(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結晶育成チャンバーは、前記石英ルツボの上方で、かつ前記石英ルツボの上端部を覆う断熱部材を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶育成装置。
前記結晶育成チャンバー及び前記原料供給チャンバーの少なくとも一方は、融液面の高さを制御するためのルツボ昇降機構を備えたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶育成装置。
前記結晶育成チャンバー及び前記原料供給チャンバーの少なくとも一方は、前記融液面の高さを算出もしくは検出する検出機構を備え、該検出機構により算出もしくは検出された前記融液面の高さを基に、前記融液面の高さを前記ルツボ昇降機構によって所望の高さに制御するものであることを特徴とする請求項3に記載の単結晶育成装置。
前記融液供給管は、該融液供給管内の融液を融点以上に保温する保温手段を備えたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の単結晶育成装置。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の基板として用いられるシリコン単結晶の製法としては、CZ法が一般的である。このCZ法においては、石英ルツボ内でシリコン原料を溶融し、その融液に種結晶を着液させた後、引上げることで単結晶を育成することができる。この製法は、原料供給の点から大きく2つに分けることができる。
【0003】
ひとつはバッチ法であり、この方法では単結晶育成中に原料を供給しない。単結晶を引上げた後はそのまま終了することも可能だが、ルツボは割れて再使用ができないため、ルツボコストの点から、再度ルツボ内に原料をリチャージして単結晶を育成する。そのリチャージ方法としては、特許文献1に開示されているチャンバー上部から原料を供給する方法や、特許文献2,3に開示されている円錐バルブを備えたリチャージ管により供給する方法がある。しかしバッチ法では、半導体にとって重要な品質である抵抗率を制御するためのドーパントが、偏析現象により引き上げ後半に行くほど高濃度になり、抵抗率の均一性という点では問題がある。しかし、後述する連続法における単結晶の有転位化やエネルギー等の問題に比較すれば、優位性が高く現行の主流である。
【0004】
もうひとつは連続法であり、育成された単結晶に相当する原料の融液を連続的または間欠的に追加する方法である。この方法であれば、抵抗率の軸方向不均一が解消可能である。特許文献4,5では、主ルツボ上部に原料溶融部を設け、ここから融液を供給する方法を取っている。この構成においては上部から融液を供給するため、所望の量を供給するための機構が必須となりコストアップの要因となる。更には投入された融液によって発生するルツボ内の融液面振動により単結晶が有転位化してしまうという問題点がある。
【0005】
この有転位化の問題を解決するため、特許文献6,7には、二重ルツボの外側に原料を投入する方法が開示されている。このような二重ルツボであれば、融液の供給ではなく、未溶融原料をそのまま入れることも可能である。しかし、実際にはこのような複雑な形状のルツボでも、単結晶の有転位化を完全に防止することが困難である上、ルツボコストが高額である。
【0006】
有転位化防止の方法としては、特許文献8に、二重ルツボの他にルツボをもう一つ設け、それをルツボ側部で連結する方法が開示されている。この方法であれば、有転位化の防止が可能と思われる。しかし、このようにルツボ同士を繋いだ場合、結晶育成の際のルツボ回転ができず、融液の対流制御や単結晶の酸素濃度制御が困難になるという問題点がある。ルツボの製作コストもかなりかかるものと容易に推定される。
【0007】
ルツボコストや供給される融液による単結晶の有転位化を抑制する方法としては、特許文献9に開示されている方法が有効と考えられる。この特許文献9においては、二つ以上のルツボを用意し、ルツボに収容された融液同士をルツボに触れない管により繋ぐことで、融液を供給可能としている。このような管で繋げば、管で繋がれたルツボ同士の融液面の高さは基本的に同じ高さに保たれるので、大掛かりな供給制御装置が不要であり、しかも原料溶液の供給による有転位化の心配が無い。
【0008】
しかしながら、以上述べてきた連続法は現行の単結晶の製造には全く用いられていない。それは上述してきたような問題点をある程度解決できると思われる特許文献9の方法においても、複数のルツボを用いることでエネルギーが増大するという問題が生じるためである。このような問題に対する対応はなされておらず、近年の省エネルギー化の方向性の中では受け入れられるものではなく、実際には実現化されていない。
また、この特許文献9には、1つのルツボから複数の引上げ機に溶融液を供給する方法も記載されており、この方法を用いれば省エネルギー化が可能とも思われる。しかし、実際には複雑な制御技術が必要であるし、また直径200mm以上の単結晶の育成で主流であるMCZ法では、引上げ機の横に磁石があるので複数の引上げ機を隣接させることが難しく、離して設置すれば供給管を保温するためのエネルギーが必要となってしまうので現実的ではない。
【0009】
さらには、最近のシリコン単結晶の高品質化に伴い、無欠陥単結晶が要求されることが多い。この無欠陥単結晶の育成のためには、単結晶を取り囲むように取り付けられる遮熱部材と融液面との距離の制御が重要である。この距離制御のために、融液面の高さを制御する必要がある。しかし、ルツボの上方から原料を供給する方法ではもちろんのこと、ルツボを管で繋ぐ方法においても、融液面の高さを正確に制御するのが難しい。従って、連続法において現在主流の無欠陥単結晶を得ることが難しいという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、軸方向の抵抗率分布が均一なシリコン単結晶をエネルギー効率良く育成することができる単結晶育成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を育成するための単結晶育成装置であって、
該単結晶育成装置は、前記シリコン単結晶を育成するための結晶育成チャンバー、該結晶育成チャンバーに融液を供給するための原料供給チャンバー、及び前記結晶育成チャンバーと前記原料供給チャンバーを接続する融液供給管を具備し、
前記結晶育成チャンバーは、前記融液を収容する石英ルツボ及び前記融液を加熱保温するヒーターを格納するメインチャンバーと、前記育成されたシリコン単結晶を収納する引上げチャンバーとを有し、
前記原料供給チャンバーは、原料を溶融するための原料供給ルツボと、前記原料を加熱溶融するヒーターと、前記原料供給ルツボに前記原料を供給する原料供給機構とを備え、
前記融液供給管は、前記原料供給チャンバー内の原料供給ルツボから、前記結晶育成チャンバー内の石英ルツボに前記融液を供給するように接続されたもので、
前記結晶育成チャンバー内の石英ルツボの外径が、前記育成するシリコン単結晶の直径の2〜5倍で、かつ、前記石英ルツボのアスペクト比(外径/高さ)が2〜10であることを特徴とする単結晶育成装置を提供する。
【0013】
このように、結晶育成チャンバーとは別に原料供給チャンバーを具備し、これらを融液供給管で接続して融液を供給するものであれば、シリコン単結晶の軸方向の抵抗率分布を均一にすることができるとともに、上記の外径及びアスペクト比を有する石英ルツボを用いることが可能で、これにより石英ルツボ内に蓄えておくべき融液量を減らすことができる。また、断熱部材等を、熱ロスが効率的に抑制できるように配置することも可能である。従って、シリコン単結晶の育成においてエネルギー効率と生産性を向上できる単結晶育成装置となる。
【0014】
このとき、前記原料供給ルツボの外径は、前記石英ルツボの外径の1/5〜1/1.5倍であることが好ましい。
このような原料供給ルツボの外径であれば、省エネルギー効果が大きく、さらに、融液の供給の効率が良い装置となる。
【0015】
このとき、前記結晶育成チャンバーは、前記石英ルツボの上方で、かつ前記石英ルツボの上端部を覆う断熱部材を備えたものであることが好ましい。
本発明であれば、このように石英ルツボ上方に断熱部材を備えていても、石英ルツボの上下動の邪魔にならず、熱ロスのより小さい装置となる。
【0016】
このとき、前記結晶育成チャンバー及び前記原料供給チャンバーの少なくとも一方は、融液面の高さを制御するためのルツボ昇降機構を備えたものであることが好ましい。
このようなルツボ昇降機構を備えたものであれば、育成条件等の制御が容易であり、所望の品質のシリコン単結晶を育成することができる装置となる。
【0017】
このとき、前記結晶育成チャンバー及び前記原料供給チャンバーの少なくとも一方は、前記融液面の高さを算出もしくは検出する検出機構を備え、該検出機構により算出もしくは検出された前記融液面の高さを基に、前記融液面の高さを前記ルツボ昇降機構によって所望の高さに制御するものであることが好ましい。
このような検出機構で融液面の高さを検出して融液面の高さを制御しながらシリコン単結晶を育成することで、確実に所望の品質のシリコン単結晶を育成することができる装置となる。
【0018】
このとき、前記融液供給管は、石英製であることが好ましい。
このような石英製であれば、融液が汚染されることもなく、より高品質のシリコン単結晶を生産性良く育成できる装置となる。
【0019】
このとき、前記融液供給管は、該融液供給管内の融液を融点以上に保温する保温手段を備えたものであることが好ましい。
これにより、融液供給管内の融液が凝固することを防止でき、より効率的な装置となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、シリコン単結晶の育成においてエネルギー効率と生産性を向上することができる装置となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に、本発明の単結晶育成装置の一例の概略図を示す。
【0023】
図1の単結晶育成装置10は、チョクラルスキー法(磁場印加チョクラルスキー法を含む)によりシリコン単結晶15を育成するための単結晶育成装置10であり、シリコン単結晶15を育成するための結晶育成チャンバー30、該結晶育成チャンバー30に融液33を供給するための原料供給チャンバー17、及び結晶育成チャンバー30と原料供給チャンバー17を接続する融液供給管13を具備する。
【0024】
結晶育成チャンバー30は、融液27を収容する石英ルツボ24及び融液27を加熱保温するヒーター29を格納するメインチャンバー11と、育成されたシリコン単結晶15を収納する引上げチャンバー12とを有する。原料供給チャンバー17は、原料を溶融するための原料供給ルツボ22と、原料を加熱溶融するヒーター32と、原料供給ルツボ22に原料を供給する原料供給機構14とを備える。融液供給管13は、原料供給チャンバー17内の原料供給ルツボ22から、結晶育成チャンバー30内の石英ルツボ24に融液33を供給するように接続されたものである。
【0025】
そして、本発明の単結晶育成装置10は、結晶育成チャンバー30内の石英ルツボ24の外径が、育成するシリコン単結晶15の直径の2〜5倍で、かつ、石英ルツボ24のアスペクト比(外径/高さ)が2〜10である。
【0026】
このような原料供給チャンバー17により融液を供給する単結晶育成装置10では、育成するシリコン単結晶15の軸方向の抵抗率分布を一般のバッチ式に比べて均一にできるが、一つのシリコン単結晶15を育成するために、2つのチャンバー17,30を使用することになり加熱手段も複数になるので、エネルギー的には増大してしまう方向である。そこで、結晶育成チャンバー30内に装備される石英ルツボ24の外径が、育成するシリコン単結晶15の直径の2〜5倍で、かつ、石英ルツボ24のアスペクト比(外径/高さ)が2〜10であるものとする。
【0027】
図2に示すような広く普及しているバッチ式の単結晶育成装置100の場合、途中で原料を追加できないので、初めからある程度の量の融液を石英ルツボ110内に蓄えておく必要があり、石英ルツボ110のアスペクト比は1.5程度以下となる。
このような石英ルツボ110を用いて、多結晶または単結晶の塊を数cm程度のサイズに砕いた原料を溶融する際には、石英ルツボ110内に投入された原料の高さは、それが溶けて融液になった時の高さに比較するとかなり高い。従って、原料を溶融する際には、育成中のシリコン単結晶への輻射熱を遮る目的で装備されている遮熱部材などの上部の部品と原料とが接触しないように、石英ルツボ110を下げる必要がある。このため石英ルツボ110の下方に設置される下部断熱部材は、石英ルツボ110から、ある程度距離を離しておく必要がある。
【0028】
さらにシリコン単結晶の育成中には、結晶化した分、融液は減少するが、そのままでは融液面と遮熱部材との距離が離れてしまい、単結晶の品質が変化してしまう。それを防ぐために、融液面の高さをほぼ一定に保つようにルツボ昇降機構により石英ルツボ110を上昇させていく。ここで、「ほぼ一定」と記載したのは、近年のシリコン単結晶の高品質化に伴い、無欠陥シリコン単結晶の要求が盛んになっているが、無欠陥シリコン単結晶の欠陥品質を制御するために、遮熱部材と融液面との距離を制御する方法が用いられており、融液面の高さは完全に一定ではなく、数mm程度から数cm程度変化させることがあるためである。
【0029】
このように融液面の位置をほぼ一定に保つために石英ルツボ110を上昇させていくと、石英ルツボ110の上端はどんどん上方へ移動し、冷えた空間へと突き出していくため、そこからの熱ロスが大きくなってしまう。また、石英ルツボ110が上昇して行くため、干渉を避けるために上部断熱部材もしくは遮熱部材を石英ルツボ110の外壁の上端部の上に配置することができず、隙間が生じる。この隙間も熱ロスの原因となっている。
【0030】
しかし本発明においては、融液33を随時供給できるので、石英ルツボ24内に大量の融液27を蓄えておく必要が無い。また、石英ルツボ24には、上記のように融液33が供給されるので、例えば数cm程度の移動範囲があれば充分であり、石英ルツボ24の上下の空間も小さくとることができる。従って、バッチ方式の装置に比較してアスペクト比の大きい、相対的に高さが低い石英ルツボ24を用いることが可能である。アスペクト比の大きい石英ルツボ24を用いることで、蓄えておくべき融液量を減らすことが可能であり、熱ロスの低減を図ることができる。
【0031】
このため、石英ルツボ24のアスペクト比を大きくして、バッチ法の装置の場合の1.5程度よりは充分に大きい2以上とすることで、省エネルギーの効果を発揮できる。アスペクト比を大きくするほど石英ルツボ24内での融液27の深さが浅くなり、省エネルギー効果が得られるが、あまりに大きいと融液27の深さが浅くなりすぎて、石英ルツボ24から溶解して出てくる酸素原子がシリコン単結晶15に取り込まれやすくなり、シリコン単結晶15中の酸素濃度制御の面で難しくなるので、アスペクト比は10以下とする。
また、石英ルツボ24の外径については、育成するシリコン単結晶15の直径に比較して大きくなり過ぎると、加熱すべき領域が増加してしまうので、石英ルツボ24の外径はシリコン単結晶15の直径の5倍以下とする。一方で、シリコン単結晶15の直径と同じでは融液供給管13を設置するスペースも取れず、また、シリコン単結晶15が有転位化しやすくなって育成が難しくなるので、シリコン単結晶15の直径の2倍以上は必要である。
【0032】
ここで、本発明の単結晶製造装置10の結晶育成チャンバー30は、石英ルツボ24の外側を覆う黒鉛ルツボ25と、石英ルツボ24及び黒鉛ルツボ25を支持するルツボ支持軸26と、石英ルツボ24及び黒鉛ルツボ25の周囲に配置されたヒーター29と、ヒーター29の外側周囲の側部断熱部材23と、石英ルツボ24及び黒鉛ルツボ25の下方に配置された下部断熱部材28と、ワイヤー20で種結晶21を引き上げることでその先端に育成されていくシリコン単結晶15を囲繞するガス整流筒18とを備えて構成されている。また、ヒーター29や融液27からの熱の輻射を遮断するための遮熱部材19も設けることができる。
【0033】
さらに、製造条件に合わせて、メインチャンバー11の外側に磁場発生装置(図示せず)を設置し、融液27に水平方向あるいは垂直方向の磁場を印加することによって、融液27の対流を抑制し、シリコン単結晶15の安定成長を図る、いわゆるMCZ法の装置とすることもできる。
【0034】
この結晶育成チャンバー30は、石英ルツボ24の上方で、かつ石英ルツボ24の上端部を覆う断熱部材(上部断熱部材16)を備えたものであることが好ましい。
例えば、石英ルツボ24の外壁より内側まで張り出させた上部断熱部材16を配置することで、石英ルツボ24の上部からメインチャンバー11の上方への熱ロスの低減を図ることができ、さらなる省エネルギー化を達成できる。または、遮熱部材19を大型のものとすれば、遮熱部材19により石英ルツボ24の上端部を覆うこともできる。
【0035】
図2に示すようなバッチ法の装置100の場合は、シリコン単結晶成長による融液の減少に伴い石英ルツボ110を大きく上昇させる必要があるため、石英ルツボ110の壁の上方には、
図2に示すような上昇するための空間を設けておく必要がある。石英ルツボ110の移動量は、初期の融液の深さに依存するもので一概には言えないが、通常数十cmにも及ぶ。このため少なくとも数十cm以上の空間を空けておく必要があり、この空間や、さらにはメインチャンバー120上方への熱ロスが生じてしまう。
しかし、本発明においては、融液33を随時供給できるため石英ルツボ24が上昇するための空間がほとんど不要なので、石英ルツボ24の外壁の上端近傍に断熱構造(例えば、上部断熱部材16や、大型の遮熱部材19)を設けることが可能であり、これによる省エネルギー効果が非常に大きい。
【0036】
原料供給チャンバー17は、原料供給ルツボ22内の原料、融液を加熱するためのヒーター32と、原料供給チャンバー17内で、それらを覆うように配置された断熱部材31とを有する。
結晶育成チャンバー30では、育成されるシリコン単結晶15によって石英ルツボ24内の融液27が減少していくが、それに相当する量の固形原料を原料供給チャンバー17内の原料供給ルツボ22に、原料供給機構14を通じて供給することができる。これにより、融液供給管13で繋がれたそれぞれのルツボ22,24内の融液面の高さは、基本的に同じになる。従って特殊な機構を設けることなく、原料供給チャンバー17側の原料供給ルツボ22から結晶育成チャンバー30側の石英ルツボ24へ融液33を供給することが可能である。
【0037】
この原料供給ルツボ22の外径は、石英ルツボ24の外径の1/5〜1/1.5倍であることが好ましい。
原料供給ルツボ22の外径が小さければ小さいほど熱ロスが少なくなり、石英ルツボ24の外径の1/1.5倍以下の大きさであれば、省エネルギー効果を確実に得られる。一方、1/5倍以上の大きさであれば、容量が十分であり、シリコン単結晶15の育成によって減少する結晶育成チャンバー30の石英ルツボ24内の融液27の補充を効率的に実施できる。
【0038】
また、結晶育成チャンバー30及び原料供給チャンバー17の少なくとも一方は、融液面の高さを制御するためのルツボ昇降機構を備えたものであることが好ましい。
ルツボ昇降機構を設けることで、融液面の位置制御を容易に行うことが可能となるため、近年求められている高品質シリコン単結晶、特に無欠陥シリコン単結晶を効率的に得ることができる。融液供給管13で繋がれた融液27,33の融液面の高さは基本的に同じになるので、どちらか一方のチャンバーにルツボ昇降機構を取り付け、融液面の高さを制御すれば、もう一方の融液面の高さも同じ高さに制御することが可能である。もちろん、両方のチャンバーにルツボ昇降機構を取り付け、高さを同期させるなどして制御しても良い。
【0039】
このとき、結晶育成チャンバー30及び原料供給チャンバー17の少なくとも一方には、融液面の高さを算出もしくは検出する検出機構を設け、この検出機構により算出もしくは検出された融液面の高さを基に、融液面の高さをルツボ昇降機構によって所望の高さに制御するものであることが好ましい。
このように融液面の高さの制御を行うことで、より精度良く所望品質のシリコン単結晶15を育成することができる。融液面の高さは育成されたシリコン単結晶15の重量と投入された原料の重量との差分、石英ルツボ24と原料供給ルツボ22の内径、ルツボ昇降機構で移動させた量などから比較的容易に算出可能である。ただし、結晶育成チャンバー30の炉内圧と原料供給チャンバー17の炉内圧が異なるような場合には、その圧力差分を考慮する必要がある。一方で、石英ルツボ24は高温下で軟化し、わずかだが変形するので、算出法ではなく、融液面の高さを直接検出する方法を用いれば、より正確に制御可能である。融液面の高さの検出方法は、レーザーの反射によって求める方法、融液面に映った反射像の位置や反射像と実像との距離などから求める方法など、各種技術があり、どれを用いても問題ない。
【0040】
融液供給管13は、結晶育成チャンバー30と原料供給チャンバー17を接続するが、両チャンバー内に収容されている石英ルツボ24と原料供給ルツボ22に接触しないように繋ぐことが好ましい。これにより、ルツボの回転や上下動等を邪魔することなく、高品質のシリコン単結晶15を育成することができる。
【0041】
また、融液供給管13は石英製であることが好ましい。
石英はルツボ材質にも使われているように、シリコンと酸素からなる物質であり、酸素を含むCZシリコン単結晶にとっては問題のない材質であるからである。
【0042】
この融液供給管13を通して融液33が供給されるので、融液33を融点以上に保温するために、保温手段を備えたものであることが好ましい。保温手段として、例えば断熱部材等による保温で融点以上に保温できる部分は当該断熱部材等を用い、また、当該断熱部材等で保温できない部分にはヒーター等を用いることが好ましい。
【0043】
このような本発明の単結晶育成装置10を用いて、シリコン単結晶15の引き上げ中に、結晶育成チャンバー30内の石英ルツボ24に収容された融液27に、原料供給チャンバー17内の原料供給ルツボ22に収容された融液33を、連続的または間欠的に供給することができる。この際、原料供給機構14により、多結晶または単結晶の塊を数cm程度のサイズに砕いた原料や粒状の多結晶原料を、原料供給ルツボ22に投入することができる。
【0044】
このような本発明の単結晶育成装置によりシリコン単結晶を育成することで、石英ルツボ内の融液の量をある程度一定に保つことができるため、育成されたシリコン単結晶の軸方向の抵抗率分布を均一にでき、さらに、シリコン単結晶の育成に必要な電力を抑制することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に示すような本発明の単結晶育成装置10を用いてシリコン単結晶を育成した。当該装置10には、石英ルツボ24の外壁より内側まで張り出した上部断熱部材16を設け、さらに、下部断熱部材28とルツボ底との距離を縮め、上方と下方への熱ロスの低減を図った。
【0046】
石英ルツボ24は、外径が約610mm、全高が約175mmである24インチ石英ルツボを用いた。従って、アスペクト比が約3.5である。また、結晶育成チャンバー30側にルツボ昇降機構を設け、石英ルツボ24を最大5cmの上下動を可能とし、これにより融液面の高さを制御可能とした。このルツボ昇降機構は融液面の高さの制御が主目的であるが、最後の単結晶引き上げで原料供給チャンバー17からの融液供給を停止し、融液27が減ってきた際には、バッチ法と同様に石英ルツボ24の押し上げに用いた。これにより無駄になる融液を減らすことが可能である。
【0047】
一方で、原料供給チャンバー17には、外径が約305mmである12インチ石英ルツボを原料供給ルツボ22として用いた。このため、原料供給ルツボ22の外径は、結晶育成用の石英ルツボ24の外径の1/2倍であった。また、この原料供給ルツボ22内へ原料を供給可能なフィーダー式の原料供給機構14を設けた。これを用いて、育成中には、単結晶育成により減少した融液を補う分の粒状の多結晶原料を断続的に投入した。そして、結晶育成チャンバー30側の石英ルツボ24内の融液27と原料供給チャンバー17側の原料供給ルツボ22内の融液33とを、両ルツボに接触しないように石英製融液供給管13で繋いだ。このとき、石英製融液供給管13は、結晶育成チャンバー30と原料供給チャンバー17の間はヒーターで保温し、それ以外の領域は断熱材で保温した。
結晶育成チャンバー30側の石英ルツボ24には50kg、原料供給チャンバー17側の原料供給ルツボ22には10kgの原料融液が満たされた状態で、単結晶の育成を開始した。この際、直径が概略200mm、重量120kgの8インチ単結晶を育成した。従って、石英ルツボ24の外径は、単結晶の直径の約3倍である。
【0048】
以上のように、単結晶を育成した際の単結晶成長中の必要電力は、下記の比較例におけるバッチ法の場合の電力を基準に、結晶育成チャンバー30側が約53%、原料供給チャンバー17と融液供給管13の保温で約14%であった。両者を足し合わせても約67%と、バッチ法の装置の場合の約2/3で済む結果であり、省電力が達成された。
また、単結晶の品質においても、融液面の高さを、育成した単結晶の重量と投入した原料の重量から計算により求めて所望の値に制御したので、無欠陥の単結晶を得ることができた。さらに、抵抗調整用のボロンを含んだ原料を混ぜながら育成したことにより、軸方向の抵抗率を、狙い値の±8%以内に制御することができた。
【0049】
(比較例)
図2に示したバッチ法の単結晶育成装置100を用いて、直径が概略200mmである8インチ単結晶を育成した。このとき、石英ルツボ110としては、外径が約610mmで、全高が約420mmである、アスペクト比が約1.45の24インチ石英ルツボを用いて単結晶を育成した。この石英ルツボ110内に150kgの原料を投入して溶融した後、重量が約120kgである単結晶を育成した。
石英ルツボ110の外壁の上端部は、移動できる空間を設ける必要があるため、遮熱部材と上部断熱部材との間に隙間を設けた。この点と、下部断熱部材がルツボ底面から離れている点とから、単結晶の直胴育成中の電力は実施例よりも約1.5倍高くなってしまった。また、育成した単結晶の軸方向の抵抗率は、トップ側の抵抗率に対してボトム側の抵抗率が73%まで低下してしまった。トップとボトムの平均値を中心値として表すと、中心値±15.6%となり、実施例の倍近くまで抵抗率分布が広がってしまった。
【0050】
以上では、24インチ(外径610mm)石英ルツボを用いたが、本発明は上述の範囲に限定されるものではない。本発明は、今後開発されていく直径450mmのような大型単結晶用の装置に最適である。大型の装置では、育成する単結晶のサイズに合わせて横方向に大きくなるのは必須だが、それにあわせて縦方向も大きくなってしまう。その場合、上下からの熱ロスは莫大なものとなり、製造コストを押し上げるだけでなく、環境へも悪影響を与えかねない。従って、本発明を適用することが好ましい。
【0051】
また、実施例では比較例に比べて2/3程度の電力であったが、ルツボのサイズの比などを最適化することで、さらなる省電力化も可能である。特に大型の装置においては、融液供給管と育成中の単結晶との距離を充分確保できるので設計の自由度が増加する。両ルツボのサイズを最適化することで、大型の装置ではより大きな省電力を図ることが可能である。
また、実施例では軸方向の抵抗率分布が±8%であったが、原料とドーパントの投入方法等を改善することにより、さらに狭い範囲におさめることも可能である。偏析係数がボロンより小さいリンをドープするN型においては、より本発明の効果を発揮することが可能である。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
10…単結晶育成装置、 11…メインチャンバー、 12…引上げチャンバー、
13…融液供給管、 14…原料供給機構、 15…シリコン単結晶、
16…上部断熱部材、 17…原料供給チャンバー、 18…ガス整流筒、
19…遮熱部材、 20…ワイヤー、 21…種結晶、 22…原料供給ルツボ、
23…側部断熱部材、 24…石英ルツボ、 25…黒鉛ルツボ、
26…ルツボ支持軸、 27、33…融液、 28…下部断熱部材、
29、32…ヒーター、 30…結晶育成チャンバー、 31…断熱部材。