(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780230
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ガリウムの回収方法
(51)【国際特許分類】
C25C 1/22 20060101AFI20150827BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20150827BHJP
C22B 58/00 20060101ALN20150827BHJP
C22B 7/00 20060101ALN20150827BHJP
C22B 3/44 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
C25C1/22
C25C1/12
!C22B58/00
!C22B7/00 G
!C22B3/44 101A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-257495(P2012-257495)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-105345(P2014-105345A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 聡
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−192875(JP,A)
【文献】
特開平06−192876(JP,A)
【文献】
特開平06−192877(JP,A)
【文献】
特開平06−192878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00〜 7/08
C22B 3/00〜 3/46
C22B 58/00
JSTplus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅とガリウムを含む合金材料を陽極とし、酸性の電解液中で電気分解を行うことにより、該電解液中に銅とガリウムを溶解させ、該電解液中に溶解した銅を陰極に析出させて分離除去し、ガリウム水溶液を得るガリウムの回収方法。
【請求項2】
上記酸性の電解液のpHは1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のガリウムの回収方法。
【請求項3】
上記銅とガリウムを含む合金材料は、使用済みターゲット材であることを特徴とする請求項2に記載のガリウムの回収方法。
【請求項4】
上記ガリウム水溶液を電解液として、金属ガリウムを電解採取することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガリウムの回収方法。
【請求項5】
得られた上記ガリウム水溶液に水酸化アルカリを添加し、水酸化ガリウムの沈殿物を生成させる第1の精製工程と、
上記水酸化ガリウムの沈殿物をアルカリ水溶液に再溶解させてガリウム水溶液を得る第2の精製工程と
を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガリウムの回収方法。
【請求項6】
上記第1の精製工程では、上記水酸化アルカリの添加によりpHを2.0以上4.0以下に調整することを特徴とする請求項5に記載のガリウムの回収方法。
【請求項7】
上記第2の精製工程では、上記アルカリ水溶液のpHを10.5以上13.5以下とすることを特徴とする請求項5又は6に記載のガリウムの回収方法。
【請求項8】
上記第2のガリウム精製工程にて得られたガリウム水溶液を電解液として、金属ガリウムを電解採取することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載のガリウムの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリウムの回収方法に関し、より詳しくは、例えば銅とガリウムとを含む使用済みターゲット材等の銅とガリウムの合金材料から、ガリウムのみを効率的に回収することができるガリウムの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガリウムは、様々な用途において使用されており、例えば近年ではCIGS太陽電池の原料として使用されている。また、発光ダイオードや半導体レーザー等の電子デバイスには、ガリウムとヒ素、リン、窒素等の化合物が用いられている。
【0003】
このように、ガリウムは太陽電池や電子機器を製造するための必須の構成要素となっている。特に、太陽電池においては、シリコン系太陽電池より薄い薄膜での製造が可能となる等の資源の節約において有利であることや、温度上昇による出力低下が低い等の特性メリットが多くあることから、大きな需要増加が見込まれており、ガリウムの重要度がますます高くなっている。
【0004】
ところで、上述のように重要度が高くなってきているガリウムは、その価格が高い。そのため、より有効に利用される必要があるものの、例えばCIGS太陽電池の原料となるターゲット材料においては、その製造工程で3割程度しか使用されず、7割が未利用のまま使用済みのターゲット材料となっているのが現状である。このことから、使用済みのターゲット材料からガリウムを回収する方法を確立することは、資源節約の観点から大いに重要である。
【0005】
具体的に、CIGS太陽電池用ターゲット材料は、銅とガリウムの合金が使用されており、使用済みのターゲット材料も同様に銅とガリウムの合金である。このような金属原料から必要な金属を回収するためには、その金属原料を酸やアルカリ等の薬液に溶解させた後、回収したい金属を選択的に回収する湿式法が知られている。
【0006】
ガリウムは、酸やアルカリに溶解する性質を持つ。使用済みのターゲット材料のような銅とガリウムの合金においても、含有されるガリウムは酸やアルカリに溶解するが、その溶解速度は極めて遅く、粉砕して反応効率を良くするといったことや反応温度を高めて反応速度を上げる等の処理を施しても、短時間には溶解しない。
【0007】
また、酸化力の強い硝酸等を用いた場合では、ガリウムと合金を構成する銅も溶解するため、その後にアルカリ等を用いて銅を水酸化物として除去する必要がある。しかしながら、一般的に、水酸化物の沈殿はろ過性が悪いため、凝集剤を添加する等のろ過性を向上させるための付加的な処理が必要となる。
【0008】
ここで、不純物を含むガリウム原料からガリウムを回収する方法としては、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1では、インジウムを含むガリウム原料に多量の水酸化アルカリ剤を固形で添加し、200℃以上で熱処理した後に水を加えて選択的に液中にガリウムを溶出させ、沈殿した不純物を固液分離した後にガリウム電解採取の原料液とする方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献2では、金を含む融液状のガリウム原料にマグネシウムやアルミニウムを添加して、加水攪拌後、金を含むマグネシウム又はアルミニウムの水酸化物を固液分離して精製ガリウムを得る方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、例えばターゲット材料等の銅とガリウムの合金からガリウムを回収するための処理については、これまでに提案された例がない。このような状況から、銅とガリウムの合金から簡便にガリウムを回収する方法を確立することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−63044号公報
【特許文献2】特許第3784331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、例えば使用済みターゲット材等の銅とガリウムの合金材料から、簡便にガリウムを回収することができるガリウムの回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、銅とガリウムの合金材料を陽極として用いて電気分解することにより、銅のみを陰極に析出分離させて、ガリウムが溶解した電解液であるガリウム水溶液を効率的に得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明に係るガリウムの回収方法は、銅とガリウムを含む合金材料を陽極とし、酸性の電解液中で電気分解を行うことにより、該電解液中に銅とガリウムを溶解させ、該電解液中に溶解した銅を陰極に析出させて分離除去し、ガリウム水溶液を得る。
【0015】
ここで、酸性の電解液のpHは1.0以下であることが好ましい。
【0016】
また、銅とガリウムを含む合金材料としては、使用済みターゲット材を用いることができる。
【0017】
また、ガリウム水溶液を電解液として、金属ガリウムを電解採取することができる。
【0018】
また、本発明に係るガリウム回収方法においては、得られた上記ガリウム水溶液に水酸化アルカリを添加し、水酸化ガリウムの沈殿物を生成させる第1の精製工程と、上記水酸化ガリウムの沈殿物をアルカリ水溶液に再溶解させてガリウム水溶液を得る第2の精製工程とをさらに有することが好ましい。
【0019】
上記第1の精製工程では、上記水酸化アルカリの添加によりpHを2.0以上4.0以下に調整することが好ましい。
【0020】
また、上記第2の精製工程では、上記アルカリ水溶液のpHを10.5以上13.5以下とすることが好ましい。
【0021】
そして、上記第2のガリウム精製工程にて得られたガリウム水溶液を電解液として、金属ガリウムを電解採取することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば使用済みのターゲット材等の銅とガリウムの合金材料から、簡便にガリウムを回収することができ、高価なガリウムを有効に活用させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るガリウムの回収方法の具体的な実施形態(以下、本実施の形態という。)について、以下の順で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り適宜変更することができる。
1.ガリウムの回収方法
1−1.ガリウム水溶液(ガリウム含有溶液)の生成
1−2.金属ガリウムの回収
2.精製処理
2−1.第1の精製工程(水酸化ガリウム生成工程)
2−2.第2の精製工程(水酸化ガリウム再溶解工程)
【0024】
<1.ガリウムの回収方法>
本実施の形態に係るガリウムの回収方法は、銅とガリウムの合金材料からガリウムを簡便に回収することを可能にする方法である。
【0025】
具体的に、本実施の形態に係るガリウムの回収方法は、銅とガリウムの合金材料を陽極とし、酸性の電解液中で電気分解(以下、電解ともいう。)を行う。この電解により、その陽極から電解液中に銅とガリウムを溶解させ、溶解した銅のみを陰極に析出させて分離除去し、ガリウムが溶解した電解液であるガリウム水溶液(ガリウム含有溶液)を得る。これにより、合金材料から銅が除去されてガリウムのみが回収可能な状態となる。
【0026】
ここで、銅とガリウムの合金材料としては、例えば、CIGS太陽電池の製造に用いられる銅とガリウムとから構成されるターゲット材やその使用済み廃材(スクラップ品)、又はその製造に際して発生した端材(生産端材)、切削屑等が挙げられる。このような銅とガリウムを含む使用済みターゲット材を用い、本実施の形態に係るガリウムの回収方法によりガリウムを回収することによって、高価なガリウムを有効活用することができる。
【0027】
このようなガリウムの回収方法によれば、銅とガリウムとの合金材料を陽極とした電解処理という簡便な方法により、その合金材料からガリウムのみを効率的に回収することができる。また、詳しくは後述するように、電解して得られたガリウム水溶液に基づいて、ガリウムを精製する処理を行うことによって、より純度の高いガリウムを効率的に回収することができる。以下、より具体的に説明する。
【0028】
<1−1.ガリウム水溶液(ガリウム含有溶液)の生成>
本実施の形態に係るガリウムの回収方法では、使用済みターゲット材等の銅とガリウムの合金材料を陽極とした電気分解を行う。この電気分解により、合金材料中の銅とガリウムが電解液中に溶解するとともに、溶解した銅のみが陰極に析出するようになる。
【0029】
この電気分解においては、上述したように、銅とガリウムの合金材料を陽極として用いる。より具体的には、例えば導電性を有する金属(例えばチタン等)で形成された網状の籠に使用済みターゲット材等の銅とガリウムの合金材料を入れ、これを陽極とする。
【0030】
また、陰極としては、この電気分解において電解液中に溶解した銅を析出させることができる金属であれば特に限定されない。例えば、チタン、ステンレス等で形成された金属板を用いることができる。
【0031】
本実施の形態においては、このような陽極と陰極を、導電性を有する電解液に漬け込んで電圧を印加することによって電解分解を行う。すると、電圧を印加した状態では、陽極を構成する合金材料からガリウムと銅が電解液中に溶解していき、陰極では溶解した金属のうち貴な金属である銅の析出と水素の発生が起こり、一方で水素より電位的に卑な金属であるガリウムは電解液中にイオンとして残るようになる。これにより、電解液中に溶解した銅のみを分離除去することができ、ガリウムがイオンとして残留する電解液、すなわちガリウム含有溶液(ガリウム水溶液)を得ることができる。
【0032】
ここで、この電解分解では、電解液として、酸性の電解液を用いる。具体的には、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の導電性を有する酸性の電解液を用いる。アルカリ性の電解液を用いた場合では、水素過電圧の増加に伴い、溶解したガリウムが水素より析出し易くなり、銅との分離性が悪くなるとともにガリウムの回収効率も低下する。このことから、水素過電圧が小さくなる酸性溶液を電解液として用いる。また、この酸性の電解液のpHとしては、特に限定されないが、溶解したガリウムが水酸化物として沈殿することを防止する観点から、概ね1.0以下に保持することが好ましい。これにより、ガリウムを確実にイオンとして電解液中に残留させることができ、回収効率をより一層に高めることができる。
【0033】
電解装置としては、上述した陽極と陰極とを用いて電解処理できるものであれば特に限定されず、一般的に使用されるものを用いることができる。また、電解条件として、電流密度は、使用する合金材料や銅の電析効率、生産効率等の観点から適宜調整することができる。電解温度についても、特に限定されず、電流効率等の観点から適宜調整することができ、例えば常温〜60℃程度の範囲とすることができる。
【0034】
以上のように、銅とガリウムを含む合金材料を陽極として電気分解することにより、ガリウムと銅とを分離させることができ、ガリウムを含む水溶液(ガリウム水溶液)が得られ、ガリウムを効率的に回収することが可能となる。
【0035】
<1−2.金属ガリウムの回収>
上述のようにして得られたガリウム水溶液は、ガリウム含有原料として、そのまま新たなガリウム含有製品の製造に用いてもよいが、そのガリウム水溶液から金属ガリウムを回収することもできる。
【0036】
具体的に、金属ガリウムとして回収する方法としては、上述のように銅を分離除去して得られたガリウム水溶液を電解液(電解元液)として電気分解を行う方法が挙げられる。この電解分解により、陰極にガリウムを析出させて金属ガリウムを回収する。すなわち、金属ガリウムを電解採取する。
【0037】
この電解採取においては、電解液中のガリウム濃度が低い場合、電流効率が悪化する。そのため、工業的に実用的な50%以上の電流効率を得るために、15g/L以上のガリウム濃度とすることが好ましい。
【0038】
なお、金属ガリウムとして回収する方法としては、上述した電解採取に限定されるものではない。
【0039】
<2.精製処理>
上述したように、本実施の形態に係るガリウムの回収方法では、使用済みターゲット材等の銅とガリウムの合金材料を陽極とした電気分解を行う。これにより、その陽極から電解液中に銅とガリウムを溶解させ、電解液中に溶解した銅のみを陰極に析出させて分離除去するとともに、銅を分離除去したガリウムを含む電解液であるガリウム水溶液を得る。
【0040】
このとき、上述したように、得られたガリウム水溶液を電解液として用いて金属ガリウムを電解採取するようにしてもよいが、後述するように、そのガリウム水溶液を用いてガリウムを精製する処理を施してもよい。このように、ガリウムに対する精製処理を施すことによって、より一層に純度の高いガリウムを効率的に回収することが可能となる。
【0041】
具体的に、その精製処理としては、得られたガリウム水溶液に水酸化アルカリを添加して水酸化ガリウムの沈殿物を生成させる第1の精製工程と、水酸化ガリウムの沈殿物をアルカリ水溶液に再溶解させてガリウム水溶液を得る第2の精製工程とを有する方法を用いることができる。以下、より具体的に説明する。
【0042】
<2−1.第1の精製工程(水酸化ガリウム生成工程)>
第1の精製工程では、銅とガリウムの合金材料を陽極として電解することで得られたガリウム水溶液に対して、水酸化アルカリを添加し、水酸化ガリウムの沈殿を生成させる。
【0043】
この第1の精製工程では、電解により得られたガリウム水溶液に水酸化アルカリを添加することによってガリウム水溶液のpH調整を行い、溶液中で水酸化ガリウムの沈殿物を生成させるようにする一方で、溶液中に残留する微量の銅をその溶液中に残す。このことにより、ガリウム水溶液中のガリウムとその溶液中に残留していた銅とを分離させることができ、生成した水酸化ガリウムの沈殿物を固液分離することによって、不純物としての銅を低減させたガリウム化合物を得ることができる。
【0044】
ここで、水酸化アルカリの添加によるpH調整においては、ガリウム水溶液のpHが2.0以上4.0以下となるように調整することが好ましい。pHが2.0未満では、水酸化ガリウムの沈殿物生成が不十分となり、溶液中に残留するガリウム量が増えてガリウムの回収ロスが大きくなる。一方で、pHが4.0を超えると、水酸化ガリウムの他、溶液中に微量に残留していた銅の水酸化物沈殿が生成する可能性があり、ガリウムと銅との分離が不十分となって精製効果が低下する。したがって、ガリウム水溶液に対する水酸化アルカリの添加により、その溶液のpHを2.0以上4.0以下に保持して水酸化ガリウムの沈殿物を生成させることが好ましい。
【0045】
また、添加する水酸化アルカリとしては、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。また、その水酸化アルカリの形状についても、適したpHに調整可能なものであれば特に限定されるものではなく、水溶液の他、フレーク状、粉状、粒状等の固形形状のものを用いることができる。
【0046】
pH調整後の固液分離方法としては、生成した水酸化ガリウムの沈殿物を分離回収することができるものであれば特に限定されず、周知の方法によって行うことができる。
【0047】
<2−2.第2の精製工程(水酸化ガリウム再溶解工程)>
次に、第2の精製工程では、第1の精製工程で分離回収して得られた水酸化ガリウムの沈殿物をアルカリ水溶液に添加して再溶解させる。
【0048】
この第2の精製工程では、得られた水酸化ガリウムの沈殿物をアルカリ水溶液にpH調整を行いながら再溶解させ、その水酸化ガリウムに微量付着した濾液(第1の精製工程における濾液)に含まれる銅を水酸化物沈殿とする。そして、生成した銅の水酸化物沈殿を固液分離することによって、より純度の高いガリウム水溶液を得る。
【0049】
ここで、水酸化ガリウムを再溶解させるに際しては、そのアルカリ水溶液のpHを10.5以上13.5以下に調整しながら行うことが好ましい。pHが10.5未満であると、水酸化ガリウムが完全に溶解せずにガリウムの回収ロスとなる可能性がある。一方で、pHが13.5を超えると、水酸化ガリウムに微量付着した第1の精製工程における濾液に含まれる銅も溶解する可能性があり、水酸化ガリウムを再溶解させた溶液中に銅が含まれると、後述するガリウムの電解採取時にガリウムよりも銅が優先的に析出して金属ガリウム中の銅の不純物が多くなる。したがって、再溶解時においては、アルカリ水溶液のpHを10.5以上13.5以下の範囲となるように調整しながら行うことが好ましい。
【0050】
また、再溶解させるためのアルカリ水溶液としては、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。
【0051】
このように、銅とガリウムの合金材料を陽極として電気分解して得られたガリウム水溶液に対して、上述した精製処理を施すことによって、合金材料中に含まれていた銅をより確実にガリウムから分離することができる。これにより、より純度の高いガリウム水溶液を得ることができる。
【0052】
そして、上述と同様に、得られたガリウム水溶液を電解元液として用いて電気分解することにより、その電解元液から金属ガリウムを電解採取することができる。この電解採取では、上述のように精製処理を経て得られたガリウム水溶液を電解液としているので、不純物としての銅が殆ど含まれない、より純度の高い金属ガリウムを得ることができる。
【実施例】
【0053】
<実施例1:ガリウム回収処理の検証>
(ガリウム水溶液生成工程)
銅66%、ガリウム34%を含有する銅とガリウムの合金をチタン製の網状の籠の中に挿入して陽極とし、ステンレス製の板を陰極として用意した。硫酸濃度150g/Lの電解液22Lを容量30Lの箱状の容器に張り込み、用意した陽極と陰極を漬け込んだ。なお、電解液である硫酸水溶液のpHは、1.0以下に保持されるようにした。
【0054】
陽極と陰極に3〜4Vの電圧を印加することによって電気分解を行い、電解液である硫酸溶液中に、陽極から銅とガリウムを溶解させた。この電気分解では、電解液中に溶解した銅が陰極に析出したので、析出した銅を除去し、ガリウムが溶解したガリウム含有溶液(ガリウム水溶液)を得た。
【0055】
なお、電気分解が進行するに従い、銅とガリウムの合金は溶解して減量するため、適宜、新たな銅とガリウムの合金をチタン製の網状の籠の中に挿入した。
【0056】
所定の時間通電後、得られたガリウム水溶液をICP発光分析で分析した結果、ガリウム濃度は51g/L、銅濃度は0.66g/Lであった。
【0057】
(水酸化ガリウム生成工程)
この実施例1では、得られたガリウム水溶液の精製操作を行った。すなわち、得られたガリウム水溶液に水酸化ナトリウムを添加してpHを3.15に調整し、水酸化ガリウムの沈殿物を生成させた。
【0058】
固液分離処理の後、その水酸化ガリウムの沈殿物に対して純水で2回のレパルプ洗浄を行い、乾燥固化した水酸化ガリウムを得た。この水酸化ガリウムをICP発光分析で分析した結果、水酸化ガリウム中の銅濃度は750ppmであった。
【0059】
(水酸化ガリウム再溶解工程)
続いて、得られた水酸化ガリウムを、pHが12.5になるように調整しながら水酸化ナトリウム水溶液中に投入して溶解させた。つまり、水酸化ガリウムの沈殿物を再溶解させた。
【0060】
水酸化ガリウムを溶解させた後、溶液中に残留した沈殿物を固液分離して除去した後のガリウム溶解液(ガリウム水溶液)をICP発光分析で分析した結果、銅濃度は1mg/L未満となった。
【0061】
(電解採取工程)
次に、得られたガリウム溶解液22Lを容量30Lの箱状の容器に張り込み、酸素発生DSE(ペルメレック電極株式会社製)を陽極とし、ステンレス板を陰極として、3〜5Vの電圧を印加して金属ガリウムを陰極に析出させて回収した。
【0062】
電解採取して得られた金属ガリウムをGD−MS(グロー放電質量分析装置)で分析した結果、不純物としては、銅が1.9ppm、亜鉛が10ppmであり、その他の元素はすべて1ppm未満であった。
【0063】
このように、銅とガリウムの合金材料から、銅を効率的に分離して簡便にガリウムを回収できることが分かった。
【0064】
<水酸化ガリウム生成工程におけるpH値の検討>
次に、水酸化ガリウム生成工程におけるpH調整について検討した。
【0065】
具体的には、上記実施例1の水酸化ガリウム生成工程において、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを4.38に調整しながら水酸化ガリウムの沈殿を得た。
【0066】
固液分離後に、得られた水酸化ガリウムの沈殿物に対して純水で2回レパルプ洗浄を行い、乾燥固化した水酸化ガリウムをICP発光分析で分析した。その結果、水酸化ガリウム中の銅濃度は1300ppmであり、実施例1に比べて、水酸化ガリウム中の銅濃度が高くなることが分かった。
【0067】
<水酸化ガリウム再溶解工程におけるpH値の検討>
次に、水酸化ガリウム再溶解工程におけるpH調整について検討した。
【0068】
具体的には、上記実施例1の水酸化ガリウム再溶解工程において、得られた水酸化ガリウムの沈殿物を水酸化ナトリウム水溶液中に投入して溶解させる際、その溶液のpHが13.8になるように調整しながら溶解させた。
【0069】
水酸化ガリウムを溶解させた後、溶液中に残留する沈殿物を固液分離した後のガリウム溶解液をICP発光分析で分析した。その結果、銅濃度は14mg/Lとなり、実施例1に比べて、ガリウム溶解液中の銅濃度が高くなることが分かった。