(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780504
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】電極およびこれを含む電子素子ならびに電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20150827BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150827BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20150827BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20150827BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150827BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20150827BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/26 Z
H01B5/14 B
H01B13/00 503B
H01B13/00 503D
G09F9/30 336
G09F9/00 338
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-540909(P2013-540909)
(86)(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公表番号】特表2014-508373(P2014-508373A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】KR2011010308
(87)【国際公開番号】WO2012091487
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0139283
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ジ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、イン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン グー
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミン チューン
(72)【発明者】
【氏名】ミン、スンジューン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジェヒュン
【審査官】
山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−097845(JP,A)
【文献】
特開平11−144877(JP,A)
【文献】
特開平10−221702(JP,A)
【文献】
特開2004−119216(JP,A)
【文献】
特開2009−059666(JP,A)
【文献】
特開2009−283304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
H05B 33/26
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性パターンを含む補助電極、および前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を含み、
前記補助電極の前記導電性パターンは、0度よりも大きく25度以下である、底部面または基板に接触する表面と前記補助電極の側面とのなす角度を有し、
前記主電極は、前記補助電極の上部面および側面を全て覆った構造であり、
前記補助電極の材料は銅からなる
電極。
【請求項2】
前記主電極は、透明導電性材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電極を含む電子素子。
【請求項4】
前記電子素子は、タッチパネル、有機発光素子または表示装置であることを特徴とする、請求項3に記載の電子素子。
【請求項5】
1)基材上に導電性パターンを含む補助電極を形成するステップ、および
2)前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を形成するステップ
を含み、
前記補助電極の前記導電性パターンは、0度よりも大きく25度以下である、底部面または基板に接触する表面と前記補助電極の側面とのなす角度を有し、
前記主電極は、前記補助電極の上部面および前記側面を全て覆った構造であり、
前記補助電極の材料は銅からなる
電極の製造方法。
【請求項6】
前記補助電極はフォトリソグラフィ法によって形成され、
前記フォトリソグラフィ法は、
前記基材上に前記補助電極の形成用の導電性層を形成するステップと、
前記導電性層上にフォトレジストをコーティングし、前記フォトレジストをソフトベークするステップと、
選択的な露光および現像によってフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンで覆われていない前記導電性層をエッチングすることにより前記導電性パターンを形成するステップと
を含み、
前記フォトレジストのソフトベーク温度を110℃以下に調節することを特徴とする、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記補助電極は間接印刷法によって形成され、
前記間接印刷法は、
前記基材上に前記補助電極の形成用の導電性層を形成するステップと、
前記導電性層上にフォトレジストパターンを印刷し、前記フォトレジストパターンをソフトベークするステップと、
前記フォトレジストパターンで覆われていない前記導電性層をエッチングすることにより前記導電性パターンを形成するステップと
を含み、
前記フォトレジストパターンのソフトベーク温度を80〜90℃に調節することを特徴とする、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記補助電極はフォトリソグラフィ法または間接印刷法によって形成され、
前記フォトリソグラフィ法は、
前記基材上に前記補助電極の形成用の導電性層を形成するステップと、
前記導電性層上にフォトレジストをコーティングし、前記フォトレジストをソフトベークするステップと、
選択的な露光および現像によってフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンで覆われていない前記導電性層をエッチングすることにより前記導電性パターンを形成するステップと
を含み、
前記間接印刷法は、
前記基材上に前記補助電極の形成用の導電性層を形成するステップと、
前記導電性層上にフォトレジストパターンを印刷し、前記フォトレジストパターンをソフトベークするステップと、
前記フォトレジストパターンで覆われていない前記導電性層をエッチングすることにより前記導電性パターンを形成するステップと
を含み、
前記導電性層のエッチングにはオキソン(Oxxon)系エッチング液を用いることを特徴とする、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記補助電極は、リバースオフセット印刷法またはグラビアオフセット印刷法によって形成されることを特徴とする、請求項5に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年12月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2010−0139283号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
本発明は、電極およびこれを含む電子素子に関する。より具体的には、本発明は、補助電極を含む電極およびこれを含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレイやタッチパネルなどの電子素子において、有効画面部に透明電極が形成されることが求められている。このために電極としてITO、ZnOなどのような材料からなる透明導電膜を用いているが、これらは導電度が低いという問題がある。これを改善するために、導電度向上を目的に透明導電膜電極上に金属パターンからなる補助電極を形成する試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当技術分野では、性能に優れ、且つ、製造方法が容易な電極とこれを含む電子素子および電極の製造方法に関する研究が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、導電性パターンを含む補助電極、および前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を含み、補助電極の導電性パターンは、0度よりも大きく25度以下である、底部面または基板に接触する表面と補助電極の側面とのなす角度を有
し、主電極は、補助電極の上部面および側面を全て覆った構造であり、補助電極の導電性パターンは銅からなる、電極を提供する。
【0005】
本発明において、前記電極上に備えられる要素の許容厚さ偏差がβ%である場合、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角αは、下記数学式1で表されることができる。
[数学式1]
0≦α<Arc
cos[(1−0.01×β)]
【0006】
また、本発明は、前記電極を含む電子素子を提供する。
【0007】
また、本発明は、
1)基材上に導電性パターンを含む補助電極を形成するステップ、および
2)前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を形成するステップ
を含み、
補助電極の導電性パターンは、0度よりも大きく25度以下である、底部面または基板に接触する表面と補助電極の側面とのなす角度を有
し、
主電極は、補助電極の上部面および側面を全て覆った構造であり、
補助電極の導電性パターンは銅からなる電極の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施状態によれば、導電性などの性能に優れた電極およびこれを含む電子素子を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施状態による電極の側面構造を例示する図である。
【
図2】本発明による電極をフォトリソグラフィ工程によって製造した例を示す図である。
【
図3】フォトリソグラフィ工程におけるソフトベーク温度に応じた補助電極パターンのテーパー角を示す図である。
【
図4】フォトリソグラフィ工程におけるソフトベーク温度に応じた補助電極パターンのテーパー角を示す図である。
【
図5】本発明による電極を間接印刷工程によって製造した例を示す図である。
【
図6】間接印刷工程におけるソフトベーク温度に応じた補助電極パターンのテーパー角を示す図である。
【
図7】間接印刷工程におけるソフトベーク温度に応じた補助電極パターンのテーパー角を示す図である。
【
図8】フォトリソグラフィ工程または間接印刷工程における補助電極パターンのエッチング液に応じた補助電極パターンのテーパー角を示す図である。
【
図9】オキソン(Oxxon)系エッチング液を用いた場合の補助電極パターンの厚さに応じたテーパー角を示す図である(実施例)。
【
図10】過酸化水素系エッチング液を用いた場合の補助電極パターンの厚さに応じたテーパー角を示す図である(比較例)。
【
図11】グラビアオフセット印刷工程によって本発明による電極を製造した例を示す図である。
【
図12】グラビアオフセット印刷工程によって本発明による電極を製造した例に応じた結果物の写真である。
【
図13】リバースオフセット印刷工程によって本発明による電極を製造した例を示す図である。
【
図14】リバースオフセット印刷工程によって本発明による電極を製造した例に応じた結果物の写真である。
【
図15】実施例および比較例で製造された電極の表面特性を示す写真である。
【
図16】実施例および比較例で製造された電極の表面特性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による電極は、導電性パターンを含む補助電極、および前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を含むことを特徴とする。本発明では、従来とは異なり、補助電極が主電極の下段部に位置する埋め型構造を有することを特徴とする。
【0012】
従来は、主電極の導電度を向上させるために補助電極を用いる場合、前記主電極上に備えられる要素の安定性および層間の界面特性を考慮して、主電極を先に形成し、その上に補助電極を形成することが一般的であった。しかし、本発明では、補助電極パターンのテーパー角を調節する場合、具体的には、そのテーパー角を下げる場合は、補助電極上に主電極を形成しても電極上に備えられる要素の安定性を保障することができ、むしろ層間の界面特性にもより優れるという事実を見出した。
【0013】
本発明において、前記電極上に備えられる要素の許容厚さ偏差がβ%である場合、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角αは、下記数学式1で表されることができる。
[数学式1]
0≦α<Arc
cos[(1−0.01×β)]
本明細書においてテーパー角は、底部面または基板に接触する表面と補助電極の側面とのなす角度として定義され、当該角度は、0度よりも大きく25度以下である。
【0014】
図1に本発明の一実施状態による電極の側面構造を例示する。前記補助電極の導電性パターンのテーパー角をαとし、その上に備えられる主電極の平坦面における厚さをT
0とすると、前記補助電極の導電性パターンによって傾斜した領域(slope)における主電極の厚さTはT=T
0cos(α)と定義される。同じ数式により、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角をαとし、主電極、例えばITO主電極上に備えられる要素、例えば有機発光素子の有機物層の平坦面における厚さをD
0とすると、前記補助電極の導電性パターンによって傾斜した領域(slope)上に備えられるOLED物質の厚さDはD=D
0cos(α)と定義される。前記主電極上に位置する要素、例えば有機発光素子の場合は、有機物層またはタッチパネルの場合は、また他の電極の許容厚さ偏差をβ%と仮定すると、下記数学式2のように表されることができる。
[数学式2]
(1−0.01×β)×D
0≦D=D
0cos(α)≦D
0
【0015】
したがって、前記補助電極の導電性パターンの許容可能なテーパー角は、前記数学式1のように表すことができるという事実を見出した。
【0016】
前記数学式1によれば、結局、主電極の上層部に位置する要素の許容厚さ偏差は、下部の補助電極の導電性パターンのテーパー角に依存する。例えば、上層部に位置する要素の厚さ偏差が10%以下になるように適用する場合、前記補助電極の導電性パターンの許容可能なテーパー角は約0超過25度以下の値を有する。
【0017】
また、本発明者は、補助電極パターンのテーパー角を調節することができる、好ましくは下げることができる方法を見出した。
【0018】
本発明の一実施状態によれば、前記補助電極パターンのテーパー角の調節は、フォトリソグラフィ法または間接印刷法を利用することができる。この方法において、ソフトベーク温度を調節するか、エッチング液の組成を調節することにより、補助電極パターンのテーパー角を調節することができる。
【0019】
一例として、本発明により、補助電極パターンのテーパー角を下げるために、前記フォトレジスト材料のソフトベーク温度を110℃以下に調節することができる。
【0020】
図2にフォトリソグラフィ法を利用して補助電極を形成する例を図示する。
図2は、本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
図2は、基材上に補助電極形成用導電性層を形成するステップと、前記導電性層上にフォトレジストをコーティングするステップと、選択的な露光および現像によってフォトレジストパターンを形成するステップ、および前記フォトレジストパターンにより、塗布されない導電性層をエッチングして導電性パターンを形成するステップを含むフォトリソグラフィ工程を示すものである。前記フォトレジストをコーティングした後、110℃以下でソフトベークを実施することによって補助電極パターンのテーパー角を下げることができる。105℃でソフトベークを実施した場合と115℃でソフトベーク(soft bake)を実施した場合の各々のパターン形成された写真を
図3および
図4に例示する。この時、フォトレジストパターンは、厚さ1マイクロメーターに形成した。この時、好ましいソフトベーク温度は、フォトレジストの構成樹脂および組成物の種類、例えば溶媒の種類など、コーティング厚さなどに応じて当業者が実験を通じて選択適用することができるが、低いテーパー角(taper angle)のためには、素材の硬化温度より低いソフトベーク(soft bake)温度が有利である。
【0021】
図5に間接印刷法を利用して補助電極を形成する例を図示する。
図5は、本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
図5によれば、基材上に補助電極形成用導電性層を形成するステップと、前記導電性層上にフォトレジストパターンを印刷するステップ、および前記フォトレジストパターンにより、塗布されない導電性層をエッチングして導電性パターンを形成するステップを含む間接印刷工程において、前記フォトレジストパターンを印刷した後、80〜90℃でソフトベークを実施することにより、補助電極パターンのテーパー角を下げることができる。
【0022】
85℃でソフトベークを実施した場合と115℃でソフトベークを実施した場合の各々のパターン形成された写真を
図6および
図7に例示する。この時、フォトレジストパターンは、厚さ0.7マイクロメーターに形成した。
【0023】
前記フォトレジストをコーティングする前に、必要に応じて、前記導電性層を洗浄するステップをさらに含むことができる。また、前記導電性層をエッチングして導電性パターンを形成した後、前記フォトレジストを除去することもできる。
【0024】
また1つの例として、本発明により、補助電極パターンのテーパー角を下げるために、補助電極形成用導電性層のエッチング液を調節することができる。
【0025】
例えば、導電性層の材料が銅(Cu)である場合、オキソン(Oxxon)エッチング液を用いる場合は、大部分の条件で低いテーパー角を得ることができるが、従来のエッチング液を用いる場合は、ソフトベークおよびハードベークの有無に関係なく高いレベルのテーパー角を示す。オキソンエッチング液を用いた場合および従来の過酸化水素エッチング液を用いた場合の導電性パターンのテーパー角を示す写真を
図8に例示する。
【0026】
また、オキソンエッチング液を用いる場合の導電性パターンの厚さに応じたテーパー角を
図9に例示し、従来の過酸化水素エッチング液を用いた場合の導電性パターンの厚さに応じたテーパー角を
図10に図示する。このようなエッチング液の組成変化およびエッチング温度の変化などを利用して導電性パターンのテーパー角を調節する場合、アルミニウム(Al)系材料を用いる場合、従来のエッチング液に対する硝酸の含量を従来の2%から約5〜15%内外に増やすか、あるいはエッチング温度を上げることによって実現可能である。
【0027】
本発明のまた1つの実施状態によれば、直接印刷法を利用することができる。この方法において、リバースオフセットやグラビアオフセット印刷法を利用することにより、補助電極パターンのテーパー角を調節することができる。直接印刷法を用いる場合においては、グラビア印刷法やリバース印刷法に関係なく低いテーパー角を有する導電性パターンを得ることができる。これは、接触式パターンの形成から来る現象と考えられる。
【0028】
グラビアオフセット印刷法を利用する工程を
図11に図示し、これによって形成された導電性パターンの写真を
図12に例示する。また、リバースオフセット印刷法を利用する工程を
図13に図示し、これによって形成された導電性パターンの写真を
図14に例示する。
【0029】
前述したように、テーパー角の低い導電性パターンを含む補助電極を形成することにより、その上に主電極を形成すると、比較的に緩やかな主電極のスタックカバレッジ(stack coverage)を有することができる。これにより、主電極上に備えられる要素の安定性を保障することができる。
【0030】
具体的な例として、ガラス基材上に銅(Cu)を蒸着して補助電極形成用導電性層を形成し、フォトレジストをコーティングした後に選択的露光および現像を行い、次に導電性層をエッチングして導電性パターンを形成し、その上に主電極としてITO層を200nmの厚さで蒸着した後に断面形状を観察した時、ソフトベークまたはエッチングにおいて前述した低いテーパー角の形成条件を導入した場合とそうでない場合の写真を各々
図15および
図16に示す。
【0031】
図15のようにテーパー角の低い導電性パターンを含む補助電極を形成する場合は、その上に備えられる主電極のスタックカバレッジが比較的に緩やかである反面、
図16のようにテーパー角の大きい導電性パターンを含む補助電極を形成する場合は、その上に備えられる主電極のスタックカバレッジが良くない。また、
図16では、銅(Cu)で形成された補助電極の末端部(tail)が不規則なエッチング形状(etching morphology)によって不均一な主電極蒸着形状が観察される。
【0032】
前記間接印刷法であるフォトリソグラフィ工程によって補助電極を形成する場合は、補助電極のテーパー角が約45度前後の値を有する。また、前記直接印刷法であるリバースオフセット工程またはグラビアオフセット工程によって補助電極を形成する場合は、補助電極のテーパー角が5〜30度の値を有する。
【0033】
本発明において、補助電極の導電性パターンは、導電性材料を蒸着または印刷することによって形成することができる。導電性材料としては、銀、アルミニウム、銅、ネオジム、モリブデンまたはこれらの合金のような金属を用いることができる。
【0034】
補助電極および主電極からなる全体電極の面抵抗値に応じて主電極の厚さを増加させるか、あるいは補助電極の厚さを増加させて形成することができるが、スパッタリング(sputtering)工程によって補助電極を形成する場合、一般的に補助電極の厚さが50nm〜2,000nm内外であることが好ましい。
【0035】
このような補助電極の平面形状は、規則パターン構造あるいは不規則パターン構造などの様々なパターン形態を有してもよい。
【0036】
本発明において、主電極は、透明導電性材料で形成することができる。例えば、ITO、IZO、透明導電性インク(Ag nanowire ink、透明導電性高分子など)などを用いることができる。前記主電極は、前述したように当業者の要求抵抗値に合わせて形成することができ、スパッタリング工程を利用して形成する場合、一般的に厚さが50nm〜2,000nmであることが好ましい。
【0037】
本発明において、前記補助電極および主電極は、透明基板上に形成されることができる。前記透明基板は特に限定されず、当技術分野で知られた材料を用いることができる。例えば、ガラス、プラスチック基板、プラスチックフィルムなどを用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0038】
本発明の一実施状態によれば、前記主電極は、補助電極の上部面および側面を全て覆う構造であることが好ましい。すなわち、本発明において、前記補助電極は、埋め型構造を有する補助電極であってもよい。
【0039】
また、本発明は、前記電極を含む電子素子を提供する。
【0040】
前記電子素子は、タッチパネル、有機発光素子および表示装置などを含む。
【0041】
本発明による電子素子がタッチパネルである場合、前記主電極上に位置する要素は、また1つの電極であってもよい。必要な場合、前記主電極とまた1つの電極との間に絶縁層が備えられることができる。この時、前記また1つの電極の許容厚さ偏差は、構成成分、例えば金属の剛性(Stiffness)に応じて異なるが、通常、要求厚さにおいてクラック(crack)が発生しないレベルの偏差を有することが好ましく、これにより、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角を実験的に決めることができる。
【0042】
本発明による電子素子が有機発光素子である場合、前記主電極上に位置する要素は、有機物層および上部電極であってもよい。前記有機物層の厚さ偏差が大きい場合、素子寿命に悪影響を及ぼし得る。前記有機物層の好ましい厚さ偏差は0〜10%であるため、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角は0〜25度であることが好ましい。
【0043】
また、本発明は、基材上に導電性パターンを含む補助電極を形成するステップ、および前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を形成するステップを含む電極の製造方法を提供する。本発明による方法においては、フォトリソグラフィ法、間接印刷法または直接印刷法を利用することができ、具体的な内容は前述した通りである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれによって限定されるものではない。
【0045】
<実施例>
Cu金属をスパッタリング工程を利用して約100nm厚さで蒸着した後、この上にLG412DF PRを利用して厚さ1マイクロメーターのフォトレジストを形成した。その次、前記フォトレジストを約125℃の温度でソフトベークした後、各々、オキソン(Oxxon)系エッチング液(自体製造)および過酸化水素水を基にしたエッチング液(ENF社のCu etchant)でエッチングした後、LGS100ストリッパー(stripper)で洗浄した。その次、ITOスパッタ(sputter)装置を利用してITOを各々の基板に約200nmの厚さで蒸着し、その結果は
図15に示す通りである。
【0046】
エッチング液を調整して導電性パターンのテーパー角が小さくなるように調節した場合、
図15のようにITOのスタックカバレッジが優れていた。
【0047】
<比較例>
エッチング液として、過酸化水素を基にしたエッチング液(ENF社のCu etchant)を用いたことを除いては、実施例と同様に実施した。その結果を
図16に示す。
図15に比べてITOのスタックカバレッジが良くなく、銅(Cu)で形成された補助電極の末端部(tail)が不規則なエッチング形状(etching morphology)によって不均一な主電極蒸着形状が観察された。
なお、本願明細書に記載の実施形態によれば、以下の構成もまた開示される。
[項目1]
導電性パターンを含む補助電極、および前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を含む電極。
[項目2]
前記電極上に備えられる要素の許容厚さ偏差がβ%である場合、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角αは、下記数学式1で表されることを特徴とする、項目1に記載の電極。
[数学式1]
0≦α<Arc[(1−0.01×β)]
[項目3]
前記電極上に備えられる要素の許容厚さ偏差は、10%以下であることを特徴とする、項目2に記載の電極。
[項目4]
前記補助電極の導電性パターンのテーパー角は、0度超過25度以下であることを特徴とする、項目1〜3の何れか1項に記載の電極。
[項目5]
前記補助電極の導電性パターンは、銀、アルミニウム、銅、ネオジム、モリブデンまたはこれらの合金を含むことを特徴とする、項目1〜4の何れか1項に記載の電極。
[項目6]
前記主電極は、透明導電性材料を含むことを特徴とする、項目1〜5の何れか1項に記載の電極。
[項目7]
前記主電極は、補助電極の上部面および側面を全て覆った構造であることを特徴とする、項目1〜6の何れか1項に記載の電極。
[項目8]
項目1〜7のいずれか1項に記載の電極を含む電子素子。
[項目9]
前記電子素子は、タッチパネル、有機発光素子または表示装置であることを特徴とする、項目8に記載の電子素子。
[項目10]
1)基材上に導電性パターンを含む補助電極を形成するステップ、および
2)前記補助電極の少なくとも一部上に備えられ、前記補助電極と電気的に接続された主電極を形成するステップ
を含む電極の製造方法。
[項目11]
前記電極上に備えられる要素の許容厚さ偏差がβ%である場合、前記補助電極の導電性パターンのテーパー角αは、下記数学式1で表されることを特徴とする、項目10に記載の電極の製造方法。
[数学式1]
0≦α<Arc[(1−0.01×β)]
[項目12]
前記補助電極の導電性パターンのテーパー角は、0度超過25度以下であることを特徴とする、項目11に記載の電極の製造方法。
[項目13]
前記補助電極はフォトリソグラフィ法によって形成され、前記補助電極の形成時、フォトレジスト材料のソフトベーク温度を110℃以下に調節することを特徴とする、項目10〜12の何れか1項に記載の電極の製造方法。
[項目14]
前記補助電極は間接印刷法によって形成され、前記補助電極の形成時、フォトレジスト材料のソフトベーク温度を80〜90℃に調節することを特徴とする、項目10〜12の何れか1項に記載の電極の製造方法。
[項目15]
前記補助電極はフォトリソグラフィ法または間接印刷法によって形成され、前記補助電極の形成時、前記補助電極の材料が銅を含む場合、エッチング液としてオキソン(Oxxon)系エッチング液を用いることを特徴とする、項目10〜12の何れか1項に記載の電極の製造方法。
[項目16]
前記補助電極は、リバースオフセット印刷法またはグラビアオフセット印刷法によって形成されることを特徴とする、項目10〜12の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【符号の説明】
【0048】
10:基板
20:補助電極
30:主電極
40:有機物層または追加の電極