度が低すぎて成形性に難が生じたり、あるいは有機溶媒の除去に時間を要したりするからである。
【0073】
表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを混合する具体的な方法としては、例えば、(1)無機酸化物粒子を有機溶媒中に再分散させた後、この分散液にシリコーン樹脂を投入し、混合攪拌する方法、(2)無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを混合した後、この混合物に適宜有機溶媒を添加し、ミキサー等を用いて撹拌・混合することで粘度を調整し、流動性を有する混合物とする方法、等が挙げられる。
なお、有機溶媒の添加により得られた混合物の粘度が低い場合には、有機溶媒の一部あるいは全部を揮発等で除去することにより、粘度の調整(高粘度化)を行ってもよい。
以上のようにして、本実施形態の複合組成物を得ることができる。
【0074】
[透明複合体]
本実施形態の透明複合体は、シリコーン樹脂中に、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーが結合することにより表面修飾された無機酸化物粒子が平均分散粒子径1nm以上かつ20nm以下にて分散するとともに、前記シリコーン樹脂中にヒドロシリル化反応触媒を含有している透明複合体である。なお、この透明複合体においては、有機溶媒、中でも疎水性溶媒は、基本的には含まれておらず、含まれていてもごく微量である。
【0075】
ここで、「透明複合体」は特定の形状を有するが、この「所定の形状を有する」とは、透明複合体が液状、ゲル状等の不可逆的な変形性を有しておらず、使用の目的や方法に合わせた一定の形状を維持することができることを示すものである。すなわち、通常のほとんど変形しない固体状の他、ゴム状等の弾性変形性(形状復元性)を有するものを含むものであり、形状自体が特定の形状であることを示すものではない。
【0076】
この透明複合体は、上記の複合組成物におけるシリコーン樹脂の重合度や架橋度、あるいはシリコーン樹脂と表面修飾剤のシロキサン骨格との間の重合や架橋数を高めることにより、所定の形状を有する状態を得ることができるものである。したがって、この透明複合体を構成する各成分、すなわち、表面が片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーよりなる表面修飾剤により修飾されている無機酸化物粒子、シリコーン樹脂、反応触媒の3成分については、上述の複合組成物と同一である。
【0077】
この透明複合体では、これ自体を構成している表面修飾された無機酸化物粒子は、シリコーン樹脂との相溶性及び親和性が高く、シリコーン樹脂中における分散性が良好である。したがって、無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とが相分離を起こしたり、無機酸化物粒子の凝集が発生したりすること等に起因する、光学的特性、機械的特性、熱的安定性等の劣化を生じさせる虞がなく、良好な特性を維持することができる。
【0078】
また、上述したように、このシリコーン樹脂を反応触媒によって硬化させた場合、シリコーン樹脂の硬化速度は、無機酸化物粒子の凝集・相分離速度よりも早いので、得られる透明複合体の中で無機酸化物粒子が凝集することなく透明性も高いものとなる。加えて、透明複合体の形成材料である複合組成物は、キレート化剤を使用していないので、透明複合体に着色が発生する虞もない。
【0079】
また、この透明複合体に含まれる無機酸化物粒子の平均分散粒子径を20nm以下としているので、平均分散粒子径が20nmを超えると影響が大きくなるレイリー散乱の発生も低く抑えられており、透明複合体の透明性が低下することもない。
このように、無機酸化物粒子は、ナノメートルサイズの粒子であるから、この無機酸化物粒子をシリコーン樹脂中に分散させた複合組成物や透明複合体においても、光散乱が小さく、複合組成物や透明複合体の透明性を維持することが可能である。
【0080】
さらに、この透明複合体に含まれる無機酸化物粒子の平均分散粒子径を1nm以上としているので、この無機酸化物粒子の平均一次粒子径が結晶性の維持が低下する1nm未満となることがない。したがって、この無機酸化物粒子は結晶性が良好に維持されている。
このように、無機酸化物粒子の結晶性が維持されているので、無機酸化物粒子自体が有する特性、すなわち屈折率や硬度、耐熱性等の特性が劣化することがない。したがって、無機酸化物粒子をシリコーン樹脂と複合化させた透明複合体としての効果を十分に得ることができる。
【0081】
ここで、透明複合体の効果について説明する。
「光学的特性」
透明複合体の光学的特性としては、屈折率制御が挙げられる。
シリコーン樹脂の屈折率は1.4程度であるから、このシリコーン樹脂より屈折率が高い高屈折率酸化物粒子と複合化することにより、透明複合体の屈折率を高めることができる。
特に屈折率が2以上の高屈折率無機酸化物粒子、例えば、正方晶酸化ジルコニウム(屈折率:2.15)や酸化チタン(屈折率:2.6程度)と複合化することが有効であり、これらの高屈折率無機酸化物粒子を用いることにより、透明複合体の屈折率を、シリコーン樹脂単体と比べて0.1から0.2程度高い1.5から1.65程度まで高めることが可能である。
【0082】
この透明複合体の透明性については、上述したとおり、無機酸化物粒子の平均分散粒子径を20nm以下とすることで、光散乱を十分低く抑えることができる。したがって、この透明複合体では、透明性が十分に保たれている。
なお、中空シリカ粒子や多孔質シリカ粒子のような、粒子内に空隙を有することで粒子全体として低屈折率となる無機酸化物粒子をシリコーン樹脂と複合化すれば、透明複合体の屈折率を低下させることも可能である。
【0083】
「機械的特性」
透明複合体の機械的特性としては、樹脂単体と比較して硬度が向上することが挙げられる。
通常の無機酸化物粒子は、シリコーン樹脂と比べて硬度が高く、この無機酸化物粒子をシリコーン樹脂と複合化することで、透明複合体の表面硬度を高めることができる。これにより、透明複合体の耐擦傷性を向上させることができ、透明複合体自体の寸法精度を向上させることができる。
特に、酸化ジルコニウムは、酸化物系セラミックスの中でも高硬度であるから、複合化による表面硬度の向上に高い効果を発揮することができる。
【0084】
「熱的安定性及び化学的安定性」
シリコーン樹脂は、それ自体が骨格にケイ素(Si)を含むので、通常の樹脂と比べて耐熱性や耐薬品性等の熱的安定性や化学的安定性に優れている。一方、無機酸化物粒子は、耐熱性の点でシリコーン樹脂より勝っている。そこで、化学的安定性が高い無機酸化物粒子を選定し、この化学的安定性が高い無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを複合化すれば、得られた透明複合体の熱的安定性や化学的安定性をより高めることができる。
【0085】
ここで、シリコーン樹脂は、疎水性溶媒との相溶性が高いことからも分かるように、疎水性(撥水性)ではあるが、柔軟性に富み、水蒸気に対するガスバリア性は他樹脂と比較して低い。
本実施形態の透明複合体においては、ガスバリア性に優れる無機酸化物粒子が透明複合体の内部に均一に分散され、さらに無機酸化物粒子とシリコーン樹脂との結合性が高いことから、透明複合体における水蒸気に対するガスバリア性を高い状態へ改善することができる。
【0086】
この透明複合体によれば、高屈折率の無機酸化物粒子、特に酸化ジルコニウムをシリコーン樹脂と複合化させることにより、得られる透明複合体の屈折率を例えば1.4から1.65程度まで高めることができる。また、硬度が向上することで寸法精度の向上も図ることができる。したがって、光学素子における設計自由度を向上させることができる。
その結果、例えば、光学レンズの小型化、薄厚化、集積化、集光効率の向上、屈折率波長依存性の低減等を行うことができるようになり、よって、このような光学素子を用いる機器であるCCDやCMOSカメラ等の特性向上、例えば高解像度化や高感度化が期待できる。
【0087】
また、この透明複合体は、単体のシリコーン樹脂と比べて高屈折率であることから、発光素子であるLEDの封止材として用いた場合には、封止材に覆われる発光体や、発光体を形成するための基板等の屈折率が高い部材(LEDの発光体である半導体材料の屈折率は2.5程度、半導体材料を成膜する透光性の基板の屈折率は1.76程度)との屈折率整合性を向上させることができる。したがって、LEDの発光体から外部に発光を取り出す過程における内部反射を低減することができる。
【0088】
すなわち、本実施形態の透明複合体をLEDの封止材に用いることで、LEDからの光取り出し効率を10%ないし15%程度改善することができる。その結果、LEDの輝度を向上させることができる。
さらに、この透明複合体は水蒸気に対するガスバリア性が高いことから、外部からの水分滲入を抑え、発光領域の劣化を抑制することができる。したがって、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0089】
また、この透明複合体を有機EL素子の封止材として用いた場合には、水蒸気に対するガスバリア性が高いことから、外部からの水分滲入を抑え、発光領域の劣化を抑制することができる。また、透明複合体中の無機酸化物粒子は、酸素ガスの透過を効果的に抑制することができるので、同様に発光領域の劣化を抑制することができる。したがって、本実施形態の透明複合体を有機EL素子の封止材として用いることにより、有機EL素子における発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0090】
[透明複合体の製造方法]
本実施形態の透明複合体は、本実施形態の複合組成物を、所定の形状に成形し固化するか、または前記複合組成物を固化した後に所定の形状に成形することで、得ることができる。
【0091】
本実施形態の製造方法においては、「所定の形状に成形し固化する方法」は、下記のとおりである。
まず、本実施形態の複合組成物を、金型や型枠を用いて成形したり、金型や型枠状の容器に充填したりすることにより、目的の形状に成形された成形体または充填物を得る。
この際、使用する複合組成物の粘度が高い場合には、予め、有機溶媒等を添加し撹拌・混合して粘度を低下させ、成形や充填に適した粘度となるように調整しておくことが好ましい。
一方、使用する複合組成物の粘度が低い場合には、予め、シリコーン樹脂同士やシリコーン樹脂と表面修飾剤の一部を下記の様に重合や架橋させるか、または複合組成物が有機溶媒を含む場合には、この有機溶媒の一部あるいは全部を揮発させる等で除去することで粘度を高め、成形や充填に適した粘度となるように調整しておくことが好ましい。
【0092】
次いで、この成形体または充填物を、室温(25℃程度)のまま、あるいは所定の温度(室温〜150℃、好ましくは80℃〜150℃)に加温して所定時間静置し、この複合組成物中のシリコーン樹脂や表面修飾剤に反応触媒を介して重合や架橋等の反応を生じさせ、シリコーン樹脂同士やシリコーン樹脂と表面修飾剤間での結合度(重合度)を高める。
また、この成形体または充填物に有機溶媒が残留する場合には、この有機溶媒を揮発除去する。
これにより、この成形体または充填物は、金型や容器から外した後、外力を加えても、一定の形状を維持できる状態となる。
以上により、欠陥が無く、光学的特性、機械的特性に優れ、高い熱的安定性や化学的安定性を有する、本実施形態の透明複合体を得ることができる。
【0093】
また、本実施形態の製造方法においては、「複合組成物を固化した後に所定の形状に成形する方法」は、下記のとおりである。
まず、本実施形態の複合組成物を固化して、複合組成物の固化物(未成形の透明複合体)を得る。固化方法としては、複合組成物を室温(25℃程度)のまま、あるいは所定の温度(室温〜150℃、好ましくは80℃〜150℃)に加温して所定時間静置し、この複合組成物中のシリコーン樹脂や表面修飾剤に反応触媒を介して重合や架橋等の反応を生じさせ、シリコーン樹脂同士やシリコーン樹脂と表面修飾剤間での結合度(重合度)を高めてやればよい。
また、有機溶媒が残留する場合には、この有機溶媒も揮発除去することが好ましい。
この固化物は、外力を加えても、一定の形状を維持できる状態である。
【0094】
次いで、この固化物を切削や型抜き等の機械加工法により、必要な形状に成形する。本実施形態のシリコーン樹脂は、硬化後でも柔軟性を有しており、容易に加工することができる。
さらに、加工後の成型体においては、シリコーン樹脂同士やシリコーン樹脂と表面修飾剤間での結合度(重合度)を高めたり、残留する有機溶媒を除去することで、より固化を進めてもよい。
以上によっても、欠陥が無く、光学的特性、機械的特性に優れ、高い熱的安定性や化学的安定性を有する、本実施形態の透明複合体を得ることができる。
【0095】
なお、この透明複合体を透明性を問題にしない分野に適用する場合、透明性を確保する必要がないことから、用いる無機酸化物粒子の平均分散粒子径を1nm以上かつ20nm以下に限定する必要はない。
【0096】
例えば、無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを含有する複合体の表面硬度のみの向上を目的とする場合には、平均分散粒子径が20nmよりも大きい粒子、例えば100nmの無機酸化物粒子を用いることもできる。
このような場合であっても、本実施形態の複合組成物の製造方法を適用することにより、複合組成物中での無機酸化物粒子の分散性が高まり、良好な物性を有する成形体または充填物を作製することが可能な複合組成物とすることができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
「実施例1」
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
【0099】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢を用いて粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ジルコニア粒子を得た。
【0100】
次いで、このジルコニア粒子10gに、トルエン85g、カプロン酸5gを加えて混合し、ジルコニア粒子の表面を配位子により修飾した。その後、分散処理を行い、ジルコニア透明分散液を調製した。
次いで、このジルコニア透明分散液100gに、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーとしてモノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS−G:数平均分子量5000:Aldrich社製)10g、ジブチルスズジラウレート0.01gを加え、環流下にて表面修飾を行った。
【0101】
反応終了後、溶媒をエバポレータにて除去し、メタノール洗浄と遠心分離を繰り返すことによって、ジルコニア粒子から脱離したカプロン酸、および未反応のモノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサンを除去した。回収した表面修飾ジルコニア粒子は15gであった。
【0102】
得られた表面処理ジルコニア粒子を、プロトンNMR(重クロロホルム中)にて測定した結果、、2.6から3.5ppm近傍のグリシジル基に起因するシグナル強度が、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサン単体に比べて大きく減少していた。この結果から、モノグリシジルエーテル末端ポリジメチルシロキサンが、エポキシ基の開環及びジルコニア粒子との結合を生じさせていると判断した。
【0103】
この表面修飾ジルコニア粒子15gを、トルエン35gへ再分散した後、ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131(Gelest社製)14.1g、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151(Gelest社製)0.9gを加え、更に反応触媒として室温硬化用の白金ジビニルテトラメチルジシロキサンSIP6830.3(Gelest社製)6mgを加え、実施例1の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物を得た。
【0104】
次いで、この表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物を攪拌溶解後、ガラス板で組み上げた型の中に流し込み、40℃の真空下にて有機溶媒を除去しつつ、硬化反応を行い、実施例1の厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0105】
得られた実施例1の透明複合体の断面を電解放出型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて観察し、無作為に100個選び出した粒子の粒子径を測定し、その平均値を透明複合体内におけるジルコニア粒子の平均分散粒子径とした。この測定の結果、平均分散粒子径は7nmであった。
この測定結果から、実施例1の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、7nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例1の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0106】
「実施例2」
ジルコニア粒子を10g(25質量%)から14g(35質量%)に、ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131を14.1g(47質量%)から8.4g(28質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151を0.9g(3質量%)から0.6g(2質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例2の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は35質量%であった。
【0107】
得られた実施例2の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は8nmであった。
この結果から、実施例2の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、8nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例2の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0108】
「実施例3」
ジルコニア粒子を10g(25質量%)から16g(40質量%)に、ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131を14.1g(47質量%)から5.7g(19質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151を0.9g(3質量%)から0.3g(1質量%)に、反応触媒として白金ジビニルテトラメチルジシロキサンSIP6830.3を6mg(0.02質量%)から3mg(0.01質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例3の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は40質量%であった。
【0109】
得られた実施例3の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は10nmであった。
この結果から、実施例3の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、10nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例3の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0110】
「実施例4」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131を14.1g(47質量%)から11.7g(39質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−031(Gelest社製)の3.3g(11質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例4の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0111】
得られた実施例4の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は7nmであった。
この結果から、実施例4の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、7nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例4の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0112】
「実施例5」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−731(Gelest社製)の4.8g(16質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−031の10.2g(34質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例5の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0113】
得られた実施例5の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は7nmであった。
この結果から、実施例5の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、7nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例5の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0114】
「実施例6」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、両末端ビニル−ジメチルシリコーンDMS−V21(Gelest社製)の13.5g(45質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−301(Gelest社製)の1.5g(5質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例6の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0115】
得られた実施例6の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は10nmであった。
この結果から、実施例6の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、10nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例6の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0116】
「実施例7」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、両末端ビニル−ジメチルシリコーンDMS−V22(Gelest社製)の14.7g(49質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−301の0.3g(1質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例7の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0117】
得られた実施例7の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は10nmであった。
この結果から、実施例7の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、10nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例7の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0118】
「実施例8」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131を14.1g(47質量%)から14.4g(48質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−301の0.6g(2質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例8の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0119】
得られた実施例8の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は7nmであった。
この結果から、実施例8の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、7nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例8の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0120】
「実施例9」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−731の11.4g(38質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−301の3.6g(12質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例9の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0121】
得られた実施例9の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は7nmであった。
この結果から、実施例9の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、7nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例9の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0122】
「実施例10」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、両末端ビニル−ジメチルシリコーンDMS−V22の14.7g(49質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−301の0.3g(1質量%)に、反応触媒として白金ジビニルテトラメチルジシロキサンSIP6830.3を、白金シクロビニルメチルシロキサンSIP6832.2(Gelest社製)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて実施例10の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの透明複合体を得た。
この透明複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
【0123】
得られた実施例10の透明複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は9nmであった。
この結果から、実施例10の複合組成物中のジルコニア粒子の平均分散粒子径も、9nmないしはそれ以下と結論づけられた。
また、得られた実施例10の透明複合体について、元素分析を行った結果、反応触媒として添加した量と同等量の白金成分を検出できたことから、本発明の透明複合体であることを確認した。
【0124】
「比較例1」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、両末端ビニル−ジメチルシリコーンDMS−V21の8.7g(29質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−031の6.3g(21質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて比較例1の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの複合体を得た。
この複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
得られた比較例1の複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は35nmであった。
【0125】
「比較例2」
ビニル変性シリコーンとして側鎖ビニル−ジメチルシリコーンVDT−131の14.1g(47質量%)を、両末端ビニル−ジメチルシリコーンDMS−V22の13.2g(44質量%)に、ハイドロジェン変性シリコーンとしてメチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−151の0.9g(3質量%)を、メチルハイドロジェン−ジメチルシリコーンHMS−031の1.8g(6質量%)に、それぞれ変更した他は、実施例1に準じて比較例2の表面修飾ジルコニア粒子−シリコーン樹脂複合組成物及び厚みが1mmの複合体を得た。
この複合体のジルコニア粒子の含有率は25質量%であった。
得られた比較例2の複合体中のジルコニア粒子の粒子径を実施例1と同様にして測定した結果、平均分散粒子径は42nmであった。
【0126】
「評価」
実施例1〜10それぞれの透明複合体及び比較例1、2それぞれの複合体について、下記の装置または方法により透明性、屈折率及び耐久性の評価を行った。
【0127】
(1)透明性
分光光度計(日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、透明複合体(または複合体)の厚み方向(L=1mm)の可視光線透過率を測定し、可視光線透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
(2)屈折率
日本工業規格JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、ジルコニア粒子を添加していない樹脂単体を基準として、屈折率が0.03以上向上した場合を「○」、屈折率が0.03未満しか向上しなかった場合を「×」とした。
【0128】
(3)耐久性
透明複合体(または複合体)を温度150℃の環境下に24時間放置した後、取り出し、透明複合体(または複合体)の外観を目視にて観察し、黄変が無いものを「○」、黄変したものを「×」とした。
実施例1〜10及び比較例1〜2各々の複合組成物の組成及び透明複合体(または複合体)の評価結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1によれば、実施例1〜10各々の透明複合体は、透明性、屈折率及び耐久性の全ての点で優れたものであった。
一方、比較例1、2の複合体は、可視光線の透過率が0%〜20%と極めて低く、また、屈折率を測定することができなかった。
この理由は、ハイドロジェン変性シリコーン及びビニル変性シリコーン共に架橋密度が小さいので、無機酸化物粒子の凝集・相分離速度がシリコーン樹脂の硬化速度よりも速くなり、その結果、シリコーン樹脂との硬化の際に透明性が失われたことによると考えられる。