特許第5781906号(P5781906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781906
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】化学機械研磨組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150907BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 622X
   B24B37/00 H
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-264253(P2011-264253)
(22)【出願日】2011年12月2日
(62)【分割の表示】特願2007-505001(P2007-505001)の分割
【原出願日】2005年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-49570(P2012-49570A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2011年12月6日
【審判番号】不服2014-9636(P2014-9636/J1)
【審判請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】10/807,944
(32)【優先日】2004年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ リゲ セサウロ,フランセスコ
(72)【発明者】
【氏名】モーゲンボーグ,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシク,ブラスタ
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ベンジャミン
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 原 泰造
【審判官】 西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−80708(JP,A)
【文献】 特開2001−308042(JP,A)
【文献】 国際公開第02/061810号(WO,A1)
【文献】 特開2000−212776(JP,A)
【文献】 国際公開第03/099518号(WO,A1)
【文献】 特開2002−164309(JP,A)
【文献】 特開2000−183001(JP,A)
【文献】 特表2003−530713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
B24B37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を用意すること該基板は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、金及びこれらの組み合わせからなる群から選択される貴金属を含み、
(b)化学機械研磨組成物を用意すること、該化学機械研磨組成物は、
(i)α−アルミナを含む研磨材、
(ii)該研磨組成物の総質量に対して、カルシウムイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び
(iii)水を含む液体キャリア
を含んでなり、
(c)該化学機械研磨組成物を該基板の少なくとも一部に適用すること、並びに
(d)該研磨組成物を用いて該基板の貴金属の少なくとも一部を薄く削り、該基板を研磨すること、
の工程を含む、貴金属含有基板の研磨方法。
【請求項2】
前記基板が白金を含み、該白金の少なくとも一部を前記研磨組成物を用いて薄く削り、前記基板を研磨する、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記研磨材がヒュームドアルミナをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記研磨材がα−アルミナを10質量%以上含む、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記研磨組成物中に存在する前記研磨材の量が、前記研磨組成物の総質量に対して0.1〜10質量%である、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記研磨組成物中に存在する前記研磨材の量が、前記研磨組成物の総質量に対して1〜5質量%である、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記研磨組成物が、1〜7のpHを有する、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記研磨組成物が、2〜5のpHを有する、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨組成物、及びそれを用いて基板を研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他のエレクトロニクスデバイスの製造においては、複数の導電体、半導体及び誘電体材料層が、基板表面に堆積されるか又は基板表面から除去される。導電体、半導体及び誘電体材料の薄層は、数多くの堆積技術によって基板表面上に堆積可能である。現代のマイクロエレクトロニクスプロセスで一般的な堆積技術には、スパッタリングとしても知られる物理気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、プラズマ化学気相堆積(PECVD)及び電気化学メッキ(ECP)が含まれる。
【0003】
材料層は、逐次的に基板上に堆積され及び基板から除去されるために、基板の最も上の表面が平坦でなくなって平坦化を必要とする場合がある。表面の平坦化、すなわち表面の「研磨」は、基板の表面から材料を除去してほぼ均一に平坦な表面を形成するプロセスである。平坦化は、粗面、凝集した材料、結晶格子のダメージ、スクラッチ、及び汚染された層もしくは材料のような、望ましくない表面のトポグラフィ及び表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化はまた、金属化し処理される次の層のために特徴部を満たし及び均一な表面をもたらすために使用された、過剰の堆積材料を除去することによって、基板上に特徴部を形成する場合にも有用である。
【0004】
化学機械平坦化、すなわち化学機械研磨(CMP)は、基板を平坦化するのに使用される一般的な技術である。基板から材料を選択的に除去するために、CMPは化学組成物、典型的にはスラリー又は他の流体媒質を利用する。従来のCMP技術においては、基板のキャリア又は研磨ヘッドはキャリアアセンブリに設置され、CMP装置中の研磨パッドと接触するように配置される。キャリアアセンブリは制御可能な圧力を基板に与えて研磨パッドに向かって基板を促す。パッドは外部の駆動力によって基板と相対的に動かされる。パッドと基板の相対運動は基板表面を薄く削るように働いて、基板表面から材料の一部を除去し、そのことにより基板を研磨する。通常は、パッドと基板の相対運動による基板の研磨は、研磨組成物の化学的作用及び/又は研磨組成物中に懸濁している研磨材の機械的作用によりさらに補助される。
【0005】
より大量の情報を記憶できるより小さな記憶デバイスに対する需要が増大しているため、電子メーカーは新材料を用いて、より複雑になった集積回路を製造し始めている。例えば、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)及びFeRAM(強誘電性ランダム・アクセス・メモリー)に貴金属を用いることはますます一般的になってきている。貴金属の使用によってそのようなデバイスの性能を向上させることができる一方、貴金属の使用に特有の製造上の課題が生じる可能性があり、また生じることが多い。特に貴金属は機械的に硬く化学的に抵抗性であり、「貴金属」という用語は、それら金属の腐食及び酸化に対する優れた抵抗性を表現するのに使われ始めたのが実際のところである。機械的に硬くかつ比較的に化学的抵抗性であることが、従来の化学機械研磨組成物及び化学機械研磨技術を用いて貴金属を効率的に研磨することを非常に困難にしている。
【0006】
貴金属の化学機械研磨が提示する困難な問題にもかかわらず、貴金属の潜在的な利点によって集積回路製造における貴金属の使用が進められており、貴金属を集積回路製造へ組み入れ、及び貴金属の使用から生じうる最大の可能性を実現することを支援するために、化学機械研磨組成物及び化学機械研磨技術を開発するいくつかの試みがなされてきている。例えば、米国特許第5691219号では、貴金属を研磨するのに有用であるといわれている、ハロ化合物を含む研磨組成物が開示されている。同様に、米国特許第6290736号では、塩基性水溶液中に研磨材とハロゲンを含む、貴金属用の化学的に活性な研磨組成物が開示されている。国際公開WO01/44396では、硫黄含有化合物、研磨粒子、及び研磨粒子の懸濁を改善し、さらに金属の除去レートと選択性を向上させるといわれている水溶性有機添加剤を含む、貴金属用の研磨組成物が開示されている。
【0007】
前述の化学機械研磨組成物のそれぞれは、従来の化学機械研磨組成物よりも効率的な貴金属の研磨を可能にする場合があるが、同時にそれら組成物が原因となって、基板から後程作られる集積回路の性能に悪影響を及ぼしうる、基板表面上の欠陥が生じることがある。その上、前述の研磨組成物中に用いられるハロゲン及び硫黄含有化合物は、高い毒性があり(高い毒性があると、特別なハンドリング装置及び/又は手順を必要とすることによって研磨プロセスが複雑になる場合がある。)、製造するのが高価であり、及び/又は環境規制に従って適切に処分するのが高価である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5691219号明細書
【特許文献2】米国特許第6290736号明細書
【特許文献3】国際公開WO01/44396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、特別な酸化剤又は化学エッチャントの使用を必要とせず、従来の化学機械研磨組成物と比べて、貴金属含有基板のより効率的な研磨を可能にする化学機械研磨組成物が依然として必要とされている。本発明は、そのような化学機械研磨組成物、及び基板を研磨するためにそれを用いる関連した方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点は、付加的な発明の特徴と併せて、ここに記載する発明の記載から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)α−アルミナを含む研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでなる、化学機械研磨組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、(a)α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでなる、化学機械研磨組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、(a)基板を用意し、(b)化学機械研磨組成物を用意し、該化学機械研磨組成物は、(i)α−アルミナを含む研磨材、(ii)該研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(iii)水を含む液体キャリアを含んでなり、(c)該化学機械研磨組成物を該基板の少なくとも一部に適用し、並びに(d)該研磨組成物を用いて該基板の少なくとも一部を薄く削り、該基板を研磨する段階を含む、基板の研磨方法を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、(a)基板を用意し、(b)化学機械研磨組成物を用意し、該化学機械研磨組成物は、(i)α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材、(ii)該研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び(iii)水を含む液体キャリアを含んでなり、(c)該化学機械研磨組成物を該基板の少なくとも一部に適用し、並びに(d)該研磨組成物を用いて該基板の少なくとも一部を薄く削り、該基板を研磨する段階を含む、基板の研磨方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(a)研磨材、(b)カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでなる、化学機械研磨組成物を提供する。1つの実施態様において、化学機械研磨組成物は、(a)α−アルミナを含む研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。別の実施態様において、化学機械研磨組成物は、(a)α−アルミナを含む研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。さらに別の実施態様において、化学機械研磨組成物は、(a)α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。本発明の化学機械研磨組成物の実施態様で示される、研磨材及び金属イオンの種類と濃度は別として、本発明の化学機械研磨組成物の他の特徴(例えば研磨材の量、液体キャリア、pH及び他の適当な添加剤)は同じであってもよい。
【0015】
研磨組成物は研磨材を含み、一部の実施態様においてその研磨材はα−アルミナを含む。当業者に知られているように、アルミナ(すなわち酸化アルミニウム)はいくつかの異なる結晶相で存在しており、その結晶相には、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、κ−アルミナ、η−アルミナ、χ−アルミナ及びρ−アルミナが含まれる。研磨材中に存在する場合、α−アルミナは任意の適当な形態で存在していてもよい。より詳しくは、α−アルミナは、α−アルミナから本質的になる、又はα−アルミナからなる、他のものと区別できる研磨粒子の形態で存在していてもよい。あるいは、α−アルミナは、α−アルミナと他の適当な研磨材成分(例えばヒュームドアルミナのような金属酸化物)を含む研磨粒子中に存在していてもよい。研磨材がα−アルミナを含む場合、研磨材は、研磨材の総質量に対して、α−アルミナを好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上、もっとより好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上(例えば55質量%以上、又は60質量%以上)含む。
【0016】
前述したように、本発明はまた、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材を含む、化学機械研磨組成物を提供する。そのような実施態様において、研磨材は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、シリコンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。より好ましくは、研磨材は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、シリコンカーバイド及びこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、研磨材は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
前述の研磨材成分に加えて、研磨組成物の研磨材は他の適当な研磨材成分をさらに含んでもよい。適当な追加の研磨材成分には、他の形態のアルミナ(例えばヒュームドアルミナ)、シリカ(例えばコロイド状に分散された縮合重合シリカ、ヒュームドシリカもしくは焼成シリカ、及び沈降シリカ)、セリア、チタニア、ジルコニア、クロミア、酸化鉄、ゲルマニア、マグネシア及びこれらが共形成した生成物、並びにこれらの組み合わせのような金属酸化物研磨材が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
研磨材は、研磨組成物中に任意の適当量で存在してもよい。研磨組成物中に存在する研磨材の量は、研磨組成物の総質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1質量%以上である。研磨組成物中に存在する研磨材の量は、研磨組成物の総質量に対して、通常25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
【0019】
1つの実施態様において、研磨組成物は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む。第2の実施態様においては、研磨組成物は、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む。第3の実施態様においては、研磨組成物は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む。研磨組成物中に含まれる金属イオンは、任意の適当な原料に由来するものでよい。好ましくは、研磨組成物中に含まれる金属イオンは、少なくとも1種の水溶性金属塩に由来する。
【0020】
金属イオンは、研磨組成物中に任意の適当量で存在してよい。研磨組成物中に存在する金属イオンの量は、研磨組成物の総質量に対して、一般的には0.05mmol/kg(ミリモル毎キログラム)以上、好ましくは0.06mmol/kg以上、より好ましくは0.07mmol/kg以上、最も好ましくは1mmol/kg以上である。研磨組成物中に存在する金属イオンの量は、研磨組成物の総質量に対して、一般的には50mmol/kg以下、好ましくは40mmol/kg以下、より好ましくは30mmol/kg以下、最も好ましくは20mmol/kg以下(例えば10mmol/kg以下、5mmol/kg以下又は3.5mmol/kg以下)である。研磨組成物が、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む場合のような一部の実施態様においては、研磨組成物中に存在する金属イオンの量は、研磨組成物の総質量に対して、好ましくは0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、より好ましくは0.05〜40mmol/kg(例えば0.05〜30mmol/kg、0.05〜25mmol/kg、0.05〜20mmol/kg又は0.05〜15mmol/kg)、さらにより好ましくは0.05〜10mmol/kg、最も好ましくは0.05〜5mmol/kgである。研磨組成物が、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオンを含む場合、あるいは研磨組成物が、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材を含む場合、研磨組成物中に存在する金属イオンの量は、研磨組成物の総質量に対して、好ましくは0.05〜3.5mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、より好ましくは0.05〜3.4mmol/kg(例えば0.05〜3.3mmol/kg、0.05〜3.25mmol/kg、0.05〜3.2mmol/kg又は0.05〜3.1mmol/kg)、最も好ましくは0.05〜3mmol/kgである。
【0021】
液体キャリアは、研磨材、金属イオン及び他の任意の添加剤を、研磨される又は平坦化される適当な基板表面に適用することを容易にするために使用される。液体キャリアは任意の適当な液体キャリアであってよい。前述するように液体キャリアは水を含む。好ましくは、水は脱イオン水である。液体キャリアは適当な水混和性溶剤をさらに含んでもよい。しかしながら、一部の好ましい実施態様においては、液体キャリアは水、より好ましくは脱イオン水から本質的になるか、あるいは水、より好ましくは脱イオン水からなる。
【0022】
研磨組成物は任意の適当なpH(例えば1〜13)を有していてよい。好ましくは、研磨組成物のpHは1〜7、より好ましくは2〜5である。化学機械研磨システムのpHは、任意の適当な手段により実現及び/又は維持することができる。より詳細には、研磨組成物は、pH調整剤、pHバッファー剤又はこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。pH調整剤は任意の適当なpHを調製する化合物であってよい。例えば、pH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム又はこれらの組み合わせであってよい。pHバッファー剤は任意の適当なバッファー剤であってよく、例えばリン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などである。ここに示した範囲内に研磨システムのpHを実現及び/又は維持するのに十分な量であれば、化学機械研磨システムはそのような任意の適当量のpH調整剤及び/又はpHバッファー剤を含んでもよい。
【0023】
研磨組成物は酸をさらに含んでいてもよい。酸は、無機もしくは有機酸、又はこれらの組み合わせのような任意の適当な酸であってよい。例えば、研磨組成物は、硝酸、リン酸、硫酸及びこれらの塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される無機酸を含んでもよい。その代わりに又は無機酸に加えて、研磨組成物は、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、フタル酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸及びこれらの塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される有機酸を含んでもよい。これらの酸が存在する場合は、これらの酸が研磨組成物中に任意の適当量で存在していてもよい。
【0024】
また、研磨組成物は腐食防止剤(すなわちフィルム形成剤)を含んでいてもよい。腐食防止剤は任意の適当な腐食防止剤であってよい。通常は、腐食防止剤はヘテロ原子含有官能基を含む有機化合物である。例えば、腐食防止剤は、複素環が少なくとも1つの窒素原子を含んでいる、少なくとも1つの5又は6員複素環を活性な官能基として有する複素環式有機化合物、例えばアゾール化合物であってもよい。好ましくは、腐食防止剤は少なくとも1つのアゾール基を含んでいる。より好ましくは、腐食防止剤は、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール及びこれらの混合物からなる群から選択される。研磨システム中に用いられる腐食防止剤の量は、研磨組成物の総質量に対して、通常は0.0001質量%〜3質量%(好ましくは0.001質量%〜2質量%)である。
【0025】
研磨組成物は、必要に応じてキレート剤又は錯形成剤をさらに含む。錯形成剤は、除去される基板層の除去レートを高める任意の適当な化学添加剤である。適したキレート剤又は錯形成剤には、例えばカルボニル化合物(例えばアセチルアセトネートなど)、単純なカルボキシレート(例えば酢酸エステル、アリールカルボキシレートなど)、1つ以上のヒドロキシル基を含むカルボキシレート(例えばグリコール酸エステル、乳酸エステル、グルコン酸エステル、没食子酸及びこれらの塩など)、ジ−、トリ−及びポリ−カルボキシレート(例えばシュウ酸エステル、フタル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、エデト酸エステル(例えばEDTAジカリウム塩)、これらの混合物など)、1つ以上のスルホン基及び/又はホスホン基を含むカルボキシレートなどが含まれてもよい。また、適したキレート剤又は錯形成剤には、例えば、ジ−、トリ−又はポリアルコール(例えばエチレングリコール、ピロカテコール、ピロガロール、タンニン酸など)、及びアミン含有化合物(例えばアンモニア、アミノ酸、アミノアルコール、ジ−、トリ−及びポリアミンなど)が含まれてもよい。キレート剤又は錯形成剤の選択は、除去される基板層の種類に左右される。
【0026】
当然のことながら、多くの前述の化合物は塩(例えば金属塩、アンモニウム塩など)、酸、又は部分塩の形態で存在していてもよい。例えば、クエン酸エステルにはクエン酸に加えてそのモノ−、ジ−、及びトリ塩が含まれ、フタル酸エステルにはフタル酸に加えてそのモノ塩(例えばフタル酸水素カリウム)及びジ塩が含まれ、過塩素酸塩には対応する酸(すなわち過塩素酸)に加えてその塩が含まれる。さらに、ある種の化合物又は試薬は、複数の機能を果たすことがある。例えば、いくつかの化合物はキレート剤及び酸化剤の両方として機能しうる(例えばある種の硝酸鉄など)。
【0027】
研磨組成物は界面活性剤をさらに含んでもよい。適した界面活性剤には、例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、これらの混合物などが含まれてもよい。好ましくは、研磨組成物は非イオン性界面活性剤を含む。適した非イオン性界面活性剤の一例は、エチレンジアミン−ポリオキシエチレン界面活性剤である。界面活性剤の量は、研磨組成物の総質量に対して、通常0.0001質量%〜1質量%(好ましくは0.001質量%〜0.1質量%、より好ましくは0.005質量%〜0.05質量%)である。
【0028】
研磨組成物は消泡剤をさらに含んでもよい。消泡剤は任意の適当な消泡剤であってよい。適した消泡剤には、シリコン系及びアセチレンジオール系の消泡剤が含まれるが、これらに限定されない。研磨組成物中に存在する消泡剤の量は、通常10ppm〜140ppmである。
【0029】
また、研磨組成物は殺生剤を含んでもよい。殺生剤は任意の適当な殺生剤であってよく、例えばイソチアゾリノン殺生剤であってよい。研磨組成物中に使用される殺生剤の量は、通常1〜50ppmであり、好ましくは10〜20ppmである。
【0030】
研磨組成物は好ましくはコロイド的に安定である。「コロイド」とは液体キャリア中に研磨材(例えば研磨粒子)が懸濁していることを意味する。「コロイド的な安定」とは、その懸濁が長時間維持されていることを意味する。研磨組成物を100mLのメスシリンダーに入れ攪拌せずに2時間放置した場合に、メスシリンダーの下部50mL中の研磨材(例えば研磨粒子)の濃度([B]g/mL)とメスシリンダーの上部50mL中の研磨材(例えば研磨粒子)の濃度([T]g/mL)の差を研磨組成物中の研磨材(例えば研磨粒子)の初期濃度([C]g/mL)で除したものが、0.5以下(すなわち{[B]−[T]}/[C]≦0.5)であれば、研磨組成物はコロイド的に安定とみなされる。{[B]−[T]}/[C]の値は、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.1以下であり、さらにより好ましくは0.05以下であり、最も好ましくは0.01以下である。
【0031】
研磨組成物の平均粒径は、好ましくは研磨組成物の可使期間を通じて本質的に変化しないことが好ましい。詳細には、研磨組成物の平均粒径は、研磨組成物の可使期間全体(例えば90日以上、180日以上又は365日以上)を通じて、好ましくは40%未満(例えば35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満又は10%未満)増加する。
【0032】
さらに、本発明はここに記載した研磨組成物を用いた、基板の研磨方法を提供する。この方法は全体として、(i)基板を用意し、(ii)ここに記載した研磨組成物を用意し、(iii)この研磨組成物を基板の一部に適用し、及び(iv)基板の一部を薄く削り、基板を研磨する段階を含む。
【0033】
そのような方法の1つの実施態様における基板の研磨方法は、(a)基板を用意し、(b)化学機械研磨組成物を用意し、その化学機械研磨組成物は、(i)α−アルミナを含む研磨材、(ii)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(iii)水を含む液体キャリアを含んでなり、(c)その化学機械研磨組成物を基板の少なくとも一部に適用し、並びに(d)その研磨組成物を用いて基板の少なくとも一部を薄く削り、基板を研磨する段階を含む。
【0034】
本発明の方法の実施態様において用いられる研磨組成物は、(a)α−アルミナを含む研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜50mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。本発明の方法の実施態様において用いられる化学機械研磨組成物の他の特性(例えば研磨材の量、液体キャリア、pH及び他の適当な添加剤)は、本発明の化学機械研磨組成物について前述したのと同じであってよい。
【0035】
他の実施態様における基板の研磨方法は、(a)基板を用意し、(b)化学機械研磨組成物を用意し、その化学機械研磨組成物は、(i)α−アルミナを含む研磨材、(ii)研磨組成物の総質量に対して、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(iii)水を含む液体キャリアを含んでなり、(c)その化学機械研磨組成物を基板の少なくとも一部に適用し、並びに(d)その研磨組成物を用いて基板の少なくとも一部を薄く削り、基板を研磨する段階を含む。
【0036】
本発明の方法の実施態様において用いられる研磨組成物は、(a)α−アルミナを含む研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg(ミリモル毎キログラム)、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。本発明の方法の実施態様において用いられる化学機械研磨組成物の他の特性(例えば研磨材の量、液体キャリア、pH及び他の適当な添加剤)は、本発明の化学機械研磨組成物について前述したのと同じであってよい。
【0037】
第3の実施態様において、基板の研磨方法は、(a)基板を用意し、(b)化学機械研磨組成物を用意し、その化学機械研磨組成物は、(i)α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材、(ii)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び(iii)水を含む液体キャリアを含んでなり、(c)その化学機械研磨組成物を基板の少なくとも一部に適用し、並びに(d)その研磨組成物を用いて基板の少なくとも一部を薄く削り、基板を研磨する段階を含む。
【0038】
本発明の方法の実施態様において用いられる研磨組成物は、(a)α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される研磨材、(b)研磨組成物の総質量に対して、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属のイオン0.05〜3.5mmol/kg、及び(c)水を含む液体キャリアを含んでいる。本発明の方法の実施態様において用いられる化学機械研磨組成物の他の特性(例えば研磨材の量、液体キャリア、pH及び他の適当な添加剤)は、本発明の化学機械研磨組成物について前述したのと同じであってよい。
【0039】
本発明の方法を用いて研磨される基板は、任意の適当な基板であってよい。適当な基板には、集積回路、メモリー又はリジッドディスク、金属、層間誘電体(ILD)デバイス、半導体、マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム、強誘電体及び磁気ヘッドが含まれるが、これらに限定されない。金属層は任意の適当な金属を含んでいてよい。例えば、金属層は、銅、タンタル(例えば窒化タンタル)、チタン、アルミニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、イリジウム又はロジウムを含んでもよい。基板は少なくとも1層の絶縁層をさらに含んでいてもよい。絶縁層は、金属酸化物、多孔性金属酸化物、ガラス、有機ポリマー、フッ化有機ポリマー、又は他の任意の適当なhigh−kもしくはlow−k絶縁層であってよい。好ましくは、基板は貴金属を含んでおり、その貴金属の少なくとも一部が研磨組成物を用いて薄く削られ、基板が研磨される。適した貴金属には、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、金及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、基板は白金を含んでおり、白金の少なくとも一部が研磨組成物を用いて薄く削られて基板が研磨される。
【0040】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置と一緒に使用するのに特に適している。その装置には、使用時に動いていて軌道、直線又は円運動から生じるある速度を有するプラテン、プラテンと接触しており動いているプラテンと一緒に動く研磨パッド、並びに基板を保持するキャリアが通常含まれており、その基板は研磨パッド表面へ接触させること及び研磨パッド表面に対して相対的に動かすことによって研磨される。基板の少なくとも一部を薄く削って基板を研磨するためには、基板を研磨パッドと本発明の研磨組成物に接触するように配置し、その後研磨パッドを基板に対して相対的に動かすことによって基板の研磨を行う。
【0041】
CMP装置には、本技術分野でその多くが既知であるin−situ研磨最終点検出システムがさらに含まれることが望ましい。基板表面から反射した光又は他の放射線を分析することによって、研磨プロセスを検査し監視するための技術は本技術分野において既知である。研磨される基板に関する研磨プロセスの進行を検査し又は監視することにより、研磨最終点を決定できること、すなわちある特定の基板に関する研磨プロセスをいつ終了するか決定できることが望ましい。
【0042】
CMP装置は、基板を酸化するための手段をさらに含んでいてもよい。電気化学研磨システムにおける基板を酸化するための手段には、時間変化電位(例えば陽極電位)を基板に印加するためのデバイス(例えば電子ポテンシオスタット)が好ましくは含まれる。基板に時間変化電位を印加するためのデバイスは、任意のそのような適当なデバイスであってよい。基板を酸化するための手段は、第1の電位(例えば酸化性の高い電位)を研磨の初期段階の間に印加し、さらに第2の電位(例えば酸化性の低い電位)を研磨の後段階において又はその最中に印加するためのデバイスを好ましくは含む。また、基板を酸化するための手段は、研磨の中間段階の間に第1の電位から第2の電位へと変化させるためのデバイス、例えば中間段階の最中に連続的に電位を減少させるか、あるいは第1の酸化性の高い電位で所定の間隔をおいた後に第1の酸化性の高い電位から第2の酸化性の低い電位へ急速に電位を減少させるためのデバイスを好ましくは含む。例えば、研磨の初期段階の間は、比較的高い酸化性電位を基板に印加して、基板の酸化/解離/除去レートが比較的高くなるように促進する。研磨が後段階の場合、例えば下にあるバリア層に近づいている場合であれば、基板の酸化/解離/除去レートを大幅に低下させるか無視できる程度になるよう印加電圧を減少させ、そのことによりディッシング、コロージョン及びエロージョンをなくすか大幅に減少させる。時間変化する電気化学電位は、制御可能な可変直流電源、例えば電子ポテンシオスタットを用いて好ましくは印加される。米国特許第6379223号では、電位を印加することにより基板を酸化する手段がさらに記載されている。
【実施例】
【0043】
以下の例は本発明をさらに詳しく説明するものであるが、当然のことながら、決して本発明の範囲を限定するものとみなしてはならない。
【0044】
例1:この例では、本発明の研磨組成物によって示された、向上した研磨レートについて説明する。白金を含む同様の複数の基板を、4種の異なる研磨組成物(研磨組成物1A、1B、1C及び1D)を用いて研磨した。研磨組成物1A(比較)は、検出可能な量の金属イオンを含んでいなかった。研磨組成物1B(本発明)は、カルシウム(塩化カルシウムとして)を0.38mmol/kg(およそ15ppm)含んでいた。研磨組成物1C(本発明)は、ストロンチウム(塩化ストロンチウムとして)を0.38mmol/kg(およそ33ppm)含んでいた。研磨組成物1Dは、バリウム(塩化バリウムとして)を0.37mmol/kg(およそ51ppm)含んでいた。また、それぞれ上述の研磨組成物は、研磨材の総質量に対してα−アルミナ約60質量%とヒュームドアルミナ約40質量%を含む研磨材を3質量%含んでおり、pHは3だった。白金除去レートの値(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
これらの結果から、検出可能な量の金属イオンを含まない同様の研磨組成物と比較して、本発明の研磨組成物が高い白金除去レートを示すことが明らかである。特に、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される金属のイオンをおよそ0.37〜0.38mmol/kg含む、研磨組成物1B〜1D(本発明)はいずれも、検出可能な量のカルシウム、ストロンチウム又はバリウムのイオンを含んでいなかった研磨組成物1A(比較)の白金除去レートより、およそ200%以上高い白金除去レートを示した。
【0047】
例2:この例では、本発明の研磨組成物によって示された、向上した研磨レートについて説明する。白金を含む同様の複数の基板を、3種の異なる研磨組成物(研磨組成物2A、2B及び2C)を用いて研磨した。研磨組成物2A(比較)は、検出可能な量の金属イオンを含んでいなかった。研磨組成物2B(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を0.4mmol/kg(およそ9ppm)含んでいた。研磨組成物2C(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を0.74mmol/kg(およそ18ppm)含んでいた。また、それぞれ上述の研磨組成物は、研磨材の総質量に対してα−アルミナ約60質量%とヒュームドアルミナ約40質量%を含む研磨材を3質量%含んでおり、pHは3だった。白金除去レートの値(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について測定した。結果を表2にまとめて示す。
【0048】
【表2】
【0049】
これらの結果から、検出可能な量の金属イオンを含まない同様の研磨組成物と比較して、本発明の研磨組成物が高い白金除去レートを示すことが明らかである。特に、マグネシウムイオンをおよそ0.4及び0.74mmol/kg含む、研磨組成物2B及び2C(本発明)はいずれも、検出可能な量のマグネシウムイオンを含んでいなかった研磨組成物2A(比較)の白金除去レートより、それぞれおよそ30%及び75%高い白金除去レートを示した。
【0050】
例3:この例では、本発明の研磨組成物によって示された、向上した研磨レートについて説明する。白金を含む同様の複数の基板を、6種の異なる研磨組成物(研磨組成物3A、3B、3C、3D、3E及び3F)を用いて研磨した。研磨組成物3A(比較)は、検出可能な量の金属イオンを含んでいなかった。研磨組成物3B(比較)は、アルミニウム(硝酸アルミニウムとして)を0.74mmol/kg含んでいた。研磨組成物3C(比較)は、アルミニウム(硝酸アルミニウムとして)を3.0mmol/kg含んでいた。研磨組成物3D(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を0.74mmol/kg(およそ18ppm)含んでいた。研磨組成物3E(本発明)は、亜鉛(塩化亜鉛として)を0.75mmol/kg(およそ49ppm)含んでいた。研磨組成物3F(本発明)は、亜鉛(塩化亜鉛として)を1.5mmol/kg(およそ96ppm)含んでいた。また、それぞれ上述の研磨組成物は、研磨材の総質量に対してα−アルミナ約60質量%とヒュームドアルミナ約40質量%を含む研磨材を3質量%含んでおり、pHは3だった。白金除去レートの値(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について測定した。結果を表3にまとめて示す。
【0051】
【表3】
【0052】
これらの結果から、検出可能な量の金属イオンを含まないか、又は異なる金属イオンを同等量含んでいる同様の研磨組成物と比較して、本発明の研磨組成物が高い白金除去レートを示すことが明らかである。特に、マグネシウム及び亜鉛からなる群から選択される金属のイオンをおよそ0.74〜1.5mmol/kg含む、研磨組成物3D〜3F(本発明)はいずれも、検出可能な量のマグネシウム又は亜鉛のイオンを含んでいなかった研磨組成物3A〜3C(比較)の白金除去レートより、およそ80%以上高い白金除去レートを示した。
【0053】
例4:この例では、本発明の研磨組成物によって示された、向上した研磨レートについて説明する。白金を含む同様の複数の基板(例1、2、3及び5で用いられたものとは異なるロット)を、7種の異なる研磨組成物(研磨組成物4A、4B、4C、4D、4E、4F及び4G)を用いて研磨した。研磨組成物4A(比較)は、検出可能な量の金属イオンを含んでいなかった。研磨組成物4B(比較)は、カリウム(塩化カリウムとして)を0.74mmol/kg(およそ29ppm)含んでいた。研磨組成物4C(比較)は、カリウム(硫酸カリウムとして)を0.74mmol/kg(およそ29ppm)含んでいた。研磨組成物4D(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を0.74mmol/kg(およそ18ppm)含んでいた。研磨組成物4E(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を1.5mmol/kg(およそ36ppm)含んでいた。研磨組成物4F(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を3.0mmol/kg(およそ72ppm)含んでいた。研磨組成物4G(本発明)は、マグネシウム(塩化マグネシウムとして)を5.9mmol/kg(およそ144ppm)含んでいた。また、それぞれ上述の研磨組成物は、研磨材の総質量に対してα−アルミナ約60質量%とヒュームドアルミナ約40質量%を含む研磨材を3質量%含んでおり、pHは3だった。白金除去レートの値(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について測定した。結果を表4にまとめて示す。
【0054】
【表4】
【0055】
これらの結果から、検出可能な量の金属イオンを含まないか、又は異なる金属イオンを同等量含んでいる同様の研磨組成物と比較して、本発明の研磨組成物が高い白金除去レートを示すことが明らかである。特に、マグネシウムをおよそ0.74〜5.9mmol/kg含む、研磨組成物4D〜4G(本発明)はいずれも、4000Å/分以上の白金除去レートを示した。そのような除去レートは、検出可能な量のマグネシウムを含まない、研磨組成物4A〜4C(比較)について観察されたものよりはるかに大きかった。それぞれの基板上にある厚さ4000Åの白金層全体が1分間以内の研磨試験で除去されたため、研磨組成物4D〜4G(本発明)のそれぞれの白金除去レートは最小値として報告できたに過ぎない。
【0056】
例5:この例では、本発明の研磨組成物によって示された、向上した研磨レートについて説明する。白金を含む同様の複数の基板を、4種の異なる研磨組成物(研磨組成物5A、5B、5C及び5D)を用いて研磨した。研磨組成物5A(比較)は、検出可能な量の金属イオンを含んでいなかった。研磨組成物5B(本発明)は、バリウム(塩化バリウムとして)を0.19mmol/kg(およそ26ppm)含んでいた。研磨組成物5C(本発明)は、バリウム(塩化バリウムとして)を0.37mmol/kg(およそ51ppm)含んでいた。研磨組成物5D(本発明)は、バリウム(塩化バリウムとして)を0.743mmol/kg(およそ102ppm)含んでいた。また、それぞれ上述の研磨組成物は、研磨材の総質量に対してα−アルミナ約60質量%とヒュームドアルミナ約40質量%を含む研磨材を3質量%含んでおり、pHは3だった。白金除去レートの値(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について測定した。結果を表5にまとめて示す。
【0057】
【表5】
【0058】
これらの結果から、検出可能な量の金属イオンを含まない同様の研磨組成物と比較して、本発明の研磨組成物が高い白金除去レートを示すことが明らかである。特に、バリウムイオンをおよそ0.19〜0.743mmol/kg含む、研磨組成物5B〜5D(本発明)はいずれも、検出可能な量のバリウムイオンを含んでいなかった研磨組成物5A(比較)の白金除去レートより、およそ240%以上高い白金除去レートを示した。